(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830898
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】引き起こす干渉が低減された通信衛星システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/15 20060101AFI20210208BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
H04B7/15
B64G1/66 C
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-546055(P2017-546055)
(86)(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公表番号】特表2017-536788(P2017-536788A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】IB2015002383
(87)【国際公開番号】WO2016083894
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】62/083,412
(32)【優先日】2014年11月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/626,360
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517180785
【氏名又は名称】ワールドビュー・サテライツ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・リンゼイ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・セイン・ワイラー
【審査官】
後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−107717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/15
B64G 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球の周りの近赤道軌道中の第1の通信衛星と、より低い軌道中の第2の通信衛星との間で無線スペクトルを共有する方法であって、前記より低い軌道が、昇交点および降交点において前記近赤道軌道の面と交差し、
(i)前記第2の通信衛星によって、地表に向けられた1つまたは複数の送信ビームの幾何学パターンで1つまたは複数の無線信号を送信するステップと、
(ii)前記第2の通信衛星が前記より低い軌道に沿って動くのに伴って、前記第2の通信衛星からの前記1つまたは複数の送信ビームの方向を漸進的に傾斜させるステップと、
を含む方法であって、
傾斜させる程度が、前記より低い軌道における前記第2の通信衛星の位置に基づき、
前記傾斜させる程度がまた、地表上の場所で観察されるような、前記第1の通信衛星からの第1の無線信号の第1の到着方向に基づき、
前記傾斜させる程度がまた、地表上の前記場所で観察されるような、前記第2の通信衛星からの第2の無線信号の第2の到着方向に基づき、
前記傾斜させる程度が、前記第1の到着方向と前記第2の到着方向との間の角度分離が所定の最小要件を満たすかまたは超えるような程度であり、
前記方法は、(iii)前記第2の通信衛星からの前記1つまたは複数の送信ビームのうちの少なくとも1つの送信ビームの一部である第3の無線信号の第3の到着方向に基づいて、前記少なくとも1つの送信ビームをオフにするステップをさらに含み、
前記第3の到着方向が、地表上の前記場所で観察されるような方向であり、
前記少なくとも1つの送信ビームがオフにされるときが、前記第3の到着方向と前記第1の到着方向との間の角度分離に基づく、方法。
【請求項2】
前記傾斜させるステップが、前記第2の通信衛星全体を傾斜させることによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記傾斜させるステップが、前記第2の通信衛星の、1つまたは複数の無線アンテナを含む部分を傾斜させることによって達成され、前記1つまたは複数の無線アンテナが、前記送信ビームの1つまたは複数を送信するためのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の無線アンテナの、相互に対する位置が、前記傾斜させる程度が変更されたときに変化しない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記傾斜させるステップが電子的に達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
地表上の前記場所が、前記第2の通信衛星によってカバーされるカバレッジエリア内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記傾斜させるステップが、地表上で衛星直下点に対して前記カバレッジエリアが前記衛星直下点よりも速く動くようにする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の通信衛星が前記昇交点または前記降交点に到達するときまでに、すべての送信ビームがオフにされている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの送信ビームがオフにされなかった場合に前記最小要件を満たすのに必要とされることになる前記傾斜させる程度と比較して、前記傾斜させる程度を低減するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
すべての第1の通信衛星にとって同じである第1の軌道中で地球を周回する複数の第1の通信衛星を含む、通信衛星のシステムであって、
前記第1の軌道が、昇交点および降交点において第2の通信衛星の第2の軌道の面と交差し、
前記第2の軌道が、近赤道軌道であり前記第1の軌道よりも高く、
各第1の通信衛星が、地表に向けられた1つまたは複数の送信ビームの幾何学パターンで1つまたは複数の無線信号を送信するための1つまたは複数の無線アンテナを備え、
各第1の通信衛星が、前記第1の軌道に沿って前記各第1の通信衛星が動くのに伴って前記1つまたは複数の送信ビームの方向を漸進的に傾斜させるための傾斜装置を備え、
各第1の通信衛星が、前記第1の軌道における前記各第1の通信衛星の位置に基づいて、前記傾斜装置を操作して傾斜を生成し、
前記傾斜がまた、地表上の場所で観察されるような、前記各第1の通信衛星からの第1の無線信号の第1の到着方向に基づき、
前記傾斜がまた、地表上の前記場所で観察されるような、前記第2の通信衛星からの第2の無線信号の第2の到着方向に基づき、
前記傾斜が、前記第1の到着方向と前記第2の到着方向との間の角度分離が所定の最小要件を満たすかまたは超えるような傾斜であり、
前記第1の通信衛星からの前記1つまたは複数の送信ビームのうちの少なくとも1つの送信ビームは、前記1つの送信ビームの一部である第3の無線信号の第3の到着方向に基づいて、オフにされ、
前記第3の到着方向が、地表上の前記場所で観察されるような方向であり、
前記少なくとも1つの送信ビームがオフにされるときが、前記第3の到着方向と前記第2の到着方向との間の角度分離に基づく、システム。
【請求項11】
前記傾斜装置が前記各第1の通信衛星全体を傾斜させる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記傾斜装置がリアクションホイールを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記傾斜装置が前記各第1の通信衛星の一部を傾斜させ、前記一部が1つまたは複数の無線アンテナを含み、前記1つまたは複数の無線アンテナが、前記送信ビームの1つまたは複数を送信するためのものである、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
地表上の前記場所が、前記第2の通信衛星によってカバーされるカバレッジエリア内にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記傾斜させるステップが、地表上で衛星直下点に対して前記カバレッジエリアが前記衛星直下点よりも速く動くようにする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各第1の通信衛星が、前記昇交点または前記降交点の近くにあるときにその送信ビームの少なくとも1つまたは複数をオフにする、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
各第1の通信衛星が、前記昇交点または前記降交点に到達するときまでにその送信ビームのすべてをオフにしている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
各第1の通信衛星が、そのすべての送信ビームがオフにされている間にその傾斜を反転させ、それにより、その送信ビームの1つまたは複数がオンに戻されたとき、前記各第1の通信衛星によってサービスされるカバレッジエリアが、前記衛星が前記第1の軌道中で移動するのに伴って前記衛星に後れをとる、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本ケースは、参照により本明細書に組み込まれる2014年11月24日に出願された米国仮出願第62/083,412号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、地球周回通信衛星に関し、より詳細には、相互干渉なしに無線スペクトルを他の通信衛星と共有する通信衛星に関する。
【背景技術】
【0003】
宇宙時代の始まり以来ずっと、通信衛星は、宇宙技術の重要な応用例であった。最初の通信衛星はテルスターであった。当時、これは並外れた技術達成であった。テルスターは、米国ニュージャージー州ホルムデルのベル電話研究所によって設計、構築、および運用された。
【0004】
通信衛星は、地表との間で無線信号を送受信する。テルスターの場合、その当時における最初かつ唯一の通信衛星だったので、その無線信号と、他の通信衛星に関連する無線信号との間の干渉の問題はなかった。しかし、技術が進歩し、通信衛星サービスに対する需要が爆発的に増加するのに伴い、この状況はすぐに変化した。
【0005】
現在、あらゆる種類のワイヤレス通信に対する需要が過去最高に達し、無線スペクトルは、非常に価値のある商品になった。2015年1月、政府競売の一部として、50MHzの無線スペクトルが、先例のない395億ドルで売れた。したがって、専用のスペクトルを必要としない無線通信システムを確立できることは、大きな利点であろう。
【0006】
通信衛星に関して、いわゆる静止衛星は、様々な有用なサービスを数十年にわたって提供してきた十分に確立されたタイプの衛星である。静止衛星は、赤道で地球と交差する面(赤道面)において地球を周回する。これらの衛星は、その軌道の期間がちょうど1恒星日であるように、地球から距離を置いて周回する。静止軌道は円であり、したがって、静止衛星は、地球がその軸を中心に回転するレートとちょうど同じレートで、地球の周りを回る。結果として、各静止衛星は、地球から見れば、極めて高い塔の上に搭載されているかのように、空における固定位置にあるように見える。
【0007】
この仮想の塔は実際、非常に高く、約36,000km、すなわち地球の半径のほぼ6倍である。静止(一般的には「GEO」と略される)衛星と地表との間の長い距離は、いくつかの望ましくない結果を有し、これらはとりわけ、より高い送信信号電力が必要であること、小さい送信フットプリントを生成するのが困難であること、および、通信における厄介な遅延を含む。インターネットサービスを含めたいくつかの応用例には、地表により近接して周回する衛星の方が、より適することがある。
【0008】
図1は、低高度地球軌道(一般的に「LEO」と略される)中の衛星を描く。「GEO」、「LEO」、および「MEO」(「中高度地球軌道」を意味する)などの軌道タイプ指示符号の厳密な意味に関する国際規格はないが、これらは当技術分野で一般的に使用される。LEO軌道は一般に、地表から約2000kmを超えない高さで衛星が周回する軌道と想定される。
図1では、LEO軌道は、LEO極軌道150として円形の破線で描かれている。軌道が円形なので、衛星は、地表からほぼ一定距離で地球110を周回する。
図1では、この距離は、地球の半径と比較して短く、図の縮尺では約900kmに相当する。
【0009】
図1に描かれるタイプのLEO軌道は、北極と南極の上を通過するので、「極」軌道として知られる。極軌道の利点の1つは、衛星がすべての緯度の上を通過することである。地球は回転する(他方、軌道の面はほぼ不変のままである)ので、衛星は、地球の種々のエリアの上を通過することになる。適切に選ばれた軌道期間により、衛星は、十分に多数の軌道の後には、地球上のあらゆる場所の上を通過するようにされることが可能である。この理由で、極軌道(またはほぼ極軌道)は、地球調査衛星のためにしばしば選ばれる。
【0010】
図2は、
図1と同じLEO衛星および衛星軌道を、異なる軌道サイズを強調するために静止衛星の描写と共に描く。これらの軌道サイズは、一定の縮尺で描かれている。この図では、GEO衛星230が、地球の赤道210の面において地球110を周回する。この面は、赤道面220として破線で描かれている。幾何形状によって予測されるように、LEO極軌道150は、赤道面と直角に交差する。2つの交差点がある。当技術分野では、軌道と赤道面220との間の2つの交差点は、「交点」として知られる。赤道面220の一方の側に北極があり、他方の側に南極がある。衛星は、その軌道に沿って、
図2で「101動き方向」として示される方向に移動する。交点のうちの一方において、衛星は、赤道面220を通過して北極に向かう。この交点は、「昇」交点と一般的に呼ばれ、他方の交点は、「降」交点と一般的に呼ばれる。
【0011】
「昇」および「降」交点の名称はまた、衛星230が静止衛星でなくその軌道が赤道面にないときにも定義され得る。例えば、衛星230は、赤道面に対して約7.3°の角度で傾けられたいわゆるGEO安定面において地球を周回する対地同期衛星である場合がある。地球の中心を通る任意の面について、この面の一方の側に北極があり、他方の側に南極がある。衛星がその軌道に沿って移動するとき、衛星は、交点のうちの一方で、面を通過して、面の北極がある側に向かう。この交点は「昇」交点と呼ばれ、他方の交点は「降」交点と呼ばれる。
【0012】
図3は、LEO衛星と、その下の地表に対するその関係との、より詳細な描写を提示する。特に、この図は、LEO衛星が通信衛星である場合を示す(この詳細な図および後続の図の多くでは、雑然とするのを避けるために、地表上の大陸輪郭は省略されている)。LEO衛星140には、1つまたは複数の無線アンテナが装備される。アンテナは、1つまたは複数の無線信号を地球110の表面に向かって送信する。このような送信は、無線送信310として図示されている。無線送信は、地表上の、カバレッジエリア320として描かれる特定のカバレッジエリア内に位置する受信機によって、受信されることが可能である。カバレッジエリア320の外では、衛星からの無線信号は、十分に受信されるには弱すぎると予想される。実際、これらの信号によってカバレッジエリア320の外の他の受信機に対して引き起こされる干渉を制限する目的で、衛星上の無線アンテナは、そのような無線信号を弱めるようにわざと設計されることが可能である。
【0013】
図4に、GEO衛星230が、カバレッジエリア320(この図では明示されていない)と重なる地球の部分にサービスする通信衛星であるときに、何が起こるかを示す。LEO衛星と同様、GEO衛星にもまた、1つまたは複数の無線信号を地表に向かって送信する1つまたは複数の無線アンテナが装備される。このような送信は、無線送信410として図示されている。無線送信は、図中でカバレッジエリア420として描かれる地球の部分に向けられる。
【0014】
図4では、LEO衛星140は、カバレッジエリア420に非常に近接するように示されている。したがって、カバレッジエリア320は明示されていないが、カバレッジエリア320は、少なくとも部分的に、カバレッジエリア420と明確に重なる。無線送信410と無線送信310とが、無線スペクトルの同じ部分における無線信号を含む場合、LEO衛星からの送信とGEO衛星からの送信との間で干渉の可能性がある。
【0015】
国際電気通信連合(ITU)規則の下では、LEO衛星140などの非静止(NGSO)衛星は、いくつかの条件下で、GEO衛星と同じスペクトルを使用することが許される。特に、NGSO衛星は、同じスペクトル周波数を使用するGEO衛星と干渉してはならない。ITU規則は、GEO衛星のオペレータと「協調」または相談してオペレータから承認を得ることを必要とせずに、GEO衛星の端末への無線信号電力がどれくらい生み出されてよいかについて、具体的なガイドラインを記載している。
【0016】
図5は、GEO衛星からの信号に対して、許容できない干渉がどのようにLEO衛星によって引き起こされ得るかに関する、可能性のあるシナリオを描く。GEO衛星からの無線信号520を受信しようと試みているGEO受信機510が、地球110の表面上にある。しかし、GEO受信機510はカバレッジエリア320の中に位置し、カバレッジエリア320では、LEO衛星140からの無線送信310が、GEO衛星によって使用されるスペクトル帯域内に入る周波数を使用するかもしれない無線信号を含む。さらに悪いことには、LEO衛星140は、GEO受信機510とGEO衛星との間の見通し線に沿って存在する。したがって、GEO無線信号520によってGEO受信機510へのその進路上で辿られる経路は、LEO衛星140の近くを通過し、GEO受信機510の視点からは、所望の無線信号520と、干渉する無線送信310との両方が、同じ方向から到着する。これらの条件下では、さらに他の緩和技法を採用しない場合、かつ干渉する無線送信310のパワースペクトル密度に応じて、GEO受信機510は、無線信号520の良好な受信を達成するのに困難を有することがある。
【0017】
図6は、前の図に描かれたタイプの干渉状況を緩和するのに一般的に使用される技法を描く。
図6では、LEO衛星140は単純に、それが通信サービスを提供するカバレッジエリア620のサイズを縮小する。このような縮小により、GEO受信機510は今度は、カバレッジエリア620の外に位置する。それでもなお、GEO受信機510の視点からは、縮小されたカバレッジエリア620の境界の外に「あふれ出る」LEO衛星140からの干渉する無線送信があればそれらと同じ方向から、所望の無線信号520が到着するのは事実である。しかし、すでに述べたように、LEO衛星140上の無線アンテナは、カバレッジエリア620の外にあふれ出る無線信号が弱いように、設計されることが可能である。アンテナは、ITU制限を満たすのに必要なだけこれらの信号が弱いように、設計されることが可能である。
【0018】
縮小されたカバレッジエリア620の中の受信機についてはどうであろうか。
図6は、そのような受信機の1つをGEO受信機515として描く。GEO受信機515は、縮小されたカバレッジエリア620の境界近くに位置し、GEO衛星からの無線信号525を受信しようと試みている。GEO受信機515の視点からは、所望の無線信号525は、LEO衛星140からの干渉する無線送信と同じ方向から到着しない。2つの到着方向の間には、0でない角度がある。この角度のため、GEO受信機515は、無線信号525と無線送信610とをよりよく区別することができる。言い換えれば、この角度のおかげで、GEO受信機515によって受信されるような無線送信610のパワースペクトル密度は、ITU制限をより容易に満たすことができる。当然、角度が大きいほど利益は大きい。したがって、縮小されたカバレッジエリア620内での、GEO受信機にとっての最悪の場合の位置は、
図6でGEO受信機515が描かれている位置、すなわち縮小されたカバレッジエリア620の北の境界近くであり、この位置では角度が最も小さい。このような最小の角度は、
図6では角度分離630として描かれている。無線信号520は無線信号525とほぼ平行なので、角度分離630は、図示のように、2つの無線信号のうちのいずれに対して測定されてもよい。
【0019】
角度分離630の存在は、LEO衛星140からの干渉する無線送信610があっても、GEO受信機515が所望の無線信号525の良好な受信を達成するのを可能にする。これは、角度分離630が十分に大きい限り当てはまる。どれくらい大きい必要があるかは、無線信号525を受信するためにGEO受信機515によって使用されるアンテナの特性に大きく依存する。結局のところ、GEO衛星信号の地球ベースの受信機は通常、いわゆる高利得アンテナを使用しなければならない。このようなアンテナは、優れた角度選択性を呈し、それによりアンテナは、わずか数度の角度分離で干渉信号を拒否することができる。さらに、GEO受信機アンテナの特性については、明確な規格がある。結果として、LEO衛星は、注意深く選ばれた角度分離を実装することができ、GEO受信機と干渉しないと確信することができる。
【0020】
図6に示される技法は、衛星からの無線送信が、異なる方向に向けられた複数の独立したビームの形であるときに、容易に実装されることが可能である。この場合、単にビームのいくつかをオフにすることによって、カバレッジエリアを縮小することができる。しかし、いくつかの不都合がある。不都合の1つは、当然、カバレッジエリアを縮小することによって、衛星の有効性が低減されることである。衛星がサービスできる地表上の通信端末はより少なく、また、衛星が搬送するトラフィックの量は低減される。しかし、別の重要な不都合は、この技法の有用性が限定的なことである。
図6に描かれる状況は、地球の中緯度〜高緯度のエリアに適用可能である。
図6の描写では、北が上であり(前の各図と同じ)、地表の角度は緯度47°に対応する。地球の人口のほとんどは、この緯度以下に住む。それでもなお、
図6の幾何形状では、GEO受信機に対する干渉が回避されるべきである場合、LEO衛星140によってサービスされるカバレッジエリアが著しく削減されなければならないことが明確である。次の図に示されるように、より低い緯度では、状況ははるかに悪くなる。
【0021】
図7は、
図6の干渉緩和技法がより低緯度で試みられたときに何が起こるかを示す。特に、
図7は、LEO衛星140の軌道150がLEO衛星140を赤道に近付けたときの、LEO衛星140を描く。この図はまた、GEO衛星からの無線信号720を受信しようと試みているGEO受信機710も描く。GEO受信機710において受信されるような無線信号720の到着方向は、LEO衛星からの干渉する無線送信712の到着方向と同じであることが明確である。この幾何形状は、カバレッジエリア722の中央でもこのことが当てはまるような幾何形状である。カバレッジエリア722のどんな程度のサイズ縮小も、無線信号720と、干渉する無線送信712との間の妥当な角度分離を達成しないことになる。LEO衛星140がITU規則を満たすための唯一の方法は、すべての送信を停止すること、または、著しくより低いパワースペクトル密度で潜在的に動作することだが、それにより、衛星140によって提供されるサービスに悪影響を及ぼす。
【0022】
複数の周回衛星があるので、いずれかの所与の時点で、これらの衛星のうちの1つまたは複数に対して常にこの問題が存在する。当然、衛星をオフにしなければならないのは望ましくなく、特に、これが常に同じ場所で一貫して起こらざるを得ない場合は望ましくない。このような場所は、通信サービスを受けないことになる。この場合、この問題は、すべての低緯度で一貫して発生する。
図7は、LEO衛星がGEO衛星と無線スペクトルを共有しなければならない場合に、LEO衛星を用いて地球の低緯度のエリアに通信サービスを提供することの難しさを示す。
【0023】
図3〜
図7では、衛星からの無線送信は単に、衛星から発する円錐として描かれている。通常の通信衛星では、このような送信は、複数の独立したビームを含み、各ビームは、1つまたは複数の無線信号を搬送する。複数のビームは、例えば、複数の独立したアンテナを介して、または複数のフィードを有する単一のアンテナリフレクタを介して、またはアンテナアレイを介して、または他の手段を介して、生成されることが可能である。
図8および
図9は、LEO通信衛星による複数のビームの使用を示す。
【0024】
図8は、複数の独立したビーム810を送信できるLEO通信衛星840を描く。ビームは地表に向けられる。各ビームは、カバレッジエリア全体のうちの一部に無線カバレッジを提供する。理想的には、異なるビームは重なるべきでないが、当然、いくらかの量の重なりは、不可避であり、実際、ビーム間のカバレッジ間隙を回避するために必要である。それにもかかわらず、ビームがばらばらであるかのようにカバレッジのパターンを描くのが慣例である。
【0025】
図9は、ビームカバレッジパターンの例を描く。19個の六角形は、衛星から発する19個のビームのフットプリントを表す。フットプリントは、地表上にある。すべての六角形は等しいサイズであり、したがって、すべてのビームは、ほぼ等しいトラフィック負荷を経験する。周辺に近い六角形(六角形8〜19)は、低い仰角で地面に到達するビームから得られ、中心に近い六角形(六角形1など)は、垂直に近い方向から地面に到達するビームから得られることに留意されたい。衛星から発するビームの実際のパターン、およびビームを生成するアンテナは、地面の上のフットプリントが所望の規則的なパターンを達成するように、周辺近くのビームが中心近くのビームと比較して異なる形状であるように調整されなければならない。ビームが地面に到達したときにビームが所望のカバレッジパターンのフットプリントを形成するように、3次元のビームパターンを生成するアンテナシステムをどのように設計するかは、当技術分野で周知である。
【0026】
円軌道中のLEO衛星は、地表からほぼ一定距離で、地球の周りを移動する。衛星には、衛星の配向を制御するための姿勢制御システムが装備される。配向は、衛星アンテナが常に地表に向けられるように、かつ、衛星がその軌道に沿って移動するのに伴って衛星の下の地表に対するアンテナの幾何形状が不変であるように、調整される。これは、衛星がその軌道に沿って移動するのに伴って、
図9に示されるカバレッジパターンが衛星の下で不変のままであり衛星と共に移動することを確実にするために、行われる。
【0027】
通信衛星は、軌道中にある間、そのアンテナを地球に対して正確な配向に維持しなければならない。次いで、アンテナは、地表上の無線端末のための良好なカバレッジを提供するように考案された幾何学パターンで、地表に向けられた無線信号を送信することができる。LEO衛星の場合、このパターンは普通、複数の独立したビームを含み、各ビームは、カバレッジエリア全体のうちの一部をカバーする。
図8および
図9は、このようなマルチビームカバレッジを示す。
【0028】
従来技術では、LEO通信衛星は、円軌道を辿り、その動き方向に対して固定配向を維持し、ビームパターンは、地表の方に下向きに向けられる。このようにして、地表上のカバレッジパターンは、その形状を変えずに衛星と共に動く。
【0029】
このようなカバレッジパターンは、衛星が専用スペクトルを使用できる場合には、良好な性能を達成する。しかし、衛星が1つまたは複数のGEO衛星とスペクトルを共有しなければならない場合、
図6および
図7に示される問題は、軌道の大きな部分にわたっていくつかのビームがオフにされることを必要とし、衛星が赤道面に近いときは、すべてのビームはオフにされなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の実施形態によるLEO衛星は、円軌道を辿るが、その動き方向に対して固定配向を維持しない。その代り、衛星は、その軌道に沿って移動するのに伴って漸進的に傾斜する(後の定義セクションにおける「傾斜」の定義を参照)。特に、漸進的な傾斜は、衛星がその軌道に沿って移動するのに伴って、地表上における衛星のカバレッジパターンが変化して衛星自体よりも速く進むようになった傾斜である。
【0031】
傾斜の結果、衛星が赤道面に近付くにつれて、その送信ビームは、衛星が赤道面から遠いときと比較して、ますます赤道面の方に向けられる。
図10〜
図12に、赤道面に近付く衛星の幾何形状が示される。これらの図は、この技法を通して、すべての衛星位置で衛星の無線信号とGEO無線信号との間で良好な角度分離が維持されることを示す。LEO衛星送信の一部をオフにする必要はない。
【0032】
本発明の実施形態による、LEO衛星を傾斜させることに基づく衛星通信システムは、1つまたは複数のGEO衛星とスペクトルを共有することができると同時に、赤道に近いエリアでも、地表上で間隙のない良好なカバレッジを提供することができる。このようなシステムでは、複数のLEO衛星が、赤道面に対して傾けられた複数の軌道中で地球を周回する。例えば、このような軌道は、極円軌道またはほぼ極円軌道であることがある。各軌道中で、複数のLEO衛星が、等しく空いた間隔で移動し、これらの衛星は、軌道の下の地表上のエリアにカバレッジを提供する。ここでは極円軌道を例示の目的で使用するが、本明細書に記載の技法は必ずしも極軌道またはいずれか他のタイプの軌道に限定される必要はないことに留意されたい。
【0033】
各極軌道において、この軌道中で軌道に沿って等しく間隔を空けて移動する衛星は、軌道の下にある地表上のエリアに、途切れのない完全なカバレッジを提供する。これは、いずれかの所与の時点でこれらの衛星のサブセットがオフにされて通信サービスを提供していない場合であっても、可能である。オフにされる衛星は、赤道面に最も近い衛星である。これらの衛星は、これらの衛星がGEO衛星からの無線信号に対する干渉を引き起こさないようにするために、オフにされる。
【0034】
図14に、システムの幾何形状が示される。赤道面を横切って移動するときにオフにされる衛星はまた、それらがオフにされている間にそれらの傾斜角を変更する。このようにして、これらの衛星が再びオンになってカバレッジの提供を再開始したとき、その無線送信は、その移動方向に沿ってその後方に向けられる。次いでこれらの衛星は、漸進的な前方傾斜を再開することができ、これにより、これらの衛星が軌道に沿って移動するのに伴って、そのカバレッジエリアは徐々にそれらの前方になる。これらの衛星がその軌道の半分に沿って移動した後で再び赤道面に到達すると、プロセスは繰り返される。
図12は、衛星による赤道面の通過を示し、
図15は、衛星がオフになったときに、どのようにそのカバレッジエリアが、オンにされている別の衛星に「ハンドオーバ」され、それによりカバレッジエリアが途切れのないカバレッジを受けるかを示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】従来技術における、低高度地球極軌道中のLEO衛星を描く図である。
【
図2】従来技術における、低高度地球極軌道中のLEO衛星と、静止軌道中のGEO衛星とを描く図である。
【
図3】従来技術における、LEO衛星のカバレッジエリアを描く図である。
【
図4】従来技術における、GEO衛星のカバレッジエリアを描く図である。
【
図5】従来技術における、LEO衛星がGEO衛星からの信号に対する無線干渉を引き起こすシナリオを描く図である。
【
図6】従来技術における、干渉緩和技法を描く図である。
【
図7】従来技術における、
図6の干渉緩和技法に伴う問題を描く図である。
【
図8】従来技術における、複数の独立したビームを送信できるLEO通信衛星を描く図である。
【
図9】従来技術における、複数ビームのカバレッジパターンの例を描く図である。
【
図10】本発明の例証的な一実施形態による、LEO衛星によって引き起こされる干渉を低減する方法を描く図である。
【
図11】本発明の例証的な一実施形態による、異なる緯度における漸進的な衛星傾斜を描く図である。
【
図12】本発明の例証的な一実施形態による、LEO衛星による赤道面の通過を描き、赤道面に対する衛星位置に応じた送信ビームのカバレッジエリアの位置変化を示す図である。
【
図13】従来技術による、LEO通信衛星のシステムを描く図である。
【
図14】本発明の例証的な一実施形態による、LEO通信衛星のシステムを描く図である。
【
図15】本発明の例証的な一実施形態による、赤道近くでの、あるLEO衛星から別のLEO衛星へのカバレッジエリアのハンドオーバを描く図である。
【
図16】選択的なビーム作動化/非作動化と組み合わされた衛星傾斜を介して干渉が緩和される、本発明の代替の一実施形態を描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図10は、本発明の一実施形態による、LEO衛星によって引き起こされる干渉を低減する方法を描く。この図では、GEO受信機510が、GEO衛星からの無線信号520を受信しようと試みており、無線信号520の到着方向と、LEO衛星1040からの任意の無線送信と間には、最小の角度分離1030が必要とされる。この図では、LEO衛星1040は、本発明によれば、地表に対してその配向を変更する(すなわちそれ自体を傾斜させる)能力を有する。したがって、
図6のLEO衛星140とは異なり、このLEO衛星は、そのカバレッジエリア1020のサイズを縮小しない。その代り、衛星全体が傾斜し、それにより、その無線送信はGEO受信機510から向きを逸らし、所望の角度分離1030が維持される。
【0037】
どの送信ビームもオフにされないので、カバレッジエリアのサイズは縮小されず、衛星は、同じトラフィック量を搬送し続けることができる。傾斜の結果は、カバレッジエリア1020の中心がもはやLEO衛星1040の下に置かれないことである。これは従来技術とは対照的であり、従来技術では、
図6のカバレッジエリア620は、LEO衛星140の下の、地表上の衛星直下点を中心としたままである。
図10では、カバレッジエリア1020は、衛星直下点を中心としない。そうではなく、カバレッジエリア1020の位置は、赤道面の方にずらされる。
【0038】
図11は、必要とされる傾斜の程度が、LEO衛星1040の軌道に沿ったその位置に応じてどのように発展するかを示す。この図は、1141−1〜1141−4としてラベル付けされた、LEO衛星の4つの可能な位置を描く。可能な各衛星位置につき、この図は、その位置を通るGEO衛星からの無線信号の経路を描く。4つのGEO無線信号は、まとめて無線信号1120としてラベル付けされる。
【0039】
位置1141−1では、衛星直下点は高緯度にあり、幾何形状は、大きい角度分離を維持するために衛星傾斜がほとんどまたはまったく必要とされないような幾何形状である。LEO衛星は、その送信ビームをほぼちょうど真下に向けており、そのカバレッジエリア1122−1は、ほぼちょうど衛星直下点を中心とする。他の位置では、状況は漸進的に変化する。すなわち、LEO衛星が赤道面に近接するほど、無線信号間で所望の角度分離を維持するために傾斜は大きい必要がある。位置1141−4では、衛星は赤道面に非常に近接し、本発明によれば、衛星は、所望の角度分離を維持するために、従来技術の衛星と比較して非常に傾斜している必要がある。これに対応して、カバレッジエリア1122−4は、衛星直下点から大幅にずらされる。実際、
図11は、衛星直下点がカバレッジエリア1122−4の外にあるのを示す。
【0040】
すべての位置で、カバレッジエリアのサイズは縮小される必要はなく、衛星は、ほぼ同じトラフィック量を搬送し続けることができる。位置1141−4では、傾斜の程度が非常に大きいので、地表上の送信ビームのフットプリントがいくらかの量の歪みを受けることになるのは事実だが、影響はそれほど大きくない。衛星が位置1141−4でまったく送信できないことになる従来技術と比較して、本発明の実施形態は、カバレッジエリアの位置にかかわらず、ほぼ不変の衛星トラフィック量を達成する。
【0041】
図11は、LEO衛星の4つの可能な位置を、これらの位置の時間順を指定せずに描いている。この図は、衛星の軌道に沿ったいずれの方向に移動する衛星にも等しく適用可能である。いずれの場合も、衛星直下点に対するカバレッジエリアの位置は、衛星の動きの方向と同じ方向に進む。言い換えれば、衛星がその軌道中で地球の周りを動くのに伴って、カバレッジエリアもまた、衛星と同じ方向に地球の周りを動くが、カバレッジエリアが地球の周りを回る角速度は、衛星の角速度よりも速い。ゆくゆくは、カバレッジエリアは衛星よりも前に出る。この図は、衛星が赤道面に到達したときにこれが起こることを示す。次の図は、次いで何が起こるかを示す。
【0042】
図12は、本発明の実施形態による、赤道面を通るLEO衛星の推移の拡大図を示す。合計8つの可能な衛星位置が描かれている。前と同様、この図は、衛星の軌道に沿ったいずれの方向に移動する衛星にも等しく適用可能である。しかし、説明を明確かつ容易にするために、この考察では、衛星が下方に移動すると仮定する。
【0043】
位置1241−1〜1241−3で、LEO衛星は赤道面に近付きつつあり、すでに考察したように、その傾斜は漸進的に増加され、したがって、そのカバレッジエリアは、衛星の前方にますます進む。位置1241−3で、カバレッジエリア1220−3の中心がほぼちょうど赤道上にあるのが観察される。この位置のすぐ後で、衛星はそのすべての送信ビームをオフにする。
【0044】
送信ビームがオフにされたので、地表上のGEO受信機に対する干渉を引き起こすリスクはない。衛星が位置1242−1〜1242−3を移動するのに伴って、衛星は、送信ビームをオフにされた状態に維持し、反対方向に傾斜し始める。目標は、衛星がその送信ビームを再びオンにするときまでに傾斜角が完全に反転されるようにすることである。
【0045】
位置1243−3で、衛星は、その送信ビームをオンにしたところである。その配向、カバレッジエリア、およびビーム幾何形状が、赤道面に対して、位置1241−3のミラーイメージであることを観察することができる。今度はカバレッジエリア1222−3は、衛星に後れをとっている。衛星が赤道面から離れて位置1243−2に移動するのに伴って、傾斜は漸進的に低減され、したがって、カバレッジエリアは、前と同様、衛星よりも速い角速度で、衛星と同じ方向に地表上を動く。カバレッジエリアは衛星に漸進的に追いつくことになり、衛星が地球の向こう側で再び赤道面を横断するときまでには、カバレッジエリアは再び衛星の前方にあることになり、プロセスが繰り返されることになる。
【0046】
衛星の送信ビームがオフにされているとき、衛星によってトラフィックは搬送されない。途切れのないサービスが維持されるべきである場合、このときに衛星によってサービスされている地球端末は、異なる衛星にハンドオーバされる必要がある。従来技術の衛星通信システムにおいても、1つの衛星のカバレッジエリアが地球のある部分から別の部分に動くとき、ハンドオーバは必要である。
【0047】
図13は、従来技術による、LEO通信衛星のシステムを描く。このシステムは、複数の軌道面における複数のLEO軌道を含み、これらのうちの1つが、LEO極軌道150として図示されている。軌道には、複数のLEO衛星が配置される。図の描写では、黒い点として描かれた24個のLEO衛星1340がある。各衛星は、その衛星直下点を中心とするカバレッジエリアに通信サービスを提供する。したがって、
図13では、24個のカバレッジエリア1320がある。
図13のシステムにおいては、衛星は傾斜せず、したがって、衛星がその軌道中で地球の周りを移動するのに伴って、24個のカバレッジエリアのパターンは、衛星に追従する。このシステムは、何らかの重要な緩和システムを欠いたGEO衛星とはスペクトルを共有することができず、そのような緩和システムは通常、コストを増加させ、かつ/または性能を劣化させることになる。
【0048】
図14は、対照的に、本発明の例証的な一実施形態による、LEO通信衛星のシステムを描く。このシステムは、複数の軌道面における複数のLEO軌道を含み、これらのうちの1つが、LEO極軌道150として図示されている。軌道には、複数のLEO衛星が配置される。図の描写では、黒い点として描かれた24個のLEO衛星1440があるが、カバレッジエリア1420は22個しかない。いずれかの所与の瞬間に、24個の衛星のうちの2個は送信していない。この図は、送信していない2つの衛星のうちの一方を、衛星1441として描く。
【0049】
2つの衛星が送信していないのは、これらの衛星が、
図12に示されたように、赤道面を横断している間にその送信ビームをオフにしたからである。22個のカバレッジエリア1420は隣接しているので、軌道150の下にある地球の部分は、それでもなお、途切れのないカバレッジを受ける。送信ビームをオフにしていない22個の衛星によって、トラフィックが搬送される。
【0050】
すでに考察したように、このシステムの特性は、22個のカバレッジエリアのパターンが、周回する衛星よりも速く地球の周りを動くことである。カバレッジエリアが赤道に到達し、カバレッジエリアにサービスする衛星がその送信ビームをオフにしたときには、同時に別の衛星がその送信ビームをオンにして、このカバレッジエリアにサービスを提供する必要があり、それにより、システムユーザは、途切れのないカバレッジを経験する。ある衛星から別の衛星にカバレッジエリアをハンドオーバするこのプロセスが、次の図に詳細に示される。
【0051】
図15は、本発明の例証的な一実施形態による、ある衛星から別の衛星へのカバレッジエリアのハンドオーバが赤道近くでどのように行われるかを描く。一見したところでは、この図は
図12と表面的には同様に見えるが、この場合、この図は、特定の瞬間における、LEO軌道150中の複数の衛星のスナップショットを描いている。この瞬間は、ある衛星1540−4が赤道面を横断している時として選ばれる。当然、
図12に示されたように、この衛星1540−4は、この瞬間よりも十分前にその送信ビームをオフにしており、傾斜を反転させて後の時点でその送信ビームを再びオンにする準備ができているようにするために、回転中である。
【0052】
この特定の例証的な実施形態では、赤道面を通過するためいずれかの所与の時点で送信していない衛星が4つある。すなわち、惑星の各側で、赤道にちょうど近付いている衛星が1つあり、また、赤道を通過し終えてオンに戻される準備ができている衛星が1つある。
図15では、衛星1540−4に加えて、衛星1540−5もまた、この瞬間には送信ビームをオフにしているが、衛星1540−5は、その傾斜を反転させる操縦を完了しており、その送信ビームを再びオンにする準備ができている。同じ瞬間に、衛星1540−3は、その送信ビームをオフにしなければならない点に達している。そのカバレッジエリア1520−3は、赤道をまたぐ。衛星1540−3がその送信ビームをオフにすると、衛星1540−5が、その送信ビームをオンにし、カバレッジエリア1520−3にサービスを提供し始める。したがって、カバレッジエリア1520−3はサービス中断を経験しない。
【0053】
ここまでに提示した本発明のすべての実施形態では、各衛星が、その送信ビームを同時にオンまたはオフにした。しかし、衛星はまた、異なる時点でビームを選択的にオンまたはオフにすることもできる。この能力は、本発明の実施形態で有利に利用されることが可能である。
【0054】
図16は、必要とされる衛星傾斜の量を低減するために送信ビームを選択的にオンまたはオフにする能力をどのように本発明の実施形態で利用できるかを描く。この図では、LEO衛星1640が、地表上のGEO受信機510および他のGEO受信機のために、信号間で十分な角度分離を提供する必要がある。
図10と同様、LEO衛星1640は、GEO受信機510から逸れるように傾斜して角度分離を達成するが、この例証的な例では、衛星はまた、GEO受信機510の近くに向けられた送信ビーム1610を選択的にオフにする。この技法により、LEO衛星1640は、過度の傾斜なしに、向上した角度分離1630を達成することができる。
【0055】
カバレッジエリアは、当然、ビームのいくつかをオフにする結果としてサイズが縮小することになる。
図16にこれが示されており、カバレッジエリア1620は、縮小されたサイズを有する。しかし、これは必ずしも問題ではなく、LEO衛星の軌道におけるLEO衛星の位置に応じてカバレッジエリアのサイズが変化する本発明の実施形態も可能である。また、赤道におけるカバレッジのハンドオーバの代りに、赤道に近付くにつれてカバレッジエリアのサイズが徐々に小さくなって無くなる本発明の実施形態を構想することも可能である。
【0056】
本発明を、LEO衛星のための極軌道、およびGEO衛星のための赤道軌道の点から例証したが、本開示を読んだ後には、衛星が他のタイプの軌道中にある場合の本発明の実施形態をどのように作製および使用するかは、当業者には明らかであろう。限定ではなく例えば、本発明は、非静止軌道中の衛星に対する干渉を低減するのに有利とすることができる。例えば、このような衛星は、赤道面に対して傾けられた面を有する軌道中にあることがある。このような傾けられた面の顕著な一例は、赤道面に対して7.3°傾けられたいわゆるGEO安定面である。また、本発明によるシステムにおける衛星は、赤道面に対して、または干渉が緩和される対象である衛星の面に対して、90°未満の角度で傾けられた面を有する非極軌道中にあることもある。
【0057】
本開示は、1つまたは複数の例証的な実施形態の、1つまたは複数の例を教示するに過ぎず、本開示を読んだ後には当業者によって本発明の多くの変形を容易に考案することができ、本発明の範囲は、本開示に添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
【0058】
定義
アンテナ − 本明細書においては、「アンテナ」は、電気的な無線周波数信号を無線信号に、またはその逆に、または両方に変換するためのデバイスとして定義される。通常、アンテナは、適切なサイズ、形状、および構成にされた、1つまたは複数の金属部品から作られる。アンテナはまた、金属に加えて誘電性材料を含むこともある。金属以外の導電性材料も、時として使用される。
【0059】
〜に基づいて − 本明細書においては、「〜に基づいて」という語句は、「〜から独立して」とは対照的に「〜に依存して」と定義される。「〜に基づく」ことは、機能と関係の両方を含む。
【0060】
近赤道軌道 − 本明細書の記述時点では、Wikipediaは、近赤道軌道を「赤道面に近接する軌道」と定義している。必要とされる近接の程度は、周囲の状況に依存する。本開示においては、近赤道軌道は、赤道面に対するその傾き角度が、本明細書に記載の結果を本発明の実施形態が達成するのを可能にするのに十分なほど小さい場合に、十分に近接すると見なされるものとする。近赤道軌道がそのように見なされるのに十分なほど近接するときがいつであるかは、当業者には明らかであろう。
【0061】
赤道軌道 − これは、軌道面が赤道面である衛星軌道を指すのに当技術分野で一般的に使用される表現である。太陽、月、および他の原因によって引き起こされる摂動のせいで、現実の衛星の現実の軌道は赤道面にとどまることができないことは、当技術分野で周知である。赤道軌道中にあるように意図される衛星は、そのような摂動に対して補正してその軌道を赤道面の近くに戻すために、定期的な軌道調整を必要とする。
【0062】
このような調整の頻度および程度は、衛星の要件に依存する。特に、衛星の任務の目的に応じて、完全な赤道軌道からの許容される最大逸脱があることになる。必要に応じて調整が適用されて、軌道面がこの許容範囲内に維持される。いずれかの所与の瞬間で実際の軌道面が赤道面に対して許容範囲内の角度をなしていることがあっても、公称軌道面は赤道面なので、このような衛星の軌道もなお、赤道軌道と一般的に呼ばれる。
【0063】
軌道 − これは、地球の重力井戸の内部の動力供給されない衛星によって辿られる軌跡を指すのに当技術分野で一般的に使用される用語である。特に、軌道は普通、地球の中心に1つの焦点を有する楕円を指すと理解される。当技術分野では、このような楕円は近似に過ぎないと理解される。実際には、地球の扁平性と、太陽および月の存在とが、軌道に対して摂動を引き起こし、したがって、実際の衛星の軌跡は楕円とは異なる。しかし、楕円は衛星の軌跡の優れた近似なので、「軌道」という用語はなお、楕円を指すのに一般的に使用される。
【0064】
このような近似が不適当なときでも、完全な楕円からの実際の軌跡の逸脱は、楕円のパラメータが時間に伴ってどのように変化するかという点から特徴付けられる。いずれかの所与の瞬間に、衛星は楕円軌道中で移動していると見られ、この楕円軌道は「接触軌道」と呼ばれる。
【0065】
楕円は、平面幾何学曲線である。したがって、いずれかの所与の瞬間に、衛星は、明確な軌道面、すなわち接触軌道の面において動くと言われる。接触軌道のパラメータが時間に伴って変化するので、軌道の面もまた一般には変化することになる。
【0066】
衛星がそのスラスタを発火させると、接触軌道は、衛星の変化した速度に応答して、突然変化する。
【0067】
呈する − 本明細書においては、不定詞「呈する(to exhibit)」およびその屈折形(例えば、「exhibiting」、「exhibits」など)は、「明らかにする、または明白にする」と定義される。
【0068】
生成する − 本明細書においては、不定詞「生成する(to generate)」およびその屈折形(例えば、「generating」、「generation」など)は、これらの用語が本発明の時点で当業者にとって有することになる通常かつ慣例の意味を与えられるべきである。
【0069】
無線信号 − 本明細書においては、「無線信号」は、ワイヤ、コネクタ、または伝送線などの材料サポートを必要とせずに、空気または真空を介して伝搬する、電磁波からなる信号として定義される。
【0070】
〜とき − 本明細書においては、「〜とき」という語は、「〜の際に」として定義される。
【符号の説明】
【0071】
101 動き方向
110 地球
120 北極
130 南極
140 LEO衛星
150 LEO極軌道
204 昇交点
206 降交点
210 赤道
220 赤道面
230 GEO衛星
310 無線送信
320 カバレッジエリア
410 無線送信
420 カバレッジエリア
510 GEO受信機
515 GEO受信機
520 GEO衛星からの無線信号
525 GEO衛星からの無線信号
610 無線送信
620 縮小されたカバレッジエリア
630 角度分離
710 GEO受信機
712 無線送信
720 GEO衛星からの無線信号
722 カバレッジエリア
810 複数の独立したビーム
840 LEO通信衛星
900 複数ビームのカバレッジパターン
1010 無線送信
1020 カバレッジエリア
1030 角度分離
1040 LEO衛星
1120 GEO衛星からの無線信号
1122−1、1122−2、1122−3、1122−4 カバレッジエリア
1141−1、1141−2、1141−3、1141−4 衛星位置
1220−1、1220−2、1220−3、1222−3、1222−2 カバレッジエリア
1241−1、1241−2、1241−3、1242−1、1242−2、1242−3、1243−3、1243−2 衛星位置
1250 衛星が送信を停止して回転する軌道部分
1320 カバレッジエリア
1340 LEO衛星
1420 カバレッジエリア
1440 LEO衛星
1441 送信していない衛星
1501 動き方向
1520−1、1520−2、1520−3、1520−4 カバレッジエリア
1540−1、1540−2、1540−3、1540−4、1540−5、1540−6 衛星
1610 送信ビーム
1620 カバレッジエリア
1630 角度分離
1640 LEO衛星