【実施例】
【0044】
易引裂性試験
【0045】
図1に示されるように、フィルム10に開口を入れてから、開口11から引き裂いた。引裂き位置13(開口11から横方向に10cm離れている) と理想の引裂き線 15(開口11から横方向に延伸し、かつフィルム10の端縁と垂直)との間の垂直距離Dを測定した。理想の引裂き線15と引裂き位置13との間の垂直距離Dが5mm以下であれば、そのフィルムは易引裂性があるとみなした。上述の試験は、International Polymer Processing XIX(2004 vol.2,p.147)に開示された直線カット性試験を参照とすることができる。
【0046】
調製例1
【0047】
m−フタル酸(2mole)332g、p−フタル酸(2mole)332g、および1,6−ジアミノヘキサン(4mole)464gを混合し窒素下で200℃に加熱して縮重合を約3時間進行させた。縮重合により生じた水をディーン・スターク装置(Dean-Stark apparatus)で除去した。次いで、重合触媒としてのトリブチルスズ(300ppm)0.33gをその縮重合に加えてから、真空(200torr/30分→500torr/30分→重合後760torrに戻す)下で約280℃に加熱してさらに重合させ、これによりランダム共重合体を得た。このランダム共重合体の繰り返し単位(b1)と繰り返し単位(b2)のモル比は50:50であった。
【0048】
【化22】
【0049】
【化23】
【0050】
ランダム共重合体の相対粘度は1.17であった。相対粘度は次のステップにより測定した。フェノールおよびテトラクロロエタン(v/v=6/4)を溶媒とし、サンプル(例えばランダム共重合体)をこの溶媒中に溶解し、濃度0.3g/dLのサンプル溶液を作製した。サンプル溶液が25℃でオストワルド粘度計を通過する時間をtと測定した。フェノールおよびテトラクロロエタン(v/v=6/4)の溶媒が25℃でオストワルド粘度計を通過する時間をt0と測定した。tのt0に対する比率(t/t0)をサンプルの相対粘度とした。示差走査熱量計(DSC)で分析したところ、ランダム共重合体のTgは124℃、Tccは175℃、Tmは270℃であった。
【0051】
調製例2
【0052】
m−フタル酸(2.4mole)399g、p−フタル酸(1.6mole)265g、および1,6−ジアミノヘキサン(4mole)464gを混合し窒素下200℃に加熱して縮重合を約3時間進行させた。縮重合により生じた水をディーン・スターク装置で除去した。次いで、重合触媒としてのトリブチルスズ(300ppm)0.33gをその縮重合に加えてから、真空(200torr/30分→500torr/30分→重合後760torrに戻す)下で約280℃に加熱してさらに重合させ、これによりランダム共重合体を得た。このランダム共重合体の繰り返し単位(b1)と繰り返し単位(b2)のモル比は60:40であった。
【0053】
【化24】
【0054】
【化25】
【0055】
ランダム共重合体の相対粘度は1.27であった。DSCで分析した 、ランダム共重合体のTgは126℃、Tccは207℃、Tmは245℃であった。
【0056】
調製例3
【0057】
m−フタル酸(2.8mole)466g、p−フタル酸(1.2mole)198g、および1,6−ジアミノヘキサン(4mole)464gを混合し窒素下200℃に加熱して縮重合を約3時間進行させた。縮重合により生じた水をディーン・スターク装置で除去した。次いで、重合触媒としてのトリブチルスズ(300ppm)0.33gをその縮重合に加えてから、真空(200torr/30分→500torr/30分→重合後760torrに戻す)下で約280℃に加熱してさらに重合させ、これによりランダム共重合体を得た。このランダム共重合体の繰り返し単位(b1)と繰り返し単位(b2)のモル比は70:30であった。
【0058】
【化26】
【0059】
【化27】
【0060】
ランダム共重合体の相対粘度は1.26であった。DSCで分析したところ、ランダム共重合体のTgは117℃であり、TccおよびTmは無かった。このことは、当該ランダム共重合体は非晶質共重合体であったことを意味する。
【0061】
比較例1
【0062】
繰り返し単位(a)を有する市販のポリアミド(Bright (BR) grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamid Factory)を準備した。
【0063】
【化28】
【0064】
そのポリアミドプラスチックペレットを窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、T−ダイから押し出して、フラットシート様フィルムを形成した。次いで、そのシート様フィルムを30℃から35℃の冷却ローラに貼付した後、引出しローラで巻回してシートを形成した。次いで、そのシートを二軸延伸機(KARO IV)で190℃に予熱してから、延伸速度100mm/秒でMDおよびTDに同時に二軸延伸した。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも3.0倍とした。次いで、その延伸したフィルムを210℃の熱処理炉に入れて熱硬化させた。フィルム中のポリアミドの結晶化度は27.3%、相対粘度は3.0から3.3であった。フィルムの厚さは15マイクロメーターであった。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は12mmであった。つまり、フィルムは易引裂性を備えていなかった。
【0065】
比較例2
【0066】
市販のポリアミド(BR grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamide Factory)75重量部および調製例1のランダム共重合体25重量部を窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、Tダイから押し出してフィルムを形成した。調製例1における結晶性ランダム共重合体は融点が高すぎるため、調製例1における結晶性ランダム共重合体と市販のポリアミドとのブレンドは、製造中に容易に破損してしまい、かつ加工が困難であった。
【0067】
実施例1
【0068】
市販のポリアミド(BR grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamide Factory)85重量部および調製例2におけるランダム共重合体15重量部を窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、Tダイから押し出して、フラットシート様フィルムを形成した。次いで、そのシート様フィルムを30℃から35℃の冷却ローラに貼付した後、引出しローラで巻回してシートを形成した。次いで、そのシートを二軸延伸機(KARO IV)で190℃に予熱してから、延伸速度100mm/秒でMDおよびTDに同時に二軸延伸した。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも3.0倍とした。次いで、その延伸したフィルムを210℃の熱処理炉に入れて熱硬化させた。フィルム中のブレンドの結晶化度は25.4%、フィルムの厚さは15マイクロメーターであった。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は10mmであった。つまり、フィルムは易引裂性を備えていなかった。
【0069】
上述のステップを繰り返し行った。上述と異なるのは、二軸延伸倍率を100mm/秒から50mm/秒に下げた点である。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は6mmであった。つまり、このフィルムも依然として易引裂性を備えていなかった。
【0070】
上述のステップを繰り返し行った。上述と異なるのは、二軸延伸倍率を100mm/秒から25mm/秒に下げた点である。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は3mmであった。つまり、このフィルムは易引裂性を備えていた。このように、二軸延伸倍率を微調整することで、結晶性ランダム共重合体をブレンドしたフィルムに易引裂性を持たせることができた。
【0071】
実施例2
【0072】
市販のポリアミド(BR grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamide Factory)75重量部および調製例2におけるランダム共重合体25重量部を窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、Tダイから押し出して、フラットシート様フィルムを形成した。次いで、そのシート様フィルムを30℃から35℃の冷却ローラに貼付した後、引出しローラで巻回してシートを形成した。次いで、そのシートを二軸延伸機(KARO IV)で190℃に予熱してから、延伸速度100mm/秒でMDおよびTDに同時に二軸延伸した。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも3.0倍とした。次いで、その延伸したフィルムを210℃の熱処理炉に入れて熱硬化させた。フィルム中のブレンドの結晶化度は23.3%、フィルムの厚さは15マイクロメーターであった。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は4mmであった。つまり、フィルムは易引裂性を備えていた。
【0073】
ブレンドのフィルムを、線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE, 厚さ70マイクロメーター、Formosa Flexible Packaging Co.)にラミネートし、ラミネートフィルムを形成した。そのラミネートフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は2mmであった。つまり、このラミネートフィルムは依然として易引裂性を備えていた。
【0074】
また、比較例1におけるフィルムを線状低密度ポリエチレンフィルムにラミネートしラミネートフィルムを形成した。そのラミネートフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は19mmであった。つまり、このラミネートフィルムは易引裂性を備えていなかった。
【0075】
比較例3
【0076】
市販のポリアミド(BR grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamide Factory)75重量部および調製例3におけるランダム共重合体25重量部を窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、Tダイから押し出して、フラットシート様フィルムを形成した。次いで、そのシート様フィルムを30℃から35℃の冷却ローラに貼付した後、引出しローラで巻回してシートを形成した。次いで、そのシートを二軸延伸機(KARO IV)で190℃に予熱してから、延伸速度100mm/秒でMDおよびTDに同時に二軸延伸した。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも3.0倍とした。次いで、その延伸したフィルムを210℃の熱処理炉に入れて熱硬化させた。フィルム中のブレンドの結晶化度は20.7%、フィルムの厚さは15マイクロメーターであった。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は8mmであった。つまり、このフィルムは易引裂性を備えていなかった。このように、非晶質共重合体は、ブレンドのフィルムに易引裂性を持たせることができなかった。
【0077】
上述のステップを繰り返し行った。上述と異なるのは、二軸延伸倍率を100mm/秒から25mm/秒に下げた点である。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は同様に5mmより大きかった。つまり、フィルムは依然として易引裂性を備えていなかった。このように、二軸延伸倍率を微調整したとしても、非晶質ランダム共重合体をブレンドしたフィルムは依然易引裂性を備えなかった。
【0078】
当業者には、開示された方法および物質に各種変更および変化を加え得ることは明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示とし見なされるよう意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示される。