(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シュラウドは、前記翼本体の負圧面と前記シュラウド本体の内周面とが接続される部分に形成され、前記翼本体の負圧面から前記シュラウド本体の内周面に曲面状をなして連なる第一フィレット部を備え、
前記第一補強用リブは、前記シュラウド本体を挟んで前記第一フィレット部と周方向に重複して配置されている請求項1に記載のタービン動翼。
前記シュラウドは、前記翼本体の圧力面と前記シュラウド本体の内周面とが接続される部分に形成され、前記翼本体の圧力面から前記シュラウド本体の内周面に曲面状をなして連なる第二フィレット部を備え、
前記第二補強用リブは、前記シュラウド本体を挟んで前記第二フィレット部と周方向に重複して配置されている請求項3に記載のタービン動翼。
前記シュラウドは、前記翼本体の圧力面と前記シュラウド本体の内周面とが接続される部分に形成され、前記翼本体の圧力面から前記シュラウド本体の内周面に曲面状をなして連なる第二フィレット部を備え、
前記第二補強用リブは、前記シュラウド本体を挟んで前記第二フィレット部と周方向に重複して配置されている請求項5に記載のタービン動翼。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年のガスタービンの高出力化・高性能化に伴い、特にタービンの最終段の動翼の長翼化が図られている。タービンから排出される排気ガスの流速を出来る限り減少させ、タービン効率を上げるためには、最終段の動翼の翼長を伸ばし、接触面積を増大させることが有効である。
【0005】
一方でこのような長翼化が進めば、シュラウドに作用する遠心力も大きくなるため、特にシュラウドの翼本体に対する付け根部分の応力が非常に大きくなる。これに対して、例えば翼本体とシュラウドとを溶接する際のフィレットを大きくすることで剛性を高める手法が知られている。しかしながら、フィレットは燃焼ガスの主流路に張り出しているため、燃焼ガスによる仕事を妨げ、効率低下を招いてしまう。
【0006】
ここで特許文献1に記載のタービン動翼では、シュラウドにおけるコンタクト面から翼本体の前縁まで至る領域、及び、コンタクト面から翼本体の後縁まで至る領域に補強用リブを設けて応力を低減する構成が開示されている。しかしながら当該タービン動翼では、補強用リブの存在領域が十分ではなく、発生する応力に適切に対応することができない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、効率低下を抑制しながら、シュラウドに生じる応力に抗することのできるタービン動翼及びガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係るタービン動翼は、周方向一方側を向く負圧面と周方向他方側を向く圧力面とが前縁及び後縁で接続されており、径方向に延びる翼本体と、該翼本体の径方向外側の端部となる先端に設けられたシュラウドとを備え、前記シュラウドは、径方向外側を向く外周面、前記翼本体の前縁側を基点として周方向両側に延びる前端面、前記翼本体の後縁側を基点として周方向両側に延びる後端面、及び、周方向両側に設けられたコンタクト面を有するシュラウド本体と、前記外周面から突出し、前記前端面と前記後端面とにわたって延びる補強部とを備える。
【0009】
上記構成のタービン動翼によれば、補強部がシュラウド本体の前端面と後端面とにわたって形成されている。したがって、翼本体の前縁と後縁との間の全域にわたって補強部が存在することになる。このため、シュラウドの翼本体に対する付け根部分の全域で剛性を確保することができる。また、補強部はシュラウドの外周面に設けられているため、燃焼ガスの主流路に影響を与えることはない。
【0010】
上記タービン動翼では、前記前端面は、前記前縁側の基点から周方向一方側に延びる第一前端面と、前記前縁側の基点から周方向他方側に向かって前記第一前端面と交差して延びる第二前端面とを有し、前記後端面は、前記後縁側の基点から周方向一方側に延びる第一後端面と、前記後縁側の基点から周方向他方側に向かって前記第一後端面と交差して延びる第二後端面とを有し、前記補強部は、前記第一前端面と前記第一後端面とにわたって延びる第一補強用リブを有していてもよい。
【0011】
第一補強用リブが周方向一方側、即ち、翼本体の負圧面側に形成されているため、特にシュラウドにおける翼本体の負圧面側の応力が大きくなる場合は、当該応力に対して、第一補強用リブによる剛性の増加により対応することができる。
【0012】
上記タービン動翼では、前記シュラウドは、前記翼本体の負圧面と前記シュラウド本体の内周面とが接続される部分に形成され、前記翼本体の負圧面から前記シュラウド本体の内周面に曲面状をなして連なる第一フィレット部を備え、前記第一補強用リブは、前記シュラウド本体を挟んで前記第一フィレット部と周方向に重複して配置されてもよい。
【0013】
シュラウド本体には、タービン動翼の回転に伴い径方向外側に遠心力が作用するが、ガスタービンの作動効率向上を目的としてタービン動翼の長翼化が図られるに従い、シュラウド本体に作用する遠心力も増大するため、その対策を施す必要がある。従来は、翼本体とシュラウド本体との接続部分に形成されるフィレット部を大きくして強度を増すなどの対策も講じられたが、フィレット部を大きくするとシュラウド内部の燃焼ガス主流路の断面積を減少させることになり、タービン動翼の長翼化の目的を損ねることになるので好ましくない。
上記タービン動翼には、翼本体の負圧面と前記シュラウド本体の内周面とが接続される部分に、前記翼本体の負圧面から前記シュラウド本体の内周面に曲面状をなして連なる第一フィレット部が形成され、前記第一補強用リブがシュラウド本体を挟んで前記第一フィレット部と周方向に重複しているので、タービン動翼の長翼化に伴いシュラウド本体に作用する遠心力が増大しても、ガス主流路の断面積を減じることなく、シュラウド本体に対する遠心力の影響を小さくすることができる。つまり、翼本体の負圧面側のシュラウドの剛性が増すので、シュラウドにおける翼本体の負圧面側の応力が大きくなったとしても、シュラウド本体の変形を抑制することができる。
【0014】
上記タービン動翼では、前記補強部は、前記第二前端面と前記第二後端面とにわたって延びる第二補強用リブをさらに有していてもよい。
【0015】
第二補強用リブが周方向他方側、即ち、翼本体の圧力面側に形成されているため、特にシュラウドにおける翼本体の圧力面側の応力が大きくなる場合は、当該応力に対して、第二補強用リブによる剛性の増加により対応することができる。つまり、翼本体の負圧面側に第一補強用リブが存在し、圧力面側に第二補強用リブが存在するため、翼本体の両側に該翼本体の前縁から後縁までにわたっての高剛性領域を形成することができる。
【0016】
上記タービン動翼では、前記前端面は、前記前縁側の基点から周方向一方側に延びる第一前端面と、前記前縁側の基点から周方向他方側に向かって前記第一前端面と交差して延びる第二前端面とを有し、前記後端面は、前記後縁側の基点から周方向一方側に延びる第一後端面と、前記後縁側の基点から周方向他方側に向かって前記第一後端面と交差して延びる第二後端面とを有し、前記補強部は、前記第二前端面と前記第二後端面とにわたって延びる第二補強用リブを有していてもよい。
【0017】
上記タービン動翼では、前記シュラウドは、前記翼本体の圧力面と前記シュラウド本体の内周面とが接続される部分に形成され、前記翼本体の圧力面から前記シュラウド本体の内周面に曲面状をなして連なる第二フィレット部を備え、前記第二補強用リブは、前記シュラウド本体を挟んで前記第二フィレット部と周方向に重複して配置されてもよい。
【0018】
上記タービン動翼には、翼本体の圧力面と前記シュラウド本体の内周面とが接続される部分に、前記翼本体の圧力面から前記シュラウド本体の内周面に曲面状をなして連なる第二フィレット部が形成され、前記第二補強用リブがシュラウド本体を挟んで第二フィレット部と周方向に重複しているので、タービン動翼の長翼化に伴いシュラウド本体に作用する遠心力が増大しても、ガス主流路の断面積を減じることなく、シュラウド本体に対する遠心力の影響を小さくすることができる。つまり、翼本体の圧力面側のシュラウドの剛性が増すので、シュラウドにおける翼本体の圧力面側の応力が大きくなったとしても、シュラウド本体の変形を抑制することができる。
【0019】
本発明の第二態様に係るガスタービンは、空気を圧縮して高圧空気を生成する圧縮機と、前記高圧空気を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、複数の動翼が周方向に配列されてなる動翼段を複数段有し、前記燃焼ガスによって駆動されるタービンとを備え、複数の前記動翼段のうち少なくとも最終段の前記動翼段の前記動翼が、上記いずれかのタービン動翼である。
これによって、タービンの最終段でのシュラウドの剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタービン動翼及びガスタービンによれば、効率低下を抑制しながら、シュラウドに生じる応力に抗することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る第一実施形態について
図1から
図3を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るガスタービン1は、高圧空気を生成する圧縮機10と、高圧空気に燃料を混合して燃焼させることで燃焼ガスを生成する燃焼器20と、燃焼ガスによって駆動されるタービン30とを備えている。
【0023】
圧縮機10は、軸線O回りに回転する圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を外周側から覆う圧縮機ケーシング12とを有している。圧縮機ロータ11は、軸線Oに沿って延びる柱状をなしている。圧縮機ロータ11の外周面上には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼段13が設けられている。各圧縮機動翼段13は、圧縮機ロータ11の外周面上で軸線Oの周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機動翼14を有している。
【0024】
圧縮機ケーシング12は、軸線Oを中心とする筒状をなしている。圧縮機ケーシング12の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼段15が設けられている。これらの圧縮機静翼段15は、上記の圧縮機動翼段13に対して、軸線O方向から見て交互に配列されている。各圧縮機静翼段15は、圧縮機ケーシング12の内周面上で、軸線Oの周方向に間隔をあけて配列された複数の圧縮機静翼16を有している。
【0025】
燃焼器20は、上記の圧縮機ケーシング12と、後述するタービンケーシング32との間に設けられている。圧縮機10で生成された高圧空気は、燃焼器20内部で燃料と混合されて予混合ガスとなる。燃焼器20内で、この予混合ガスが燃焼することで高温高圧の燃焼ガスが生成される。燃焼ガスは、タービンケーシング32内に導かれてタービン30を駆動する。
【0026】
タービン30は、軸線O回りに回転するタービンロータ31と、タービンロータ31を外周側から覆うタービンケーシング32とを有している。タービンロータ31は、軸線Oに沿って延びる柱状をなしている。タービンロータ31の外周面上には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼段33が設けられている。各タービン動翼段33は、タービンロータ31の外周面上で、軸線Oの周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン動翼40,40Aを有している。このタービンロータ31は、上記の圧縮機ロータ11に対して軸線O方向に一体に連結されることで、ガスタービンロータを形成する。
【0027】
タービンケーシング32は、軸線Oを中心とする筒状をなしている。タービンケーシング32の内周面には、軸線O方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼段35が設けられている。これらのタービン静翼段35は、上記のタービン動翼段33に対して、軸線O方向から見て交互に配列されている。各タービン静翼段35は、タービンケーシング32の内周面上で、軸線Oの周方向に間隔をあけて配列された複数のタービン静翼36を有している。タービンケーシング32は、上記の圧縮機ケーシング12に対して軸線O方向に連結されることで、ガスタービン1ケーシングを形成する。すなわち、上記のガスタービン1ロータは、このガスタービン1ケーシング内で、軸線O回りに一体に回転可能とされている。
【0028】
次に、複数のタービン動翼段33のうちの最終段のタービン動翼段33におけるタービン動翼40Aの詳細構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。本実施形態では、最終段のタービン動翼40Aのみに本発明を適用している。
タービン動翼40Aは、翼本体50、シュラウド60及び補強部90を有している。
【0029】
翼本体50は、軸線Oの径方向に延びるブレード状をなしている。翼本体50は、負圧面51と圧力面52とを有している。負圧面51は、軸線Oの周方向一方側(タービンロータ31の回転方向R前方側、
図2及び
図3の左側)を向く面であって、周方向一方側に凸となる凸曲面状をなしている。圧力面52は、軸線Oの周方向他方側(タービンロータ31の回転方向R後方側、
図2及び
図3の右側)を向く面であって、周方向一方側に凹となる凹曲面状をなしている。
【0030】
負圧面51と圧力面52とは、軸線O方向一方側(燃焼ガスの流通方向上流側)で互いに接続されており、接続により形成される稜線が、径方向にわたって延びる翼本体50の前縁53とされている。負圧面51と圧力面52とは、軸線O方向他方側(燃焼ガスの流通方向下流側)で互いに接続されており、接続により形成される稜線が、径方向にわたって延びる翼本体50の後縁54とされている。
翼本体50の前縁53は後縁54よりも周方向一方側に位置している。
【0031】
翼本体50は、径方向外側に向かうにしたがって、前縁53と後縁54との距離(コード長)が小さくなり、かつ、負圧面51と正圧面との距離(翼厚さ)が小さくなるように構成されている。なお、翼本体50の内部には、冷却空気が流通するための冷却流路が形成されている。
【0032】
シュラウド60は、シュラウド本体61とフィン80とを有している。
シュラウド本体61は、翼本体50の径方向外側となる先端部に、例えば溶接等によって一体に取り付けられている。シュラウド本体61は、軸線O方向及び周方向に延びる板状をなしており、翼本体50の先端部から周方向に張り出すように設けられている。
【0033】
翼本体50における径方向内側を向く内周面62は、周方向の中央部で翼本体50の先端部に固定されている。翼本体50の負圧面51とシュラウド本体61の内周面62とが接続する部分には第一フィレット部F1が形成され、翼本体50の圧力面52とシュラウド本体61の内周面62とが接続する部分には第二フィレット部F2が形成されている。
【0034】
第一フィレット部F1は、タービンロータ31の径方向に平行な断面形状においては翼本体50の負圧面51とシュラウド本体61の内周面62との間を滑らかに繋ぐ弧を描くように曲面状をなし、翼本体50の負圧面51及びシュラウド本体61の内周面62に沿って翼本体50の翼弦方向に連なっている。第二フィレット部F2は、タービンロータ31の径方向に平行な断面形状においては翼本体50の圧力面52とシュラウド本体61の内周面62との間を滑らかに繋ぐ弧を描くように曲面状をなし(
図3参照)、翼本体50の圧力面52及びシュラウド本体61の内周面62に沿って翼本体50の翼弦方向に連なっている。
第一、第二フィレット部F1、F2は、例えば翼本体50とシュラウド本体61とを溶接する際の溶接部(ビード)によって形成されている。
【0035】
シュラウド本体61の径方向外側を向く外周面63は、翼本体50の負圧面51側及び圧力面52側に張り出すような形状をなしている。即ち、シュラウド本体61の外周面63は、径方向から見てシュラウド本体61の内周面62と同様の形状をなしている。
このようなシュラウド本体61の内周面62と外周面63とは、前端面64、後端面67、第一側端面70及び第二側端面74とによって径方向に接続されている。
【0036】
前端面64は、シュラウド本体61の軸線O方向一方側(軸線O方向の上流側)を形成する端面である。前端面64は、燃焼ガスの上流側を向き、周方向に延びている。前端面64は、翼本体50の前縁53側に形成されており、一部が前縁53よりもさらに上流側に位置している。
【0037】
前端面64は、第一前端面65と第二前端面66とを有している。
第一前端面65は、翼本体50の前縁53よりもさらに上流側の位置を基点P1として、周方向一方側に向かって延びている。第一前端面65は、上記基点P1から周方向一方側に向かうにしたがって燃焼ガスの下流側に向かって漸次延びている。第一前端面65の周方向一方側かつ下流側の端部は、翼本体50の前縁53よりも下流側、かつ、翼本体50の後縁54よりも上流側に位置している。
【0038】
第二前端面66は、第一前端面65の基点P1と同様の位置を基点として、周方向他方側に向かって延びている。第二前端面66は、上記基点P1から周方向他方側に向かうにしたがって漸次燃焼ガスの下流側に向かって延びている。第二前端面66の周方向他方側かつ下流側の端部は、翼本体50の前縁53よりも下流側、かつ、翼本体50の後縁54よりも上流側に位置している。第一前端面65と第二前端面66とは基点P1で交差して稜線を形成している。
本実施形態では、第一前端面65よりも第二前端面66の方が周方向の寸法が大きく形成されている。即ち、径方向から見たときの長さは、第一前端面65よりも第二前端面66の方が長い。
【0039】
後端面67は、シュラウド本体61の軸線O方向他方側(軸線O方向の下流側)を形成する端面である。後端面67は、燃焼ガスの下流側を向き、周方向に延びている。後端面67は、翼本体50の後縁54側に形成されており、一部が後縁54よりもさらに下流側に位置している。
【0040】
後端面67は、第一後端面68と第二後端面69とを有している。
第一後端面68は、翼本体50の後縁54よりもさらに下流側の位置を基点P2として、周方向一方側に向かって延びている。第一後端面68は、上記基点P2から周方向一方側に向かうにしたがって漸次燃焼ガスの上流側に向かって延びている。第一後端端面の周方向一方側かつ上流側の端部は、翼本体50の後縁54よりも上流側、かつ、翼本体50の前縁53よりも下流側に位置している。
【0041】
第二後端面69は、第一後端面68の基点P2と同様の位置を基点P2として、周方向他方側に向かって延びている。第二後端面69は、上記基点P2から周方向他方側に向かうにしたがって漸次燃焼ガスの上流側に向かって延びている。第二後端面69の周方向他方側かつ上流側の端部は、翼本体50の後縁54よりも上流側、かつ、翼本体50の前縁53より下流側に位置している。第一後端面68と第二後端面69とは基点P2で交差して稜線を形成している。
本実施形態では、第二後端面69よりも第一後端面68の方が周方向の寸法が大きく形成されている。即ち、径方向から見たときの長さは、第二後端面69よりも第一後端面68の方が長い。
【0042】
第一側端面70は、シュラウド本体61の周方向一方側(回転方向R前方側)を形成する端面である。第一側端面70は、シュラウド本体61の内周面62と外周面63とを接続するとともに、第一前端面65と第一後端面68とを軸線O方向に接続している。第一側端面70は、第一前側面71、第一後側面72及び第一コンタクト面73を有している。
【0043】
第一前側面71は、上流側の端部が第一前端面65に接続されており、下流側かつ周方向他方側に向かって延びている。
第一後側面72は、下流側の端部が第一後端面68に接続されており、上流側かつ周方向一方側に向かって延びている。
【0044】
第一コンタクト面73は、第一前側面71と第一後側面72とを接続している。第一コンタクト面73は、第一前側面71との接続箇所から下流側かつ周方向一方側に向かって延びて、第一後側面72に接続されている。第一コンタクト面73は、径方向内側又は外側を向くように傾斜していてもよい。
【0045】
第二側端面74は、シュラウド本体61の周方向他方側(回転方向R後方側)を形成する端面である。第二側端面74は、シュラウド本体61の内周面62と外周面63とを接続するとともに、第二前端面66と第二後端面69とを軸線O方向に接続している。第二側端面74は、第二前側面75、第二後側面76及び第二コンタクト面77を有している。
【0046】
第二前側面75は、上流側の端部が第二前端面66に接続されており、下流側かつ周方向他方側に向かって延びている。
第二後側面76は、下流側の端部が第二後端面69に接続されており、上流側かつ周方向一方側に向かって延びている。
【0047】
第二コンタクト面77は、第二前側面75と第二後側面76とを接続している。第二コンタクト面77は、第二前側面75との接続箇所から下流側かつ周方向一方側に向かって延びて、第二後側面76に接続されている。第二コンタクト面77は、径方向外側又は内側を向くように傾斜していてもよい。
【0048】
複数のタービン動翼40Aによってタービン動翼段33が構成された際には、互いに隣り合うタービン動翼40Aの第一コンタクト面73、第二コンタクト面77同士が接触する。これによって、動翼段全体としての剛性が確保されている。
【0049】
フィン80は、シュラウド本体61の外周面63から突出し、周方向に延びている。フィン80は、シュラウド本体61の第一側端面70と第二側端面74とにわたって延びている。フィン80は、シュラウド本体61の第一前側面71と第一コンタクト面73との境界から、第二前側面75と第二コンタクト面77との境界とにわたって周方向に延びている。
【0050】
補強部90は、シュラウド60の外周面63から突出するように設けられており、前端面64と後端面67とにわたって延びている。補強部90は、第一補強用リブ91と第二補強用リブ92とを有する。
【0051】
第一補強用リブ91は、第一前端面65と第一後端面68とにわたって連続的に延びている。第一補強用リブ91は、シュラウド本体61の外周面63における翼本体50の負圧面51よりもさらに周方向一方側に形成されている。即ち、第一補強用リブ91は、径方向から見たときに、負圧面51の向く回転方向R前方側に、該負圧面51と離間するように配置されている。第一補強用リブ91は第一前端面65から第一後端面68に向かうにしたがって周方向他方側に向かうように延在している。即ち、第一補強用リブ91は、翼本体50の負圧面51に沿うように延在している。
【0052】
第二補強用リブ92は、第二前端面66と第二後端面69とにわたって連続的に延びている。第二補強用リブ92は、シュラウド本体61の外周面63における翼本体50の圧力面52よりもさらに周方向他方側に形成されている。即ち、第二補強用リブ92は、径方向から見たときに、圧力面52の向く回転方向R後方側に、該圧力面52と離間するように配置されている。第二補強用リブ92は第二前端面66から第二後端面69に向かうにしたがって周方向他方側に向かうように延在している。即ち、第二補強用リブ92は、翼本体50の圧力面52に沿うように延在している。
径方向から見たときに、第一補強用リブ91と第二補強用リブ92とによって、翼本体50が周方向から挟まれている。
【0053】
第一補強用リブ91及び第二補強用リブ92の延在方向に直交する幅方向の寸法は、フィン80の延在方向に直交する幅寸法よりも大きい。
第一補強用リブ91及び第二補強用リブ92の高さ(径方向の寸法)は、フィン80の高さよりも小さい。
【0054】
次に上記構成のガスタービン1及びタービン動翼40Aの作用効果について説明する。
ガスタービン1を運転するに当たっては、まず外部の駆動源によって圧縮機ロータ11(ガスタービンロータ)を回転駆動する。圧縮機ロータ11の回転に伴って外部の空気が順次圧縮され、高圧空気が生成される。この高圧空気は、圧縮機ケーシング12内部の空間を通じて燃焼器20内に供給される。
【0055】
燃焼器20内では、燃料ノズルから供給された燃料がこの高圧空気に混合されて燃焼し、高温高圧の燃焼ガスが生成される。燃焼ガスはタービンケーシング32内部の空間を通じてタービン30内に供給される。タービン30内では、タービン動翼段33、及びタービン静翼段35に燃焼ガスが順次衝突することで、タービンロータ31(ガスタービン1ロータ)に対して回転駆動力が与えられる。この回転エネルギーは、軸端に連結された発電機G等の駆動に利用される。そして、燃焼ガスは、最終的に最終段のタービン動翼40Aを経て、排気ディフューザを介して外部に排出される。
【0056】
ここで、最終段のタービン動翼40Aは、他の段のタービン動翼40に比べて一般に翼長が大きい。そのため、ガスタービン1の運転時には、最終段のタービン動翼40Aは遠心力の影響を受け、特にシュラウド本体61の翼本体50に対する付け根部分での応力が大きくなる。
これに対して、本実施形態では、補強部90がシュラウド本体61の前端面64と後端面67とにわたって形成されている。したがって、翼本体50の前縁53と後縁54との間の全域にわたって補強部90が存在することになる。このため、シュラウド60の翼本体50に対する付け根部分の全域で剛性を確保することができる。
【0057】
ここで、シュラウド本体61の付け根部分での剛性を高めるためには、例えば、シュラウド本体61の内周面62を補強することが考えられ、例えばフィレット部F1、F2を大きくすることにより剛性を確保することも考えられる。しかしながらこの場合、フィレットを大きくすることが燃焼ガスの流路を狭めることになるため、タービン30効率を低下させてしまう。本実施形態では、シュラウド本体61の外周面63に補強部90が形成されているため、フィレットを大きくするのを最小に留めることができる。これにより、タービン30効率の低下を回避しながら、シュラウド本体61の剛性を高めることができる。
【0058】
また、仮に補強部90が前端面64と後端面67とにわたらず一部のみに存在している場合、前端面64と後端面67との間で剛性が高い部分と低い部分が存在することになる。このような場合には、シュラウド60に作用する遠心力が非常に大きな場合には、やはりシュラウド60の付け根部分の剛性確保には不十分である。当該付け根部分は、翼本体50の負圧面51及び圧力面52の軸線O方向全域にわたって存在するため、前端面64と後端面67とにわたって補強部90を設けることで、始めて十分な剛性を確保することができる。
【0059】
さらに、本実施形態では、第一補強用リブ91が、第一前端面65と第一後端面68とにわたって形成されており、即ち、翼本体50の負圧面51側に形成されている。これによって、負圧面51側におけるシュラウド本体61の翼本体50に対する付け根部分の剛性を適切に確保することができる。
さらに、第二補強用リブ92が、第二前端面66と第二後端面69とにわたって形成されており、即ち、翼本体50の圧力面52側に形成されている。これによって、圧力面52側におけるシュラウド本体61の翼本体50に対する付け根部分の剛性を適切に確保することができる。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、翼本体50の負圧面51側及び圧力面52側でのシュラウド本体61の付け根部分の双方について、剛性をバランスよく確保することができるため、シュラウド本体61が翼本体50に対してめくり上がるように変形してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0061】
さらに、第一実施形態の変形例について
図4を参照して説明する。
図4に示すタービン動翼40Aaは、第一実施形態のタービン動翼40Aと同じく最終段の動翼である。このタービン動翼40Aaを、タービンロータの径方向に対して平行に断面視すると、第一補強用リブ91は、第一フィレット部F1と、シュラウド本体61を挟んでタービンロータ13の周方向(回転方向R)に重複する位置に形成されている(重複部分L1)。第二補強用リブ92は、第二フィレット部F2と、シュラウド本体61を挟んでタービンロータ13の周方向(回転方向R)に重複する位置に形成されている(重複部分L2)。
【0062】
シュラウド本体61には、タービン動翼40の回転に伴い径方向外側に遠心力が作用するが、ガスタービン1の作動効率向上を目的としてタービン動翼40の長翼化が図られるに伴い、シュラウド本体61に作用する遠心力も増大するため、その対策を施す必要がある。本変形例では、第一補強用リブ91が、翼本体50の負圧面51とシュラウド本体61の内周面62とが接続される部分に形成された第一フィレット部F1と、シュラウド本体62を挟んで周方向に重複しているので、第一補強用リブ91が形成された部分と翼本体50の負圧面51との間のシュラウド本体61には、他の部分よりも高い剛性が付与されている。
【0063】
さらに、第二補強用リブ92も、翼本体50の圧力面52とシュラウド本体61の内周面62とが接続される部分に形成された第二フィレット部F2と、シュラウド本体61を挟んで周方向に重複しているので、第二補強用リブ92が形成された部分と翼本体50の圧力面52との間のシュラウド本体61にも、他の部分よりも高い剛性が付与されている。
【0064】
したがって、本変形例によれば、第一補強用リブ91及び第二補強用リブ92が形成された部分のシュラウド本体61にタービンロータ31の回転によって作用する遠心力が増大しても、その遠心力によりシュラウド本体61に反りなどの変形が生じるのを抑制することができる。
【0065】
次に、本発明の第二実施形態について
図5を参照して説明する。第二実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示すタービン動翼40Bは、第一実施形態のタービン動翼40Aと同じく最終段の動翼であるが、補強部90として第一補強用リブ91のみを備えており、第一実施形態の第二補強用リブ(92)を備えてはいない。
タービン動翼40Bの構造によれば、特に翼本体50の負圧面51側でのみ、シュラウド本体61の付け根部分に応力が大きくなる場合がある。このような場合には、第一補強用リブ91のみを設けることで、当該応力に適切に対応することができる。また、第二補強用リブ92を設ける場合に比べて、シュラウド60自体の重量が小さくなるため、遠心力の影響を抑えることができる。
【0066】
さらに、第二実施形態の変形例について
図6を参照して説明する。
図6に示すタービン動翼40Baも、第二実施形態のタービン動翼40Bと同じく最終段の動翼である。このタービン動翼40Baには、翼本体50の負圧面51とシュラウド本体61の内周面62とが接続される部分に、第一実施形態の変形例と同じ構造の第一フィレット部F1が設けられている。第一フィレット部F1は、シュラウド本体61を挟んで第一補強用リブ91と重複している(重複部分L1)。なお、タービン動翼40Baには、第二補強用リブ(92)は設けられていない。
【0067】
本変形例によれば、第一補強用リブ91が、シュラウド本体62を挟んで第一フィレット部F1と周方向に重複しているので、第一補強用リブ91が形成された部分と翼本体50の負圧面51との間のシュラウド本体61には、他の部分よりも高い剛性が付与されている。これにより、動翼の長翼化に伴い第一補強用リブ91が形成された部分のシュラウド本体61にタービンロータ31の回転によって作用する遠心力が増大しても、その遠心力によりシュラウド本体61に反りなどの変形が生じるのを抑制することができる。
【0068】
次に、本発明の第三実施形態について
図7を参照して説明する。第三実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
図7に示すタービン動翼40Cは、第一実施形態のタービン動翼40Aと同じく最終段の動翼であるが、補強部90として第二補強用リブ92のみを備えており、第一実施形態の第一補強用リブ91を備えてはいない。
タービン動翼40Cの構造によれば、特に翼本体50の圧力面52側でのみ、シュラウド本体61の付け根部分に応力が大きくなる場合がある。このような場合には、第二補強用リブ92のみを設ければよい。これによって、シュラウド本体61の変形を抑制することができる。
【0069】
さらに、第三実施形態の変形例について
図8を参照して説明する。
図8に示すタービン動翼40Caも、第三実施形態のタービン動翼40Cと同じく最終段の動翼である。このタービン動翼40Caには、翼本体50の圧力面52とシュラウド本体61の内周面62とが接続される部分に、第一実施形態の変形例と同じ構造の第二フィレット部F2が設けられている。第二補強用リブ92は、シュラウド本体61を挟んで第二フィレット部F2と重複している(重複部分L2)。なお、タービン動翼40Caには、第一補強用リブ(91)は設けられていない。
【0070】
本変形例によれば、第二フィレット部F2が、シュラウド本体62を挟んで第二補強用リブ92と周方向に重複しているので、第二補強用リブ92が形成された部分と翼本体50の圧力面52との間のシュラウド本体61には、他の部分よりも高い剛性が付与されている。これにより、動翼の長翼化に伴い第二補強用リブ92が形成された部分のシュラウド本体61にタービンロータ31の回転によって作用する遠心力が増大しても、その遠心力によりシュラウド本体61に反りなどの変形が生じるのを抑制することができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば上記の各実施形態では、単一のフィン80を設けた場合について説明したが、当該フィン80が複数設けられていてもよい。
【0072】
第一補強用リブ91は、径方向から見たときに、翼本体50の負圧面51に沿って湾曲した形状をなしていてもよい。第二補強用リブ92は径方向から見たときに、翼本体50の圧力面52に沿って湾曲した形状をなしていてもよい。
【0073】
第一補強用リブ91、第二補強用リブ92は、前端面64から後端面67に向かうに従って、幅寸法(延在方向に直交する周方向の寸法)が変化してもよい。例えば、後端面67に向かうに従って幅寸法が漸次大きくなってもよいし、漸次小さくなってもよい。
【0074】
第一補強用リブ91、第二補強用リブ92は、前端面64から後端面67に向かうに従って、幅寸法が大きくなった後に小さくなってもよい。当該幅寸法の変化は、翼本体50の厚さの寸法(負圧面51と圧力面52との周方向の距離)に対応して変化してもよい。
また、幅寸法と同様に、第一補強用リブ91及び第二補強用リブ92の高さ(径方向の寸法)が変化してもよい。
上記の各実施形態及びその変形例では、最終段のタービン動翼にのみ本発明を適用したが、最終段以外の他のタービン動翼に本発明を適用してもよい。