特許第6830675号(P6830675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830675
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】観賞植物用の鉢集合システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/12 20060101AFI20210208BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20210208BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20210208BHJP
   A01G 22/63 20180101ALI20210208BHJP
【FI】
   A01G9/12 A
   A01G9/02 101R
   A01G9/02 101J
   A01G7/00 601A
   A01G22/63
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-36364(P2019-36364)
(22)【出願日】2019年2月28日
(65)【公開番号】特開2020-137472(P2020-137472A)
(43)【公開日】2020年9月3日
【審査請求日】2019年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】506249509
【氏名又は名称】有限会社ヒカル・オーキッド
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】佐原 宏
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実公平6−02454(JP,Y2)
【文献】 登録実用新案第3166051(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3177547(JP,U)
【文献】 特開2004−121129(JP,A)
【文献】 実開昭53−65440(JP,U)
【文献】 実公昭58−11159(JP,Y2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0018114(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105309231(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/12
A01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑賞植物を植えるユニット鉢と、当該ユニット鉢の複数を容器内の所定位置に収容し上面開口を有する外側容器と、前記鑑賞植物の花茎を支えるための竪柱部および当該竪柱部の上部から前下がりに延在して前記鑑賞植物の花房を支えるための斜め柱部を有して成り前記ユニット鉢に配備されて前記鑑賞植物を支える支柱部材と、を備えて成、前記支柱部材の竪柱部が前記ユニット鉢の周壁に立設されていて、前記外側容器内の所定位置に収容された前記ユニット鉢を前記外側容器に着脱可能に固定する固定機構を備えている鉢集合システムであって、
前記固定機構は、前記ユニット鉢を前記外側容器に対して鉛直方向から所定角度傾けて固定するように構成されていることを特徴とする観賞植物用の鉢集合システム。
【請求項2】
前記固定機構は、前記ユニット鉢を前記外側容器に対して上下位置可変に固定するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の観賞植物用の鉢集合システム。
【請求項3】
前記複数のユニット鉢に立設された複数の支柱部材の中途位置および/または先端部に架け渡されて前記複数の支柱部材間の間隔を調整する間隔調整機構を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の観賞植物用の鉢集合システム。
【請求項4】
前記支柱部材が透明樹脂または半透明樹脂で構成されていて、前記支柱部材に向けて投光する光源が前記支柱部材に添設されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の観賞植物用の鉢集合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉢植された鑑賞植物を傷つけることなく見栄えの良い形に保持する鉢集合システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、胡蝶蘭に代表される洋ラン(鑑賞植物の例)は、バルブと称される塊茎から花茎を上向きに伸ばし、その先の花房の部分を前下がりにさせた美しい姿勢にされる。このような胡蝶蘭を支えるために、鉢内に立てられて花茎を支える竪柱部と、当該竪柱部の上端から延在して花房を支える前下がりの斜め柱部とから成る支柱部材が使用されている。このような支柱部材としては、例えば樹脂被覆鋼線などが使用されることが多い。また、胡蝶蘭は、3本組ないし5本組にした鉢物がよく出回っている。この場合、中央の胡蝶蘭の花房を高くし左右両側の花房を低く配置するとともに、左右の花房をいくぶん外方へ広げるように形決めすることにより全体の見栄えが良くなるとされている。
【0003】
そこで、胡蝶蘭を植生した小さなユニット鉢を3つ組み合わせて3本組の鉢物にしたものが、下記の特許文献1に記載されている。この鉢物では、外側容器内に板状の固定具が設置され、その固定具に形成された3つの開孔にそれぞれユニット鉢が嵌め込まれて略同じ高さで位置決め固定されている。各ユニット鉢では、鉢内に充填された苔類などの培地に胡蝶蘭が植生され、胡蝶蘭はその培地に差し込まれた支柱部材により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−244219号公報(明細書の段落[0014]および図1など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された鉢物では、高さの決まった支柱部材を用いているので、胡蝶蘭の生長につれて、高さの大きな支柱部材に逐次取り換えていかなければならない。そのために、用済み後の支柱部材の廃棄処理、新たに充当される支柱部材の部品コストおよび取り換えの手間を必要とし、栽培本数がかなり多い場合はこれらの手間とコストが大きな問題となる。また、支柱部材はユニット鉢内の培地に差し込まれるので、取り替えの際に胡蝶蘭の茎や根などを傷つけ、ひいては致命的な損傷を与えるおそれがあった。また、3つのユニット鉢は平板状の固定具に同じ高さで設置されるので、ユニット鉢ごとの胡蝶蘭の生長に違いがあった場合、3つの花房を理想的な高さに調整していくためには高度の熟練と豊富な経験を必要とする。そのように気をつけながら複数の胡蝶蘭を栽培していたとしても、そのうちの1本が他よりも大きく育ち過ぎたり小さ過ぎたりすることがある。そのような場合は、鉢物全体を毀損してしまうことになるので、手間ひまと費用が無駄になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、鑑賞植物を支えるために用いられる支柱部材が鑑賞植物の茎や根などを傷つけることのない鉢集合システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る観賞植物用の鉢集合システムは、鑑賞植物を植えるユニット鉢と、ユニット鉢の複数を容器内の所定位置に収容し上面開口を有する外側容器と、鑑賞植物の花茎を支えるための竪柱部および竪柱部の上部から前下がりに延在して鑑賞植物の花房を支えるための斜め柱部を有して成りユニット鉢に配備されて鑑賞植物を支える支柱部材と、を備えて成、支柱部材の竪柱部がユニット鉢の周壁に立設されていて、外側容器内の所定位置に収容されたユニット鉢を外側容器に着脱可能に固定する固定機構を備えている鉢集合システムであって、固定機構は、ユニット鉢を外側容器に対して鉛直方向から所定角度傾けて固定するように構成されていることを特徴とする構成にしてある。尚、本明細書および本特許請求範囲で云う「ユニット鉢」とは、外側容器よりも小径に形成されていてその複数鉢が外側容器内に収容され得る小型の鉢のことである
【0008】
また、前記構成において、固定機構は、ユニット鉢を外側容器に対して上下位置可変に固定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
そして、前記した各構成において、複数のユニット鉢に立設された複数の支柱部材の中途位置および/または先端部に架け渡されて複数の支柱部材間の間隔を調整する間隔調整機構を備えていることを特徴とするものである
【0010】
また、前記した各構成において、支柱部材が透明樹脂または半透明樹脂で構成されていて、支柱部材に向けて投光する光源が支柱部材に添設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る観賞植物用の鉢集合システムによれば、外側容器内の所定位置に収容されるユニット鉢の周壁に、支柱部材の竪柱部が立設されるので、支柱部材の竪柱部の下端が観賞植物の根や茎などを刺すといったことがなく、観賞植物の致命的な傷付きを確実に防止することができる
【0012】
そして、外側容器内の所定位置に収容されたユニット鉢を外側容器に着脱可能に固定する固定機構を備えているので、外側容器に対しユニット鉢を取付け・取外ししてユニット鉢の収容数を加減することにより、外側容器内に植生される観賞植物の本数を調整できるから、客先のニーズに応じて花勢やボリュームの異なる鉢物商品を提供することができる。
【0013】
更に、固定機構がユニット鉢を外側容器に対して鉛直方向から所定角度傾けて固定するように構成されているので、例えば左右に配置された観賞植物の上部を後ろ向きに傾けることにより花房の先端を上げて、中央に配置された観賞植物の花房に近づけるといったことにより、全体の花房のボリュームを大きくした豪華な鉢物を提供することができる。
【0014】
また、固定機構がユニット鉢を外側容器に対して上下位置可変に固定するように構成されているものでは、複数本の観賞植物の生長度合が互いに異なって、全体の見栄えが最良の配置からずれてきたような場合でも、外側容器に対するユニット鉢の上下配置を変えられるので、最良の見栄えに修正した観賞植物群を簡単確実に提供することができる。
【0015】
そして、複数のユニット鉢に立設された複数の支柱部材の中途位置および/または先端部に間隔調整機構が架け渡されているものでは、間隔調整機構が複数の支柱部材間の間隔を調整するので、間隔調整機構を支柱部材の中途位置に設ける場合は、支柱部材間を広くして観賞植物の見栄えを良くすることができる。一方、間隔調整機構を支柱部材の先端部に設ける場合は、支柱部材間を狭くして観賞植物の横幅全体を小さくできるから、商品搬送用箱に支障なく収容することができる
【0016】
また、透明樹脂製または半透明樹脂製の支柱部材に光源が添設されているものでは、光源からの光が支柱部材に投光されるので、支柱部材に照射された光は支柱部材中を透過して進み、支柱部材の途中や先端から外部に放射される。これにより、よりいっそう華美な観賞植物の鉢物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る観賞植物用の鉢集合システムを用いた胡蝶蘭の鉢物を正面から眺めた外観図である。
図2】前記鉢集合システムを示す正面図である。
図3】前記鉢集合システムを示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)におけるA−A線矢視断面図である。
図4】前記鉢集合システムの外側容器を示す斜視図である。
図5】前記外側容器を示す図であって、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は(c)におけるC−C線矢視断面図である。
図6】前記鉢集合システムのユニット鉢を示す斜視図である。
図7】前記ユニット鉢を示す図であって、(a)は背面図、(b)は平面図、(c)は(b)におけるD−D線矢視断面図である。
図8】前記鉢集合システムにおける固定機構の留め具を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図9】前記支柱部材の基柱体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
図10】前記支柱部材の延柱体を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)におけるE−E線矢視断面、(c)は(a)におけるF−F線矢視図、(d)は(a)におけるG−G線矢視図である。
図11】前記支柱部材の曲柱体を示す図であって、(a)は側面図、(b)は部分正面図、(c)は(a)におけるH−H線矢視図である。
図12】前記鉢集合システムの支柱部材を示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)におけるB−B線矢視断面図である。
図13】前記鉢集合システムの間隔調整機構を示す図であって、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は(a)におけるP−P線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、図1は本発明の一実施形態に係る鉢集合システムを用いた胡蝶蘭の鉢物を正面から眺めた外観図、図2は前記鉢集合システムを示す正面図、図3は前記鉢集合システムを示す図である。
図1に示すように、この実施形態に係る鉢物Jは、洋ランの一種である胡蝶蘭(鑑賞植物の例)と、胡蝶蘭の花茎Lおよび花房Kを支えて植生させる鉢集合システム1と、から構成されている。この胡蝶蘭はバルブ(葉が付いた茎を云う)を有していて、そのバルブは、鉢集合システム1の少なくとも3つのユニット鉢U内に敷き詰められたミズゴケや栽培土などといった含水支持層で植生されている。
ている。
【0019】
前記した鉢集合システム1は、図1図3に示すように、胡蝶蘭を植えるための複数のユニット鉢Uと、これらのユニット鉢Uを容器内の5つの所定位置11,11,11,11,11に収容し上面開口2Bを有する外側容器2と、胡蝶蘭を支えるために各ユニット鉢Uに立設された側面視天地逆略レの字状の支柱部材3と、各支柱部材3を外側容器2の周壁2Aに固定するための固定機構14と、支柱部材3の上下中途位置に架け渡されて支柱部材3,3,3間の間隔を調整する間隔調整機構19と、を備えている。前記の支柱部材3は、胡蝶蘭の花茎Lを支えるための竪柱部3Aと、竪柱部3Aの上部から前下がりに延在して胡蝶蘭の花房Kを支えるための斜め柱部3Bとを有している(図12参照)。そして、支柱部材3の竪柱部3Aはユニット鉢Uの周壁25の上縁4に立設されている。支柱部材3の竪柱部3Aおよび斜め柱部3Bを構成する各柱体は、伸縮機構46,46,46,46の存在により柱長手方向(矢印M方向)に伸縮自在となっている。また、支柱部材3は、全体が透明樹脂である例えばポリスチレンで構成されている。
【0020】
そして、この鉢集合システム1は固定機構14を備えている。この固定機構14は、外側容器2内に設けられた5つの所定位置11,11,11,11,11に収容されたユニット鉢Uを外側容器2の周壁2Aに着脱可能に固定するものである。この固定機構14としては、ユニット鉢Uをその鉢心を外側容器2に対して鉛直方向に向けて固定するものと、鉛直方向から所定角度θだけ傾けて固定するものとがある。また、全ての固定機構14は、ユニット鉢Uを外側容器2に対して上下位置可変に固定するようになっている。そして、支柱部材3に向けて投光する光源70が支柱部材3に添設されている。光源70は、例えば発光ダイオードを備えており電池を内蔵している。但し、外部電源からのコードを接続して光源70に給電するようにしてもよい。また、光源70としては、発光ダイオード以外に、例えばタングステン小型電球などを用いても構わない。
【0021】
各支柱部材3は、後で詳述するが、竪棒状の竪柱部3Aと、竪柱部3Aの上端で屈曲して前下がりに延在する斜め柱部3Bとから構成されている。竪柱部3Aは、その下端がユニット鉢Uの上縁4に設けられた係止枠部24,24に差し込まれて立てられ、その途中部分が胡蝶蘭の花茎Lの直立部分を支えるために粘着テープや紐などの固定具で花茎Lを固定している。斜め柱部3Bは、胡蝶蘭の花茎Lの前下がり部分を支えるために胡蝶蘭の該当部分を粘着テープや紐などの固定具で固定している。かかる支柱部材3は、耐久性、見栄え、入手容易性などの観点から例えばポリスチロール等の透明樹脂で構成されている。
【0022】
前記の外側容器2は、図4および図5に示すように、周壁2Aが平面視5枚花びら状で上面が開口した有底箱状に形成されている。外側容器2内には、ユニット鉢Uを設置するための5つの所定位置11,11,11,11,11が設定されており、これらの一部は底面36に立設された位置決め壁35により区画されている。周壁2Aの背面、前後中央の左右側部および前側の左右側部には、各所定位置11に内外連通する縦長の貫通孔33がそれぞれ形成され、各貫通孔33の両側縁の内側には内歯部32,32が形成されている。それぞれの貫通孔33および内歯部32,32は、固定機構14の一部分を構成する外側係合部34となっている。
【0023】
前記のユニット鉢Uは、図6および図7に示すように、平面視八角形状で上面が開口した周壁25を有する有底箱状に形成されている。外側容器2の底面26には、多数の通気口27,27,27,・・・が穿設されており、鉢内に敷き詰められたミズゴケや栽培土などといった含水支持層に対する通気や余剰水排出の役目を果たしている。周壁2Aの背面および前後中央の左右側部には縦長の貫通孔22,22,22が形成され、各貫通孔22の両側縁の外側には外歯部21,21が形成されている。それぞれの貫通孔22および外歯部21,21は、固定機構14の一部分を構成するユニット係合部23Aまたはユニット係合部23Bとなっている。この場合、ユニット係合部23Aを構成する背面側の貫通孔22および外歯部21,21は鉛直方向に沿って形成されている。一方、ユニット係合部23Bを構成する左右の貫通孔22および外歯部21,21はそれぞれ鉛直方向から所定角度θだけ傾斜して形成され、その傾斜方向は外歯部21の上部が前倒しとなる向きである。そして、ユニット係合部23Aを挟む背部位置で周壁25の上縁4近傍には、支柱部材3の基柱体5を立設するための係止枠部24,24が設けられている。
【0024】
固定機構14の一部分を構成する留め具15は、図8に示すように、背面視矩形状の基板28と、基板28の前面に突設された側面視天地逆Lの字状の掛止片29と、掛止片29の内方位置で基板28の前面に突設された支持突起30と、から構成されている。掛止片29の先端と基板28との間は、外側容器2の周壁2Aおよびユニット鉢Uの周壁25を通せる開口幅の差込口31となっている。すなわち、上記した固定機構14は、外側容器2の外側係合部34と、ユニット鉢Uのユニット係合部23Aまたは23Bと、留め具15と、から構成されている。
【0025】
前記した基柱体5は、図9に示すように、正面視天地逆Yの字状に形成されていて、柱本体42,42の上部に縦長のガイド溝部43が形成されている。柱本体42,42の下端には、ユニット鉢Uの係止枠部24,24に装着されて固定される係止脚部44,44が設けられている。
【0026】
前記した延柱体6は、図10に示すように、一端側にガイド溝部43を有し他端側にガイドレール部45を一体に有する棒状体として形成されている。これらのガイド溝部43とガイドレール部45は、他の部品に設けられたものも構造は共通している。前記のガイド溝部43は、図10(c)の平面図でも示されるように、両側の側壁部52,52の末端部が架橋部48でつながれ、側壁部52,52の末端部にある溝縁部49,49の間には柱長手方向に延びる開口部50が形成されている。前記のガイドレール部45は、図10(d)の底面図でも示されるように、ガイド溝部43溝縁部49,49とつながった基体部53と、基体部53の左右方向中央部から突出して形成された連結部54と、連結部54の先端部に設けられて柱長手方向に延びるレール部55と、レール部55の先端に突設された抜け止め突起56と、から構成されている。連結部54は、ガイド溝部43の開口部50内を柱長手方向に移動自由な板厚に形成されている。前記のレール部55は、ガイド溝部43の溝内部51に移動自由に装入されるとともに開口部50からは抜脱不能な寸法・形状に形成されている。
【0027】
前記した曲柱体7は、図11に示されるように、鉛直方向に立ち上がる部位およびこの立ち上がり部位から湾曲して前下がりに延在する部位から成る柱本体57と、柱本体57の立ち上がり部位の下端に設けられたガイドレール部45と、柱本体57の前下がり部位の先端に設けられたガイドレール部45と、柱本体57の立ち上がり部位に突設された掛止用凸片40,40,40,41,41と、を備えている。柱本体57の立ち上がり部位の上部には突片10が設けられ、前下がり部位の上部にも突片12が設けられている。これらの突片10,12には補強腕9が架け渡されて曲り部位の補強がなされる。ガイドレール部45,45の両端には抜け止め突起56,56が突設されている。掛止用凸片40,40間または掛止用凸片41,41間には、後述する間隔調整機構19のスライド腕61の止め板部67を掛止するための保持位置13が、それぞれ設定されている。
【0028】
前記した支柱部材3は、図12に示すように、竪柱部3Aと斜め柱部3Bとから構成されている。前記の竪柱部3Aは、側面視で縦直線状の基柱体5と、基柱体5の上端に連結される延柱体6と、延柱体6の上端に連結される曲柱体7の一部分とから構成されている。前記の斜め柱部3Bは、曲柱体7の残り部分と、曲柱体7の先端に連結される延柱体6と、延柱体6の先端に連結される先柱体8とから構成されている。前記の先柱体8は先端側に先端部47を有し他端側にガイド溝部43を一体に有する棒状体として形成されている。そして、竪柱部3Aと斜め柱部3Bの境界部分には補強腕9が架け渡されて補強されている。また、基柱体5と延柱体6との間、延柱体6と曲柱体7との間、曲柱体7と延柱体6との間、延柱体6と先柱体8との間には、それぞれ伸縮機構46が配備されており、隣合う柱体を柱長手方向(矢印M方向)に進退させて伸縮可能にしている。これらの伸縮機構46は、ガイド溝部43とガイドレール部45との係合構造で構成される。これらのガイド溝部43とガイドレール部45は相互に柱長手方向に摺動可能であるが、力を加えない限り摩擦力によってその位置で静止しており、胡蝶蘭の生長力程度では摺動しない。但し、その静止位置で粘着テープなどを用いて仮止めしておいても構わない。
【0029】
前記した間隔調整機構19は、図13に示すように、上下2段のガイド溝部63A,63Bを有する横長の本体基板62から成る機構本体60と、機構本体60のガイド溝部63Aに左右方向(矢印N方向)摺動自在に装入される上側のスライド腕61と、機構本体60のガイド溝部63Bに左右方向摺動自在に装入される下側のスライド腕61と、から構成されている。本体基板62の上側のガイド溝部63Aの一端部にはスライド腕61の長板部64を摺動自在に抜け止め保持する係止用凹部68Aが形成され、ガイド溝部63Aの他端部にもスライド腕61の長板部64を摺動自在に保持する抜け止め溝部69Aが形成されている。本体基板62の下側のガイド溝部63Bの一端部にはもう一方のスライド腕61の長板部64を摺動自在に保持する抜け止め溝部69Bが形成され、ガイド溝部63Bの他端部にもスライド腕61の長板部64を摺動自在に抜け止め保持する係止用凹部68Bが形成されている。前記した上下のスライド腕61はいずれも、長尺板状の長板部64と、長板部64の片面上に板長手方向に沿って延びる突条65と、突条65の途中に形成された外歯部66と、長板部64の先端部64A近傍の突条65に形成された抜け止め突起65Aと、長板部64の他端部に形成されていて支柱部材3に掛止される止め板部67と、から構成されている。
【0030】
上記のように構成された観賞植物用の鉢集合システム1の作用を次に説明する。
まず、個々のユニット鉢Uについて、支柱部材3の基柱体5の係止脚部44,44がユニット鉢Uの係止枠部24,24に差し込まれて基柱体5がユニット鉢Uに立設される。このとき、基柱体5の上端に延柱体6を連結しておいてもよい。そして、ユニット鉢U内に含水支持層が充填され、その含水支持層内に胡蝶蘭のバルブが置かれる。バルブから伸びた花茎Lは粘着テープや紐などの固定具で基柱体5や延柱体6に留められて支持される。
【0031】
そうして、3つのユニット鉢U,U,Uが外側容器2の上面開口2Bから容器内に入れられて後部および左右の所定位置11,11,11に配置され、ユニット係合部23A,23Bの外歯部21,21,21が外側容器2の内歯部32,32,32に噛合される。そして、3つの留め具15,15,15が各貫通孔33および各貫通孔22を通されて周壁2Aおよび周壁25に係止される。これによって、ユニット容器U,U,Uが外側容器2内で周壁2Aに固定される。この場合、左右のユニット鉢U,Uの外歯部21,21は鉛直方向に対し角度θぶん傾斜しているので、固定されたユニット鉢U,Uはそれぞれの上部が後方に角度θぶん傾いた姿勢になる。そして、胡蝶蘭の花茎Lが伸びていったときに、基柱体5と延柱体6の間の伸縮機構46を操作し、基柱体5のガイド溝部43から延柱体6のガイドレール部45を引き出すことにより、延柱体6を上方に延ばしてやる。これにより、新たな支柱部材を用意して取り替えなければならないといったことがなく、胡蝶蘭の生長に追従させて胡蝶蘭の花茎Lを支持することができる。
【0032】
次に、延柱体6の上端のガイド溝部43に曲柱体7の直線部分のガイドレール部45を装着して連結しておく。そのうち、胡蝶蘭が更に生長して花房Kが出始めると、作業者は花茎Lを前向きに折り曲げていき、花房Kを曲柱体7の前下がり部分に固定具などで固定する。このとき、間隔調整機構19のスライド腕61,61を機構本体60から左右に引き出して固定し、スライド腕61,61の止め板部67,67を左右の支柱部材3,3の保持位置13,13に装着して係止させる。これにより、左右の胡蝶蘭の花茎L,Lは左右外向きに広がった状態に維持されて生育する。そうして、更に胡蝶蘭が生長すると、竪柱部3A側の延柱体6と曲柱体7の間の伸縮機構46が伸ばされたり、曲柱体7の前下がり先端のガイドレール部45に延柱部6のガイド溝部43が装着されて延ばされたりする。最終的には、延柱体6の先端に先柱体8が連結されて花房Kの先端を支持する。
【0033】
ところで、宅配便で配送可能な配送用箱は、決まったサイズが規定されている。すなわち、配送用箱のサイズ規格は、奥行D+横幅W+高さHの合計が160cm以下と規定されている。例えば、鉢物Jを支障なく収容可能な配送用箱の高さを85cmとし奥行を35cmにすると、横幅は40cm未満となる。前記の配送用箱内に鉢物Jを収容しようとすると、鉢物Jの両側の花房K,Kの左右外端間を30cm程度と、かなり狭めなければならない。そこで、左右両側の支柱部材3,3の先端部47,47間に、もう一つ別の間隔調整機構19が架け渡されてスライド腕61,61が縮められ、矢印Q,Qのように先端部47,47の間隔が狭められる(図2中の2点鎖線で示す符号47参照)。これにより、花房K,Kの左右外端間が30cm未満にされる。
【0034】
この状態の鉢物Jが配送用箱内に収容されて梱包され、宅配便などで客先に配送される。配送用箱内の鉢物Jは、左右の斜め柱部3B,3Bの間隔が間隔調整機構19により狭められているので、左右の花房K,Kが配送用箱の内壁に接して傷むといったこともない。そうして、配送後に開梱して栽培したり展示したりする際には、保持部材3,3間の間隔が、竪柱体3Aの間隔調整機構19の操作により鉢物Jを見栄え良くするような間隔に広げられるのである。
【0035】
上記したように、この実施形態に係る鉢集合システム1によれば、外側容器2内の所定位置11,11,11に収容されるユニット鉢U,U,Uの周壁に、支柱部材3の竪柱部3Aが立設されるので、支柱部材の竪柱部3Aの基柱体5の下端部が胡蝶蘭の根、茎、葉を刺すといったことがなく、胡蝶蘭の致命的な傷付きを確実に防止できる。また、支柱部材3の竪柱部3Aおよび斜め柱部3Bに伸縮機構46が配備されているので、胡蝶蘭の花茎Lおよび花房Kの生長に応じて支柱部材3の竪柱部3Aおよび斜め柱部3Bの長さを適宜に調整することができる。従って、胡蝶蘭が生長するたびに、より大きな支柱部材を用意して取り換える手間と新たな支柱部材を必要としない。特に、栽培される胡蝶蘭の本数が多くなればなるほど、それらの効果は大きくなる。また、3本の胡蝶蘭に生長の差が生じてきた場合でも、各支柱部材3の伸縮機構46を操作して各花房Kの高さと前後寸法を調整することにより、常に理想的な外観の鉢物Jを提供できる。
【0036】
そして、外側容器2内の所定位置11にユニット鉢Uを着脱可能に固定する固定機構14を備えているので、外側容器2に対して取付け・取外ししてユニット鉢Uの収容数を加減することができ、外側容器2内に植生される胡蝶蘭の本数を調整できるから、客先のニーズに応じて花勢やボリュームの異なる鉢物Jを提供できる。また、固定機構14はユニット鉢Uを所定角度θぶん傾けて固定できるので、例えば左右にある胡蝶蘭の上部を後ろ向きに傾けて花房Kの前端を上げ、中央にある胡蝶蘭の花房Kの高さに近づけることにより、全体の花房K,K,Kのボリュームを大きくした豪華な鉢物Jを提供できる。そして、固定機構14はユニット鉢Uを上下位置可変に固定できるので、複数本の胡蝶蘭の生長度合が互いに異なっていて、全体の見栄えが最良の配置からずれてきたような場合でも、ユニット鉢U,U,Uの上下配置を変えられるので、最良の見栄えに修正した胡蝶蘭を簡単に提供できる。また、1本の胡蝶蘭が他と比べて極端に大きく生長したり逆に小さ過ぎたりした場合でも、固定機構14を操作し、その不都合な胡蝶蘭のユニット鉢Uを取り出して、適切に育った胡蝶蘭のユニット鉢Uに取り替えできる。これにより、鉢物J全体を好適な見栄えのものに回復させることができる。
【0037】
そして、間隔調整機構19が3本の支柱部材3,3,3間に架け渡されているので、間隔調整機構19が複数の支柱部材3,3間の間隔を調整することができる。ここで、間隔調整機構19を支柱部材3の柱長手方向の中途位置に設ける場合は、支柱部材3,3間を広くして胡蝶蘭の見栄えを良くすることができる。他方で、間隔調整機構19を支柱部材3,3の先端部47,47間に取り付ける場合は、先端部47,47間を狭くして胡蝶蘭の横幅全体を小さくできるから、商品搬送用箱に支障なく収容できる。
【0038】
すなわち、図2図3に示したような鉢集合システム1を用いることにより、左右の胡蝶蘭の花房K,Kが中央の胡蝶蘭の花房Kよりも低く、左右の花房K,Kが左右外向きに広がり、左右の花房K,Kの先端が上がって3つの花房K,K,Kの高さが揃うといった、図1に示したような理想的な形態の鉢物Jを、熟練度や経験に乏しい作業者であっても容易かつ確実に作り上げることができる。
【0039】
他方で、支柱部材3は安価なポリスチロールで構成されているので光を通すから、支柱部材3が目立たず花茎Lや花房Kを隠すこともなく、胡蝶蘭の美しさをそのまま表わすことができる。そして、この支柱部材3に光源70が添設されているので、光源70から支柱部材3に照射された光は支柱部材3中を透過して進み、支柱部材3の途中部位や先端部47から外部に放射される。これにより、よりいっそう華美な胡蝶蘭の鉢物Jを提供することができる。また、このような樹脂製の支柱部材3は用済み後に細かく裁断されて問題無く焼却処理に付され得る。
【0040】
尚、上記の実施形態では、竪柱部3Aおよび斜め柱部3Bの双方に伸縮機構46を設けた例を示したが、本発明はそれに限定されるものでない。例えば、伸縮機構46を竪柱部3Aのみまたは斜め柱部3Bのみに設けたものも、本発明に含まれる。いずれの場合でも、鑑賞植物の生長に応じて竪柱部3Aまたは斜め柱部3Bを伸長させることができる。
そして、上記では、支柱部材3の透明樹脂を、安価で入手しやすいポリスチレンを例示したが、例えばポリメタクリル酸エステルやポリアクリル酸エステルその他の合成樹脂を用いても構わない。あるいは支柱部材として半透明樹脂を用いても、光源70からの光が部材内で拡散し各部位で放射され得るので、好適に用いることができる。無論、本発明に係る支柱部材の材料として、アルミニウムその他の金属を用いてよい。
【0041】
また、上記では、鑑賞植物として洋ランの一種である胡蝶蘭を例示したが、胡蝶蘭以外に、シンビジウム、テンドロビウム、デンファレなどを本発明の鑑賞植物として用いても構わない。
【0042】
そして、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 鉢集合システム
2 外側容器
2A 周壁
2B 上面開口
3 支柱部材
3A 竪柱部
3B 斜め柱部
4 上縁
11 所定位置
14 固定機構
15 留め具
19 間隔調整機構
21 外歯部
22 貫通孔
23A,23B ユニット係合部
24 係止枠部
25 周壁
32 内歯部
33 貫通孔
34 外側係合部
43 ガイド溝部
44 係止脚部
45 ガイドレール部
46 伸縮機構
47 先端部
60 機構本体
61 スライド腕
66 外歯部
68A,68B 係止用凹部
70 光源
J 鉢物
K 花房
L 花茎
M 矢印
N 矢印
Q 矢印
U ユニット鉢
θ 所定角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13