特許第6830870号(P6830870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6830870配線・配管材の多段配設装置、および配線・配管材の多段配設構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830870
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】配線・配管材の多段配設装置、および配線・配管材の多段配設構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/32 20060101AFI20210208BHJP
   F16L 3/08 20060101ALI20210208BHJP
   F16L 3/22 20060101ALI20210208BHJP
   F16B 2/20 20060101ALI20210208BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20210208BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20210208BHJP
   F16B 7/08 20060101ALI20210208BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20210208BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   H02G3/32
   F16L3/08 D
   F16L3/08 C
   F16L3/22 A
   F16L3/22 Z
   F16B2/20 B
   F16B2/08 F
   F16B7/04 301G
   F16B7/08
   F16B7/04 302B
   F16B5/02 B
   F16B5/10 L
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-138550(P2017-138550)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-22317(P2019-22317A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−154537(JP,A)
【文献】 実公昭53−3999(JP,Y2)
【文献】 実公昭53−37273(JP,Y2)
【文献】 特開2007−28872(JP,A)
【文献】 特開平11−223281(JP,A)
【文献】 特開2001−187982(JP,A)
【文献】 特開2006−266427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
F16B 2/08
F16B 2/20
F16B 5/02
F16B 5/10
F16B 7/04
F16B 7/08
F16L 3/08
F16L 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する溝部を有して、配設面に設置される台座と、
前記溝部に取り付けられて下段の配線・配管材を保持する下段保持具と、
前記下段保持具に保持される下段の配線・配管材よりも上方に上段の配線・配管材を配設するために、前記台座に取付け固定される上段配設経路形成部材とを、備え、
前記上段配設経路形成部材は、前記溝部に取り付けられた下段保持具を挟むようにして前記溝部の長手方向に間隔をあけて前記台座から上方に向けて立ち上がるように前記台座に取付け固定される一対の脚部と、それら脚部の上端側を繋ぎ前記上段の配線・配管材が配置される上段形成部とを備え、
前記下段保持具は、前記溝部の長手方向からの操作により前記下段の配線・配管材の保持状態とその保持状態を解除した解除状態とを切り換える操作部を有し、
前記脚部は、その脚部の外側から工具を差し入れて前記操作部を操作できるよう、前記操作部を脚部の外側に臨ませる開口部を有する、配線・配管材の多段配設装置。
【請求項2】
上方に開口する溝部を有する台座が、配設面に間隔をあけて複数設置され、
前記台座の溝部に下段保持具が取り付けられ、
下段の配線・配管材が、前記下段保持具によって保持されて複数の前記台座に架け渡されるように配設された、下段配設経路が設けられ、また、
前記溝部に取り付けられた下段保持具を挟むようにして前記溝部の長手方向に間隔をあけて前記台座から上方に向けて立ち上がるように、前記台座に一対の脚部が、取付け固定され、
前記下段配設経路の上方に、前記一対の脚部の上端側を繋ぎ前記溝部の長手方向に延びる上段形成部が、配置され、
上段の配線・配管材が、前記上段形成部に架け渡されるように配設された、上段配設経路が設けられ、
前記下段保持具は、前記溝部の長手方向からの操作により前記下段の配線・配管材の保持状態とその保持状態を解除した解除状態とを切り換える操作部を有し、
前記脚部は、その脚部の外側から工具を差し入れて前記操作部を操作できるよう、前記操作部を脚部の外側に臨ませる逃がし空間を有する、配線・配管材の多段配設構造。
【請求項3】
前記逃がし空間は、開口部からなる、請求項2に記載の配線・配管材の多段配設構造。
【請求項4】
前記上段形成部には、前記下段保持具と同一の保持具を取り付け可能な、上方に開口する上段溝部が設けられ、
前記上段溝部に上段保持具が取り付けられ、その上段保持具によって、前記上段の配線・配管材が保持される、請求項2または3に記載の配線・配管材の多段配設構造。
【請求項5】
前記上段形成部には、前記下段保持具の前記溝部への取り付け機構と同一の取り付け機構を有する、上方に開口する上段溝部が設けられ、
前記上段溝部に上段保持具が取り付けられ、その上段保持具によって、前記上段の配線・配管材が保持される、請求項2または3に記載の配線・配管材の多段配設構造。
【請求項6】
前記上段形成部は、板状に形成され、
前記上段の配線・配管材は、その上段の配線・配管材を前記上段形成部とともに巻き付け固定するバンド部材によって前記上段形成部に保持される、請求項2または3に記載の配線・配管材の多段配設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線・配管材の本数を増やすことができる、配線・配管材の多段配設装置、および配線・配管材の多段配設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋上等の配設面に配線・配管材を配設するにあたって、配線・配管材が架け渡される設置具が用いられた(例えば、特許文献1、2参照)。この設置具は、配設面に載置されるブロック状の台座と、その台座の上面に設けられた溝状のレールと、そのレールに取り付けられて配線・配管材を保持する保持具とからなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−154537号公報
【特許文献2】特開2003−148657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の設置具にあっては、配設する配線・配管材の本数が多い場合には、設置具の数を増やしたり、レールを長くしたりして、配線・配管材の配設経路を横に増やすことで対応することとなった。しかし、この方法では、幅を取り、人が、配線・配管材の配設経路を跨ぐことが困難となる虞があった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、配設経路の幅を広げることなく、配線・配管材の本数を増やすことができる、配線・配管材の多段配設構造、および配線・配管材の多段配設装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る配線・配管材の多段配設装置、および配線・配管材の多段配設構造は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る配線・配管材の多段配設装置は、上方に開口する溝部を有して、配設面に設置される台座と、前記溝部に取り付けられて下段の配線・配管材を保持する下段保持具と、前記下段保持具に保持される下段の配線・配管材よりも上方に上段の配線・配管材を配設するために、前記台座に取付け固定される上段配設経路形成部材とを、備える。ここで、前記上段配設経路形成部材は、前記溝部に取り付けられた下段保持具を挟むようにして前記溝部の長手方向に間隔をあけて前記台座から上方に向けて立ち上がるように前記台座に取付け固定される一対の脚部と、それら脚部の上端側を繋ぎ前記上段の配線・配管材が配置される上段形成部とを備える。そして、前記下段保持具は、前記溝部の長手方向からの操作により前記下段の配線・配管材の保持状態とその保持状態を解除した解除状態とを切り換える操作部を有し、前記脚部は、その脚部の外側から工具を差し入れて前記操作部を操作できるよう、前記操作部を脚部の外側に臨ませる開口部を有する。
【0007】
この配線・配管材の多段配設装置によると、配設面に間隔をあけて設置される複数の台座の溝部に下段保持具が取り付けられ、下段の配線・配管材が、その下段保持具によって保持されて複数の台座に架け渡されるように配設される。そして、各台座に取付け固定される一対の脚部の上端側を繋ぐ上段形成部のそれぞれに、上段の配線・配管材が架け渡されるように配設される。こうして、下段の配線・配管材が配設された下段配設経路の上方に、上段の配線・配管材が配設された上段配設経路が設けられる。ここで、下段保持具は、下段の配線・配管材の保持状態とその保持状態を解除した解除状態とを切り換える操作部を有しており、脚部は、操作部をその脚部の外側に臨ませる開口部を有している。このため、脚部の外側から開口部に工具を差し入れて操作部を操作することで、下段保持具による下段の配線・配管材の保持状態を解除して、下段の配線・配管材を取り外したり、その後に、改めて下段の配線・配管材を取り付けたりすることができる。つまり、上段形成部に配置された上段の配線・配管材をそのままにして、下段の配線・配管材のみを交換したり、修繕したり、除去したりすることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る配線・配管材の多段配設構造は、上方に開口する溝部を有する台座が、配設面に間隔をあけて複数設置され、前記台座の溝部に下段保持具が取り付けられ、下段の配線・配管材が、前記下段保持具によって保持されて複数の前記台座に架け渡されるように配設された、下段配設経路が設けられる。そして、前記溝部に取り付けられた下段保持具を挟むようにして前記溝部の長手方向に間隔をあけて前記台座から上方に向けて立ち上がるように、前記台座に一対の脚部が、取付け固定され、前記下段配設経路の上方に、前記一対の脚部の上端側を繋ぎ前記溝部の長手方向に延びる上段形成部が、配置され、上段の配線・配管材が、前記上段形成部に架け渡されるように配設された、上段配設経路が設けられる。そこで、前記下段保持具は、前記溝部の長手方向からの操作により前記下段の配線・配管材の保持状態とその保持状態を解除した解除状態とを切り換える操作部を有し、前記脚部は、その脚部の外側から工具を差し入れて前記操作部を操作できるよう、前記操作部を脚部の外側に臨ませる逃がし空間を有する。
【0009】
この配線・配管材の多段配設構造によると、配設面に間隔をあけて設置される複数の台座の溝部に下段保持具が取り付けられ、下段の配線・配管材が、その下段保持具によって保持されて複数の台座に架け渡されるように配設される。そして、各台座に取付け固定される一対の脚部の上端側を繋ぐ上段形成部のそれぞれに、上段の配線・配管材が架け渡されるように配設される。こうして、下段の配線・配管材が配設された下段配設経路の上方に、上段の配線・配管材が配設された上段配設経路が設けられる。ここで、下段保持具は、下段の配線・配管材の保持状態とその保持状態を解除した解除状態とを切り換える操作部を有しており、脚部は、操作部をその脚部の外側に臨ませる逃がし空間を有している。このため、脚部の外側から逃がし空間に工具を差し入れて操作部を操作することで、下段保持具による下段の配線・配管材の保持状態を解除して、下段の配線・配管材を取り外したり、その後に、改めて下段の配線・配管材を取り付けたりすることができる。つまり、上段形成部に配置された上段の配線・配管材をそのままにして、下段の配線・配管材のみを交換したり、修繕したり、除去したりすることができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係る配線・配管材の多段配設構造は、請求項2に記載の多段配設構造において、前記逃がし空間は、開口部からなる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明に係る配線・配管材の多段配設構造は、請求項2または3に記載の多段配設構造において、前記上段形成部には、前記下段保持具と同一の保持具を取り付け可能な、上方に開口する上段溝部が設けられ、前記上段溝部に上段保持具が取り付けられ、その上段保持具によって、前記上段の配線・配管材が保持される。
【0012】
また、請求項5に記載の発明に係る配線・配管材の多段配設構造は、請求項2または3に記載の多段配設構造において、前記上段形成部には、前記下段保持具の前記溝部への取り付け機構と同一の取り付け機構を有する、上方に開口する上段溝部が設けられ、前記上段溝部に上段保持具が取り付けられ、その上段保持具によって、前記上段の配線・配管材が保持される。
【0013】
また、請求項6に記載の発明に係る配線・配管材の多段配設構造は、請求項2または3に記載の多段配設構造において、前記上段形成部は、板状に形成され、前記上段の配線・配管材は、その上段の配線・配管材を前記上段形成部とともに巻き付け固定するバンド部材によって前記上段形成部に保持される。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る配線・配管材の多段配設装置、および配線・配管材の多段配設構造によれば、下段配設経路の上方に、上段配設経路を設けることで、配設経路の幅を広げることなく、配線・配管材の本数を増やすことができる。
【0015】
また、下段保持具に設けられた操作部が、脚部の外側に臨むことから、脚部の外側から工具を差し入れて操作部を操作することで、上段形成部に配置された上段の配線・配管材をそのままにして、下段の配線・配管材のみを交換したり、修繕したり、除去したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施の形態の、配線・配管材の多段配設構造の斜視図である。
図2】同じく、配線・配管材の多段配設装置の斜視図である。
図3】同じく、上段溝部形成体および上段保持具を除いた、配線・配管材の多段配設装置の斜視図である。
図4】同じく、上段溝部形成体および上段保持具を除いた、配線・配管材の多段配設装置の縦断面図である。
図5】同じく、台座に保持具を取り付けた斜視図である。
図6】同じく、台座の斜視図である。
図7】同じく、溝部形成体の斜視図である。
図8】同じく、下段保持具の斜視図である。
図9】同じく、上段配設経路形成部材の斜視図である。
図10】この発明の他の実施の形態の、図1相当図である。
図11】この発明の第1変形例を示す、図3相当図である。
図12】この発明の第2変形例を示す、図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明に係る配線・配管材の多段配設装置、および配線・配管材の多段配設構造を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1図9は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、建物の屋上とか建造物の床面等、その他の配設面を示す。2は、配線・配管材(配線材または配管材)を示す。3は、配線・配管材の多段配設装置を示す。4は、配線・配管材の多段配設構造を示す。
【0019】
配線・配管材の多段配設装置3は、台座5と下段保持具8と上段配設経路形成部材6とを備える。ここで、台座5は、配設面1に設置されるものであって、上方に開口する溝部7を有する。下段保持具8は、前記溝部7に取り付けられて配線・配管材2としての下段の配線・配管材2aを保持するものである。また、上段配設経路形成部材6は、下段保持具8に保持される下段の配線・配管材2aよりも上方に配線・配管材2としての上段の配線・配管材2bを配設するために、台座5に取付け固定されるものである。この上段配設経路形成部材6は、溝部7に取り付けられた下段保持具8を挟むようにして溝部7の長手方向に間隔をあけて台座5から上方に向けて立ち上がるように台座5に取付け固定される一対の脚部6a、6aと、それら脚部6a、6aの上端側を繋ぎ上段の配線・配管材2bが配置される上段形成部6bとを備えている。
【0020】
そして、前記下段保持具8は、溝部7の長手方向からの操作により下段の配線・配管材2aの保持状態とその保持状態を解除した解除状態を切り替える操作部8bを有している。そこで、前記脚部6aは、その脚部6aの外側から工具を差し入れて操作部8bを操作できるよう、操作部8bを脚部6aの外側に臨ませる逃がし空間、詳しくは、開口部6e(図示実施の形態においては、逃がし空間あるいは開口部6eとしての、貫通孔6f)を有する。
【0021】
詳細には、上段配設経路形成部材6においては、一対の脚部6a、6aは、台座5に設けられた溝部7の両端よりも外側に位置する。そして、一対の脚部6a、6aを繋ぐ上段形成部6bにあっては、その上段形成部6bに、上段の配線・配管材2bを保持する上段保持具9を取り付けるための、上方に開口する上段溝部10が設けられる。ここにおいて、上段形成部6bは、台座5に備わる溝部7の長手方向に延びるよう設けられ、上段溝部10もまた、溝部7の長手方向に延びるよう設けられる。
【0022】
配線・配管材の多段配設構造4は、前述の多段配設装置3を用いるものであって、前記台座5が、配設面1に間隔をあけて複数設置される。そして、台座5の溝部7に下段保持具8が取り付けられ、下段の配線配管材2aが、下段保持具8によって保持されて複数の台座5、5に架け渡されるように配設された、下段配設経路201が設けられる。また、溝部7に取り付けられた下段保持具8を挟むようにして溝部7の長手方向に間隔をあけて台座5から上方に向けて立ち上がるように、台座5に一対の脚部6a、6aが、取付け固定される。そして、下段配設経路201の上方に、一対の脚部6a、6aの上端側を繋ぎ溝部7の長手方向に延びる上段形成部6bが、配置され、上段の配線・配管材2bが、上段形成部6bに架け渡されるように配設された、上段配設経路202が設けられる。図示実施の形態においては、上段形成部6bに上段溝部10が設けられ、その上段溝部10に取り付けられた上段保持具9によって、上段の配線・配管材2bが保持される。このため、上段の配線・配管材2bは、これら上段溝部10および上段保持具9を介して、上段形成部6bに架け渡される。ここで、上段配設経路202は、下段配設経路201の上方に、その下段配設経路201に沿うように設けられる。
【0023】
そして、この多段配設構造4においても、下段保持具8は、前述の操作部8bを有し、脚部6aは、前述の逃がし空間(詳しくは、脚部6aに設けられた開口部6e)を有する。
【0024】
また、多段配設装置3および多段配設構造4においては、上段形成部6bに設けられた上段溝部10は、下段保持具8と同一の保持具を取り付け可能となっており、その上段溝部10に上段保持具9が取り付けられ、その上段保持具9によって、上段の配線・配管材2bが保持される。こうして、上段溝部10が、下段保持具8と同一の保持具を取り付け可能となることから、下段保持具8と上段保持具9とを共通化あるいは共用化することが可能となる。なお、ここにおいて、上段溝部10は、下段保持具8と同一の保持具を取り付け可能となっているのであれば、それに加えて、下段保持具8とは異なる保持具を取り付け可能となっていても構わない。
【0025】
さらに、上段形成部6bに設けられた上段溝部10は、下段保持具8の溝部7への取り付け機構(後述する係合部7a)と同一の取り付け機構(後述する係合部10a)を有し、その上段溝部10に上段保持具9が取り付けられ、その上段保持具9によって、上段の配線・配管材2bが保持される。
【0026】
具体的には、台座5は、横長となる略直方体形状の台座本体5aと、前記溝部7を形成する溝部形成体7xとを備える。台座本体5aは、上面に、その台座本体5aの長手方向に沿って延びる溝5bを有して、内部には、錘となるコンクリートブロック5cが収容されている(図4参照)。溝部形成体7xは、台座本体5aの溝5bに嵌められ、ビス等の固着具11により台座本体5aに固定される。このとき、溝部形成体7xは、台座本体5aの溝5bの両端部分に達することがなく、その両端部分が、脚部6a(上段配設経路形成部材6)を取付け固定するための固定部5dとなっている。この溝部形成体7xは、溝部7を形成するように、上方に開口する断面略コ字形状をして、溝5bに沿って延びている。そして、この溝部形成体7x、ひいては溝部7は、断面略コ字形状の両先端から、互いに向かい合う側に延びて若干下方に折れ曲がって形成された係合部7aを有する。
【0027】
そこで、これら係合部7a、7aに、下段保持具8(詳しくは、下段保持具8に設けられる被係合部8a)が、下から係合し、その下段保持具8は、溝部形成体7x(溝部7)に、その延びる方向の任意位置に支持される。
【0028】
下段保持具8は、二つの分割保持体8c、8cと、締付ボルト8dを備える。そこで、この締付ボルト8dの頭部が、前記操作部8bとなる。分割保持体8c、8cは、互いに対称に形成されて、両側から下段の配線・配管材2aを挟むように、下段の配線・配管材2aの周面に沿って湾曲して形成される。そして、各分割保持体8cの下部には、両側に突出するようにして前述の被係合部8aが設けられ、また、上部には、前記締付ボルト8dを取り付けるための取付部8eが設けられる。
【0029】
つまり、各取付部8eには、取付孔8fがあけられ、両取付孔8f、8fを挿通する締付ボルト8dを締め付けることで、両分割保持体8c、8cが、下段の配線・配管材2aを挟み込むとともに、下段の配線・配管材2aを台座5の上面(詳しくは、溝部形成体7x(溝部7)の上面)に押さえつけ、これによって、溝部7の係合部7a、7aに係合した両分割保持体8c、8c(つまり、下段保持具8)は、溝部7に取り付けられ、また、下段の配線・配管材2aは、下段保持具8に保持されて、台座5に取り付けられる。
【0030】
上段配設経路形成部材6は、一対の脚部6a、6aと上段形成部6bとで、門形に形成されている。脚部6aは、その下端側が、台座5に固定される被固定部6cとなっている。図示実施の形態においては、被固定部6cは、外側にL字状に折れ曲がって形成され、その被固定部6cには、ボルト等の固着具12が通る通孔6dがあけられている。そこで、固着具12が通孔6dを通って台座5(詳しくは、前記固定部5d)にねじ込まれることで、脚部6a、ひいては上段配設経路形成部材6は、台座5に取付け固定される。そして、この脚部6aに設けられた前述の貫通孔6fは、縦長の長孔状に形成されており、操作部8bの高さ位置の変更に対応可能となっている。なお、前述の溝部7(溝部形成体7x)は、両端が開放しており、脚部6aは、溝部7の両端の開放箇所を覆うようにして、台座5に固定される。
【0031】
また、多段配設装置3とか多段配設構造4は、前記上段溝部10を形成する上段溝部形成体10xを備える。この上段溝部形成体10xは、ビス等の固着具13により、上段形成部6bに取付け固定される。この上段溝部形成体10xは、前述の溝部形成体7xと同様の構成を有し、上段溝部10を形成するように、上方に開口する断面略コ字形状をして、溝部形成体7x(溝部7)に沿って延びている。そして、この上段溝部形成体10x、ひいては上段溝部10は、断面略コ字形状の両先端から、互いに向かい合う側に延びて若干下方に折れ曲がって形成された係合部10aを有する。
【0032】
そこで、係合部10aに、上段保持具9(詳しくは、上段保持具9に設けられる被係合部9a)が、下から係合し、その上段保持具9は、上段溝部形成体10x(上段溝部10)に、その延びる方向の任意位置に支持される。
【0033】
上段保持具9は、下段保持具8と同様の構成を有する。すなわち、上段保持具9は、二つの分割保持体9c、9cと、締付ボルト9dを備える。分割保持体9c、9cは、互いに対称形状に形成されて、両側から上段の配線・配管材2bを挟むように、上段の配線・配管材2bの周面に沿って湾曲して形成される。そして、各分割保持体9cの下部には、両側に突出するようにして前述の被係合部9aが設けられ、また、上部には、締付ボルト9dを取り付けるための取付部9eが設けられる。
【0034】
つまり、各取付部9eには、取付孔9fがあけられ、両取付孔9f、9fを挿通する締付ボルト9dを締め付けることで、両分割保持体9c、9cが、上段の配線・配管材2bを挟み込むとともに、上段の配線・配管材2bを上段溝部形成体10x(上段溝部10)の上面に押さえつけ、これによって、上段溝部10の係合部10aに係合した両分割保持体9c、9c(つまり、上段保持具9)は、上段溝部10に取り付けられ、また、上段の配線・配管材2bは、上段保持具9に保持されて、上段形成部6bに取り付けられる。
【0035】
次に、以上の構成からなる配線・配管材の多段配設装置3、および配線・配管材の多段配設構造4の作用効果について説明する。この多段配設装置3、および多段配設構造4によると、配設面1に間隔をあけて設置される複数の台座5、5の溝部7に下段保持具8が取り付けられ、下段の配線・配管材2aが、その下段保持具8によって保持されて複数の台座5、5に架け渡されるように配設される。そして、各台座5、5に取付け固定される一対の脚部6aの上端側を繋ぐ上段形成部6bのそれぞれに、上段の配線・配管材2bが架け渡されるように配設される。こうして、下段の配線・配管材2aが配設された下段配設経路201の上方に、上段の配線・配管材2bが配設された上段配設経路202が設けられる。すなわち、下段配設経路201の上方に、上段配設経路202を設けることで、配設経路の幅を広げることなく、配線・配管材の本数を増やすことができ、また、配設経路の幅が広がらないことから、人が配線・配管材を跨ぎやすい。
【0036】
また、一対の脚部6a、6aは、台座5における溝部7の両端よりも外側に位置する。このため、溝部7に下段保持具8を取り付けるにあたって、溝部7の長さ全体を、脚部6aに妨げられることなく利用することができる。また、脚部6aが溝部7の両端の開放箇所を覆うことで、溝部7に取り付けられる下段保持具8が、溝部7の両端の開放箇所から抜け出ることがない。
【0037】
また、下段保持具8は、下段の配線・配管材2aの保持状態とその保持状態を解除した解除状態とを切り換える操作部8bを有しており、脚部6aは、操作部8bをその脚部6aの外側に臨ませる貫通孔6f(開口部6e、逃がし空間)を有している。このため、脚部6aの外側から貫通孔6f(開口部6e、逃がし空間)に工具を差し入れて操作部8bを操作することで、下段保持具8による下段の配線・配管材2aの保持状態を解除して、下段の配線・配管材2aを取り外したり、その後に、改めて下段の配線・配管材2aを取り付けたりすることができる。つまり、下段保持具8に設けられた操作部8bが、脚部6aの外側に臨むことから、脚部6aの外側から工具を差し入れて操作部8bを操作することで、上段形成部6bに配置された上段の配線・配管材2bをそのままにして、下段の配線・配管材2aのみを交換したり、修繕したり、除去したりすることができる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、上段溝部10は、下段保持具8と同一の保持具を取り付け可能となっていなくてもよい。また、上段溝部10は、下段保持具8の溝部7への取り付け機構と同一の取り付け機構を有するものでなくてもよい。
【0039】
また、上段形成部6bと上段溝部10(上段溝部形成体10x)とは、別体となっているが、一体に形成されてもよい。
【0040】
また、上段形成部6bには、上段溝部10が設けられているが、図10に示すように、この上段溝部10は、設けられなくてもよい。ここで、上段形成部6bは、板状に形成され、上段の配線・配管材2bは、その上段の配線・配管材2bを上段形成部6bとともに巻き付け固定するバンド部材18によって上段形成部6bに保持される。また、図示実施の形態においては、上段形成部6bは、その幅方向の両端縁が、下側に折り返されており、これによって、バンド部材18が上段形成部6bの端縁で傷付くのを防ぐことができる。
【0041】
また、脚部6aは、図11に示すように、二本の脚片6x、6xからなって、それら脚片6x、6xの間が前記開口部6eとなってもよい。そして、図示実施の形態においては、各脚片6xの下端側が、被固定部6cとなって、その被固定部6cが、ボルト等の固着具12により台座5に固定される。
【0042】
また、脚部6aにおける逃がし空間は、開口部6eでなくても、脚部6aが切り欠かれたり、湾曲したりして設けられるものであってもよい。
【0043】
また、脚部6aは、その下端側が、台座5に取付け固定される被固定部6cとなるが、図12に示すように、その被固定部6cが、溝部7よりも下方で、台座5に固定されてもよい。図示実施の形態においては、被固定部6cは、折れ曲がることなく、真直ぐ下方に延びて、台座5の側面に、ボルト等の固着具12を用いて固定される。
【0044】
また、上段配設経路形成部材6は、一対の脚部6a、6aと上段形成部6bとが一体に形成されているが、それら一対の脚部6a、6aと上段形成部6bとは、別体に形成されて互いに組み付けられてもよい。
【0045】
また、操作部8bは、下段保持具8による下段の配線・配管材2aの保持とその解除を操作できるものであればよく、締付ボルト8dの頭部に限るものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 配設面
2a 下段の配線・配管材
2b 上段の配線・配管材
201 下段配設経路
202 上段配設経路
3 多段配設装置
4 多段配設構造
5 台座
6 上段配設経路形成部材
6a 脚部
6b 上段形成部
6e 開口部
7 溝部
8 下段保持具
8b 操作部
9 上段保持具
10 上段溝部
18 バンド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12