(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1,3に示すように、本発明の第1の実施形態に係る電気接続部材10は、導電部材11と、固着部材15とを備える。固着部材15は、導電部材11を接続対象部材に接触させ、かつ導電部材11の厚さ方向Zに圧縮させた状態に保持させる。なお、厚さ方向Zは、電気接続部材10が、接続対象部材に接続される際に導通する方向に一致する方向であり、固着部材15や後述する連結部材18の厚さ方向にも一致する。
【0011】
本実施形態では、導電部材11が、厚さ方向Zに25%圧縮した際の圧縮応力(以下、「第1の圧縮応力」ともいう)が、1.0N/mm
2以上15.0N/mm
2以下となるものである。また、固着部材15は、厚さ方向Zに沿う方向に96kPaで30分間引っ張った際の伸び量が400μm以下となるものである。
本実施形態では、導電部材11の第1の圧縮応力及び固着部材15の厚み方向Zに沿う方向の伸び量が、上記範囲内となることで、導電部材11が適度な力で接続対象部材に押さえ付けられた状態で、固着部材15により長期間保持させることが可能になる。そのため、長期間使用しても電気接続部材10や、電気接続部材10によって取り付けられる端子が、接続対象部材から剥がれたり、電気抵抗が大きくなって温度上昇が生じたりする不具合が生じにくくなる。
【0012】
一方で、上記第1の圧縮応力が1.0N/mm
2未満となると、導電部材11が適度に圧縮されても接続対象部材を十分な力で押圧できなくなるので、接続対象部材に対する接続が不十分となって電気抵抗が大きくなる。また、圧縮応力が15.0N/mm
2を超えると、圧縮された導電部材11の接続対象部材に対する反発力が高くなりすぎて、電気接続部材10や、電気接続部材10によって取り付けられる端子が剥がれるなどの不具合が生じる。
さらに、固着部材15の上記伸び量が400μmを越えると、使用により固着部材15が加熱されたり、内圧が掛かり続けたりすると、固着部材15の厚みを一定以下に維持することが難しくなり、接続対象部材に対する導電部材11の接続が不十分となる。そのため、導電部材11の電気抵抗が大きくなって、温度上昇が起こる。
【0013】
上記第1の圧縮応力は、1.5N/mm
2以上が好ましく、2.0N/mm
2以上がより好ましく、2.5N/mm
2以上がさらに好ましい。導電部材11の第1の圧縮応力を上記下限値以上とすると、電気接続部材10の接続対象部材に対する押圧力がより適切となり、長期間使用しても、電気抵抗が高くなることで温度上昇が生じるのを有効に防止できる。
また、第1の圧縮応力は、12N/mm
2以下が好ましく、8.0N/mm
2以下がより好ましく、5.0N/mm
2以下がさらに好ましい。第1の圧縮応力をこれら上限値以下とすると、反発力により電気接続部材10が接続対象部材から剥がれることをより抑制できる。
【0014】
また、固着部材15の上記伸び量は、340μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、95μm以下がさらに好ましい。伸び量をこれら上限値以下とすることで、電気接続部材10を長期間使用しても、電気抵抗が高くなって温度上昇が生じることを防止できる。固着部材15の伸び量は、特に限定されないが、後述する粘着剤層の粘着性を適切に確保する観点から、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。
なお、本実施形態において固着部材15は、後述するように、複数設けられるが、そのような場合、各固着部材が上記伸び量を有するとよいが、別の実施形態で示すように1つしか設けられない場合には、その1つの固着部材が上記した伸び量を有するとよい。また、本実施形態の固着部材は、後述するように基材と基材の両面に設けられた両面粘着テープであるが、基材を含んだ1つの両面粘着テープを,1つの固着部材として伸び量を測定する。固着部材は粘着剤層単独で構成されてもよく、その場合には、粘着剤層の伸び量を測定するとよい。
【0015】
さらに、本実施形態では、導電部材11は、厚さ方向に圧縮して、25%圧縮変形させた状態に105℃で22時間保持した後、印加された荷重を取り除き、圧縮応力を解放し、再び厚さ方向に25%圧縮した際の圧縮応力(以下、第2の圧縮応力ともいう)が、0.5N/mm
2以上6.0N/mm
2以下となるものでもよい。
本発明では、導電部材11の第2の圧縮応力の伸び量が、上記範囲内となることで、導電部材11は長期間使用後でも一定の圧縮応力を有することが可能になり、長期間使用後に剥がれが生じたり、電気抵抗が高くなったりすることを防止できる。なお、第2の圧縮応力が上記範囲内である場合の固着部材15の上記伸び量も上記で述べたとおりである。
【0016】
第2の圧縮応力は、0.6N/mm
2以上が好ましく、0.7N/mm
2以上がより好ましく、0.8N/mm
2以上がさらに好ましい。導電部材11の第2の圧縮応力を上記下限値以上とすると、長期間使用後でも、電気接続部材10の接続対象部材に対する押圧力が適切となり、また、電気抵抗が高くなって温度上昇が生じるのを防止できる。
また、第2の圧縮応力は、5.0N/mm
2以下が好ましく、3.0N/mm
2以下がより好ましく、1.8N/mm
2以下がさらに好ましい。第2の圧縮応力をこれら上限値以下とすると、反発力により電気接続部材10が接続対象部材から剥がれることを抑制しやすくなる。
【0017】
導電部材11は、上記第1及び第2の圧縮応力のいずれか一方が、上記所定の範囲内であるとよいが、少なくとも第1の圧縮応力が上記所定の範囲内であることが好ましく、第1及び第2の圧縮応力の両方が上記範囲内であることが好ましい。
なお、本発明において、第1及び第2の圧縮応力、及び固着部材の導電方向Zに沿う方向の伸び量は、後述する実施例記載の方法で測定できる。
【0018】
本実施形態の電気接続部材10は、導電部材11と、固着部材15とを連結させる連結部材18をさらに備える。導電部材11と固着部材15は、連結部材18により一体化され、電気接続部材10を構成する。また、連結部材18には、貫通孔18Aが設けられる。導電部材11は、貫通孔18A内部に挿入されて連結部材18に固定される。
【0019】
以下、電気接続部材10を構成する各部材についてさらに詳細に説明する。
(導電部材)
導電部材11は、導電性を有する導電部12を備える。導電部12は、導電性ゴム状弾性体から構成される。導電部12を構成する導電性ゴム状弾性体は、より具体的には、
図1に示すように、ゴム状弾性体の内部に多数の導電性フィラー12Bが含有される。
導電性フィラー12Bは、好ましくは電気接続部材10の厚さ方向に連続するように配列している。導電性フィラー12Bは、より好ましくは、磁性を有し、かつ磁場印加により厚さ方向Zに連鎖的に配列される。導電性フィラー12Bを厚さ方向Zに連続するように配列させることで、上記した25%圧縮時の圧縮応力を低くしつつも、低電気抵抗を実現することが可能である。
【0020】
導電部12は、通常、柱状に形成される。柱状の断面形状は、特に限定されず、円形でもよいし、四角形などの多角形もよいが、円形が好ましい。柱状の導電部12には、その外周を取り巻くように筒状の絶縁部13が設けられ、絶縁部13と導電部12とは、一体となって導電部材11を構成する。
【0021】
絶縁部13は、絶縁性のゴム状弾性体から構成される。すなわち、導電部材11は、ゴム状弾性体によって一体的に形成されるとともに、
図1に示すように、その中央部分に厚さ方向に連続するように配列された導電性フィラー12Bを有する。なお、
図1に示すように、導電部材11は、厚さ方向Zに沿って外径が異なってもよい。導電部材11は、例えば
図1に示すように、その両端面(上面11A、下面11B)の外径が、その間の部分の外径よりも小さくなる。このように、導電部材11は、両端面11A、11Bの外径が小さいと、両端面11A,11Bが厚さ方向Zに沿って圧縮しやすくなる。
【0022】
導電部12は、25%圧縮時の電気抵抗が100mΩ以下であることが好ましい。電気抵抗が100mΩ以下となると、大電流が流されても導電部12が発熱しにくくなる。そのような観点から上記電気抵抗は、20mΩ以下がより好ましい。また、上記電気抵抗は、材料などの制約から、通常は0.1mΩ以上となる。
25%圧縮時の電気抵抗は、導電部12を25%圧縮した状態で、定電流源から発生させた電流を導電部12に通して電圧を計測し、電気抵抗値を算出することにより得ることができる。
【0023】
本実施形態において、電気接続部材10は、複数の導電部材11を有する。導電部材11が複数設けられることで、後述する端子が、導電層などの接続対象部材に複数の導電部材11を介して電気的に接続されることになる。したがって、端子と接続対象部材との間に大電流を流しても、各導電部材11の電気抵抗が低く抑えられ、それにより、導電部材11における温度上昇を抑制しやすくなる。また、導電部材11を複数設けると、各導電部材11を小さくできる。そのため、複数の導電部材11全体を圧縮する際の荷重が低くなるので、導電部材11の反発力によって端子が剥がれにくくなる。
【0024】
導電部材11は、例えば、
図3に示すように、一列に並べられた複数(
図3では2個)の導電部材11が、複数列(
図3では2列)並べられる。複数の導電部材11同士の間隔は、好ましくは0.5mm以上200mm以下、より好ましくは1mm以上50mm以下である。導電部材11同士の間隔をこれら範囲内とすることで、電気接続部材10の大きさを必要以上に大きくすることなく、隣接する導電部材11、11間の絶縁性を確保できる。なお、導電部材11同士の間隔とは、各導電部材11の最も近接する導電部材11との間の最短距離を意味する。
【0025】
導電性フィラー12Bは、上記したとおり、磁性導電性フィラーであることが好ましい。磁性導電性フィラーの材質としては、ニッケル、コバルト、鉄、フェライト、又はこれらの合金が挙げられ、形状としては粒子状、繊維状、細片状、細線状などである。さらに良電性の金属、樹脂、セラミックに磁性導電体を被覆したもの、磁性導電体に良電性の金属を被覆したものとしてもよい。良電性の金属には、金、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄、パラジウム、クロム、ステンレスなどが挙げられる。
導電性フィラー12Bの平均粒径は、磁場印加によって連鎖状態を形成し易く、効率よく導体を形成することができる点で、1〜200μmとすることが好ましく、5〜100μmとすることがより好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた導電性フィラーの粒度分布において、体積積算が50%での粒径(D50)を意味する。導電性フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
導電部12における導電性フィラー12Bの充填率は、例えば25〜80体積%、好ましくは、30〜75体積%である。これら範囲内とすることで、導電部12に一定の強度を付与しつつ導電性を確保できる。なお、充填率とは、導電部12の全体積に対する導電性フィラー12Bの体積割合を意味する。
【0027】
一方で、絶縁部13は、通常、導電性フィラー12Bを含有せず、絶縁部13における導電性フィラーの充填率は、通常0体積%である。ただし、絶縁部13には、絶縁性を損なわない範囲内において、その製造過程などにおいて不可避的に混入される導電性フィラー12Bが少量含有されていてもよい。したがって、例えば、絶縁部13における導電性フィラーの充填率は5体積%未満であってもよく、好ましくは1体積%未満である。
【0028】
また、導電部を構成するゴム状弾性体としては、熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマーなどが例示できる。熱硬化性ゴムは、加熱により硬化して、架橋されるゴムであり、具体的には、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、成形加工性、電気絶縁性、耐候性などが優れるシリコーンゴムが好ましい。
【0029】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ化系熱可塑性エラストマー、イオン架橋系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
ゴム状弾性体は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、絶縁部13を構成するゴム状弾性体としても、熱硬化性ゴム、熱可塑性エラストマーなども使用すればよく、その具体例、好ましい例は上記で説明したとおりである。絶縁部13を構成するゴム状弾性体も、同様に1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記のように、絶縁部13及び導電部12を構成するゴム状弾性体は、一体的に形成されることが好ましい。したがって、絶縁部13及び導電部12を構成するゴム状弾性体は同じ種類のものを使用することが好ましく、絶縁部13及び導電部12を構成するゴム状弾性体は、いずれもシリコーンゴムであることがより好ましい。
【0031】
ゴム状弾性体は、導電性フィラーを磁場印加などにより厚さ方向に配列しやすくする観点から、液状ゴムを硬化したもの、又は、加熱溶融可能なものであることが好ましい。なお、液状ゴムは、硬化前には常温(23℃)、常圧(1気圧)下で液体となるものであり、具体的なゴムは、熱硬化性ゴムとして列挙したものの液状ゴムを使用すればよく、中でも液状シリコーンゴムが好ましい。また、加熱溶融可能なものとしては、熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0032】
導電部12の硬度は、30〜87が好ましく、40〜85がより好ましく、60〜80がさらに好ましい。上記範囲内とすることで、導電部材の25%圧縮した際の圧縮応力を所望の範囲内に調整しやすくなる。同様の観点から、絶縁層11の硬度は、20〜50が好ましく、25〜40がより好ましい。
なお、導電部12の硬度は、JIS K6253−3:2012に記載される「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−硬さの求め方−第3部:デュロメータ硬さ」に準拠して、タイプAデュロメータを用いて23℃で測定されたものである。
【0033】
導電部材11における導電部12の直径は、例えば1.0〜6.0mmである。導電部12の直径を上記範囲内とすると、25%圧縮時の電気抵抗を所定の範囲内にしやすくなる。その結果、圧縮時に導電部材11の上面11Aと下面11Bの間に、大電流を流しても、導電部材11の温度上昇を抑制できる。これら観点から、導電部12の直径は、好ましくは1.0〜3.0mmであり、より好ましくは1.5〜2.6mmである。なお、導電部12の直径は、厚さ方向において異なる場合には、上面11Aにおける導電部12の直径と、下面11Bにおける導電部12の直径の平均値を意味する。また、本明細書において直径とは、円以外の場合、その面積と等しい面積を有する円の直径として算出できる。
【0034】
導電部12の直径は、導電部材11の直径に対して、35〜97%であることが好ましい。35%以上とすることで、電気抵抗を十分に低くすることができ、97%以下とすることで、導電部材11に適切な弾性を付与できる。これら観点から、導電部12の直径の導電部材11の直径に対する割合は、50%以上がより好ましく、55%以上がさらに好ましく、よりさらに好ましくは60%以上であり、また、95%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。このような比率とすることで、大電流を流すことが可能でありながらも、長期間にわたってゴム弾性が維持されやすくなり、より一層安定した導通が可能になる。なお、導電部材11の直径は、厚さ方向において異なる場合には、上面11Aにおける直径と、下面11Bにおける直径の平均値を意味する。
【0035】
導電部材11の直径は、特に限定されないが、例えば、1.1〜8.0mm、好ましくは1.1〜6.0mm、さらに好ましくは1.8〜5.0mmである。
さらに、導電部材11の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.2〜1.5mmであることが好ましく、0.3〜1.2mmであることがより好ましい。導電部材11は、厚みを上記範囲内とすることで、後述する固着部材15によって、圧縮された状態に保持されやすくなる。
導電部材11は、厚さ方向に圧縮された状態に保持されて使用されるとき、その圧縮率は、特に限定されないが、例えば5〜40%、好ましくは10〜35%、さらに好ましくは15〜30%である。なお、圧縮率は、荷重が作用されない状態における導電部材11の厚みをH0、使用時の圧縮された導電部材11の厚みをH1とすると、(H0−H1)/H0の式にて算出でできる。
【0036】
(固着部材)
固着部材15は、導電部材11の導電部12を接続対象部材に接触させ、かつ厚さ方向に圧縮させた状態に導電部材11を保持させるものである。また、固着部材15は、電気接続部材10の両面を、他の部材に接着できるようにするための部材であり、より具体的には、連結部材18の両面18X、18Yそれぞれに設けられる固着部材15A、15Bを備える。
電気接続部材10は、固着部材15を有することで、端子と導電層などの接続対象部材との間などを電気的に接続させつつ、接続対象部材が設けられる被取付部材(例えば、ガラス板)に端子を確実かつ容易に固定させることが可能になる。
【0037】
本実施形態において、固着部材15(すなわち、各固着部材15A、15B)は、複数の導電部材11を取り囲むように形成されており、枠状に形成される。なお、
図3では、連結部材18は、四角形に形成されるので、その形状に合わせて、固着部材15(各固着部材15A、15B)は四角枠形状に形成されるが、形状は四角枠形状に限定されずいかなる形状であってもよい。
【0038】
また、固着部材15(すなわち、各固着部材15A、15B)と、各導電部材11との間隔はいずれもが、例えば、0.1〜10.0mm、好ましくは0.5〜5.0mmである。なお、上記間隔とは、各導電部12と、固着部材15それぞれとの最短距離である。これら間隔がいずれも上記範囲内とすることで、各導電部12に均一に圧力が付勢されやすくなる。また、上記間隔は、互いに近接する値であることが好ましい。したがって、固着部材15(すなわち、各固着部材15A、15B)と、各導電部材11との間隔の最小値に対する最大値が、好ましくは3倍以下、より好ましくは2倍以下、さらに好ましくは1.5倍以下である。
固着部材15の厚みは、例えば、40〜500μm、好ましくは60〜400μm、より好ましくは100〜300μmである。固着部材15の厚みが上記上限値以下となることで、環境温度上昇や、内圧がかかり続けた状態でも、導電部の抵抗変化を抑制する。また、剛体同士(例えば、端子と被取付部材)を貼り合わせるためにテープの柔軟性を確保している。一方で、下限値以上とすることで一定の粘着性を確保できる。
固着部材15の幅は、例えば、1〜30mm、好ましくは3〜20mm、より好ましくは5〜15mmである。固着部材15の幅が上記範囲内とすることで、貼り付け性を確保しつつ、実使用における各固着部材の厚さ方向への伸びを抑制できる。
【0039】
各固着部材15A,15Bは、少なくとも粘着剤から構成される粘着剤層を備え、本実施形態では、
図1に示すように、基材16Aと、基材16Aの両面に設けられた粘着剤層16B,16Cを備える両面粘着テープである。このように基材を有する両面粘着テープは、一方の粘着剤層16Bを介して連結部材18に接着され、他方の粘着剤層16Cが他の部材に接着させるために使用される。本実施形態の固着部材15A,15Bは、基材16Aを有することで、厚みが大きくなっても、厚さ方向の伸び量を上記した所定の範囲内に調整しやすくなる。
基材16Aの厚みは、例えば10〜300μmであり、好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは25〜150μmである。基材16Aの厚みを上記範囲内とすることで、固着部材15の機械的強度が得られる。
各粘着剤層16B,16Cの厚みは、例えば5〜100μmであり、好ましくは10〜60μm、さらに好ましくは15〜50μmである。各粘着剤層16B,16Cの厚みを上記範囲内とすることで、貼り付け性を確保しつつ、各固着部材の厚さ方向への伸び量を抑制できる。
【0040】
固着部材15(各固着部材15A、15B)は、複数の両面粘着テープを重ねる構成とすることができる。例えば、
図2(a)に示すように、一方の固着部材15Bが両面粘着テープである固着部材15B
1,15B
2を2枚重ねる構成としてもよい。固着部材15B
1,15B
2は、基材16A
1,16A
2と、基材16A
1,16A
2の両面に設けられた粘着剤層16B
1,16B
2,16C
1,16C
2を備える両面粘着テープである。また、
図2(b)に示すように、固着部材15Bと同様に、固着部材15Aも両面粘着テープである固着部材15A
1,15A
2を2枚重ねる構成としてもよい。固着部材15A
1,15A
2は、基材16A
1,16A
2と、基材16A
1,16A
2の両面に設けられた粘着剤層16B
1,16B
2,16C
1,16C
2を備える両面粘着テープである。
基材16A
1,16A
2の厚みは、例えば5〜50μmであり、好ましくは10〜45μm、さらに好ましくは15〜40μmである。基材16A
1,16A
2の厚みを上記範囲内とすることで、固着部材15の柔軟性を向上させることができる。
各粘着剤層16B
1,16B
2,16C
1,16C
2の厚みは、例えば5〜60μmであり、好ましくは10〜55μm、さらに好ましくは15〜50μmである。各粘着剤層16B
1,16B
2,16C
1,16C
2の厚みを上記範囲内とすることで、貼り付け性を確保しつつ、各固着部材の厚さ方向への伸び量を抑制できる。
このように、固着部材15が複数の両面粘着テープを重ねる構成である場合、使用する両面粘着テープの基材16A
1,16A
2は薄いものを採用することができ、固着部材15の柔軟性を向上させ、固着部材15を他の部材に固着する際に、例えば、100〜300N程度の小さい圧力で固着することが可能となる。小さい圧力で固着することが可能な固着部材15は、固着の際に固着面で発生するエアの面積を減らすことができ、固着面積を十分に確保することが可能となることから高い粘着力を得ることができる。
【0041】
また、各粘着剤層は、厚さ方向Zに沿う方向への引っ張りにおける、破断時の伸び率が1000%以上であり、かつ弾性率が0.02MPa以上であることが好ましい。これら範囲内とすることで、粘着性を向上させつつ、上記した固着部材15の厚さ方向Zに沿う方向の伸び量を所定の範囲内にしやすくなる。
粘着剤層の破断時の伸び率は、より好ましくは1100%以上であり、また弾性率は好ましくは0.022MPa以上である。粘着剤層の破断時の伸び率は、特に限定されないが、例えば1500%以下であり、また、弾性率は例えば0.05MPa以下である。
【0042】
固着部材15の基材は、10Hz、引張モードの動的粘弾性評価において、85℃の損失正接tanδが0.08以下であることが好ましい。85℃の損失正接tanδを0.08以下とすることで、固着部材15の基材に厚さ方向に荷重をかけた際に荷重を吸収して厚さ方向への伸びが大きくなることを防止できる。これら観点から、85℃の損失正接tanδは、0.07以下が好ましく、0.04以下がさらに好ましい。85℃の損失正接tanδの下限は、特に限定されないが、例えば0.01である。
【0043】
各固着部材15A、15Bは、基材、粘着剤層などを適宜選択して上記伸び量が上記した所定の範囲内に調整されるものである。
基材としては、具体的には、樹脂フィルム、紙基材、不織布、発泡シートなどが挙げられるが、これらのなかでは、樹脂フィルム及び発泡シートが好ましく、より好ましくは樹脂フィルムである。樹脂フィルムを使用することで、上記した伸び量をより一層低くしやすくなる。また、85℃の損失正接tanδも低くしやすくなる。
【0044】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−アクリル酸エステル共重合体等の変性オレフィン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム等が挙げられる。これらのなかでは、耐熱性などの観点から、PETフィルムが好ましい。
【0045】
また、発泡シートとしては、例えば、ポリエチレン系発泡シート、ポリプロピレン系発泡シートなどのポリオレフィン系発泡シート、アクリル系発泡シート、ウレタン系発泡シート、エチレンプロピレンジエンゴム系発泡シートなどのゴム系発泡シート等が挙げられる。これらのなかでは、ポリオレフィン系発泡シートが好ましく、特にポリプロピレン発泡シートが好ましい。ポリプロピレン発泡シートを使用することで、固着部材の伸び量や、基材の85℃の損失正接tanδなどを低くしやすくなる。また、耐熱性も良好となる。
また、発泡シートの場合、発泡倍率を高くしたり、気泡径を大きくしたりすると、上記した損失正接や伸び量が大きくなる傾向にある。そのため、発泡シートは、発泡倍率が低く、気泡径が小さい発泡シートであることが好ましい。また、気泡径を小さくするためには、発泡シートの架橋度を大きくしたほうが好ましい。なお、気泡径が小さい発泡シートは、ポリオレフィン系発泡シートであることが好ましい。
【0046】
本実施形態において、粘着剤層を構成する粘着剤は、特に限定されないが、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。これらのなかでは、一定の粘着力を確保しつつ、上記の伸び量を低くしやすくする観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。以下、粘着剤層を構成する粘着剤が、アクリル系粘着剤である場合の粘着剤の具体例をより詳細に説明する。
【0047】
アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を含む。アクリル系重合体は、少なくともアクリル系モノマーを含むモノマー成分を重合したものである。アクリル系重合体は、極性基を有する重合体であることが好ましい。極性基としては、活性水素を有し、好ましくは後述する架橋剤と反応可能な官能基であり、具体的には、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。これらの官能基のなかでは、水酸基が好ましい。水酸基は、後述するイソシアネート系架橋剤などとの反応性が高く、容易に架橋構造を形成することが可能である。
【0048】
アクリル系重合体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)と、極性基含有モノマー(A2)との共重合体、又は、上記モノマー(A1)及び(A2)と、(A1)及び(A2)以外のその他のモノマー(A3)との共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)と、極性基含有モノマー(A2)との共重合体が好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の一方又はこれら両方を意味する用語として使用し、他の類似する用語も同様である。
【0049】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)は特に限定されず、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノマー(A1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
アルキル系重合体は、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)を主モノマーとして含む。主モノマーとして含むとは、その含有量が、アルキル系重合体を構成するモノマー成分全量基準で、50質量%以上であることを意味し、モノマー(A1)の含有量は、好ましくは70質量%以上である。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)の含有量は、モノマー成分全量基準で、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
モノマー(A1)の中では、アルキル基の炭素数が1〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)が好ましく、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)を含むことがより好ましい。アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)は、主モノマーであるとよく、したがって、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)の含有量は、アクリル系重合体を構成するモノマー成分全量基準で、50質量%以上であることをが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、また、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
水酸基を有する極性基含有モノマー(A2)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
カルボキシ基を含有する極性基含有モノマー(A2)としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。
極性基含有モノマー(A2)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アクリル系重合体を構成するモノマー成分において、極性基含有モノマー(A2)の含有量は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)100質量部に対して、例えば、1〜30質量部、好ましくは2〜20質量部である。極性基含有モノマー(A2)の使用量が上記範囲内であると、極性基と架橋剤との架橋反応が適切に進行し易くなる。
【0053】
また、その他のモノマー(A3)としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリルアミド等のアクリル系モノマーが挙げられる。また、その他のモノマーとしては、、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−アクリロイルモルフォリン、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのその他のモノマー(A3)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
アクリル系重合体(A)は、アクリル系粘着剤の主成分となるものであり、アクリル系粘着剤全量(不揮発分基準)に対して、通常、50質量%以上、好ましくは55〜98質量%、より好ましくは60〜95質量%である。
【0055】
アクリル系重合体の重合方法は、特に限定されず、フリーラジカル重合、リビングラジカル重合により重合して得ることができる。また、重合方法としては、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
これらの中では、リビングラジカル重合が好ましい。リビングラジカル重合を使用することで、低分子量成分を抑制して分散度を低く抑えることができる。そのため、固着部材の伸び量を低くしやすくなる。
【0056】
アクリル系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、1.05〜8であるが、1.05〜2.5であることが好ましく、1.1〜2がさらに好ましい。分子量分布が2.5以下となることで、アクリル系重合体の低分子量成分が減るため、固着部材の粘着力が下がったり、上記固着部材の伸び量が大きくなったりすることを防止できる。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である。
アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万以上200万以下、より好ましくは10万以上100万以下である。
【0057】
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。具体的には、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、アクリル系重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液を用いてGPC法によりポリスチレン換算分子量として測定される。GPC法では、例えば、2690 Separations Model(Waters社製)等を使用できる。
【0058】
アクリル系粘着剤は、さらに粘着付与樹脂を含有することが好ましい。粘着付与樹脂を含有することで、固着部材の粘着性が向上する。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、不均化ロジンエステル樹脂、重合ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
粘着付与樹脂の含有量は、上記アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜40質量部である。
【0059】
アクリル系粘着剤は、さらに架橋剤を含有し、固着部材15の粘着剤層は、架橋剤によって架橋されることが好ましい。架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、基材に対する密着安定性に優れるため、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
アクリル系粘着剤における架橋剤の含有量は、粘着剤の種類などに応じて適宜設定すればよいが、例えば、アクリル系重合体(A)と粘着付与樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部である。架橋剤の含有量をこれら範囲内とすることで、粘着性を良好にしつつ、固着部材15の上記伸び量を所定の範囲内に調整しやすくなる。
【0060】
粘着剤層は、上記の通り、架橋剤により架橋されることが好ましい。粘着剤層の架橋度を示す指標としてはゲル分率がある。粘着剤層のゲル分率は、例えば30〜65質量%、好ましくは35〜55質量%、より好ましくは40〜50質量%である。ゲル分率を上記範囲内とすることで、粘着剤層の凝集力を確保して上記した厚さ方向の伸び量を抑えつつ、粘着性を確保できる。
なお、ゲル分率は、粘着剤層からなる試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬して不溶分を測定して、以下の式より算出することで求めることができる。
ゲル分率(質量%)=(B/A)×100
A:試験片の質量
B:不溶解分の乾燥後の質量
【0061】
本発明では、アクリル系粘着剤は、さらにカップリング剤を含有してもよい。カップリング剤を含有することで、粘着力、特に金属(例えば、端子)に対する粘着力を向上させやすくなる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。なかでも、接着性を向上させる効果に優れることから、シランカップリング剤が好ましい。上記カップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
カップリング剤の含有量は、アクリル系重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。上記範囲内とすることで被着体に対する接着力を適切に向上できる。
アクリル系粘着剤は、さらに、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等のその他の添加剤を含有してもよい。
【0062】
アクリル系粘着剤を使用する場合、例えば、アクリル系重合体の分散度、アクリル系重合体を構成するモノマー成分の組成、粘着剤層のゲル分率、架橋剤の種類などを調整することで、固着部材の厚さ方向Zに沿う方向の伸び量を適宜調整できる。例えば、アクリル系重合体の分散度を低くすると、上記伸び量は小さくなる傾向にある。また、アクリル系重合体を構成するモノマー成分として、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルモノマー(A1)を使用する場合には、アルキル基の炭素数を小さくなると、アクリル系重合体が硬くなり、上記伸び量を小さくしやすくなる。また、アルキル基の炭素数を大きくすると、アクリル系重合体が柔軟となり、上記伸び量を大きくしやすくなる。また、例えば、粘着剤層のゲル分率を上記した所望の範囲内とすることで上記伸び量を抑制しやすくなる。勿論、伸び量を調整するファクターはこれらに限定されず、基材の種類や厚み、粘着剤の厚みなどでも適宜調整できる。
【0063】
(連結部材)
連結部材18は、
図1、3に示すように、平面状のシート状部材であり、例えば、樹脂シートからなる。樹脂シートは、導電部材11及び固着部材15を支持できる一定の強度を有していれば特に限定されない。また、樹脂シートは、可撓性を有する樹脂シートを使用してもよい。電気接続部材10は、連結部材18により一体化されることで、端子と接続対象部材の間に挟みやすくなる。また、導電部材11と固着部材15とが一定間隔に位置決めされるので、導電部材11への加圧が均一になりやすい。
【0064】
連結部材18は、貫通孔18Aが形成される。貫通孔18Aには、導電部材11が内部に挿入され固定される。貫通孔18Aは、複数の導電部材11に対応して、複数個設けられる。貫通孔18Aの形状は、絶縁部13や導電部材11の形状に合わせて調整されるとよく、円形や四角形などの多角形となるが、円形であることが好ましい。なお、貫通孔18Aの外周を構成する部分は、縁部18Bとする。縁部18Bは、各導電部材11(例えば絶縁部13)に埋め込まれるように配置され、それにより、導電部材11が連結部材18に固定される。
貫通孔18Aの直径は、特に限定されないが、例えば、0.5〜8mm、好ましくは1〜4mmである。また、貫通孔18Aの直径は、導電部12の直径の50〜200%の範囲に選択されることが好ましく、60〜150%の範囲に選択されることがより好ましい。
【0065】
連結部材18を構成する樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエチレンナフタレートシート、ポリカーボネートシート、ポリエーテルエーテルケトンシート、ポリイミドシート、ポリアミドシート、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリウレタンシートなどが使用される。これらの中では、耐久性、耐熱性などの観点から、PETシート、ポリイミドシートが好ましい。
連結部材18(樹脂シート)の厚さは、特に限定されないが例えば30〜1000μm、好ましくは50〜350μmである。
【0066】
また、連結部材18には、貫通孔18A以外にも小径の貫通孔19を設けてもよい。貫通孔19により、固着部材15の内周側が外側に対して通気ができ、電気接続部材10を被取付部材や端子に対して固定しやすくなる。また、囲まれた空間の空気膨張により生じる、固着部材15の剥がれや導電部材11の導通不良などの不具合を避けることができる。また、貫通孔19は、導電部材11を貫通孔18Aに固定する作業、固着部材15を形成する作業の際に使用する、位置決め用穴として使用することができる。
【0067】
<製造方法>
以下、本実施形態の電気接続シート10の製造方法について説明する。まず、本製造方法では、金型を準備する。金型はアルミニウムや銅などの非磁性体でなる上型と下型で構成される。上型と下型には、それぞれ導電部12に対応する位置に、鉄や磁石などの強磁性体からなるピンが埋め込まれる。ピンの一端は、上型と下型のキャビティ面に露出している。
【0068】
また、連結部材18を構成するための樹脂シートなどを用意する。樹脂シートは打ち抜き加工などをして、複数の貫通孔18Aを形成したものを用意すればよい。樹脂シートは、ピンを埋設している上記金型に挿入し、導電部材11の原料となる液状ゴムや、溶融した熱可塑性エラストマーなどをキャビティ内に注入する。液状ゴムには磁性を有する導電性フィラーが予め混合されている。
【0069】
次に磁石を用いて金型の上下から磁場をかける。キャビティ内にはピンを繋ぐ平行磁場が形成され、液状ゴムなどの中の導電性フィラーが磁力線方向に連続的に配列する。この配列後に上下の金型を完全に締めて加熱処理を行い、液状ゴムを硬化させると、導電部材11と連結部材18を構成する樹脂シートとが一体となったシート状成形体が得られる。その後、シート状成形体に公知の手法によって固着部材を取り付けることで、電気接続シートが得られる。なお、以上の説明では、導電性フィラーが配列されている例を説明したが、導電性フィラーは配列しなくてもよく、その場合には、導電性フィラーを配列させる工程を省略させるとよい。
【0070】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、
図4を用いてより詳細に説明する。第2の実施形態の第1の実施形態との相違点は、固着部材の構成のみである。以下、第2の実施形態において、第1の実施形態と相違する点のみを説明し、第1の実施形態と同様の構成を有する部材についてはその説明を省略する。
【0071】
第1の実施形態において、固着部材は、連結部材18の両面それぞれに設けられていたが、本実施形態の電気接続部材20において、固着部材25は、連結部材18の一方の面のみに設けられる。ただし、本実施形態においても固着部材25によって、電気接続部材20の両面が、他の部材に接着される。そのため、固着部材25は、連結部材18からはみ出るように配置され、一方の粘着剤層16Bの一部が連結部材18に接着され、残りの部分が連結部材18に接着されずに、連結部材18からはみ出すように配置され露出している。これにより、一方の粘着剤層16Bにより、電気接続部材20の一方の面(
図4の下面)側が他の部材に接着可能になる。また、他方の粘着剤層16Cにより、電気接続部材20の他方の面(
図4の上面)側も他の部材に接着可能になる。
本実施形態において、固着部材25は、上記した固着部材15A、15Bと同様の構成を有しており、本実施形態におけるその他の説明は省略する。
【0072】
本実施形態でも、上記のとおり、導電部材11の第1及び第2の圧縮応力の少なくともいずれかが上記した所定の範囲内となるとともに、固着部材25が、厚さ方向に沿う方向に96kPaで30分間引っ張った際の伸び量が400μm以下となるものである。したがって、長期間使用しても電気接続部材10が接続対象部材から剥がれたり、電気抵抗が大きくなって温度上昇が生じたりする不具合が生じにくくなる。
【0073】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について、
図5を用いてより詳細に説明する。第3の実施形態の第1の実施形態との相違点は、固着部材の構成のみである。以下、第3の実施形態において、第1の実施形態と相違する点のみを説明し、第1の実施形態と同様の構成を有する部材についてはその説明を省略する。
【0074】
第1の実施形態において、連結部材18の両面に設けられた固着部材15A、15Bは、基材を有する両面粘着テープであったが、本実施形態の固着部材35A,35Bそれぞれは、粘着剤層からなる。
本実施形態の電気接続部材30において、各固着部材35A,35Bは、粘着剤層単体からなるが、厚さ方向に沿う方向に96kPaで30分間引っ張った際の伸び量が上記したとおりとなる。第3の実施形態の粘着剤層は、第1の実施形態における粘着剤層と同様とすればよい。また、粘着剤層単体の伸び量が上記した伸び量の範囲内となるためには、第1の実施形態において説明したとおり粘着剤の構成を適宜調整すればよい。また、導電部材11も第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と同様に、長期間使用しても電気接続部材30が接続対象部材から剥がれたり、電気抵抗が大きくなって温度上昇が生じたりする不具合が生じにくくなる。
【0075】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について、
図6を用いてより詳細に説明する。第4の実施形態の第2の実施形態との相違点は、固着部材の構成のみである。以下、第4の実施形態について、第2の実施形態と相違する点のみを説明し、第2の実施形態と同様の構成を有する部材についてはその説明を省略する。第2の実施形態において、固着部材は、基材を有する両面粘着テープであったが、本実施形態の電気接続部材40において固着部材45は、粘着剤層からなるものである。
【0076】
本実施形態における固着部材45は、粘着剤層単体からなるが、厚さ方向に沿う方向に96kPaで30分間引っ張った際の伸び量が上記したとおりとなる。粘着剤層は、上記各実施形態における粘着剤層と同様とすればよく、また、粘着剤層単体の伸び量が上記した伸び量の範囲内となるためには、上記で説明したとおり粘着剤の構成を適宜調整すればよい。また、導電部材11も第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と同様に、長期間使用しても電気接続部材40が接続対象部材から剥がれたり、電気抵抗が大きくなって温度上昇が生じたりする不具合が生じにくくなる。
【0077】
[導電部材の変形例]
以上のように、本発明の電気接続部材について実施形態を用いて説明したが、本発明の電気接続部材は、上記に限定されず、様々な改良が可能である。
例えば、上記各実施形態では、導電部材11が、導電部12と絶縁部13とを有し、導電部12が導電部材の一部のみを構成する例について説明したが、導電部材は、上記説明した例に限定されない。例えば、導電部材の全体が、導電性ゴム状弾性体から形成されるものでもよい。すなわち、導電性フィラーが導電部材の全体に分散されて、導電部材11の全体が導電部12となるとよい。導電性フィラーとしては、導電性カーボンブラック、炭素繊維及び黒鉛等の炭素フィラー、並びに、銀、銅、ニッケル、金、スズ、亜鉛、白金、パラジウム、鉄、タングステン、モルブデン及びはんだ等の金属フィラー又は合金フィラー、及びこれらの粒子表面を金属等の導電性コーティングで覆って調製した導電性フィラーを用いることができる。また、導電性フィラーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、若しくはベンゾグアナミン樹脂から構成される非導電性粒子であるポリマー粒子、又はガラスビーズ、シリカ、黒鉛、若しくはセラミックから構成される無機粒子の表面に金属等の導電性コーティングを施して得られる導電性フィラーを用いることもできる。導電性フィラーの形状としては、粒子状、繊維状、細片状及び細線状等が挙げられる。導電性フィラーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、この場合、導電部材の直径は、導通部の直径に等しくなる。
【0078】
導電部材の全体が導電性ゴム状弾性体から形成される場合、導電部材を構成するゴム状弾性体における導電性フィラーの充填率は、好ましくは25〜90体積%の範囲、より好ましくは30〜85体積%の範囲、さらに好ましくは35〜80体積%の範囲である。本実施形態においても、導電性フィラーは、厚み方向に配列していてもよいが、厚み方向に配列しなくてもよい。
また、導電性フィラーが導電部材の全体に分散される場合、第1及び第2の圧縮応力は上記した範囲内で比較的大きくなりやすいが、第1及び第2の圧縮応力が大きくなっても、上記した各実施形態の固着部材を使用することで、導電部材を圧縮した状態に適切に保持できる。
さらに、上記各実施形態において導電部材は、上面及び下面のいずれもが、その間の部分よりも直径が小さくなったが、上面及び下面のいずれか一方のみがその間の部分よりも直径が小さくなってもよい。また、導電部材は、上面及び下面の両方がその間の部分よりも直径が小さくなる必要はない。
導電部材は、導電性ゴム状弾性体以外にも、金属細線をゴム状弾性体の内部に配列したもの、金属箔や金属布あるいは導電性ゴム状弾性体等からなる薄い導電層がゴム状弾性体の外部に覆われたもの、及び、金属バネ等が挙げられる。
金属細線をゴム状弾性体の内部に配列した導電部材は、ゴム状弾性体の内部に、複数の金属細線を厚さ方向Zに沿って配列させたものである。金属細線を構成する金属は、金、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、クロム、ステンレス等の導電性を有する金属、及びこれらの合金が挙げられる。金属細線の直径は、適度な弾性を有し、かつ、好適な導電性を有する観点から、0.01〜0.2mmであることが好ましく、0.02〜0.1mmであることがより好ましい。
金属箔や金属布あるいは導電性ゴム状弾性体等の薄い導電層がゴム状弾性体の外部に覆われた導電部材は、金、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、クロム、ステンレス等の導電性を有する金属、及びこれらの合金の金属箔又は金属布、あるいは導電性ゴム状弾性体からなる薄層を、導電部材の厚さ方向Zに亘って、ゴム状弾性体に巻き付けたり塗着させることで被覆したものである。金属箔や金属布あるいは導電性ゴム状弾性体等からなる導電層の厚さは、適度な弾性を有し、かつ、好適な導電性を有する観点から、0.001〜0.5mmであることが好ましい。
金属バネである導電部材は、金、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、パラジウム、クロム、ステンレス等の導電性を有する金属、及びこれらの合金によって構成される。金属バネとしては、コイルバネ及び板バネ、皿バネ等が挙げられる。
【0079】
[導電部材の配列の変形例]
上記各実施形態において、導電部材の数および配列は、
図3に示す配列に限定されず、様々な数および配列を採用可能である。その具体例を
図7〜9に示す。なお、
図7〜9は、第1の実施形態の電気接続部材の変形例を代表的に示すが、以下で説明する導電部材の数および配列は、いずれの実施形態に適用できる。
電気接続部材10の導電部材11の数は、
図7に示すように1つでもよく、また、2以上であってもよいが、電気抵抗による導電部材11の温度上昇を抑制する観点から、2以上が好ましい。また、導電部材11の数は、特に限定されないが、生産性などの観点から例えば20以下、好ましくは10以下である。
【0080】
また、複数の導電部材11の配列は、
図3に示すように、一列に並べられた複数の導電部材が、複数列設けられる必要はなく、
図8に示すように、複数の導電部材11が1列に並べられてもよい。また、
図9に示すように、一列に横方向に並べられた導電部材11が縦方向に複数列設けられる場合、各列における導電部材11は同じ数である必要はなく、異なる数であってもよい。その場合、各列の導電部材11の数は1個でもよく、また、各列の導電部材は、横方向において同じ位置である必要もない。例えば
図9に示すように、2個の導電部材11の列、1個の導電部材11の列、2個の導電部材11の列からなってもよい。
勿論、導電部材11の配列は、上記に限定されず、本発明の効果を奏する限りいかなる配列でもよい。
【0081】
[外側シート部材]
また、電気接続部材は、連結部材の外側に外側シート部材が設けられてもよい。以下、第1の実施形態において外側シート部材が設けられる変形例を
図10に示して説明するが、その他の実施形態においても外側シート材が設けられてもよい。
すなわち、本変形例では、
図10に示すように、シート状の連結部材18の外側に、外側シート部材22が設けられる。そして、固着部材15Aを構成する両面粘着テープは、連結部材18の外周部と、外側シート部材22に跨るように配置されており、固着部材15Aの一方の粘着剤層16Bが、連結部材18の一方の面(上面)の外周部と、外側シート部材22の一方の面(上面)に接着されている。同様に、固着部材15Bを構成する両面粘着テープは、連結部材18の外周部と、外側シート部材22に跨るように配置されており、固着部材15Bの一方の粘着剤層16Bが、連結部材18の他方の面(下面)の外周部と、外側シート部材22の他方の面(下面)に接着されている。これにより、各固着部材15A、15Bは、連結部材18の外周部に加え、外側シート部材22によっても支持される。
【0082】
外側シート部材22は、通常、樹脂シートからなる。樹脂シートは、連結部材に使用できる樹脂シートと同様のものを使用できる。連結部材18の樹脂シートと、外側シート部材22の樹脂シートとは、同一の材料から形成されてもよいし、異なる材料から形成されてもよい。また、外側シート部材22は、固着部材15(各固着部材15A、15B)の形状に対応した形状を有していればよい。本変形例では、各固着部材15A、15Bは、第1の実施形態と同様に、枠状に形成されるので、外側シート部材22も、連結部材18を囲むように形成された枠状とするとよい。
【0083】
[固着部材の変形例]
また、上記各実施形態、及び変形例において、固着部材は、連結部材18に設けられる導電部材11を取り囲む枠形状であったが、枠形状に限定されない。ただし、固着部材は、導電部材11よりも外側に配置されることが好ましい。
例えば、連結部材18の各面に設けられる固着部材15A、15Bはそれぞれ、
図11に示すように、導電部12を挟みこむように配置された第1及び第2の固着部材15C,15Dからなるものでもよい。また、固着部材は、
図12に示すとおり、四方から導電部12を囲むように、第1及び第2の固着部材15C,15Dに加えて,第3及び第4の固着部材15E、15Fが設けられてもよい。
また、複数の導電部を5以上の固着部材で囲む構成にしてもよい。さらには、上記した枠状の固着部材に、枠内部と枠外部とを接続する細幅の連通路や溝などを設けて、固着部材が全周にわたって接着できない構成にしてもよい。
【0084】
なお、固着部材が導電部材11よりも外側に配置されるとは、少なくとも1つの固着部材が、各導電部材11よりも、連結部材18の外周18D(
図11、12参照)のいずれかの位置に近接するように設けられることを意味する。そのため、いずれかの導電部材11と外周18Dの間に少なくとも1つの固着部材が配置されればよい。ただし、
図3、11、12に示すように、各導電部材11は、固着部材によって少なくとも両側から挟み込まれることが好ましい。
また、固着部材は、部分的には、複数の導電部材11の間に設けられてもよい。例えば、
図13に示すように、固着部材は、複数の導電部材11の外側を取り囲む枠部15Gと、導電部材11と導電部材11の間に配置され枠部15Gの内周部を接続する接続部15Hとを組み合わせたものとしてもよい。
上記したいずれの場合も、各固着部材は、第1、第3の実施形態と同様に連結部材の両面に設けられてもよいし、第2及び第の4実施形態と同様に連結部材の片面に設けられてもよい。さらに、各固着部材は、第1及び第2の実施形態のように基材と基材の両面に粘着剤層を備える両面粘着テープであってもよいし第3及び第4の実施形態で示したように、粘着剤層からなるものでもよい。
なお、電気接続部材において、連結部材は省略されてもよい。連結部材が省略される場合には、例えば導電部材に固着部材が直接接着されるとよい。
【0085】
[端子付きガラス構造]
本発明の電気接続部材は、例えば、端子を接続対象部材である導電層に電気的に接続させ、かつ導電層を有するガラス板(被取付部材)に、端子を固定させるために使用される。
図14は、第1の実施形態に係る電気接続部材10によって、端子71がガラス板72に固定された、端子付きガラス板構造70を示す。以下、端子付きガラス板構造70についてより詳細に説明する。
【0086】
端子付きガラス板構造70は、電気接続部材10と、ガラス板72と、端子71とを備える。ガラス72は、その一方の面に導電層73が設けられる。端子71は、ガラス板72の導電層73が設けられる面に取り付けられる。
導電層73の材質は、特に限定されないが、金、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄、パラジウム、クロム、ステンレスなどの導電性を有する金属であればよい。また、端子71の材質も、特に限定されないが、同様に、金、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄、パラジウム、クロム、ステンレスなどの導電性を有する金属であればよい。
【0087】
端子付きガラス板構造70において、電気接続部材10は、端子71と導電層73の間に配置される。このとき、電気接続部材10の各導電部12の両端面(すなわち、導電部材11の上面11A,下面11B)は、それぞれ導電層73、及び端子71それぞれに接触する。そのため、端子71は複数の導電部12を介して導電層73に接続される。
また、電気接続部材10は、一方の固着部材15Aがガラス板72に接着され、かつ他方の固着部材15Bが端子71に接着されることで、端子71をガラス板72に固定させる。ただし、固着部材15Bはガラス板72に接着されるほか、導電層73に接着されることとしてもよい。
【0088】
ここで、各導電部材11は、圧縮した状態で、端子71及び導電層73に接触する。各導電部材11は、圧縮すると導電性が高まり、かつ端子71や導電層73に反発力により付勢されるので、端子71及び導電層73との接続をより確実に行うことが可能である。また、反発力により付勢されると端子71はガラス板72から剥がれやすくなるが、端子付きガラス板構造70では、端子71が固着部材15により、ガラス板72に確実に固定されているので、剥がれは生じにくくなる。
なお、各導電部材11は、例えば5〜40%、好ましくは10〜30%、さらに好ましくは15〜30%圧縮した状態とされるとよい。
また、端子71の複数の導電部材11に接触する面は、平面状であるとよい。平面状であることで、複数の導電部材11を均等に圧縮しやすくなる。
【0089】
なお、
図14の構成では、連結部材18から導電部材11の下面11Bまでの厚さが、固着部材15Bの厚さよりも大きくなる。そのため、端子71は、固着部材15Aに接着するための外周部71Aが、他の部分よりも高くなるが、外周部71Aは必ずしも高くなる必要はなく、端子71のガラス板72に対向する面は、全体が平面状であってもよい。
【0090】
ガラス板72は、特に限定されないが、自動車用ガラス板が好ましい。自動車用ガラス板には、デフロスター、デフォッガーなどのために、電熱線が設けられることがある。電熱線が設けられたガラス板72には、通常、電熱線が纏められて接続される導電層73が設けられる。導電層73には、導電部材11を介して端子71が接続されており、そのため、電熱線には、端子71、導電部材11、導電層73を介して電流が流される。
自動車用ガラスに設けられた電熱線は、消費電力が高く、大電流を流す必要があるが、本発明の電気接続部材10は、大電流を流しても温度上昇が抑えられる。そのため、本発明の電気接続部材は、自動車用ガラス板、特にデフォッガーのために伝熱線が設けられることが多いリアウィンドウ用ガラス板に使用されることが好ましい。
【0091】
なお、以上の端子付きガラス構造の説明においては、第1の実施形態に係る電気接続部材が使用される例について説明したが、他の電気接続部材が使用される場合も同様であるので、その説明は省略する。また、本発明の電気接続部材10は、ガラス板上に導電性の接続部を有するものである、ガラス板上のアンテナやカメラ部ヒーター、ワイパーヒーター、バックライト、レインセンサー等のセンサー類、さらには太陽電池などへの電気接続にも利用できる。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各種物性については以下のように測定した。
【0093】
[導電部材の第1の圧縮応力]
導電部材の25%圧縮した際の圧縮応力(第1の圧縮応力)は、無加圧から厚み25%圧縮に必要な荷重(N)を25℃にて測定し、導電部材の断面積で割り、圧縮応力(N/mm
2)を算出した。荷重の測定は材料試験機(株式会社東洋精機製作所製、商品名「ストログラフVE5D」)で行った。なお、導電部材の断面積は、上面と下面における導電部材の面積の平均値とする。
[導電部材の第2の圧縮応力]
第1の圧縮応力を測定するときの方法と同様の方法で、導電部材を25%圧縮させた状態で、105℃で22時間保持した。その後、圧縮応力を解放し、30分間25℃で放置した。次いで、第1の圧縮応力と同様の方法で、25%圧縮した際の圧縮応力を測定して、第2の圧縮応力とした。
[25%圧縮時の電気抵抗]
25%圧縮時の導電部の電気抵抗は、明細書記載の方法で測定した。
【0094】
[固着部材の伸び量]
固着部材の両面を、それぞれJIS G4305で規定するSUS304板冶具に接着させた。その後、25℃環境下、「オートグラフAGS−X」(株式会社島津製作所製)を用いて、SUS304板冶具を把持して固着部材を厚さ方向に引っ張り、荷重96kPa作用された状態で30分間維持した。その後、荷重を解放した後の固着部材の厚さ方向の伸び量を上記材料試験機において測定した。
【0095】
[粘着剤層の破断時の伸び及び弾性率]
各固着部材の粘着剤層と同じ厚みの粘着剤層を、固着部材作成時の手順に従って、剥離フィルム(商品名「SP3000−75」東洋クロス株式会社製)の片面上に形成した。10mm×200mmの大きさに加工後、粘着剤層を剥離シートから剥がして、その粘着剤層の両端を材料試験機(株式会社島津製作所製、商品名「オートグラフAGS−X」)のチャックに把持した。
その後、25℃環境下、上記材料試験機を用いて、引張速度5mm/minで固着部材を引っ張り、S−Sカーブを作成して、粘着剤層の破断時の伸び、及び弾性率を測定した。弾性率は、JIS Z0237の「8.引張強さ及び伸び」に準拠して、伸び100μmにおける引張強さ、および破断時伸びにおける引張強さを測定して、伸び量に対する引張強さから算出した。
[粘着剤層のゲル分率]
明細書記載の方法により測定した。
【0096】
[基材のtanδ]
動的粘弾性測定により基材のtanδを測定した。動的粘弾性測定は、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、商品名「DVA−200」)を用いて、引張モード、−50〜150℃において昇温速度5℃/分で、周波数10Hzで行い、85℃におけるtanδの値を読み取った。
【0097】
[導電部材1の作製]
まず、強磁性体のピンが埋め込まれた金型を準備し、その金型に、導電性フィラーとしての平均粒径35μmの銀被覆ニッケル粒子が配合された、液状ゴムとしてのシリコーンゴムを流し込んで、導電性ゴム状弾性体からなる導電部と、その周りを囲む絶縁部とを有する導電部材を成形した。導電部における導電性フィラーの含有率は33体積%であった。
導電部材の成形においては、金型内部に、導電部材を挿入するための貫通孔を1つ有し、かつ厚さ100μmのPETシートである樹脂シートを挿入し、導電部材が樹脂シートの貫通孔内部に一体的に成形され、連結部材付きの導電部材1(以下、単に「導電部材1」ともいう。導電部材2以降も同様。)を得た。導電部材は、樹脂シート(連結部材)が絶縁部に埋め込まれ、
図1に示す構造を有しており、導電部は円形であった。また、連結部材には
図7に示すように1つの導電部材が設けられていた。連結部材の大きさは40mm×40mmであった。導電部における導電性フィラーの充填率は、33体積%であった。導電性フィラーは、厚さ方向に連続的に連なって配列していた。導電部材の詳細を表1に示す。
【0098】
[導電部材2〜4の作製]
樹脂シートに設けられる導電部材を挿入するための貫通孔の数を変更して、各連結部材に設けられる導電部材の数を表1に示すように調整した。連結部材付きの導電部材2、3では、
図8に示すように、複数の導電部材を一列に並べ、連結部材付きの導電部材4では、
図3に示すように、2個の導電部材からなる列を2つ設けた。導電部材2〜4における各連結部材の大きさはそれぞれ、40×60mm、40×80mm、40×40mmであった。その他の構成は導電部材1と同様とした。
【0099】
[導電部材5〜7の作製]
導電部材及び貫通孔の寸法を表1に示すように変更した点以外は、導電部材2と同様に作成した。
【0100】
[導電部材8の作製]
樹脂シートに正方形の貫通孔を1つ設け、1つの正方形の導電部材(4mm角、直径4.5mm相当)を連結部材に設けた。導電部材は、その全体を、平均粒径35μmの銀粒子を含有する液状シリコーンゴムを架橋硬化させて形成した。導電性ゴム状弾性体中における、導電性フィラーの含有率は43体積%であった。その他は、導電部材1と同様にした。
【0101】
(固着部材1)
リビングラジカル重合により合成し、主モノマーが2−エチルヘキシルアクリレートであり、かつ極性基として水酸基を含有するアクリル系重合体(分子量分布=1.5、重量平均分子量=90万)と、粘着付与樹脂とからなる主剤100質量部に対して、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネート L−55E」、東ソー株式会社製)4質量部と、シランカップリング剤1質量部とを配合して、アクリル系粘着剤を調製した。アクリル系粘着剤を、基材としての厚さ100μmのPETフィルムの両面に塗布して加熱乾燥することで、基材両面にそれぞれの厚みが50μmである粘着剤層を形成し、両面粘着テープ(固着部材1)を得た。固着部材の詳細を表2に示す。
【0102】
(固着部材2)
リビングラジカル重合により合成し、主モノマーがn−ブチルアクリレートであり、かつ極性基として水酸基を含有するアクリル系重合体(分子量分布=1.5、重量平均分子量=50万)と、粘着付与樹脂とからなる主剤100質量部に対して、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネート L−55E」、東ソー株式会社製)2.1質量部と、シランカップリング剤1質量部を配合してアクリル系粘着剤を調製した。アクリル系粘着剤を、基材としての厚さ100μmのPETフィルムの両面に塗布して加熱乾燥することで、基材両面にそれぞれの厚みが50μmとなる粘着剤層を形成し、両面粘着テープ(固着部材2)を得た。
【0103】
(固着部材3)
アクリル系重合体(商品名「SCT101」、綜研化学株式会社製、分子量分布=5〜8、重量平均分子量=110万)と、粘着付与樹脂からなる主剤100質量部に対して、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネート L−55E」、東ソー株式会社製)4質量部と、シランカップリング剤1質量部とを配合してアクリル系粘着剤を調製した。得られたアクリル系粘着剤を、基材としての厚さ100μmのPETフィルムの両面に塗布して加熱乾燥することで、基材両面にそれぞれの厚みが50μmとなる粘着剤層を形成し、両面粘着テープ(固着部材3)を得た。
【0104】
(電気接続部材の作製)
[実施例1]
両面粘着テープである固着部材1を、外周を連結部材の大きさに合わせ、かつ幅10mmの四角枠状に切り取り、連結部材付きの導電部材1の連結部材の両面に、両面粘着テープを貼り合わせて、
図7に示す形態を有する電気接続部材を得た。
【0105】
[実施例2、3]
両面粘着テープである固着部材1を、外周を連結部材の大きさに合わせ、かつ幅10mmの四角枠状に切り取り、連結部材付きの導電部材2、3それぞれの連結部材の両面に、両面粘着テープを貼り合わせて、導電部材の数以外は
図8に示す形態と同様の電気接続部材を得た。
【0106】
[実施例4]
両面粘着テープである固着部材1を、外周を連結部材の大きさに合わせ、かつ幅10mmの四角枠状に切り取り、連結部材付きの導電部材4の連結部材の両面に、両面粘着テープを貼り合わせて、
図3に示す形態と同様の電気接続部材を得た。
【0107】
[実施例5、6]
両面粘着テープである固着部材1を、外周を連結部材の大きさに合わせ、かつ幅10mmの四角枠状に切り取り、連結部材付の導電部材5、6それぞれの連結部材の両面に両面粘着テープを貼り合わせて、導電部材の数以外は
図8に示す形態と同様の電気接続部材を得た。
【0108】
[実施例7]
両面粘着テープである固着部材2を、外周を連結部材の大きさに合わせ、かつ幅10mmの四角枠状に切り取り、連結部材付きの導電部材2の連結部材の両面に、両面粘着テープからなる固着部材2を貼り合わせて、導電部材の数以外は
図8に示す形態と同様の電気接続部材を得た。
【0109】
[実施例8]
両面粘着テープである固着部材1を、外周を連結部材の大きさに合わせ、かつ幅10mmの四角枠状に切り取り、連結部材付きの導電部材8の連結部材の両面に、両面粘着テープをからなる固着部材1を貼り合わせて、導電部材の形状以外は
図7に示す形態と同様の実施例8の電気接続部材を得た。
【0110】
[比較例1]
両面粘着テープである固着部材3を、外周を連結部材の大きさに合わせ、かつ幅10mmの四角枠状に切り取り、連結部材付きの導電部材2の連結部材の両面に、両面粘着テープを貼り合わせて、導電部材の数以外は
図8に示す形態と同様の比較例1の電気接続部材を得た。
【0111】
[比較例2]
両面粘着テープである固着部材1を、外周を連結部材の大きさに合わせ、かつ幅10mmの四角枠状に切り取り、連結部材付きの導電部材7の連結部材の両面に、両面粘着テープを貼り合わせて、導電部材の数以外は
図8に示す形態と同様の比較例2の電気接続部材を得た。
【0112】
[温度上昇評価]
図15に示すように、各実施例、比較例で得られた電気接続部材10を評価装置に組み込んだ。具体的には、2枚の銅板85、86の間に、導電部材11が0.5mmまで圧縮されるように電気接続部材10を挟み込んだ(圧縮率28.5%)。銅板85、86には、電気接続部材10の両面に設けられた固着部材15A,15Bを接着させた。銅板86、87の間には定電流源88を接続し、一方の銅板86には熱電対89を取り付けた。熱電対89には、熱電対89で測定された温度が表示される温度表示器90を接続した。
【0113】
上記の評価装置を組み立てた後、定電流源88より26Aの一定の電流を流した。通電30分後の銅板86の表面温度を平衡温度とし、これを熱電対89を用いて測定した。30分後の温度を平衡温度とした理由は、以下の通りである。通電すると電力による加熱が起こるため、評価装置が加熱され、外気温より高温になり、外気に熱を放出する。一定時間通電すると、この電力による加熱量と、外気温と評価装置の温度差による放熱量が等しくなる。これを平衡状態と呼び、通電から約20分でこの状態に到達する。その後は評価装置の温度は一定である。本評価では平衡状態に確実に到達する通電30分後の温度を観測した。1サイクル目の平衡温度観測後、評価装置を外気温度に戻した。以上の操作を3回繰り返して、1サイクル目と3サイクル目の平衡温度の差により、以下の基準に基づき評価した。結果を表3、4に示す。
A:平衡温度の差が、2℃以下である
B:平衡温度の差が、2℃を越えて5℃以下である
C:平衡温度の差が、5℃を越える
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
以上のように、各実施例では、導電部材の第1及び第2の圧縮応力を所定の範囲としつつ、固着部材の厚み方向の伸び量を一定値以下とすることで、導電部材に大電流を通電しても経時による温度上昇を抑制できた。
電気接続部材10は、導電部材11と、導電部材11を接続対象部材に接触させ、かつ厚さ方向Zに圧縮させた状態に保持させる固着部材15とを備える。導電部材11は、厚さ方向Zに25%圧縮した際の圧縮応力が1.0N/mm