(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記さらなるランプは、前記第2の流れ分布システムの第1面および第2面のうちの少なくとも一方に配置され、前記第1面および前記第2面は、前記流出口マニホルドの反対側に位置する、請求項10に記載のモジュール。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学分離システムおよび方法は、種々の処理プロセスでの用途のための改良流体流れ分布を特徴としうる。いくつかの実施形態では、電気化学分離装置に出入りする流体流れ分布は、正規化されてもよい。いくつかの特定の実施形態では、電気化学分離装置に出入りする流れ分布は、装置の全平面にわたって均一であってもよい。
【0023】
電界を用いて流体を浄化する装置は、溶解イオン種を含有する水および他の液体を処理するために一般的に用いられている。このように水を処理する装置として、電気脱イオン装置および電気透析装置の2種類が挙げられる。これらの装置内には、イオン選択膜によって分離された濃縮室および希釈室が存在する。電気透析装置は、通常、交互に設けられた電気活性の半透過性のアニオン交換膜およびカチオン交換膜を含む。膜間の空間は、流入口および流出口を有する液体流れの区画室を形成するよう構成される。電極を介して印加される電界によって、溶解イオンはそれぞれの対向電極に引き寄せられ、アニオンおよびカチオン交換膜を通って移動する。これにより一般に、希釈室の液体からはイオンが除去され、濃縮室の液体は移動してきたイオンで濃度が上昇する。
【0024】
電気脱イオン化(EDI)は、電気活性媒体および電位を用いて、1つ以上のイオン化された種またはイオン化可能種を水から除去するかまたは少なくとも減少させてイオン輸送を行うプロセスである。電気活性媒体は、通常、イオン性種および/またはイオン化可能種の回収および放出を交互に繰り返し、そして、場合によっては、イオン的または電気的な置換機構によって、たとえば連続的にまたは断続的に、イオン輸送を促進するよう働く。EDI装置は、永久荷電または一時的荷電を有する電気化学活性媒体を備えることができ、バッチ的に、断続的に、連続的に、および/または、反転極性モードにおいて動作しうる。EDI装置は、性能を実現しまたは高めるように特に設計された1つ以上の電気化学反応を助長するように動作することができる。さらに、かかる電気化学装置は、電気活性膜、たとえば半透過性または選択透過性のイオン交換膜または二極性膜を有していてもよい。連続電気脱イオン(CEDI)装置とは、当業者に知られたEDI装置であり、イオン交換材料の連続的な再荷電を行いつつ、水浄化も連続的に進むように動作する。CEDI技術としては、たとえば、連続脱イオン化、充填セル電気透析、または電気透析(electrodiaresis)等のプロセスが挙げられる。電圧および塩分濃度の制御下において、CEDIシステムでは、水分子が分解されて、水素またはヒドロニウムイオンまたは種と、水酸化物または水酸基イオンまたは種とが生成可能であり、これらが装置内のイオン交換媒体を再生し、したがって、捕捉された種のイオン交換媒体からの放出が促進される。このようにして、処理対象の水の流れは、イオン交換樹脂の化学的再荷電を必要とせずに、連続的に浄化可能である。
【0025】
電気透析(ED)装置は、CEDIと同様の原理で動作するが、ED装置は通常、膜間に電気活性媒体を備えていない。電気活性媒体が無いため、電気抵抗が上昇し、EDの動作は、低塩分濃度の供給水については妨げられる場合がある。また、高塩分濃度の供給水についてのEDの動作は電流消費の増大を生じさせる場合があるため、ED装置は、従来、中程度の塩分濃度の源水に対して最も効果的に用いられてきた。ED型のシステムでは、電気活性媒体がないため、水の分離は非効率的であり、このような形での動作は通常避けられている。
【0026】
CEDI装置およびED装置では、複数の隣接するセルまたは区画室は、通常、正または負の荷電種(通常は両方ではない)の通過を可能とする選択透過性膜により分離される。希釈室または除去室は、通常、かかる装置内で、濃縮室を間に挟んで設けられている。いくつかの実施形態では、セル対とは、隣接する濃縮室および希釈室からなる対と言うことができる。水が除去室を流れるとき、イオン性種および他の荷電種は通常、DC電界等の電界の影響下で濃縮室内へ引かれる。正の荷電種は、多数の除去室および濃縮室のスタックの一端に通常位置するカソードへ引かれ、負の荷電種は、同様に、区画室のスタックの他端に通常位置する該装置のアノードへ引かれる。両電極は、除去室および/または濃縮室との流体連通から通常部分的に分離されている電解質区画室内に一般に収容されている。荷電種は通常、濃縮室内に入ると、濃縮室を少なくとも部分的に画定している選択透過性膜の障壁によって捕捉される。たとえば、アニオンは通常、カチオン選択膜により、濃縮室を出てカソードに向かってさらに移動することを妨げられる。濃縮室内に捕捉されると、捕捉された荷電種は濃縮流中に除去されうる。
【0027】
CEDI装置およびED装置においては、通常、電極(アノードまたは正電極、および、カソードまたは負電極)に印加される電圧および電流源から、DC電界がセルに印加される。電圧および電流源(まとめて「電源」という)は、それ自体が、AC電源、またはたとえば、太陽光、風力または波力に由来する電源等の種々の手段によって駆動されうる。電極/液体界面において電気化学半電池反応が生じ、これによって膜および区画室を通るイオンの移動が開始および/または促進される。電極/界面で生じる特定の電気化学反応は、電極アセンブリを収容する専用区画室内の塩濃度によってある程度制御可能である。たとえば、塩化ナトリウム濃度の高いアノード電解質区画室への供給は、塩素ガスと水素イオンとを生成しやすく、一方、カソード電解質区画室へのそのような供給は、水素ガスと水酸化物イオンとを生成しやすい。通常、アノード室で生成した水素イオンは遊離アニオンたとえば塩素イオンと会合し、電荷中性が維持されて塩酸溶液が生成され、同様に、カソード室で生成した水酸化物イオンは遊離カチオンたとえばナトリウムと会合し、電荷中性が維持されて水酸化ナトリウム溶液が生成されることになる。電極室の反応生成物、たとえば、生成した塩素ガスおよび水酸化ナトリウムは、殺菌目的、膜洗浄および付着物除去目的、およびpH調整目的等、必要に応じてプロセスにおいて利用可能である。
【0028】
いくつかの実施形態では、電気脱イオン装置は、イオン交換スクリーンを含んでいてもよい。1つ以上の実施形態によれば、イオン交換スクリーンは、カチオンおよび/またはアニオン官能性を有するスクリーン等の、官能化スクリーンであってもよい。不活性スクリーンの代わりにイオン交換材料を使用することで、水が希薄であるとき、たとえば、イオン濃度の約5000mg/l未満であるとき、水からイオンを除去する電気脱イオン装置の能力を向上させることができる。イオン交換材料は、カチオン交換材料またはアニオン交換材料のいずれか、またはそれらの組み合わせを含みうる。
【0029】
各流れ区画室の周縁を封止材料で封止して、スクリーンを流れ区画室内部に配置してもよい。あるいは、スクリーンの外側エッジを、周縁に沿って封止材料に埋め込んでもよい。スクリーンおよび封止材料、たとえば熱弾性エラストマーは、別の動作において組み立てることが可能である。結果として得られるスペーサは、流れ区画室を画定し、隣接するイオン交換膜間の距離を確定し、DC電界下の区画室における混合強化によりイオン輸送を促進するために、用いられる。
【0030】
セルスタックの厚さは、各区画室の厚さに依存しうる。いくつかの実施形態では、セルスタックの各区画室の厚さは、約3mmであってもよい。セルスタックの各区画室の厚さは、スクリーンが存在する場合、スクリーンの厚さによって、部分的に決まる。スクリーンの厚さは、約0.25mm〜約2.0mmの範囲であってもよい。前述の典型的範囲の外の厚さも可能である。
【0031】
プレート−フレーム設計および渦巻形設計が、電気透析(ED)装置および電気脱イオン(EDI)装置を非限定的に含む種々の電気化学脱イオン化装置に用いられてきた。市販のED装置は通常、プレート−フレーム設計であり、他方、EDI装置は、プレート−フレーム構成および渦巻構成の双方で利用可能である。1つ以上の実施形態は、流体を電気的に浄化する装置に関する。浄化の対象となる液体または他の流体は、浄化装置に入り、電界の影響下で処理されてイオン除去液が生成される。流入する液体からの種は、回収されて、イオン濃縮液が生成される。
【0032】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学分離システムまたは装置は、モジュール式であってもよい。各モジュール式ユニットは通常、電気化学分離システム全体のサブブロックとして機能する。モジュール式ユニットは、任意の所望の個数のセル対を含んでもよい。いくつかの実施形態では、モジュール式ユニット当たりのセル対の個数は、分離装置におけるセル対およびパスの総数に依存しうる。また、モジュール式ユニット当たりのセル対の個数は、クロスリークや他の性能基準をテストした際の許容故障率でフレームに熱接合およびポッティング可能なセル対の個数にも依存しうる。個数は、製造プロセスの統計的分析に基づくことができ、プロセス制御の向上に伴って増加しうる。いくつかの非限定的な実施形態では、モジュール式ユニットは、約26個のセル対を含んでもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、モジュール式ユニットは、約50個のセル対を含んでもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、モジュール式ユニットは、約100個のセル対を含んでもよい。そして、複数のモジュール式ユニットを共に組み立てることによって、電気化学分離装置において所期の総数のセル対を提供することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、電気浄化装置用のセルスタックが提供される。セルスタックは、交互に設けられた複数のイオン除去室およびイオン濃縮室を提供することができる。各イオン除去室は、第1の方向に希釈流体流れを与える流入口および流出口を有してもよい。各イオン濃縮室は、第2の方向に濃縮流体流れを与える流入口および流出口を有してもよい。いくつかの実施形態では、クロスフロー装置のように、第1の方向は第2の方向と異なっていてもよい。
【0034】
本発明の電気浄化装置は、セルスタックを収容するハウジングをさらに備えることができる。セルスタックの周縁の少なくとも一部をハウジングに固定してもよい。ハウジングとセルスタックとの間にフレームまたは支持体構造を配置して、セルスタックにさらなる支持を与えてもよい。フレームは、セルスタックに対する液体の流出入を可能にする流入口マニホルドおよび流出口マニホルドを備えてもよい。いくつかの実施形態では、流入口マニホルドおよび流出口マニホルドは、流体流れの方向に基づいて、可逆であってもよい。いくつかの実施形態では、マニホルドは、プレナムを含んでもよい。
【0035】
フレームおよびセルスタックはともに、電気浄化装置のモジュール式ユニットを提供することができる。電気浄化装置は、ハウジング内に固定された第2のモジュール式ユニットをさらに備えてもよい。遮断スペーサ等のスペーサを、第1のモジュール式ユニットと第2のモジュール式ユニットとの間に配置してもよい。第1の電極を、第1のモジュール式ユニットの、第2のモジュール式ユニットと連通する端部と反対の端部に配置してもよい。第2の電極を、第2のモジュール式ユニットの、第1のモジュール式ユニットと連通する端部と反対の端部に配置してもよい。フレームを含むようなマニホルディングは、より大きなシステムにおいて種々のモジュール式ユニットが流体連通するように、1つ以上のモジュール式ユニットを補助しうる。
【0036】
1つ以上の実施形態によれば、本明細書に記載のセルスタックは、任意の所望の個数のイオン交換膜、セル対、または流れ区画室を有してもよい。いくつかの実施形態では、電気化学分離システムは、単一のセルスタックを含んでもよい。モジュール式実施形態等の他の実施形態では、電気化学分離システムは、2つ以上のセルスタックを含んでもよい。いくつかの実施形態では、各セルスタックは、本明細書に記載の別のモジュール式ユニットに含まれてもよい。モジュール式は、設計柔軟性および製造の容易さを提供することができる。1つ以上の実施形態によれば、電気化学分離システムは、第1の電極と、第2の電極と、第1のフレームに支持される交互に設けられた複数の除去室および濃縮室を画定する第1のセルスタックを有する第1の電気化学分離モジュール式ユニットであって、第1の電極と第2の電極との間に位置する第1の電気化学分離モジュール式ユニットと、第1の電気化学分離モジュール式ユニットと協働し、第2のフレームに支持される交互に設けられた複数の除去室および濃縮室を画定する第2のセルスタックを有する第2の電気化学分離モジュール式ユニットであって、第1の電気化学分離モジュール式ユニットと第2の電極との間に位置する第2の電気化学分離モジュール式ユニットとを含んでもよい。
【0037】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学分離モジュール式ユニットは、交互に設けられた複数の除去室および濃縮室を画定するセルスタックと、支持体システムとを備えてもよい。支持体システムは、セルスタックの垂直配列を維持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、支持体システムは、フレームであってもよい。フレームは、少なくとも部分的にセルスタックを取り囲んでいてもよい。他の実施形態では、フレームは、実質的にセルスタックを取り囲んでいてもよい。いくつかの実施形態では、フレームは、セルスタックを通る流体流れを促進するように構成されるマニホルドシステムを含んでもよい。マニホルドシステムは、中央システムマニホルドから、補助対象の個別モジュール式ユニットへ、プロセス液体を提供してもよい。マニホルドシステムは、流入口マニホルドと、流出口マニホルドとを含んでもよい。マニホルドシステムは、各除去室の流入口および各濃縮室の流入口と流体連通する流入口マニホルドを備えてもよい。マニホルドシステムはさらに、各除去室の流出口および各濃縮室の流出口と流体連通する流出口マニホルドを備えてもよい。マニホルドシステムは、処理された液体を、流出口マニホルドを介して下流へ提供するように構成されてもよい。マニホルドシステムの少なくとも一部は、フレームと一体であってもよく、フレームと別の構造内にあってもよい。少なくともいくつかの実施形態では、マニホルドシステムは、モジュール式ユニットにおける希釈流および濃縮流の混合を防ぐように構築され配置されていてもよい。マニホルドシステムは、スタックに対応付けられた希釈室および濃縮室の流出口を、流体分離し切り離しておいてもよい。いくつかの実施形態では、マニホルドシステムは、流れ分布システムを含んでもよい。流れ分布システムは、マニホルドシステムの一部であってもよく、別のシステムであってもよい。流れ分布システムは、マニホルドシステムと流体連通していてもよく、セルスタックへの均一流れ分布を助長するように構成されてもよい。流れ分布システムは、各除去室の流入口および各濃縮室の流入口と流体連通していてもよい。いくつかの実施形態では、流れ分布システムの少なくとも一部は、フレームと一体であってもよい。他の実施形態では、流れ分布システムの少なくとも一部は、フレームと係合していてもよい。マニホルドおよび/または流れ分布システムの1つ以上の特徴は、たとえばインサート構造を介して、フレーム内に一体化されてもよい。いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、セルスタックの各流入口および流出口と係合していてもよい。
【0038】
1つ以上の実施形態によれば、所期の官能性を有することが可能な流れ分布システムの種々の設計を実施することができる。セルスタックの性質に基づいて、区画室流入口および流出口は、セルスタックの1つ以上の側面に位置してもよい。いくつかの実施形態では、区画室流入口および流出口は、セルスタックの全側面に位置してもよい。マニホルドシステムおよび流れ分布システムを含むフレーム設計は、セルスタックを任意の向きで収容することができるように構成されてもよい。また、インサートまたは流れ分布システムは、任意のマニホルド内に挿入または一体化されてもよく、柔軟性のためにセルスタックの任意の側面に対応付けられてもよい。流れ分布システムは、挿入または一体化されて、処理対象の流体をスタックの多数の区画室へ提供することと、セルスタックの流出流を流体分離して切り離しておくこととの両方の作用を有してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、たとえば乱流流体入力を伴う実施形態では、電気化学分離システム内の不均等流体分布の可能性は、流れ分布システムによって対処することができる。通常、乱流は、高速度で流入口マニホルドまたはプレナムに入り、流れの運動量によって、その大量が、マニホルドおよびセルスタックの底平面
(第1面とも称する。)に偏りうる。したがって、不均衡な量の流体が、1つ以上のセルスタックの中心および上平面
(第2面とも称する。)よりも底平面
(第1面とも称する。)へと向かいうる。
【0040】
1つ以上の実施形態では、流れ分布システムは、セルスタックおよび/またはその個々の区画室を通して均一流体流れを助長するように構築されてもよい。セルスタックの流体通路または区画室における任意の点での流れ速度は、たとえば、マニホルド寸法およびアスペクト比に依存しうる。種々の実施形態では、セルスタックの流体通路または区画室における任意の点での流れ速度は、約+/−20%未満で変動しうる。いくつかの実施形態では、速度は、約+/−10%未満で変動しうる。いくつかの実施形態では、均一流れ速度は、セルスタックの全3つの平面内での流れの速度が実質的に同じであることを指してもよい。たとえば、全3つの平面内での流れ速度は、セルスタックの中央平面において実質的に同じであってもよい。いくつかの実施形態では、全3つの平面内での流れ速度は、セルスタックの流入口において実質的に同じであってもよい。均一流れ速度は、停滞域を最小限にするかまたは無くし、その結果システム効率を高めることができる。均一流れ速度はまた、濃縮室におけるCaCO
3析出等のスケール形成の可能性を低減することができる。最小流れ速度を上げることで、停滞域が無くなり、スケーリングが起きる可能性が低くなる。いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、セルスタックの全平面にわたって均一流体流れを助長するように構築されてもよい。少なくともある実施形態では、流れ分布システムは、流入乱流を遷移流としてセルスタック内に向けるように構築および配置されてもよい。乱流は、低運動量拡散、高運動量対流、および、空間や時間における圧力および流れ速度の急速な変動を含む、カオス的特性変化によって特徴付けられる流れである。乱流は、4,000超のレイノルズ数によって特徴付けられる。遷移流は、乱流から層流へまたは層流から乱流へ遷移するプロセスでの流体である。遷移流は、約2,300〜約4,000のレイノルズ数によって特徴付けられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、流入乱流を層流としてセルスタック内に向け直すように構築および配置されてもよい。層流は、流体が、層間の混乱なしに、平行層において流れる際に発生する。低速度で、層流流体は、側方混合なしに流れる傾向がある。流れ方向に対し垂直な逆流はなく、流体が渦巻くこともない。加えて、層流では、流体の粒子の運動は極めて規則正しく、全ての粒子は、明確に定義された流線で動く。層流は、約2,300超のレイノルズ数によって特徴付けられる。流入口流れの特性は、所期の用途および流体の性質に応じて変動しうる。いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、マニホルド内で再循環を助長するのに十分な流入口流量を受容するように構成されてもよい。たとえば、流れ分布システムは、源からの約1cm/s〜約100cm/s gpmの流入口流量を受容するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、流入口流量は、約1cm/s〜約100cm/s gpmであってもよい。約1cm/s未満では、流れ分布システムは、流れを効果的に方向転換することができない可能性があり、流れをセルスタックへ均一に分布することができない可能性がある。
【0042】
いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、少なくとも部分的に、電気化学分離装置の流入口マニホルドまたは流出口マニホルド内にあってもよい。流れ分布システムは、モジュール式ユニットのフレーム内にあってもよい。流れ分布システムは、マニホルディングのプレナム内にあってもよい。いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、セルスタックの幅(すなわち、x軸)にわたって均一流体流れを助長するために、少なくとも部分的に放射状に間隔をおいて配置された複数のバッフルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、バッフルは、障害物、突起、凸部、フランジ、リブ、または歯であってもよい。1つ以上の実施形態によれば、流れ分布システムは、必要な機械的特性と、電気化学分離による脱イオン化の対象である流体との化学的適合性と、を持つ材料から製造される。都市水道水、井戸水、汽水または海水の脱塩等の用途では、その耐腐食性および低コストから、プラスチック材料が有利である。有望なプラスチックとして、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PAまたはナイロン)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリスルホン、または、ポリフェニレンオキシド(PPO)とポリスチレン(PS)との混合であるノリル等のプラスチック混合物がある。耐化学性および機械的・熱的特性向上のために、ガラス繊維等の補強材を添加してもよい。
【0043】
バッフルは、実質的に完全にマニホルドの軸の長さにわたるようなサイズであってもよい。たとえば、バッフルは、実質的に完全にマニホルドのz軸の長さにわたってもよい。バッフルは、流体が流れる通路を画定してもよく、流体流れを均等に分割するように間隔をおいて配置されてもよい。いくつかの実施形態では、バッフルは、均等に互いに間隔をおいて配置されてもよい。いくつかの実施形態では、バッフルは、斜めに互いに間隔をおいて配置されてもよい。いくつかの実施形態では、バッフルは、少なくとも部分的に放射状に互いに間隔をおいて配置されてもよい。バッフルは、互いに約3mm〜約4mmの間隔であってもよい。バッフルの個数および間隔は、セルスタックの寸法や形状およびモジュールおよび/またはマニホルドの設計を含む要因に応じて変動しうる。
【0044】
いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、セルスタックの上平面
(第2面)、中心平面、および底平面
(第1面)への均一流体流れを助長するために、複数のランプまたは流体リフトを含んでもよい。ランプは、バッフルと別の平面に構成および配置されてもよい。前述の通り、通常、乱流は、高速度で流入口マニホルドに入り、流れの運動量によってその大量が、マニホルドの底平面
(第1面)に偏りうる。したがって、不均衡な量の流体が、電気化学分離システムの中心および上平面
(第2面)よりも底平面
(第1面)へと向かいうる。マニホルドの底面
(第1面)に配置されたランプは、流入流体流れの運動量を底平面
(第1面)からセルスタックの前面へと上へ方向転換するように構成される。よって、マニホルドの底面
(第1面)のランプは、流入口流体をセルスタックの底平面
(第1面)から上および中心平面へと方向転換する。
【0045】
いくつかの実施形態では、ランプは、溝を画定するようにアレイ状に間隔をおいて配置されてもよい。マニホルドの底面
(第1面)の溝は、流体が底平面
(第1面)へと流れるチャネルを提供しうる。マニホルドの底面
(第1面)のランプが流れを上および中心平面へと方向転換する際、溝は、流体の底平面
(第1面)への流れを可能にする。このようにして、溝は、全3つの流れ平面への流れ速度を正規化することができる。また、溝は、ランプを連続隆起特徴から別個の突起へと変換することによって、射出成形のための設計を単純化することができる。
【0046】
前述の通り、いくつかの実施形態では、ランプは、マニホルドの底面
(第1面)に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、ランプは、マニホルドの上面
(第2面)に配置されてもよい。ランプは、マニホルドの上面
(第2面)および底面
(第1面)の両方にあってもよい。マニホルドの底面
(第1面)のランプは、流体をセルスタックの中心線へと向ける任意の形状を有してもよい。たとえば、ランプは、ランプの上部の接線がセルスタックの中心線へと向くように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、ランプは、放物形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、ランプは、増大テーパー高さを有してもよい。テーパーは、多項式関数、三角関数、指数関数、その他の数学的方程式を非限定的に含む任意の数の関数で定義されてもよい。これらの関数は、流入口マニホルドのアスペクト比に適切にスケール変更されてもよい。いくつかの実施形態では、複数のランプは、多数のプロファイルを有してもよい。いくつかの実施形態では、複数のランプは、さまざまな高さを有してもよい。
【0047】
ランプの形状および寸法は、可変であり、たとえば、セルスタックのサイズ、セル対の数、セルスタック内の間隔、および供給流量に依存しうる。マニホルドの上面
(第2面)のランプは、流体流れをマニホルドを通して再循環するように向ける任意の形状を有してもよい。マニホルドの上面
(第2面)のランプは、底面
(第1面)のランプと同じまたは異なる形状を有してもよい。たとえば、マニホルドの上面
(第1面)のランプは、同じまたは異なる曲率半径を有してもよい。いくつかの実施形態では、マニホルドの上面のランプは、円弧状であってもよい。いくつかの実施形態では、弧は、直径25〜30mmの円の弧であってもよい。バッフルと同様、ランプの個数、間隔、および形状は、セルスタックの性質およびモジュールおよび/またはマニホルド設計に依存しうる。
【0048】
1つ以上の実施形態によれば、セルスタック内への流れが調整、再分配、または方向転換されることで、流体が、セルスタックの区画室内の膜表面とより均等に接触する。電気浄化装置用のセルスタックにおける各区画室は、流体接触のために所定のパーセンテージの表面積または膜利用を提供するように構築および配置されてもよい。より高い膜利用によって、電気浄化装置の動作においてより高い効率が得られることが分かっている。
【0049】
1つ以上の実施形態によれば、流れ分布システムは、セルスタックを取り囲むマニホルドまたはフレームと一体であってもよい。他の実施形態では、流れ分布システムの少なくとも一部は、フレームまたはマニホルドと係合するように構成されてもよい。流れ分布システムは、マニホルドによって取り外し可能に収容することができるインサートを備えてもよい。モジュール式ユニットは、1つ以上の流れ分布システムを含むことができる。いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、セルスタックの1つ以上の側面と対応付けられてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、流れ分布システムは、セルスタックの各側面と対応付けられてもよい。セルスタックの各側面は、専用の流れ分布システムを有してもよい。流れ分布システムは、電気化学分離装置によって取り外し可能に収容することができるように構成されてもよい。
【0050】
上記の通り、電気化学分離システムは、
図1に概略図示するように、流入口マニホルドを含んでもよい。モジュール100は、フレーム110と、流入口121を備える流入口マニホルド120と、流出口マニホルド130とを含んでもよい。
図2は、流入口マニホルド120、流出口マニホルド130、およびセルスタック140を図示する、線2−2に沿ったモジュール100の断面図である。多数のモジュールを流体接続して、電極対間に所望の総数のセル対または区画室を設けてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、流入口および/または流出口マニホルドは、流体流れ分布システムを備えてもよい。
図3は、流入口321を含むが、流体流れ分布システムを有しないマニホルド320を図示する。
図4〜9に非限定的に示すように、流体流れ分布システムは、種々の構成でありうる。
図4は、流入口421とリブ430とを備えるマニホルド420を図示する。
図5A、5B、および5Cは、流入口521と歯540とを備えるマニホルド520を図示する。
図6A、6B、および6Cは、流入口621と、リブ430および歯540の組み合わせとを備えるマニホルド620を図示する。
【0052】
図7Aにおいて、マニホルド720は、流入口721と、リブ430と、歯540と、マニホルドの底面の流体リフト750とを備える。
図7Bは、流れ分布システムにおけるランプ750の側面図である。
図8Aおよび8Bは、マニホルドの底面の流体リフト750に溝860を導入する。
図9Aは、マニホルドの上面に流体リフト970および溝980を導入する。
図9Bは、それぞれマニホルドの底面および上面の流体リフト750および970を図示する。
【0053】
いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、固形プラスチック材料を機械加工することによって、または、たとえば、ステレオリソグラフィ(SLA)等の急速プロトタイピング方法によって、製造されてもよい。低コストで大量製造するためには、射出成形が好適な方法である。いくつかの実施形態では、流れ分布システム設計は、通常、射出成形につながるものであってもよい。製造を促進する選択設計パラメータには、垂直流路の幅に対する長さ、および、流路間の材料の厚さが含まれる。いくつかの非限定的な実施形態では、歯の特徴は、高さ約30mm、長さ約5mm、および幅約2mmであってもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、リブは、高さ約30mm、長さ約27mm、および幅約2mmであってもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、ランプは、高さ約4mm〜7mm、長さ約11mm〜約21mm、および幅約3mm〜約7mmであってもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、溝は、幅約1mm〜約5mmであってもよい。いくつかの実施形態では、流れ分布システムは、比較的低コストで、高寸法精度に製造することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、通路を画定するバッフルの厚さは、流れ分布システムの総質量を低減し、溶融プラスチックが型穴に射出された後に全体にわたって均一且つ急速な冷却を確実に行うために、均一にできるだけ薄い。射出成形用語では、この設計ステップを、材料コストおよびサイクル時間を低減するために部品を「コアリングアウト」(coring out)すると言う。「コアリング」ステップは、停滞流体で充填されて生体成長を引き起こしうるような、内部ボイド空間を生じてはならない。
【0055】
1つ以上の実施形態によれば、流れ分布システムは、共に組み立てられるように構成される別々の成形部品から形成されてもよい。製造方法に依って、内部ボイド容量を封止する必要があるかもしれない。流路内にない内部空間は、流体が空間内へ漏れて停滞流体が蓄積するのを防ぐために、封止する必要がある。いくつかの好適な実施形態では、通常、全内部空間を通る流れがある。
【0056】
部品を接合するために考えられる方法には、接着および超音波溶接がある。いくつかの好適な実施形態では、部品は、たとえばスナッピングまたは密着嵌合により、接着または溶接の必要なしに結合するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、組立時に、隣接する部品の相互作用または接合により、迷路フローパターンを形成してもよい。各部品におけるスロットは、スロットを形成するために金型で必要なブレードが成形プロセス中のストレスに十分耐えうる強さを有するように、十分低い長さ対幅比率を有する。
【0057】
1つ以上の実施形態によれば、流れ分布システムは、電気化学分離装置のセルスタックに近接配置されるように構成される第1の側面を有してもよい。ここで、流れ分布システムは、第1の側面に複数のポートを有し、さらに、第1の側面と反対側に位置する第2の側面を有してもよい。流れ分布システムは、第2の側面に複数のポートを有する。第1の側面のポートは、セルスタックの流入口および/または流出口と流体接続していてもよい。第2の側面のポートは、処理対象の水の源の流出口、または、使用点または下流ユニット動作点の流入口と、流体接続していてもよい。
【0058】
1つ以上の実施形態によれば、流れ分布システムは、必要な機械的特性と、電気化学分離による脱イオン化の対象である流体との化学的適合性と、を持つ材料から製造される。都市水道水、井戸水、汽水または海水の脱塩等の用途では、その耐腐食性および低コストから、プラスチック材料が有利である。有望なプラスチックとして、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PAまたはナイロン)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリスルホン、または、ポリフェニレンオキシド(PPO)とポリスチレン(PS)との混合であるノリル等のプラスチック混合物がある。耐化学性および機械的・熱的特性向上のために、ガラス繊維等の補強材を添加してもよい。
【0059】
1つ以上の実施形態によれば、フレームは、配列を維持するために、セル対のスタックの側面をしっかりと支持してもよい。ポートは、流入口および流出口マニホルドを、流れ区画室に接続してもよい。こうすることで、流れ区画室の幅にわたって均一流れ分布を助長し、区画室からマニホルドへ流れが漏れることを抑制しうる。スタックの端部における膜は、Oリング、ポッティング、または他のメカニズムで、フレームに固定および封止されてもよい。膜はまた、溶接部または一連の溶接部、たとえば、熱可塑性接着により生成された封止で、固定されてもよい。フレームは、多数の部分から組み立てられてもよく、または、1つの部品として成形されるように一体型であってもよい。端部ブロックの隣のモジュール式ユニットは、膜によって電極区画室から分離されていてもよく、また、Oリングまたは接着剤で封止されていてもよい。モジュール式ユニットフレーム、またはモジュール式ユニットフレームのマニホルドシステムは、概して、1つ以上の希釈ポートと1つ以上の濃縮ポートとを含んでもよい。ポートは、フレームに埋め込まれるか、または、流れ分布システムインサート上にあってもよい。モジュール式ユニットフレームは、マニホルディングと、フレームによって取り外し可能に収容することができる1つ以上のインサートまたは流れ分布システムとを含んでもよい。モジュール式ユニットマニホルドは、より大きな全体システムマニホルディングに流体接続してもよい。マニホルドは、流れ分布システムインサートを少なくとも部分的に収容するようなサイズおよび形状の1つ以上のくぼみを含んでもよい。
【0060】
1つ以上の特定の非限定的な実施形態によれば、モジュール式ユニットを形成するために、セル対のスタックは、単一構造のフレームに4側面で封入されてもよい。フレーム部分におけるマニホルドの組が、供給材料を、通路およびチャネルのアレイを介して、希釈室の流入口へ供給する。希釈室の流出口では、生産水が、第2の通路およびチャネルのアレイを通過して、第2のマニホルドの組に入る。他の部分は、濃縮室用の通路およびチャネルを備える同一のマニホルド配置を含んでもよい。希釈室および濃縮室への流入口および流出口は、スタックおよびフレームのコーナー間の封止によって、互いに分離されていてもよい。封止は、接着剤、熱接合、またはそれらの組み合わせ等の、種々の技術によって実現される。
【0061】
流入口および流出口マニホルドを流れ区画室へと接続する通路およびチャネルは、適切に設計された場合、各希釈室の流入口にわたって流れを均一に分布するものである。通路およびチャネルを、個々の区画室の流入口と並べる必要はない。
【0062】
いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、セル対のスタックの全側面をフレームによって支持してもよい。フレームは、スタックにおけるセル対の数を収容するのに必要な深さであってもよい。フレームは、希釈および濃縮流用の流入口および流出口マニホルドをスタックにおけるそれぞれの流れ区画室へ接続するポートを有してもよい。そのような設計から期待される効果としては、スタックの流入口および流出口での開口領域がなくなることによる流れバイパスの低減がある。セル対のスタックは、フレームのコーナーでポッティングされて、クロスリーク、脱塩性能、および圧力低下を検査することができるモジュール式サブブロックを形成することができる。多数のブロックをスタックして、モジュール式ユニットを形成してもよい。遮断膜を、ブロック間に挿入して、希釈および/または濃縮流を多数パス流れ構成内へと向けてもよい。マニホルドは、インサートを収容するくぼみと、マニホルディング用のポートとを有してもよい。スタックがマニホルドにポッティングされる前に、インサートを設置してもよい。
【0063】
いくつかの非限定的な実施形態では、単一パス流れ構成における希釈室および濃縮室を有するセル対のスタックは、部分において封止されてモジュール式ユニットを形成してもよい。ユニットは、遮断スペーサを間に介して接合されて、多数パス構成を形成してもよい。スタックは、コーナーにおいて接着剤を用いてハウジング部分に封止されてもよい。遮断スペーサは、ハウジングの内壁に封止される必要はなく、代わりに、モジュール式ユニット間に挟まれて、端部間で封止される。いくつかの非限定的な実施形態では、端部にフランジを有する2つのモジュール式ユニットは、遮断スペーサを間に介してスタックされてもよい。フランジは、共にボルト締めされてもよい。遮断スペーサは、フレームと共に成形されて、接着剤またはガスケットでフランジ間に封止されてもよい。あるいは、フレームは、熱可塑性材料または他の製造方法で成形されてもよい。いくつかの実施形態では、モジュール式ユニットは、クランプまたはタイバーで接続されてもよい。それに応じて、遮断スペーサの設計を変更してもよい。
【0064】
これらの実施形態および他の実施形態の機能および利点は、以下の実施例からより深く理解されるであろう。実施例は本質的に例示を意図するものであり、本明細書に記載の実施形態の範囲を限定するものとは解釈されない。
【実施例】
【0065】
実施例1:セルスタック中央平面における流れ分布システム形状の影響
形状変化の影響を調査するために、流体を、種々の流れ分布システム構成を備える流入口マニホルドからセルスタックへ供給した。その結果、多数の代表速度プロットが生成された。セルスタックの中心平面を通じて垂直に取った速度流線を用いて、乱流を比較した。バルク速度を、対応する複数平面ヒートマップに示した。これらのプロットは、二次元高度を速度と関連付ける。
【0066】
まず、速度流線およびバルク速度を、流体流れ分布システムを有しない流入口マニホルドのベース形状で確認した。
図10は、ベース形状を持つマニホルドに対応付けられたセルスタックのy軸に沿う流れ方向を図示する。速度を、流入口速度ラインカット1101および外挿中央平面速度ラインカット1102で、測定した(
図11)。流体を、100cm/sの流量で、流入口マニホルド1220へ供給した。z平面における高速度乱流1201がポートを通過して流入口マニホルド内に入ると、底面でy平面における方向の突然の変化に遭い、遷移流1202となった。これによって、
図12に示すように、膜スタックにおける層流1204への遷移前の定常渦1203が起きた。流体は、マニホルド内で有効に再循環されず、セルスタックの構成要素へ均一に分布されなかった。
【0067】
図13に示すように、セルスタック1301における流体速度を、3つの別々の平面、すなわち、上平面(1302)、中心平面(1303)、および底平面(1304)における外挿中央平面ラインカット1102で測定した。
【0068】
図14〜18は、特定の流れ分布システム構造に対応付けられた外挿中央平面1102速度プロファイルを表す。
図14において、速度プロファイルは、流れ分布システムのないマニホルドを有する装置において上、中心、および底面にわたって不均等速度分布を示す。セルスタック面での流れ分布の変動の結果、x軸およびz軸速度プロファイルが不均等となった。底部流れは、上平面での流れ速度よりも高く、上平面での流れ速度は、中心平面での流れ速度よりも高かった。
【0069】
x軸に沿う不均一流れ分布に対処するために、流れ方向転換システムのいくつかのバリエーション、具体的には、リブ430のみ(
図3)、歯540のみ(
図5)、およびリブ430と歯540(
図6)、を組み入れた。リブ430のみの追加は、x軸に沿う流れの再分配にほとんど貢献しなかった。流れ分布システムへの歯540のみの追加は、リブ430のみの追加に比べて、多大な効果があった。マニホルドの流体流れ分布システムにおいて2種類のバッフル、すなわちリブ430および歯540、を組み合わせると、膜面に沿うより密な定常渦と共に、x軸に沿うより均一な流れ分布が得られたが、底平面での速度は、上平面での速度よりも高いままであり、上平面での速度は、中心平面での速度よりも高いままであった。どちらの種類のバッフルも、中心および上平面に比べて、底断面での上昇速度に大きく影響しなかった。
【0070】
中心および上平面に比べて底平面で非常に高い速度が観測されたことから、垂直流れ方向転換の必要性が示唆された。
図7に示すように、ランプ特徴750を、マニホルド流入口ポートに対向する底面に組み入れた。ランプ750は、底平面でのスタック速度を下げつつ、最高速度流線の射出点を上げて、中心および上平面にわたって速度を上昇させた(
図16)。ランプがセルスタックの底平面からセルスタックの上平面へと流れを方向転換させた結果、底平面への流れが不足したと考えられる。
【0071】
全3つの平面にわたって正規化速度を助長するために、溝860を底部ランプ750(ランプ1)に組み込んで、流れの通過を可能にした。
図17に示すように、上平面での速度は、底および中心平面での速度よりも高く、底および中心平面での速度は、ほぼ等しかった。溝によって、流体が、ランプによる方向転換なしに、底平面を流れることができたと考えられる。しかし、上平面での流れは、底および中心平面での流れよりも高かった。
【0072】
これに対処するために、
図18に示すように、補助ランプ970(ランプ2)および溝980を、上部マニホルド面に組み込んだ。本実施形態では、x軸およびz軸双方での速度分布の向上と共に、マニホルド内の定常渦のより密な再循環が観測された。
【0073】
図19は、
図14〜18でプロットされたデータからアセンブルされた、各流れ分布システム構成のためのセルスタックの底、中心、および上部流れ平面それぞれでの平均平面流れ速度のチャートである。
【0074】
リブと、歯と、溝を有する上部および底部流体リフトとの組み合わせが、電気化学分離装置のセルスタックに出入りする流体流れ分布の正規化に最も有効であることが確認された。
【0075】
実施例2:セルスタック流入口における流れ分布システム形状の影響
形状変化の影響をさらに調査するために、実施例1と同一の実験設定で、セルスタックの流入口速度ラインカット1101での速度を測定した。
【0076】
まず、流体を、流れ分布システムを有しない流入口マニホルドへ供給した。
図20に示すように、上、中心、および底面での平均流れは不均一である。
図21において、流体を、システムの底面にリブ、歯、ランプ(ランプ1)、および溝を有する流れ分布システムを備える流入口マニホルドへ供給した。セルスタックの各平面の流入口での流体速度は、長さ125mmにわたって大きく変動した。
図21および22は、x軸として長さ35〜122mmを含むプロットである。これらの長さは、スタックの流入口アパーチャを指し、中央平面でのスタックの全幅よりも細い。流入口速度ラインカット1101に沿う速度プロファイルを、比較の基準として用いた。類似の結果を
図22に示す。
図22は、システムの上および底面にリブ、歯、ランプ(ランプ1および2)、および溝を備える流れ分布システムからの流れの流入口速度プロットである。
【0077】
各構成毎に、底、中心、および上平面での平均流れを算出した。各構成で、底平面での流入口流量は、中心および上平面の流入口流量よりも高かった。各構成で、上平面での流入口流量は、中心平面での流入口流量よりも高かった。システムの上および底面にリブ、歯、ランプ、および溝を構成する場合に、全3つの平面での流量は最も高かった。マニホルドが流れ分布システムを含まない場合に、全3つの平面での流量は最も低かった(
図23)。
【0078】
実施例3:ランプおよび溝の影響
ランプのみ、およびランプと溝のみの影響を調査するために、流体を、これらの特徴からなる流入口マニホルドからセルスタックへ供給した。実施例1および2と同一の実験設定で、セルスタックの中央平面ラインカット1102での流体速度を測定した。
【0079】
まず、流体は、マニホルドの底面の長さにわたる1つのランプ(ランプ1)からなる流入口マニホルドから流れた。
図24に示すように、セルスタックの上平面および中心平面での流体速度は、ほぼ等しく、セルスタックの底平面での速度よりも高かった。
【0080】
次に、流体は、マニホルドの底面の溝を画定するように間隔をおいて配置されたランプ(ランプ1)からなる流入口マニホルドから流れた。
図25に示すように、底平面での速度は、単一のランプのみを用いた場合よりも高く、中心平面での速度に近かった。中心平面での速度は、単一のランプを用いた場合よりも低下した。上平面での速度は、底および中心平面での速度よりも高く、単一のランプを用いた場合よりも低下した。
【0081】
ランプは、底平面から上および中心平面へと流体流れを方向転換するのに有効であり、溝は、流体が底平面へと流れるチャネルを提供するのに有効であることが確認された。
【0082】
実施例4:入力流量の影響
流入流量の変化の流れ分布システムの有効性に対する影響を調査するために、流体を、種々の流入流量を持つ流入口マニホルドからセルスタックへ供給した。その結果、多数の代表速度プロットが生成された。セルスタックの中心平面を通じて垂直に取った速度流線を用いて、乱流を比較した。全ての例において、流れ分布システムは、リブと、歯と、ランプと、溝とを備えた。
【0083】
乱流水を、約100cm/sの流量で、流れ分布システムを備える流入口マニホルドへ供給し、約8cm/sでセルスタックを通じて分布した。供給水は、流れ分布システム内で再循環されて、セルスタックへ均等に分布された。
【0084】
マニホルドへの供給流れが遷移流に近づくにつれて、流れ分布システムの効果の低下が観測された。セルスタックを通じて約10cm/sの供給流量および約0.8cm/sの速度で、マニホルド内の流れの再循環が、乱流供給流れと比べて低下し、セルスタックを通じた速度が低下した。さらに低減した約1cm/sの供給流量で、スタックを通じた速度は、約0.08cm/sであり、有効性のより大きな低下を示した。
【0085】
最後に、供給流れが層流であるとき、流れ分布システムは、有効でないことが観測された。0.1cm/sの供給流量を持つ流体は、マニホルドで再循環されず、約0.008cm/sの流量でセルスタックを通過した。
【0086】
データは、流れ分布システムが、4,000超のレイノルズ数を持つ乱流の分布により高い効果を有し、約2,300〜約4,000のレイノルズ数を持つ遷移流の分布により低い効果を有し、2,300未満のレイノルズ数を持つ層流の分布にはほとんど効果がないことを示している。
【0087】
本明細書中に記載の方法および装置の実施形態は、上述の記載および添付図面に示された構成要素の構成および配置の詳細への適用に限定されないことを理解されたい。該方法および装置は、他の実施形態で実施可能であり、種々のやり方で実行または実施可能である。特定の実施形態の実施例が、本明細書中で例示を目的として提供されているが、限定を意図したものではない。特に、1つ以上のいずれかの実施形態に関連して説明された作用、要素および特徴も、任意の他の実施形態における同様の役割を排除することを意図されない。
【0088】
また、本明細書中で用いられる表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定と見なされるべきではない。本明細書のシステムおよび方法の実施形態、構成要素、または作用に対して単数形でなされた言及はすべて、これら要素が複数の場合の実施形態を容認し、また、本明細書のあらゆる実施形態、構成要素、または作用に対する複数形での言及もすべて、単数のみの要素を含む実施形態を容認しうる。「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」、「包含する」、およびそのバリエーションの本明細書中での使用は、その後に示される項目およびその等価物ならびに付加的な項目を含むことを意図する。「または」の記載は択一的なものでは無く、「または」を用いて示された任意の語も1つ、複数、およびすべての記載された語を示しうる。前後、左右、上下、頂部底部、および、水平垂直の任意の記載も説明の便宜を意図したものであり、本発明のシステムおよび方法またはその構成要素をいずれか1つの位置的または空間的配向に限定するものではない。
【0089】
少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様について上記で説明したが、種々の変更、修正、および改良も当業者にとって容易になし得ることは理解されたい。かかる変更、修正、および改良は本発明の一部であると意図され、本発明の範囲内にあると意図される。したがって、上記記載および図面は、例示的なものにすぎない。