(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記気体開繊装置よりも前記上流側において、前記トウを周面に接触させて開繊する複数対の開繊ロール対を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収性物品製造装置。
前記気体開繊装置よりも前記上流側において、前記トウを複数対の開繊ロール対の周面に接触させて開繊する、請求項7〜11のいずれか1項に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、各実施形態について、各図を参照して説明する。以下に言及する上流側と下流側とは、トウバンド60の搬送方向Pの上流側と下流側とを順に指す。
【0022】
(第1実施形態)
[吸収性物品製造装置]
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品製造装置1(以下、単に製造装置1と称する。)の全体図である。製造装置1の近傍には、梱包容器50が配置される。梱包容器50には、トウバンド60がベール状に折り畳まれ、且つ圧縮されて梱包されている。
図1の梱包容器50は、断面構造を示している。
【0023】
トウバンド60に含まれる繊維は、セルロースアセテートトウの長繊維であるが、これ以外の繊維であってもよい。一例として製造装置1では、トウバンド60は、幅方向が水平に保たれながら、搬送方向Pに搬送される。
【0024】
製造装置1は、第1製造部2と第2製造部3とを備える。第1製造部2は、第1拡幅装置4、ガイド5、第2拡幅装置6、第1開繊ロール対7、第2開繊ロール対8、気体開繊装置9、添加装置10、搬送ロール対11、及び複数のフリーロール12を有する。
【0025】
第1拡幅装置4は、梱包容器50の内部から繰り上げられたトウバンド60を、幅方向に拡幅する。ガイド5は、第1拡幅装置4を通過したトウバンド60を、第2拡幅装置6へ向けてガイドする。第2拡幅装置6は、ガイド5を通過したトウバンド60を、更に幅方向に拡幅する。一例として、第1拡幅装置4と第2拡幅装置6とは、同様の構成を有する。第1拡幅装置4と第2拡幅装置6とは、バンディングジェット装置とも称する。
【0026】
第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8とは、気体開繊装置9よりも上流側において、トウバンド60を周面に接触させて開繊する。第2開繊ロール対8は、第1開繊ロール対7よりも下流側に配置されている。第1開繊ロール対7は、互いの周面を対向させて配置された一対のロール13、14を有する。第2開繊ロール対8は、互いの周面を対向させて配置された一対のロール15、16を有する。第2開繊ロール対8は、第1開繊ロール対7の周速度よりも早い周速度で回転する。
【0027】
第2拡幅装置6を通過したトウバンド60は、一対のロール13、14の間と、一対のロール15、16の間とに挿通される。トウバンド60は、ロール13〜16の周面と接触しながら、第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8とにより搬送方向Pに張力を与えられ、嵩高く開繊される。
【0028】
一対のロール13、14の一方のロールと、一対のロール15、16の一方のロールとの周面には、トウバンド60を幅方向に開繊するための溝部をロール軸周りに螺旋状に形成してもよい。
【0029】
気体開繊装置9は、トウ開繊装置であり、搬送されるトウバンド60を気体Gで開繊する開繊室43aを含む搬送路43が形成されている。気体開繊装置9の上流側と下流側とには、複数のフリーロール12が配置されている。第2開繊ロール対8を通過したトウバンド60は、複数のフリーロール12により案内され、上方から下方へ向けて、気体開繊装置9に導入される。
【0030】
気体開繊装置9は、導入部17、ジェット発生部18、開繊成型部19、及び滞留部20を有する。気体開繊装置9では、上方から下方へ向けて、導入部17、ジェット発生部18、開繊成型部19、及び滞留部20が順に配置されている。以下、この気体開繊装置9の配置を垂直配置とも称する。
【0031】
導入部17は、ジェット発生部18の上流側に取り付けられている。導入部17は、ブロック部33とガイド部34とを有する。ブロック部33は直方体状に形成され、搬送方向Pに延びる内部空間27が形成されている。ガイド部34は筒状に形成され、ブロック部33の上側に設けられている。ガイド部34の内径は、下流側から上流側へ向けて拡大されている。導入部17は、第2開繊ロール対8を通過したトウバンド60と、添加装置10により供給される吸水性の粒状物28とをガイド部34により鉛直方向にガイドしながら、ブロック部33の内部空間27に流通させ、ジェット発生部18に導入する。
【0032】
ジェット発生部18は、開繊成型部19の上流側に取り付けられている。ジェット発生部18は円筒状であり、搬送方向Pに延びる内部空間40が形成されている。ジェット発生部18は、内部空間40において、外部から導入される気体Gによりジェットを発生させ、トウバンド60と粒状物28とを混合する。ジェット発生部18は、トウバンド60と粒状物28とを内部空間40に搬送し、開繊成型部19に導入する。
【0033】
開繊成型部19は筒状であり、内部に搬送方向Pに延びる搬送路43が形成されている。開繊成型部19は、ジェット発生部18を通過したトウバンド60、粒状物28、及び気体Gを搬送路43に搬送しながら混合し、開繊室43aにおいて、トウバンド60を開繊して成型すると共に、トウバンド60の内部に粒状物28を分散して配置する。
【0034】
滞留部20は、開繊成型部19の下流側に取り付けられている。滞留部20は、搬送路43を通過したトウバンド60を一時的に滞留させる。これにより滞留部20は、トウバンド60の膨張を抑制すると共に、トウバンド60の嵩又は繊維密度を調整する。滞留部20は、複数の長尺部材32を有する。複数の長尺部材32は、搬送路43の周方向で互いに間隔をおきながら、開繊成型部19から下流側へ向けて延設されている。長尺部材32の上流端部は、開繊成型部19の下流端部に接続されている。複数の長尺部材32の下流端部は、上流側から下流側に向かって互いに接近している。開繊室43aの出口を通過したトウバンド60は、滞留部20を鉛直方向に通過する。
【0035】
添加装置10は、気体開繊装置9の開繊室43aの出口よりも上流側に位置する添加位置Nにおいて、吸水性の粒状物28をトウバンド60に添加する。具体的に添加装置10は、ジェット発生部18のトウバンド導入口35b(
図2参照)よりも上流側において、粒状物28をトウバンド60に添加する。粒状物28は、一例として高吸水性樹脂からなる。
【0036】
ここで製造装置1では、添加位置Nの下方に開繊室43aの出口が配置された状態で、添加位置Nから開繊室43aの出口へ向けて、トウバンド60が上方から下方へ搬送される。一例として製造装置1では、気体開繊装置9において、添加位置Nの真下に開繊室43aの出口が配置された状態で、添加位置Nから開繊室43aの出口へ向けて、トウバンド60が鉛直方向に搬送される。
【0037】
添加装置10は、ホッパ21と供給管22とを有する。ホッパ21には、粒状物28が貯留される。供給管22は、ホッパ21に貯留された粒状物28を導入部17に供給する。供給管22の下流端部は、導入部17の上方に配置されている。本実施形態では、添加位置Nは、開繊室43aの入口よりも上流側に位置している。具体的に添加位置Nは、ガイド部34の上端位置に設定されている。
【0038】
添加装置10は、ホッパ21に貯留された粒状物28を、ベール状のトウバンド60の一方の面(一例として、トウバンド60が開繊ロール対7、8を通過する際には上面に相当する面)に添加する。製造装置1では、供給管22を介して、ホッパ21に貯留された粒状物28を落下させてトウバンド60に添加する。なお、加圧された気体(一例として空気)により、粒状物28を供給管22の下流端部から噴出させ、トウバンド60に添加してもよい。
【0039】
また搬送路43は、開繊室43aの上流側又は下流側に配置されたその他の開繊室を含んでいてもよい。この場合、添加装置10は、複数の開繊室のうち、搬送方向Pの最も下流側における開繊室の出口よりも上流側に位置する添加位置Nで、粒状物28をトウバンド60に添加すればよい。またこの場合、添加位置Nは、例えば、複数の開繊室のうち、最も上流側における開繊室の入口よりも上流側に位置していてもよい。
【0040】
搬送ロール対11は、気体開繊装置9の下流側に配置されたフリーロール12を通過したトウバンド60を下流側に搬送する。搬送ロール対11は、平行に軸支された一対の搬送ロール(引取ロールとも称する。)30、31を有する。トウバンド60は、一対の搬送ロール30、31の間に挿通される。トウバンド60は、一対の搬送ロール30、31に引き取られ、一対の搬送ロール30、31により厚み方向に押圧される。これにより、吸収体61が製造される。吸収体61は、搬送ロール対11の下流側の第2製造部3に搬送される。
【0041】
第2製造部3は、吸収体61に対して、バックシート63とトップシート64とを重ねて配置する。第2製造部3は、第1供給装置24、シート搬送装置25、第2供給装置26、添着装置29、シート成型ロール対37、及び、貼着装置38を有する。
【0042】
第1供給装置24は、第1シートロール66から帯状のバックシート63を繰り出して、搬送ラインL上に供給する。シート搬送装置25は、バックシート63を搬送ラインLに搬送する。バックシート63の上には、吸収体61が供給される。第2供給装置26は、第2シートロール67から帯状のトップシート64を繰り出して、バックシート63とトップシート64との間で吸収体61を挟むように、トップシート64を搬送ラインL上に供給する。
【0043】
添着装置29は、第2シートロール67とシート成型ロール対37との間において、トップシート64に接着剤を添着する。シート成型ロール対37は、重ねられたバックシート63、吸収体61、及びトップシート64をシート状に成型しながら下流側に搬送する。貼着装置38は、バックシート63とトップシート64とを厚み方向に押圧して、バックシート63とトップシート64とを吸収体61を挟んだ状態で、接着剤により貼着する。製造装置1では、貼着装置38により貼着されたバックシート63、吸収体61、及び、トップシート64が切断され、所定の寸法の吸収性物品62(
図5参照)が製造される。
【0044】
なお吸収性物品62は、本実施形態ではおむつ用途であるが、当然ながらこれ以外の用途でもよく、例えば、尿漏れ防止用パッド用途であってもよい。吸収性物品62が、尿漏れ防止用パッド用途等である場合、バックシート63は、省略してもよい。
【0045】
[気体開繊装置及び添加装置]
図2は、
図1の気体開繊装置9と添加装置10とのトウバンド60の幅方向から見た鉛直断面図である。ガイド部34の下部の中央には、トウバンド60と粒状物28とを通過させる開口34aが設けられている。ブロック部33の下流端部は、ブロック部33の搬送方向Pの内方へ向けて窪んでいる。
【0046】
ブロック部33は、トウバンド導入口33aとトウバンド排出口33bとを有する。トウバンド導入口33aは、ブロック部33の上流端面に設けられている。トウバンド導入口33aは、開口34aと鉛直方向に重なっている。トウバンド排出口33bは、ブロック部33の下流端面に設けられている。ブロック部33の下流端部には、ジェット発生部18の上流端部が差し込まれている。内部空間27は、鉛直方向に延びている。内部空間27は、ジェット発生部18のトウバンド導入路42に対して滑らかに接続されている。
【0047】
ジェット発生部18は、混合部35とノズル部36とを有する。混合部35は、搬送方向Pに延びる管状部である。混合部35は、気体導入口35a、トウバンド導入口35b、及びトウバンド排出口35cを有する。気体導入口35aは、混合部35の上流側の側部に配置されている。トウバンド導入口35bは、混合部35の上流端部に配置されている。トウバンド排出口35cは、混合部35の下流端部に配置されている。
【0048】
気体導入口35aは、加圧された気体G(一例として空気)を内部空間40に導入する。これにより気体開繊装置9は、搬送路43に気体Gを導入する気体導入口35aを有している。添加位置Nは、気体導入口35aよりも上流側に位置している。トウバンド導入口35bは、トウバンド60を内部空間40に導入する。内部空間40は、鉛直方向に延びている。混合部35の下流端部は、開繊成型部19に差し込まれている。
【0049】
ノズル部36は、内部空間40の上流側に設けられている。ノズル部36の下流側の先端には、テーパー部36aが形成されている。テーパー部36aは、上流側から下流側に向かって、先細りの形状を有する。
【0050】
テーパー部36aの外周面と対向する混合部35の内周面は、テーパー部36aの外周面と離隔しながら、上流側から下流側に向かって縮径されている。これにより、テーパー部36aの外周面と混合部35の内周面との間には、ジェット流路41が形成されている。ジェット流路41は、環状断面を有する。ジェット流路41は、気体導入口35aから内部空間40へ導入される気体Gにより、ジェットを発生させて内部空間40に噴出させる。
【0051】
ノズル部36の内部には、トウバンド導入路42が形成されている。トウバンド導入路42は、トウバンド導入口35bから下流側に延びている。トウバンド導入路42は、鉛直方向に延びている。トウバンド導入路42の出口は、気体導入口35aよりも下流側に配置されている。トウバンド導入路42を通過したトウバンド60は、ジェット流路41を通過した気体Gと混合されて内部空間40を流通する。
【0052】
なお気体Gは、空気以外の気体でもよい。また、トウバンド導入路42の出口と気体導入口35aとは、側方から見て重なる位置に配置されていてもよい。また、トウバンド導入路42の出口は、気体導入口35aよりも上流側に配置されていてもよい。
【0053】
開繊成型部19の上流端部と下流端部とは、開繊成型部19の搬送方向Pの内方へ向けて窪んでいる。開繊成型部19は、トウバンド導入口19aとトウバンド排出口19bとを有する。トウバンド導入口19aとトウバンド排出口19bは、搬送方向Pに離隔している。トウバンド導入口19aは、開繊成型部19の上流端面に配置されている。トウバンド排出口19bは、開繊成型部19の下流端面に配置されている。開繊成型部19の上流端部に混合部35の下流端部が差し込まれることにより、内部空間40は、搬送路43に対して滑らかに接続されている。
【0054】
搬送路43は、鉛直方向に延びている。開繊室43aは、搬送路43の長手方向に延びている。本実施形態では、トウバンド導入口19aが開繊室43aの入口に相当し、トウバンド排出口19bが開繊室43aの出口に相当する。開繊成型部19の下流端部には、複数本の長尺部材32の上流端部が差し込まれている。
【0055】
一例として、開繊室43aの出口の流路断面形状は、トウバンド60の幅方向を長軸方向とする略楕円形であるが、これに限定されず、例えば、円形、矩形、及び多角形のいずれでもよい。また、搬送路43は、開繊室43aの流路断面積が、上流側から下流側へ向けて増大する領域を有していてもよい。
【0056】
滞留部20には、複数本の長尺部材32で囲まれた滞留室44が形成されている。滞留室44は、鉛直方向に延びている。滞留室44の流路断面積は、上流側から下流側へ向かうにつれて漸減している。滞留室44において、トウバンド60が長尺部材32から受ける押圧力は、上流側から下流側へ向かうにつれて増大する。これによりトウバンド60は、複数の長尺部材32により圧縮されて繊維密度が増加する。開繊成型部19から排出された気体Gは、複数の長尺部材32の間隙から滞留室44の外部に放散される。
【0057】
長尺部材32は、一例として棒状部材で構成されているが、これに限定されず、例えば、板部材でもよい。長尺部材32を板部材で構成する場合は、板部材の板面をトウバンド60に面接触させるように長尺部材32を配置する。
【0058】
本実施形態では、添加位置Nから開繊室43aの出口までの間に配置された内部空間27、トウバンド導入路42、内部空間40、及び搬送路43の各長手方向が、鉛直方向と平行に設定されている。
【0059】
トウバンド60が開繊室43aを搬送される際、トウバンド60は、開繊室43aの流路断面形状に対応して膨張し、複数本の繊維が嵩高に絡み合いながら開繊されると共に、粒状物28が、トウバンド60の繊維間隙に分散して配置される。トウバンド60は、開繊成型部19の内周面に押し付けられ、開繊室43aの出口における流路断面形状に成型される。
【0060】
なお、一例として、開繊室43aの流路断面積と滞留室44の流路断面積とを縮小することで、気体開繊装置9を通過するトウバンド60の搬送方向Pに垂直な断面積を縮小し、トウバンド60の繊維密度を向上できると共に、トウバンド60の内部において、トウバンド60の複数本の繊維により、粒状物28を所定位置で保持し易くできる。また、トウバンド60の繊維密度を向上させることで、吸収体61の良好な触感を得ることができる。
【0061】
ここで製造装置1では、添加位置Nの真下に開繊室43aの出口が配置され、添加位置Nから開繊室43aの出口へ向けて、トウバンド60が鉛直方向に搬送されるため、添加位置Nから開繊室43aの出口までの間では、粒状物28に作用する重力の方向が搬送方向Pと一致され、搬送方向Pに垂直な方向に重力が粒状物28に作用するのが抑制される。従って、開繊室43aでトウバンド60が開繊される際、粒状物28は、搬送方向Pに垂直な方向に重力により移動するのが抑制される。
【0062】
これにより、添加位置Nから開繊室43aの出口までの間において、粒状物28が、トウバンド60の内部に均一に分散して配置された状態で、トウバンド60が開繊される。
【0063】
なお製造装置1では、添加位置Nの下方に開繊室43aの出口が配置されていればよく、添加位置Nから開繊室43aの出口までの間に配置された内部空間27、トウバンド導入路42、内部空間40、及び搬送路43の各長手方向が、必ずしも鉛直方向に平行でなくてもよい。このため、例えば、内部空間27、トウバンド導入路42、内部空間40、及び搬送路43のいずれかの長手方向が、鉛直方向に対して、0°以上30°以内の範囲の値の角度で傾斜していてもよい。
【0064】
一例として、内部空間27、トウバンド導入路42、内部空間40、及び搬送路43のいずれかの長手方向は、鉛直方向と平行であることが望ましく、内部空間27、トウバンド導入路42、内部空間40、及び搬送路43の各長手方向は、鉛直方向と平行であることがより望ましい。
【0065】
また、気体開繊装置9の開繊室43aの出口よりも下流側の少なくとも一部分(例えば滞留部20)は、長手方向が鉛直方向に対して傾斜するように配置されていてもよいし、長手方向が水平方向と平行に配置されていてもよい。
【0066】
このように本実施形態では、搬送されるトウバンド60を気体Gで開繊する開繊室43aを含む搬送路43が形成された気体開繊装置9と、吸水性の粒状物28をトウバンド60に添加する添加装置10とを用い、開繊室43aの出口よりも上流側に位置し且つ添加位置Nの下方に開繊室43aの出口を配置した状態で、添加位置Nから開繊室43aの出口へ向けて、トウバンド60を上方から下方へ搬送する。
【0067】
また、添加位置Nの真下に開繊室43aの出口を配置した状態で、添加位置Nから開繊室43aの出口へ向けて、トウバンド60を鉛直方向に搬送する。また、添加位置Nを、開繊室43aの入口よりも上流側に位置させる。
【0068】
また、開繊室43aの出口を通過したトウバンド60を一時的に滞留させる滞留部20を有する気体開繊装置9を用い、開繊室43aの出口を通過したトウバンド60を、滞留部20に鉛直方向に通過させる。
【0069】
また、搬送路43に気体Gを導入する気体導入口35aを有する気体開繊装置9を用い、添加位置Nを、気体導入口35aよりも上流側に位置させる。また、気体開繊装置9よりも上流側において、トウバンド60を複数対の開繊ロール対7、8の周面に接触させて、トウバンド60を開繊する。
【0070】
[トウバンド及び吸収性物品]
図3は、粒状物28が添加された従来のトウバンド60Xの搬送方向から見た鉛直断面図である。
図3は、一例として、粒状物の添加位置から開繊室の出口までの間の部分が水平になるように気体開繊装置を配置し、添加位置から開繊室の出口へ向けてトウバンド60Xを水平方向に搬送すると共に、添加位置においてトウバンド60Xに上方から粒状物28を添加した場合のトウバンド60Xの鉛直断面を示している。
図3に示すように、トウバンド60Xの内部では、開繊室において開繊されるトウバンド60Xに対して、トウバンド60Xの搬送方向に垂直な一方向(鉛直方向)に重力が粒状物28に作用したことで、粒状物28がトウバンド60Xの下側に偏在している。
【0071】
図4は、
図1の滞留部20を通過し且つ搬送ロール対11より上流側を搬送されるトウバンド60の搬送方向Pから見た鉛直断面図である。
図4に示すように、これに対して製造装置1では、添加位置Nから開繊室43aの出口までの間において、トウバンド60の搬送方向Pに垂直な方向に重力が粒状物28に作用するのが抑制されたことにより、トウバンド60の内部に粒状物28が均一に分散されて配置されている。
【0072】
また製造装置1では、全ての開繊ロール対(本実施形態では、第1開繊ロール対7と第2開繊ロール対8)によりトウバンド60を開繊した後、気体開繊装置9によりトウバンド60を開繊したことにより、トウバンド60が開繊されて嵩高に膨らんだ状態を維持しつつ、トウバンド60の繊維間隙に均一に分散した所定量の粒状物28が、トウバンド60の複数本の繊維に保持されている。
【0073】
図5は、
図1の製造装置1により製造された吸収性物品62の搬送方向Pから見た鉛直断面図である。
図5に示すように、製造装置1では、トウバンド60の内部に粒状物28が均一に分散されて配置された吸収体61の下方にバックシート63を配置し、上方にトップシート64を配置したことにより、幅方向に均一な吸水性能を有する吸収性物品62が製造される。
【0074】
吸収性物品62は、吸水性能が部分的にばらつくのが防止され、幅方向に均一な吸水性能を発揮できるため、吸収性物品62の全体において良好に吸水できる。また吸収体61の内部では、粒状物28が偏在していないので、粒状物28の偏在位置で水分が集中して吸水されることで吸収性物品62の表面がべたつきを生じるのが防止され、吸収性物品62の吸水後の触感を良好に保つことができる。
【0075】
以上に説明したように、製造装置1によれば、添加位置Nの下方に開繊室43aの出口が配置された状態で、添加位置Nから開繊室43aの出口へ向けて、トウバンド60が上方から下方へ搬送されると共に、開繊室43aの出口よりも上流側に位置する添加位置Nにおいて、粒状物28がトウバンド60に添加されるので、開繊室43aでトウバンド60が開繊される際、粒状物28に対して、搬送方向Pに垂直な方向に重力が作用するのが抑制される。これにより、トウバンド60の内部において重力により粒状物28が偏在するのが抑制され、トウバンド60の内部に粒状物28を均一に分散して配置し易くできる。
【0076】
また、添加位置Nの真下に開繊室43aの出口が配置された状態で、添加位置Nから開繊室43aの出口へ向けて、トウバンド60が鉛直方向に搬送されるので、トウバンド60の内部において重力により粒状物が偏在するのが更に抑制され、トウバンド60の内部に粒状物28を一層均一に分散して配置し易くできる。
【0077】
また添加位置Nは、開繊室43aの入口よりも上流側に位置しているので、開繊室43aにおいてトウバンド60を開繊しながら、効率よく粒状物28をトウバンド60の繊維間隙に分散して配置し易くできる。
【0078】
また気体開繊装置9が、滞留部20を有し、開繊室43aの出口を通過したトウバンド60が、滞留部20を鉛直方向に通過するので、トウバンド60の内部に粒状物28が均一に分散されて配置された状態を維持しながら、トウバンド60の繊維密度を滞留部20で高めることができる。
【0079】
また気体開繊装置9が、搬送路43に気体Gを導入する気体導入口35aを有し、添加位置Nが、気体導入口35aよりも上流側に位置しているので、気体導入口35aから搬送路43に導入される気体Gによって、添加位置Nから導入される粒状物28を、トウバンド60の内部に良好に分散して配置できる。
【0080】
また製造装置1は、気体開繊装置9よりも上流側において、トウバンド60を周面に接触させて開繊する複数対の開繊ロール対7、8を備えているので、複数対の開繊ロール対7、8により開繊されたトウバンド60を、気体開繊装置9により、更に嵩高に絡み合わせながら開繊でき、繊維間隙を広げたトウバンド60の内部に、粒状物28を均一に分散し易くできる。以下、第2実施形態について、第1実施形態の差異を中心に説明する。
【0081】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る気体開繊装置109と添加装置110との側面図である。
図6に示すように、添加装置110の供給管122は、気体開繊装置109の開繊成型部119の側部に接続されている。供給管122の下流端部は、搬送路143内に露出している。
【0082】
添加装置110は、供給管122の途中に設けられた補助ジェット発生部145を有する。補助ジェット発生部145は、外部から導入される気体Gによりジェットを発生させ、このジェットにより、粒状物28のトウバンド60への添加を補助する。
【0083】
添加装置110は、補助ジェット発生部145により粒状物28を搬送路143に強制的に送り込むことで、ジェット発生部118の内部を流れる別のジェットにより粒状物28が逆流するのを防止する。これにより添加装置110は、搬送路143が含む開繊室143aにおいて、搬送路143を搬送されるトウバンド60に粒状物28を添加する。
【0084】
このような気体開繊装置109と添加装置110とを用いても、第1実施形態の吸収性物品62と同様の吸収性物品を得ることができる。なお、第2実施形態では、添加位置Nが開繊成型部119の内部に位置しているため、気体開繊装置109の添加位置Nよりも上側の部分(例えば導入部117とジェット発生部118)は、一例として、各長手方向が水平方向に延びるように配置されていてもよい。
【0085】
(確認試験)
製造装置1を用いて、粒状物28が添加され且つ気体開繊装置9を通過し、搬送ロール対11よりも上流側を搬送されるトウバンド(以下、成型品と称する)を実施例として製造した。
【0086】
気体開繊装置9の開繊室43aの出口から添加装置10のガイド部34の上端位置までの間の部分を水平に配置し、且つ、トウバンドに上方から粒状物28を添加するように変更した以外は実施例と同様の設定条件により、製造装置1を用いて、比較例1の成型品を製造した。
【0087】
気体開繊装置9の開繊室43aの出口から添加装置10のガイド部34の上端位置まで間の部分を水平に配置し、且つ、滞留部20と搬送ロール対11との間に添加位置Nを設定して、トウバンドに上方から粒状物28を添加するように変更した以外は実施例と同様の設定条件により、製造装置1を用いて、比較例2の成型品を製造した。
【0088】
実施例、比較例1、及び比較例2においては、搬送方向寸法1m当たりのトウバンドの重量を5.7g、搬送方向寸法1m当たりのトウバンドに対する粒状物量を3.3g、成型品の幅寸法を40mm、成型品の厚み寸法を25mmにそれぞれ設定した。
【0089】
成型品の幅方向における粒状物28の分布を調べるため、搬送方向寸法が10cmとなるように切断した実施例、比較例1、及び比較例2の成型品を、更に幅方向中央で切断し、幅方向の一方側と他方側とに含まれる粒状物量の割合(重量%)を算出した。
【0090】
また、成型品の深さ(厚み)方向における粒状物28の分布を調べるため、搬送方向寸法が2cmとなるように切断した実施例、比較例1、及び比較例2の成型品を、更に鉛直方向中央で上下に切断し、上側部分と下側部分とに含まれる粒状物量の割合(重量%)を算出した。
【0091】
また、以下の方法により成型品の上部から脱落する粒状物量の割合を調べた。搬送方向寸法が30cmとなるように切断した実施例、比較例1、及び比較例2の成型品を上下逆にして配置したときの動作前後において、成型品に含まれる粒状物量を測定し、成型品を上下逆に配置したときに成型品の上部から脱落した粒状物量の割合(重量%)を算出した。
【0092】
また、以下の方法により成型品の下部から脱落する粒状物量の割合を調べた。滞留部の下流端部から一定距離だけ下流側に離隔した位置において、搬送方向Pの寸法が30cmとなるように切断した実施例、比較例1、及び比較例2の成型品に含まれる粒状物量を測定することにより、添加位置Nで添加された後に成型品の下部から脱落した粒状物量の割合(重量%)を算出した。これらの算出結果を表1に示す。
【0094】
表1に示すように、実施例、比較例1、及び比較例2では、成型品の幅方向での粒状物の分布については差が見られなかった。しかしながら、比較例1及び2は、成型品の深さ方向における粒状物28の分布が、実施例に比べて不均一であり、成型品の内部で、粒状物28が成型品の上側又は下側に偏在していることが分かった。
【0095】
具体的に比較例1では、成型品の下側に粒状物28が偏在していた。この理由として、比較例1では、トウバンド60に上方から添加された粒状物28が、トウバンド60の内部を重力により移動し、トウバンド60の下側に偏在したことが考えられる。
【0096】
また比較例2では、成型品の上側に粒状物28が偏在していた。この理由として、比較例2では、粒状物28が開繊され且つ成型されたトウバンド60に上方から粒状物28が添加されたため、粒状物28がトウバンド60の内部に分散されにくく、粒状物28がトウバンド60の上側に偏在したことが考えられる。
【0097】
実施例では、比較例1及び2に比べて、トウバンド60の内部に粒状物28が均一に分散して配置されていた。この理由として、実施例では、開繊室43aの出口と添加位置Nとの間において、トウバンド60が鉛直方向に搬送されたことにより、開繊室43aの入口よりも上流側に位置する添加位置Nからトウバンド60に添加された粒状物28が、搬送方向Pに垂直な方向にトウバンド60の内部を重力により移動するのが抑制されながら、開繊されるトウバンド60の繊維間隙に均一に分散して配置されたことが考えられる。
【0098】
また実施例では、成型品の上部からの粒状物28の脱落と、成型品の下部からの粒状物28の脱落とが、比較例1と略同等に抑制されることが分かった。この理由として、実施例では、開繊室43aの出口よりも上流側において、トウバンド60に粒状物28を添加したことにより、トウバンド60を開繊しながらトウバンド60の内部に粒状物28が均一に分散して配置され、粒状物28が複数本の繊維により保持されたことが考えられる。
【0099】
また比較例2では、成型品の上部からの粒状物28の脱落が、実施例及び比較例1に比べて非常に多いことが分かった。これは、粒状物28の多くが、トウバンド60の上側に堆積して配置されたことにより、トウバンド60の複数本の繊維に保持されていなかったため、成型品を上下逆に配置したことで、粒状物28が容易にトウバンド60から脱落したことが考えられる。
【0100】
本発明は、各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。各実施形態は、互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成または方法を、他の実施形態に適用してもよい。