特許第6830875号(P6830875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830875
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】遮水シートの継目部の封止構造
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   B09B1/00 FZAB
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-182300(P2017-182300)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-55382(P2019-55382A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 和徳
(72)【発明者】
【氏名】吉村 拓也
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−343907(JP,A)
【文献】 特開2003−024894(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0001683(US,A1)
【文献】 特開平06−185033(JP,A)
【文献】 特開2008−023487(JP,A)
【文献】 特開平05−001408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B1/00、
E02D3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う遮水シートの側端部を重ね合せて形成された遮水シートの継目部の封止構造であって、
吸水膨潤性を有する粘土系材料を主材とし、横幅と厚さが均一で帯状を呈する封止パック材を使用し、
前記封止パック材が少なくとも粘土系材料と、繊維と、水溶性のバインダーとを含む半硬化性の混練物からなり、
浸水すると粘土系材料が膨潤し得るように、遮水シートの継目部の間に該継目部に沿って前記封止パック材が連続して介装してあることを特徴とする、
遮水シートの継目部の封止構造。
【請求項2】
隣り合う遮水シートの側端部を重ね合せて形成された遮水シートの継目部の封止構造であって、
吸水膨潤性を有する粘土系材料を主材とし、横幅と厚さが均一で帯状を呈する封止パック材を使用し、
前記封止パック材が扁平状の小分室を連設した帯状の封入袋と、小分室内に封入された乾燥状態の粘土系材料とからなり、
浸水すると粘土系材料が膨潤し得るように、遮水シートの継目部の間に該継目部に沿って前記封止パック材が連続して介装してあることを特徴とする、
遮水シートの継目部の封止構造。
【請求項3】
隣り合う遮水シートの側端部を重ね合せて形成された遮水シートの継目部の封止構造であって、
吸水膨潤性を有する粘土系材料を主材とし、横幅と厚さが均一で帯状を呈する封止パック材を使用し、
前記封止パック材が、吸水膨潤性を有する粘土系材料を主材とし、扁平状に形成された膨潤遮水層と、該膨潤遮水層の周囲を被覆する水溶性保護シートとからなり、
浸水すると粘土系材料が膨潤し得るように、遮水シートの継目部の間に該継目部に沿って前記封止パック材が連続して介装してあることを特徴とする、
遮水シートの継目部の封止構造。
【請求項4】
前記粘土系材料がベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、アタパルジャイト、セピオライトの何れか一種であることを特徴とする、請求項1乃至の何れか一項に記載の遮水シートの継目部の封止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮水シートの継目部の封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や一般廃棄物等を貯蔵する埋立型処分場では、処分場の底面に遮水工を実施することが義務付けられている。
遮水工のひとつとして遮水シートの敷設工が広く知られており、遮水シート自体は高い遮水性を有しているものの、遮水シートの継目部の遮水性確保が問題となる。
遮水シートが合成樹脂系、ゴム系シートである場合は、シートの継目部の接合面にペースト状の各種接着剤を塗布して接着したり、熱融着により接合したりしている(特許文献1,2)。
遮水シートがベントナイト系シートである場合は、遮水シートの継目部の接合面に沿ってドライパウダー状のベントナイトを層状に散布する方法と、予めベントナイトに加水した混練ペーストを継目部の接合面に塗布する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−33745号公報
【特許文献2】特開平6−182925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の遮水シートの継目部の封止技術には次の幾つかの問題点がある。
<1>接着工は接着剤の塗布に多くの時間と労力を要し、しかも塗布ムラが生じて接着剤の塗布量が不均一になるので継目部の封止性能にバラツキを生じ易い。
<2>熱融着工は溶着機等の専用設備と複数の作業員が必要であり、封止コストが嵩む。
<3>既述した複数の要因にくわえて、遮水シートの厚さが1.5cm程度と薄いために、接着または溶着等で接合しても継目部が剥がれやすいといった問題点がある。
<4>ドライパウダー状のベントナイトを手作業で散布する方法は、作業員がスコップ等を使って散布するためにベントナイトの横幅と厚さを均一にして散布することが難しく、継目部の封止性能にバラツキを生じ易い。
さらに継目部が傾斜しているときはベントナイトが滑り落ちてしまい散布が難しい。
<5>継目部が傾斜しているときは混練ペーストを塗布しているが、ベントナイトの混練作業と混練ペーストの塗布作業が煩雑であり、しかも手作業で混練ペーストを均一の横幅と厚さに塗布することが難しい。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは現場における施工が容易で、遮水シートの継目部の全長に亘って均質に封止できる遮水シートの継目部の封止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、隣り合う遮水シートの側端部を重ね合せて形成された遮水シートの継目部を封止するにあたり、吸水膨潤性と定形性を有する封止パック材を使用し、浸水すると粘土系材料が膨潤し得るように、遮水シートの継目部の間に封止パック材を介装するものである。
封止パック材は吸水膨潤性を有する粘土系材料を主材としていて、横幅と厚さが均一で帯状を呈する。
封止パック材の一例として、少なくとも粘土系材料と、繊維と、水溶性のバインダーとを含む半硬化性の混練物で構成してもよい。
封止パック材の他の一例として、扁平状の小分室を連設した帯状の封入袋と、小分室内に封入した乾燥状態の粘土系材料とにより構成してもよい。
封止パック材の他の一例として、吸水膨潤性を有する粘土系材料を主材とし、扁平状に形成された膨潤遮水層と、該膨潤遮水層の周囲を被覆する水溶性保護シートとにより構成してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は次の効果の少なくともひとつを得ることができる。
<1>遮水シートの継目部の間に定形性を有する封止パック材を介装するだけの簡単な作業で済むので、現場における施工が容易である。
<2>封止パック材が横幅と厚さが均一であるため、遮水シートの継目部に粘土系材料を均質に介装することができる。
したがって、遮水シートの継目部の全長に亘って均質に封止することができる。
<3>封止パック材の製作が容易であり、低コストに製作できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】遮水シートの継目部に封止パック材を介装した斜視図
図2】封止パック材が膨潤したときの遮水シートの継目部の断面図
図3】半硬化タイプの封止パック材の説明図
図4】袋詰めタイプの封止パック材の説明図で、(A)は封止パック材の一部を省略した斜視図、(B)は封止パック材の縦断面図
図5】水溶性保護シート被覆タイプの封止パック材の説明図で、(A)は封止パック材の一部を省略した斜視図、(B)は封止パック材の縦断面図、(C)は膨潤した封止パック材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら本発明について説明する。
【0010】
<1>継目部の封止手段
図1を参照して説明すると、2枚の遮水シート10a,10bは公知の遮水性を有するシートであり、互いに重合させた範囲に継目部11を形成する。
本発明では吸水膨潤性を有する封止パック材20を使用して継目部11を封止する。
【0011】
<2>封止パック材
封止パック材20は吸水膨潤性を有する粘土系材料を主材とした継目部11の封止材である。
粘土系材料にバインダーを混練したり、または粘土系材料をシート状物に封入したりすることで封止パック材20に定形性が付与されていて、製造後の乾燥状態において封止パック材20は塑性変形が可能である。
封止パック材20の横幅とその厚さは全長に亘って均一である。
封止パック材20の横幅は継目部11の横幅とほぼ等しく、その厚さは遮水シート10a,10bの層厚が1.5cm程度と薄厚であるため、封止性を考慮すると遮水シート10a,10bの層厚以上が好ましい。
【0012】
<2.1>粘土系材料
粘土系材料としては、水の存在下で吸水し、水和膨潤し得るものであれば何でもよく、例えばベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、アタパルジャイト、セピオライト等が挙げられるが、水和膨潤性に優れ遮水性が高く、かつ加工性に優れている点でベントナイトが好ましい。
これらの粘土系材料は粒状または粉状で用いることが好ましく、粒状加工する際には粉砕を行っても造粒を行ってもよい。
その粒径は、封止パック材20の柔軟性を高めるために0.5〜5.0mmの範囲であることが好ましい。
【0013】
<3>継目部の封止方法
図2を参照して封止パック材20を用いた遮水シートの継目部の封止方法について説明する。
【0014】
<3.1>封止パック材の敷設工
ロール状に巻き取った形態で封止パック材20を現場へ搬入する。
ロールから引き出した封止パック材20を下位の遮水シート10aの側端部の上面に連続して敷設する。
封止パック材20は遮水シート10aの側端部の全長に亘って敷設するだけであり、ピンによる固定や接着剤による固定は不要である。
【0015】
<3.2>遮水シートの被覆工
封止パック材20を敷設した後、封止パック材20に上位の遮水シート10bを被せるだけで、遮水シート10a,10bの重合させた継目部11の間に均一の厚さと横幅を有する封止パック材20を配置することができる。
封止パック材20の介装作業は継目部11に沿って封止パック材20を敷き並べるだけの簡単な作業でよく、溶着機等の特別な設備は一切不要である。
最後に遮水シート10a,10bの上面側に覆土を行い、更に覆土を保護シートで覆う等して所定の層厚の遮水層を形成する。
【0016】
<4>封止パック材による継目部の封止作用
遮水シート10a,10bの継目部11に封止パック材20を介装しただけでは封止力は生じない。
浸水して封止パック材20が膨潤することで遮水シート10a,10bの継目部11を確実に封止することができる。
以下に複数タイプの封止パック材20a〜20cについて説明する。
【0017】
[実施例1](半硬化タイプの封止パック材)
図3を参照して半硬化性の封止パック材20aについて説明する。
半硬化性の封止パック材20aは、少なくともベントナイト等の粘土系材料21と、繊維22と、水溶性のバインダー23とからなる。
これらの素材を未加水状態(又は適量を加水して)で混練し、その混練物を均一の厚さと横幅の帯状板の形態に成形することで半硬化性の封止パック材20aを得る。
【0018】
繊維22の素材としては化学繊維や天然繊維の何れも使用可能である。また繊維22の長や太さは適宜選択する。
繊維22は靭性を高めるために機能するもので、その添加量は適宜選択する。
【0019】
バインダー23は粘土系材料21に定形性を付与するために添加するものであり、例えば酢酸ビニル樹脂エマルジョン等の水溶性の接着剤を使用できる。
封止パック材20aを混練して製造する際に水を一切加えないことで、半硬化性(可撓性)を維持できる。
また繊維22が混入してあることで、封止パック材20aを曲げても容易に亀裂を生じない。
【0020】
使用にあたり、図2に示した遮水シート10a,10bの継目部11に封止パック材20aを介装する作業は既述したとおりである。
封止パック材20aが水に触れることで粘土系材料21が膨潤して封止パック材20aが膨張することに伴い、継目部11をその全長に亘って封止することができる。
【0021】
[実施例2](袋詰めタイプの封止パック材)
図4を参照して袋詰めタイプの封止パック材20bについて説明する。
封止パック材20bは、扁平状の小分室24を連設した帯状の封入袋25と、小分室24内に封入した乾燥状態のベントナイト等の粘土系材料21とからなる。
封入袋25は透水性を有するシート、フィルム、またはメッシュ等の透水シートからなり、2枚の透水シートを重ねて複数の小分室24を画成するか、一枚の透水シートを二つ折りにして重ね合せ、その側縁部と仕切部を固着して小分室24を画成する。
いずれの形態も、小分室24を形成する際に各小分室24内に一定量の粘土系材料21をドライ状態で封入する。膨潤時の体積を考慮して粘土系材料21の充填量は小分室24の内空の6割〜8割程度が望ましい。
【0022】
袋詰めタイプの封止パック材20bの吸水膨潤による継目部11の封止作用は既述したとおりである。
【0023】
[実施例3](水溶性保護シート被覆タイプの封止パック材)
図5を参照して水溶性保護シート27で被覆したタイプの封止パック材20cについて説明する。
本例では、扁平状に形成された膨潤遮水層26と、この膨潤遮水層26の周囲を被覆する水溶性保護シート27とにより封止パック材20cを構成している。
膨潤遮水層26は粘土系材料を主材としていて、吸水することで膨潤する性質を有している。
水溶性保護シート27は膨潤遮水層26を保護しつつ、膨潤時に消失させるためのシートであり、例えば公知のアルコール系樹脂素材や生分解性素材等を使用することができる。
【0024】
水溶性シート被覆タイプの封止パック材20cの吸水膨潤による継目部11の封止作用は既述したとおりである。
【符号の説明】
【0025】
10a・・・・遮水シート
10b・・・・遮水シート
11・・・・・継目部
21・・・・・粘土系材料
22・・・・・繊維
23・・・・・バインダー
24・・・・・小分室
25・・・・・帯状の封入袋
図1
図2
図3
図4
図5