特許第6830977号(P6830977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6830977ポリアミド組成物およびフィルム、ならびにその製造方法
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  • 特許6830977-ポリアミド組成物およびフィルム、ならびにその製造方法 図000039
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6830977
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物およびフィルム、ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20210208BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210208BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20210208BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20210208BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20210208BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08J5/18CFG
   B32B15/088
   B32B27/34
   C08G69/26
   B29C55/12
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-71793(P2019-71793)
(22)【出願日】2019年4月4日
(65)【公開番号】特開2019-189854(P2019-189854A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】107113189
(32)【優先日】2018年4月18日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 志宏
(72)【発明者】
【氏名】呂 銘聰
(72)【発明者】
【氏名】張 勝隆
(72)【発明者】
【氏名】劉 弘仁
(72)【発明者】
【氏名】蕭 柏齡
(72)【発明者】
【氏名】黎 ▲彦▼成
(72)【発明者】
【氏名】張 義和
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−122066(JP,A)
【文献】 特開2010−174158(JP,A)
【文献】 特開平11−181278(JP,A)
【文献】 特開平07−033982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08J 5/18
C08G 69/00−69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含む易引裂性二軸延伸フィルム用ポリアミド組成物であって、
前記第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、前記第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有し、かつ前記第2のポリアミドが結晶性ランダム共重合体であり、
前記第1のポリアミドと前記第2のポリアミドの重量比が90:10から70:30であり、
前記第2のポリアミドの前記繰り返し単位(b1)と前記繰り返し単位(b2)のモル比が65:35から55:45である、易引裂性二軸延伸フィルム用ポリアミド組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
前記第1のポリアミドと前記第2のポリアミドの重量比が85:15から75:25である、請求項1に記載の易引裂性二軸延伸フィルム用ポリアミド組成物。
【請求項3】
前記第1のポリアミドの25℃における相対粘度が2.5から4.0である、請求項1に記載の易引裂性二軸延伸フィルム用ポリアミド組成物。
【請求項4】
前記第2のポリアミドの25℃における相対粘度が1.01から2.5である、請求項1に記載の易引裂性二軸延伸フィルム用ポリアミド組成物。
【請求項5】
第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物を含む易引裂性二軸延伸フィルムであって、
前記第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、前記第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有し、かつ前記第2のポリアミドが結晶性ランダム共重合体であり、
前記第1のポリアミドと前記第2のポリアミドの重量比が90:10から70:30であり、
前記第2のポリアミドの前記繰り返し単位(b1)と前記繰り返し単位(b2)のモル比が65:35から55:45である、易引裂性二軸延伸フィルム。
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項6】
ポリマーフィルム、金属箔、またはこれらの組み合わせにラミネートしてラミネートフィルムに形成される請求項5に記載の易引裂性二軸延伸フィルム。
【請求項7】
易引裂性二軸延伸フィルムを形成する方法であって、
ポリアミド組成物のシートを準備する工程と、
前記シートを二軸延伸して易引裂性二軸延伸フィルムを形成する工程と、
を含み、
前記ポリアミド組成物が第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含み、
前記第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、前記第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有し、かつ前記第2のポリアミドが結晶性ランダム共重合体であり、
前記第1のポリアミドと前記第2のポリアミドの重量比が90:10から70:30であり、
前記第2のポリアミドの前記繰り返し単位(b1)と前記繰り返し単位(b2)のモル比が65:35から55:45であり、
前記シートが20mm/秒から40mm/秒の速度で二軸延伸される、方法。
【化9】
【化10】
【化11】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月18日に出願された台湾特許出願第107113189号に基づくと共に、その優先権を主張し、その開示全体が参照することにより本明細書に援用される。
【0002】
本技術分野はポリイミドのブレンドに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの分野および産業、例えば食品、電子機器、および医療産業などにおいてポリアミドフィルムの需要は伸びている。かかる需要の伸びは、ポリアミドフィルムの優れた特性(例えば耐突き刺し性、耐摩耗性、広い適用温度範囲、真空下での耐熱性、無毒性、可塑剤を放出しない、高いガスバリア率など)によるものと考えられる。近年、世界の人口における高齢者(一般に65歳以上)の割合が急速に増加している。老人および身体障害者が、若年者、健常者と同じような快適な生活を送ると共に、社会生活を楽しめるようにするため、ポリアミドラミネート包装材料中に用いられる易引裂性(easy-tear properties)(包装の分野において“アクセシビリティ(accessibility)”として知られるコンセプト)を備えるポリアミドフィルムが注目を浴び始めている。易引裂性ポリアミドフィルムは、軟質プラスティック包装のグローバルなマーケットの発展には欠かせないものである。易引裂性ポリアミドラミネート包装材料は、例えばソースの小袋、調味料のパッケージ、食用油のパッケージ、食品パッケージ、おかゆのパッケージ、母乳保存袋、飲料バッグなどのような食品を包装するのに利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第20170009384号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20070202337号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
易引裂性(easy-tear)フィルムに用いられる新規なポリアミド組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1実施形態は、ポリアミド組成物であって、第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含み、第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有し、かつ第2のポリアミドが結晶性ランダム共重合体である、ポリアミド組成物を提供する。
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】
【化3】
【0010】
本開示の1実施形態は、フィルムであって、第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物を含んでなり、第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有し、かつ第2のポリアミドが結晶性ランダム共重合体である、フィルムを提供する。
【0011】
【化4】
【0012】
【化5】
【0013】
【化6】
【0014】
本開示の1実施形態は、フィルムを形成する方法であって、ポリアミド組成物のシートを準備する工程と、シートを二軸延伸してフィルムを形成する工程とを含み、ポリアミド組成物が第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含み、第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有し、第2のポリアミドが結晶性ランダム共重合体であり、シートが20mm/秒から100mm/秒の速度で二軸延伸される、方法を提供する。
【0015】
【化7】
【0016】
【化8】
【0017】
【化9】
【発明の効果】
【0018】
本開示のフィルムは、易引裂性を備えるだけでなく、耐突き刺し性、耐摩耗性、広い適用温度範囲、真空下での耐熱性、無毒性、可塑剤を放出しない、高いガスバリア率などのような特性をも備えており、食品の包装に適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面を参照しながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明および実施例を読むことにより、本発明をより十分に理解することができる。
図1】本開示の1実施形態におけるフィルムの易引裂性試験を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう多数の特定の詳細が記載される。しかし、これらの特定の詳細がなくとも、1つまたは複数の実施形態が実施可能であることは明らかであろう。また、図を簡略とするために、既知の構造および装置は概略的に示されている。
【0021】
本開示の1実施形態は、ポリアミド組成物であって、第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含み、第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有するポリアミド組成物を提供する。第2のポリアミドは結晶性ランダム共重合体である、1実施形態において、第1のポリアミドと第2のポリアミドの重量比は90:10から70:30である。あるいは、第1のポリアミドと第2のポリアミドの重量比は85:15から75:25である。第2のポリアミドの重量含有率が高すぎると、コストおよびポリアミド組成物の加工の難度が高まり得る。第2のポリアミドの重量含有率が低すぎると、易引裂性を備えるフィルムを形成するのが困難となる。
【0022】
【化10】
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
1実施形態において、第2のポリアミドの繰り返し単位(b1)と繰り返し単位 (b2)のモル比は65:35から55:45である。
【0026】
【化13】
【0027】
【化14】
【0028】
第2のポリアミド中の繰り返し単位(b1)のモル比率が高すぎると、ポリアミドが非晶質ポリマーとなってしまう。このような非晶質ポリマーを含むポリアミド組成物から製造されるフィルムは、やはり易引裂性に欠けるものである。第2のポリアミド中の繰り返し単位(b1)のモル比率が低すぎると、第2のポリアミドの融点が、第1のポリアミドとブレンドすると共に加工してフィルムを製造するには過度に高いものとなってしまう。
【0029】
【化15】
【0030】
1実施形態において、第1のポリアミドの25℃における相対粘度は2.5から4.0であり、第2のポリアミドの相対粘度は1.01から2.5である。第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの相対粘度が高すぎるかまたは低すぎると、後続のフィルムを製造するための加工に適さなくなる。1実施形態では、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの相対粘度には0から2の差がある。相対粘度の差が大きすぎると、第1のポリアミドと第2のポリアミドのブレンドおよび後続のフィルム製造のための加工に不利となる。
【0031】
1実施形態において、第2のポリアミドの融点(Tm)は220℃から260℃であり、冷却結晶化温度(temperature of cooling crystallization,Tcc)は170℃から215℃であり、ガラス転移温度(Tg)は120℃から130℃である。第2のポリアミドの融点が高すぎるかまたは低すぎると、第1のポリアミドと第2のポリアミドの融点の差が開きすぎるため、第1のポリアミドと加工するのが困難となってしまう。1実施形態において、ポリアミド組成物の融点は195℃から225℃、結晶化度は20%から30%である。
【0032】
本開示の1実施形態は、フィルムであって、第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含むポリアミド組成物を含んでなり、第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有し、かつ第2のポリアミドが結晶性ランダム共重合体である、フィルムを提供する。
【0033】
【化16】
【0034】
【化17】
【0035】
【化18】
【0036】
1実施形態において、該フィルムの厚さは、製品規格を満たす、例えば15マイクロメーターから25マイクロメーターである。あるいは、フィルムの厚さは、製品の要求を満たすべく増減させてよい。1実施形態において、フィルムは他のフィルム基板にラミネートすることができる。このフィルム基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ケン化エチレン酢酸ビニル(EVOH)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、イオン交換ポリマー、またはこれらの混合物のようなポリマーから作製されたものであってよい。フィルム基板は、そのまま用いるか、またはさらに単軸もしくは二軸に延伸してもよい。加えて、アルミニウム箔のような金属箔をフィルム基板として用いてラミネートフィルムを形成することもできる。また、ポリマーフィルムと金属箔との組み合わせのフィルムを用いることもできる。ラミネート方法は、押出しラミネート、熱融着ラミネート(hot-melting lamination)、ドライラミネート、またはウェットラミネートであってよい。1実施形態において、ラミネートフィルムの厚さは、一般の製品規格を満たす、例えば50マイクロメーターから120マイクロメーターである。あるいは、ラミネートフィルムにおける各層の厚さが、製品の要求を満たすべく増減してもよい。
【0037】
本開示の1実施形態は、フィルムを形成する方法であって、ポリアミド組成物のシートを準備する工程と、シートを二軸延伸してフィルムを形成する工程とを含み、該ポリアミド組成物が、第1のポリアミドと第2のポリアミドとのブレンドを含み、第1のポリアミドが繰り返し単位(a)を有し、第2のポリアミドが繰り返し単位(b1)および繰り返し単位(b2)を有し、かつ第2のポリアミドが結晶性ランダム共重合体である、方法を提供する。
【0038】
【化19】
【0039】
【化20】
【0040】
【化21】
【0041】
該フィルムは次の方法により形成することができる。例えば、適したモル比のm−フタル酸、p−フタル酸、および1,6−ジアミノヘキサンを混合し、窒素下で200℃に加熱し、約3時間縮重合させる。次いで、触媒量のトリブチルスズのような重合触媒またはその他適した触媒をその縮重合に加えてから、真空下で約280℃に加熱してさらに重合させ、これによりランダム共重合体(例えば第2のポリアミド)を得る。続いて、第1のポリアミドおよび第2のポリアミドを窒素下でフィルム押出機に入れ、溶融ブレンドを行ってから、Tダイから押し出して、フラットシート型フィルムを形成する。1実施形態において、溶融ブレンドは220℃から260℃の温度で行うが、この温度は第1のポリアミドおよび第2のポリアミドの融点により決まる。溶融ブレンドをスムーズに行えるよう、第2のポリアミドと第1のポリアミドの融点の差は50℃未満とする必要がある。次いでそのシート型フィルムを冷却ローラに貼付してから、引出しローラ(drawing roller)で巻回してシートを形成する。1実施形態において、冷却ローラの温度は20℃から45℃である。冷却ローラの温度設定が高すぎると、シート型フィルムがローラにくっつき易くなる。冷却ローラの温度設定が低すぎると、シート型フィルムが過度に収縮してしまい、例えば反りなどの問題を引き起こす可能性がある。次いで、シートを二軸延伸機(biaxial stretcher)(例えばKARO IV)で予熱してから、延伸速度20mm/秒から100mm/秒で機械方向(MD)および横方向(TD)に同時に二軸延伸する。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも2.5倍から3.5倍(例えば3.0倍)である。そして、シートを180℃から200℃(例えば190℃)に予熱する。シートを予熱する温度が高すぎると、シート延伸時に穴が空き易くなる。シートを予熱する温度が低すぎると、延伸時に破損したフィルムが形成され易くなる。1実施形態において、二軸延伸速度は20mm/秒から40mm/秒である。二軸延伸速度が高すぎると、フィルムの易引裂性に影響が出る可能性がある。二軸延伸速度が低すぎると、製造時間を増加させることになり得る。いくつかの実施形態では、高い延伸倍率を用いて形成されたフィルムは易引裂性を備えないが、低い延伸倍率を用いて形成されたフィルムは易引裂性を備える。第2のポリアミドが非晶質である場合は、延伸倍率が低いか高いかにかかわらず、フィルムは易引裂性を備え得ないという点に留意すべきある。二軸延伸倍率(biaxial stretching ratio)が高すぎると、フィルムをスムーズに形成できなくなる。二軸延伸倍率が低すぎると、易引裂性が劣ってしまう。次いで、延伸されたフィルムを熱処理炉に入れてフィルムを熱硬化させる。1実施形態において、熱処理は200℃から220℃の温度、例えば210℃で行う。熱処理温度が高すぎると、フィルムをスムーズに形成できなくなる。熱処理温度が低すぎると、フィルムの寸法安定性が低下する恐れがある。
【0042】
上記プロセスにより形成されるフィルムは、易引裂性を備えるだけでなく、耐突き刺し性、耐摩耗性、広い適用温度範囲、真空下での耐熱性、無毒性、可塑剤を放出しない、高いガスバリア率などのような特性をも備えており、食品の包装に適したものとなる。
【0043】
以下に、当業者が容易に理解できるよう、添付の図面を参照しながら例示的な実施例を詳細に記載する。本発明概念は、ここに記載される例示的実施形態に限定されることなく、様々な形態で具体化することができる。明確とするために既知の部分についての説明は省き、全体を通して類似する参照番号は類似する要素を表すものとする。
【実施例】
【0044】
易引裂性試験
【0045】
図1に示されるように、フィルム10に開口を入れてから、開口11から引き裂いた。引裂き位置13(開口11から横方向に10cm離れている) と理想の引裂き線 15(開口11から横方向に延伸し、かつフィルム10の端縁と垂直)との間の垂直距離Dを測定した。理想の引裂き線15と引裂き位置13との間の垂直距離Dが5mm以下であれば、そのフィルムは易引裂性があるとみなした。上述の試験は、International Polymer Processing XIX(2004 vol.2,p.147)に開示された直線カット性試験を参照とすることができる。
【0046】
調製例1
【0047】
m−フタル酸(2mole)332g、p−フタル酸(2mole)332g、および1,6−ジアミノヘキサン(4mole)464gを混合し窒素下で200℃に加熱して縮重合を約3時間進行させた。縮重合により生じた水をディーン・スターク装置(Dean-Stark apparatus)で除去した。次いで、重合触媒としてのトリブチルスズ(300ppm)0.33gをその縮重合に加えてから、真空(200torr/30分→500torr/30分→重合後760torrに戻す)下で約280℃に加熱してさらに重合させ、これによりランダム共重合体を得た。このランダム共重合体の繰り返し単位(b1)と繰り返し単位(b2)のモル比は50:50であった。
【0048】
【化22】
【0049】
【化23】
【0050】
ランダム共重合体の相対粘度は1.17であった。相対粘度は次のステップにより測定した。フェノールおよびテトラクロロエタン(v/v=6/4)を溶媒とし、サンプル(例えばランダム共重合体)をこの溶媒中に溶解し、濃度0.3g/dLのサンプル溶液を作製した。サンプル溶液が25℃でオストワルド粘度計を通過する時間をtと測定した。フェノールおよびテトラクロロエタン(v/v=6/4)の溶媒が25℃でオストワルド粘度計を通過する時間をt0と測定した。tのt0に対する比率(t/t0)をサンプルの相対粘度とした。示差走査熱量計(DSC)で分析したところ、ランダム共重合体のTgは124℃、Tccは175℃、Tmは270℃であった。
【0051】
調製例2
【0052】
m−フタル酸(2.4mole)399g、p−フタル酸(1.6mole)265g、および1,6−ジアミノヘキサン(4mole)464gを混合し窒素下200℃に加熱して縮重合を約3時間進行させた。縮重合により生じた水をディーン・スターク装置で除去した。次いで、重合触媒としてのトリブチルスズ(300ppm)0.33gをその縮重合に加えてから、真空(200torr/30分→500torr/30分→重合後760torrに戻す)下で約280℃に加熱してさらに重合させ、これによりランダム共重合体を得た。このランダム共重合体の繰り返し単位(b1)と繰り返し単位(b2)のモル比は60:40であった。
【0053】
【化24】
【0054】
【化25】
【0055】
ランダム共重合体の相対粘度は1.27であった。DSCで分析した 、ランダム共重合体のTgは126℃、Tccは207℃、Tmは245℃であった。
【0056】
調製例3
【0057】
m−フタル酸(2.8mole)466g、p−フタル酸(1.2mole)198g、および1,6−ジアミノヘキサン(4mole)464gを混合し窒素下200℃に加熱して縮重合を約3時間進行させた。縮重合により生じた水をディーン・スターク装置で除去した。次いで、重合触媒としてのトリブチルスズ(300ppm)0.33gをその縮重合に加えてから、真空(200torr/30分→500torr/30分→重合後760torrに戻す)下で約280℃に加熱してさらに重合させ、これによりランダム共重合体を得た。このランダム共重合体の繰り返し単位(b1)と繰り返し単位(b2)のモル比は70:30であった。
【0058】
【化26】
【0059】
【化27】
【0060】
ランダム共重合体の相対粘度は1.26であった。DSCで分析したところ、ランダム共重合体のTgは117℃であり、TccおよびTmは無かった。このことは、当該ランダム共重合体は非晶質共重合体であったことを意味する。
【0061】
比較例1
【0062】
繰り返し単位(a)を有する市販のポリアミド(Bright (BR) grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamid Factory)を準備した。
【0063】
【化28】
【0064】
そのポリアミドプラスチックペレットを窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、T−ダイから押し出して、フラットシート様フィルムを形成した。次いで、そのシート様フィルムを30℃から35℃の冷却ローラに貼付した後、引出しローラで巻回してシートを形成した。次いで、そのシートを二軸延伸機(KARO IV)で190℃に予熱してから、延伸速度100mm/秒でMDおよびTDに同時に二軸延伸した。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも3.0倍とした。次いで、その延伸したフィルムを210℃の熱処理炉に入れて熱硬化させた。フィルム中のポリアミドの結晶化度は27.3%、相対粘度は3.0から3.3であった。フィルムの厚さは15マイクロメーターであった。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は12mmであった。つまり、フィルムは易引裂性を備えていなかった。
【0065】
比較例2
【0066】
市販のポリアミド(BR grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamide Factory)75重量部および調製例1のランダム共重合体25重量部を窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、Tダイから押し出してフィルムを形成した。調製例1における結晶性ランダム共重合体は融点が高すぎるため、調製例1における結晶性ランダム共重合体と市販のポリアミドとのブレンドは、製造中に容易に破損してしまい、かつ加工が困難であった。
【0067】
実施例1
【0068】
市販のポリアミド(BR grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamide Factory)85重量部および調製例2におけるランダム共重合体15重量部を窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、Tダイから押し出して、フラットシート様フィルムを形成した。次いで、そのシート様フィルムを30℃から35℃の冷却ローラに貼付した後、引出しローラで巻回してシートを形成した。次いで、そのシートを二軸延伸機(KARO IV)で190℃に予熱してから、延伸速度100mm/秒でMDおよびTDに同時に二軸延伸した。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも3.0倍とした。次いで、その延伸したフィルムを210℃の熱処理炉に入れて熱硬化させた。フィルム中のブレンドの結晶化度は25.4%、フィルムの厚さは15マイクロメーターであった。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は10mmであった。つまり、フィルムは易引裂性を備えていなかった。
【0069】
上述のステップを繰り返し行った。上述と異なるのは、二軸延伸倍率を100mm/秒から50mm/秒に下げた点である。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は6mmであった。つまり、このフィルムも依然として易引裂性を備えていなかった。
【0070】
上述のステップを繰り返し行った。上述と異なるのは、二軸延伸倍率を100mm/秒から25mm/秒に下げた点である。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は3mmであった。つまり、このフィルムは易引裂性を備えていた。このように、二軸延伸倍率を微調整することで、結晶性ランダム共重合体をブレンドしたフィルムに易引裂性を持たせることができた。
【0071】
実施例2
【0072】
市販のポリアミド(BR grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamide Factory)75重量部および調製例2におけるランダム共重合体25重量部を窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、Tダイから押し出して、フラットシート様フィルムを形成した。次いで、そのシート様フィルムを30℃から35℃の冷却ローラに貼付した後、引出しローラで巻回してシートを形成した。次いで、そのシートを二軸延伸機(KARO IV)で190℃に予熱してから、延伸速度100mm/秒でMDおよびTDに同時に二軸延伸した。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも3.0倍とした。次いで、その延伸したフィルムを210℃の熱処理炉に入れて熱硬化させた。フィルム中のブレンドの結晶化度は23.3%、フィルムの厚さは15マイクロメーターであった。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は4mmであった。つまり、フィルムは易引裂性を備えていた。
【0073】
ブレンドのフィルムを、線状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE, 厚さ70マイクロメーター、Formosa Flexible Packaging Co.)にラミネートし、ラミネートフィルムを形成した。そのラミネートフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は2mmであった。つまり、このラミネートフィルムは依然として易引裂性を備えていた。
【0074】
また、比較例1におけるフィルムを線状低密度ポリエチレンフィルムにラミネートしラミネートフィルムを形成した。そのラミネートフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は19mmであった。つまり、このラミネートフィルムは易引裂性を備えていなかった。
【0075】
比較例3
【0076】
市販のポリアミド(BR grade nylon pellets, Li Peng Changhua Polyamide Factory)75重量部および調製例3におけるランダム共重合体25重量部を窒素下でフィルム押出し機中に入れ、220℃から260℃で溶融ブレンドしてから、Tダイから押し出して、フラットシート様フィルムを形成した。次いで、そのシート様フィルムを30℃から35℃の冷却ローラに貼付した後、引出しローラで巻回してシートを形成した。次いで、そのシートを二軸延伸機(KARO IV)で190℃に予熱してから、延伸速度100mm/秒でMDおよびTDに同時に二軸延伸した。MDおよびTDの延伸倍率はいずれも3.0倍とした。次いで、その延伸したフィルムを210℃の熱処理炉に入れて熱硬化させた。フィルム中のブレンドの結晶化度は20.7%、フィルムの厚さは15マイクロメーターであった。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は8mmであった。つまり、このフィルムは易引裂性を備えていなかった。このように、非晶質共重合体は、ブレンドのフィルムに易引裂性を持たせることができなかった。
【0077】
上述のステップを繰り返し行った。上述と異なるのは、二軸延伸倍率を100mm/秒から25mm/秒に下げた点である。そのフィルムに易引裂性試験を行ったところ、理想の引裂き線と引裂き位置との間の垂直距離は同様に5mmより大きかった。つまり、フィルムは依然として易引裂性を備えていなかった。このように、二軸延伸倍率を微調整したとしても、非晶質ランダム共重合体をブレンドしたフィルムは依然易引裂性を備えなかった。
【0078】
当業者には、開示された方法および物質に各種変更および変化を加え得ることは明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示とし見なされるよう意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により示される。
【符号の説明】
【0079】
D…垂直距離
10…フィルム
11…開口
13…引裂き位置
15…理想の引裂き線
図1