【実施例】
【0035】
次に本発明の方法を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。尚、%は、特に断りのない限り、質量%である。
【0036】
分析方法を以下に示した。
過酸化水素の定量:KMnO
4滴定法(JIS K 1463に準拠)または過酸化水素試験紙(QUANTOFIX(登録商標)Peroxide 25又は1000(MACHEREY-NAGEL社製))を用いた。
TOC(トータル有機炭素):TOC計(島津製作製TOC−VWS)を用いた。
Fe
2+とFe
3+の分別定量法:全鉄をICPで分析する。次いで第一鉄Fe
2+をフェナントロリン吸光光度法により分析し、第一鉄の割合を計算する。
【0037】
活性炭の過酸化水素分解活性(HF)測定法:
(1)1Lのトールビーカーに純水800mlを採取する。
(2)25℃の恒温槽に入れ撹拌する。
(3)31質量%過酸化水素10mLを加える。過酸化水素濃度0.4193(w/v)%。
(4)過酸化水素水溶液の温度が25℃±1℃になったら、粉末活性炭(測定試料)150mgを添加する。
(5)30分後に約20mLサンプリングし、0.45μmフィルターでろ過する。
(6)ろ液5mLをメスピペットで採取し、100mL三角フラスコに入れる。
(7)2N硫酸10mLを加え、撹拌しながら0.02M過マンガン酸カリウム溶液で滴定する。
(8)得られた滴定量(amL)を下記式に挿入し、活性炭(測定試料)の過酸化水素分解活性(HF)を算出する。
【0038】
【数5】
【0039】
[実施例1〜7]
本検討は
図1に示したフローに従い、
図2に示した活性炭添加フェントン反応設備で実施した。反応条件は、1,4−ジオキサン500ppm(0.25g/500ml、TOC 272ppm)、過酸化水素分解活性26の活性炭(ダイヤアクアソリューションズ(株)製、オルソン)0.8wt%(活性炭換算0.8g/500ml)、FeSO
4・7H
2O 600ppm、反応pH2.7〜2.9、過酸化水素 2当量(ジオキサンのTOD基準)、過酸化水素添加速度をそれぞれ0.1%/分(実施例1)、0.2%/分(実施例2)、0.5%/分(実施例3)、1%/分(実施例4)、2%/分(実施例5)、4%/分(実施例6)、8%/分(実施例7)(対活性炭の質量基準)の条件で実施した。
【0040】
(1)
図2のデュランビンに、上記所定量の1,4−ジオキサン、硫酸第一鉄、活性炭、及び水を所定量添加した後、5質量%硫酸を添加してpH2.8に調整し、反応液とした。過酸化水素添加量は1,4−ジオキサンをTOD換算し、その酸素量を過酸化水素に換算し、その2モル当量の過酸化水素を添加した。4質量%過酸化水素を反応液に各添加速度に従ってトータル45.4ml添加した。
(2)過酸化水素添加終了後、60分間撹拌して残存過酸化水素を濃度が20ppm以下となるまで分解して第二鉄塩を第一鉄塩に変換した。
(3)次いで25%NaOHを添加して反応液のpHを7.5に調整した。
(4)pH調整後、60分以内に反応液を遠沈管に移し、遠心分離器(SRX−200(トミー精工(株)製)、ローター:BH−9、遠心力:16,000G(Max)、10,000rpm-20分間)で遠沈分離し、反応液上清(処理水)と第一鉄塩(水酸化第一鉄)及び活性炭を分離した。
(5)分離した第一鉄塩(水酸化第一鉄)及び活性炭を処理水で希釈後、5質量%硫酸でpH2.1に調整し、第一鉄塩(硫酸第一鉄)を再溶解させた。
(6)再溶解後の硫酸第一鉄及び活性炭を次の分解工程(1)に使用した。
残った処理水はTOCを測定し、1,4−ジオキサンの分解率を求めた。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例8〜11]
1,4−ジオキサン濃度を50ppm(TOC 27ppm)とし、0.4質量%過酸化水素を次の各添加速度に従ってトータル45.4ml添加した。過酸化水素添加速度をそれぞれ0.05%/分(実施例8)、0.5%/分(実施例9)、1%/分(実施例10)、2%/分(実施例11)とした以外、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例12〜14]
1,4−ジオキサン濃度を3000ppm(TOC 1632ppm)とし、24質量%過酸化水素を次の各添加速度に従ってトータル45.4ml添加した。過酸化水素添加速度をそれぞれ3%/分(実施例12)、8%/分(実施例13)、10%/分(実施例14)とした以外、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1、2]
1,4−ジオキサン濃度を50ppm(TOC 27ppm)とし、0.4質量%過酸化水素を次の各添加速度に従ってトータル45.4ml添加した。過酸化水素添加速度を0.01%/分(比較例1)、12%/分(比較例2)とした以外、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例3、4]
1,4−ジオキサン濃度を500ppm(TOC 27ppm)とし、1質量%過酸化水素をトータル182ml添加(比較例3)、または4質量%過酸化水素をトータル45.4ml添加(比較例4)した。過酸化水素添加速度を0.04%/分(比較例3)、12%/分(比較例4)とした以外、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例5、6]
1、4−ジオキサン濃度を3000ppm(TOC 1632ppm)とし、4質量%過酸化水素をトータル272ml添加(比較例5)、または24質量%過酸化水素をトータル45.4ml添加(比較例6)した。過酸化水素添加速度を0.04%/分(比較例5)、12%/分(比較例6)とした以外、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0046】
尚、表1及び表2の添加量(g/分)は、4質量%過酸化水素(実施例1〜7、15〜26、比較例4、5、7、8)、0.4質量%過酸化水素(実施例8〜11、比較例1、2)、24質量%過酸化水素(実施例12〜14、比較例6)、1質量%過酸化水素(比較例3)の添加速度を表す。TOC分解率(平均)は初回分解率に対して、10%低下までの繰り返しの平均分解率を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に活性炭に対する過酸化水素の添加速度の活性炭リサイクル回数に及ぼす影響について検討した。その結果、過酸化水素添加速度0.05%/分〜10.5%/分の間ではジオキサンの分解率80%台または90%台を維持して、活性炭のリサイクル回数を3回〜100回以上に飛躍的に増大できた。また、
図3に過酸化水素の活性炭に対する添加速度(%/分)とリサイクル回数を示した。その結果、リサイクル回数は1,4−ジオキサンの濃度に関係なく過酸化水素の活性炭に対する添加速度に依存することが分かった。
一方、比較例に示したように過酸化水素添加速度0.01%/分、0.04%と非常にゆっくりと添加した場合は、活性炭の劣化は非常に少ないが、過酸化水素が無駄に分解し、1,4−ジオキサンの分解効率が上がらないとの問題点がある。また、過酸化水素添加速度が12%/分の場合は、活性炭の劣化速度が大きく、一回使用で1,4−ジオキサンの分解効率が低下した。
【0049】
[実施例15〜20、比較例7]
過酸化水素分解活性(HF)13の活性炭1.60g(0.8g×26/13)を使用し、過酸化水素添加速度を活性炭(質量基準)に対して、0.07%/分(実施例15)、0.15%/分(実施例16)、0.35%/分(実施例17)、1.04%/分(実施例18)、3.47%/分(実施例19)、4.80%/分(実施例20)、6.00%/分(比較例7)にした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0050】
[実施例21〜26、比較例8]
過酸化水素分解活性(HF)7の活性炭2.97g(0.8g×26/7)を使用し、過酸化水素添加速度を活性炭(質量基準)に対して、0.03%/分(実施例21)、0.10%/分(実施例22)、0.16%/分(実施例23)、0.47%/分(実施例24)、1.57%/分(実施例25)、2.50%/分(実施例26)、3.00%/分(比較例8)にした以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表1、2、及び
図4に示したように、過酸化水素分解
活性(HF)が異なる3種の活性炭を使用して、1,4−ジオキサンの分解と活性のリサイクルの関係を検討した結果、それぞれの活性炭により1,4−ジオキサンの分解率は異なるが、リサイクル回数は次式の過水添加速度範囲において飛躍的に向上することを見出した。
【0053】
【数6】
【0054】
[実施例27〜30、比較例9〜14]
実施例1の条件で過酸化水素添加終了後、撹拌を0分(比較例9)、10分(比較例10)、20分(比較例11)、30分(比較例12)、40分(比較例13)、50分(比較例14)、60分(実施例27)、75分(実施例28)、90分(実施例29)、120分(実施例30)継続し、硫酸第二鉄を硫酸第一鉄に変換した。攪拌終了後の反応液の残存過酸化水素濃度及び第一鉄の割合を測定した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示したように、反応終了後、残存過酸化水素を20ppm以下に分解することにより硫酸第二鉄の93%以上を硫酸第一鉄に変換できることが出来た。従って、過酸化水素添加終了後、残存過酸化水素を20ppm以下とすることにより、硫酸第二鉄を硫酸第一鉄に変換し、次いでアルカリで水酸化第一鉄とし、次いで酸で溶解させて硫酸第一鉄としリサイクルさせることができる。
【0057】
[実施例31〜37、比較例15〜20]
過酸化水素添加後終了後、次いで硫酸第二鉄の硫酸第一鉄への変換工程の終了後、25質量%NaOH溶液により、反応液pHを5.6(比較例15)、6.0(比較例16)、6.5(比較例17)、7.0(実施例31)、7.3(実施例32)、7.5(実施例33)、7.8(実施例34)、8.0(実施例35)、8.8(実施例36)、9.0(実施例37)、9.3(比較例18)、9.7(比較例19)、10.6(比較例20)に調整した以外、実施例1と同様に行った。鉄塩の回収率及び廃水TOC(ppm)を測定した。結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示したように第一鉄塩への変換工程後の鉄塩回収のための中和処理工程のpHとしては、特にpH7.3〜7.8において良好な鉄塩回収及びTOC除去効果が得られた。一方、pH6.51以下では硫酸鉄が十分水酸化第一鉄とならず、pH8.02以上では水酸化第一鉄の再溶解があり、pH9.31以上では鉄塩回収及び廃水TOC削減共に良好な効果が得られなかった。
【0060】
[実施例38〜42、比較例21〜23]
鉄塩回収のための中和工程において、25質量%NaOHにてpH7.52に調整後、5分(実施例38)、15分(実施例39)、30分(実施例40)、45分(実施例41)、60分(実施例42)、75分(比較例21)、90分(比較例22)、120分(比較例23)間放置した後、廃水のTOC(ppm)を測定した以外、実施例33と同様に行った。結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
表5に示したように、中和工程において中和後の放置時間によって一旦吸着されたTOC成分は、徐々に廃水中に離脱し増大する。また溶存酸素等により水酸化第一鉄が一部水酸化第二鉄への変換するおそれがある。従って、中和処理後60分以内で活性炭及び水酸化第一鉄を分離し、TOCの離脱を防ぎ、水酸化第二鉄への変換を防止することが好ましい。より好ましくは30分以内で分離することである。
【0063】
[実施例43〜46、比較例24〜28]
中和工程終了後、回収工程で分離された活性炭及び水酸化第一鉄は、次の再溶解工程で活性炭及び硫酸第一鉄に再生される。再溶解工程のpHを1.0(比較例24)、1.5(比較例25)、2.0(実施例43)、2.5(実施例44)、2.9(実施例45)、3.0(実施例46)、3.5(比較例26)、3.7(比較例27)、4.0(比較例28)に調整し、溶解鉄の回収を測定した以外は、実施例40と同様に実施した。結果を表6に示す。
【0064】
【表6】
【0065】
表6に記したように、再溶解pH2.0〜3.0の間で90%以上の鉄が回収された。一方、再溶解pH3.3以上では大幅に鉄の回収率が低下した。
【0066】
[実施例47、48]
中和処理後、限外ろ過膜(実施例47)、精密ろ過(MF)膜(実施例48)を使用した以外は、実施例45と同様に行った。結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
表7に示したように、限外ろ過膜及びMF膜により鉄塩と活性炭の回収は可能であった。
【0069】
[実施例49]
実施例41で回収した水酸化第一鉄と活性炭に、実施例48で回収した処理水の一部を添加し、次いで5%硫酸でpH2.0に調整し再溶解させ、2回目の反応に利用した。2回目の反応条件は実施例2と同様である。結果を表8に示す。
【0070】
【表8】
【0071】
表8に示したように、リサイクルした触媒は、実施例2と同様の活性を示した。