(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれの前記光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる
ことを特徴とする請求項1に記載のファイバレーザ装置。
前記所定の分岐比は3dB以下とされ、前記特定の光路で共振する光の前記共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる
ことを特徴とする請求項4に記載のファイバレーザ装置。
前記所定の分岐比は3dB以上4.8dB以下とされ、前記特定の光路を伝搬する途中で前記ループ光路を1周する光路で共振する光の前記共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる
ことを特徴とする請求項4に記載のファイバレーザ装置。
前記所定の分岐比は4.8dB以上とされ、前記特定の光路を伝搬する途中で前記ループ光路を2周する光路で共振する光の前記共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる
ことを特徴とする請求項4に記載のファイバレーザ装置。
【発明の概要】
【0005】
ところで、音響光学素子は、一般的に入力するRF信号に同期して振動している状態がオン状態とされる。本発明者等は、上記特許文献1に記載のファイバレーザ装置から出射する光において音響光学素子の振動する周期に同期したリップルが出る場合があることを見出し、このリップルが大きくなる場合があることを発見した。
【0006】
そこで、本発明は、出射する光のリップルを抑制することができるファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者等は、音響光学素子が振動する周期に同期したリップルが大きくなる原因について鋭意検討をした。その結果、音響光学素子が振動する周期と増幅される光が共振する光路長との関係により、当該リップルが大きくなる場合があることを見出した。そこで、本発明者等は更に鋭意検討をして、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一部が共有され光が共振する複数の光路と、それぞれの前記光路の一部とされそれぞれの前記光路で共振するそれぞれの光を増幅する増幅用光ファイバと、それぞれの前記光路の共有される部分に配置され、所定周期で振動して前記光路から入射する光を前記光路に出射する第1状態と、前記光路から入射する光を前記光路以外に出射する第2状態とに切り換えられる音響光学素子と、を備え、それぞれの前記光路で共振するそれぞれの光のうち最もパワーの大きな光の共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることを特徴とするファイバレーザ装置である。
【0009】
本発明者等は、上記リップルが同期している音響光学素子の振動の周期と、光が光路を共振する周期とが一致する場合に、当該リップルが大きくなるということを発見した。さらに、それぞれの周期が一致する場合のみならず、音響光学素子の振動の周期と、光が光路を共振する周期とが互いに整数倍の関係になる場合も、当該リップルが大きくなるということを発見した。また、複数の光路を有するファイバレーザ装置においては、それぞれの光路で共振する光のうちパワーが最も大きな光のリップルが、出射する光のリップルに最も大きな影響を与えると考えられる。本発明では、このパワーが最も大きな光の共振周期と、音響光学素子が振動する所定周期とが互いに非整数倍の関係とされる。つまり、このパワーが最も大きな光の共振周期が音響光学素子の振動の所定周期の非整数倍とされ、かつ、音響光学素子の振動の所定周期がパワーが最も大きな光の共振周期の非整数倍とされる。このようにパワーが最も大きな光の共振周期と、音響光学素子が振動する所定周期とが互いに非整数倍の関係とされることで、最も目立つリップルが大きくなることを抑えることができる。このため、本発明のファイバレーザ装置によれば、出射する光のリップルを抑制することができる。
【0010】
また、それぞれの前記光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることが好ましい。
【0011】
それぞれの光の共振周期と音響光学素子が振動する所定周期とが互いに非整数倍の関係とされることで、それぞれの光のリップルが大きくなることを抑制できる。
【0012】
また、前記複数の光路は、特定の光路、及び、前記特定の光路と前記特定の光路の途中に接続される周回状のループ光路とからなる光路を有し、前記特定の光路を伝搬する光は所定の分岐比で前記ループ光路に分岐し、前記ループ光路を伝搬する光は前記所定の分岐比で前記特定の光路に結合することが好ましい。
【0013】
特定の光路の光路長が長くなると、当該光路を共振する光の波形に上記リップルよりも長い周期のうねりが生じる傾向がある。しかし、上記のようにループ光路を設けることで、当該うねりを抑制することができる。
【0014】
この場合、前記特定の光路は、一対の反射部間で光が往復する光路であることとしても良い。光が往復して共振する場合、往路と復路とで光の一部がループ光路を伝搬することができる。従って、光路のバリエーションが増え、上記うねりをより抑制することができる。
【0015】
上記のように、前記特定の光路が一対の反射部間で光が往復する光路である場合、前記所定の分岐比は3dB以下とされ、前記特定の光路で共振する光の前記共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることとされても良い。
【0016】
一対の反射部間で光が往復する光路で光が共振するファイバレーザ装置から出射する光において、分岐比が3dB以下の場合には、ループ光路を伝搬せずに特定の光路を伝搬する光のパワーが最も高いことを本発明者等は見出した。このため、上記構成により、パワーが最も大きな光の共振周期と、音響光学素子が振動する所定周期とが互いに非整数倍の関係とされることとなり、最も目立つリップルを抑えることができる。
【0017】
また、上記のように、前記特定の光路が一対の反射部間で光が往復する光路である場合、前記所定の分岐比は3dB以上4.8dB以下とされ、前記特定の光路を伝搬する途中で前記ループ光路を1周する光路で共振する光の前記共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることとされても良い。
【0018】
一対の反射部間で光が往復する光路で光が共振するファイバレーザ装置から出射する光において、上記と異なり分岐比が3dB以上4.8dB以下の場合には、特定の光路の途中でループ光路を1周して伝搬する光のパワーが最も高いことを本発明者等は見出した。このため、上記構成により、パワーが最も大きな光の共振周期と、音響光学素子が振動する所定周期とが互いに非整数倍の関係とされることとなり、最も目立つリップルを抑えることができる。
【0019】
また、上記のように、前記特定の光路が一対の反射部間で光が往復する光路である場合、前記所定の分岐比は4.8dB以上とされ、前記特定の光路を伝搬する途中で前記ループ光路を2周する光路で共振する光の前記共振周期と、前記第1状態において前記音響光学素子が振動する前記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることとされても良い。
【0020】
一対の反射部間で光が往復する光路で光が共振するファイバレーザ装置から出射する光において、上記分岐比が4.8dB以上の場合には、特定の光路の途中でループ光路を2周して伝搬する光のパワーが最も高いことを本発明者等は見出した。このため、上記構成により、パワーが最も大きな光の共振周期と、音響光学素子が振動する所定周期とが互いに非整数倍の関係とされることとなり、最も目立つリップルを抑えることができる。
【0021】
また、上記のように、前記特定の光路が一対の反射部間で光が往復する光路である場合、前記所定の分岐比は2dB以上8dB以下とされることが好ましい。
【0022】
所定の分岐比が2dB以上8dB以下である場合、ループ光路を伝搬せずに特定の光路を伝搬する光、特定の光路の途中でループ光路を1周して伝搬する光、特定の光路の途中でループ光路を2周して伝搬する光、特定の光路の途中でループ光路を3周して伝搬する光、といった複数の光路で共振するそれぞれの光のパワーのバランスが保たれることを本発明者等は発見した。従って、上記分岐比とされることで、それぞれの光にうねりが生じる場合であっても、特定の光のうねりが目立つことを抑制でき、出射する光のうねりを低減することができる。
【0023】
また、前記特定の光路は、周回状の光路であることとしても良い。このような構成により、ファイバリング型のファイバレーザ装置において、リップルを抑制することができる。
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、出射する光のリップルを抑制することができるファイバレーザ装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るファイバレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0028】
図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、種光を出射する種光部MOと、種光部MOから出射する種光を増幅するプリアンプPRと、メインアンプPAと、種光部MOとプリアンプPRとの間に設けられる波長変換部RFと、波長変換部RFとメインアンプPAとの間に設けられる波長選択フィルタFLと、を主な構成として備える。このようにファイバレーザ装置1は、種光部MOが、Master Oscillatorとされ、メインアンプPAがPower Amplifierとされる、いわゆるMO−PA型のファイバレーザ装置である。
【0029】
<種光部MOの構成>
種光部MOは、励起光を出射する励起光源11と、励起光源11から出射する励起光が入射し、当該励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバ13と、増幅用光ファイバ13の一端側に設けられる第1反射部としてのFBG(Fiber Bragg Grating)12と、増幅用光ファイバ13の他端に接続され第2反射部を兼ねる音響光学素子(AOM)14と、FBG12とAOM14との間に設けられる光カプラ16と、光カプラ16に接続されるループ光ファイバ15と、を主な構成として備える。このように種光部MOは、共振型のファイバレーザ装置から成る。
【0030】
種光部MOの励起光源11は、連続光を出射する光源であり、例えばレーザダイオードから構成される。励起光源11は、増幅用光ファイバ13に添加される活性元素を励起する波長の励起光、例えば波長が915nmの光を出射する。また、励起光源11は第1光ファイバ18に接続されており、種光部MOの励起光源11から出射する光は、第1光ファイバ18を伝搬する。
【0031】
種光部MOの増幅用光ファイバ13は、コアと、コアの外周面を隙間なく囲むクラッドとを有する。増幅用光ファイバ13において、コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも高く、コアを構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素、及び、種光部MOの励起光源11から出射する種光部の光により励起されるイッテルビウム(Yb)等の活性元素が添加された石英が挙げられる。このような活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等が挙げられる。また、増幅用光ファイバ13のクラッドを構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英が挙げられる。
【0032】
上記の第1光ファイバ18は増幅用光ファイバ13の一端と接続されており、第1光ファイバ18のコアと増幅用光ファイバ13のコアとが光学的に結合している。また、第1光ファイバ18のコアには、FBG12が設けられている。こうしてFBG12は、増幅用光ファイバ13の一端側に設けられている。FBG12は、第1光ファイバ18の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ13の活性元素が放出する光の内、特定波長の光を反射するように構成されている。FBG12は、上述のように増幅用光ファイバ13に添加される活性元素がイッテルビウムである場合、例えば、波長が1060nmの光の反射率が100%とされる。
【0033】
増幅用光ファイバ13の他端には、第2光ファイバ19の一端が接続されている。第2光ファイバの構成は第1光ファイバと同様とされ、第2光ファイバ19のコアと増幅用光ファイバ13のコアとが光学的に結合している。
【0034】
ループ光ファイバ15は、第1光ファイバ18及び第2光ファイバ19と同様の構成とされ、第2光ファイバ19の途中に設けられる光カプラ16において、第2光ファイバ19と接続されている。具体的には、ループ光ファイバ15を構成する光ファイバの一端及び他端が接続された状態で、当該一端及び他端を含む部位と第2光ファイバ19とが互いに所定回数捩じられて融着されている。こうして第2光ファイバ19とループ光ファイバ15とが融着された部位が光カプラ16となる。このため、光カプラ16では、第2光ファイバ19のコアとループ光ファイバ15のコアとが所定の分岐比で光学的に結合している。
【0035】
この分岐比とは、次の2つの比を意味する。一方の比は、光カプラ16において、第2光ファイバ19からループ光ファイバ15に分岐せずに第2光ファイバを伝搬する光のパワーに対する、第2光ファイバ19からループ光ファイバ15に分岐する光のパワーの比である。他方の比は、光カプラ16において、ループ光ファイバ15から第2光ファイバ19に結合せずにループ光ファイバ15を伝搬する光のパワーに対する、ループ光ファイバ15から第2光ファイバ19に結合する光のパワーの比である。この場合、それぞれの比は互いに等しい。このパワーの比をデシベル表記する場合、例えば、3dBであれば、第2光ファイバ19を伝搬して光カプラ16に入射する光のうち、約50%のパワーの光が第2光ファイバ19を伝搬し、残りの約50%のパワーの光がループ光ファイバ15に分岐する。従って、分岐比が0dBに近付く場合、第2光ファイバ19を伝搬する光は、ループ光ファイバ15に殆ど分岐しない。この分岐比は、ループ光ファイバ15と第2光ファイバ19とを上記のように融着する際に、ループ光ファイバ15を構成する光ファイバと第2光ファイバ19とが互いに捩じられる上記所定回数により定められる。
【0036】
第2光ファイバ19の他端にはAOM14が接続されている。AOM14は、第1状態と第2状態とを切り換えることができる。第1状態は、AOM14がオンとされる状態であり、AOM14は所定周期で振動する。第1状態では、第2光ファイバ19のコアから入射する光が、AOM14をプリアンプPRに向かって伝搬しつつAOM14のプリアンプPR側の端面でフルネル反射を起こし、再び第2光ファイバ19のコアに向かって出射する。このフルネル反射の反射率は、FBG12の反射率よりも低くされる。また、第2状態はAOM14がオフとされる状態や第1状態と異なる周期でAOM14が振動する状態とされる。第2状態では、第2光ファイバ19のコアから入射する光がAOM14内を第1状態と異なる方向に向かって伝搬する。このため、第2状態では、AOM14に入射した光は第2光ファイバ19と異なる方向に出射する。
【0037】
以上のように、本実施形態の種光部MOは、第1光ファイバ18の一部と、増幅用光ファイバ13と、第2光ファイバ19と、AOM14とから成る光路を光が往復し共振する。この光路を特定の光路とし、ループ光ファイバ15からなる周回状の光路をループ光路とすると、種光部MOは、上記特定の光路の他に、当該特定の光路とループ光路とから成る光路も有することとなる。特定の光路とループ光路とから成る光路は、特定の光路と異なる光路であり、当該特定の光路と一部を共有することとなる。この光路を伝搬する光は、光カプラ16において第2光ファイバ19からループ光ファイバ15に分岐して、ループ光ファイバ15を1周以上周回した後、光カプラ16においてループ光ファイバ15から第2光ファイバ19に結合する。また、ループ光路を含む光路であっても、ループ光ファイバ15を周回する回数が異なれば、互いに異なる光路である。このようにループ光ファイバ15が特定の光路に途中に接続されるため、それぞれの光路の光路長は互いに異なり、それぞれの光路で共振するそれぞれの光の共振周期は互いに異なる。
【0038】
本実施形態では、少なくとも、上記のそれぞれの光路で共振するそれぞれの光のうち最もパワーの大きな光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する上記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。つまり、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のうち最もパワーの大きな光の共振周期が第1状態でAOM14が振動する所定周期の非整数倍とされ、かつ、第1状態でAOM14が振動する所定周期がそれぞれの光路で共振するそれぞれの光のうち最もパワーの大きな光の共振周期の非整数倍とされる。さらに、上記のそれぞれの光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する上記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることが好ましい。この場合、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期が第1状態でAOM14が振動する所定周期の非整数倍とされ、かつ、第1状態でAOM14が振動する所定周期がそれぞれの光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期の非整数倍とされる。例えば、AOM14が振動する振動数が135MHzとされる場合、振動周期は74×10
−10秒となる。上記特定の光路の長さを基本光路長Sとし、光速を299,792,458m/s、光ファイバの屈折率が1.445の場合、物質中での光の速度が1/屈折率倍になることから基本光路長Sが1mであれば、特定の光路を共振する光の共振周期は、当該特定の光路を往復する時間に等しく約1.0×10
−8秒となる。この場合、特定の光路で共振する光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。また、基本光路長Sが1mでループ光ファイバ15の長さであるループ光路長Lが0.5mである場合、光が共振する間にループ光路を1周する光路では、共振する光の共振周期は約1.3×10
−8秒となり、光が共振する間にループ光路を2周する光路では、共振する光の共振周期は約1.5×10
−8秒となる。従って、この場合、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。
【0039】
なお、増幅用光ファイバ13はそれぞれの光路の一部とされ、AOM14はそれぞれの光路の共有される部分に配置されることとなる。
【0040】
<プリアンプPRの構成>
プリアンプPRは、励起光源21と、増幅用光ファイバ23と、カプラ22とを主な構成として備える。
【0041】
プリアンプPRの励起光源21は、例えば複数のレーザダイオードから構成され、後述のようにプリアンプPRの増幅用光ファイバ23に添加される活性元素を励起する波長の励起光、例えば波長が915nmの励起光を出射する。また、励起光源21は、光ファイバ28に接続されており、励起光源21から出射する励起光は、光ファイバ28を伝搬する。光ファイバ28としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、当該励起光は光ファイバ28をマルチモード光として伝搬する。
【0042】
プリアンプPRの増幅用光ファイバ23は、コアと、コアの外周面を隙間なく囲む内側クラッドと、内側クラッドの外周面を被覆する外側クラッドとを有している。増幅用光ファイバ23において、コアの屈折率は内側クラッドの屈折率よりも高く、内側クラッドの屈折率は外側クラッドの屈折率よりも高くされる。つまり、増幅用光ファイバ23はダブルクラッド構造とされる。増幅用光ファイバ23において、コアを構成する材料としては、例えば、上記の種光部MOの増幅用光ファイバ13のコアと同様の材料を挙げることができ、内側クラッドを構成する材料としては、例えば、上記の種光部MOの増幅用光ファイバ13のクラッドと同様の材料を挙げることができる。また、増幅用光ファイバ23の外側クラッドを構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
【0043】
本実施形態において、種光部MOのAOM14は、光ファイバ29に接続される。カプラ22は、光ファイバ29及び光ファイバ28と、増幅用光ファイバ23の一端とを接続している。具体的には、カプラ22において、光ファイバ29のコアが、増幅用光ファイバ23のコアに接続されており、さらに光ファイバ28のコアが、増幅用光ファイバ23の内側クラッドに接続されている。従って、種光部MOのAOM14から出射する光は、光ファイバ29を介して、増幅用光ファイバ23のコアに入射してコアを伝搬する。また、励起光源21から出射する励起光は、増幅用光ファイバ23の内側クラッドに入射し内側クラッドを主に伝搬する。従って、増幅用光ファイバ23のコアを伝搬する光により、励起光源21が出射する励起光により励起される活性元素が誘導放出を起こすことで、当該コアを伝搬する光を増幅する。
【0044】
<波長変換部RF、波長選択フィルタFLの構成>
波長変換部RFは、プリアンプPRの増幅用光ファイバ23に接続されている。波長変換部RFは、入射する光のうちパワーが所定のパワーより大きな光を、入射する光より長波長の光に変換して出射し、入射する光のうちパワーが所定のパワーより小さな光を、入射する光の波長のまま出射する。
【0045】
このような波長変換部RFとしては、誘導ラマン散乱を起こすラマン光ファイバを挙げることができる。このラマン光ファイバとしては、コアに非線形光学定数を上昇させるドーパントが添加される光ファイバが挙げられる。このようなドーパントとしては、ゲルマニウムやリンが挙げられる。この波長変換部RFがラマン光ファイバである場合、波長変換する光の強度の閾値は、コアの直径、ドーパントの添加濃度、長さ等によって変えることができる。
【0046】
波長選択フィルタFLには、プリアンプPRから出射する光が波長変換部RFを介して入射する。そして、波長変換部RFにおいて波長変換された光が入射する場合、この光をメインアンプPAに向かって透過し、波長変換部RFにおいて波長変換されない光が入射する場合に、この光のメインアンプPAに向かう透過が抑制される。従って、プリアンプPRから出射する光が波長変換部RFで波長変換される場合、波長選択フィルタFLに入射する光は、波長選択フィルタFLからメインアンプPAに向かって透過する。一方、プリアンプPRから出射する光が波長変換部RFにおいて波長変換されない場合、波長選択フィルタFLに入射する光は、波長選択フィルタFLからメインアンプPAへの透過が抑制される。このような波長選択フィルタFLとしては、例えば、WDMカプラや誘電体多層膜フィルタを挙げることができる。
【0047】
<メインアンプPAの構成>
メインアンプPAは、入射する光をプリアンプPRよりも高い増幅率で増幅する点においてプリアンプPRと異なり、複数の励起光源31と、増幅用光ファイバ33と、カプラ32とを主な構成として備える。
【0048】
メインアンプPAの励起光源31のそれぞれは、例えば複数のレーザダイオードから構成され、後述のようにメインアンプPAの増幅用光ファイバ33に添加される活性元素を励起する波長の励起光、例えば波長が915nmの励起光を出射する。また、それぞれの励起光源31は、光ファイバ38に接続されており、それぞれの励起光源31から出射する励起光はそれぞれの光ファイバ38を伝搬する。それぞれの光ファイバ38としては、例えば、プリアンプPRの励起光源21に接続される光ファイバ28と同様とされ、この場合、当該励起光は光ファイバ38をマルチモード光として伝搬する。
【0049】
メインアンプPAの増幅用光ファイバ33は、プリアンプPRの増幅用光ファイバ23と同様の構成とされる。
【0050】
また、本実施形態において、波長選択フィルタFLは光ファイバ39に接続される。カプラ32は、光ファイバ39及びそれぞれの光ファイバ38と、増幅用光ファイバ33の一端とを接続している。具体的には、カプラ32において、光ファイバ39のコアが、増幅用光ファイバ33のコアに接続されており、さらにそれぞれの光ファイバ38のコアが、増幅用光ファイバ33の内側クラッドに接続されている。従って、波長選択フィルタFLからメインアンプPAに向かって出射する光は光ファイバ39を介して、増幅用光ファイバ33のコアに入射してコアを伝搬し、それぞれの励起光源31から出射する励起光は、増幅用光ファイバ33の内側クラッドに入射し内側クラッドを主に伝搬する。従って、増幅用光ファイバ33のコアを伝搬する光により、励起光源31が出射する励起光により励起される活性元素が誘導放出を起こすことで、当該コアを伝搬する光を増幅する。
【0051】
メインアンプPAの増幅用光ファイバ33の他端には光ファイバ40が接続されている。この光ファイバ40は、増幅用光ファイバ33から出射する光を所定の場所まで伝搬させて出射する光ファイバであり、デリバリ光ファイバと呼ばれる場合がある。
【0052】
<ファイバレーザ装置1の動作>
次に、このようなファイバレーザ装置1からパルス状の光が出射する動作について説明する。
【0053】
本実施形態のファイバレーザ装置1では、種光部MOの励起光源11から常時励起光が出射されており、待機状態において、種光部MOのAOM14が第2状態とされる。従って、第2光ファイバ19からAOM14に入射した光は、第2光ファイバ19に反射することなく、外部に放出される。従って、FBG12とAOM14のプリアンプ側の端面との間の光路、すなわち特定の光路や特定の光路とループ光路とから成る光路で光は共振しない。このため、増幅用光ファイバ13の活性元素の励起状態が高くなる。また、本実施形態では、待機状態において、それぞれの励起光源21、31が出射状態とされる。このためプリアンプPRの増幅用光ファイバ23、及び、メインアンプPAの増幅用光ファイバ33のそれぞれに添加される活性元素は励起状態とされる。なお、種光部MOのAOM14が第2状態とされる期間は、増幅用光ファイバ13において自己発振しない期間とされる。また、増幅用光ファイバ23、及び、増幅用光ファイバ33に励起光が入射される期間は自己発振しない期間とされる。従って、待機状態において、増幅用光ファイバ13,23,33から意図しないジャイアントパルス光が出射することが抑制されている。
【0054】
次に、パルス状の光が出射する時点から僅かに前のタイミングで、AOM14が第1状態とされる。すると、FBG12とAOM14のプリアンプ側の端面との間の光路、すなわち、第1光ファイバ18の一部と、増幅用光ファイバ13と、第2光ファイバ19と、AOM14とから成る特定の光路や、当該特定の光路とループ光路とから成る光路を光が往復して、それぞれの光路で光が共振する。この共振光により、上記のように高い励起状態とされた増幅用光ファイバ13の活性元素が誘導放出を起こし、共振光が増幅されAOM14からパルス状の光が出射し、種光部MOから種光としてのパルス状の光が出射する。
【0055】
図2は、パルス状の光の出射時における各部位から出射する光のパワーの大きさの様子を示す図である。具体的には、種光部MOから出射する光、プリアンプPRから出射する光、波長変換部RFから出射する光、波長選択フィルタFLから出射する光、メインアンプPAから出射する光のパワーの大きさの時間的変化及び波長の様子を示す図である。
図2のそれぞれ光のパワーの時間的変化を示す部分において、縦軸が光のパワー密度を示し、横軸が時間を示す。
【0056】
種光部MOから出射するパルス状の光のパワーの時間的変化の形状はガウス分布形状とされる。また、種光部MOから出射するパルス状の光の波長は、例えば、1060nmとされる。上記のように種光部MOから出射するパルス状の光は、増幅用光ファイバ23のコアに入射する。
【0057】
プリアンプPRの増幅用光ファイバ23では、上記のように励起光により活性元素が励起状態とされている。従って、種光部MOからパルス状の光が増幅用光ファイバ23に入射すると、励起された活性元素は種光部MOからの光により誘導放出を起こし、この誘導放出により当該光のパワーが増幅されて、増幅用光ファイバ23からパルス状の光が出射する。増幅用光ファイバ23は、パワーの時間的変化がガウス分布形状の光が入射すると、入射光に対してパワー密度が増幅されたガウス分布形状の光を出射する。従って、
図2に示すように、プリアンプPRからは、種光部MOから出射する光に対してパワーの時間的変化の形状がパワー密度の方向に延伸されたガウス分布形状の光が出射する。
【0058】
プリアンプPRから出射した光の一部は、波長変換部RFで波長変換されるパワー密度とされる。従って、波長変換部RFでは、プリアンプPRから入射した光のうち、ある特定のパワー密度より高いパワー密度の光成分が一次散乱光とされる。例えば、上記のように種光部MOから出射する光の波長が1060nmである場合、波長変換部RFでは所定のパワーより大きなパワーの光の波長が例えば1120nmとされる。そして、波長変換部RFからは、波長変換されない光及び一次散乱光が出射する。波長変換部RFから出射する光のパワーの時間的変化の形状は、プリアンプPRから出射する光のパワーの時間的変化の形状と同じである。このうち、
図2に示すように、波長変換されない波長1060nmの光はガウス分布形状における裾引き部分を含むパワー密度の低い光であり、一次散乱光である波長1120nmの光はガウス分布形状の頂点部分を含むパワー密度の高い光である。
【0059】
波長変換部RFから出射する光は、波長選択フィルタFLに入射する。上記のように波長選択フィルタFLは、波長変換部RFにおいて波長変換された光が入射するとこの光をメインアンプPAに向かって透過し、波長変換部RFにおいて波長変換されない光が入射するとこの光のメインアンプPAに向かう透過を抑制する。従って、
図2において破線で示すようにプリアンプPRから出射する光のうち、波長変換されないパワー密度の小さな光の波長選択フィルタFLの透過は抑制され、
図2において実線で示されるプリアンプPRから出射する光の一次散乱は波長選択フィルタFLを透過する。この一次散乱光のパルス幅は、プリアンプPRから出射する光のパルス幅よりも小さくされる。
【0060】
メインアンプPAの増幅用光ファイバ33では、上記のように励起光により活性元素が励起状態とされている。従って、パルス幅が小さくされたパルス状の光が波長選択フィルタFLに入射すると、励起された活性元素は当該光により誘導放出を起こし、この誘導放出により当該光のパワーが増幅されて、増幅用光ファイバ33からパルス状の光が出射する。従って、種光部MOから出射する光よりもパルス幅が狭くパワーが増幅された光が出射する。
【0061】
メインアンプPAから出射する光は、光ファイバ40を伝搬し、ファイバレーザ装置1から出射する。
【0062】
なお、種光部MOからパルス状の光が出射する場合以外にパワー密度の低い光が出射することがあり、当該光により励起状態とされたプリアンプPRの活性元素が誘導励起を起こし、当該光は増幅される。しかし、この場合の種光部MOからの光は上記のようにパワーが小さいため、プリアンプPRから出射する光のパワーは、波長変換部RFで波長変換される程のパワーに達しない。このため、この場合にプリアンプPRから出射する光は、波長変換部RFで波長変換されず、波長選択フィルタFLにより、メインアンプPAへの入射が抑制される。
【0063】
次に、種光部MOから出射するパルス状の光について、更に詳しく説明する。
【0064】
図3は、種光部MOから出射する光を示す図である。
図3の左側には
図2にも記載した種光部MOから出射する光が示され、
図3の右側には、
図3の左側の破線で囲まれた部分を拡大した様子が示されている。
図3に示すように、種光部MOから出射するパルス状の光を拡大すると、小さなリップルが重畳していることが分かる。このリップルは、第1状態におけるAOM14の振動に起因するものである。AOM14は、第1状態において、振動することにより、光を透過し易い状態とこれに比べて僅かに光が透過しにくい状態とを繰り返す。このためAOM14を透過して出射する光に、AOM14が振動する所定周期に合わせてリップルが生じる傾向がある。
【0065】
しかし、上記のように、本実施形態のファイバレーザ装置1では、種光部MOにおける上記のそれぞれの光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する上記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。本発明者等は、共振する光の共振周期と第1状態においてAOM14が振動する上記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる場合に当該リップルが増幅されることが抑制されることを発見した。従って、種光部MOから出射するパルス状の光において、AOM14の振動に起因して生じるリップルが増幅されることが抑制される。
【0066】
次に、本実施形態において、種光部MOのそれぞれの光路で共振して種光部MOから出射するそれぞれの光のパワーと光カプラ16における分岐比との関係について説明する。
【0067】
図4は、種光部MOのそれぞれの光路で共振して種光部MOから出射するそれぞれの光のパワーの比率と、光カプラ16における分岐比との関係とを示す図である。本発明者等は、分岐比を変化させるとそれぞれの光路で共振するそれぞれの光のパワーの比率が変化することを発見し、
図4の傾向は、光路長や波長等に依存しないことを見出した。
【0068】
図4において、上記のように特定の光路の長さを基本光路長Sとすると、当該特定の光路を往復する距離は2Sとなる。また、ループ光ファイバ15の長さをループ光路長Lとすると、特定の光路を伝搬する途中でループ光路を1周する光路を往復する距離は2S+Lとなる。この場合、共振する光は、特定の光路の往路でループ光路を1周し復路でループ光路を周回しない場合と、特定の光路の往路でループ光路を周回せず復路でループ光路を1周する場合とがある。また、特定の光路を伝搬する途中でループ光路を2周する光路を往復する距離は2S+2Lとなる。この場合、共振する光は、特定の光路の往路でループ光路を2周し復路でループ光路を周回しない場合と、特定の光路の往路でループ光路を周回せず復路でループ光路を2周する場合と、特定の光路の往路でループ光路を1周し復路でもループ光路を1周する場合とがある。同様に考え、特定の光路を伝搬する途中でループ光路を3周する光路を往復する距離は2S+3Lとなり、特定の光路を伝搬する途中でループ光路を4周する光路を往復する距離は2S+4Lとなり、特定の光路を伝搬する途中でループ光路を5周する光路を往復する距離は2S+5Lとなる。これらの場合においても、特定の光路の往路と復路とで、ループ光路をどのように周回するかについて、全ての組み合わせが適用される。
【0069】
図4より明らかなように、光カプラ16での分岐比が3dB以下では、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のうちループ光路を周回せずに特定の光路で共振する光のパワーの比率が最も高い。従って、光カプラ16での分岐比が3dB以下では、ループ光路を周回せずに特定の光路で共振する光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。この場合、他の光路で共振する光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることが好ましいが、上記リップルはループ光路を周回せずに特定の光路で共振する光の影響を最も受けるため、他の光路で共振する光の共振周期とAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされなくても良い。
【0070】
また、光カプラ16での分岐比が3dB以上4.8dB以下では、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のうちループ光路を1周する光路で共振する光のパワーの比率が最も高い。従って、光カプラ16での分岐比が3dB以上4.8dB以下では、特定の光路の途中でループ光路を1周して共振する光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。この場合、他の光路で共振する光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることが好ましいが、上記リップルは特定の光路の途中でループ光路を1周して共振する光の影響を最も受けるため、他の光路で共振する光の共振周期とAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされなくても良い。
【0071】
また、光カプラ16での分岐比が4.8dB以上では、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のうちループ光路を2周する光路で共振する光のパワーの比率が最も高い。従って、光カプラ16での分岐比が4.8dB以上では、特定の光路の途中でループ光路を2周して共振する光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。この場合、他の光路で共振する光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることが好ましいが、上記リップルは特定の光路の途中でループ光路を2周して共振する光の影響を最も受けるため、他の光路で共振する光の共振周期とAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされなくても良い。
【0072】
次に、光路長が長い場合に生じ易い光のパルス状の光のうねりについて説明する。
【0073】
特定の光路の基本光路長Sが長い場合、出射するパルス状の光の形状がガウス分布形状にうねりが生じた形状となる場合がある。このうねりの周期は上記リップルの周期と比べると非常に大きなものとなる。しかし、本実施形態のファイバレーザ装置では、特定の光路で共振する光のみならず、当該特定の光路に加えてループ光路を周回して共振する光が存在する。従って、基本光路長Sが長く、特定の光路を共振する光のパルス形状にうねりが生じる場合であっても、種光部MOから出射する光には、ループ光路を周回せずに特定の光路を共振する光と、特定の光路の途中でループ光路を周回して共振する光とが合わされているため、当該うねりが低減される。特に
図4より、光カプラ16の分岐比が2dB以上8dB以下であれば、ループ光路を周回せずに特定の光路を共振する光のパワーと、特定の光路の途中でループ光路を1周する光路で共振する光のパワーと、特定の光路の途中でループ光路を2周する光路で共振する光のパワーとが、それぞれバランスされている。従って、特定の光路の基本光路長Sが長い場合であっても、光カプラ16の分岐比が2dB以上8dB以下であれば、出射するパルス状の光にうねりが生じることをより適切に低減することができる。なお、このようにうねりが生じることを低減することが目的であれば、本実施形態と異なり、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のうち最もパワーの大きな光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされなくとも良い。
【0074】
以上説明したように本実施形態のファイバレーザ装置1では、種光部MOは、一部が共有され光が共振する複数の光路を有しており、少なくとも、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のうち最もパワーの大きな光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。パワーが最も大きな光の共振周期と、AOM14が振動する所定周期とが互いに非整数倍の関係とされることで、最も目立つリップルが大きくなることを抑えることができ、種光部MOから出射する光のリップルを抑制することができる。従って、ファイバレーザ装置1から出射する光のリップルを抑制することができる。
【0075】
さらに、本実施形態のファイバレーザ装置1において、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされれば、それぞれの光のリップルが大きくなることをより抑制でき好ましい。
【0076】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について
図5を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0077】
図5は、本実施形態のファイバレーザ装置を示す図である。
図5に示すように、本実施形態のファイバレーザ装置2は、種光部MOがファイバリング型のファイバレーザ装置から成る点において、第1実施形態のファイバレーザ装置1と異なる。
【0078】
本実施形態の種光部MOは、励起光源11と、第1光ファイバ18と、光カプラ51と、増幅用光ファイバ13と、光フィルタ53と、第2光ファイバ54と、AOM14と、第3光ファイバ55と、光カプラ16と、ループ光ファイバ15と、光カプラ52と、を主な構成として備える。
【0079】
光カプラ51は、第1光ファイバ18のコアと増幅用光ファイバ13とのコアとを光学的に結合する。従って、励起光源11から出射して第1光ファイバ18を伝搬する励起光を増幅用光ファイバ13に入射する。なお、本実施形態の第1光ファイバ18は、FBGが形成されていない点において、第1実施形態の第1光ファイバ18と異なる。
【0080】
光フィルタ53は、所定波長の光を透過して他の波長の光の透過を抑制するバンドパスフィルタである。この光フィルタ53は、例えば、波長選択フィルタFLと同様の構成とされ、例えば、増幅用光ファイバ13に添加される活性元素がイッテルビウムである場合、波長が1060nmの光を透過する。光フィルタ53は、第2光ファイバ54の一端に接続されている。第2光ファイバ54は第1実施形態の第2光ファイバ19と同様の構成とされる。
【0081】
第2光ファイバ54の他端には、AOM14が接続されている。本実施形態のAOM14は、光の出射する端面に反射防止加工が施されている点において第1実施形態のAOM14と異なる。本実施形態のAOM14は、所定周期で振動する第1状態において、第2光ファイバ54から入射する光を透過する。AOM14の第2光ファイバ54側と反対側には第3光ファイバ55の一端が接続されている。第3光ファイバ55は第2光ファイバ54と同様の構成とされる。AOM14は、第1状態において、第2光ファイバ54から入射する光を第3光ファイバ55に出射する。また、AOM14は第2状態においては、第2光ファイバ54から入射する光を第3光ファイバ55とは異なる方向に出射する。
【0082】
また、第3光ファイバ55の途中には、光カプラ16が設けられており、第1実施形態において光カプラ16において第2光ファイバ19とループ光ファイバ15とが接続されるのと同様にして、光カプラ16において第3光ファイバ55とループ光ファイバ15とが接続されている。
【0083】
また、第3光ファイバ55の光カプラ16を基準としたAOM14側と反対側の途中には、光カプラ52が設けられている。光カプラ52は、第3光ファイバ55とプリアンプPRの光ファイバ29とを接続している。従って、第3光ファイバ55を伝搬する光は、ある分岐比で光ファイバ29に分岐して光ファイバ29を伝搬する。
【0084】
また、第3光ファイバ55の他端は光カプラ51に接続されている。つまり、光カプラ51は、第1光ファイバ18の端部及び第3光ファイバ55の端部と、増幅用光ファイバ13の端部とを接続し、第1光ファイバ18のコア及び第3光ファイバ55のコアと、増幅用光ファイバ13のコアとが光学的に結合している。
【0085】
本実施形態の種光部MOでは、増幅用光ファイバ13と、光フィルタ53と、第2光ファイバ54とAOM14と第3光ファイバ55とから成る光路を特定の光路とすると、当該特定の光路は、周回状の光路とされる。また、本実施形態の種光部MOにおいても、ループ光ファイバ15からなるループ光路が特定の光路に接続されているため、種光部MOは、複数の光路を有することとなる。本実施形態においても、特定の光路とループ光路とから成る光路は、特定の光路と異なる光路であり、当該特定の光路と一部を共有することとなる。この光路を伝搬する光は、光カプラ16において第3光ファイバ55からループ光ファイバ15に分岐して、ループ光ファイバ15を1周以上周回した後、光カプラ16においてループ光ファイバ15から第3光ファイバ55に結合する。また、ループ光路を含む光路であっても、ループ光ファイバ15を周回する回数が異なれば、互いに異なる光路である。このようにループ光ファイバ15が特定の光路に途中に接続されるため、それぞれの光路の光路長は互いに異なる。従って、ループ光路を分岐することなく特定の光路を周回して共振する光の共振周期、及び、特定の光路を周回する途中でループ光路を1周以上周回して共振する光の共振周期は互いに異なる。
【0086】
本実施形態においても、上記のそれぞれの光路で共振するそれぞれの光のうち、少なくとも、最もパワーの大きな光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。さらに、上記のそれぞれの光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期と、AOM14が振動する上記所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされることが好ましい。例えば、第1実施形態での例示のようにAOM14が振動する振動数が135MHzとされ、振動周期は74×10
−10秒であるとする。この場合、上記特定の光路の長さを基本光路長Sとし、光速を299,792,458m/s、光ファイバの屈折率が1.445の場合、基本光路長Sが1mであれば、特定の光路を周回して共振する光の共振周期は約1.0×10
−8秒となる。この場合、特定の光路で共振する光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。また、上記のように基本光路長Sが1mでループ光ファイバ15の長さであるループ光路長Lが0.5mである場合、光が共振する間にループ光路を1周する光路では、共振する光の共振周期は約1.3×10
−8秒となり、光が共振する間にループ光路を2周する光路では、共振する光の共振周期は約1.5×10
−8秒となる。従って、この場合、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のそれぞれの共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。
【0087】
本実施形態の種光部MOにおいては、励起光源11から常時励起光が出射されており、待機状態において、AOM14が第2状態とされる。従って、待機状態では、増幅用光ファイバ13から放出される光が光フィルタ53を透過して第2光ファイバ54を伝搬する場合であっても、第2光ファイバ54からAOM14に入射した光は、第3光ファイバ55に入射されることなく、外部に放出される。従って、特定の光路や、特定の光路とループ光路とから成る光路を光が周回せず、光が共振しない。このため、増幅用光ファイバ13の活性元素の励起状態が高くなる。なお、本実施形態においても、種光部MOのAOM14が第2状態とされる期間は、増幅用光ファイバ13において自己発振しない期間とされる。
【0088】
次に、パルス状の光が出射する時点から僅かに前のタイミングで、AOM14が第1状態とされる。すると、第2光ファイバ54からAOM14に入射する光は第3光ファイバ55に透過する。このため、特定の光路や、特定の光路とループ光路とから成る光路を光が周回し、それぞれの光路で光が共振する。この共振光により、上記のように高い励起状態とされた増幅用光ファイバ13の活性元素が誘導放出を起こし、共振光が増幅されAOM14からパルス状の光が出射し、当該光が光カプラ52からプリアンプPRの光ファイバ29に出射する。そして、第1実施形態と同様にしてプリアンプPR、メインアンプPAで光が増幅されて、増幅されたパルス状の光は光ファイバ40から出射する。
【0089】
上記のように、それぞれの光路で共振するそれぞれの光のうち、最もパワーの大きな光の共振周期と、第1状態においてAOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされる。従って、本実施形態においても、種光部MOから出射するパルス状の光のリップルを抑制することができる。従って、ファイバレーザ装置2から出射する光のリップルを抑制することができる。
【0090】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
例えば、上記実施形態のファイバレーザ装置1において、種光部MOのAOM14が光を反射する例を示したが、本発明はこれに限らない。例えば、AOM14の端面が無反射加工されると共にAOM14とプリアンプPRとの間にFBG12よりも反射率が低い第2のFBGを設けても良い。この場合、AOM14がオンとなり光がAOM14を透過すると第2のFBGで光が反射して、FBG12と第2のFBGとの間で発振を起こすことができる。この場合、FBG12と第2のFBGとの間が特定の光路となる。
【0092】
また、上記ファイバレーザ装置1,2は、種光部MOの他に、プリアンプPRと、メインアンプPAと、波長変換部RFと、波長選択フィルタFLとを備えた。しかし、ファイバレーザ装置である種光部MOから出射する光のパワーが大きければ、プリアンプPRと、メインアンプPAと、波長変換部RFと、波長選択フィルタFLとが備わっていなくても良い。
【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0094】
<比較例>
第1実施形態の種光部MOの構成と同じ構成の光学系を準備した。この光学系では、AOM14が振動する所定周期を135MHzとした。また、この光学系で、AOM14からループ光ファイバ15を経由せずにFBG12に至る特定の光路の光路長である基本光路長Sと、ループ光ファイバ15の光路長であるループ光路長Lとの関係を以下の様にした。
2S+3L=740cm
【0095】
つまり、本光学系では、AOM14とFBG12とを往復する間にループ光ファイバ15を3回転する光路であり、その光路長を740cmとした。この光路長は、135MHzの周波数で10周期の間に光が光ファイバを伝搬する距離に等しい。つまり、この光学系における光の共振周期と、AOM14が振動する所定周期とが、互いに整数倍の関係とされている。
【0096】
<実施例>
比較例の光学系よりも基本光路長の長さを1cm増やして、光路長を742cmとしたこと以外は、比較例と同じ光学系を準備した。この光学系では、光の共振周期と、AOM14が振動する所定周期とが、互いに非整数倍の関係とされている。
【0097】
次に比較例、実施例の光学系から出射する光の強度の時間的変化を測定した。その結果を
図6に示し、
図6の点線で囲まれた部分を
図7に示す。
図6、
図7に示すように、光の共振周期とAOM14が振動する所定周期とが互いに整数倍の関係とされる比較例では、リップルが生じた。一方、光の共振周期とAOM14が振動する所定周期とが互いに非整数倍の関係とされる実施例では、比較例と比べてリップルが抑制されることが示された。
【0098】
以上、実施例及び比較例で示されたように、本発明によれば、出射する光のリップルを抑制することができることが示された。
【0099】
以上説明したように、本発明によれば、出射する光のリップルを抑制することができるファイバレーザ装置が提供され、加工機や、医療機器といったレーザ光を用いる分野での利用ができる。