(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記金属弾性体が上記シールバーの側縁から離間した位置において固定され、この固定位置から延びる上記金属弾性体の下面と上記シールバーの上面との間に空間を有する請求項1に記載のエアシール装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0015】
[ドワイトロイド式焼結機]
図1及び
図2に、本発明の一実施形態に係るエアシール装置1を備えるドワイトロイド式焼結機の構成を示す。このドワイトロイド式焼結機は、粉鉱を連続的に焼結して焼結鉱を製造する設備である。
【0016】
図1のドワイトロイド式焼結機は、無端ループ状に連結されて、直線状に延びる往路及びこの往路の下方に位置する復路とを有する無限軌道上を周回し、原料を搬送する複数のパレット台車2と、パレット台車2の往路下側に配設され、パレット台車2との間にガスの流路を形成するウインドボックス3と、このウインドボックス3に接続され、ウインドボックス内のガスを排気する排風ファン4とを備え、エアシール装置1がパレット台車2の底面とウインドボックス3との間をシールするよう配設されている。
【0017】
パレット台車2は、底板が通気性を有するトレイ状に形成され、無限軌道を走行するための車輪を有する。このパレット台車2には、燃料を含む原料混合体が一定の厚さで充填され、この原料の層に着火されて無限軌道の往路を走行する。ドワイトロイド式焼結機では、排風ファン4によってウインドボックス3の気体を排気することにより、パレット台車2に充填された原料の燃焼により発生する排ガスが、原料の層及びパレット台車2の底板を通過してウインドボックス3内に吸引する。これによって、原料の層が排ガスによって加熱されて焼結される。
【0018】
本発明の一実施形態に係るエアシール装置1は、ドワイトロイド式焼結機において、パレット台車2とウインドボックス3との間を封止することにより、パレット台車2とウインドボックス3との隙間から周囲の空気を吸い込むことを防止して、排風ファン4における不必要な動力消費を抑制する。
【0019】
<エアシール装置>
本発明の一実施形態であるエアシール装置1は、
図3に示すように、パレット台車2の底面の両縁部に走行方向と平行に付設され、下方が開口する樋状のシールケース5と、このシールケース5の開口を塞ぐよう上下方向にスライド可能に配設されるシールバー6と、シールケース5及びシールバー6間にシールバー6を下方に付勢するよう配設されるスプリング機構7と、シールバー6の上面の側縁部に配設される薄板帯状の金属弾性体8とを備える。
【0020】
当該エアシール装置1は、パレット台車2の平面視で有効領域(原料が積載された領域)の外側に配設される。本実施形態のエアシール装置1は、図示するようにスプリング機構7がシールケース5から上方に突出しているので、パレット台車2の底面には、スプリング機構7の頂部を受け入れる穴が形成されている。
【0021】
また、ウインドボックス3の上縁には、当該エアシール装置1のシールバー6が摺接するスライドベッド9が設けられる。つまり、当該エアシール装置1は、パレット台車2の下面にシールバー6を略気密に保持し、このシールバー6をウインドボックス3の上端に気密に配設されるスライドベッド9に密接させることによって、パレット台車2とウインドボックス3との間を封止して漏風(不必要な外気の吸込み)を抑制する。
【0022】
(シールケース)
シールケース5は、パレット台車2の底面に気密に固定され、パレット台車2の走行方向に延びる帯板状の天壁10と、天壁10の両側縁から下方に垂下される鉛直な帯板状の一対の側壁11とを有する。なお、一対の側壁11が「鉛直」とは、対向面が鉛直な平面状であることを意味し、外面側の形状は問わない。
【0023】
このシールケース5の材質としては、例えば構造用鋼、ステンレス鋼等を挙げることができる。
【0024】
シールケース5のパレット台車2への固定方法としては、特に限定されないが、例えば溶接、ねじ止め等によって行うことができる。
【0025】
シールケース5の一対の側壁11の対向面間の距離の下限としては、60mmが好ましく、70mmがより好ましい。一方、一対の側壁11の対向面間の距離の上限としては、120mmが好ましく、100mmがより好ましい。一対の側壁11の対向面間の距離が上記下限に満たない場合、後述するスプリング機構7の配設が容易でなくなるおそれがある。逆に、一対の側壁11の対向面間の距離が上記上限を超える場合、排ガスの流路の外側に配設される当該エアシール装置1の幅が大きくなることで、パレット台車2ひいてはドワイトロイド式焼結機の幅が不必要に大きくなるおそれがある。
【0026】
各側壁11の厚さとしては、材質にもよるが、例えば構造用鋼の場合で3mm以上5mm以下とすることができる。側壁11の厚さが上記下限に満たない場合、側壁11の強度が不十分となるおそれがある。逆に、側壁11の厚さが上記上限を超える場合、シールケース5の形成が容易でなくなるおそれがある。
【0027】
(シールバー)
シールバー6は、一対の側壁11の間にシールケース5の開口を塞ぐよう上下方向にスライド可能に配設される。ただし、シールバー6は、シールケース5と接触することがないよう、シールケース5の側壁11との間にクリアランスを有する。
【0028】
シールバー6は、例えばフラットバー、角棒等から形成することができる。また、シールバー6の材質としては、例えば構造用鋼等を挙げることができる。
【0029】
シールバー6とシールケース5の側壁11との平均クリアランス(一対の側壁の間隔とシールバーの幅との差の1/2)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、シールバー6とシールケース5の側壁11との平均クリアランスの上限としては、2mmが好ましく、1mmがより好ましい。シールバー6とシールケース5の側壁11との平均クリアランスが上記下限に満たない場合、シールバー6とシールケース5とが接触するおそれがある。逆に、シールバー6とシールケース5の側壁11との平均クリアランスが上記上限を超える場合、相対的にスプリング機構7及び金属弾性体8の配設スペースが小さくなり、スプリング機構7及び金属弾性体8の配設が容易でなくなるおそれがある。
【0030】
シールバー6の厚さとしては、例えば15mm以上30mm以下とすることができる。シールバー6の厚さが上記下限に満たない場合、シールバー6の強度が不足するおそれがある。逆に、シールバー6の厚さが上記上限を超える場合、エアシール装置1が不必要に大型化するおそれがある。
【0031】
(スプリング機構)
スプリング機構7は、シールケース5の天壁10と、シールバー6との間に圧縮状体で配設されるコイルばね12と、シールバー6から延出してシールケース5の天壁10を貫通し、天壁10の上面に当接してシールバー6の下側の移動端を定める保持軸13とを有する構成とすることができる。また、本実施形態のスプリング機構7は、シールバー6の上面に突設され、コイルばね12を平面方向に位置決めする筒状のスプリングガイド14と、天壁10の下面に突設され、保持軸13を鉛直に案内する筒状の保持軸ガイド15とをさらに有する。
【0032】
上記保持軸13は、シールバー6の下面に形成される座ぐりの中に収容される頭部を有するボルトと、このボルトの外周に嵌装され、天壁10に固定された保持軸ガイド15に摺動可能に挿入されるスリーブと、このスリーブの上端から突出する上記ボルトの先端部に螺合することによりスリーブをシールバー6に固定するナットとを有する構成とすることができる。
【0033】
(金属弾性体)
金属弾性体8は、シールバー6の一対の側縁部のうち、少なくともウインドボックス3の内部空間側の側縁部に配設される。つまり、金属弾性体8は、シールケース5の内部空間の圧力が外側の空間の圧力よりも高くなる側に配設される。
【0034】
金属弾性体8は、薄い帯状の金属板を折り曲げて形成され、シールケース5の内外に差圧がない場合はシールケース5の側壁11との間にクリアランスを有し、シールケース5の内外に差圧がある場合は弾性変形によりシールケース5の側壁11と当接するよう構成されている。
【0035】
具体的には、金属弾性体8は、断面視において少なくとも部分的にシールバー6の上面に固定される固定部16と、この固定部16からシールケース5の側壁11に向かって延びる延在部17と、この延在部17から上側に屈曲し、パレット台車2が無限軌道の復路を走行している間はシールケース5の側壁11との間に小さい隙間を形成するよう配置されるフラップ部18とを有する構成とすることができる。
【0036】
本実施形態において、延在部17は、固定部16から真っ直ぐに伸び、シールバー6の表面に密着しており、フラップ部18は、シールケース5の側壁11と略平行に上方に延びるよう延在部17に対して垂直に折り曲げられている。
【0037】
金属弾性体8としては、例えばステンレス鋼板、めっき鋼板、チタン板、銅板等を用いることができるが、中でも耐久性に優れるステンレス鋼板が好適に用いられる。ステンレス鋼板の材質としては、例えばSUS301、SUS304、SUS304L等を挙げることができる。
【0038】
材質にもよるが、金属弾性体8の厚さの下限としては、0.10mmが好ましく、0.12mmがより好ましい。一方、金属弾性体8の厚さの上限としては、0.50mmが好ましく、0.30mmがより好ましい。金属弾性体8の厚さが上記下限に満たない場合、金属弾性体8の強度が不十分となるおそれがある。逆に、金属弾性体8の厚さが上記上限を超える場合、金属弾性体8を弾性変形させるために必要な受圧面積を大きくする必要が生じることで当該エアシール装置が不必要に大きくなるおそれがある。
【0039】
金属弾性体8の固定部16のシールバー6に対する固定方法としては、特に限定されず例えばねじ等を用いてもよいが、スプリング機構7のコイルばね12とシールバー6との間に挟み込む方法が好適に採用される。このように、金属弾性体8の固定部16をコイルばね12でシールバー6に押圧する構成とすることで、部品点数を少なくすることができ、金属弾性体8の交換が容易となる。また、この場合、金属弾性体8の平面方向の位置決めを容易にするために、金属弾性体8にスプリングガイド14に嵌合する位置決め穴を形成してもよい。
【0040】
金属弾性体8のフラップ部18の断面視での長さ(高さ)L1は、シールケース5の内側の気圧と金属弾性体8が設けられた側のシールケース5の外側の気圧との差圧によって金属弾性体8が撓み、フラップ部18の上端近傍をシールケース5の側壁11に当接することができるよう選択される。
【0041】
一方、金属弾性体8の延在部17の断面視での長さL
2は、フラップ部18とシールケース5の側壁11との間隔が適切となるよう適宜定められる。具体的には、延在部17の長さL
2は、当該エアシール装置1の各構成要素の寸法公差及び組み立て誤差を考慮して、フラップ部18がシールケース5の側壁11に接触することがなく、且つ側壁11に十分に接近して配置されるよう選択される。
【0042】
以下、金属弾性体8の形状について、より詳しく説明する。先ず、シールケース5の側壁11の内面とシールバー6の側端面との間隔の最小値C
c−b,minは、次の式(1)で表すことができる。なお、W
cはシールケース5の側壁11間の設計間隔であり、W
bはシールバー6の設計幅であり、a
c−は設計間隔Wcのマイナス公差であり、a
b+は設計幅Wbのプラス公差であり、Δdはスプリング機構7における保持軸ガイド15の内径と保持軸13の外径との差である(
図4参照)。
【0044】
金属弾性体8がシールバー6の側縁から外側の突出する水平距離(フラップ部18の外面とシールバー6の側端面との水平距離)を上記C
c−b,minよりも小さくすれば、シールケース5の内外に差圧がない場合の金属弾性体8のフラップ部18とシールケース5の側壁11との最短距離の最小値C
c−p,minが0より大きくなり、パレット台車2が無限軌道の復路を走行している間は金属弾性体8がシールケース5に当接しない。
【0045】
一方、パレット台車2が無限軌道の往路を走行している間は、パレット台車2がウインドボックス3に対向し、当該エアシール装置1の両側(ウインドボックス3内と外部雰囲気)に圧力差が生じる。これにより、当該エアシール装置1の僅かな隙間を通して外部の空気をウインドボックス3内に吸い込み、この空気の流路抵抗により、外部雰囲気とシールケース5の内部空間との間、及びシールケース5の内部空間とウインドボックス3の内部空間との間にそれぞれ差圧が生じる。このうち、シールケース5の内部空間とウインドボックス3の内部空間との間の差圧ΔPは、金属弾性体8のフラップ部18をシールケース5の側壁11に向かって撓ませる。
【0046】
フラップ部18を撓ませる差圧ΔPは、空気の密度をρ
a、フラップ部18及び壁部11間での空気の流速をvとすると次の式(2)によって表すことができる。
【0048】
ここで、フラップ部18及び壁部11間を通過する空気の流量は、流路の断面積によって定められるため、流速vは、フラップ部18の先端及び壁部11間の隙間C
c−p,minがシールバー6及び壁部11間の隙間C
c−b,min以下である場合は式(3)によって表すことができ、隙間C
c−p,minが隙間C
c−b,minより大きい場合は式(4)によって表すことができる(
図5参照)。
【0051】
流速は上記式(3)の場合により大きくなるため、隙間C
c−p,minが隙間C
c−b,min以下となるようにする必要がある。このため、金属弾性体8は、次の式(5)を満たすよう配設される。
【0053】
フラップ部18が壁部11に当接するために必要な金属弾性体8の撓み量y
reは、一対の壁部11の設計間隔W
cのプラス公差a
c+及びマイナス公差a
c−を用いて、次の式(6)によって表すことができる(
図6参照)。
【0055】
一方、差圧による金属弾性体8の撓み量yは、金属弾性体8のヤング率E、金属弾性体8の厚さhを用いて次の式(7)によって表すことができる。
【0057】
式(7)の撓み量yを式(6)のたわみ量y
reより大きくするためには、次の式(8)を満たす必要がある。つまり、金属弾性体の厚さhは、次の式(8)を満たすよう選択される。
【0059】
<利点>
当該エアシール装置1は、シールバー6の上面の側縁部に配設される薄板帯状の金属弾性体8が、シールケース5の内外に差圧がない場合はシールケース5の側壁11から離間し、シールケース5の内外に差圧がある場合は差圧で弾性変形してシールケース5の側壁11と当接することにより気密性を向上する。このような金属弾性体8は、ゴム等の樹脂と比べて耐熱性が高いのでメンテナンス頻度が小さくて済む。
【0060】
[第二実施形態]
図7に、本発明の
図3とは異なる実施形態のエアシール装置1aを示す。
図7のエアシール装置1aは、
図3のエアシール装置1に替えて
図1のドワイトロイド式焼結機に用いることができる。
【0061】
本実施形態のエアシール装置1aは、パレット台車2の底面の両縁部に走行方向と平行に付設され、下方が開口する樋状のシールケース5と、このシールケース5の開口を塞ぐよう上下方向にスライド可能に配設されるシールバー6と、シールケース5及びシールバー6間にシールバー6を下方に付勢するよう配設されるスプリング機構7と、シールバー6の上面の側縁部に配設される薄板帯状の金属弾性体8aとを備える。
【0062】
図7のエアシール装置1aにおけるシールケース5、シールバー6及びスプリング機構7の構成は、
図3のエアシール装置1におけるシールケース5、シールバー6及びスプリング機構7の構成と同様とすることができる。このため、
図7のエアシール装置1aについて、
図3のエアシール装置1と同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0063】
(金属弾性体)
本実施形態の金属弾性体8aは、断面視において少なくとも部分的にシールバー6の上面に固定される固定部16と、この固定部16からシールケース5の側壁11に向かって延びる延在部17と、この延在部17から上側に屈曲し、パレット台車2が無限軌道の復路を走行している間はシールケース5の側壁11との間に小さい隙間を形成するよう配置されるフラップ部18と、フラップ部18の上端からシールケース5の壁部11と反対側に屈曲される先端部19とを有する。
【0064】
図7のエアシール装置1aの金属弾性体8aの構成は、上端近傍で対向する壁部11と反対側に長手方向に沿って屈曲されることにより、先端部19が形成されていることを除いて、
図3のエアシール装置1の金属弾性体8と同様の構成とすることができる。
【0065】
本実施形態に係るエアシール装置1aは、金属弾性体8aが先端部19を有することによって、金属弾性体8aの上端エッジ(帯板の側縁)がシールケース5の側壁11に当接しないため、金属弾性体8aがシールケース5の側壁11の凹凸に引っ掛からないようにして金属弾性体8aの損傷を防止することでメンテナンス頻度をより低減することができる。特に、シールケース5が例えば構造用鋼等で形成されて壁部11の表面に錆が生じ得る場合や、当該エアシール装置1aの製造過程における溶接時に壁部11の表面にスパッタリングが付着し得る場合などでは、金属弾性体8aが先端部19を有することによる効果が非常に大きくなる。
【0066】
[第三実施形態]
図8に、本発明の
図3及び
図7とは異なる実施形態のエアシール装置1bを示す。
図8のエアシール装置1bは、
図3のエアシール装置1に替えて
図1のドワイトロイド式焼結機に用いることができる。
【0067】
本実施形態のエアシール装置1bは、パレット台車2の底面の両縁部に走行方向と平行に付設され、下方が開口する樋状のシールケース5と、このシールケース5の開口を塞ぐよう上下方向にスライド可能に配設されるシールバー6と、シールケース5及びシールバー6間にシールバー6を下方に付勢するよう配設されるスプリング機構7と、シールバー6の上面の側縁部に配設される薄板帯状の金属弾性体8bとを備える。
【0068】
図8のエアシール装置1bにおけるシールケース5、シールバー6及びスプリング機構7の構成は、
図3のエアシール装置1におけるシールケース5、シールバー6及びスプリング機構7の構成と同様とすることができる。このため、
図8のエアシール装置1bについて、
図3のエアシール装置1と同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0069】
(金属弾性体)
本実施形態の金属弾性体8bは、断面視において少なくとも部分的にシールバー6の上面に固定される固定部16と、この固定部16からシールケース5の側壁11に向かって、シールバー6の上面に対して傾斜して延びる延在部17bと、この延在部17bから上側に屈曲し、パレット台車2が無限軌道の復路を走行している間はシールケース5の側壁11との間に小さい隙間を形成するよう配置されるフラップ部18とを有する。換言すると、本実施形態の金属弾性体8bは、シールバー6の側縁から離間した位置において固定される固定部16と、この固定部16から延びる延在部17bの下面とシールバー6の上面との間に空間を形成する。
【0070】
図8のエアシール装置1bの金属弾性体8bの構成は、延在部17bが傾斜してシールバー6との間に楔型の隙間を形成することを除いて、
図3のエアシール装置1の金属弾性体8と同様の構成とすることができる。
【0071】
当該エアシール装置1bでは、延在部17bの水平方向の長さをL
3、延在部17bの傾斜角度をθとし、延在部17b及びフラップ部18の金属弾性体8b表面に沿った長さの合計をLとすると、たわみ量yを次の式(9)で表すことができる。
【0073】
つまり、本実施形態のエアシール装置1bでは、金属弾性体8bの延在部17bとシールバーの上面との間の空間にも負圧が作用して、延在部17bの先端を下方に引き下げるよう金属弾性体8bを撓ませることで、より厚い金属弾性体8bを使用した場合でもフラップ部18とシールケース5の壁部11との隙間を封止することができる。このため、本実施形態のエアシール装置1bは、メンテナンス頻度を低減すると共に寿命を増大することができる。
【0074】
[第四実施形態]
図9に、本発明の
図3、
図7及び
図8とは異なる実施形態のエアシール装置1cを示す。
図9のエアシール装置1cは、
図3のエアシール装置1に替えて
図1のドワイトロイド式焼結機に用いることができる。
【0075】
本実施形態のエアシール装置1cは、パレット台車2の底面の両縁部に走行方向と平行に付設され、下方が開口する樋状のシールケース5と、このシールケース5の開口を塞ぐよう上下方向にスライド可能に配設されるシールバー6cと、シールケース5及びシールバー6c間にシールバー6cを下方に付勢するよう配設されるスプリング機構7と、シールバー6cの上面の側縁部に配設される薄板帯状の金属弾性体8とを備える。
【0076】
図9のエアシール装置1cにおけるシールケース5、スプリング機構7及び金属弾性体8の構成は、
図3のエアシール装置1におけるシールケース5、スプリング機構7及び金属弾性体8の構成と同様とすることができる。このため、
図9のエアシール装置1cについて、
図3のエアシール装置1と同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0077】
(シールバー)
シールバー6cの金属弾性体8が配設される角部がテーパー状とされることにより金属弾性体8との間に楔型の隙間を形成することを除いて、
図3のエアシール装置1の金属弾性体8と同様の構成とすることができる。
【0078】
具体的には、シールバー6cは、金属弾性体8の延在部17の下に位置する部分の表面が側縁に向かって下降するよう傾斜しており、これによって、金属弾性体8の延在部17の下面とシールバー6cの上面との間に空間を形成する。
【0079】
このように、本実施形態のエアシール装置1cも、金属弾性体8の延在部17下面とシールバー6cの上面との間に空間を有するため、金属弾性体8の延在部17にも負圧を作用させることができる。このため、本実施形態のエアシール装置1cも、比較的厚さが大きい金属弾性体8を採用した場合でも金属弾性体8のフラップ部18をシールケース5の側11に当接させられるので、メンテナンス頻度を低減すると共に寿命を増大することができる。
【0080】
なお、
図9のエアシール装置1cにおいても、金属弾性体8のたわみ量yは、延在部17bの水平方向の長さをL3、延在部17bの傾斜角度をθとし、延在部17及びフラップ部18の金属弾性体8表面に沿った長さの合計をLとして、
図9のエアシール装置1bと同様に上述の式(9)によって表すことができる。なお、本実施形態において、延在部17の傾斜角度θは0°である。
【0081】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0082】
当該エアシール装置における金属弾性体は、シールケースの壁部と平行に延在する部分を有せず、シールケースの内外の差圧により固定部から傾斜して延びる延在部の先端がシールケースの壁部に当接するものであってもよい。
【0083】
当該エアシール装置において、金属弾性体の延在部は、断面視で例えば階段状等複数回屈曲したり曲線状に湾曲することによってシールバーとの間に空間を形成してもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0085】
帯状薄板を断面視L字状に折り曲げて形成した金属弾性体をその延在部がシールバーの上面に密着するよう配設したエアシール装置のモデルを作成した。このモデルの一方の側部を覆い、シールバーとシールケースとに気密に接続されたフードを設け、このフード内に一定の圧力の圧縮空気を供給することで、シールケースの内外に差圧を形成し、圧縮空気の流量を測定することで、エアシール装置の漏風量を測定する試験を行った。
【0086】
エアシールケースのモデルは、長さを1500mmとし、差圧がない状態でのシールケースの側壁と金属弾性体の先端との隙間を0.35mmとした。上述の式(6)から最大たわみ量を2.65mmとし、式(7)及び式(8)に基づいて、金属弾性体のフラップ部の高さを14mmとし、金属弾性体の厚さを0.15mmとした。
【0087】
漏風量は、圧縮空気の圧力を変化させて測定した。この結果測定された漏風量から漏風通過面積Aを次の式(10)により算出した。
【0088】
【数10】
【0089】
また、上記モデルにおいて、金属弾性体を取り外した場合についても同様の試験を行った。
【0090】
これらの試験結果について、金属弾性体を取り外して圧縮空気の圧力を5kPaとした場合の漏風通過面積を100%としたものを、
図6にまとめてプロットする。なお、実際のドワイトロイド式焼結機におけるウインドボックス内の圧力と大気圧との差は、15kPa程度である。
【0091】
図示するように、金属弾性体を設けることによって、ドワイトロイド式焼結機において生じる差圧が作用する場合には、金属弾性体を設けない場合と比べて40%以上も漏風量を低減することができた。