(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細長い本体は、前記遠位端の、または、前記遠位端の近くの、側壁に孔を備え、それによって、前記細長い本体の長手方向軸に対して実質的に半径方向である方向への前記貫通部材の延出を可能とする請求項9に記載のデバイス。
前記異なる双極子電界および/または四極子電界からの信号は、アルゴリズムによって組み合わされ、単一の切り替えられない電界からの信号に比べて角度依存性が向上した複合信号を生成する請求項12に記載のデバイス。
前記システムの長手方向の位置合わせを可能にするために前記信号電極の近位および/または遠位に配置された一つ以上の環状電極をさらに備える請求項9〜13のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、いくつかの実施形態では、制限するわけではないが、電界配向のような指向性信号の検出に基づく位置合わせ方法を用いて、経皮的外科AVF手術の性能を従来の技術の方法より向上するための方法および装置を提供する。この発明は、従来の技術で提供される二つのカテーテルよりも小さく、製造するのにより安価で、かつ、操作するのがより容易である二つのカテーテルを備えるシステムおよび装置を介して、経皮的AVFの作成を可能にする。特に本明細書で記載される方法は、血液透析患者にVAとしての使用のためにAVFの作成に適用される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、第1の態様では、本発明は、第1の血管と第2の血管のあいだに瘻孔を作成することによって、バスキュラーアクセスを必要とする患者のバスキュラーアクセスを向上するための方法を提供し、この方法は、
a)経皮ルートを介して第1のデバイスを前記第1の血管に挿入するステップであって、前記第1のデバイスは指向性信号源を具備するカテーテルを有し、かつ、前記第1のデバイスは前記第1のデバイスから半径方向外方に前進させられうる貫通要素をさらに有し、前記貫通要素の前進方向を前記指向性信号源が発生する指向性信号に位置合わせするステップ、
b)経皮ルートを介して第2のデバイスを前記第2の血管に挿入するステップであって、前記第2のデバイスはセンサを有し、前記センサが指向性信号を検出できるステップ、
c)指向性信号を発生し、かつ、貫通要素が前記第1の血管から前記第2の血管の近傍に半径方向に前進するように、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスを互いに対して位置合わせし、それによって前記第1の血管と前記第2の血管とのあいだの流体連通を可能とするチャネルを形成するステップ、および、
d)前記チャネルを拡大して瘻孔を形成するステップ、を備える。
【0014】
本発明の第2の態様は、患者の体内の二つの隣接する血管を接続する方法を提供し、この方法は、
a)第1の発信デバイスを第1の血管に導入するステップであって、前記第1のデバイスは非対称電界を発生するための少なくとも一つの信号電極を有するステップ、
b)第2の検知デバイスを第2の血管に導入するステップであって、前記第2のデバイスが前記非対称電界を検出するための少なくとも一つの検出器を有するステップ、
c)前記第2のデバイスの前記検出器によって検出される前記第1のデバイスによって発生した前記電界に基づいて、前記第1のデバイスと前記第2のデバイスを互いに対して位置合わせするステップ、
d)前記第1の血管と前記第2の血管とのあいだに導管を形成するステップ、および、
e)前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとを除去して前記導管によって接続された前記第1の血管と前記第2の血管とを残すステップ、を備える。
【0015】
本発明の第3の態様は、患者の体内の二つの隣接する血管を接続するためのシステムを提供し、このシステムは、
a)第1の血管内に位置する第1の発信デバイスであって、非対称電界を発生するための少なくとも一つの信号電極を有する第1の発信デバイス、
b)前記第1の血管に隣接して第2の血管内に位置する第2のデバイスであって、前記非対称電界を検出するための少なくとも一つの検出器を有する前記第2のデバイス、および、
c)前記二つの血管を接続するための接続装置、を備え、
前記接続は、前記第2のデバイスによって検出されるべき前記第1のデバイスによって発生した前記非対称電界に基づいて前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとを位置合わせし、かつ、前記位置合わせによって指示された方向に沿って前記接続装置を配置する、ことによって方向付けられる。
【0016】
任意ではあるが、前記接続装置は、前記第1の発信デバイスを備える。適切には、前記少なくとも一つの信号電極は、前記接続装置に位置する。あるいは、前記第1のデバイスまたは前記第2のデバイスは、前記接続装置を備える。典型的には、前記第1のデバイスおよび/または第2のデバイスは、カテーテルを備える。前記第1のデバイスおよび/または前記第2のデバイスは、ガイドワイヤを備えることが適切である。前記第1のデバイスが前記接続装置を備える本発明の実施形態では、前記第1のデバイスは、本明細書では、“押し出しデバイス”とも呼ばれる。同様に、前記第2のデバイスが前記接続手段を備えない場合、前記第2のデバイスは、本明細書では、“ターゲットデバイス”とも呼ばれる。
【0017】
本発明の第4の態様は、患者の体内の二つの血管を接続するためのシステムを提供し、このシステムは、
a)第1の血管内に位置するのに適した押し出しデバイスを備え、前記押し出しデバイスが、
(i)遠位端と近位端とを具備する細長いアウターシースであって、内管腔を画定かつ包囲するアウターシースと、
(ii)前記アウターシースの前記遠位端に位置する信号トランスデューサであって、非対称電界を発生するように配置される信号トランスデューサと、
(iii)前記第1の血管と前記第2の血管とのあいだに介在する組織を横断するための横断部材であって、前記押し出しデバイスの前記アウターシースの前記遠位端で前記内管腔内の引き込まれた位置と、前記押し出しデバイスの前記アウターシースの外側に延出する展開位置と、のあいだを移動可能である横断部材と、を有し、
b)第2の血管内に位置するのに適したターゲットデバイスを備え、前記ターゲットデバイスが、
(i)遠位端と近位端とを具備する細長いアウターシースであって、内管腔を画定かつ包囲するアウターシースと、
(ii)前記アウターシースの前記遠位に位置する検出器と、を有し、
使用時に、前記押し出しデバイスの前記信号トランスデューサは前記ターゲットデバイスの前記検出器によって検出されうる非対称電界を発生し、かつ、前記信号が前記ターゲットデバイスの前記検出器によって検出されると、前記横断部材が前記押し出しデバイス内の前記引き込まれた位置から展開されて前記第1の血管と前記第2の血管とのあいだに介在する前記組織を横断して前記第1の血管と前記第2の血管とのあいだの接続を形成するように、前記デバイスが前記デバイスのそれぞれの血管内で正確に位置合わせされて位置することが決定される。
【0018】
本発明の第5の態様は、第1の体腔と第2の体腔とのあいだに介在する組織を横断するためのシステムであって、このシステムは、
a)第1の体腔内に位置する第1の発信デバイスであって、非対称電界を発生するための少なくとも一つの信号電極を有する第1の発信デバイス、
b)前記第1の体腔に隣接して第2の血管に位置する第2のデバイスであって、前記第1の発信デバイスによって発生した前記非対称電界を検出するための検出器を有する第2のデバイス、
c)前記第1の体腔と前記第2の体腔とを接続するための接続装置、および
d)前記第1のデバイスおよび前記第2のデバイスと通信状態にあり、前記発信デバイスにおける前記非対称電界および前記ターゲットデバイスにおいて検出される信号を発生でき、かつ、可視ディスプレイまたは音声ディスプレイを提供してユーザに対して位置合わせを知らせる電子位置合わせモニタユニット、を備え、
前記接続は、前記第2のデバイスによって検出されるべき前記第1のデバイスによって発生した前記非対称電界に基づいて前記第1のデバイスと前記第2のデバイスとを位置合わせし、かつ、前記位置合わせによって示される方向に沿って前記接続装置を供給することによって方向付けられる。
【0019】
任意ではあるが、前記電子位置合わせモニタユニットは、回転コネクタ(コミュテータ)を介して前記第1のデバイスに繋がるハンドル内に備えられる。典型的には、前記接続は動脈‐静脈瘻孔として働き、透析のためのバスキュラーアクセスを提供する。適切には、前記接続は、橈骨橈側皮瘻孔、上腕橈側皮瘻孔、上腕尺側皮瘻孔、または、尺側皮尺側皮瘻孔、を作成する。
【0020】
本発明の第6の態様は、経皮外科カテーテルデバイスを提供し、この経皮外科カテーテルデバイスは、
(a)遠位端と近位端とを有する細長い本体であって、中空シースを有し、前記中空シースが前記本体の少なくとも実質的部分に沿って延在する管腔を画定する本体と、
(b)前記細長い本体の前記遠位端内に位置する信号トランスデューサであって、非対称電界を発生するために配置される信号トランスデューサと、
(c)前記管腔内に滑動可能に収納され、かつ、前記細長い本体の前記遠位端から外に延出することが可能である、貫通部材と、を備え、
前記貫通部材の延出の方向が前記非対称電界と位置合わせされる。
【0021】
本発明の第7の態様は、経皮外科カテーテルデバイスを提供し、この経皮外科カテーテルデバイスは、
(a)遠位端と近位端とを有する細長い本体であって、中空シースを有し、前記中空シースが前記本体の少なくとも実質的部分に沿って延在する管腔を画定する本体と、
(b)前記管腔内に滑動可能に収納され、かつ、前記細長い本体の前記遠位端から外に延出可能である貫通部材と、
(c)前記貫通部材の前記遠位端内に配置される信号トランスデューサであって、非対称電界を発生するために配置される信号トランスデューサと、を備え、
前記貫通部材の延出の方向が前記非対称電界と位置合わせされる。
【0022】
本発明の第8の態様は、経皮外科カテーテルデバイスに使用される貫通部材を提供し、この貫通部材は近位端と遠位端とを有し、前記貫通部材の前記遠位端またはその近くに信号トランスデューサが配置され、かつ、前記信号トランスデューサが非対称電界を発生するために配置される。
【0023】
本発明の第7の態様と第8の態様との特定の実施形態では、前記細長い本体は、前記遠位端またはその近くの側壁に孔を備え、それによって、前記細長い本体の長手方向軸に対して実質的に半径方向である方向への前記貫通部材の延出を可能とする。適切には、前記信号トランスデューサが少なくとも二つの電極を備えて電界を発生できる。または、任意ではあるが、少なくとも四つの信号電極を備えてもよい。任意ではあるが、前記電極は、角度依存性が異なる電界を生成するために切り替え可能である。特定の実施形態では、前記電極は、多極(例えば、双極子および/または四極子)電界を生成するために切り替え可能である。
【0024】
適切には、角度依存性が異なる送出電界からの前記信号は、アルゴリズムによって組み合わされ、角度依存性が向上した複合信号を生成する。特定の実施形態では、本発明に係る前記経皮外科カテーテルデバイスは、前記信号電極の近位端および/または遠位端に配置される一つ以上の環状電極をさらに備え、前記システムの長手方向の位置合わせを許容する。
【0025】
任意ではあるが、前記貫通部材は中空針を備える。前記交差針は、ニチノールのような形状記憶合金、ステンレススチール、または、チタン、で形成されるのが適切である。あるいは、前記貫通部材は、オプションの鋭い先端を有するフレキシブルガイドワイヤを備えていてもよい。特定の実施形態では、前記交差針は、前記交差針がその展開の部分として湾曲するように加熱される。あるいは、前記中空針は、伸縮するように前記内管腔内に同心的に配置された一つ以上のセクションから形成される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書で引用される全ての参照文献は、それらの全体が参照によって組み込まれる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0029】
本発明は、各々が細長いシャフトアセンブリを備える医療機器の形態の、典型的には、遠位部分に機能要素を備え、近位末端にユーザまたはオペレータインターフェースを備える、カテーテルの形態の装置を提供する。ユーザインターフェースは、ハンドル、ハンドルアセンブリ、または、ハブ、を備えていてもよい。
【0030】
本発明を記載する前に、本発明の理解を助ける多くの定義を提供する。
【0031】
本明細書で使用されるように、用語“・・・を備える(cоmprising)”は、引用された要素のいずれもが必然的に含まれ、他の要素は、同様に任意的に含まれてもよいことを意味する。“・・・より本質的になる(cоnsisting essentially оf)”は、引用された要素が必然的に含まれ、列挙された要素の基本的および新規の特徴に実質的に影響を及ぼす要素は排除され、かつ、他の要素は任意的に含まれうることを意味する。“・・・よりなる(consisting of)”は、列挙された要素以外の全ての要素が排除されることを意味する。これらの用語の各々によって定義された実施形態は、本発明の範囲内に含まれる。
【0032】
本明細書で使用されるように、用語“遠位の”および“近位の”は、本装置の長手方向軸に沿う配向を指すために使用される。本発明のデバイスは、元々細長く、一次元状の物体であるとみなせるので、使用に際して、遠位方向はオペレータから最も遠くのデバイスの端を指し、かつ、近位方向はオペレータに最も近いデバイスの端を指す。用語“近位の(proximal)”は、“・・・に近い(near to ・・・)”の従来の意味を採用する用語“最も近い(proximate)”と混同すべきでないことに留意すべきである。
【0033】
最も広い構成では、本発明の装置は、ハンドルアセンブリと係合するか、あるいは、ハンドルアセンブリに取り付けることができる、細長いシャフトアセンブリを備える。細長いシャフトは、血管内モード、静脈内モード、および、動脈内モード、などを介して皮下使用のために適切に構成され、そのシャフトは、対象動物や対象患者の体内の中空の解剖学的血管への導入を含む。ハンドルアセンブリは、対象の体外側に、すなわち、その外に留まる。本発明の特定の実施形態では、細長いシャフトは、カテーテルを備えるまたはそれよりなり、好適には、そのシャフト内の同軸的に配置された一つ以上の管腔を画定できるチューブ部分を備える。カテーテルは、従来のオーバーザワイヤ(OTW)構成やモノレール構成において関連するガイドワイヤとの使用に適合しうる。カテーテルがガイドワイヤとの使用に適合する実施形態では、カテーテルは、ガイドワイヤを収容するのに適合する追加の管腔をさらに備えることができる。任意のそのようなガイドワイヤは、使用する場合、そのデバイスの配置を容易にするために対象内に事前に配置されうる。
【0034】
本発明のデバイスは、血管内における使用に適する。本発明の実施形態では、デバイスは、冠状動脈および冠状静脈のような中心血管系、ならびに、肢、頭および首、鼠径部、あるいは、動脈‐静脈瘻孔の作成に適する任意の場所、の血管のような周辺血管系、に使用されうる。
【0035】
〔AVF外科デバイス〕
特定の実施形態によれば、本発明の装置は、三つの主要なコンポーネント、すなわち、発信カテーテル10、検知カテーテル100、および、電子位置合わせ監視システム200、を備える。本発明の一実施形態によれば、発信カテーテル10は、動脈内に配置されてよく、かつ、検知カテーテル100はそれに隣り合う静脈に配置されてよい。あるいは、両者の関係は、互いに逆であってもよい。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、用語“カテーテル”は、細長いシャフトを備えるデバイスを指す。そのシャフトは、典型的には、その全長に沿って延在する中心管腔を備える。本発明の実施形態の細長いシャフトは、典型的には、直径が約0.15〜約4mm(0.5〜12のフレンチサイズに対応する)にわたる様々なサイズのカテーテルとして適切に構成される。細長いシャフトは、シリコンラバーや熱可塑性エラストマー、PEEK、ポリイミド、高密度ポリエチレン(HDPE)、Pebax、および/または、ナイロン、のようなポリマー、または、それらの複合材料のようなポリマー材料、から適切に構成される。シャフトの全てまたは一部は、例えば、PTFEやパリレンのようなフッ素樹脂を含みうる低摩擦性または潤滑性の被膜を備えていてもよい。シャフトの全てまたは一部を、金属フィラメントの様々な配置を使用して補強してもよい。シャフトの全てまたは一部は、ニッケルチタン合金、ステンレススチール、または、他の生物的適合性金属合金、のようなレーザ切断金属チューブによって置き換えられてもよい。
【0037】
中心管腔38は、事前に配置されたガイドワイヤとの係合を可能にしうる導管を提供する。中心管腔38は、遠位末端内またはそれに近接して、中心管腔と、中にシャフトが配置される中空の解剖学的構造体と、のあいだの流体連通を可能とする孔を備えるように、シャフトに沿って全体的に延在できる。本発明の一実施形態では、中心管腔は、細長いシャフト内に同軸的に位置するポリマーライナーから形成される。ポリマーライナーは、好適には、フッ素樹脂、例えばPTFE、のような材料から構成される。本発明の一実施形態では、ポリマーライナーの少なくとも遠位部分は、細長いシャフトの遠位部品に接続あるいは固定されてよく、かつ、ポリマーライナーの主要部分は、細長いシャフト内で、細長いシャフトに沿って自由に移動しうる。本発明の実施形態は、細長いシャフトの本体内の中心に、あるいは、中心長手方向軸から半径方向にオフセットされる位置に、中心管腔を配置することを可能とする。
【0038】
図1aは、本発明に係る発信カテーテル10の一実施形態を示す。この発信カテーテル10は、近位端と遠位端とを有する細長い本体12を備える。本体12の近位端の近くに、本体12と連通する第1のルアーコネクタ14と貫通部材20の管腔と連通する第2のルアーコネクタ16が配置される。
【0039】
発信カテーテル10は、ガイドワイヤ18と貫通部材20をさらに備え、ガイドワイヤ18は、それが管腔内に保持される引き込み位置とそれが管腔の遠位端から外方に延出する延出位置とのあいだで動作可能である。ガイドワイヤ18は、カテーテル10の全長にわたって貫通部材20内で同軸的に延びる。貫通部材20は、カテーテル10の軸に沿って存在するようにカテーテル10内に拘束される。貫通部材20は、その遠位端に事前形成された湾曲部を有し、それによって、貫通部材20がカテーテル10を出るときに、貫通部材20は、カテーテル10の軸に関して半径方向に湾曲する形状を取る。
図1aに示される実施形態では、貫通部材20は、カテーテル10の側壁の開口すなわち孔19を介して押し出される。孔19は、貫通部材20が押し出されるときに引き込まれうるチューブやスリーブ(図示せず)のような滑動カバー21で被覆されてもよい。さらに、ガイドワイヤ18が引き込まれた位置にあるときのみに、貫通部材20がカテーテル10から押し出されうる。
【0040】
貫通部材20は、ポリマーエーテルケトン(PEEK)、炭素繊維含有液晶ポリマー、タングステンカーバイドポリイミド、ステンレススチール、金、白金、形状記憶合金(NiTinolを含む)、または、他の外科的に適合する金属合金を含む適切な材料、から形成された引き込み可能な中空針またはスタイレットであり得る。
【0041】
典型的には、貫通部材は、X線による案内を用いた外科手術において容易に可視化できるように、X線不透過性材料から形成される。貫通部材20は、超音波可視化(例えば、IVUS位相アレイ)技術の適用を容易にするために、一つ以上のエコー源性表面をさらに備えていてもよい。貫通部材20は、その遠位端に鋭い先端を備え、それは、処置部位で組織を穿刺し、かつ、貫通するために使用される。貫通部材20の管腔は、一つの血管から他の血管への標準のガイドワイヤ18の供給を可能とする。貫通部材の管腔は、必要に応じて、貫通部材20の管腔を介して処置部に医療用組成物および造影剤を含む物質を投与することを可能とする。貫通部材20の管腔は、処置部から流体を抽出するおよび/または組織生検を取り出すために、吸引チャネルとして使用されうる。
【0042】
本体12の遠位端の近くに本体12の周方向に空間的に離間された一対の電極22、24が配置されており、それらの電極22、24は、実質的に直径方向に対向している。本発明の一実施形態では、その対の電極22、24は、貫通部材が発信カテーテルから外方に延出されるときに貫通部材の展開の方向と実質的に位置合わせされる軸に沿って配置される。
図2aに最もよく見られるように、電極ワイヤ26、28(図示せず)は、それらが剛性のクリップオンセクション32のパッド34、36と接続するまで、管腔に沿って電極から近位端に延出する。
【0043】
図1a〜
図1cに示される実施形態では、ハンドル30は、第1のユーザインターフェースにカテーテル10を設ける。ハンドル30は、剛性のクリップオンセクションを介して本体12に取り外し可能に取り付けられる。ハンドル30は、本体内へのカテーテル10の挿入に干渉しないように本体12に配置され、適切には、ハンドル30は、本体12の近位端の近くに配置される。
【0044】
図1bは、本発明に係る検知カテーテル100の一実施形態を示す。この検知カテーテル100は、近位端と遠位端とを有する細長い管腔102を備える。ルアーコネクタ104が管腔102の近位端の近くに配置される。
【0045】
検知カテーテル100は、中空ガイドワイヤ106および二つの環状電極108、110を備える。各々が各環状電極に接続される電極ワイヤ112、114は、管腔102の内部近くに延出し、かつ、ルアーコネクタ104を介して近位端で管腔を出る。
【0046】
発信カテーテル10および検知カテーテル100を備える本装置の主要な特徴を記述すると、提示される特徴の詳細な記述は、ここで、
図2a〜
図2d、
図3a〜
図3b、および、
図4a〜
図4c、を参照して行われる。
【0047】
図2aに示されるように、発信カテーテル10は、同軸的に位置合わせされ、かつ、全体的に近位端と遠位端とを有するいくつかの細長いチューブを備える。
図2a〜
図2cは、発信カテーテル10の特徴をより詳細に示す。
【0048】
図2aは、ハンドル30が取り外された状態の発信カテーテル10の側面図である。カテーテル10の本体には、二つの環状電極34、36を備える、本体12よりも直径が大きい剛性クリップオンセクション32がある。このセクションは、ハンドル30と対となり、かつ、360°にわたる電気接続を介してハンドルが自由回転できるように形成される。
【0049】
第1のルアーコネクタ14は発信カテーテル10の操作を可能とし、かつ、第2のルアーコネクタ16は流血を停止するとともに針のような貫通部材20の操作を可能とする。貫通部材20とルアーコネクタ16はまた、シリンジを接続することができ、かつ、治療薬、例えば造影剤の投与を容易にする。
【0050】
カテーテル10の一実施形態では、二つの電極22、24は、互いに直径方向に対向し、本体12の全周の半分未満の幅にわたる。本発明の一実施形態では、一つの電極22は正電極として働き、かつ、第2の電極24は負電極として働き、それによって、双極子構成を形成する。本体12の周囲に配置された3つ以上の電極の均一に離間されたアレイのようないくつかの他の配置も可能であり、このタイプの実施形態は、電極の四極子構成や八極子構成を含むことが適切である。電極22、24は、押し出されると、貫通部材20の端と位置合わせされるように、発信カテーテル10の本体に沿って貫通部材20に対して遠位に配置される。これによって、貫通部材20が静脈内に穿刺するポイントが電極によって発生されたピーク電界強度の位置に対応し、かつ、それに位置合わせされることが保証される。他の実施形態では、電極22、24は、貫通部材20に対して近位に配置されてもよい。
【0051】
本発明の一実施形態に係る発信カテーテル10の、BB線における断面図が
図2bに示されている。カテーテル10は、内管腔38を囲み、それによって内管腔38を画定するアウターシース35の同軸配置を備える。内管腔38内には、インナーシース37が配置される。インナーシース37は、カテーテル10の全長にわたって、接着剤を用いてアウターシース35に接続される。電極26、28は、内管腔38内にも配置され、かつ内管腔38に沿って軸方向にデバイスの近位端に至る。インナーシース37とアウターシース35は、内管腔38が実質的に防水性であるように水および他の体液の進入を防止できる任意の材料で形成されうる。これによって、電極ワイヤ26、28を通過するあらゆる電気信号が短絡することから保護される。他の実施形態では、アウターシース35とインナーシース37は、単一のシースで置き換えられる。この実施形態では、電極ワイヤは単一のシース内に直接に埋め込まれている。
【0052】
インナーシース37が存在する場合、それは、針のような貫通部材20が配置される内管腔、および、任意ではあるが、ガイドワイヤ18、を画定する。カテーテル10の使用を容易にするために、ガイドワイヤ18は、貫通部材20の中空コア内に同軸的に配置されうる。このように、貫通部材20は、ガイドワイヤ18が適切な位置にある場合、本体12の外に延出することを防止される。カテーテル10が位置合わせされ、かつ、ガイドワイヤ18が除去されているときのみ、貫通部材20は開口19からカテーテル本体12の側壁に前進できる。本発明のこの実施形態は、手術中に事前形成された針を挿入する必要性、および、位置合わせが妨げられるリスク、を回避する。この配置は、別のガイドワイヤ管腔の必要性も排除する。あるいは、オペレータが、特に小児科使用のためのより小さなデバイスにおいて、針のサイズによって許容されるものよりも大きな直径のガイドワイヤを使用することを好む場合、ガイドワイヤ18は、内管腔内に配置され、かつ、除去され、そして手術中の適切な時点において貫通部材20に置き換えられうる。さらに、他の実施形態では、ガイドワイヤ18は、外部モノレール構成に配置されてもよく、かつ、滑動カバーすなわちシース21は貫通部材20が内管腔から出ることを防止するために使用されてもよい。
【0053】
電極26、28は、カテーテル10の近位端の近くに配置される剛性クリップオンセクション32において各電極22、24から各環状電極34、36への電気接続を提供する。この実施形態では、環状電極34、36は、剛性クリップオンセクション32に取り付けられると、ハンドル30との使いやすい回転接続を形成し、それによって、カテーテル10の軸回りの任意の角度の回転を介してハンドル30と発信カテーテル10とのあいだの電気接続を保持する。電気プラグや従来のハブを使用する他の実施形態もまた適切である。
【0054】
発信カテーテル10の遠位端の拡大図が
図2cに示されている。二つの電極22、24の典型的な空間配置が示されている。この実施形態では、電極22、24は、位置合わせされ、かつ、カテーテル本体12の各側で直径方向に対向する。他の一実施形態では、電極、すなわち、各対の電極は、直径方向に対向しているが位置合わせされず、一方の電極は本体12に沿って軸方向に他方の電極からオフセットされている。開口19を通して、貫通部材20を貫通するガイドワイヤ18の配置が見られ、ガイドワイヤ18の引き出しと貫通部材20の展開に先立って、いかにガイドワイヤが適所に貫通部材20をロックできるかを明示している。
【0055】
発信カテーテル10(図示せず)の一実施形態では、貫通部材20は、管腔内に設置される絶縁された導電性ワイヤを有する、形状記憶合金製の真っ直ぐなチューブであり得る。そのワイヤの遠位端は、絶縁物が除去され、それによって電気回路が貫通部材の遠位端との電気接触を介してワイヤの近位端からその遠位端に、次に、貫通部材の遠位端からその近位端に形成される。次に、電気接点がチューブ状貫通部材と中心ワイヤの両方の近位端に作られると、パルス化電流がその回路を通過する。これによって、貫通部材の転移温度を超えて貫通部材が加熱され、貫通部材が変形し、次に一つの血管から他の一つの血管に交差する事前設定された湾曲形状に適合する。電流波形のマーク対スペース比を変更することによって、変形の比例制御が可能である。
【0056】
図2dに示されるように、内管腔内に同心的に配置された二つの中空針よりなる発信カテーテル10の他の一つの実施形態の貫通部材20が示されている。各針は、事前に画定された曲率を有する。これらの針は、伸縮式に前後に展開され、それによって、貫通部材20は、長くなり、かつ、角状湾曲が増加する。
【0057】
本発明の一実施形態では、一つ以上のさらなる電極が貫通部材20の遠位端に取り付けられる。この実施形態では、貫通部材全体は、貫通部材の近位端で貫通部材20への電気接続を形成する遠位端のセクションを除いて絶縁される。一つ以上のさらなる電極は、貫通部材が引き込まれたときには起動されず、貫通部材がカテーテルを出たときに起動されるに過ぎない。起動されると、これらの一つ以上のさらなる電極は、非対称電界を発生する。これによって、貫通部材が目標に留まることを保証するために貫通部材が動脈から静脈に交差していると、貫通部材の位置合わせの微細な調整が可能となる。さらに、この構成では、検知カテーテル100は、振幅およびコンダクタンスを含むいくつかの異なる尺度に基づいて静脈内に貫通部材がうまく貫通したときを検出する。
【0058】
図3aにおいて、遠位先端に正の環状電極39と負の環状電極41とを有する貫通部材20が示されている。電極39、41は、ともに指向性電界を発生する。検知カテーテル100の検知電極108、110は、二つの発信電極39、41によって生成される双極子電界を測定する。貫通部材20が検知カテーテル100に近接すると、測定される信号は、貫通部材20の先端が検知電極100に最も近いときに最大値を示す。貫通部材20が検知カテーテル100を越えて前進すると(すなわちオーバーシュートすると)、信号が減衰を始める。代替として、検知電極108、110は、貫通部材20に配置されてもよく、かつ、発信電極39、41は検知カテーテル100に配置されてもよい。この機能は、電子的にまたはソフトウエアを使用して実現され、結果として本装置を構成する。
【0059】
図3bは、貫通部材20の遠位端に二対の発信電極39、41を有する貫通部材20の他の実施形態を示す。各対の発信電極39、41は、貫通部材20の周囲に直径方向に対向して配置され、第1の対の電極39、41は、他の対の電極から約90°角度だけ変位されている。これは、電極対の位置での貫通部材20の断面図である
図3cに最もよく示されている。
【0060】
各対の電極は、電極が起動されると、それらの電極のあいだで等距離にある平面に沿ってゼロ値を有する双極子電界を生成する。この配置では、検知カテーテル100の電極108、110によって測定される信号は、x−y平面における(すなわち、
図3cに示されるように、検知カテーテル100の長手方向軸Lに沿うまたはそれを横断する)貫通部材20の移動とともに変化する。両対の電極が作動中の0Vの測定値は、貫通部材20が正の検知カテーテル電極108と位置合わせされていることを示す。0Vよりも大きな値は、位置合わせ誤差の度合いを示す。信号の振幅は位置合わせの指標となり、ヌル(null)(0V)により近い値を示すことは、より正しく位置合わせができていることを示す。
【0061】
この実施形態は、二対の電極を有することに制限されない。同様の機能性は、貫通部材20上の三対以上の電極、例えば四対や八対(すなわち、四極子や八極子)またはより多くの対の電極、によって達成されうる。
【0062】
図3dは、一つ以上の電極を有する貫通部材20の他の一つの実施形態を示す。この実施形態では、貫通部材20は、貫通部材20の先端を形成する単一の環状発信電極45を有する。貫通部材が金属のような導電性材料で形成される場合、この構成は、貫通部材20の先端を形成する電極45と貫通部材20の残りの部分とを分離するために絶縁材料47を必要とする。ワイヤ49は、電極45を電源に接続する。使用時に、発信電極45に電流が印加され、かつ、電圧が検知カテーテル100の接地電極110から測定される接地信号に相対して検知電極108で測定される。他の実施形態では、電極45は電圧源として働き、かつ、電流が電極108で測定される。検知カテーテル100の電極108で測定される電流や電圧は、貫通部材20の先端が検知電極108に最も近いときに増加し、かつ、それは貫通部材20が検知電極108に接触するときに最大となる。強い信号または最大の信号は、貫通部材がうまく血管に入ったことを示すために使用されうる。
図3eは、貫通部材20全体が発信電極45として働き、かつ、上述のように機能する、他の実施形態を示す。
【0063】
本発明のさらなる実施形態では、遠位端に電極39、41、または、45、を有する貫通部材20は、カテーテルの一部を形成し、それ自体は半径方向の位置合わせ電極を備えない。この実施形態では、貫通部材20の電極は、貫通部材20の展開に先立って、半径方向の位置合わせのために使用されうる。あるいは、貫通部材20の展開に先立って、カテーテルの半径方向に位置合わせが行われなくてもよい。この実施形態では、貫通部材20の方向は、貫通部材20の電極39、41、または、45、によって生成される電界によって検知カテーテル100に発生する信号に基づいて監視される。
【0064】
検知カテーテル100は、
図4aにより詳細に示されている。中空ガイドワイヤ106は、二つの環状電極108、110を備えている。
図1bに示された実施形態では、最遠位電極は検知電極108であり、他方、近位電極は接地電極110である。カテーテル100の近位端で、電気プラグ116(図示せず)が中心管腔内で検知カテーテル100の全長にわたって延びる電極ワイヤ112、114(図示せず)に接続される。電極ワイヤ112、114の各々は、各環状電極108、110と電気接続状態にある。好適には、コネクタは電気信号を送信するのに適した任意のコネクタを備え、一実施形態では、コネクタは雄の補助プラグである。
【0065】
図4bは、
図4aに示されるAA線に沿って切断された管腔102の断面図である。本体106の管腔115内に配置される電極ワイヤ112、114が示されている。本発明の一実施形態では、本体106はガイドワイヤ内に備えられ、両者が中空または中空ではない、あるいは、小さな直径の類似のカテーテルである。
【0066】
二つのカテーテル10、100を備える本装置は、電子位置合わせモニタシステム200に接続される。電子位置合わせモニタシステム200は、発信カテーテル10の遠位電極22、24に電圧を印加する。一実施形態では、空間的に対向する電極に電圧が印加される。印加される電圧は、好ましくは、AC電圧である。適切には、その電圧の周波数は10Hz〜1MHzであってよく、より適切にはその電圧の周波数は1kHz〜100kHzであってよい。典型的には、電圧の振幅は1mV〜10Vであり得る。適切には、電流はEN60601−1によって設定された制限内でなければならない。電子位置合わせシステム200は、位置合わせ信号を表示することもできる。
【0067】
本発明の一実施形態では、電子位置合わせモニタシステム200は、
図5aと
図5cに示される発信カテーテル10のハンドル30として働く手持ちユニット内に備えられる。ハンドル30は、ハンドルの係合部が、すなわち発信カテーテル10の剛性クリップオンセクション32が、クリップする溝43を有する。ハンドル30のパッド44は環状電極34、36に接触し、電極ワイヤ26、28を介してカテーテル10の遠位端で発信電極22、24に対して360°にわたって回転可能な電気接続を構成する。ハンドル30は、検知カテーテル100との電気通信状態にもある。適切には、その接続は、雌の補助ジャックプラグ46を介して行われるが、ハードワイヤ接続や無線接続の任意の適切な手段が本発明の範囲内に包含される。検知カテーテル100を発信カテーテル10のハンドル30にリンクする雌の補助ジャックプラグコネクタ46は、全体のシステムのオンオフスイッチとしても機能し、接続されるとそのスイッチがオンになり、手術の臨床医に対して次のステップに進む必要があることを指示する。
【0068】
ハンドル30内の統合位置合わせシステム200は、視覚ディスプレイ48を使用して位置合わせデータを表示する。視覚ディスプレイは、瘻孔の作成をうまく行うために、発信カテーテル10と検知カテーテル100の相対位置、特にカテーテル10、100が互いに正確に位置合わせされているか否かを手術の臨床医にフィードバックする。例えば、
図5a〜
図5cに示された実施形態では、発信カテーテルを回転して位置合わせを達成すると、読み取り装置が首尾よく一連のLEDを点灯する。この実施形態では、LEDは他の重要な情報を指示してもよく、指示する情報としては、例えば、制限するわけではないが、バッテリの充電切れが近づいていることの指示(赤色の点滅)や、システムの較正が必要なことの指示(緑色の点滅)、を含む。ユーザ向け表示の様々な他の形態は、ハンドル30やハンドル30と分離した表示画面やデバイスに包含されることが意図されてもよい。本発明の非制限的な例として、表示は、一つまたは一連のLEDを点灯する、または、LED/LCDディスプレイを介する、などの視覚的な手段、単一の連続トーンが聞こえるまで二つの間欠トーン(ビープ)を組み合わせることによる聴覚的な手段、正確な位置合わせが行われたことがハンドルの振動を通じて手術の臨床医に伝えられるような、感覚を介する手段、であってもよい。そして、これらの読み取り装置の全てあるいはいくつかを組み合わせてもよい。
【0069】
電子位置合わせモニタシステム200は、任意の手段で電力供給されうる。電子位置合わせモニタシステム200は、バッテリで電力供給され、それらのバッテリはハンドル内に完全に一体化されているのが適切である。システム200は、発信カテーテル10の発信電極22、24を駆動する電気信号を発生するとともに、検知カテーテル100によって測定される信号を処理する。システム200は、例えば、
図5aに示される四個のLEDによって情報をユーザに表示することも行う。追加のLEDやそれよりも少ないLEDが使用されてもよいことが理解される。
【0070】
AVFを作成するためのカテーテル10、100の位置合わせは、発信カテーテル10によって発生される非対称電界の検知カテーテル100による測定に基づいている。
図6に示されるように、検知電極108によって測定される電位場は、発信電極の正の電極22が検知電極108の中心と完全に位置合わせされたときに最大値を示し、負の電極24が検知電極108の中心に位置合わせされたときに最小値を示す。検知電極108は環状の形状であるため、その測定は検知カテーテル100の任意の回転の影響を受けない。本質的に、検知電極108は発信カテーテル10によって発生する電気信号(または信号のない状態)の全指向性受信機である。したがって、開口19が正の発信電極22と一列にある場合、検知電極108によってピーク電圧が検出されるまで発信カテーテル10を回転することによって、貫通することが必要な目標とする静脈と発信カテーテル10の軌道とを位置合わせすることができる。あるいは、最小の信号またはヌル信号は、位置合わせのために使用されうる。積極的な位置合わせに加えて、電極自体は、X線透視撮影下で視覚インジケータとしての役割を果たす。これによって、発信カテーテルが血管内で適切に回転されていることを視覚的に確認する手段が、手術の臨床医に提供される。測定される電圧は、正の電極22が検知カテーテル100に位置合わせされるときのように、0°と360°でピークが生じる360°にわたって正弦関数に従って変化する。一実施形態では、ユーザは、システムを較正するために、発信カテーテル360が適切な位置にあるときに、発信カテーテルを360°回転することを求められる。これによって、システムがその位置での最大の振幅を記録することができる。通常の使用中に、測定された信号は、記録された最大値と比較され、位置合わせの度合いが計算される。
【0071】
さらなる実施形態では、電極の四極子配置が使用されうる。この配置では、電極にAC電圧を印加すると、検知電極100によって測定される電位場は、
図6cの曲線Qに示されるように、正電極の一つが検知カテーテル100に位置合わせされると生じるピークを有する360°にわたる正弦関数に従って変化する。電極とAC電圧源とのあいだの接続は、個別に切り替えられて同じ四極子配置が駆動されてよく、それによって二つの隣り合う電極がともに正の電圧に接続され、かつ、他の二つの隣り合う電極が負の電圧に接続されて、四極子構成を双極子構成にする。四極子構成Q(θ)と双極子構成D(θ)で得られる信号の組み合わせは、これら二つの構成のあいだで繰り返し切り替えることによって得られる。
図6cは組み合わせの一例を示しており、組み合わせY(θ)=D(θ)Q(θ)+D(θ)+Q(θ)は、0°で鋭いピークを有する。このアプローチによってより狭いピークを得ることができ、位置合わせの精度が高まる。
【0072】
本システムのさらなる実施形態では、位置合わせのために双極子または多極電極構成とともにロータリエンコーダが使用される。このロータリエンコーダはハンドル内に収納され、光学的方法、磁気的方法、容量的方法、または、機械的方法、によって発信カテーテルの角度位置を測定する。角度位置は、測定される信号強度とともに、較正(例えば、初期の360°回転)を必要とすることなく、検知カテーテルに対する発信カテーテルの位置を決定するためにいつでも使用されうる。僅かな回転の後でさえ、それの形状が正弦曲線であることが知られているので、僅かなデータポイントから正確な振幅曲線を推測することによって回転の正確な位置を決定することが可能である。したがって、ピーク振幅に対応する角度位置を数学的に決定することができ、かつ、位置合わせを達成するための発信カテーテルの必要な角度回転を計算することができる。次にユーザは、位置合わせを達成するために、インターフェースによって案内されて、カテーテルを適切な角度および方向に回転する。
【0073】
本システムのさらなる実施形態では、他の双極子対の電極は、カテーテル10、100の長手方向の位置合わせを案内するために発信カテーテル10に配置される。これらの長手方向の位置合わせ電極40、42は、角度位置合わせ電極22、24の近位に配置される正の電極(Vcc)42と、角度位置合わせ電極22、24の遠位に配置される負の電極(‐Vcc)40と、を有する環状電極である。正と負の電極40、42の両方は、角度位置合わせ電極22、24から等距離であり、両者の離間は、5mm〜10cmでありうる。長手方向の位置合わせ電極対40、42は、角度位置合わせ電極22、24と同様に双極子電界を発生し、その電界は、検知カテーテル100の同じ検知電極108、110によって測定される。発生した電界は角度位置合わせ電極22、24に中心を置くので、角度位置合わせ電極が位置合わせされたときに検知電極108、110によって測定される振幅はヌルである(
図6b)。本システムは、長手方向の位置合わせ中には長手方向の位置合わせ電極40、42のみを起動し、回転方向の位置合わせ中には角度位置合わせ電極対22、24のみを起動する。あるいは、本システムは、同時に両方を測定するために、異なるキャリア周波数を使用して同時に両対の電極を起動するか、あるいは、各電極対間で迅速に切り替えてもよい。このアプローチによって、手術中に使用されるべきX線透視撮影の必要性が、排除されるか、あるいは、最小に抑えられる。
【0074】
本発明の一実施形態では、制御システム200は、四つの主要サブブロック、すなわち、電力ユニット201、信号発生器202、信号処理ユニット204、および、マイクロコントローラユニット(MCU)206、を有する。全体構造が
図7に示されている。電源ユニット201は、システム全体への電力供給を行う。電源ユニット201は、三個の主要部品、すなわち、バッテリ208、Vccを提供する3Vドロップアウト(LDO)レギュレータ210、および、Vcc/2レールを提供する1.5VLDOレギュレータ212、よりなる。信号発生器ユニット202は、発信電極22、24を駆動するAC信号を発生させる。適切な交流信号を発生するのに適したシステムは、本発明の範囲内にあると考えられる。適切には、本発明の実施形態に従って、全体の設計は、ダイオード調整ウィーンブリッジ発振器、マイクロコントローラ(MCU)からのクロック信号、または、クリスタル発振器、に基づくことができる。典型的には、本システムは、ダイオード調整ウィーンブリッジ発振器を備える。ウィーンブリッジ発振器は、非常に低ノイズ(6.5nV/√Hz)、かつ、適切には低供給電流(500μA)、を有し、および、高容量性負荷を駆動できる、LMV741テキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)演算(OP)増幅器を使用する。これは、キャパシタACがその出力を発信カテーテル10の正の電極22に連結する前の最後の段階であるので、必要である。信号処理ユニット204は、三つの段階で検知電極108からの生の信号を扱い、かつ、DC値をMCU206に出力する。MCU206の目的は、検知電極108と接地電極110とのあいだの振幅の差を表示することである。差分信号は、最初にアクティブ高パスフィルタ、次に計装用増幅器、および、最後にピーク検出回路、を通過する。マイクロコントローラユニットはATTiny45よりなり、かつ、アナログ‐デジタル変換および信号処理ユニット204から受信したマグニチュード信号の分析を行う。マイクロコントローラユニットは、カテーテル位置合わせを決定し、かつ、例えばハンドル30のLEDインターフェースを介してその情報をユーザに表示する。他の構成では、これらのサブブロック内の電子コンポーネントのいくつかまたは全ては、当業者に公知の適切な代替品によって置き換えられてもよい。さらに、追加のサブブロックが、測定性能、信号処理を向上するために、または、電力消費を減少するために、追加されてもよい。これらの追加のサブブロックはまた、上述の追加の機能(多極電極構成、回転エンコーダ等)のいずれかの使用も可能とすることができる。
【0075】
本発明の他の実施形態では、第1と第2のデバイスの位置合わせは、非対称電界の検出以外の手段によってなされてもよい。そのような実施形態では、トランスデューサやトランスミッタのような信号源は、発信カテーテル10に配置される。信号トランスデューサは、発信カテーテルから外に向けられる信号を提供する。典型的には、その信号は、発信カテーテル10の長手方向軸に対して垂直な方向に発信カテーテル10から半径方向外方へ向けられる。本発明の他の実施形態では、その信号の方向は垂直である必要はなく、発信カテーテル10の軸の角度に対して20°〜90°の角度、適切には約45°の角度に向けられうる。このように、信号トランスデューサは、本発明の装置の信号発生手段内に備えられる。
【0076】
信号トランスデューサは、信号トランスミッタ(図示せず)に接続される。送信される信号は、レーザやマイクロ波放射または無線を介するような超音波や適切な電磁源から適切に選択されうる。本発明の特定の実施形態では、信号トランスミッタは、正確な回転位置合わせおよび/または長手方向の位置合わせを容易にするために超音波信号を発生し、その信号は信号トランスデューサに中継され、信号トランスデューサはその信号を周囲の組織に向け、かつ、第2のデバイスに配置されたセンサによって検出されうる。
【0077】
〔AVF外科デバイスを使用する方法〕
本発明の方法は、治療の三つの主要段階、すなわち、挿入段階、治療段階、および、除去段階、を備える。挿入段階は、治療が施されるべきである隣り合う血管におけるデバイスの血管内挿入、および、処置部へのデバイスの配置、を含む。治療段階は、デバイスの互いに対する位置合わせを含み、その後それぞれの血管のあいだへの瘻孔の作成が続く。除去段階は通常、初期の挿入ルートに沿って逆行する処置部からのデバイスの引き抜きを含む。治療段階は、除去段階が始まる前に数回繰り返されてもよい。
【0078】
本発明の典型的な実施形態では、デバイスの位置合わせおよび導管や瘻孔の作成の後に、位置合わせシステムは除去され、ステントデリバリーシステムが展開される適切な場所にガイドワイヤを残す。次に、ステントが挿入され、ステントデリバリーシステムが除去された後端から端まで効果的に吻合を形成する。
【0079】
本発明の一実施形態に係るAVFを作成するための典型的な臨床手技は、
図8a〜
図8fに示されている。本明細書で提供される例は、必要な患者の手首またはその近くにAVFを作成することに関する。AVFは、比較的に隣り合う血管が位置する体内の他の位置に作成されてもよい。
【0080】
第1のステップは、任意の適切な技術、例えば、セルディンガー法変法(
図8a)(非特許文献4を参照)を使用して、対応する動脈302にガイドワイヤ18を挿入し、かつ、対応する静脈304に検知カテーテル100を挿入する、ことを含む。
【0081】
図8aに最もよく示されているように、発信カテーテル10は、ガイドワイヤ18に沿って橈骨動脈302内に導入される。適切な可視化の下で、カテーテル10、100は、橈骨動脈および橈側皮静脈内の対応する長手方向位置まで前進させられる。可視化は、X線透視撮影によって行われうる。あるいは、位相化アレイ超音波がカテーテルの長手方向位置を可視化するために使用されうる。
【0082】
発信カテーテル10および検知カテーテル100が適所に配置されると、発信カテーテル10はケーブル306(図示せず)を介して電子位置合わせモニタシステム200に接続され、検知カテーテル100も位置合わせモニタシステム200に接続される。ここで、任意ではあるが、発信カテーテルハンドル30(図示せず)は、カテーテルを360°にわたって回転してそのシステムを較正する必要があることを、臨床医に対して示すことができる。次に、視覚的バックアップとして電子位置合わせモニタシステム200とX線透視撮影法とを使用して、臨床医技師は発信カテーテル10を回転し、針20が発信カテーテル10の管腔38を出るための開口19が、検知電極108と位置合わせされる(
図8b)。“位置合わせされる”とは、開口19が検知電極108に向かう方向を向くことを意味する。開口19を検知電極108に向けることによって、既知の電界が導管または瘻孔が作成されうる隣り合う血管のあいだに画定される。そのような既知の電界が存在しないと、臨床医技師は、事実上案内なしで作業をしていると言え、失敗のリスクが実質的に増加することが理解される。適切な位置合わせが達成されると、発信カテーテル10からのガイドワイヤ18は除去され、それによって針20が解放されて臨床医技師によって針がゆっくりと前進させられ、動脈壁を貫通し、間質組織を貫通し、そして、隣り合う橈側皮静脈304内に貫通する(
図8c)。針の前進の方向、すなわち針の通り道は、実質的に位置合わせ平面に沿い、かつ、既知の電界内にある。針20が首尾よくクロスオーバーすると、臨床医は、検知カテーテル100を除去し、かつ、より長いガイドワイヤ306を発信カテーテル内に挿入する。このガイドワイヤ306は針20の中空コアを通り、そしてさらに、血流の方向に沿って静脈304内に前進する(
図8d)。ガイドワイヤ306が二つの血管302、304を接続する安全なU形状を形成すると、発信カテーテル10と針20が引き込まれ、ガイドワイヤ306を適所に残す。次に、典型的なステントデリバリーカテーテルシステム308は、ガイドワイヤ306に沿って前進させられる(
図8e)。最後に、被覆されたステントグラフト310が展開され、端から端までの吻合を効果的に形成する(
図8f)。瘻孔は静脈304が動脈血化するとともに成熟し、かつ、瘻孔は、血腫、内出血、または、盗血症候群、のような起こりうる副作用について監視される。それによって瘻孔は、静脈を血液透析のための将来のバスキュラーアクセスポイントとして働かせる。
【0083】
本発明のバスキュラーアクセス用途に特有なさらなるより詳細な手順が以下に提供される。
【0084】
最初のステップとして、患者は、橈骨動脈に十分な血流があるか否かを診断するために、デュプレックス超音波検査を受ける。次に、盗血症候群を回避するために十分な尺骨流があることを診断するために、デュプレックス超音波検査を用いたアレンテストが実行される。
【0085】
次に、患者に下腕介入手術の準備をする。カテーテル挿入部位と吻合部位とが滅菌され、そして、局所麻酔薬が投与される。X線透視撮影をセットアップして下腕を撮影する。あるいは、代わりに、下腕を可視化するために位相化アレイ超音波診断を用いてもよい。
【0086】
次に、下腕の静脈が崩壊しないようにするために、収縮期血圧よりわずかに低い圧力で、上腕に対して止血帯が装着される。静脈ガイドワイヤを肘前栓の僅かに遠位にある橈側皮静脈に挿入するために、微小穿刺セットを使用してセルディンガー法(非特許文献4)が行われる。検知カテーテル100は、手首関節の僅かに近位である選択された吻合部位に前進させられる。
【0087】
次に、ガイドワイヤ18を橈骨動脈中へ展開するために、微小穿刺セットを使用してセルディンガー法が実行され、その後、ガイドワイヤに沿って7F(0.092インチ、2.3mm)のシースの肘前栓近くの上腕動脈への挿入が続く。発信カテーテル10はガイドワイヤに沿って展開し、そして、前進してX線透視撮影画像に基づいて検知カテーテル100と一列になる。この実施形態では、ガイドワイヤは0.035インチ(3F、0.95mm)のガイドワイヤであるが、そのガイドワイヤは任意の適切なサイズのものでよいことが認識されるべきである。
【0088】
検知カテーテル100からのコネクタケーブルは電子位置合わせモニタシステム200に差し込まれ、位置合わせ信号はその位置合わせ信号が最適な位置合わせを示すまで発信カテーテル10が回転するあいだ監視される。電子位置合わせモニタシステム200はハンドル30であってもよく、その場合、検知カテーテル100からのコネクタケーブルはハンドル30内に差し込まれる。一実施形態では、四個のインジケータLEDが黄色に点滅し始め、検知カテーテル100が正確に接続されたことを示す。次に、発信カテーテル10は、ハンドル30内にクリップされる。四個のインジケータLEDは緑色に点滅を開始し、発信カテーテル10が正確に接続されたが本装置は較正の必要があることを示す。
【0089】
発信カテーテル10は、本装置を較正するために臨床医によって360°回転させられる。較正を指示する任意の適切な手段が使用されてよく、例えば視覚的、聴覚的、または、触覚的なフィードバックが、正確な較正が達成されるように臨床医にフィードバックするために使用されうる。本実施形態では、四個のLEDは点滅を停止し、電子位置合わせモニタシステム200が正確に較正されたことを示す。
【0090】
次に、発信カテーテル10は、本装置を正確に位置合わせするために、臨床医によって回転させられる。位置合わせを指示する任意の適切な手段が使用されてよく、例えば視覚的、聴覚的、または、触覚的なフィードバックが、カテーテル10、100の位置合わせの度合いを臨床医にフィードバックするために使用されうる。本実施形態では、四個のLEDが一つずつ濃緑色に点灯する。四個のLEDの全てが点灯すると、カテーテル10、100が正確に位置合わせされる。
【0091】
次に、臨床医は、マーカーバンドがカテーテル10の近位端で視覚でき、続いてガイドワイヤ18が適所にロックされるまで、ガイドワイヤ18を引き込むことができる。これは、貫通部材20を展開する準備が整ったことを示す。シリンジが貫通部材20の近位端に取り付けられる。次に、貫通部材20は、動脈から橈側皮静脈に穿刺するためにX線透視撮影による案内の下で臨床医によって前進させられる。フラッシュバック血液は、シリンジに収集され、それは、穿刺が成功したことを示す。
【0092】
ガイドワイヤ18は、静脈内で十分に展開されるまで、貫通部材20を介して再び順行方向に前進させられる。発信カテーテル10と検知カテーテル100とが完全に除去され、動脈から静脈に交差する適所にガイドワイヤ18のみを残す。
【0093】
次に、6Fステントグラフトデリバリーシステムは、適所に残されるガイドワイヤに沿って展開されうる。このステントグラフトは、ガイドワイヤに沿って静脈内に前進させられ、次に、AVFを作成するために製造者の指示に従って展開される。
【0094】
本方法の一実施形態では、漏れがないことを確認するために造影剤が供給される。次に、止血帯が除去されうる。次にデリバリーカテーテルもまた除去されてよく、引き続いてイントロデューサーシースの除去が行われる。次に、動脈と静脈へのエントリ部位に圧力が印加される。包帯が巻かれ、患者は手術室を出る準備する。
【0095】
いくつかの解剖部位は、瘻孔の作成に適する。超音波研究によって、上腕動脈と肘正中皮静脈、上腕動脈と橈側皮静脈、ならびに、橈骨動脈と橈側皮静脈、のような部位は、使用されるべき本発明にとって適切な位置であることが示される。この発明の特定の実施形態では、橈骨動脈と橈側皮静脈は、瘻孔を作成するために使用されるべきである。
【0096】
他の用途では、発信カテーテル10および検知カテーテル100は、介入技術を使用して冠状動脈と静脈内に挿入される。
【0097】
標準の大腿骨アクセスを使用して、標準のガイドカテーテルが大腿骨動脈から大動脈を介して冠動脈口に挿入される。ガイドワイヤは、X線透視撮影による案内の下で冠状動脈内に挿入される。発信カテーテル10は、ガイドワイヤに沿って展開されてX線透視撮影画像に基づいてそれが検知カテーテル100と一直線になるように前進させられる。
【0098】
検知カテーテル10は、適切なルート、例えば大腿静脈から腸骨静脈を介して下大静脈へのルート、右心房へおよび冠状静脈洞を介して冠状静脈へのルート、を通じて冠状静脈に挿入される。
【0099】
この実施形態では、本装置の較正およびカテーテルの位置合わせは、上記の静脈アクセスの用途に関しては一般的である。
【0100】
位置合わせが最適化されると、電子位置合わせモニタシステム200によって判断されるように、臨床医は、マーカーバンドがカテーテル10の近位端で可視になり、そして、ガイドワイヤ18が適所にロックされるまでガイドワイヤ18を引き込む。これは、貫通部材20を展開する準備が整ったことを示す。次に、貫通部材20は、X線透視撮影による案内の下で臨床医によって前進させられ、冠状動脈から隣の冠状静脈内に穿刺する。
【0101】
ガイドワイヤ18は、静脈内で十分に展開されるまで、貫通部材20を再び通過して前進させられる。発信カテーテル10と検知カテーテル100は完全に除去され、動脈から静脈に交差する適所にガイドワイヤ18のみが残る。
【0102】
ステントグラフトデリバリーシステムは、適所に残るガイドワイヤに沿って展開される。ステントグラフトは、ガイドワイヤに沿って静脈内に前進させられ、次に、含酸素血液を静脈に転換するための動脈と静脈とのあいだの動静脈吻合を作成するために、製造者の指示に従って展開される。
【0103】
本発明の他の実施形態では、動脈から血液を下肢に転換して重症虚血肢を処置する後脛骨静脈にS字状グラフトを供給するために、膝窩動脈や脛骨動脈に発信カテーテルが挿入され、かつ、検知カテーテルは後脛骨静脈に挿入される。
【0104】
この用途では、装置の較正とカテーテルの位置合わせは、詳細に上述した静脈アクセスの用途に関しては一般的である。
【0105】
デバイスの位置合わせが膝窩動脈/脛骨動脈と後脛骨静脈とのあいだで最適化されると、電子位置合わせモニタシステム200によって判断されるように、臨床医は、マーカーバンドがカテーテル10の近位端で可視であり、そして、ガイドワイヤ18が適所にロックされるまでガイドワイヤ18を引き込む。これは、貫通部材20を展開する準備が整ったことを示す。次に、貫通部材20は、X線透視撮影による案内の下で臨床医によって前進させられ、動脈からその隣の静脈に穿刺する。
【0106】
貫通部材が中空針を備える場合、ガイドワイヤ18は、静脈内で十分に展開されるまで、貫通部材20を通って再び前進させられる。発信カテーテル10と検知カテーテル100とは完全に除去されて、動脈から静脈へ介在組織を介して交差する適所にガイドワイヤ18のみを残す。
【0107】
ステントグラフトデリバリーシステムは、適所に残されるガイドワイヤに沿って展開される。ステントグラフトは、ガイドワイヤに沿って静脈内に前進させられ、次に、含酸素血液を静脈に転換するための動脈と静脈とのあいだの動静脈吻合を作成するために、製造者の指示に従って展開される。
【0108】
さらに他の実施形態では、本発明の方法とデバイスは、肺動脈閉鎖のような動脈管依存性のチアノーゼ性心臓欠損において、寛解を目的として肺血流を増加するために、ブラロック・トーシック手術において使用されうる。この実施形態では、発信カテーテルは鎖骨下動脈や頸動脈の一分枝に挿入されてよく、検知カテーテルは肺動脈に接続されてよい。この実施形態によれば、装置の較正とカテーテルとの位置合わせは、上で詳細に記述された静脈アクセスの用途に関しては一般的である。ガイドワイヤ18は、目標の血管内で十分に展開されるまで、貫通部材20を通って再び前進させられうる。発信カテーテル10と検知カテーテル100とは完全に除去され、一つの血管から他の血管に交差する適所にガイドワイヤ18のみを残す。次に、ブラロック・トーシックシャントは、二つの血管と、それら二つの血管のあいだの安定した接続を残すために引き込まれたガイドワイヤと、のあいだの適所に残されるガイドワイヤに沿って展開される。
【0109】
他の実施形態では、短い4F(1.135mm)のイントロデューサーシースはセルディンガー法変法を用いて左または右総大腿動脈内に配置されてよく、かつ、発信カテーテルはそのシースを介して外腸骨動脈に挿入されよい。11F(11.52mm)のカスタマイズ化静脈イントロデューサーは動脈シース挿入部位の約2cm下方の同側総大腿静脈に配置され、かつ、センサカテーテルは遠位外腸骨静脈に挿入される。次に、発信カテーテル10は、上でより詳細に記述されたように、本発明の装置を正確に位置合わせするために臨床医によって回転される。次に、貫通部材20は、任意ではあるが、X線透視撮影による案内または超音波による案内の下で臨床医によって前進させられ、動脈から橈側皮静脈を穿刺する。ガイドワイヤ18は、その静脈内で十分に展開されるまで貫通部材20を通って再び前進させられる。発信カテーテル10と検知カテーテル100とは完全に除去され、一つの血管から他の血管へ交差する適所でガイドワイヤ18のみを残す。
【0110】
ROX Coupler(ROXメディカル(米国カリフォルニア州サン・クレメンテ)製)のようなカプラーやグラフトは、吻合、すなわち血液が流れることができる通路を作成するために、骨盤領域で動脈と静脈とのあいだに配置される。この吻合、すなわち通路は、周囲の血管抵抗を減少し、かつ、高血圧の患者の動脈血圧を低下させることができる。
【0111】
本発明の他の実施形態では、発信カテーテル10は、全閉塞部を有する動脈の内膜下空間内に挿入されてよく、その挿入は、その空間に先に挿入された現存のガイドワイヤに沿って行われる。検知カテーテル100は、閉塞部から遠位の部位から同じ動脈内に挿入される。発信カテーテル10は、閉塞部を通過して前進させられ、本装置を検知カテーテルにの近傍に正確に位置合わせするために臨床医によって回転され、したがって、動脈の管腔に戻る。この用途のための方法の変形では、検知カテーテル100は動脈と並行している静脈に挿入される。発信カテーテル10は、閉塞部を通過して挿入され、かつ、検知カテーテルの近傍に本装置を正確に位置合わせするために臨床医によって回転される。発信カテーテルは、発信カテーテルが静脈から離れるように向いて、したがって、動脈の真腔に戻るように180°回転される。本方法の両変形では、次に、貫通部材20は、任意ではあるが、X線透視撮影による案内または超音波による案内の下で臨床医によって前進されて、内膜下空間から動脈の真腔内に穿刺する。ガイドワイヤ18は、動脈に再入するために貫通部材20を通って再び前進させられる。発信カテーテル10と検知カテーテル100は完全に除去され、一つの室(房)から他の室へ交差する適所でガイドワイヤ18のみを残す。次に、血管形成バルーンとステントとは、ガイドワイヤに沿って閉塞部の周りの内膜下空間を通過する血液チャネルを形成する。
【0112】
本発明の他の実施形態では、本システムと装置は、一般的な腹腔鏡下手術のために利用されうることが認識される。この実施形態では、発信カテーテル10と検知カテーテル100とは、隣り合う血管、隣り合う室、隣り合う心室、または、隣り合う腔内、に経皮的な血管ルートを介してまたは標準の腹腔鏡下技術を使用するトロカールを介して挿入される。
【0113】
この実施形態では、装置の較正とカテーテルの位置合わせは、上で詳細に記述された静脈アクセスの用途に関しては一般的である。
【0114】
位置合わせが最適化されると、電子位置合わせモニタシステム200の出力によって判断されるように、次に、貫通部材20は、X線透視撮影による案内の下で臨床医によって前進させられて一つの室から隣の室内に穿刺する。
【0115】
ガイドワイヤ18は、それが目標の室内で十分に展開されるまで貫通部材20を通って再び前進させられる。発信カテーテル10と検知カテーテル100とは完全に除去されて一つの室から他の室へ交差する適所でガイドワイヤ18のみを残す。次に、ガイドワイヤは、例えば、ステントグラフト、弁、内中隔デバイス、または、圧力センサ、のようなトランス室(房)デバイス(室横断デバイス)を設置するために使用されうるカテーテルの展開を案内するために使用されうる。
【0116】
本発明の特定の実施形態が本明細書で詳細に開示されたが、これは、例として、かつ、例証目的でのみ、行われた。前述の実施形態は、続く添付の特許請求の範囲に関して、制限する意図はない。様々な代替、修正、および、変更、が、特許請求の範囲に定義される本発明の精神と範囲から逸脱することなく本発明に対してなされうることは、発明者等によって熟慮されている。