特許第6830859号(P6830859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830859
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】固定体装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/12 20060101AFI20210208BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20210208BHJP
   F16B 45/00 20060101ALI20210208BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20210208BHJP
   F16B 15/00 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   F16L3/12 Z
   F16L3/00 Z
   F16B45/00 A
   H02G3/30
   F16B15/00 R
   F16B15/00 S
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-94265(P2017-94265)
(22)【出願日】2017年5月10日
(65)【公開番号】特開2018-189209(P2018-189209A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】岸 玄二
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−055605(JP,A)
【文献】 特開平11−055824(JP,A)
【文献】 特開2006−057681(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3112101(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0240853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/12
F16B 15/00
F16B 45/00
F16L 3/00
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定面に打ち込まれる固着具と、前記固着具によって前記固定面に取付け固定される固定体とを備える、固定体装置であって、
前記固着具は、前記固定面に打ち込まれる突刺片を有する一対の突刺部と、それら突刺部の打ち込まれる先端とは反対側を繋ぐ繋ぎ部とを備え、
前記固定体は、前記固定面に固定される固定部を備え、その固定部は、前記固着具が跨ぐ被跨ぎ部と、その被跨ぎ部に隣接し、前記一対の突刺部のうち一方の突刺部が挿通される挿通部とを有し、
前記挿通部は、前記固定部が前記固着具に対して前記固定面に沿う面方向に移動可能となるよう、その挿通部に挿通される前記突刺部よりも大きく形成され、
前記固定体は、前記固定部とは別に面方向位置決め部を備え、その面方向位置決め部は、前記被跨ぎ部を跨ぐようにして打ち込まれた前記固着具に対して前記固定部の前記面方向の移動を規制するように、前記固着具の側面に当接する、固定体装置。
【請求項2】
前記固定体は、前記固定部とは別に、前記繋ぎ部を収容する収容凹部を備え、前記面方向位置決め部は、その収容凹部の対面する内壁面からなる、請求項1に記載の固定体装置。
【請求項3】
前記固定体は、前記固定部に重なる重合位置とその重なりから開放された非重合位置との間を移動可能な重合部を備え、その重合部に前記収容凹部が設けられ、その重合部が重合位置にあるとき前記収容凹部が前記繋ぎ部を収容する、請求項2に記載の固定体装置。
【請求項4】
前記重合部は、前記固定部に回動可能に連結されている、請求項3に記載の固定体装置。
【請求項5】
前記固定体は、前記被跨ぎ部を前記固定面から離れる方向に付勢して、その被跨ぎ部を前記固定面に打ち込まれた前記固着具の前記繋ぎ部に押圧させる、押圧手段を備える、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の固定体装置。
【請求項6】
前記固定体は、配線・配管材を支持する支持部を備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固定体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固定作業を容易に行うことができる固定体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば配線・配管材支持具を壁等の固定面に固定するにあたって、コ字状に形成された固着具が用いられた(例えば、特許文献1参照)。図15に示すように、この配線・配管材支持具22は、固定面21に固定される固定部23と、配線・配管材を支持する支持部24とを備えていた。そして、固定部23には、挿通孔23aが設けられていた。そこで、挿通孔23aに固着具25を挿入し、その固着具25を金槌を用いて固定面21に打ち込むことで、配線・配管材支持具22は、固定面21に固定された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−55605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の配線・配管材支持具22(固定体)にあっては、その配線・配管材支持具22を固定面21に固定するにあたって、固着具25を挿通孔23aに合わせて的確に挿入しなければならず面倒であった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、固定作業を容易に行うことができる固定体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る固定体装置は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る固定体装置は、固定面に打ち込まれる固着具と、前記固着具によって前記固定面に取付け固定される固定体とを備える。ここで、前記固着具は、前記固定面に打ち込まれる突刺片を有する一対の突刺部と、それら突刺部の打ち込まれる先端とは反対側を繋ぐ繋ぎ部とを備える。そして、前記固定体は、前記固定面に固定される固定部を備え、その固定部は、前記固着具が跨ぐ被跨ぎ部と、その被跨ぎ部に隣接し、前記一対の突刺部のうち一方の突刺部が挿通される挿通部とを有する。この挿通部は、前記固定部が前記固着具に対して前記固定面に沿う面方向に移動可能となるよう、その挿通部に挿通される前記突刺部よりも大きく形成されている。そして、前記固定体は、前記固定部とは別に面方向位置決め部を備え、その面方向位置決め部は、前記被跨ぎ部を跨ぐようにして打ち込まれた前記固着具に対して前記固定部の前記面方向の移動を規制するように、前記固着具の側面に当接する。
【0007】
この固定体装置によると、固定体の固定部は、固着具が跨ぐ被跨ぎ部と、その被跨ぎ部に隣接して固着具の一方の突刺部が挿通される挿通部を有している。そして、この挿通部は、突刺部よりも大きく形成されて、固定部が固着具に対して固定面に沿う面方向に移動可能となっている。このため、固定部と固着具との相対的な位置関係にそれほど配慮することなく、固着具を固定面に打ち込むことができ、その後に、固定部を所定の位置に移動することができる。そして、固定部を所定の位置に移動した後には、面方向位置決め部を固着具の側面に当接させることで、固着具に対して固定部が固定面の面方向に移動するのが規制されて、固定部、ひいては固定体は、所定の位置に固定される。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る固定体装置は、請求項1に記載の固定体装置において、前記固定体は、前記固定部とは別に、前記繋ぎ部を収容する収容凹部を備え、前記面方向位置決め部は、その収容凹部の対面する内壁面からなる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る固定体装置は、請求項2に記載の固定体装置において、前記固定体は、前記固定部に重なる重合位置とその重なりから開放された非重合位置との間を移動可能な重合部を備える。そして、その重合部に前記収容凹部が設けられ、その重合部が重合位置にあるとき前記収容凹部が前記繋ぎ部を収容する。これにより、固着具を固定面に打ち込む際には、固定部に対して重合部を非重合位置にする。そして、固着具を固定面に打ち込んだ後に、固定部を所定の位置に移動し、その後に、重合部を重合位置にする。これにより、重合部に設けられた収容凹部に固定具の繋ぎ部が収容され、その収容凹部の対面する内壁面(面方向位置決め部)が、固着具の側面に当接する。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る固定体装置は、請求項3に記載の固定体装置において、前記重合部は、前記固定部に回動可能に連結されている。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る固定体装置は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の固定体装置において、前記固定体は、前記被跨ぎ部を前記固定面から離れる方向に付勢して、その被跨ぎ部を前記固定面に打ち込まれた前記固着具の前記繋ぎ部に押圧させる、押圧手段を備える。こうして、押圧手段により、固定部における被跨ぎ部が、固着具の繋ぎ部を押圧することで、固定部、ひいては固定体と、固着具との、固定面に垂直な方向のがたつきが防止される。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係る固定体装置は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固定体装置において、前記固定体は、配線・配管材を支持する支持部を備える。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る固定体装置によれば、固定部における挿通部を固着具における突刺部よりも大きく形成することで、固定部と固着具との相対的な位置関係にそれほど配慮することなく、固着具を固定面に打ち込むことができ、その後に、固定部を所定の位置に移動して、面方向位置決め部を固着具の側面に当接させることで、固定部、ひいては固定体を、所定の位置に固定することができることから、この固定体の固定作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施の形態の、固着具を示し、(a)は、斜視図、(b)は、断面図である。
図2】同じく、固定体を、その本体の正面側から見た斜視図である。
図3】同じく、固定体を、その本体の底面側から見た斜視図である。
図4】同じく、固定体の断面図である。
図5】同じく、固定体に対して固着具がセットされた状態を示す断面図である。
図6】同じく、固着具の突刺片が固定面に打ち込まれた状態を示す断面図である。
図7】同じく、固定体の重合部を重合位置に回動した状態を示す断面図である。
図8】同じく、図7におけるA−A線による断面図である。
図9】同じく、図7における底面側からの斜視図である。
図10】同じく、固定体で配線・配管材を支持した状態を示す斜視図である。
図11】この発明の他の実施の形態の、固定体の斜視図である。
図12】固着具の打ち込みに、打ち込み工具としてタッカーを用いた例を示す、斜視図である。
図13】同じく、図12における、固定体を破断したB矢視図である。
図14】同じく、打ち込み工具(タッカー)の斜視図である。
図15】従来の配線・配管材支持具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に係る固定体装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1図10は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、固定面を示す。2は、固定面1に打ち込まれる固着具を示す。4は、固定体を示し、この固定体4は、前記固着具2によって固定面1に取付け固定される。5は、固定体装置を示し、この固定体装置5は、固着具2と固定体4とを備える。
【0017】
ここで、固着具2は、固定面1に打ち込まれる突刺片2aを有する一対の突刺部2b、2bと、それら突刺部2b、2bの打ち込まれる先端とは反対側を繋ぐ繋ぎ部2cとを備える(図1参照)。固定体4は、固定面1に固定される固定部402を備える。そして、この固定部402は、固着具2が跨ぐ被跨ぎ部4aと、その被跨ぎ部4aに隣接し、固着具2の一対の突刺部2b、2bのうち一方の突刺部2bが挿通される挿通部4bとを有する。この挿通部4bは、固定部402が固着具2に対して固定面1に沿う面方向に移動可能となるよう、その挿通部4bに挿通される突刺部2bよりも大きく形成されている。そして、固定体4は、固定部402とは別に面方向位置決め部9xを備えている。この面方向位置決め部9xは、被跨ぎ部4aを跨ぐようにして打ち込まれた固着具2に対して固定部402の前記面方向の移動を規制するように、固着具2の側面に当接するものである。
【0018】
詳細には、固定体4は、固定部402とは別に、固着具2の繋ぎ部2cを収容する収容凹部4nを備えている。そこで、前記面方向位置決め部9xは、その収容凹部4nの対面する内壁面からなる。そして、固定体4は、固定部402に重なる重合位置(図7図9図10参照)とその重なりから開放された非重合位置(図2図6参照)との間を移動可能な重合部403を備えている。そこで、その重合部403に前記収容凹部4nが設けられ、その重合部403が重合位置にあるとき収容凹部4nが前記繋ぎ部2cを収容する。
【0019】
具体的には、固着具2は、図1に示すように、固着具本体201と補助材202とからなる。固着具本体201は、例えば金属製であって、一対の前記突刺片2a、2aと、それら突刺片2a、2aの先端とは反対の端を繋ぐ繋ぎ片2dとを有して、コ字状に形成されている。補助材202は、例えは合成樹脂製であって、一対の突刺片2a、2aのそれぞれが差込まれる第1補助片2e、2eと、それら第1補助片2e、2eの、前記繋ぎ片2d側の端を繋ぐ第2補助片2fとを有して、コ字状に形成されている。そこで、前記突刺部2bは、突刺片2aと第1補助片2eとで構成され、前記繋ぎ部2cは、繋ぎ片2dと第2補助片2fとで構成される。ここで、第2補助片2fは、繋ぎ片2dよりも内側にあって、突刺片2a(つまり、固着具2)が固定面1に打ち込まれる前には、繋ぎ片2dから離れて位置し、突刺片2aの先端部分は、第1補助片2eから突出することなく隠れている。そして、突刺片2a(つまり、固着具2)を固定面1に打ち込む際には、第1補助片2eは、固定面1に当たって止まり(図5参照)、突刺片2aは、繋ぎ片2dが第2補助片2fに当たるまで、第1補助片2e内を通って固定面1に打ち込まれる(図6参照)。こうして、補助材202は、突刺片2aの打ち込み量を規制し固定面1と繋ぎ部2cとの間に空間を形成する打ち込み規制部となっている。そして、この形成された空間は、例えば、固着具2がケーブルを跨いだ状態で建物壁等に打ち込まれた際に、ケーブルを押圧保持する大きさに設定されている。すなわち、この固着具2は、ケーブル用のステップルからなる。
【0020】
固定体4は、図示実施の形態においては、配線・配管材(配線材または配管材)10を支持する、配線・配管材支持具であって、その配線・配管材10を支持する支持部4hを備える(図10参照)。この固定体4は、例えば合成樹脂製であって、本体401と、前記固定部402と、前記重合部403とを備えている。本体401は、前記支持部4hを備え、その支持部4hは、配線・配管材10を取り囲むように湾曲して形成されている。
【0021】
固定部402は、前述したように、被跨ぎ部4aと挿通部4bとを有する。被跨ぎ部4aは、左右に延びて形成されている。そして、固定部402は、被跨ぎ部4aとで矩形の枠を形成するように、コ字状のフレーム部4iを有する。すなわち、フレーム部4iは、被跨ぎ部4aの左右の各端から延びる一対の第1フレーム形成部4j、4jと、それら第1フレーム形成部4j、4jの先端を繋ぐ第2フレーム形成部4kからなる。そして、被跨ぎ部4aとフレーム部4iとで形成される枠の内側が前記挿通部4bとなる。
【0022】
重合部403は、固定部402を固定面1とで挟むように固定部402に重なるものである。この重合部403は、重合位置にあるとき固定部402の被跨ぎ部4aを跨ぐように門型形状をして、その一方の脚部4mが固定部402の挿通部4bに挿入される。また、前記収容凹部4nは、この門型形状をした重合部403の内面に溝状に設けられ、固着具2の繋ぎ部2cに加えて突刺部2bの一部(詳しくは、突刺片2aの一部と第1補助片2e)を収容する(図9参照)。
【0023】
この重合部403は、重合位置にあるとき固定部402に設けられた被係止部4pに係合する係止部4qを有し、それら係止部4qと被係止部4pとの係合により、重合部403は、重合位置に維持される。図示実施の形態においては、被係止部4pとして、第1被係止部4rと第2被係止部4sとが設けられ、それら被係止部4r、4sと対応するように、係止部4qとして、第1係止部4tと第2係止部4uとが設けられている。詳細には、前記第1フレーム形成部4j(詳しくは、第1フレーム形成部4jに設けられた凹部4y)が、第1被係止部4rとなり、前記被跨ぎ部4a(詳しくは、被跨ぎ部4aに設けられた段部4z)が、第2被係止部4sとなる。そして、第1係止部4tは、重合部403における一方の脚部4mの左右の側面に突設された第1の爪4vからなり、第2係止部4uは、重合部403における門型形状の内面(詳しくは、両脚部4m、4mの対向する面)に突設された第2の爪4wからなる。
【0024】
また、固定体4は、被跨ぎ部4aを固定面1から離れる方向に付勢して、被跨ぎ部4aを固定面1に打ち込まれた固着具2の繋ぎ部2cに押圧させる、押圧手段を備えている。この押圧手段は、図示実施の形態においては、前記係止部4qと被係止部4pとの係合に加えて、門型形状をした重合部403がその両脚部4m、4mが開くように弾性変形することによって機能する。すなわち、重合部403を固定面1側に押さえ付けて両脚部4m、4mを開かせることで、係止部4qを被係止部4pに係合させ、その押さえ付けを解除して開いた両脚部4m、4mを弾性復帰させることで、固定部402(つまりは、被跨ぎ部4a)を固定面1から離れる方向に付勢する。ここで、この付勢を確実なものとするために、係止部4qと被係止部4pとが係合したときの当たり面を傾斜させてもよい。
【0025】
また、図示実施の形態においては、重合部403は、本体401に連接して形成されている。そして、重合部403は、固定部402に回動可能に連結されている。詳細には、重合部403は、本体401のある側とは反対側で、ヒンジ4xにより、固定部402に回動可能に連結されている。すなわち、重合部403は、回動することで(詳しくは、本体401と一体となって回動することで)、重合位置と非重合位置との間を移動可能となっている。なお、図中符号9a、9b、9cは、釘が通る通孔であって、重合部403が非重合位置にあるときに、固定部402に設けられた通孔9aを通して釘を固定面1に打ち込むことで、固定部402を固定面1に固定することもできる。そして、重合部403が重合位置にあるときに、重合部403に設けられた通孔9bあるいは通孔9cを通して釘を固定面1に打ち込むことで、重合部403と固定部402をまとめて固定面1に固定することもできる。
【0026】
次に、以上の構成からなる固定体装置5の作用効果について説明する。この固定体装置5によると、固定体4の固定部402は、固着具2が跨ぐ被跨ぎ部4aと、その被跨ぎ部4aに隣接して固着具2の一方の突刺部2bが挿通される挿通部4bを有している。そして、この挿通部4bは、突刺部2bよりも大きく形成されて、固定部402が固着具2に対して固定面1に沿う面方向に移動可能となっている。このため、固定部402と固着具2との相対的な位置関係にそれほど配慮することなく、固着具2を固定面1に打ち込むことができ、その後に、固定部402を所定の位置に移動することができる。そして、固定部402を所定の位置に移動した後には、面方向位置決め部9x(詳しくは、収容凹部4nの対面する内壁面)を固着具2の側面に当接させることで、固着具2に対して固定部402が固定面1の面方向に移動するのが規制されて、固定部402、ひいては固定体4は、固定面1の所定の位置に固定される。すなわち、固定部402における挿通部4bを固着具2における突刺部2bよりも大きく形成することで、固定部402と固着具2との相対的な位置関係にそれほど配慮することなく、固着具2を固定面1に打ち込むことができ、その後に、固定部402を所定の位置に移動して、面方向位置決め部9xを固着具2の側面に当接させることで、固定部402、ひいては固定体4を、固定面1の所定の位置に固定することができ、これによって、この固定体4の固定作業を容易に行うことができる。
【0027】
また、固着具2を固定面1に打ち込む際には、固定部402に対して重合部403を非重合位置にする。そして、固着具2を固定面1に打ち込んだ後に、固定部402を所定の位置に移動し、その後に、重合部403を重合位置にする。こうして、重合部403を重合位置にすることで、重合部403に設けられた収容凹部4nに固定具402の繋ぎ部2c(図示実施の形態においては、繋ぎ部2cに加えて突刺部2bの一部)が収容され、その収容凹部4nの対面する内壁面(面方向位置決め部9x)が、固着具2の側面に当接し、これによって、固定部402は、固着具2に対して固定面1に沿う面方向に位置決めされる。
【0028】
また、固着具2の打ち込み後に、固定部402(つまりは、固定体4)を、固定面1に沿う面方向に移動できるが、図示実施の形態においては、その固定部402が面方向位置決め部9xによって位置決めされる位置は、支持部4hの幅の中央を通る面と固着具2とが合致(すなわち、固着具2の厚みの中央を通る面とが一致)する位置となっている。このように、固着具2を固定面1に打ち込んだ後に、固定部402を、固定面1に沿う面方向に移動でき、面方向位置決め部9xによって、支持部4hの幅の中央を通る面と固着具2とを合致させることができることから、支持部4hが荷重を受けても、固着具2に回転するような負荷がかかりにくく、安定した状態で固定体4を固定することができる。
【0029】
また、固定体4は、押圧手段を備えている。この押圧手段によって、固定部402における被跨ぎ部4aが、固着具2の繋ぎ部2cを押圧することで、固定部402、ひいては固定体4と、固着具2との、固定面1に垂直な方向のがたつきが防止される。
【0030】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、固定体4は、配線・配管材10を支持する支持具でなくとも、その他の部材を支持する支持具であってもよく、また、支持具に限るものでもない。
【0031】
また、固定体4において、重合部403は、固定部402に回動可能に連結されているが、連結することなく、固定部402とは別体となっていてもよい。
【0032】
また、固定体4において、重合部403は、本体401に連接して形成されているが、図11に示すように、重合部403が本体401に連接するのではなく、固定部402が本体401に連接してもよい。また、この図においても、重合部403は、固定部402にヒンジ4xによって回動可能に連結されているが、連結することなく、固定部402とは別体となっていてもよい。
【0033】
また、固定体4は、被跨ぎ部4aを固着具2の繋ぎ部2cに押圧させる押圧手段を備えるが、この押圧手段はなくてもよい。また、この押圧手段に代えて、被跨ぎ部4aと繋ぎ部2cとの間にくさびを打ち込むことにより、固定部402、ひいては固定体4と、固着具2との、固定面1に垂直な方向のがたつきを防止してもよい。
【0034】
また、固着具2は、固着具本体201と補助材202とからなっているが、この補助材202はなくてもよい。
【0035】
また、固定面1に打ち込まれた固着具2の繋ぎ部2cと、固定体4における固定部402の被跨ぎ部4aとは、重合部403を固定部402に重ねる前においては、手により固定面1に沿う面方向に力をかけることで摺接する程度であれば、当接していてもよいが、当接していなくてもよい。
【0036】
また、固着具2の固定面1への打ち込みには、金槌の他にもタッカーなどの打ち込み工具を用いてもよく、その方法および工具等は、特に限定されない。
【0037】
図12図14は、打ち込み工具としてタッカーを用いた例を示す。この打ち込み工具3は、複数の固着具2を内部に収容しその固着具2を固定面1に打ち込むよう一つずつ打ち出すものである。固定体4は、打ち込み工具3を固定体4の固定部402に宛がった際に、打ち込み直前の固着具2が、被跨ぎ部4aの直上で跨ぎ姿勢となるように、打ち込み工具3を案内する案内手段6を備える(図12図13参照)。そして、この案内手段6は、打ち込み工具3に設けられた被係合部3aと係合する係合部4cからなる。
【0038】
図示実施の形態においては、前記案内手段6として、第1の案内手段6aと第2の案内手段6bが設けられている。第1の案内手段6aに対しては、打ち込み工具3は、前記被係合部3aとしての第1の被係合部3bを備える。そこで、前記係合部4cとしての第1の係合部4dは、第1の被係合部3bを受け入れる凹み、穴などの空所を備える受入部4eからなる。詳細には、この受入部4eは、前記挿通部4bからなる。そして、第1の被係合部3bは、打ち込み工具3の、固着具2を打ち出す射出口3cに隣接し、その射出口3cよりも、固着具2を打ち出す射出方向7に突出している(図12図14参照)。
【0039】
第2の案内手段6bに対しては、打ち込み工具3は、先端が固定面1に当接する一対の突出部3d、3dを備える。一方、固定体4は、その一対の突出部3d、3d間の凹部からなる切欠き凹部3e内に配置される切欠き凹部対応部4fを備える。そこで、切欠き凹部3eが、前記被係合部3aとしての第2の被係合部3fとなり、切欠き凹部対応部4fが、前記係合部4cとしての第2の係合部4gとなる。詳細には、切欠き凹部対応部4fは、前記被跨ぎ部4aである。そして、打ち込み工具3における一対の突出部3d、3dは、固着具2を打ち出す射出口3cに隣接し、その射出口3cよりも、固着具2を打ち出す射出方向7に突出している(図12図14参照)。
【0040】
打ち込み工具3は、その底壁3g側に、固着具2、2を収容する弾装部3hが設けられてる(図14参照)。そして、弾装部3hにおける固着具2、2が並ぶ先頭部分に、前記射出口3cが設けられる。前記一対の突出部3d、3dは、射出口3cの両端側に設けられる。詳細には、突出部3dは、射出口3cの前方に位置する前板部3iと、射出口3cの側方に位置する側板部3jとで、L字状に形成されている。そこで、前述したように、これら一対の突出部3d、3d間(詳しくは、前板部3i、3i間)の凹部からなる切欠き凹部3eが第2の被係合部3fとなる。そして、図示実施の形態においては、これら突出部3d、3dのうちのいずれか一方が、前記第1の被係合部3bとなる。なお、図中符号3kは、操作ハンドル、3mは、指掛け部を示し、この指掛け部3mに指を掛け、指掛け部3m側に操作ハンドル3kを押し込むことで、固着具2が打ち出される。
【0041】
ところで、図示実施の形態においては、打ち込み工具3における第1の被係合部3bとしての突出部3dは、固定体4の固定部402における第1の係合部4dとしての挿通部4bに、被跨ぎ部4aの延びる方向において、ぴったりと嵌まる。そして、打ち込み工具3から打ち出された固着具2は、被跨ぎ部4aにおける、その延びる方向の端側を跨いで固定面1に打ち込まれる。そのため、重合部403を固定部402に重ねる際には、固定部402を被跨ぎ部4aの延びる方向にずらすことで、固着具2が被跨ぎ部4aの中央部分を跨ぐようにし(つまり、固着具2が固定部402の左右の中央に位置するようにし)、その後に、重合部403を固定部402に重ねる。もっとも、側板部3jの幅を狭くするとか、なくすとかする等により、第1の被係合部3bとしての突出部3dは、第1の係合部4dとしての挿通部4bに、被跨ぎ部4aの延びる方向においてぴったりと嵌まらなくてもよい。この場合には、打ち込み工具3は、固定部402に対し、被跨ぎ部4aの延びる方向の適宜位置に調整されて宛がわれる。このため、固着具2は、被跨ぎ部4aにおける、その延びる方向の適宜位置を跨いで固定面1に打ち込まれる。そして、前記と同様に、重合部403を固定部402に重ねる際には、必要に応じて固定部402を被跨ぎ部4aの延びる方向にずらすことで、固着具2が被跨ぎ部4aの中央部分を跨ぐようにし、その後に、重合部403を固定部402に重ねる。
【0042】
この固定装置によると、固定体4は、固着具2によって固定面1に取付け固定されるが、その固着具2は、内部に固着具2を収容する打ち込み工具3により、固定面1に打ち込まれる。ここで、固定体4の固定部402は、固着具2が跨ぐ被跨ぎ部4aと、固着具2における一方の突刺部2bが挿通される挿通部4bとを有している。そして、固定体4は、打ち込み工具3を案内する案内手段6を備えており、この案内手段6により、打ち込み工具3内で打ち込み直前の固着具2が、被跨ぎ部4aの直上で跨ぎ姿勢となる。このため、この案内手段6によって案内された打ち込み工具3から固着具2を打ち出すことで、固着具2は、確実に被跨ぎ部4aを跨いで、固定面1に打ち込まれる。
【0043】
また、固着具2の打ち込み後に、固定部402(つまりは、固定体4)を、固定面1に沿う面方向に移動できることから、支持部4hの幅の中央を通る面に合わせて固着具2を打ち込む必要がなく、打ち込み工具3の突出部3d(第1の被係合部3b)を受け入れるために、受入部4e(詳しくは、挿通部4b(第1の係合部4d))、つまりは固定部402を大きくする必要がない。
【0044】
なお、図示実施の形態においては、案内手段6として、第1の案内手段6aと第2の案内手段6bが設けられているが、これら案内手段6a、6bのうちいずれか一方はなくてもよい。また、被係合部3aは、打ち込み工具3の射出口3cに隣接する位置に設けられているが、射出口3cに隣接することなく他の位置に設けられてもよく、その場合には、当然に、係合部4cは、被係合部3aに対応してその位置が変更される。
【0045】
本願発明に係る固定体装置に、打ち込み工具を加えた固定装置の発明を次に示す。
【0046】
請求項に記載の発明に係る固定体装置(つまり、固着具2と固定体4)と、打ち込み工具3とを備える固定装置であって、前記打ち込み工具3は、複数の前記固着具2、2を内部に収容しその固着具2を前記固定面1に打ち込むよう一つずつ打ち出すものであって、
【0047】
前記固定体4は、前記打ち込み工具3を前記固定部402に宛がった際に、打ち込み直前の前記固着具2が、前記被跨ぎ部4aの直上で跨ぎ姿勢となるように、前記打ち込み工具3を案内する案内手段6を備える。
【符号の説明】
【0048】
1 固定面
2 固着具
2a 突刺片
2b 突刺部
2c 繋ぎ部
4 固定体
402 固定部
403 重合部
4a 被跨ぎ部
4b 挿通部
4h 支持部
4n 収容凹部
5 固定体装置
9x 面方向位置決め部
10 配線・配管材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15