特許第6830907号(P6830907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6830907マクロライド系免疫抑制剤の高分子誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830907
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】マクロライド系免疫抑制剤の高分子誘導体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/62 20170101AFI20210208BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20210208BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20210208BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210208BHJP
   C07H 15/04 20060101ALI20210208BHJP
   C08G 69/08 20060101ALI20210208BHJP
   C08G 65/04 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   A61K47/62
   A61K31/436
   A61P37/06
   A61P29/00
   C07H15/04 B
   C08G69/08
   C08G65/04
【請求項の数】13
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-560083(P2017-560083)
(86)(22)【出願日】2016年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2016087774
(87)【国際公開番号】WO2017119272
(87)【国際公開日】20170713
【審査請求日】2019年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2016-2678(P2016-2678)
(32)【優先日】2016年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米木 菜緒
(72)【発明者】
【氏名】関口 聡裕
(72)【発明者】
【氏名】水沼 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐喜
(72)【発明者】
【氏名】今野 純平
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 啓一朗
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/079861(WO,A2)
【文献】 特表2000−502109(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/131675(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/111211(WO,A1)
【文献】 国際公開第1999/003860(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/041610(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/120914(WO,A1)
【文献】 CHUNG, Y. et al,Preparation of highly water soluble tacrolimus derivatives: poly(ethylene glycol) esters as potentia,Arch. Pharm. Res.,2004年,Vol.27, No.8,pp.878-883
【文献】 CHOI, D. et al,Effects of water-soluble tacrolimus-PEG conjugate on insulin-dependent diabetes mellitus and systemi,Arch. Pharm. Res.,2011年,Vol.34, No.8,pp.1301-1310
【文献】 Preparation of Highly Water Soluble Tacrolimus Derivatives: Poly(Ethylene Glycol) Esters as Potentia,Arch Pharm Res,2004年,Vol.27,No.8,pp.878-883
【文献】 Effects of Water-soluble Tacrolimus-PEG Conjugate on Insulin-dependent Diabetes Mellitus and Systemi,Arch Pharm Res,2011年,Vol.34,No.8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 29/00
A61P 37/00
C07H 15/00−15/26
C08G 65/00−65/48
C08G 69/00−69/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に、ポリエチレングリコールセグメント及びタクロリムスのアルコール性水酸基が結合しているタクロリムスの高分子誘導体であって、
下記一般式(1)で表される、タクロリムスの高分子誘導体。
【化1】
[式中、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される基であり、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基であり、Rはタクロリムスのアルコール性水酸基の残基であり、Rはポリエチレングリコールセグメントであり、Rは−N(R)CONH(R)であり(R、Rは同一でも異なっていてもよい、炭素数(C3〜C6)の環状アルキル基又は三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C5)のアルキル基である)、Xは結合又は結合基であり、a及びbは各々1〜299の整数であり、c、d及びeは各々0又は298以下の整数であり、且つa+b+c+d+eは2〜300の整数であり、ポリアスパラギン酸誘導体の各繰り返し単位の配列順は任意である。]
【請求項2】
ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に、ポリエチレングリコールセグメント及びタクロリムスのアルコール性水酸基が結合しているタクロリムスの高分子誘導体であって、
下記一般式(2)で表される、タクロリムスの高分子誘導体。
【化2】
[式中、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される基であり、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基であり、Rはタクロリムスのアルコール性水酸基の残基であり、Rはポリエチレングリコールセグメントであり、Rは−N(R)CONH(R)であり(R、Rは同一でも異なっていてもよい、炭素数(C3〜C6)の環状アルキル基又は三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C5)のアルキル基である)、Xは結合又は結合基であり、f、g、h及びiは各々0又は299以下の整数であり、f+g及びh+iは各々1〜299以下の整数であり、j、k、l、m及びnは各々0又は298以下の整数であり、且つf+g+h+i+j+k+l+m+nは2〜300の整数であり、ポリアスパラギン酸誘導体の各繰り返し単位の配列順は任意である。]
【請求項3】
が結合である請求項又は請求項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【請求項4】
がアスパラギン酸誘導体である請求項又は請求項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【請求項5】
が、下記一般式(3)又は一般式(4)である請求項又は請求項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【化3】
[式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数(C1〜C8)のアルキル基であり、R10はアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアラルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミノ基及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基からなる群から選択される1種以上の基であり、並びにCY−CZはCH−CH若しくはC=C(二重結合)である。]
【請求項6】
、Rが共に水素原子であり、及びCY−CZがCH−CHである請求項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【請求項7】
のポリエチレングリコールセグメントが、下記一般式(5)である請求項乃至の何れかの一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【化4】
[式中、R11は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、R12は炭素数(C2〜C6)のアルキレン基であり、Xは前記ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に対して、結合可能な官能基であり、及びoは5〜11500の整数である。]
【請求項8】
が炭素数(C1〜C6)のアルキル基又は下記一般式(6)で表されるポリエチレングルコールセグメントである請求項乃至の何れかの一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【化5】
[式中、R13は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、R14は炭素数(C2〜C6)のアルキレン基であり、及びpは5〜11500の整数である。]
【請求項9】
が炭素数(C1〜C6)のアシル基であり、oが10〜3000の整数であり、及び(a+b+c+d+e)又は(f+g+h+i+j+k+l+m+n)が4〜250の整数である請求項又はに記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【請求項10】
が炭素数(C1〜C3)のアシル基であり、oが20〜1500の整数であり、及び(a+b+c+d+e)又は(f+g+h+i+j+k+l+m+n)が8〜200の整数である請求項又はに記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【請求項11】
がメチル基であり、及びRがアセチル基である請求項乃至10の何れか一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【請求項12】
ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に、タクロリムスのアルコール性水酸基及びポリエチレングリコールセグメントを、有機溶媒中、脱水縮合剤を用いてエステル結合、アミド結合及び/又はチオエステル結合させることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体を有効成分とするマクロライド系免疫抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマクロライド系化合物の高分子誘導体、その製造方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において使用されるマクロライド系化合物は、FKBP型イムノフィリンに対する親和性を有し、かつペプチジル−プロリルイソメラーゼ及び/またはロタマーゼ酵素活性を阻害するという共通の活性を有する。マクロライド系化合物の例としては、ラパマイシン、タクロリムス(FK506)、アスコマイシンなどを含むトリシクロ化合物がある。
【0003】
マクロライド系化合物または医薬として許容されるその塩は、優れた免疫抑制作用、抗菌活性、およびその他の薬理活性を有し、その為、臓器あるいは組織の移植に対する拒絶反応、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、および感染症等の治療および予防に有用であることが、例えば、特許文献1等に記載されている。
【0004】
タクロリムスは臓器移植後の拒絶反応抑制、骨髄移植後の移植片対宿主病、難治性の活動期潰瘍性大腸炎などの治療に汎用されている。しかしながら、タクロリムスは水に難溶(2.4〜3.6μM、室温)であり、経口投与時のバイオアベイラビリティーが低い。また、タクロリムスの治療域は狭く、体内動態の個体間・個体内変動が大きいため、血中濃度のコントロールが困難な薬物である。タクロリムスの体内動態変動因子として、水への低い溶解度や、消化管粘膜でのP−糖タンパク質や薬物代謝酵素CYP3Aの発現量及び遺伝子型の個体差などが知られている(非特許文献1、2)。
【0005】
タクロリムスの主な副作用の一つに腎毒性および膵臓毒性がある。腎毒性は、腎細動脈の血管収縮作用により血流量および糸球体濾過量低下が起こり、さらに尿細管細胞への栄養補給が滞ることが原因である。膵臓毒性は主に膵β細胞のインシュリンmRNA転写阻害に基づく膵β細胞からのインシュリン産生抑制による耐糖能異常発症である。これらの毒性は、タクロリムスの血漿中濃度に依存して発現する。
【0006】
タクロリムスの中枢神経系の副作用として、ヒトでは可逆性後白質脳症症候群・高血圧性脳症等が報告されている(市販後調査を含め0.1〜0.5%未満)。また、ラットへのタクロリムスの静脈内投与が、軽度の呼吸促迫、自発運動低下、腹臥位、常同行動等を誘発することが認められている。(非特許文献3)
【0007】
ポリマーと薬剤が結合することにより、薬剤の水溶性が向上したり、生体内における薬物動態が改善し、その結果として薬効の増強、副作用の軽減、薬効の持続性などの実用上優れた効果が得られることが知られている。ポリマーと薬剤の結合様式は、ポリマーと薬剤が共有結合する場合とポリマーと薬剤とが物理的に吸着する場合とがある。ポリマーと共有結合した薬剤は、体内において加水分解反応などによりポリマーから放出される。一方、ポリマーに物理的に吸着した薬剤は、加水分解反応のような化学反応に因らず、体内においてポリマーから薬剤が徐々に放出する。いずれもポリマーからの薬剤の放出に酵素は関与しないが、ポリマーと薬剤の結合様式の違いは、薬剤の放出機構に違いをもたらすと考えられる。
【0008】
特許文献2及び特許文献3には、ポリエチレングリコール類及びポリアスパラギン酸からなる共重合体と薬剤から得られる高分子誘導体が記載されている。特許文献2及び特許文献3に記載の該高分子誘導体は、共重合体と薬剤が物理的に吸着している。該高分子誘導体の徐放性は共重合体から徐々に薬剤が解離することに起因し、患部に選択的に薬効を示すとともに副作用が少ない。
【0009】
特許文献4には、タクロリムスをalkyl substituted polylactide (MPEG−hexPLA)からなるポリマーに物理的に吸着させた化合物を得る方法が開示されている。しかしながら、血中濃度あるいはタクロリムスが患部へ特異的に移行することに関して記載はない。
【0010】
非特許文献4には、PEGポリマーにタクロリムスを化学的に結合させて合成したPEG化タクロリムスについて報告がある。しかしながら、PEG化タクロリムスはアジュバント関節炎マウス及びループス腎炎マウスなどの炎症疾患モデル動物に対し、タクロリムス以上の効果が得られていない。
【0011】
非特許文献5には、Poly (ethylene glycol) esters−Poly caprolactone(PEG−PCL)ポリマーにタクロリムスを物理的に吸着させて合成されたミセルについての報告がある。PEG−PCLタクロリムスミセルはDSS誘発潰瘍性大腸炎マウスに対し、タクロリムスと比較して体重減少の抑制、大腸の短縮化抑制及び大腸の出血や陰窩細胞の消失などの炎症改善効果が高いことが明らかにされている。しかしながら、PEG−PCLタクロリムスミセルが炎症改善効果を示すためには、1日1回12日間連続で投与していることから、この化合物では血中濃度を長く維持することができないと考えられる。
【0012】
非特許文献6及び7には、Poly caprolactone−b−poly(ethylene oxide)(PCL−b−PEO)から成るポリマーにタクロリムスを物理的に吸着させて合成したミセルについての報告がある。PCL−b−PEOタクロリムスミセルは、タクロリムスと比較して細胞内に徐々に取り込まれることが記載されている。また、PCL−b−PEOタクロリムスミセルは5mg/kgを6日間隔で3回尾静脈内投与することにより、坐骨神経損傷モデルラットの自発運動性を改善することが示されている。しかしながら、PCL−b−PEOタクロリムスミセルから遊離したタクロリムスは脳に高く集積することから、PCL−b−PEOタクロリムスミセルは免疫抑制剤としての機能よりも、神経保護剤としての機能に特化していると考えられる。
【0013】
非特許文献8には、poly(lactic−co−glycolic acid)(PLGA)またはpH感受性Eudragit P−4135Fから成るポリマーにタクロリムスを物理的に吸着させて合成したナノパーティクルについての報告がある。該ナノパーティクルはコラーゲン誘発関節炎及びDSS誘発大腸炎マウスに対し、タクロリムスよりも高い炎症改善効果を示している。しかしながら、該ナノパーティクルが炎症改善効果を示すためには、1日1回12日間連続で投与していることから、この化合物では血中濃度を長く維持することができないと考えられる。さらに、腎障害の指標であるBUN、血清クレアチニン、クレアチニンクリアランスに対する改善作用も十分ではなかった。
【0014】
現在までに、患部への高い集積性を示し、タクロリムスに比べて有効性と安全性が顕著に向上し、個人差なく血中濃度が一定に維持されることによって、血中動態(血中トラフ濃度)による投与量のコントロールが不要となる製剤は未だなく、その開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開93/005059号
【特許文献2】国際公開2003/000771号
【特許文献3】国際公開2004/082718号
【特許文献4】国際公開2013/157664号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Transplantation 1999、67、p.333−335
【非特許文献2】Pharm.Res.1998、15、p.1609−1613
【非特許文献3】藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)プログラフカプセル(0.5mg、1mg、5mg)プログラフ注射液(5mg)に関する資料 53頁 平成13年6月部会審議 承認申請資料概要
【非特許文献4】Arch.Pharm.Res.2011、34、1301−1310
【非特許文献5】J.Biomed.Nanotechnol.2013、9、p.147−157
【非特許文献6】Drug.Deliv.2000、7、p.139−145
【非特許文献7】Biochim.Biophys.Acta.1999、1421、p.32−38
【非特許文献8】Int.J.Pharm.2006、316、p.138−143
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、薬剤を炎症部位に集積させ低投与量でより高い効果を有し、また目標血中濃度で維持させることにより長い投与間隔及び毒性を軽減する新規な免疫抑剤又は抗炎症剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者はポリアミノ酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に、ポリエチレングリコールセグメント及びタクロリムスのアルコール性水酸基が結合しているタクロリムスの高分子誘導体が本発明の課題を解決することを見出した。
【0019】
本発明は以下の[1]〜[14]に関する。
[1]ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に、ポリエチレングリコールセグメント及びタクロリムスのアルコール性水酸基が結合しているタクロリムスの高分子誘導体。
[2]下記一般式(1)で表される前記[1]に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【0020】
【化1】
【0021】
[式中、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される基であり、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基であり、Rはタクロリムスのアルコール性水酸基の残基であり、Rはポリエチレングリコールセグメントであり、Rは−N(R)CONH(R)であり(R、Rは同一でも異なっていてもよい、炭素数(C3〜C6)の環状アルキル基又は三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C5)のアルキル基である)、Xは結合又は結合基であり、a及びbは各々1〜299の整数であり、c、d及びeは各々0又は298以下の整数であり、且つa+b+c+d+eは2〜300の整数であり、ポリアスパラギン酸誘導体の各繰り返し単位の配列順は任意である。]
[3]下記一般式(2)で表される前記[1]に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【0022】
【化2】
【0023】
[式中、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される基であり、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基であり、Rはタクロリムスのアルコール性水酸基の残基であり、Rはポリエチレングリコールセグメントであり、Rは−N(R)CONH(R)であり(R、Rは同一でも異なっていてもよい、炭素数(C3〜C6)の環状アルキル基又は三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C5)のアルキル基である)、Xは結合又は結合基であり、f、g、h及びiは各々0又は299以下の整数であり、f+g及びh+iは各々1〜299の整数であり、j、k、l、m及びnは各々0又は298以下の整数であり、且つf+g+h+i+j+k+l+m+nは2〜300の整数であり、ポリアスパラギン酸誘導体の各繰り返し単位の配列順は任意である。]
[4]Xが結合である前記[2]又は[3]に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
[5]Xがアスパラギン酸誘導体である前記[2]又は[3]に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
[6]Xが、下記一般式(3)又は一般式(4)である前記[2]又は[3]に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【0024】
【化3】
【0025】
[式中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数(C1〜C8)のアルキル基であり、R10はアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアラルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミノ基及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基からなる群から選択される1種以上の基であり、並びにCY−CZはCH−CH若しくはC=C(二重結合)である。]
[7]R、Rが共に水素原子であり、及びCY−CZがCH−CHである前記[6]に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
[8]Rのポリエチレングリコールセグメントが、下記一般式(5)である前記[2]乃至[7]の何れかの一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【0026】
【化4】
【0027】
[式中、R11は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、R12は炭素数(C2〜C6)のアルキレン基であり、Xは前記ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に対して結合可能な官能基であり、及びoは5〜11500の整数である。]
[9]Rが炭素数(C1〜C6)のアルキル基又は下記一般式(6)で表されるポリエチレングルコールセグメントである前記[2]乃至[8]の何れかの一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
【0028】
【化5】
【0029】
[式中、R13は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、R14は炭素数(C2〜C6)のアルキレン基であり、及びpは5〜11500の整数である。]
[10]Rが炭素数(C1〜C6)のアシル基であり、oが10〜3000の整数であり、及び(a+b+c+d+e)又は(f+g+h+i+j+k+l+m+n)が4〜250の整数である前記[8]又は[9]に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
[11]Rが炭素数(C1〜C3)のアシル基であり、oが20〜1500の整数であり、及び(a+b+c+d+e)又は(f+g+h+i+j+k+l+m+n)が8〜200の整数である前記[8]又は[9]に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
[12]Rがメチル基であり、及びRがアセチル基である前記[2]乃至[11]の何れか一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体。
[13]ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に、タクロリムスのアルコール性水酸基及びポリエチレングリコールセグメントを、有機溶媒中、脱水縮合剤を用いて結合させることを特徴とする前記[1]乃至[12]の何れか一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体の製造方法。
[14]前記[1]乃至[12]の何れか一項に記載のタクロリムスの高分子誘導体を有効成分とするマクロライド系免疫抑制剤。
【発明の効果】
【0030】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体は、ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に直接又は結合基を介して、ポリエチレングリコールセグメント及びタクロリムスのアルコール性水酸基が結合していることを特徴とする。この高分子誘導体は生体内において安定であり、酵素非依存的にタクロリムスを徐放することができ、優れた血中滞留性を示すことで、低投与量で治療効果に優れている。また、酵素に依存しない生理活性物質の放出及び血中濃度の維持が可能であることによって、血中動態(血中トラフ濃度)による投与量のコントロールが不要となり、安全性が顕著に向上することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】試験例1における、実施例1及び比較例1の全タクロリムス量に対する放出されたタクロリムス量の割合を示す。
図2】試験例1における、実施例1、2、5、6及び8の全タクロリムス量に対する放出されたタクロリムス量の割合を示す。
図3】試験例1における、実施例3、4、7及び9の全タクロリムス量に対する放出されたタクロリムス量の割合を示す。
図4】試験例2における、実施例1、2、8及び比較例1及びタクロリムスのラット血中濃度推移を示す。
図5】試験例3における、実施例3、7及び9のラット血中濃度推移を示す。
図6】試験例4における、比較例1のラットコラーゲン関節炎に対する抗炎症効果を示す。
図7】試験例4における、実施例1のラットコラーゲン関節炎に対する抗炎症効果を示す。
図8】試験例4における、実施例2及び8のラットコラーゲン関節炎に対する抗炎症効果を示す。
図9】試験例4における、実施例3、7及び9のラットコラーゲン関節炎に対する抗炎症効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体はポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に直接又は結合基を介して、ポリエチレングリコールセグメント及びタクロリムスのアルコール性水酸基が結合していることを特徴とする。以下に、その詳細について説明する。
【0033】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体は、複数単位のポリアスパラギン酸誘導体をポリマー主鎖構造とする高分子化合物である。すなわち、複数の側鎖カルボキシ基を有するポリアスパラギン酸誘導体を高分子担体の主鎖構造とし、該側鎖カルボキシ基が、ポリエチレングリコールセグメント及びマクロライド系免疫抑制剤により化学的に官能基化された高分子化誘導体である。
【0034】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体において用いられる側鎖カルボキシ基を有するポリアスパラギン酸誘導体は、α−アミド結合型重合体であっても、側鎖カルボキシ基とのアミド結合型重合体であっても、β−アミド結合型重合体であっても、その混合物であってもよく、好ましくはα−アミド結合型重合体、α−アミド結合型重合体及びβ−アミド結合型重合体の混合物である。本発明のタクロリムスの高分子誘導体は、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される構造を有する。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
上記一般式(1)及び(2)中、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される基であり、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基であり、Rはタクロリムスのアルコール性水酸基の残基であり、Rはポリエチレングリコールセグメントであり、Rは−N(R)CONH(R)であり(R、Rは同一でも異なっていてもよい、炭素数(C3〜C6)の環状アルキル基又は三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C5)のアルキル基である)、Xは結合又は結合基である。
【0038】
上記一般式(1)中、a、b、c、d、及びeはいずれも平均値である。a及びbは各々1〜299の整数である。且つc、d及びeは各々0又は298以下の整数であり、a+b+c+d+eは2〜300の整数である。
【0039】
上記一般式(2)中、f、g、h、i、j、k、l、m及びnはいずれも平均値である。f、g、h及びiは各々0又は299以下の整数である。且つf+g及びh+iは各々1〜299の整数であり、且つj、k、l、m及びnは各々0または298以下の整数であり、f+g+h+i+j+k+l+m+nは2〜300の整数である。
【0040】
なお、各繰り返し単位の配列順は特に限定されるものではなく、ランダムに配置されていてよく、一般式(1)及び一般式(2)に記載のものに限られない。
【0041】
前記ポリアスパラギン酸誘導体の末端基は、N末端基(一般式(1)及び一般式(2)のR)及びC末端基(一般式(1)及び一般式(2)のR)共に特に限定されるものではなく、無保護の遊離アミノ基及び遊離カルボン酸、並びにそれらの塩であっても良く、N末端基及びC末端基の適当な修飾体であっても良い。
【0042】
該ポリアスパラギン酸誘導体のN末端基の修飾体としては、アシルアミド型修飾体、アルコキシカルボニルアミド型修飾体(ウレタン型修飾体)、アルキルアミノカルボニルアミド型修飾体(ウレア型修飾体)等を挙げることができる。一般式(1)及び一般式(2)におけるN末端基であるRの修飾体は、アシルアミド型修飾体、アルコキシカルボニルアミド型修飾体(ウレタン型修飾体)である。
【0043】
一方、該ポリアスパラギン酸誘導体のC末端基の修飾体としては、エステル型修飾体、アミド型修飾体、チオエステル型修飾体が挙げられる。一般式(1)及び一般式(2)におけるC末端基であるRの修飾体は、アミド型修飾体である。
【0044】
該ポリアスパラギン酸誘導体のN末端基及びC末端基の修飾基は、任意の修飾基であって良い。好ましくは、N末端基及びC末端基に結合する適当な結合基を介して、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基等である末端修飾基を挙げることができる。又は、水溶性を付与できるポリエチレングリコールセグメントであっても良く、N末端基及びC末端基に結合する適当な結合基を介して結合した末端修飾基であることが挙げられる。
【0045】
すなわち、N末端基は、適当なアシルアミド型修飾体又はアルコキシカルボニルアミド型修飾体(ウレタン型修飾体)であることが好ましく、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を介した、前記置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基であることが好ましい。
【0046】
一方、C末端基としては、適当なアミド型置換基又はエステル型置換基であることが好ましく、アミド基又はエステル基を介した、前記置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基又はポリエチレングリコールセグメントであることが好ましい。
【0047】
上記C末端基である、一般式(1)及び(2)のRのポリエチレングリコールセグメントは、エチレンオキシ基:(CHCHO)単位の繰り返し構造を有するセグメントである。好ましくはエチレンオキシ基単位の繰り返し数の平均値(重合度)が5〜11500のユニット、より好ましくは重合度が10〜3000のユニット、特に好ましくは重合度が20〜1500のユニットのポリエチレングリコール鎖を含むセグメント構造である。すなわち該ポリエチレングリコールセグメントとは、ポリエチレングリコール相当の平均分子量として200ダルトン〜500キロダルトンである。好ましくは分子量として500ダルトン〜150キロダルトンであり、さらに好ましくは分子量が1000ダルトン〜70キロダルトンである。特に、分子量が1000ダルトン〜50キロダルトンであることが好ましい。
【0048】
のポリエチレングリコールセグメントの構造例として、下記一般式(6)で表される構造が挙げられる。すなわち、エチレンオキシ基単位の酸素原子と、炭素数(C1〜C8)のアルキレン基がエーテル結合した構造であることが好ましい。
【0049】
【化8】
【0050】
一般式(6)のpは平均値であり、5〜11500程度の整数であるが、好ましくは10〜3000程度、特に好ましくは20〜1500程度である。
【0051】
のポリエチレングリコールセグメントの末端基(R13)は特に限定されるものではなく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C2〜C6)のアルキニル基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)アラルキル基等を挙げることができる。該アルキル基、アルキニル基、アラルキル基における置換基としては、水酸基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0052】
のポリエチレングリコールセグメントの末端基において、置換基を有してもよい直鎖状アルキル基とは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等を挙げることができる。置換基を有してもよい分岐鎖状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基等が挙げられる。置換基を有してもよい環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0053】
のポリエチレングリコールセグメントの末端基において、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が有しても良い置換基としては、チオール基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換又は無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はシリル基等を挙げることができる。
【0054】
のポリエチレングリコールセグメントの末端基において、置換基を有していても良い炭素数(C2〜C6)アルキニル基とは、例えば、2−プロピニル、3−ブチニル基、4−ヘプチニル基、5−ヘキシニル基等が挙げられる。
【0055】
のポリエチレングリコールセグメントの末端基において、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)アラルキル基とは、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖または分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。好ましくはベンジル基、4−フェニルブチル基、8−フェニルオクチル基である。
【0056】
のポリエチレングリコールセグメントにおける、ポリアスパラギン酸主鎖との結合側末端基(R14)は、該ポリアスパラギン酸誘導体への適当な結合基であれば特に限定されるものではない。好ましくは置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルキレン基である。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。一般式(6)のR14としてはトリメチレン基が好ましい。
【0057】
前記一般式(1)及び一般式(2)のRは、水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される置換基である。
【0058】
前記炭素数(C1〜C8)のアシル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数(C1〜C8)のアシル基である。例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、シクロプロピルカルボニル基、シクロペンタンカルボニル基等が挙げられる。
【0059】
前記炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基である。例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペントキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロプロポキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0060】
本発明において、前記一般式(1)及び一般式(2)のRであるタクロリムスのアルコール性水酸基の残基とは、ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に直接又は結合基を介して、タクロリムスのアルコール性水酸基がエステル結合をしたタクロリムスをいう。
【0061】
タクロリムスは、下記式(I)で表される。タクロリムスのアルコール性水酸基は、複数あるが、アルコール性水酸基であれば置換位置は限定されない。
【0062】
【化9】
【0063】
ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に直接又は結合基を介して結合したポリエチレングリコールセグメントは前記一般式(1)及び一般式(2)のRのポリエチレングリコールセグメントと同じく、エチレンオキシ基単位の繰り返し構造を有し、その重合度及び平均分子量もRのポリエチレングリコールセグメントと同じである。前記一般式(1)及び一般式(2)のRは、ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に直接又は結合基を介して、結合したポリエチレングリコールセグメントである。
【0064】
ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に直接又は結合基を介して結合したポリエチレングリコールセグメントは、ポリアスパラギン酸誘導体1分子に対し、1〜200ユニットが結合している。すなわち、当該タクロリムスの高分子誘導体は、複数ユニットのポリエチレングリコールセグメントを有する。好ましくは1〜150ユニットのポリエチレングリコールセグメントを有し、さらに好ましくは1〜100ユニットを有する。
【0065】
前記一般式(1)及び一般式(2)におけるRとしては、例えば下記一般式(5)で表される構造が挙げられる。
【0066】
【化10】
【0067】
一般式(5)中、R11は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C2〜C6)のアルキニル基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基からなる群から選択される基である。R12は炭素数(C2〜C6)のアルキレン基である。Xは前記ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に対して、それぞれ結合可能な官能基である。oは平均値であり、5〜11500の整数であり、好ましくは10〜3000であり、特に好ましくは20〜1500である.
【0068】
11は特に限定されるものではなく、水素原子、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C2〜C6)のアルキニル基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基等を挙げることができる。該アルキル基、アルキニル基、アラルキル基における置換基としては、水酸基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0069】
11において、置換基を有してもよい直鎖状アルキル基とは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等を挙げることができる。置換基を有してもよい分岐鎖状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基等が挙げられる。置換基を有してもよい環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0070】
のポリエチレングリコールセグメントの一方の末端基において、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が有していても良い置換基とは、チオール基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキルチオ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換又は無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はシリル基等を挙げることができる。
【0071】
のポリエチレングリコールセグメントの一方の末端基において、置換基を有していても良い炭素数(C2〜C6)アルキニル基とは、例えば、2−プロピニル基、3−ブチニル基、4−ヘプチニル基、5−ヘキシニル基等が挙げられる。
【0072】
のポリエチレングリコールセグメントの一方の末端基において、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基とは、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖または分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、3−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、6−フェニルへキシル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。好ましくはベンジル基、4−フェニルブチル基、8−フェニルオクチル基である。
【0073】
本発明において、R11は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基が好ましい。
【0074】
のポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基と結合する側の末端基(R12)は、前記ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に対して、それぞれ結合可能な官能基であれば、特に限定されるものではない。本発明においては炭素数(C2〜C6)のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、トリメチレン基、ブチレン基等が挙げられ、特にトリメチレン基が好ましい。
【0075】
一般式(5)のXは前記ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖のカルボキシ基に対して、結合可能な官能基であれば、特に限定されるものではないが、本発明においては−NH−、−O−又は−S−が好ましい。
【0076】
一般式(1)及び一般式(2)のRは−N(R)CONH(R)を取り得る。ここでR、Rは同一でも異なっていてもよい、炭素数(C3〜C6)の環状アルキル基又は三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C5)のアルキル基である。
【0077】
炭素数(C3〜C6)の環状アルキルとしては、例えば、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0078】
三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C5)のアルキル基としては、例えば、エチル基、イソプロピル基、3−ジメチルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0079】
三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C5)のアルキル基の三級アミノ基はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等である。
【0080】
本発明において、前記タクロリムスのアルコール性水酸基の残基、ポリエチレングリコールセグメント及び一般式(1)及び一般式(2)のRは、それぞれ一般式(1)及び一般式(2)のXを介してポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に結合している。前記一般式(1)及び一般式(2)におけるXは、前記R、R及びRと、ポリアスパラギン酸主鎖の側鎖カルボニル基とを結合する結合基であっても、又は単に結合であってもよく、Xが結合基である場合、R、R及びRの結合性官能基と、該ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基に対して、それぞれ結合可能な官能基を両末端に有するならば、特に限定されるものではない。
【0081】
が結合基である場合、R、R及びR側の末端結合性官能基としては、カルボキシ基、オキシカルボキシ基、アミノカルボキシ基が好ましい。R、R及びRが分子中にアミノ基、水酸基及び/又はチオール基を有することから、これらの結合性官能基は、該アミノ基、水酸基及び/又はチオール基とアミド結合、エステル結合、チオエステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合及びウレア結合する。
【0082】
のもう一方の、前記側鎖カルボキシ基側の末端結合性官能基としては、アミノ基、水酸基又はチオール基が好ましい。これらの結合性官能基は、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合、チオエステル結合できる。
【0083】
すなわちXは、一方の末端基がカルボキシ基、オキシカルボキシ基又はアミノカルボキシ基であり、もう一方の末端基がアミノ基、水酸基又はチオール基である置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルキレン基又はアルケニレン基であることが好ましい。
【0084】
が結合基である場合の具体例は下表に記載の物が挙げられるが、本発明の高分子誘導体の合成又は性能に影響を与えないものであればこれらに限られない。いずれのXも、側鎖カルボキシ基とはアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する。
【0085】
【表1】
【0086】
前記Xのアルキレン基は、水素原子が適当な置換基により修飾されていても良い。該置換基としては、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアルコキシ基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアルキルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルキルアリール基、炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基、炭素数(C1〜C8)のアルキルアミノ基、炭素数(C1〜C8)のアシルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニルアミノ基等を挙げることができる。
【0087】
としては−CO−(CH−NH−、−CO−(CH−O−が好ましい。特に好ましくは、R、R又はRとアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合することができるカルボキシ基を有すると共に、該側鎖カルボキシ基とアミド結合できるアミノ基を有する−CO−(CH−NH−である。
【0088】
中のyとして好ましくは1乃至6であり、さらに好ましくは1、2、3、又は5である。最も好ましいXとしては−CO−(CH−NH−(y=1、2、3、又は5)である。
【0089】
として挙げた置換基を有していても良い−CO−(CH−NH−において、yが1の場合はアミノ酸骨格と同義である。したがって、Xとして、アミノ酸誘導体を用いても良い。
【0090】
がアミノ酸誘導体の場合、アミノ酸のN末端のアミノ基が前記側鎖カルボキシ基とアミド結合し、C末端のカルボキシ基が該R、R又はRのアミノ基、水酸基又はチオール基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する。
【0091】
として用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。
【0092】
としてのアミノ酸誘導体はアスパラギン酸誘導体が好ましい。該アスパラギン酸誘導体としては、α−カルボキシ基が前記R、R又はRと結合し、β−カルボキシ基がアミド体であるアスパラギン酸誘導体である。または、β−カルボキシ基が前記R、R又はRと結合し、α−カルボキシ基がアミド体であるアスパラギン酸誘導体であっても良い。該R、R又はRの結合に関与しない、もう一方のカルボキシ基がアミド体である場合は、置換基を有していても良い炭素数(C1〜20)のアルキルアミド、置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミド、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルアミド又はカルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基等が挙げられる。
【0093】
該アスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C1〜20)のアルキルアミドとしては、例えば、メチルアミド、エチルアミド、イソプロピルアミド、t−ブチルアミド、シクロヘキシルアミド、ドデシルアミド、オクタデシルアミド等が挙げられる。
【0094】
該アスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミドとしては、例えば、フェニルアミド、4−メトキシフェニルアミド、4−ジメチルアミノフェニルアミド、4−ヒドロキシフェニルアミド等が挙げられる。該アスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルアミドとしては、例えば、ベンジルアミド、2−フェニルエチルアミド、4−フェニルブチルアミド、8−フェニルオクチルアミド等が挙げられる。該アスパラギン酸誘導体のカルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基としては、例えば、下記式(7−1)〜(7−4)で表されるグリシニル−メチルエステル基、グリシニル−エチルエステル基、グリシニル−プロピルエステル基、グリシニル−ベンジルエステル基、下記式(8−1)〜(8−4)で表されるアラニニル−メチルエステル基、アラニニル−エチルエステル基、アラニニル−プロピルエステル基、アラニニル−ベンジルエステル基、下記式(9−1)〜(9−4)で表されるバリニル−メチルエステル基、バリニル−エチルエステル基、バリニル−プロピルエステル基、バリニル−ベンジルエステル基、下記式(10−1)〜(10−4)で表されるロイシニル−メチルエステル基、ロイシニル−エチルエステル基、ロイシニル−プロピルエステル基、ロイシニル−ベンジルエステル基、下記式(11−1)〜(11−4)で表されるフェニルアラニニル−メチルエステル基、フェニルアラニニル−エチルエステル基、フェニルアラニニル−プロピルエステル基、フェニルアラニニル−ベンジルエステル基、等が挙げられる。
【0095】
【化11】
【0096】
前記Xは、下記一般式(3)又は一般式(4)で示されるアスパラギン酸誘導体又はマレイン酸誘導体もとり得る。
【0097】
【化12】
【0098】
ここで、一般式(3)及び一般式(4)中、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数(C1〜C8)のアルキル基である。R10はアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアラルキルアミノ基、置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミノ基、及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基からなる群から選択される1種以上の基である。CX−CYはCH−CH若しくはZ配置のC=C(二重結合)である。
【0099】
、Rにおける、炭素数(C1〜C8)のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数(C1〜C8)のアルキル基である。
直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基等を挙げることができる。
分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。
環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0100】
10において、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキルアミノ基とは、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、t−ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、n−オクチルアミノ基、ドデシルアミノ基、オクタデシルアミノ基が挙げられる。
置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアラルキルアミノ基としては、例えば、ベンジルアミノ基、2−フェニルエチルアミノ基、4−フェニルブチルアミノ基、8−フェニルオクチルアミノ基等が挙げられる。
置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミノ基としては、例えば、アニリノ基、4−メトキシアニリノ基、4−ジメチルアミノアニリノ基、4−ヒドロキシアニリノ基等が挙げられる。
【0101】
また、前記R10は、カルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基であっても良い。カルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基としては、例えば、下記式(7−1)〜(7−4)で表されるグリシニル−メチルエステル基、グリシニル−エチルエステル基、グリシニル−プロピルエステル基、グリシニル−ベンジルエステル基、下記式(8−1)〜(8−4)で表されるアラニニル−メチルエステル基、アラニニル−エチルエステル基、アラニニル−プロピルエステル基、アラニニル−ベンジルエステル基、下記式(9−1)〜(9−4)で表されるバリニル−メチルエステル基、バリニル−エチルエステル基、バリニル−プロピルエステル基、バリニル−ベンジルエステル基、下記式(10−1)〜(10−4)で表されるロイシニル−メチルエステル基、ロイシニル−エチルエステル基、ロイシニル−プロピルエステル基、ロイシニル−ベンジルエステル基、下記式(11−1)〜(11−4)で表されるフェニルアラニニル−メチルエステル基、フェニルアラニニル−エチルエステル基、フェニルアラニニル−プロピルエステル基、フェニルアラニニル−ベンジルエステル基、等が挙げられる。
【0102】
【化13】
【0103】
一般式(1)で表されるタクロリムスの高分子誘導体における全α−アスパラギン酸数の平均値はa+b+c+d+eで表され、2〜300個程度であり、好ましくは4〜250個程度であり、特に好ましくは8〜200個である。
【0104】
全α−アスパラギン酸数(a+b+c+d+e)に対するタクロリムスの結合したアスパラギン酸数(a)の割合は1〜99%、好ましくは1〜80%、更に好ましくは1〜60%である。ポリエチレングリコールセグメント結合アスパラギン酸単位と併存する必要から、そのバランスを考慮すると1〜50%、更には1〜30%、特には5〜30%である事が好ましい。
又、α−アスパラギン酸数(a)として1〜200個、好ましくは2〜150個程度、特に好ましくは2〜100個程度、若しくは2〜40個程度である。
【0105】
全α−アスパラギン酸数(a+b+c+d+e)に対するポリエチレングリコールセグメントの結合したアスパラギン酸数(b)の割合は1〜99%、好ましくは1〜80%、更に好ましくは1〜60%である。前記のタクロリムス結合アスパラギン酸単位と併存する必要から、そのバランスを考慮すると1〜40%、特には2〜40%である事が好ましい。
又、α−アスパラギン酸数(b)として1〜200個、好ましくは1〜150個程度、特に好ましくは1〜100個程度、若しくは2〜40個程度である。
【0106】
一般式(2)で表されるタクロリムスの高分子誘導体における全アスパラギン酸数の平均値はf+g+h+i+j+k+l+m+nで表され、2〜300個程度であり、好ましくは4〜250個程度であり、特に好ましくは8〜200個である。
【0107】
全アスパラギン酸数(f+g+h+i+j+k+l+m+n)に対するタクロリムスの結合したアスパラギン酸数(f+g)の割合は1〜99%、好ましくは1〜80%、更に好ましくは1〜60%である。ポリエチレングリコールセグメント結合アスパラギン酸単位と併存する必要から、そのバランスを考慮すると1〜50%、更には1〜30%、特には5〜30%である事が好ましい。
又、タクロリムスの結合したアスパラギン酸数(f+g)は1〜200個、好ましくは2〜150個程度、特に好ましくは2〜100個程度、若しくは2〜40個程度である。
【0108】
全アスパラギン酸数(f+g+h+i+j+k+l+m+n)に対するポリエチレングリコールセグメントの結合したアスパラギン酸数(h+i)の割合は1〜99%、好ましくは1〜80%、更に好ましくは1〜60%である。前記のタクロリムス結合アスパラギン酸単位と併存する必要から、そのバランスを考慮すると1〜40%、特には2〜40%である事が好ましい。
又、タクロリムスの結合したアスパラギン酸数(h+i)は1〜200個、好ましくは1〜150個程度、特に好ましくは1〜100個程度、若しくは2〜40個程度である。
【0109】
全アスパラギン酸数(f+g+h+i+j+k+l+m+n)に対するα−アスパラギン酸(f+h+j+l)の割合は1〜80%であり、好ましくは1〜50%である。この割合は、例えば、ポリアスパラギン酸の保護基の脱保護条件等を選ぶことにより適宜変えることができる。
【0110】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体の分子量は、上記の構成部分の各構成分子量を合算した計算値を該「タクロリムスの高分子誘導体の分子量」として採用する。すなわち、(1)ポリアスパラギン酸主鎖の分子量、(2)ポリエチレングリコールセグメントの分子量にその結合数を乗じたポリエチレングリコールセグメントの総分子量、(3)タクロリムスの結合残基分子量にその結合数を乗じたタクロリムスの総分子量、(4)任意のポリエチレングリコールセグメントに結合したX残基の分子量にその結合数を乗じたX残基の総分子量、並びに(5)任意のタクロリムスに結合したX残基分子量にその結合数を乗じたX残基の総分子量、を合算した計算値を該分子量とする。
【0111】
該ポリアスパラギン酸誘導体の分子量は、キロダルトン単位での精度による分子量規定が求められるものである。したがって、前記各構成部分の分析方法は、該ポリアスパラギン酸誘導体のキロダルトン単位での分子量測定において、十分な精度の分析方法であれば特に限定されるものではなく、様々な分析方法を適宜選択して良い。以下に、各構成部分における好ましい分析方法を挙げる。
【0112】
前記(1)ポリアスパラギン酸主鎖の分子量は、該主鎖の重合モノマー単位の分子量にその重合数を乗じた計算値である。該重合数はH−NMRの積分値から算出された重合数、アミノ酸分析により算出される重合数、中和滴定により算出される重合数を用いることができる。
【0113】
前記(2)ポリエチレングリコールセグメントの総分子量は、ポリエチレングリコールセグメントの分子量にその結合数を乗じた計算値である。ポリエチレングリコールセグメントの分子量は、用いるポリエチレングリコールセグメント構造化合物の、ポリエチレングリコール標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量により求められる平均分子量を採用する。
【0114】
ポリエチレングリコールセグメントの結合数は、タクロリムスの高分子誘導体から、ポリエチレングリコールセグメントを開裂させて、遊離するポリエチレングリコールセグメントを定量分析することにより求める方法が挙げられる。または、該ポリアスパラギン酸主鎖に対しポリエチレングリコールセグメントを導入する反応において、ポリエチレングリコールセグメントの消費率から算出する方法であっても良い。
【0115】
前記(3)タクロリムスの総分子量は、タクロリムスの結合残基分子量にその結合数を乗じた計算値である。該タクロリムスの結合数は、該タクロリムスの高分子誘導体を加水分解し、遊離するタクロリムス又はその分解生成物を必要に応じて誘導体化し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析することにより求める方法が挙げられる。又は、該ポリアスパラギン酸主鎖に対しタクロリムスを導入する反応において、タクロリムスの消費率から算出する方法であっても良い。
【0116】
前記(4)の任意のポリエチレングリコールセグメントに結合したX残基の総分子量は、X残基の分子量にその結合数を乗じた計算値である。該ポリアスパラギン酸主鎖に対し該Xを導入する反応において、Xの消費率から算出する方法であっても良い。
【0117】
前記(5)の任意のタクロリムスに結合したX残基の総分子量は、X残基の分子量にその結合数を乗じた計算値である。該ポリアスパラギン酸主鎖に対しXを導入する反応において、Xの消費率から算出する方法であっても良い。
【0118】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体は、該高分子誘導体におけるポリエチレングリコールセグメントの質量含有率が30質量%以上95質量%以下であることを特徴とする。該ポリエチレングリコールセグメントの質量含有率は、前述の該タクロリムスの高分子誘導体の分子量に対する、前記(2)のポリエチレングリコールセグメントの総分子量の含有比率により算出することができる。すなわち、ポリエチレングリコールセグメントの質量含有率は、以下の式で算出する。
【0119】
(計算式)
PEGの質量含有率(%)=PEG総分子量/TACの高分子誘導体分子量×100
注)PEG:ポリエチレングリコールセグメント
注)TAC:タクロリムス
【0120】
前記ポリエチレングリコールセグメントの質量含有率のより好ましい範囲は30質量%以上95質量%以下であり40質量%以上95質量%以下であることが特に好ましい。
【0121】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体は、該高分子誘導体におけるタクロリムスの質量含有率が、質量2%以上質量50%以下であることが好ましい。
【0122】
該ポリアミノ酸誘導体におけるマクロライド系免疫抑制剤の質量含有率は、前述の該ポリアスパラギン酸誘導体の分子量に対する、前記(3)タクロリムスの総分子量の含有比率により算出することができる。すなわち、タクロリムスの質量含有率は、以下の式で算出する。
【0123】
(計算式)
TACの質量含有率(%)=TACの総分子量/TACの高分子誘導体分子量×100
注)TAC:タクロリムス
【0124】
前記タクロリムスの質量含有率のより好ましい範囲は、2質量%以上で50質量%以下である。タクロリムス含量が2質量%以上で40質量%以下であることが特に好ましい。
【0125】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体は、ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基とタクロリムスのアルコール性水酸基及びポリエチレングリコールセグメントを有機溶媒中、脱水縮合剤を用いてエステル結合、アミド結合及び/又はチオエステル基で結合させることにより得られ、本製造方法も本発明に含まれる。すなわち、ポリエチレングリコール構造部分−ポリアスパラギン酸のブロック共重合体と、必要に応じて反応させる基以外の官能基を保護したタクロリムスとを、両者が溶解する有機溶媒中、好ましくはN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒中、0〜180℃、好ましくは5〜50℃でジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキシキノリノン(EEDQ)等の脱水縮合剤を用いた反応に付す製造方法である。又、縮合反応の際にN、N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の反応補助剤を用いてもよい。縮合反応後、必要に応じて脱保護を行い、通常の分離精製等の操作によりタクロリムスの高分子誘導体が製造される。
【0126】
又、Rが−N(R)CONH(R)基であるタクロリムスの高分子誘導体は、上記のカルボジイミド類を縮合剤として用いても得られる。
【0127】
ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基とタクロリムス及びポリエチレングリコールセグメントを導入する方法としては、ポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基を上記の方法にて活性化してから添加したい量の対応するタクロリムスのアルコール性水酸基及びポリエチレングリコールセグメントを塩基性条件下で反応させる方法、対応するタクロリムス及びポリエチレングリコールセグメントを活性化させてからポリアスパラギン酸誘導体の側鎖カルボキシ基と反応させる方法等も可能である。
【0128】
ポリアミノ酸誘導体の側鎖カルボキシ基へのタクロリムス及びポリエチレングリコールセグメントの導入順としては、タクロリムスを導入し次いでポリエチレングリコールセグメントを導入してもよく、ポリエチレングリコールセグメントを導入し次いでタクロリムスを導入してもよく、同時であってもよい。又、タクロリムス又はポリエチレングリコールセグメントを導入した高分子誘導体を合成し精製した後に、同様の反応でポリアミノ酸誘導体中の未反応のカルボキシ基を再活性化させることができ、ここにタクロリムス又はポリエチレングリコールセグメントを導入してもよい。ただし、本発明のタクロリムスの高分子誘導体の製造法は上記の方法に限定されるわけではない。
【0129】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体は、生体内に投与後、タクロリムスを徐々に遊離する性質を有し、該タクロリムスを有効成分とする医薬としての用途を有する。
【0130】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体の医薬品としての用途は、該タクロリムスにより治療効果を奏する疾病であれば特に限定されるものではない。例えば、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、臓器移植及び骨髄移植における拒絶反応の抑制等の治療に用いられる医薬に適する。特に好ましくは、自己免疫疾患あるいは炎症性疾患の治療用医薬である。自己免疫疾患としては、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎等を挙げることができ、炎症性疾患としては、間質性肺炎等が挙げられる。
【0131】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体を含む医薬は、医薬品として通常容認される他の添加剤を有していても良い。該添加剤としては、賦形剤、増量剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤及び等張化剤等が挙げられる。
【0132】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体を含む医薬は、治療用の医薬品製剤として調製されても良い。該製剤としては、経口、注射、直腸内投与、門脈内投与、臓器の灌流液に混合、患部臓器への局所投与等いずれの投与方法でも可能であるが、好ましくは非経口的投与であり、注射による静脈内投与、動脈内投与又は患部臓器への局所投与がより好ましく、通常、例えば、水、生理食塩水、5%ブドウ糖又はマンニトール液、水溶性有機溶媒(例えば、グリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、クレモホール等及びそれらの混合液)並びに水と該水溶性有機溶媒の混合液等が使用される。
【0133】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体の投与量は、患者の性別、年齢、生理的状態、病態等により当然変更され得るが、非経口的に、通常、成人1日当たり、活性成分として0.01〜500mg/m、好ましくは0.1〜250mg/mを投与する。注射による投与は、静脈、動脈、患部(炎症部)等に行われる。
【0134】
本発明のタクロリムスの高分子誘導体は患部に集積し、低投与量でタクロリムス単剤より高い効果を有する。また、酵素に依存しない生理活性物質の放出及び血中濃度の維持が可能であることから、血中動態(血中トラフ濃度)による投与量のコントロールが不要となり、長い投与間隔及び安全性が顕著に向上する。このため、本発明のタクロリムスの高分子誘導体は臓器あるいは組織の移植に対する拒絶反応、移植片対宿主反応、自己免疫疾患、および感染症等の治療および予防に有用な免疫抑制剤又は抗炎症剤である。
【実施例】
【0135】
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。また、本発明の化合物は必要に応じて製剤化を行った後に使用した。
【0136】
合成例1
ポリエチレングリコール−αβ−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(ポリエチレングリコール分子量12000、ポリアスパラギン酸重合数95)の合成(化合物1)
片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、10.0g)をジメチルスルホキシド(DMSO、130mL)に溶解後、γ−ベンジル−L−アスパラギン酸−N−カルボン酸無水物(BLA−NCA、13.8g、200当量)を加え、32.0℃にて一夜攪拌した。反応液を、エタノール(755mL)及びジイソプロピルエーテル(3101L)の混合溶媒中に1時間かけて滴下し、室温にて1時間攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(41.8g)を得た。
得られた固形物(40.0g)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、800mL)に溶解し、無水酢酸(1.26mL)を加えて32.5℃にて撹拌した。反応液を、エタノール(800mL)及びジイソプロピルエーテル(7200mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(32.2g)を得た。得られた固形物(30g)をアセトニトリル(MeCN、1200mL)に懸濁後、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液(1200mL)及び精製水(180mL)を加えて、23℃にて加水分解を行った。反応液に2規定の塩酸を加えて中和したのち、減圧濃縮にてアセトニトリルを除去後、酢酸エチル(1800mL)を用い濃縮液を3回洗浄した。水層を減圧濃縮後、1規定の水酸化ナトリウム水溶液にて溶解液のpHを10.7に調整し、食塩(60.8g)を添加後、分配吸着樹脂カラムクロマトグラフィー及びイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを用いて精製・脱塩し、溶出した溶液を減圧濃縮したのち、凍結乾燥し、化合物1(15.1g)を得た。0.1規定の水酸化カリウム水溶液を用いた滴定値に基づく本化合物1分子中のアスパラギン酸の重合数は94.9であった。
【0137】
合成例2
ポリエチレングリコール−αβ−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(ポリエチレングリコール分子量12000、ポリアスパラギン酸重合数43)の合成(化合物2)
合成例1記載の方法に準じ、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコールに対してBLA−NCAを52.2当量用いることにより、表記化合物2を得た。0.1規定の水酸化カリウム水溶液を用いた滴定値に基づく本化合物1分子中のアスパラギン酸の重合数は43.2であった。
【0138】
合成例3
ポリエチレングリコール−αβ−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(ポリエチレングリコール分子量12000、ポリアスパラギン酸重合数73)の合成(化合物3)
片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、10.0g)をDMSO(190mL)に溶解後、BLA−NCA(8.89g、129当量)を加え、32℃にて一夜攪拌した。反応液を、エタノール(400mL)及びジイソプロピルエーテル(1600mL)の混合溶媒中に1時間かけて滴下し、室温にて1時間攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(26.5g)を得た。
得られた固形物(23.0g)をアセトニトリル(460mL)に溶解し、無水酢酸(724mL)を加えて35℃にて3時間撹拌した後23℃まで冷却した.反応液に0.2規定の水酸化ナトリウム(539mL)を滴下し、23℃にて加水分解を行った。反応液に2規定の塩酸を加えて中和したのち、減圧濃縮にてアセトニトリルを除去後、酢酸エチル(720mL)を用い濃縮液を3回洗浄した。水層を減圧濃縮後、1規定の水酸化ナトリウム水溶液にて溶解液のpHを10.6に調製し、食塩(57.5g)を添加後、分配吸着樹脂カラムクロマトグラフィー、続いてイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶出した溶液を減圧濃縮したのち、凍結乾燥し、化合物3(13.0g)を得た。0.1規定の水酸化カリウム水溶液を用いた滴定値に基づく本化合物1分子中のアスパラギン酸の重合数は72.8であった。
【0139】
合成例4
αβ−ポリアスパラギン酸重合体(ポリアスパラギン酸重合数78)の合成(化合物4)
n−ブチルアミン(東京化成製、18.3mg)をDMSO(30mL)に溶解後、BLA−NCA(5.61g、90当量)を加え、30℃にて一夜攪拌した。反応液を、エタノール(120mL)及びジイソプロピルエーテル(480mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物を得た。得られた固形物全量に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI、35mL)を加え、78℃にて溶解後、70℃にて無水酢酸2.5mLを加えた。3時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(175mL)及びジイソプロピルエーテル(700mL)の混合溶液中に滴下し、室温にて一夜撹拌した.沈析物を濾取後、真空乾燥し固形物(3.74g)を得た。
得られた固形物(3.74g)をアセトニトリル(30mL)に溶解し、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液(138mL)を添加し、室温にて加水分解を行った。反応後、減圧濃縮にてアセトニトリルを除去後、酢酸エチル(420mL)を用い濃縮液を3回洗浄した。水層を減圧濃縮後、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、凍結乾燥を行い、化合物4(2.29g)を得た。NMRに基づく本化合物1分子中のアスパラギン酸の重合数は78であった。
【0140】
合成例5
αβ−ポリアスパラギン酸重合体(ポリアスパラギン酸重合数112)の合成(化合物5)
n−ブチルアミン(東京化成製、15.8mg)をDMSO(30mL)に溶解後、BLA−NCA(7.26g、135当量)を加え、30℃にて一夜攪拌した。反応液を、エタノール(120mL)及びジイソプロピルエーテル(480mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(5.37g)を得た。得られた固形物(5.37g)にDMI(35mL)を加え、80℃にて溶解後、68℃にて無水酢酸2.5mLを加えた。3時間撹拌後、反応液を酢酸エチル(200mL)及びジイソプロピルエーテル(800mL)の混合溶液中に滴下し、室温にて一夜撹拌した.沈析物を濾取後、真空乾燥し固形物(5.16g)を得た。
得られた固形物(5.16g)をアセトニトリル(22mL)に溶解し、0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液(167mL)を添加し、室温にて加水分解を行った。反応後、減圧濃縮にてアセトニトリルを除去後、酢酸エチル(510mL)を用い濃縮液を3回洗浄した。水層を減圧濃縮後、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、凍結乾燥を行い、化合物5(3.00g)を得た。NMRに基づく本化合物1分子中のアスパラギン酸の重合数は112であった。
【0141】
合成例6
ポリエチレングリコール−α−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(ポリエチレングリコール分子量12000、ポリアスパラギン酸重合数87)の合成(化合物6)
片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、6.0g)をDMSO(114mL)に溶解後、BLA−NCA(15.0g、120当量)を加え、30℃にて一夜攪拌した。反応液を、エタノール(228mL)及びジイソプロピルエーテル(912mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(23.8g)を得た。得られた固形物全量をDMF(200mL)に溶解し、無水酢酸(0.75mL)を加えて30℃にて3時間撹拌した。反応液を、酢酸エチル(200mL)及びジイソプロピルエーテル(1800mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(15.8g)を得た。
得られた固形物(8.72g)を1−メチル−2−ピロリドン(NMP、140mL)に溶解後、10%パラジウム−炭素(0.87g)を加えて、35℃にて一夜加水素分解を行った。反応液に活性炭を加えて1時間撹拌したのち、10%パラジウム−炭素を濾別した。濾液を、酢酸エチル(200mL)及びジイソプロピルエーテル(1000mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて一夜攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(4.18g)を得た。固形物全量を精製水(418mL)に溶解し、食塩(20.9g)を添加、溶解し、2規定の水酸化ナトリウム水溶液にて溶解液のpHを11.0に調製後、分配吸着樹脂カラムクロマトグラフィー、続いてイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶出した溶液を減圧濃縮したのち、凍結乾燥することによって、化合物6(760mg)を得た。NMRに基づく本化合物1分子中のアスパラギン酸の重合数は87であった。
【0142】
合成例7
ポリエチレングリコール−α−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(ポリエチレングリコール分子量12000、ポリアスパラギン酸重合数40)の合成(化合物7)
合成例6記載の方法に準じ、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコールに対してBLA−NCAを51.3当量用いることにより、表記化合物7を得た。この際、NMPの代わりにDMFを使用した。0.1規定の水酸化カリウム水溶液を用いた滴定値に基づく本化合物1分子中のアスパラギン酸の重合数は40.2であった。
【0143】
合成例8
ポリエチレングリコール−α−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(ポリエチレングリコール分子量12000、ポリアスパラギン酸重合数90)の合成(化合物8)
片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、10.0g)をDMSO(200mL)に溶解後、BLA−NCA(28.7g、140当量)を加え、32.5℃にて一夜攪拌した。反応液を、エタノール(400mL)及びジイソプロピルエーテル(1600mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(28.6g)を得た。得られた固形物(18.1g)をNMP(181mL)に溶解し、無水酢酸(0.57mL)を加えて30℃にて一夜撹拌した。反応液を、ジイソプロピルエーテル(2000mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物を得た。
得られた固形物(15.3g)をNMP(155mL)に溶解後、10%パラジウム−炭素(3.46g)を加えて、35℃にて一夜加水素分解を行った。反応液に活性炭を加えて30分間撹拌したのち、10%パラジウム−炭素を濾別した。濾液を、ジイソプロピルエーテル(3700mL)の混合溶媒中に滴下し、室温にて攪拌した。沈殿物を濾取後、真空乾燥し固形物(5.64g)を得た。得られた固形物(4.53g)を精製水(453mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液にて溶解液のpHを11.0に調製後、陰イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィー、続いて陽イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーを用いて精製し、溶出した溶液を減圧濃縮したのち、凍結乾燥することによって、化合物8(3.43g)を得た。0.1規定の水酸化カリウム水溶液を用いた滴定値に基づく本化合物1分子中のアスパラギン酸の重合数は90.0であった。
【0144】
実施例1
一般式(2)においてRとして一般式(6)の構造を有し、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11及びR13がメチル基、R12及びR14がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、f+g+h+i+j+k+l+m+nの平均値が43.2、f+gの平均値が7.0、h+iの平均値が5.2である高分子誘導体(化合物9)
化合物2(245mg)、タクロリムス(250mg)、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、862mg)をNMP(6.2mL)に溶解し、25℃にてN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP、37.9mg)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI、192μL)を加えて一夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(186mL)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物をアセトニトリル(7mL)に溶解後、精製水(7mL)及びイオン交換樹脂(7mL)を加え、撹拌した後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、化合物9(1.12g)を得た。化合物9のタクロリムス含量は6.84%と計算された。
【0145】
実施例2
一般式(2)においてRとして一般式(6)の構造を有し、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11及びR13がメチル基、R12及びR14がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、f+g+h+i+j+k+l+m+nの平均値が72.8、f+gの平均値が14.1、h+iの平均値が5.0である高分子誘導体(化合物10)
化合物3(130mg)、タクロリムス(240mg)、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、382mg)をNMP(4.6mL)に溶解し、25℃にてDMAP(28.3mg)、DIPCI(143μL)を加えて一夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(139mL)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物をアセトニトリル(5mL)に溶解後、精製水(5mL)及びイオン交換樹脂(5mL)を加え、撹拌した後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、化合物10(528mg)を得た。化合物10のタクロリムス含量は12.3%と計算された。
【0146】
実施例3
一般式(2)においてRとして一般式(6)の構造を有し、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11及びR13がメチル基、R12及びR14がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、f+g+h+i+j+k+l+m+nの平均値が94.9、f+gの平均値が7.4、h+iの平均値が12.8である高分子誘導体(化合物11)
化合物1(5.30g)、タクロリムス(12g)、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、34.7g)をNMP(430mL)に溶解し、25℃にてDMAP(1.31g)、DIPCI(6.59mL)を加えて二夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(13L)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により固形物(41.5g)を得た。得られた固形物(41.0g)をDMF(575mL)に溶解し、イオン交換樹脂(130mL)を加え1時間撹拌後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液をジイソプロピルエーテル(18.5L)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により固形物(39.5g)を得た。得られた固形物(37.0g)をアセトニトリル(370mL)に溶解後、精製水(370mL)を加え、減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、化合物11(37.2g)を得た。化合物11のタクロリムス含量は3.22%と計算された。
【0147】
実施例4
一般式(2)においてRとして一般式(6)の構造を有し、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11及びR13がメチル基、R12及びR14がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、f+g+h+i+j+k+l+m+nの平均値が72.8、f+gの平均値が5.5、h+iの平均値が9.1である高分子誘導体(化合物12)
化合物3(4.50g)、タクロリムス(4.13g)、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、24.1g)をNMP(229mL)に溶解し、25℃にてDMAP(979mg)、DIPCI(4.97mL)を加えて二夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(6.0L)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物(28.8g)をDMF(404mL)に溶解し、イオン交換樹脂(95.1mL)を加え1時間撹拌後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液をジイソプロピルエーテル(13.0L)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物をアセトニトリル(294mL)に溶解後、精製水(294mL)を加え、減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、化合物12(27.3g)を得た。化合物12のタクロリムス含量は3.24%と計算された。
【0148】
実施例5
一般式(2)においてRがn−ブチル基、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11がメチル基、R12がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、f+g+h+i+j+k+l+m+nの平均値が78、f+gの平均値が7.4、h+iの平均値が10.1である高分子誘導体(化合物13)
化合物4(83.2mg)、タクロリムス(150mg)をNMP(7.5mL)に溶解し、25℃にてDMAP(44.1mg)、DIPCI(223μL)を加えて1時間撹拌後、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、1.12g)を添加し35℃に昇温し一夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(225mL)に滴下し、一夜撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物をアセトニトリル(40mL)に溶解し、精製水(40mL)を加え、イオン交換樹脂(20mL)を加え、氷冷化で撹拌後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、化合物13(1.16g)を得た。化合物13のタクロリムス含量は4.40%と計算された。
【0149】
実施例6
一般式(2)においてRがn−ブチル基、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11がメチル基、R12がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、f+g+h+i+j+k+l+m+nの平均値が112、f+gの平均値が10.4、h+iの平均値が14.6である高分子誘導体(化合物14)
化合物5(85.8mg)、タクロリムス(150mg)をNMP(7.5mL)に溶解し、25℃にてDMAP(45.6mg)、DIPCI(230μL)を加えて1時間撹拌後、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、1.12g)を添加し35℃に昇温し一夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(225mL)に滴下し、一夜撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物をアセトニトリル(40mL)に溶解し、精製水(40mL)を加え、イオン交換樹脂(20mL)を加え、氷冷化で撹拌後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、化合物14(1.18g)を得た。化合物14のタクロリムス含量は4.41%と計算された。
【0150】
実施例7
一般式(1)においてRとして一般式(6)の構造を有し、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11及びR13がメチル基、R12及びR14がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、a+b+c+d+eの平均値が40.2、aの平均値が5.9、bの平均値が5.0である高分子誘導体(化合物15)
化合物7(3.30g)、タクロリムス(4.81g)、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、11.9g)をNMP(160mL)に溶解し、35℃にてDMAP(500mg)、DIPCI(2.47mL)を加えて二夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(4.8L)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により固形物(15.1g)を得た。得られた固形物(15.0g)をDMF(210mL)に溶解し、イオン交換樹脂(50mL)を加え1時間撹拌後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液をジイソプロピルエーテル(6.8L)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により固形物(14.2g)を得た。得られた固形物(13.7g)をアセトニトリル(275mL)に溶解後、精製水(275mL)を加え、減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、化合物15(12.4g)を得た。化合物16のタクロリムス含量は5.74%と計算された。
【0151】
実施例8
一般式(1)においてRとして一般式(6)の構造を有し、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11及びR13がメチル基、R12及びR14がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、a+b+c+d+eの平均値が87、aの平均値が19.4、bの平均値が5.0である高分子誘導体(化合物16)
化合物6(157mg)、タクロリムス(375mg)、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、425mg)をNMP(5.5mL)に溶解し、35℃にてDMAP(38.0mg)、DIPCI(191μL)を加えて二夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(165mL)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物をアセトニトリル(13mL)に溶解し、精製水(13mL)を加え、イオン交換樹脂(6.5mL)を加え、氷冷化で撹拌後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、化合物16(630mg)を得た。化合物16のタクロリムス含量は14.9%と計算された。
【0152】
実施例9
一般式(1)においてRとして一般式(6)の構造を有し、Rがアセチル基、Rがタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、Rとして一般式(5)の構造を有し、Rがイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、R11及びR13がメチル基、R12及びR14がトリメチレン基、R13がメチル基、R14がトリメチレン基、Xが結合、Xが−NH−基、o及びpの平均値が272、a+b+c+d+eの平均値が90.0、aの平均値が21.6、bの平均値が5.3である高分子誘導体(化合物17)
化合物8(3.0g)、タクロリムス(7.27g)、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、8.50g)をNMP(80.3mL)に溶解し、35℃にてDMAP(733mg)、DIPCI(3.72mL)を加えて二夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(3150mL)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物(14.0g)をDMF(196mL)に溶解し、イオン交換樹脂(46mL)を加え撹拌後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液をジイソプロピルエーテル(6.3L)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥することによって、化合物17(12.9g)を得た。化合物17のタクロリムス含量は16.6%と計算された。
【0153】
比較例1
タクロリムス結合ポリエチレングリコール−αβ−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(化合物18)
化合物2(350mg)、タクロリムス(366mg)をDMF(6.0mL)に溶解し、15℃にてDMAP(10.9mg)、DIPCI(315μL)を加えて一夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(180mL)に滴下し、撹拌した。沈殿物を濾取し、真空乾燥により得られた固形物をアセトニトリル(17mL)に溶解後、精製水(17mL)及びイオン交換樹脂(7mL)を加え、氷冷化で3時間撹拌後、イオン交換樹脂を濾別した。濾液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって、下記式(12)で表される化合物18(499mg)を得た。化合物18のタクロリムス含量は33.2%と計算された。
【0154】
【化14】
【0155】
式中、tの平均値は272、q+r+s+u+v+w+xの平均値が42.8、q+rの平均値が10.0、R15はタクロリムスのアルコール性水酸基の残基、R16がイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基である。
【0156】
本発明における化合物のタクロリムス含量は、以下のHPLC条件により測定した反応溶液中のタクロリムスの消費率から算出した。
【0157】
HPLCの分析条件
カラム :Shim-pack XR-ODSIII、2.0φ×200mm
カラム温度:40℃
溶離液 A液:0.1%リン酸水溶液、B液:アセトニトリル
A液/B液=80/20
流 速 :0.5mL/分
検出器(検出波長):UV(254nm)
【0158】
又は、該タクロリムスの高分子誘導体を酸加水分解し、遊離するタクロリムスの分解物であるピペコリン酸を誘導体化し、以下のHPLC条件により定量分析することにより算出した。
【0159】
HPLCの分析条件
カラム :Shim-pack XR-ODSIII、2.0φ×200mm
カラム温度:40℃
溶離液 A液:0.1%リン酸水溶液、B液:アセトニトリル
A液/B液=80/20から10/90へのグラジエント溶出
流 速 :0.5mL/分
検出器(検出波長):蛍光(励起波長:450nm、蛍光波長:590nm)
【0160】
試験例1
リン酸緩衝生理食塩水中の薬剤放出性試験
実施例1〜9、比較例1の化合物をリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に1.0mg/mLとなるように溶解し、37℃にて定温放置した。放出されたタクロリムス量をHPLCにて経時的に測定し、使用した化合物中の全タクロリムス量に対する放出されたタクロリムス量の割合を求めた。実施例1及び比較例1の結果を図1に、実施例1、2、5、6及び8の結果を図2に、実施例3、4、7及び9の結果を図3に示す。
【0161】
この結果、実施例1乃至6の化合物は比較例1の化合物と比較して酵素非存在下、薬剤の放出が早いことが示された。さらに実施例7乃至9の化合物は実施例1乃至6の化合物と比較して酵素非存在下、薬剤の放出が遅いことが示された。
【0162】
試験例2
ラット血中濃度推移(1)
8週齢雌性SDラット(日本チャールズ・リバー株式会社)にタクロリムスまたは実施例1、2、8及び比較例1の化合物5mg/kgを各群2匹ずつ単回尾静脈内投与した。投与後5分、1、6、24及び72時間にイソフルラン麻酔下で頸静脈から継時的に0.3mLずつ採血し、採取血液中のタクロリムス濃度を測定した。実施例1、2、8、比較例1及びタクロリムスの結果を図4に示す。また、各化合物の血中濃度パラメータを表2に示す。ただし実施例1、2、8及び比較例1の結果はミセルから切り出されたタクロリムスの濃度及びパラメータである。
【0163】
【表2】
【0164】
この結果、実施例1、2、8及び比較例1はタクロリムスに比べ血中濃度半減期及びMRTinf.の延長を示し、タクロリムスを高分子誘導化することで血中での滞留性が向上していることは明らかである。
また、比較例1と比べ実施例1、2及び8では、より長い血中濃度半減期及びMRTinf.を示した。
【0165】
試験例3
ラット血中濃度推移(2)
8週齢雌性SDラット(日本チャールズ・リバー株式会社)に実施例3、7及び9の化合物15mg/kgを各群2匹ずつ単回尾静脈内投与した。投与後5分、1、6、24及び72時間後にイソフルラン麻酔下で頸静脈から継時的に0.2mLずつ採血し、採取血液中のタクロリムス濃度を測定した。実施例3、7及び9の結果を図5に示す。また、各化合物の血中濃度パラメータを表3に示す。ただし、実施例3、7及び9の結果はミセルから切り出されたタクロリムスの濃度及びパラメータである。
【0166】
【表3】
【0167】
この結果、実施例3、7及び9共に長い血中濃度半減期及びMRTinf.を示した。
【0168】
試験例4
ラットコラーゲン関節炎に対する抗炎症効果(1)
ウシ関節軟骨由来タイプIIコラーゲン(免疫グレード:コラーゲン技術研修会有限会社)0.3mgを9週齢雌性DAラット(日本エスエルシー株式会社)の背部に皮内投与することにより、コラーゲン関節炎を誘発した。タイプIIコラーゲン感作日及び感作後7日、14日、21日目に比較例1、実施例1、2及び8の化合物の生理食塩水(5mg/kg)を各群5匹ずつ尾静脈内に投与した。対照としては未投与群を設定した。関節炎の判定は、目視によるスコア化により行った。比較例1の化合物の結果を図6に、実施例1の化合物の結果を図7に、実施例2及び8の化合物の結果を図8にそれぞれ示す。また、コラーゲン感作後28又は29日目の平均関節炎スコアを表4に示す。
【0169】
ウシ関節軟骨由来タイプIIコラーゲンの感作後より、ラットの右後肢及び左後肢の炎症の進展をモニタリングした。右後肢乃至左後肢の足趾に発赤が認められたとき、コラーゲン関節炎が発症したと判断した。関節炎の程度は次のように0〜5の6段階で評価した。0;変化なし、1;右後肢乃至左後肢の足趾一カ所以上に発赤、2;右後肢乃至左後肢の足趾一カ所以上に発赤及び軽度の浮腫、3;右後肢乃至左後肢の足全体に浮腫、4;右後肢乃至左後肢の足全体に強度の浮腫、5;右後肢乃至左後肢の足根関節の可動が正常時と比べて制限される(関節の変形)。右後肢及び左後肢の内、関節炎スコアが高い方をその個体の関節炎スコアとして採用した。
【0170】
試験例5
ラットコラーゲン誘導関節炎に対する抗炎症効果(2)
試験例4と同様の方法で、DAラットにコラーゲン関節炎を誘発した。タイプIIコラーゲン感作日及び感作後14日目に実施例3、7及び9の化合物の生理食塩水(15mg/kg)を各群5匹ずつ尾静脈内に投与した。対照としては未投与群を設定した。関節炎の判定は、目視によるスコア化により行った。結果を図9に示す。また、コラーゲン感作後28日目の平均関節炎スコアを表4に示す。
【0171】
【表4】
【0172】
試験例4及び5の結果より、未投与群は関節炎の発症を認めた。一方で、本発明の化合物は、未投与群と比較して、関節炎の発症を抑制した。さらに、実施例1、2及び8は、側鎖にポリエチレングリコールを導入することで、比較例1よりも関節炎に対して強い抑制効果を認めた。
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図9