特許第6830785号(P6830785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6830785トウ開繊装置、吸収性物品製造装置、及び吸収性物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830785
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】トウ開繊装置、吸収性物品製造装置、及び吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/18 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   D02J1/18 Z
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-197344(P2016-197344)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-59239(P2018-59239A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】重松 雅人
(72)【発明者】
【氏名】橋田 淳之介
【審査官】 橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−112908(JP,A)
【文献】 特開2018−059240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G1/00−3/48
D02J1/00−13/00
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から導入される気体によりジェットを発生するジェット発生部と、前記ジェット発生部とは別に構成され、前記ジェット発生部を通過して搬送されるトウが気体により開繊され且つ成型される開繊室を含む搬送路を有する開繊成形部と、を備え、
前記開繊室の出口における前記搬送路の流路断面形状が、矩形であり、前記搬送路内の前記出口よりも前記トウの搬送方向の上流側で且つ前記搬送路内の前記開繊成形部と前記ジェット発生部との境界よりも前記トウの搬送方向の下流側に位置する所定位置における前記搬送路の前記流路断面形状が、円形であり、
前記搬送路の前記流路断面形状が、前記所定位置から前記出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化している、トウ開繊装置。
【請求項2】
前記所定位置から前記出口に向けて、前記搬送路の流路断面積が増大している、請求項1に記載のトウ開繊装置。
【請求項3】
前記搬送路を通過した前記トウを一時的に滞留させる滞留部を更に備え、
前記滞留部の流路断面形状が、前記出口における前記搬送路の前記流路断面形状と相似している、請求項1又は2に記載のトウ開繊装置。
【請求項4】
前記出口における前記搬送路の前記流路断面形状が、長方形状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のトウ開繊装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のトウ開繊装置と、
前記出口よりも前記上流側で、吸水性の粒状物を前記トウに添加する添加装置とを備える、吸収性物品製造装置。
【請求項6】
開繊室を含む搬送路を備えるトウ開繊装置の前記開繊室において、搬送されるトウを気体により開繊し且つ成型する工程を有し、
前記トウ開繊装置は、外部から導入される気体によりジェットを発生するジェット発生部と、前記ジェット発生部とは別に構成され、前記ジェット発生部を通過して搬送されるトウが気体により開繊され且つ成型される開繊室を含む搬送路を有する開繊成形部と、を備え、前記開繊室の出口における前記搬送路の流路断面形状が、矩形であり、前記搬送路内の前記出口よりも前記トウの搬送方向の上流側で且つ前記搬送路内の前記開繊成形部と前記ジェット発生部との境界よりも前記トウの搬送方向の下流側に位置する所定位置における前記搬送路の前記流路断面形状が、円形であり、
前記搬送路の前記流路断面形状が、前記所定位置から前記出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化している、吸収性物品の製造方法。
【請求項7】
前記所定位置から前記出口に向けて、前記搬送路の流路断面積が増大している、請求項6に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項8】
前記搬送路を通過した前記トウを前記トウ開繊装置に備えられた滞留部に一時的に滞留させる工程を有し、
前記滞留部の流路断面形状が、前記出口における前記搬送路の前記流路断面形状と相似している、請求項6又は7に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項9】
前記出口における前記搬送路の前記流路断面形状が、長方形状である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項10】
前記出口よりも前記上流側に配置された添加装置により、吸水性の粒状物を前記トウに添加する添加工程を有する、請求項6〜9のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トウ開繊装置、吸収性物品製造装置、及び吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつや尿漏れ防止用パッド等の吸収性物品は、例えば、水分を吸収する吸収体と、液透過性を有するトップシートと、通気性を有するバックシートとを備えている。吸収体は、例えば、特許文献1又は2に開示されるトウ開繊装置を用いて、複数本の捲縮された繊維からなるベール状のトウを搬送しながら気体により開繊し、トウを厚み方向に押圧して製造される。
【0003】
吸収体には、高吸水性樹脂(Super absorbent polymer : SAP)からなる粒状物が添加される場合がある。粒状物は、例えば、気体により開繊されるトウの繊維間隙に分散して配置される。このような構造を有する吸収性物品では、例えば、トップシートに形成された微細孔を通じて、水分が吸収体の内部に拡散し、粒状物に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−241487号公報
【特許文献2】特開2013−112909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トウ開繊装置を用いてトウを開繊する際、トウの搬送方向から見て、トウの幅方向の両端の坪量がトウの中央部の坪量に比べて少なくなり、トウの繊維密度がトウの幅方向にばらつく場合がある。
【0006】
また、トウ開繊装置を用いて、粒状物を添加したトウを開繊する際、トウの搬送方向から見て、トウの幅方向両端に含まれる粒状物量がトウの幅方向中央に含まれる粒状物量よりも少なくなり、トウの粒状物密度がトウの幅方向にばらつく場合がある。
【0007】
このようにトウの繊維密度や粒状物密度がばらつく問題は、トウ開繊装置を通過する際のトウの搬送方向に垂直な断面積が小さくなるほど増大する傾向がみられる。
【0008】
そこで本発明は、トウを気体により開繊して吸収性物品を製造する場合において、トウの繊維密度やトウに添加された粒状物の密度を均一化し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトウ開繊装置は、搬送されるトウが気体により開繊され且つ成型される開繊室を含む搬送路を備え、前記開繊室の出口における前記搬送路の流路断面形状が、矩形であり、前記搬送路内の前記出口よりも前記トウの搬送方向の上流側に位置する所定位置における前記搬送路の前記流路断面形状が、円形であり、前記搬送路の前記流路断面形状が、前記所定位置から前記出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化している。
【0010】
上記構成によれば、搬送路の流路断面形状が、所定位置から出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化しているので、開繊室を通過するトウが、開繊室において複数本の繊維が気体により絡み合うように開繊されながら、搬送路の出口の周縁形状により、トウが円形から矩形にスムーズに成型される。
【0011】
このため、開繊され且つトウの搬送方向に垂直な断面が矩形に成型されたトウを、一側面に垂直な方向に押圧して吸収性物品を製造する場合において、トウの搬送方向から見て、前記垂直な方向に直交する一方向にトウの繊維密度がばらつくのを防止できると共に、トウに粒状物が添加された場合において、前記一方向に粒状物密度がばらつくのを防止できる。
【0012】
前記所定位置から前記出口に向けて、前記搬送路の流路断面積が増大していてもよい。これにより、搬送路の流路断面積が増大している領域において、トウを搬送しながら効率よく開繊できる。
【0013】
前記搬送路を通過した前記トウを一時的に滞留させる滞留部を更に備え、前記滞留部の流路断面形状が、前記出口における前記搬送路の前記流路断面形状と相似していてもよい。
【0014】
これにより、搬送路を通過することにより開繊され且つトウの搬送方向に垂直な断面が矩形に成型されたトウの繊維密度を滞留部において高めながら、トウの形状を滞留部において維持し易くできる。
【0015】
前記出口における前記搬送路の前記流路断面形状が、長方形状でもよい。これにより、開繊成型部により成型されるトウの搬送方向に垂直な断面形状の設計自由度を高めることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る吸収性物品製造装置は、上記いずれかに記載のトウ開繊装置と、前記出口よりも前記上流側で、吸水性の粒状物を前記トウに添加する添加装置とを備える。
【0017】
これにより、開繊室内でトウを開繊しながら、トウの内部に粒状物を分散して配置し易くできると共に、トウの搬送方向に垂直な断面が矩形に成型されたトウを一側面に垂直な方向に押圧した際、トウの搬送方向から見て、前記垂直な方向に直交する一方向に粒状物密度がばらつくのを一層防止できる。
【0018】
本発明の一態様に係る吸収性物品の製造方法は、開繊室を含む搬送路を備えるトウ開繊装置の前記開繊室において、搬送されるトウを気体により開繊し且つ成型する工程を有し、前記トウ開繊装置は、前記開繊室の出口における前記搬送路の流路断面形状が、矩形であり、前記搬送路内の前記出口よりも前記トウの搬送方向の上流側に位置する所定位置における前記搬送路の前記流路断面形状が、円形であり、前記搬送路の前記流路断面形状が、前記所定位置から前記出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化している。
【0019】
前記所定位置から前記出口に向けて、前記搬送路の流路断面積が増大していてもよい。
【0020】
前記搬送路を通過した前記トウを前記トウ開繊装置に備えられた滞留部に一時的に滞留させる工程を有し、前記滞留部の流路断面形状が、前記出口における前記搬送路の前記流路断面形状と相似していてもよい。
【0021】
前記出口における前記搬送路の前記流路断面形状が、長方形状であってもよい。
【0022】
前記出口よりも前記上流側に配置された添加装置により、吸水性の粒状物を前記トウに添加する添加工程を有していてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の各態様によれば、トウを気体により開繊して吸収性物品を製造する場合において、トウの繊維密度やトウに添加された粒状物の密度を均一化し易くできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る吸収性物品製造装置の全体図である。
図2図1の気体開繊装置と添加装置とのトウバンドの幅方向から見た鉛直断面図である。
図3図1の開繊成型部の下流側から見た斜視図である。
図4図1の滞留部を通過したトウバンドの搬送方向に垂直な鉛直断面図である。
図5図1の吸収性物品の搬送方向に垂直な鉛直断面図である。
図6】第2実施形態に係る開繊成型部の下流側から見た斜視図である。
図7】第3実施形態の変形例に係る開繊成型部の下流側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、各実施形態について、各図を参照して説明する。以下に言及する上流側と下流側とは、トウバンド60の搬送方向Pの上流側と下流側とを順に指す。
【0026】
(第1実施形態)
[吸収性物品製造装置]
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品製造装置1(以下、単に製造装置1と称する。)の全体図である。製造装置1の近傍には、梱包容器50が配置される。梱包容器50には、トウバンド60がベール状に折り畳まれ、且つ圧縮されて梱包されている。図1の梱包容器50は、断面構造を示している。
【0027】
トウバンド60に含まれる繊維は、セルロースアセテートトウの長繊維であるが、これ以外の繊維であってもよい。一例として製造装置1では、トウバンド60は、幅方向が水平に保たれながら、搬送方向Pに搬送される。
【0028】
製造装置1は、第1製造部2と第2製造部3とを備える。第1製造部2は、第1拡幅装置4、ガイド5、第2拡幅装置6、第1開繊ロール対7、第2開繊ロール対8、気体開繊装置9、添加装置10、及び搬送ロール対11を有する。
【0029】
第1拡幅装置4は、梱包容器50の内部から繰り上げられたトウバンド60を、幅方向に拡幅する。ガイド5は、第1拡幅装置4を通過したトウバンド60を、第2拡幅装置6へ向けてガイドする。第2拡幅装置6は、ガイド5を通過したトウバンド60を、更に幅方向に拡幅する。一例として、第1拡幅装置4と第2拡幅装置6とは、同様の構成を有する。第1拡幅装置4と第2拡幅装置6とは、バンディングジェット装置とも称する。
【0030】
第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8とは、気体開繊装置9よりも上流側において、トウバンド60を周面に接触させて開繊する。第2開繊ロール対8は、第1開繊ロール対7よりも下流側に配置されている。第1開繊ロール対7は、互いの周面を対向させて配置された一対のロール12、13を有する。第2開繊ロール対8は、互いの周面を対向させて配置された一対のロール14、15を有する。第2開繊ロール対8は、第1開繊ロール対7の周速度よりも早い周速度で回転する。
【0031】
第2拡幅装置6を通過したトウバンド60は、一対のロール12、13の間と、一対のロール14、15の間とに挿通される。トウバンド60は、ロール12〜15の周面と接触しながら、第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8とにより搬送方向Pに張力を与えられ、嵩高く開繊される。
【0032】
一対のロール12、13の一方のロールと、一対のロール14、15の一方のロールとの周面には、トウバンド60を幅方向に開繊するための溝部をロール軸周りに螺旋状に形成してもよい。
【0033】
気体開繊装置9は、トウ開繊装置であり、搬送されるトウバンド60が気体Gにより開繊され且つ成型される開繊室43aを含む搬送路43を備える。具体的に気体開繊装置9は、ジェット発生部17、開繊成型部18、及び滞留部19を有する。
【0034】
ジェット発生部17は、開繊成型部18の上流側に取り付けられている。ジェット発生部17は筒状であり、搬送方向Pに延びる内部空間40が形成されている。ジェット発生部17は、内部空間40において、外部から導入される気体Gによりジェットを発生させ、トウバンド60と、添加装置10からトウバンド60に添加される吸水性の粒状物28とを混合する。ジェット発生部17は、トウバンド60と粒状物28とを内部空間40に搬送し、開繊成型部18に導入する。
【0035】
開繊成型部18は筒状であり、内部に搬送方向Pに延びる搬送路43が形成されている。開繊成型部18は、ジェット発生部17を通過したトウバンド60、粒状物28、及び気体Gを搬送路43に搬送しながら混合し、トウバンド60を開繊すると共に、トウバンド60の内部に粒状物28を分散して配置する。粒状物28は、一例として高吸水性樹脂からなるが、これに限定されない。
【0036】
滞留部19は、開繊成型部18の下流側に取り付けられている。滞留部19は、搬送路43を通過したトウバンド60を一時的に滞留させる。これにより滞留部19は、トウバンド60の膨張を抑制すると共に、トウバンド60の嵩又は密度を調整する。滞留部19は、複数の長尺部材32を有する。複数の長尺部材32は、搬送路43の周方向で互いに間隔をおきながら、開繊成型部18から下流側へ向けて延設されている。長尺部材32の上流端部は、開繊成型部18の下流端部に接続されている。複数の長尺部材32の下流端部は、上流側から下流側に向かって互いに接近している。
【0037】
添加装置10は、気体開繊装置9の開繊室43aの出口よりも上流側で、粒状物28をトウバンド60に添加する。具体的に添加装置10は、ジェット発生部17のトウバンド導入口35b(図2参照)よりも上流側において、粒状物28をトウバンド60に添加する。
【0038】
添加装置10は、導入部20とホッパ21とを有する。導入部20は、ジェット発生部17の上流側に取り付けられている。導入部20の内部には、搬送方向Pに延びる内部空間27が形成されている。導入部20は、ホッパ21の下流端部を支持している。また導入部20は、第2開繊ロール対8を通過したトウバンド60を粒状物28と共に内部空間27に流通させ、ジェット発生部17に向けて搬送する。ホッパ21には、粒状物28が貯留される。
【0039】
なお添加装置10は、気体開繊装置9の開繊室43aの出口よりも上流側であれば、ジェット発生部17又は開繊成型部18のいずれに取り付けられていてもよいし、気体開繊装置9と離隔して配置されていてもよい。
【0040】
搬送ロール対11は、気体開繊装置9を通過したトウバンド60を下流側に搬送する。搬送ロール対11は、平行に軸支された一対の搬送ロール(引取ロールとも称する。)30、31を有する。トウバンド60は、一対の搬送ロール30、31の間に挿通される。トウバンド60は、一対の搬送ロール30、31に引き取られ、一対の搬送ロール30、31により厚み方向に押圧される。これにより、吸収体61が製造される。吸収体61は、搬送ロール対11の下流側の第2製造部3に搬送される。
【0041】
第2製造部3は、吸収体61に対して、バックシート63とトップシート64とを重ねて配置する。第2製造部3は、第1供給装置24、シート搬送装置25、第2供給装置26、添着装置29、シート成型ロール対37、及び、貼着装置38を有する。
【0042】
第1供給装置24は、第1シートロール66から帯状のバックシート63を繰り出して、搬送ラインL上に供給する。シート搬送装置25は、バックシート63を搬送ラインLに搬送する。バックシート63の上には、吸収体61が供給される。第2供給装置26は、第2シートロール67から帯状のトップシート64を繰り出して、バックシート63とトップシート64との間で吸収体61を挟むように、トップシート64を搬送ラインL上に供給する。
【0043】
添着装置29は、第2シートロール67とシート成型ロール対37との間において、トップシート64に接着剤を添着する。シート成型ロール対37は、重ねられたバックシート63、吸収体61、及びトップシート64をシート状に成型しながら下流側に搬送する。貼着装置38は、バックシート63とトップシート64とを厚み方向に押圧して、バックシート63とトップシート64とを吸収体61を挟んだ状態で、接着剤により貼着する。製造装置1では、貼着装置38により貼着されたバックシート63、吸収体61、及び、トップシート64が切断され、所定の寸法の吸収性物品62(図5参照)が製造される。
【0044】
なお、吸収性物品62は、本実施形態ではおむつ用途であるが、当然ながらこれ以外の用途でもよく、例えば、尿漏れ防止用パッド用途であってもよい。吸収性物品62が、尿漏れ防止用パッド用途等である場合、バックシート63は、省略してもよい。
【0045】
[気体開繊装置及び添加装置]
図2は、図1の気体開繊装置9と添加装置10とのトウバンド60の幅方向から見た鉛直断面図である。導入部20の下流端部は、導入部20の搬送方向Pの内方へ向けて窪んでいる。導入部20は、トウバンド導入口20aとトウバンド排出口20bとを有する。トウバンド導入口20aは、導入部20の上流端面に設けられている。トウバンド排出口20bは、導入部20の下流端面に設けられている。導入部20の下流端部には、ジェット発生部17の上流端部が差し込まれている。内部空間27は、搬送方向Pに延びている。内部空間27は、ジェット発生部17のトウバンド導入路42に対して滑らかに接続されている。
【0046】
ジェット発生部17は、混合部35とノズル部36とを有する。混合部35は、搬送方向Pに延びる管状部である。混合部35は、気体導入口35a、トウバンド導入口35b、及びトウバンド排出口35cを有する。気体導入口35aは、混合部35の上流側の側部に配置されている。トウバンド導入口35bは、混合部35の上流端部に配置されている。トウバンド排出口35cは、混合部35の下流端部に配置されている。
【0047】
気体導入口35aは、加圧された気体G(一例として空気)を内部空間40に導入する。添加装置10が粒状物28をトウバンド60に添加する添加位置は、気体導入口35aよりも上流側に位置している。トウバンド導入口35bは、トウバンド60を内部空間40に導入する。内部空間40は、搬送方向Pに延びている。混合部35の下流端部は、開繊成型部18に差し込まれている。
【0048】
ノズル部36は、内部空間40の上流側に設けられている。ノズル部36の下流側の先端には、テーパー部36aが形成されている。テーパー部36aは、上流側から下流側に向かって、先細りの形状を有する。
【0049】
テーパー部36aの外周面と対向する混合部35の内周面は、テーパー部36aの外周面と離隔しながら、上流側から下流側に向かって縮径されている。これにより、テーパー部36aの外周面と混合部35の内周面との間には、ジェット流路41が形成されている。ジェット流路41は、環状の流路断面を有する。ジェット流路41は、気体導入口35aから内部空間40へ導入される気体Gにより、ジェットを発生させて内部空間40に噴出させる。
【0050】
ノズル部36の内部には、トウバンド導入路42が形成されている。トウバンド導入路42は、トウバンド導入口35bから下流側に延びている。トウバンド導入路42の出口は、気体導入口35aよりも下流側に配置されている。トウバンド導入路42を通過したトウバンド60は、ジェット流路41を通過した気体Gと混合されて内部空間40を流通する。
【0051】
なお気体Gは、空気以外の気体でもよい。また、トウバンド導入路42の出口と気体導入口35aとは、側方から見て重なる位置に配置されていてもよい。また、トウバンド導入路42の出口は、気体導入口35aよりも上流側に配置されていてもよい。
【0052】
開繊成型部18の上流端部と下流端部とは、開繊成型部18の搬送方向Pの内方へ向けて窪んでいる。開繊成型部18は、トウバンド導入口18aとトウバンド排出口18bとを有する。トウバンド導入口18aとトウバンド排出口18bは、搬送方向Pに離隔している。トウバンド導入口18aは、開繊成型部18の上流端面に配置されている。トウバンド排出口18bは、開繊成型部18の下流端面に配置されている。開繊成型部18の上流端部には、混合部35の下流端部が差し込まれている。内部空間40は、搬送路43に対して滑らかに接続されている。
【0053】
開繊室43aは、搬送路43の長手方向に延びている。本実施形態では、トウバンド導入口18aが、開繊室43aの入口(搬送路43の入口)に相当し、トウバンド排出口18bが、開繊室43aの出口(搬送路43の出口)に相当する。開繊成型部18の下流端部には、複数本の長尺部材32の上流端部が差し込まれている。
【0054】
滞留部19には、複数本の長尺部材32で囲まれた滞留室44が形成されている。滞留室44の流路断面積は、上流側から下流側へ向かうにつれて漸減している。滞留室44において、トウバンド60が長尺部材32から受ける押圧力は、上流側から下流側へ向かうにつれて増大する。これによりトウバンド60は、複数の長尺部材32により圧縮されて密度が増加する。開繊成型部18から排出された気体Gは、複数の長尺部材32の間隙から滞留室44の外部に放散される。
【0055】
長尺部材32は、一例として棒状部材で構成されているが、これに限定されず、例えば、板部材でもよい。長尺部材32を板部材で構成する場合は、板部材の板面をトウバンド60に面接触させるように長尺部材32を配置する。
【0056】
図3は、図1の開繊成型部18の下流側から見た斜視図である。図3に示されるように、開繊成型部18は、搬送方向Pを長手方向とする直方体状に形成されている。開繊成型部18の下流端面には、トウバンド排出口18bの周縁を囲むように、長尺部材32の上流端部が差し込まれる複数の差込孔18cが形成されている。
【0057】
トウバンド導入口18aの周縁形状は、円形である。トウバンド排出口18bの周縁形状は、矩形である。本実施形態では、トウバンド排出口18bの周縁形状は、正方形である。開繊成型部18を下流側から見た場合、トウバンド導入口18aの周縁は、トウバンド排出口18bの正方形状の周縁に接する内接円として形成されている。トウバンド排出口18bの周縁形状における一方の一対の辺18b1は、水平に配置され、他方の一対の辺18b2は、垂直に配置されている。
【0058】
トウバンド導入口18aの内径は、例えば、5mm以上30mm以下の範囲の値に設定されるが、これに限定されない。また、トウバンド排出口18bの周縁形状の一辺の長さは、例えば、5mm以上45mm以下の範囲の値に設定されるが、これに限定されない。
【0059】
搬送路43の流路断面形状は、上流側が円形であり、下流側が矩形である。具体的に、開繊室43aの出口(トウバンド排出口18b)における搬送路43の流路断面形状は、矩形である。開繊室43aの出口よりも上流側に位置する所定位置43bにおける搬送路43の流路断面形状は、円形である。所定位置43bは、本実施形態では、開繊成型部18の内周面における4カ所に位置している。4つの所定位置43bは、搬送路43の周方向に等距離をおいて位置している。
【0060】
トウバンド導入口18aから所定位置43bまでの間の搬送路43の流路断面形状は、円形である。トウバンド導入口18aから所定位置43bまでの内径は、一例として、同一値に設定されている。これにより、トウバンド導入口18aから所定位置43bまでの間では、搬送路43の流路断面積は、一定に設定されている。
【0061】
ここで、搬送路43の流路断面形状は、所定位置43bから開繊室43aの出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化している。搬送路43の流路断面積は、所定位置43bからトウバンド排出口18bの間では、上流側から下流側に向けて増大している。これにより、開繊室43aの流路断面積は、上流側から下流側に向けて増大している。このように開繊成型部18は、トウバンド導入口18aからトウバンド排出口18bに向かう方向において、搬送路43の流路断面積が増大する領域を有する。
【0062】
図2及び3に示すように、所定位置43bは、一例として、トウバンド排出口18bの上流側で、トウバンド導入口18aからトウバンド排出口18bまでの間の最短距離R1の中央M1よりも下流側に位置している。所定位置43bは、トウバンド排出口18bと上流側に最短距離R1の1/4だけ離隔して位置する位置M2よりも下流側にあることがより望ましい。また所定位置43bは、トウバンド排出口18bと上流側に最短距離R1の1/8だけ離隔して位置する位置M3よりも下流側にあることが更に望ましい。
【0063】
開繊室43aをトウバンド60が搬送される際、トウバンド60は、開繊室43aの形状に対応して膨張し、複数本の繊維が、立体的に絡み合いながら開繊されると共に、粒状物28が、トウバンド60の繊維間隙に効率よく分散して配置される。トウバンド60は、開繊成型部18の内周面に押し付けられ、トウバンド排出口18bの周縁形状に成型される。
【0064】
複数の長尺部材32で囲まれた空間(滞留室44)の搬送方向Pに垂直な断面形状は、開繊室43aの出口における搬送路43の流路断面形状と相似している。これにより、滞留部19の流路断面形状が、開繊室43aの出口における搬送路43の流路断面形状と相似している。従って、開繊室43aにより開繊され且つ成型されたトウバンド60の搬送方向Pに垂直な断面形状は、滞留室44においても保持される。
【0065】
なお、一例として、開繊室43aの流路断面積と滞留室44の流路断面積とを縮小することで、気体開繊装置9を通過するトウバンド60の搬送方向Pに垂直な断面積を縮小し、トウバンド60の繊維密度を向上できると共に、トウバンド60の内部において、トウバンド60の複数本の繊維により、粒状物28を定められた位置で保持し易くできる。また、トウバンド60の繊維密度を向上させることで、吸収体61の良好な触感を得ることができる。
【0066】
本実施形態における吸収性物品62の製造方法は、開繊室43aを含む搬送路43を備える気体開繊装置9の開繊室43aにおいて、搬送されるトウバンド60を気体Gにより開繊し且つ成型する工程を有し、気体開繊装置9は、開繊室43aの出口における搬送路43の流路断面形状が、矩形であり、搬送路43内の開繊室43aの出口よりも上流側に位置する所定位置43bにおける搬送路43の流路断面形状が、円形であり、搬送路43の流路断面形状が、所定位置43bから開繊室43aの出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化している。
【0067】
また、当該製造方法は、搬送路43を通過したトウバンド60を気体開繊装置9に備えられた滞留部19に一時的に滞留させる工程を有し、滞留部19の流路断面形状が、開繊室43aの出口における搬送路43の流路断面形状と相似している。
【0068】
また、当該製造方法は、開繊室43aの出口よりも上流側に配置された添加装置10により、粒状物28をトウバンド60に添加する添加工程を有する。
【0069】
[トウバンド及び吸収性物品]
図4は、図1の滞留部19を通過したトウバンド60の搬送方向Pに垂直な鉛直断面図である。図4に示すように、トウバンド60の搬送方向Pに垂直な鉛直断面は、矩形に成型されている。これにより、トウバンド60の幅方向の厚みは、略一定に設定されている。
【0070】
図5は、図1の吸収性物品62の搬送方向Pに垂直な鉛直断面図である。図5に示すように、吸収体61を第2製造部3に通過させて得られる吸収性物品62では、吸収体61が搬送ロール対11等により鉛直方向に押圧されたことで、吸収体61の厚みが減少している。吸収性物品62では、吸収体61の幅方向における繊維密度と粒状物28の密度とのばらつきが抑制されている。
【0071】
これにより吸収性物品62は、幅方向における吸水性能のばらつきが抑制されており、吸収性物品62の幅方向両端においても、吸収性物品62の幅方向中央と同様に豊富に吸水できる。よって例えば、吸収性物品62に吸収された水分が、吸収性物品62の幅方向両端から漏出するのが防止され、吸収性物品62を安定して使用できる。
【0072】
以上に説明したように、気体開繊装置9によれば、搬送路43の流路断面形状が、搬送路43の所定位置43bから開繊室43aの出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化しているので、開繊室43aを通過するトウバンド60が、開繊室43aにおいて複数本の繊維が気体Gにより絡み合うように開繊されながら、開繊室43aの出口の周縁形状により、トウバンド60が円形から矩形にスムーズに成型される。
【0073】
このため、搬送方向Pに垂直な断面が矩形に成型されたトウバンド60を、一側面に垂直な方向(本実施形態では鉛直方向)に押圧して吸収性物品62を製造する場合において、搬送方向Pから見て、前記垂直な方向に直交する一方向(ここでは幅方向)にトウバンド60の繊維密度がばらつくのを防止できると共に、トウバンド60に粒状物28が添加された場合において、前記一方向に粒状物密度がばらつくのを防止できる。
【0074】
よって、トウバンド60を気体開繊装置9により開繊して吸収性物品62を製造する場合において、トウバンド60の繊維密度やトウバンド60に添加された粒状物28の密度を均一化し易くできる。
【0075】
また、所定位置43bから開繊室43aの出口に向けて、搬送路43の流路断面積が増大しているため、搬送路43の流路断面積が増大している領域において、トウバンド60を搬送しながら効率よく開繊できる。
【0076】
また、気体開繊装置9が滞留部19を備え、滞留部19の流路断面形状が、開繊室43aの出口における搬送路43の流路断面形状と相似しているので、搬送路43を通過することにより開繊され且つ搬送方向Pに垂直な断面が矩形に成型されたトウバンド60の繊維密度を滞留部19において高めながら、トウバンド60の形状を滞留部19において維持し易くできる。
【0077】
また製造装置1は、気体開繊装置9と、開繊室43aの出口よりも上流側で、粒状物28をトウバンド60に添加する添加装置10とを備えているので、開繊室43a内でトウバンド60を開繊しながら、トウバンド60の内部に粒状物28を分散して配置し易くできると共に、搬送方向Pに垂直な断面が矩形に成型されたトウバンド60を一側面に垂直な方向に押圧した際、搬送方向Pから見て、前記垂直な方向に直交する一方向に粒状物28の密度がばらつくのを一層防止できる。以下、その他の実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
【0078】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る開繊成型部118の下流側から見た斜視図である。図6に示すように、開繊成型部118の所定位置143bは、一例として、トウバンド導入口118aからトウバンド排出口118bまでの間の最短距離R2の中央M4よりも上流側に位置している。これにより搬送路143の流路断面形状は、所定位置143bからトウバンド排出口118bまでの領域において、矩形状に形成されている。また、搬送路143の流路断面積は、所定位置143bから開繊室143aの出口に向けて、増大している。
【0079】
ここで所定位置143bは、トウバンド導入口118aと下流側に最短距離R2の1/4だけ離隔して位置する位置M5よりも上流側にあることが、より望ましい。また所定位置143bは、トウバンド導入口118aと下流側に最短距離R2の1/8だけ離隔して位置する位置M6よりも上流側にあることが、更に望ましい。
【0080】
このような開繊成型部118を用いることで、搬送路143を搬送されるトウバンド60を早い段階で開繊しながら、トウバンド60の搬送方向Pに垂直な断面を矩形状に安定して成型できる。
【0081】
図7は、第2実施形態の変形例に係る開繊成型部218の下流側から見た正面図である。図7に示すように、本変形例では、一例として、トウバンド排出口218bの周縁形状の一対の長辺218b1が、水平方向に延び、一対の短辺218b2が、鉛直方向に延びている。開繊室243aの出口における搬送路243の流路断面形状は、長方形状である。
【0082】
長辺218b1の長さ寸法は、短辺218b2の長さ寸法の1倍より大きく10倍以下の範囲の値に設定されるが、これに限定されない。長辺218b1の長さ寸法は、例えば、5mm以上200mm以下の範囲の値に設定される。短辺218b2の長さ寸法は、例えば、5mm以上45mm以下の範囲の値に設定される。開繊成型部218を下流側から見た場合、トウバンド導入口218aの周縁は、トウバンド排出口218bの周縁よりも内方に位置している。
【0083】
このように本変形例では、開繊室243aの出口(トウバンド排出口218b)における搬送路243の流路断面形状が、長方形状である気体開繊装置9を用いて、トウバンド60を開繊し且つ成型する。開繊成型部218を用いることで、トウバンドの搬送方向Pに垂直な断面は、長方形に成型される。開繊室243aの出口における搬送路243の流路断面形状が、長方形状であることによって、開繊成型部218により成型されるトウバンドの搬送方向Pに垂直な断面形状の設計自由度を高めることができる。
【0084】
(確認実験)
製造装置1を用いて、粒状物28が添加され且つ気体開繊装置9と搬送ロール対11とを通過した成型品(吸収体61)を、実施例1として製造した。また、開繊成型部18の代りに開繊成型部118を備える製造装置1を用いて、粒状物28が添加され且つ気体開繊装置9と搬送ロール対11とを通過した成型品を、実施例2として製造した。
【0085】
また、開繊室の入口から出口に向けて、開繊室の流路断面形状が円形である気体開繊装置を用いたこと以外は、実施例1と同様の設定条件により、製造装置を用いて、比較例1の成型品を製造した。
【0086】
また、開繊室の入口から出口に向けて、開繊室の流路断面形状が、トウバンドの幅方向を長軸方向とし、トウバンドの厚み方向を短軸方向とする略楕円形状である気体開繊装置を用いたこと以外は、実施例1と同様の設定条件により、製造装置を用いて、比較例2の成型品を製造した。
【0087】
また、気体開繊装置を用いず、第2開繊ロール対8と搬送ロール対11との間において、トウバンドに上方から粒状物を添加した以外は、実施例1と同様の設定条件により、製造装置を用いて、比較例3の成型品を製造した。
【0088】
また、開繊室の入口から出口に向けて、開繊室の流路断面形状が、トウバンドの幅方向を長軸方向とし且つトウバンドの厚み方向を短軸方向とする長方形状であり、直方体状の内部空間において、搬送されるトウバンドに上方と下方とから加圧空気を当ててトウバンドを開繊する気体開繊装置を用いたこと以外は、実施例1と同様の設定条件により、製造装置を用いて、比較例4の成型品を製造した。
【0089】
実施例1、2及び比較例1〜4では、搬送方向寸法30cm当たりのトウバンドの重量を1.5g、搬送方向寸法30cm当たりのトウバンドに添加する粒状物量を1.0gにそれぞれ設定した。
【0090】
成型品の幅方向中央位置の厚み寸法と、成型品の幅方向一方側の端部から中央側に向けて5mm離隔した位置の厚み寸法と、成型品の幅方向他方側の端部から中央側に向けて5mm離隔した位置の厚み寸法とを計測し、これらの3点の位置における成型品の厚み最大差を算出した。
【0091】
また、成型品を手で触ったときの嵩高さ及び触感について感覚評価を行った。この評価では、成型品が厚み方向に十分膨らんで柔らかい場合を「良」と評価し、トウバンドが開繊されているが、ふんわり感に欠ける場合を「可」と評価し、トウバンドが膨らんでおらず、成型品が薄く感じられる場合を「不可」と評価した。
【0092】
また、成型品と同じ幅寸法の枠内に成型品を入れ、成型品の幅方向中央に上方から青色着色液(20ml)を滴下した。青色着色液の滴下開始から30秒経過後、成型品の上面における青色着色液の成型品の長手方向の液拡散長の最大寸法と最小寸法とを計測し、液拡散長最大差を算出した。ここで、液拡散長最大差が小さいほど、成型品の異なる部分における液拡散性のばらつきが小さく、成型品の幅方向における繊維密度のばらつきと粒状物密度のばらつきとが小さいと評価できる。
【0093】
また、成型品の上面と下面とを一対の紙シートで挟んでなる吸収性物品を製造した直後、この吸収性物品から成型品を抜き出した。成型品の粒状物添加量A1(g)に対する吸収性物品から抜き出した成型品の粒状物残留量A2(g)の割合A2/A1を算出し、その算出値を百分率で表した値を粒状物保持率(%)とした。実施例1、2及び比較例1〜4の気体開繊装置の各仕様を表1に示す。また、試験結果を表2に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
表2に示すように、実施例1及び2の成型品は、厚み最大差が非常に小さく、嵩高さ及び触感が優れていることが分かった。また、実施例1及び2の成型品は、粒状物保持率が、実施例1、2及び比較例1〜4の中で、最も優れていることが分かった。また、実施例1及び2は、比較例1〜4に比べて液拡散長最大差が小さく、且つ、成型品の幅方向における繊維密度のばらつきと粒状物密度のばらつきとが小さいことが分かった。
【0097】
実施例1及び2では、搬送路の流路断面形状が、所定位置から出口に向けて、円形から矩形に滑らかに変化していることで、トウバンドが開繊されながら、トウバンドが円形から矩形にスムーズに成型され、搬送方向Pから見て、成型品の幅方向にトウバンドの繊維密度がばらつくのが防止されたと共に、成型品の幅方向に粒状物密度がばらつくのが防止されたことが考えられる。
【0098】
比較例1の成型品では、嵩高さ及び触感と、粒状物保持率とが良好であるものの、厚み最大差が、実施例1、2及び比較例2〜4に比べて大きいことが分かった。また、比較例1の成型品は、実施例1、2及び比較例1〜4の中でも液拡散長最大差が大きく、且つ、成型品の幅方向における繊維密度のばらつきと粒状物密度のばらつきとが大きいことが分かった。
【0099】
比較例1では、開繊室の流路断面形状が円形であるため、搬送方向に垂直な断面が円形に成型されたトウバンドが、搬送ロール対により押圧されたことで、トウバンドの幅方向両端と幅方向中央とにおいて、トウバンドの繊維密度と粒状物密度とがばらついたことが考えられる。
【0100】
比較例2の成型品では、比較例1と同様に嵩高さ及び触感と、粒状物保持率とが良好であるものの、厚み最大差が比較例1に次いで大きいことが分かった。また、比較例2の成型品は、液拡散長最大差が比較例2に次いで大きく、且つ、成型品の幅方向における繊維密度のばらつきと粒状物密度のばらつきとが、比較例2に次いで大きいことが分かった。
【0101】
比較例2では、開繊室の流路断面形状が、トウバンドの幅方向を長軸方向とし、トウバンドの厚み方向を短軸方向とする略楕円形状であるため、搬送方向に垂直な断面が略楕円状に成型されたトウバンドが搬送ロール対により押圧されたことで、比較例1と同様に、トウバンドの幅方向両端と幅方向中央とにおいて、トウバンドの繊維密度と粒状物密度とがばらついたことが考えられる。
【0102】
比較例3の成型品では、嵩高さ及び触感が優れず、粒状物保持率も、実施例1及び比較例1〜4の中で最も低いことが分かった。また比較例3では、トウバンドが粒状物を保持することが困難であったため、液拡散長最大差を測定できなかった。
【0103】
比較例3では、トウバンドが気体により開繊されなかったため、気体開繊装置を用いた場合に比べてトウバンドが十分に開繊されなかったことや、開繊が不足するトウバンドに粒状物が添加されたため、粒状物がトウバンドの複数本の繊維に保持されにくかったことが考えられる。
【0104】
比較例4の成型品は、厚み最大差が実施例1と同等であるものの、嵩高さ及び触感がそれほど良くなく、粒状物保持率も比較例3に次いで低いことが分かった。また比較例4では、比較例3と同様にトウバンドが粒状物を保持することが困難であったため、液拡散長最大差を測定できなかった。
【0105】
比較例4では、気体開繊装置内において、トウバンドに上方と下方とから当てられる加圧空気が、トウバンドの表面に沿って開繊室内を入口から出口に向けて流れる層流になり易く、実施例1及び2のように、トウバンドを気体により効率よく開繊しながら成型することが困難であったため、トウバンドの開繊が不足して、トウバンドの内部に粒状物が均一に分散して配置されにくくなったことが考えられる。
【0106】
なお、表2には示さないが、比較例1〜4では、液拡散長が最大となる位置は、成型品の幅方向両側であり、液拡散長が最小となる位置は、成型品の幅方向中央であった。これにより、比較例1〜4の成型品では、幅方向中央に比べて、幅方向両側において、繊維密度と粒状物密度とが共に低いことが分かった。実施例1及び2では、このような成型品の幅方向における液拡散長のばらつきは、ほとんど見られなかった。
【0107】
本発明は、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。各実施形態は、互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成または方法を、他の実施形態に適用してもよい。各実施形態で製造される吸収体の表面には、別のシートや、別の吸収性物品を重ねて配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上のように本発明の各態様によれば、トウを気体により開繊して吸収性物品を製造する場合において、トウの繊維密度やトウに添加された粒状物の密度を均一化し易くできる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できるトウ開繊装置、これを用いた吸収性物品製造装置、及び吸収性物品の製造方法として、広く適用すると有益である。
【符号の説明】
【0109】
P 搬送方向
1 吸収性物品製造装置
7 第1開繊ロール対(開繊ロール対)
8 第2開繊ロール対(開繊ロール対)
9 気体開繊装置(トウ開繊装置)
10 添加装置
18、118、218 開繊成型部
19 滞留部
28 粒状物
39 長尺部材
43、143、243 搬送路
43a、143a、243a 開繊室
43b、143b、243b 所定位置
60 トウバンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7