【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るレンズメータ1について
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るレンズメータ1の全体構成を示した図であり、
図2は、本発明の実施形態に係るレンズメータ1の光学系を示した図である。
【0015】
実施形態に係るレンズメータ1は、
図1に示すように、光学系10と本体部100から構成される。光学系10は、被検レンズの屈折力を測定するための測定光源11およびRGB型のCMOSイメージセンサー26などから構成されている。
【0016】
本体部100は、演算/制御処理部101、モニタ102、タッチパネル103、スイッチボタン104、プリンター105およびメモリ106などから構成されている。演算/制御処理部101からの制御信号により、測定光源11の点灯/消灯の制御やCMOSイメージセンサー26の制御が実施される。また、演算/制御処理部101には、CMOSイメージセンサー26により取得されたイメージデータが入力される。そして、演算/制御処理部101に入力されたイメージデータについて演算処理を実施して、被検レンズの屈折力の値などを算出する。演算/制御処理部101は、算出した結果をメモリ106に記憶すると共に、モニタ102に表示する。
【0017】
次に、光学系10について、
図2を参照して説明する。光学系10は、測定光源11などを備えた投光部と、CMOSイメージセンサー26などを備えた受光部とから構成されている。
【0018】
本実施形態では、測定光源11には、例えば、波長が535nmの緑色光のLEDが採用される。眼鏡レンズの屈折力は、基準波長であるd線(587.56nm)またはe線(546.07nm)により値付けされているため、本実施形態では、これら基準波長に近い535nmの緑色光を採用するが、これに限定するものではなく、緑色光より長波長の赤色光のLEDを採用してもよい。基準波長との差で生じる誤差は、基準レンズを用いた校正作業により補正される。
【0019】
測定光源11から出射される緑色光(以下「測定光」)は絞り16およびコリメータレンズ17に入射する。絞り16は薄い平板に円形状の貫通穴を設けたものであり、被検レンズ18に照射する光の光束径を制限するものである。被検レンズ18に照射する光の光束径が大き過ぎると、コリメータレンズ17から被検レンズ18の間に配置された(図示しない)他の構成部品に照射し、その反射光が被検レンズ18に入り込む恐れがある。絞り16により、被検レンズ18に照射する光の光束径を制限して他の構成部品からの反射光が被検レンズ18に入り込むことを防止している。
【0020】
また、測定光源11は、コリメータレンズ17の後側面焦点距離(バックフォーカス)の位置に配置されている。これにより、測定光はコリメータレンズ17により平行光となり、被検レンズ18に対して垂直に照射する。尚、レンズ受け19は被検レンズ18を載せるための台であり、被検レンズ18は、レンズ受け19により受光素子であるCMOSイメージセンサー26に対し一定の距離に配置されて、屈折力などの光学特性が測定される。
【0021】
被検レンズ18を透過した測定光は、カバーガラス20、パターン板21および集光レンズ22、23、24に入射した後、CMOSイメージセンサー26に入射する。
【0022】
ここで、カバーガラス20は受光部を埃などから保護するために配置された平板状の板ガラスであり、本実施形態では、被検レンズ18を透過した測定光、紫外光および青色光がほぼ100%の透過率で透過できるように、上面および下面の両面には反射防止のためのマルチコーティングが施されている。尚、マルチコーティングは必須なものでななく、適宜、必要に応じて、適切な反射防止コーティングを施せばよい。
【0023】
パターン板21は、例えば、
図3の(a)のような正方形の各頂点を中心とする4つの円状の貫通穴21a、21b、21c、21dを設けた円板状の平板が採用できる。被検レンズ18を透過した測定光は、被検レンズ18の屈折力に応じて屈折してパターン板21に入射して4つの分離した光となる。4つの分離した光は、集光レンズ22、23および24により集光し、CMOSイメージセンサー26の受光面において結像する。
【0024】
4つの光がCMOSイメージセンサー26の受光面で結像する位置は、被検レンズ18の屈折力に応じて変化するため、4つの光の重心位置(座標位置)をCMOSイメージセンサー26のイメージデータから算出することにより、被検レンズ18の屈折力の値を算出することができるのである。4つの座標位置から球面屈折力S、円柱屈折力Cおよび乱視角度Aなどの光学特性の値を算出する方法は特許第3150404号公報などに開示されているので、ここでは、詳細は省略する。
【0025】
また、本実施形態における測定光が上記のように緑色光である。そこで、CMOSイメージセンサー26のR受光面(red)、G受光面(green)およびB受光面(blue)の内、G受光面で受光した電気信号を選択的に取り出して演算/制御処理部101にて処理することにより、被検レンズ18の屈折力などの光学特性を取得できる。すなわち、本実施形態のようにRGB型のCMOSイメージセンサー26を受光素子として採用することにより、測定光を選択的に受光するためのフィルターなどを配置する必要がない。
【0026】
次に、本実施形態における操作方法について、
図4を参照して説明する。
図4は本発明の実施形態に係るレンズメータの操作フローの一例を示したものである。
【0027】
まず、ステップS10で、測定光源11を点灯する。ステップS12で被検レンズをレンズ受け19に載せたら(Y)、ステップS14で、被検レンズ18の屈折力の算出を開始する。被検レンズ18の挿入後から被検レンズ18の屈折力の算出は常時実施されるようになっており、その都度、メモリ106に記憶し、モニタ102に表示する。
【0028】
ステップS16に進み、アライメントを行う。アライメントは測定光軸に被検レンズ18の光学中心が来るように、被検レンズ18をレンズ受け19に載せた状態で左右前後に移動する。具体的には、モニタ102に表示されたターゲットが座標中心に来るように被検レンズを移動することによりアライメントを実施する。
【0029】
図5の(a)は、レンズメータ1のモニタ102に表示される測定画面の一例である。画面中央部にはターゲットエリア116が表示され、ターゲットエリア116の中にはターゲットマーク(+)117が表示される。ターゲットマーク(+)117は被検レンズ18の光学中心の位置を、ターゲットエリア116の中心118は光学系10の光軸中心を、それぞれ表しており、モニタ102に表示されるターゲットマーク(+)117がターゲットエリア116の中心118に来るように、操作者は被検レンズ18をレンズ受け19に載せた状態で左右前後に移動させて、アライメントを実施する。
【0030】
ステップS18で、アライメントが終了したか否かを判断する。もし、アライメントが終了したら(Y:アライメントOK)、ステップS20で、アライメント終了時の被検レンズ18の屈折力の値をメモリ106に記憶し、モニタ102に表示する。アライメントが終了しなければ(N:アライメントNG)、ステップS14に戻り、被検レンズ18の屈折力の算出からやり直す。
【0031】
ステップS22で、モニタ102に表示された被検レンズ18の屈折力の値を確認し、OKと判断したら(Y:測定値OK)、ステップS24に進む。もし、表示された被検レンズ18の屈折力の値に問題があれば(N:測定値NG)、ステップS14に戻り、被検レンズ18の屈折力の算出からやり直す。
【0032】
ステップS24では、画面切替ボタンであるスイッチボタン104を押す。スイッチボタン104が押されたら、ステップS26で、被検レンズ18の隠しマークを視認するためのターゲットパターンをモニタ102に表示する。本実施形態では、ターゲットパターンの一例として、
図5の(b)に示すように、白色と黒色の正方形が交互にある市松模様120を用いて説明する。
【0033】
ここで、モニタ102に表示される白色と黒色の正方形のピッチは、ステップS20でメモリ106に記憶された被検レンズ18の屈折力の値に基づいて演算/制御処理部101により算出して決定される。隠しマークの視認は市松模様120が表示されるモニタ102の前方に被検レンズ18を配置し、市松模様120を、被検レンズ18を通して見ることにより行う。被検レンズ18を通して見る市松模様120は、被検レンズ18の屈折力により拡大または縮小するため、一定のピッチで隠しマークを視認することができない。そのため、本実施形態では、被検レンズ18を通して見る市松模様120のピッチが常に一定になるように、測定した被検レンズ18の屈折力の値に基づいて白色と黒色の正方形のピッチを決定してモニタ102に表示されるようになっている。
【0034】
ステップS28では、被検レンズ18に施された隠しマークを視認する。隠しマークの視認は上記のように、モニタ102に表示した市松模様120を、被検レンズ18を通して見ることにより、視認することができる。すなわち、明るい背景(白色の正方形)の暗部領域或いは暗い背景(黒色の正方形)の明領域として隠しマークを視認することができる。
【0035】
隠しマークの視認が終了したら、ステップS30で、再度スイッチボタン104を押す。スイッチボタン104が押されたら、ステップS32で、モニタ102に
図5の(a)に示した測定画面を再度表示する。
【0036】
ステップS34で、測定が終了したか否かを判断する。もし、測定が終了したら(Y)、操作は終了する。再度、測定する場合(N)は、ステップS14に戻り、被検レンズ18の屈折力の算出からやり直す。
【0037】
尚、
図5の(a)および(b)に示した画面表示は一例であって、限定されるものでない。適宜、最適な画面表示をモニタ102に表示するようにすればよい。
【0038】
図6は、本発明の実施形態に係るレンズメータのモニタに表示する市松模様のピッチの制御について説明する図である。
図6の(a)のモニタ102に表示する市松模様120の白色と黒色の正方形の最適なピッチd0、d0は、隠しマークを視認する上で最適の値であるとする。例えば、被検レンズ18がプラスの屈折力を持つ凸レンズである場合、
図6の(a)に示すように、被検レンズ18を通して見える市松模様120のピッチd1、d1はピッチd0、d0より大きくなる(d1>d0)。
【0039】
本実施形態では、
図6の(b)に示すように、被検レンズ18を通して見える市松模様120のピッチd2、d2が最適なピッチd0、d0と等しくなる(d2=d0)ように、市松模様120の白色と黒色の正方形のピッチd3、d3を縮小して(d3<d0)モニタ102に表示する。ここで、モニタ102に表示する市松模様120の白色と黒色の正方形のピッチd3、d3は、上記のように、測定された被検レンズ18の屈折力の値に基づいて演算/制御処理部101により算出される。
【0040】
上記のように、本実施形態によれば、被検レンズ18の屈折力に関係なく、白色と黒色の正方形のピッチが最適な状態で隠しマークを視認することができる。
【0041】
ここで、レンズメータ1はレンズメータの一例であり、被検レンズ18は被検レンズの一例であり、メモリ106は記憶手段の一例であり、モニタ102は表示手段の一例であり、市松模様120はターゲットパターンの一例である。
【0042】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本発明を上記の実施形態に適用したものに限られることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。
【0043】
例えば、上記実施形態では、パターン板21には
図3(a)の4つ穴のパターン板を採用したが、パターン板はこれに限定するものではない。例えば、
図3(b)のパターン板210のように多数の貫通穴を設けたハルトマンプレートを採用することも可能である。さらに、本明細書には図示しないが、円状のパターンを採用してもよい。すなわち、種々な特許文献に開示されたパターンが採用可能である。
【0044】
また、上記実施形態では、白色と黒色との市松模様120をモニタ102に表示したが、明色と暗色との組み合わせであれば、白色と黒色に限定されず、いろいろな色の組み合わせが採用できる。さらに、3色以上の組み合わせであってもよい。視認において効果的な配色であれば、様々な色の組み合わせが採用可能である。
【0045】
また、上記実施形態では、白色と黒色の正方形のピッチd0、d0を最適の値であるとしたが、これについても、1つの値に限定するものではない。隠しマークの大きさや隆起または陥没の度合いに応じてピッチd0、d0の値を調整してもよい。例えば、
図5の(b)の拡大/縮小ボタン121によりピッチd0、d0の値を調整してもよいし、モニタ上をスワイプ、ピンチアウト、ピンチインすることにより調整してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、ターゲットパターンの一例として
図5(b)に示すような正方形が交互にある市松模様120をモニタ102に表示したが、ターゲットパターンはこれに限定するものではない。例えば、市松模様120の目は正方形ではなく長方形であってもよい。また、
図7のような格子模様のパターン122であってもよいし、
図8(a)(b)のような縞模様のパターン123、124であってもよい。
【0047】
また、
図5(b)、
図7、
図8(a)(b)に示すターゲットパターンは、モニタ102の上下方向に対して垂直或いは水平方向に境界を持つパターンとしたが、これに限定するものではなく、傾斜方向に境界を持つパターンであってもよい。