特許第6830865号(P6830865)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830865
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】車線認識装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20210208BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20210208BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20210208BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20210208BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20210208BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R21/00 991
   G01C21/34
   G06T7/60 200J
   G06T7/00 650A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-130447(P2017-130447)
(22)【出願日】2017年7月3日
(65)【公開番号】特開2019-16005(P2019-16005A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩道
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/029734(WO,A1)
【文献】 特開2008−003253(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/008566(WO,A1)
【文献】 特開2015−223933(JP,A)
【文献】 特開2003−123058(JP,A)
【文献】 特開2017−198566(JP,A)
【文献】 特開2013−012044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
B60W 30/00 − 60/00
B60R 21/00 − 21/017
B62D 6/00 − 6/10
G06T 7/00 − 7/90
G01C 21/00 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段によって検出された自車位置に対応する車線認識の信頼度履歴を取得する信頼度履歴取得手段と、
自車両が走行中の路面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像に含まれる車線の境界線を抽出して自車両が走行中の車線を認識する車線認識手段と、
前記撮像手段によって撮像された画像に含まれる車線の境界線に基づいて、この境界線の信頼度を判定する信頼度判定手段と、
前記信頼度判定手段によって判定された信頼度としきい値とを比較し、前記車線認識手段による認識結果の適否を判定する認識結果適否判定手段と、
自車両の走行位置に対応して前記信頼度履歴取得手段によって取得された信頼度履歴に基づいて前記しきい値を調整するしきい値調整手段と、
を備えることを特徴とする車線認識装置。
【請求項2】
前記認識結果適否判定手段は、前記信頼度判定手段によって判定された信頼度が前記しきい値よりも高い場合に前記認識結果を採用する旨の判定を行い、前記信頼度判定手段によって判定された信頼度が前記しきい値よりも低い場合に前記認識結果を採用しない旨の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の車線認識装置。
【請求項3】
前記信頼度履歴取得手段は、前記信頼度履歴とともに、この信頼度履歴の生成に要した車両走行頻度とを取得し、
前記しきい値調整手段は、前記車両走行頻度に基づいて、前記しきい値を調整する程度を可変することを特徴とする請求項1または2に記載の車線認識装置。
【請求項4】
前記しきい値調整手段は、前記車両走行頻度が高い場合に前記しきい値を調整する程度を大きく、前記車両走行頻度が低い場合に前記しきい値を調整する程度を小さくすることを特徴とする請求項3に記載の車線認識装置。
【請求項5】
前記しきい値調整手段は、前記車両走行頻度が所定値よりも高い場合に前記しきい値を調整し、前記車両走行頻度が所定値よりも低い場合に前記しきい値の調整を行わないことを特徴とする請求項3または4に記載の車線認識装置。
【請求項6】
前記信頼度履歴を格納する信頼度履歴格納手段と、
前記信頼度判定手段によって判定された信頼度を用いて、前記信頼度履歴格納手段に格納されている前記信頼度履歴を更新する信頼度履歴更新手段と、
をさらに備え、前記信頼度履歴取得手段は、前記信頼度履歴格納手段から前記信頼度履歴を読み出すことにより取得することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の車線認識装置。
【請求項7】
前記信頼度履歴更新手段は、自車両が道路を走行する毎に、この道路に対応する前記信頼度履歴を更新することを特徴とする請求項6に記載の車線認識装置。
【請求項8】
前記認識結果適否判定手段によって前記認識結果が適切である旨の判定が行われたときに、前記車線認識手段によって認識された車線を用いて、自車両の走行を案内する所定の案内動作を行う走行案内手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車線認識装置。
【請求項9】
前記撮像手段によって撮像された画像に含まれる車線の境界線を抽出して、自車両が走行中の車線の逸脱の有無を判定する車線逸脱判定手段と、
前記車線逸脱判定手段によって自車両が車線を逸脱した旨の判定が行われ、かつ、前記認識結果適否判定手段によって前記認識結果が適切である旨の判定が行われたときに、自車両の運転者に対して所定の警告を行う車線逸脱警告手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車線認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行車線を認識する車線認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、GPS受信機を用いて測定した現実空間内の自車両の位置と、車載カメラによって撮像した車両の進行方向の空間の画像に基づいて特定した走行車線の境界線の位置とを用いて走行車線を認識するとともに、撮像画像に基づいて走行車線の境界線の位置が特定できなかった場合には、記憶部に記憶されている境界線の位置を用いて走行車線を認識するようにした車線認識装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−228132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1では、撮像画像上において走行車線の左右両側の境界線が明確に映し出されている場合に、撮像画像に基づいて境界線位置が適切に特定できるとされており、境界線が明確か否かの判定基準によっては、撮像画像に基づく車線認識の信頼度が低下するという問題があった。例えば、明確の程度を高くしすぎると、境界線を描いた直後はいいが、経年変化により境界線の輪郭や色が不鮮明になったり、日照の状態や天候等によってはほとんどの場合に境界線を特定できなくなって、撮像画像に基づいて車線を認識可能な機会が減ってしまう。その一方で、明確の程度を低くしすぎると、舗装の継ぎ目や影の輪郭を境界線と誤って特定することになり、撮像画像に基づいて車線を誤認識するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、撮像画像に基づいて車線を認識する際の信頼性を向上させることができる車線認識装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の車線認識装置は、自車両の位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段によって検出された自車位置に対応する車線認識の信頼度履歴を取得する信頼度履歴取得手段と、自車両が走行中の路面を撮像する撮像手段と、撮像手段によって撮像された画像に含まれる車線の境界線を抽出して自車両が走行中の車線を認識する車線認識手段と、撮像手段によって撮像された画像に含まれる車線の境界線に基づいて、この境界線の信頼度を判定する信頼度判定手段と、信頼度判定手段によって判定された信頼度としきい値とを比較し、車線認識手段による認識結果の適否を判定する認識結果適否判定手段と、自車両の走行位置に対応して信頼度履歴取得手段によって取得された信頼度履歴に基づいてしきい値を調整するしきい値調整手段とを備えている。
【0007】
具体的には、上述した認識結果適否判定手段は、信頼度判定手段によって判定された信頼度がしきい値よりも高い場合に認識結果を採用する旨の判定を行い、信頼度判定手段によって判定された信頼度がしきい値よりも低い場合に認識結果を採用しない旨の判定を行うことが望ましい。
【0008】
走行場所における車線認識の信頼度が高いことがあらかじめ分かっている場合には、撮像画像に基づいて判定されるその時点における信頼度が多少低くても、正しい車線認識結果が得られることが予想される。反対に、走行場所における車線認識の信頼度が低いことがあらかじめ分かっている場合には、撮像画像に基づいて判定されるその時点における信頼度が多少高い場合であっても、誤認識による車線認識結果が得られるおそれがある。これらのことを考慮して、本発明では、車線認識の信頼度履歴に基づいて、認識結果の適否判定に用いられるしきい値を調整することにより、正しい認識結果を不採用にしたり、反対に、誤った認識結果を採用したりすることを低減することができ、撮像画像に基づいて車線を認識する際の信頼性を向上させることが可能となる。
【0009】
また、上述した信頼度履歴取得手段は、信頼度履歴とともに、この信頼度履歴の生成に要した車両走行頻度とを取得し、しきい値調整手段は、車両走行頻度に基づいて、しきい値を調整する程度を可変することが望ましい。これにより、信頼度履歴の安定性を考慮した車線認識動作が可能となる。
【0010】
例えば、上述したしきい値調整手段は、車両走行頻度が高い場合にしきい値を調整する程度を大きく、車両走行頻度が低い場合にしきい値を調整する程度を小さくすることが望ましい。あるいは、上述したしきい値調整手段は、車両走行頻度が所定値よりも高い場合にしきい値を調整し、車両走行頻度が所定値よりも低い場合にしきい値の調整を行わないことが望ましい。信頼度履歴の安定性が低い場合にしきい値の調整の度合いを小さくしたり、あるいは、しきい値の調整を行わないようにすることにより、突発的な要因による影響を少なく、あるいは排除することが可能となる。
【0011】
また、上述した信頼度履歴を格納する信頼度履歴格納手段と、信頼度判定手段によって判定された信頼度を用いて、信頼度履歴格納手段に格納されている信頼度履歴を更新する信頼度履歴更新手段とをさらに備え、信頼度履歴取得手段は、信頼度履歴格納手段から信頼度履歴を読み出すことにより取得することが望ましい。特に、上述した信頼度履歴更新手段は、自車両が道路を走行する毎に、この道路に対応する信頼度履歴を更新することが望ましい。これにより、よく通る道路についての車線認識の信頼性を高めることが可能となる。
【0012】
また、上述した認識結果適否判定手段によって認識結果が適切である旨の判定が行われたときに、車線認識手段によって認識された車線を用いて、自車両の走行を案内する所定の案内動作を行う走行案内手段をさらに備えることが望ましい。信頼性が向上した車線認識結果を利用して精度の高い自車両の走行案内を実現することが可能となる。
【0013】
また、上述した撮像手段によって撮像された画像に含まれる車線の境界線を抽出して、自車両が走行中の車線の逸脱の有無を判定する車線逸脱判定手段と、車線逸脱判定手段によって自車両が車線を逸脱した旨の判定が行われ、かつ、認識結果適否判定手段によって認識結果が適切である旨の判定が行われたときに、自車両の運転者に対して所定の警告を行う車線逸脱警告手段とをさらに備えることが望ましい。これにより、精度の高い車線逸脱警告が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態のナビゲーション装置の詳細構成を示す図である。
図2】カメラの搭載位置と撮像範囲を示す図である。
図3】ナビゲーション装置において行われる車線認識の動作手順を示す流れ図である。
図4】しきい値調整の具体例を示す図である。
図5】変形例のナビゲーション装置100Aの詳細構成を示す図である。
図6図5に示すナビゲーション装置で行われる車線逸脱警報の動作手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の車線認識装置を適用した一実施形態のナビゲーション装置について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、一実施形態のナビゲーション装置100の詳細構成を示す図である。図1に示すように、ナビゲーション装置100は、ナビゲーションコントローラ1、地図データ記憶装置2、操作部3、車両位置検出部4、表示装置5、オーディオ部6、カメラ7を含んで構成されている。このナビゲーション装置100は、車両に搭載されている。。
【0017】
ナビゲーションコントローラ1は、CPU、ROM、RAM等を用いて所定の動作プログラムを実行することにより、自車位置周辺の地図画像表示動作、出発地と目的地とを結ぶ走行経路を設定する経路探索処理やこの走行経路に沿って車両の走行を案内する経路案内動作、自車両が走行中の車線を特定する車線認識動作などの各種機能を実現する。ナビゲーションコントローラ1の詳細構成については後述する。
【0018】
地図データ記憶装置2は、地図データが格納されている記憶媒体およびその読み取り装置である。この地図データには、地図表示や経路探索などを行う際に用いられるデータが含まれている。
【0019】
地図データ記憶装置2には、経度および緯度で適当な大きさに区切られた矩形形状の図葉を単位とした地図データが格納されている。各図葉の地図データは、図葉番号を指定することにより特定され、読み出すことが可能となる。地図データ記憶装置2は、ハードディスク装置や半導体メモリによって、あるいは、DVDとその読み取り装置によって実現される。また、地図データ記憶装置2を通信装置に置き換えて、外部の地図配信サーバ(図示せず)から地図データを取得するようにしてもよい。
【0020】
操作部3は、利用者の指示(操作)を受け付けるためのものであり、各種の操作ボタンや操作つまみ類を備えている。また、操作部3は、表示装置5の画面に取り付けられたタッチパネルを含んでおり、画面上の一部を直接利用者が指等で指し示すことにより、操作指示を行うことができるようになっている。車両位置検出部4は、例えば、GPS受信機、方位センサ、距離センサなどを備えており、所定のタイミングで車両位置(経度、緯度)の検出を行い、検出結果を出力する。
【0021】
表示装置5は、例えばLCD(液晶表示装置)によって構成されており、ナビゲーションコントローラ1から出力される映像信号に基づいて自車位置周辺の地図画像などを表示する。オーディオ部6は、ナビゲーションコントローラ1から入力される音声信号に基づいて生成した案内音声等を車室内に出力する。
【0022】
カメラ7は、車両後部に取り付けられており、自車両の走行車線や左右の隣接車線が含まれる撮像範囲を有する。例えば、CCD撮像素子やCMOS撮像素子を用いるとともに、広角レンズを取り付けて画角を広くすることが望ましい。
【0023】
図2は、カメラ7の搭載位置と撮像範囲を示す図である。図2に示すように、自車両Gの後部中央、例えばナンバープレート上部にカメラ7が取り付けられている。このカメラ7は、画角Aが180度に近い角度に設定されている。例えば、このカメラ7は、自車両後退時に車両後方の画像を車室内の表示装置に表示するためのものであり、自車両走行時にはその撮像範囲に含まれる画像が本発明の用途に用いられる。
【0024】
なお、本実施形態では、カメラ7を用いて自車両の後方を撮像したが、自車両Gの前部にカメラ7を設置し、自車両の前方を撮像するようにしてもよい。
【0025】
次に、ナビゲーションコントローラ1の詳細構成について説明する。図1に示すナビゲーションコントローラ1は、地図バッファ10、地図読出制御部12、地図描画部14、車両位置計算部20、経路探索処理部30、経路案内処理部32、目的地設定部34、車線認識部40、信頼度判定部42、認識結果適否判定部44、信頼度履歴格納部46、信頼度履歴取得部48、しきい値調整部50、信頼度履歴更新部52、入力処理部60、表示処理部70を含んで構成されている。
【0026】
地図バッファ10は、地図データ記憶装置2から読み出された地図データを一時的に格納する。この地図データには、地図画像描画に必要なデータや、経路探索および経路誘導に必要なデータなどが少なくとも含まれる。地図読出制御部12は、車両位置計算部20により算出される車両位置や利用者が操作部3を操作して指定した位置に応じて、所定範囲の地図データの読み出し要求を地図データ記憶装置2に出力する。地図描画部14は、地図バッファ10に格納された地図データに基づいて、表示装置5に地図画像を表示するために必要な描画処理を行って地図描画データを作成する。
【0027】
車両位置計算部20は、車両位置検出部4から出力される検出データに基づいて自車位置を計算するとともに、計算した自車位置が地図データの道路上にない場合には、自車位置を修正するマップマッチング処理を行う。
【0028】
経路探索処理部30は、出発地から目的地までが最少のコストとなる走行経路(誘導経路)を、所定の探索条件を用いた経路探索処理によって算出する。経路案内処理部32は、経路探索処理部30による探索処理によって得られた走行経路を地図上に重ねて表示したり、右左折交差点の案内図を表示するための交差点案内描画データを作成するとともに、走行経路に沿って車両の走行を案内するために必要な交差点案内等の音声信号を生成することにより、走行経路に沿った案内動作を行う。また、本実施形態では、道路に複数の車線が含まれている場合であって、自車両が走行中の車線が特定された場合には、経路案内処理部32は、この特定された車線を用いた案内動作を行う。目的地設定部34は、経路探索処理部30によって行われる経路探索処理に用いられる目的地を設定する。
【0029】
車線認識部40は、カメラ7によって撮像された自車両の後方画像に含まれる車線(走行レーン)の境界線(白線)を抽出することにより、自車両が走行中の車線を認識する。
【0030】
信頼度判定部42は、カメラ7によって撮像された自車両の後方画像に含まれる車線の境界線(白線)に基づいて、この境界線の位置・角度精度と相関する車線信頼度を判定(算出)する。この車線信頼度は、白線の開始位置(開始位置が自車両に近いほど評価値が高い)、線らしさ(直線に近いほど評価値が高い)、コントラスト(コントラストが高いほど評価値が高い)、線幅(線幅が適正範囲に入っている場合に評価値が高い)、線幅のばらつき(ばらつきがない場合に評価値が高い)などを考慮して(例えば各評価値を乗算することにより)算出される。なお、これらの項目は、さらに追加したり、一部を用いるようにしてもよい。
【0031】
認識結果適否判定部44は、信頼度判定部42によって判定された信頼度としきい値とを比較し、それらの大小関係に応じて、車線認識部40による認識結果の適否を判定する。具体的には、認識結果適否判定部44は、信頼度判定部42によって判定された信頼度がしきい値よりも高い場合に認識結果を採用する旨の判定を行い、信頼度判定部42によって判定された信頼度がしきい値よりも低い場合に認識結果を採用しない旨の判定を行う。
【0032】
信頼度履歴格納部46は、道路の所定区間(例えば1km)ごとに対応する車線信頼度を信頼度履歴として格納する。また、信頼度履歴格納部46は、信頼度履歴とともに、この信頼度履歴の生成に要した車両走行頻度(車両走行回数)を格納する。
【0033】
信頼度履歴取得部48は、自車位置計算部20によって計算された自車位置に対応する車線認識の信頼度履歴を、信頼度履歴格納部46から読み出すことにより取得する。
【0034】
しきい値調整部50は、自車両の走行位置に対応して信頼度履歴取得部48によって取得した信頼度履歴に基づいて、認識結果適否判定部44の判定で用いるしきい値を調整する。
【0035】
信頼度履歴更新部52は、信頼度判定部42によって判定された信頼度を用いて、信頼度履歴格納部46に格納されている信頼度履歴を更新する。自車両が道路を走行する毎に、この道路に対応する信頼度履歴が更新される。具体的には、更新前に格納されている信頼度履歴に対応する車両走行回数を考慮して、例えば、車両走行回数をm、信頼度履歴をA、今回判定した信頼度をBとしたときに、(m×A+B)/(m+1)の式にしたがって算出された値A’が更新後の信頼度履歴として信頼度履歴格納部46に上書きされる。
【0036】
入力処理部60は、操作部3から入力される各種の操作指示に対応する動作を行うための命令をナビゲーションコントローラ1内の各部に向けて出力する。
【0037】
表示処理部70は、地図描画部14によって作成される通常地図描画データが入力されており、この描画データに基づいて所定範囲の地図画像を表示装置5の画面に表示する。また、経路探索処理部30によって設定される走行経路などを示す走行経路描画データが入力されると、表示処理部70は、この描画データに対応する走行経路を地図画像に重ねて表示装置5の画面に表示する。
【0038】
上述した車両位置検出部4、車両位置計算部20が位置検出手段に、信頼度履歴取得部48が信頼度履歴取得手段に、カメラ7が撮像手段に、車線認識部40が車線認識手段に、信頼度判定部42が信頼度判定手段に、認識結果適否判定部44が認識結果適否判定手段に、しきい値調整部50がしきい値調整手段に、信頼度履歴格納部46が信頼度履歴格納手段に、信頼度履歴更新部52が信頼度履歴更新手段に、経路案内処理部32が走行案内手段にそれぞれ対応する。
【0039】
本実施形態のナビゲーション装置100はこのような構成を有しており、次に、車線認識に関する動作について説明する。
【0040】
図3は、ナビゲーション装置において行われる車線認識の動作手順を示す流れ図である。
【0041】
車両位置計算部20によって自車位置が特定(計算)されると(ステップ100)、信頼度履歴取得部48は、この自車位置に対応する信頼度履歴を信頼度履歴格納部46から読み出して取得する(ステップ102)。また、しきい値調整部50は、取得した信頼度履歴に基づいて、認識結果適否判定部44の判定で用いるしきい値を調整する(ステップ104)。
【0042】
また、カメラ7によって自車両の後方画像が撮像されると(ステップ106)、車線認識部40は、この後方画像に含まれる車線を区画する白線を抽出することにより、自車両が走行中の車線を認識する(ステップ108)。
【0043】
また、認識結果適否判定部44は、認識された車線の数が複数か否かを判定する(ステップ110)。複数の場合には肯定判断が行われる。次に、信頼度判定部42は、カメラ7による撮像によって得られた自車両の後方画像に含まれる車線を区画する白線に基づいて車線信頼度を判定する(ステップ112)。また、信頼度履歴更新部52は、信頼度判定部42によって判定された信頼度を用いて、信頼度履歴格納部46に格納されている信頼度履歴を更新する(ステップ114)。
【0044】
次に、経路案内処理部32は、目的地までの走行経路が設定されており、しかも、この走行経路に沿って案内動作を行う案内タイミングか否かを判定する(ステップ116)。案内タイミングの場合には肯定判断が行われ、認識結果適否判定部44は、信頼度判定部42によって判定された信頼度が、ステップ104において調整されたしきい値よりも高いか否かを判定する(ステップ118)。
【0045】
高い場合には肯定判断が行われる。この場合には、認識結果適否判定部44は車線認識結果を採用する旨の判定を行い(ステップ120)、経路案内処理部32は車線認識結果を用いた案内動作を行う(ステップ122)。例えば、3車線の道路の中央車線を走行中に右折交差点に近づいたときに、「次の交差点を右折です。右側の走行レーンに移動してください。」などの音声案内が行われる。
【0046】
また、判定された信頼度が調整後のしきい値よりも低い場合にはステップ118の判定において否定判断が行われる。この場合には、認識結果適否判定部44は車線認識結果を採用しない旨の判定を行い(ステップ124)、経路案内処理部32は車線認識結果を用いない案内動作を行う(ステップ126)。例えば、上述した例では「次の交差点を右折です。」という音声案内を行い、それに続く「右側の走行レーンに移動してください。」の部分は省略される。
【0047】
なお、走行中の道路が複数車線でない場合にはステップ110の判定において否定判断が行われる。この場合にはステップ126に移行し、車線認識結果を用いない案内動作が行われる。また、案内タイミングではない場合にはステップ116の判定において否定判断が行われる。この場合にはステップ122やステップ126における案内動作は行われずに一連の処理が終了する。
【0048】
図4は、しきい値調整の具体例を示す図である。図4(A)には信頼度履歴が高い場合が、図4(B)には信頼度履歴が低い場合が示されている。例えば、図4に示す例では、判定される車線信頼度や信頼度履歴は「0」から「100」の間の値を有し、調整前のしきい値は「50」に設定されている。しきい値の調整を考慮しない場合には、判定された車線信頼度の値がしきい値「50」よりも高ければ車線認識結果が採用され、低ければ不採用となる。
【0049】
本実施形態では、図4(A)に示すように、信頼度履歴の値が高い場合(例えば「75」以上の場合)には、しきい値が「50」から「40」に変更される。したがって、判定された車線信頼度にばらつきがあって「50」よりもわずかに低い場合であっても、変更後のしきい値「40」よりも高い場合には、車線認識結果が不採用にならない。
【0050】
反対に、図4(B)に示すように、信頼度履歴の値が低い場合(例えば「25」以下の場合)には、しきい値が「50」から「60」に変更される。したがって、判定された車線信頼度にばらつきがあって「50」よりもわずかに高い場合であっても、変更後のしきい値「60」よりも低い場合には、車線認識結果が採用にならない。
【0051】
なお、上述した例では、しきい値を一律に「10」変更するようにしたが、変更前のしきい値と信頼度履歴の値との差に比例する値を階段状あるいは連続的に設定して、調整前の閾値に対して増減(加減)するようにしてもよい。
【0052】
一般に、走行場所における車線認識の信頼度(信頼度履歴)が高いことがあらかじめ分かっている場合には、撮像画像に基づいて判定されるその時点における車線信頼度が多少低くても、正しい車線認識結果が得られることが予想される。反対に、走行場所における車線認識の信頼度が低いことがあらかじめ分かっている場合には、撮像画像に基づいて判定されるその時点における車線信頼度が多少高い場合であっても、誤認識による車線認識結果が得られるおそれがある。これらのことを考慮して、本実施形態のナビゲーション装置100では、車線認識の信頼度履歴に基づいて、認識結果の適否判定に用いられるしきい値を調整することにより、正しい認識結果を不採用にしたり、反対に、誤った認識結果を採用したりすることを低減することができ、撮像画像に基づいて車線を認識する際の信頼性を向上させることが可能となる。
【0053】
また、信頼度判定部42によって判定された車線信頼度を用いて、信頼度履歴格納部46に格納されている信頼度履歴を更新する信頼度履歴更新部52を備え、自車両が道路を走行する毎に、この道路に対応する信頼度履歴を更新することにより、よく通る道路についての車線認識の信頼性を高めることが可能となる。
【0054】
また、このようにして調整されたしきい値を用いて車線認識結果の適否(採用/不採用)を決定した上で経路案内処理部32による案内動作を行うことにより、信頼性が向上した車線認識結果を利用して精度の高い自車両の走行案内を実現することが可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、しきい値の調整を、所定値を増減したり、変更前のしきい値と信頼度履歴の値との差に比例する値を増減して行うようにしたが、車両走行頻度(車両走行回数)に基づいて、しきい値を調整する程度を可変するようにしてもよい。これにより、信頼度履歴の安定性を考慮した車線認識動作が可能となる。
【0056】
具体的には、しきい値調整部50は、車両走行回数が多い場合にしきい値を調整する程度を大きく(例えば、図4に示した例では、しきい値を「50」から「40」あるいは「60」に変更)、車両走行回数が少ない場合にしきい値を調整する程度を小さく(例えば、図4に示した例では、しきい値を「50」から「45」あるいは「55」に変更)する。あるいは、しきい値調整部50は、車両走行回数が所定値(例えば「10回」)よりも多い場合にしきい値を調整し、車両走行回数が所定値よりも少ない場合にしきい値の調整を行わない。
【0057】
信頼度履歴の安定性が低い場合にしきい値の調整の度合いを小さくしたり、あるいは、しきい値の調整を行わないようにすることにより、突発的な要因による影響を少なく、あるいは排除することが可能となる。
【0058】
また、上述した実施形態では、ナビゲーション装置に車線認識装置の機能を持たせたが、ナビゲーション装置とは別に車線認識装置を備え、車線認識結果を車線認識装置からナビゲーション装置に入力するようにしてもよい。また、車線認識装置をナビゲーション装置以外の装置と組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、ナビゲーション装置(車線認識装置)内に信頼度履歴格納部46を設けたが、ナビゲーション装置の外部に信頼度履歴格納部46を設けるようにしてもよい。例えば、インターネット経由で接続可能な外部装置としてのサーバに信頼度履歴格納部46と信頼度履歴更新部52を設け、通信装置(図示せず)を用いてサーバとの間で無線通信を行ってこの信頼度履歴格納部46から信頼度履歴を取得するようにしてもよい。また、信頼度履歴更新部52は、複数の車両から送られてくる車線信頼度を用いて、信頼度履歴格納部46に格納されている信頼度履歴を更新することができる。
【0060】
また、上述した実施形態では、走行中の車線の認識結果の適否に基づいて、自車両の走行を案内する案内動作を行う場合について説明したが、この認識結果の適否を他の動作と組み合わせるようにしてもよい。
【0061】
図5は、変形例のナビゲーション装置100Aの詳細構成を示す図である。図5に示すナビゲーション装置100Aは、図1に示したナビゲーション装置100に対して、ナビゲーションコントローラ1をナビゲーションコントローラ1Aに置き換えた点が異なっている。このナビゲーションコントローラ1Aは、ナビゲーションコントローラ1に対して、車線逸脱判定部54と車線逸脱警告部56を追加した点が異なっている。以下、これらの追加された構成に着目して説明を行う。
【0062】
車線逸脱判定部54は、カメラ7によって撮像された自車両の後方画像に含まれる車線(走行レーン)の境界線を抽出して、自車両が走行中の車線の逸脱の有無(走行中の車線から自車両が逸脱したか否か)を判定する。車線逸脱警告部56は、車線逸脱判定部54によって自車両が車線を逸脱した旨の判定が行われ、かつ、認識結果適否判定部44によって認識結果が適切である旨の判定が行われたときに、自車両の運転者に対して所定の警告を行う。この警告は、例えばオーディオ部6から所定の警告音を出力することにより行う場合が考えられるが、表示処理部70を通して表示装置5に所定の警告画像を表示したり、図示しないインジケータを点灯させるようにしてもよい。
【0063】
図6は、図5に示すナビゲーション装置100Aで行われる車線逸脱警報の動作手順を示す流れ図である。図6に示す動作手順は、図3に示した動作手順に対して、ステップ110の動作を省略してステップ108の次にステップ112の動作を実行するとともに、ステップ116〜126の動作をステップ200〜204の動作に置き換えた点が異なっている。以下では、置き換えられたステップ200〜204の動作に着目して説明する。
【0064】
信頼度履歴格納部46に格納されている信頼度履歴が更新された後(ステップ114)、車線逸脱判定部54は、カメラ7の撮像画像に基づいて、自車両の一部が走行中の車線の境界線を越えるなどの車線逸脱があったか否かを判定する(ステップ200)。車線逸脱があった場合には肯定判断が行われる。
【0065】
次に、認識結果適否判定部44は、信頼度判定部42によって判定された信頼度が、ステップ104において調整されたしきい値よりも高いか否かを判定する(ステップ200)。高い場合には肯定判断が行われる。この場合には、車線逸脱警告部56は、運転者に対して自車両が走行車線を逸脱した旨の警告を行う(ステップ204)。なお、車線逸脱がない場合(ステップ200の判定において否定判断)や、信頼度判定部42によって判定された信頼度が調整後のしきい値よりも低い場合(ステップ202の判定において否定判断)には、ステップ204における警告動作は行われずに一連の処理が終了する。このように、調整後のしきい値を用いて車線信頼度の高低を判定し、信頼度が高い場合に警告を行うことにより、精度の高い車線逸脱警告が可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 ナビゲーションコントローラ
2 地図データ記憶装置
4 車両位置検出部
5 表示装置
7 カメラ
10 地図バッファ
12 地図読出制御部
14 地図描画部
20 車両位置計算部
30 経路探索処理部
32 経路案内処理部
34 目的地設定部
40 車線認識部
42 信頼度判定部
44 認識結果適否判定部
46 信頼度履歴格納部
48 信頼度履歴取得部
50 しきい値調整部
52 信頼度履歴更新部
54 車線逸脱判定部
56 車線逸脱警告部
70 表示処理部
100、100A ナビゲーション装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6