(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831002
(24)【登録日】2021年1月29日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】心耳鉗子
(51)【国際特許分類】
A61B 17/122 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
A61B17/122
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-505533(P2019-505533)
(86)(22)【出願日】2016年12月29日
(65)【公表番号】特表2019-523103(P2019-523103A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】CN2016112823
(87)【国際公開番号】WO2018032691
(87)【国際公開日】20180222
【審査請求日】2019年1月31日
(31)【優先権主張番号】201610676751.4
(32)【優先日】2016年8月16日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518033185
【氏名又は名称】北京邁迪頂峰医療科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING MED ZENITH MEDICAL SCIENTIFIC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲慶▼▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】可 大年
(72)【発明者】
【氏名】孟 ▲堅▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲曉▼芳
【審査官】
宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第203074795(CN,U)
【文献】
特公昭46−027998(JP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0035631(US,A1)
【文献】
特開2005−334649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延在しかつ互いから離間されるように設けられた第1のクランプアーム及び第2のクランプアームを含み、前記第1のクランプアーム及び第2のクランプアーム内には、その軸方向に沿って設けられた第1の空洞及び第2の空洞が対応して設けられ、前記第1の空洞及び第2の空洞内には、第1のバネ及び第2のバネが対応して設けられ、前記第1のバネ及び前記第2のバネは引張バネであり、前記第1のバネは、一端が前記第1の空洞の端壁に接続され、他端が前記第1の引張糸を介して前記第2のクランプアームの前記第2の空洞の端壁に近い端部に接続され、前記第2のバネは、一端が前記第2の空洞の端壁に接続され、他端が前記第2の引張糸を介して前記第1のクランプアームの前記第1の空洞の端壁に近い端部に接続される、ことを特徴とする心耳鉗子。
【請求項2】
前記第1のクランプアームの一端には、前記第1の空洞に連通する第1の糸通過用貫通孔が設けられ、前記第1の引張糸が前記第1の糸通過用貫通孔を貫通して前記第2のクランプアームの前記第2の空洞の端壁に近い端部に接続され、前記第2のクランプアームの一端には前記第2の空洞に連通する第2の糸通過用貫通孔が設けられ、前記第2の引張糸が前記第2の糸通過用貫通孔を貫通して前記第1のクランプアームの前記第1の空洞の端壁に近い端部に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の心耳鉗子。
【請求項3】
前記第1のクランプアームの前記第1の糸通過用貫通孔から離れた一端には、前記第1の空洞の端口を封止するための第1のプラグが設けられ、前記第1のバネの一端が前記第1のプラグの端部に接続され、前記第2のクランプアームの前記第2の糸通過用貫通孔から離れた一端には、前記第2の空洞の端口を封止するための第2のプラグが設けられ、前記第2のバネの一端が前記第2のプラグの端部に接続される、ことを特徴とする請求項2に記載の心耳鉗子。
【請求項4】
前記第1のクランプアームの前記第1の糸通過用貫通孔に近い一端には第1の固定プーリが設けられ、前記第2のクランプアームの前記第2の糸通過用貫通孔に近い一端には第2の固定プーリが設けられ、前記第1の引張糸が前記第1の固定プーリを通過して前記第2のクランプアームの前記第2の空洞の端壁に近い端部に接続され、前記第2の引張糸が前記第2の固定プーリを通過して前記第1のクランプアームの前記第1の空洞の端壁に近い端部に接続される、ことを特徴とする請求項2に記載の心耳鉗子。
【請求項5】
前記第1のクランプアームの端部には、前記第1の固定プーリを取り付ける第1の取付溝が設けられ、前記第2のクランプアームの端部には、前記第2の固定プーリを取り付ける第2の取付溝が設けられている、ことを特徴とする請求項4に記載の心耳鉗子。
【請求項6】
前記第1のクランプアーム及び前記第2のクランプアーム外にそれぞれ中間スリーブが外挿し、前記中間スリーブ外に複数の径方向スロットが設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の心耳鉗子。
【請求項7】
前記第1のクランプアーム及び前記第2のクランプアーム外に、それぞれ、編み物で織られた保護カバーがさらに外挿し、前記編み物は、PET、PTFE、PP、ワイヤ、PGA又はPDOを紡織したものであることができる、ことを特徴とする請求項6に記載の心耳鉗子。
【請求項8】
互いに平行に延在しかつ互いから離間されるように設けられた第1のクランプアーム及び第2のクランプアームを含み、前記第1のクランプアーム及び第2のクランプアーム内には、その軸方向に沿って設けられた第1の空洞及び第2の空洞が対応して設けられ、前記第1の空洞及び第2の空洞内には、第1のバネ及び第2のバネが対応して設けられ、前記第1のバネ及び前記第2のバネは引張バネであり、前記第1のバネの両端にそれぞれ前記第1の引張糸が接続され、前記第2のバネの両端にそれぞれ前記第2の引張糸が接続され、前記第1の引張糸が前記第2の引張糸に対応して接続されて閉環構造が形成され、或いは、前記第1のバネの両端がそれぞれ前記第1の引張糸を介して前記第2のクランプアームの両端に固定接続され、前記第2のバネの両端がそれぞれ前記第2の引張糸を介して前記第1のクランプアームの両端に固定接続される、ことを特徴とする心耳鉗子。
【請求項9】
前記第1のクランプアームの両端に、それぞれ、前記第1の空洞に連通する第1の糸通過用貫通孔が設けられ、前記第1の引張糸が対応して前記第1の糸通過用貫通孔を貫通し、前記第2のクランプアームの両端に、それぞれ、前記第2の空洞に連通する第2の糸通過用貫通孔が設けられ、前記第2の引張糸が対応して前記第2の糸通過用貫通孔を貫通し、前記第1のクランプアームの両端にそれぞれ第1の固定プーリが設けられ、前記第2のクランプアームの両端にそれぞれ第2の固定プーリが設けられ、前記第1の引張糸が、それぞれ、対応する前記第1の固定プーリを通過した後、それぞれ対応する前記第2の固定プーリを通過した前記第2の引張糸に対応して接続され、或いは、前記第1の引張糸が、それぞれ、対応する前記第1の固定プーリを通過した後、前記第2のクランプアームの両端に接続され、前記第2の引張糸が、それぞれ、対応する前記第2の固定プーリを通過した後、前記第1のクランプアームの両端に接続される、ことを特徴とする請求項8に記載の心耳鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具の技術分野に関し、特に、心耳鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動は、臨床上、最も一般的な不整脈の1つであり、心房細動による脳卒中は重大な結果をもたらし、死亡率及び致残率が70%に達する。弁膜症性心房細動の患者では、心房血栓症の57%が左心耳に起因し、非弁膜症性心房細動の患者では、左心房血栓症の90%が左心耳に起因する。洞調律が回復した後でも、左心耳の収縮や気絶が発生し、血栓が再び形成する可能性が依然としてある。
【0003】
現在、臨床上、心房細動缺血性脳卒中を予防する方法は主に3つがある。1つ目の方法は、ワルファリンなどの抗凝固薬を服用することであるが、しかし、ワルファリンの投与はある程度出血の危険性があり、頻繁なモニタリングが必要となり、禁忌が多く、臨床的に適用することは困難である。ワルファリンは、また骨粗鬆症や軟部組織壊死を引き起こす可能性がある。2つ目の方法は、心臓外科手術中の心耳の直接切除又は結紮であり、このような方法は、左心耳の完全閉鎖率が低いことがその主な欠点であり、従来の研究によれば、左心耳を完全に切除する成功率は、せいぜい80%程度である。3つ目の方法は、器具によって左心耳を閉鎖し、心臓内左心耳閉鎖術製品を経皮的に介入することであるが、しかし、操作が複雑であり、リスクが高く、安全性及び有効性を検証する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、開胸又は低侵襲手術において心耳鉗子を心臓外から左心耳根部に置いて、左心耳を閉鎖するように、安全かつ有効であり、操作しやすい心耳鉗子を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、対称に設けられた第1のクランプアーム及び第2のクランプアームを含み、前記第1のクランプアーム及び第2のクランプアーム内には、その軸方向に沿って設けられた第1の空洞及び第2の空洞が対応して設けられ、前記第1の空洞及び第2の空洞内には、第1のバネ及び第2のバネが対応して設けられ、前記第1のバネは、第1の引張糸を介して前記第2のクランプアームに接続され、前記第2のバネは、第2の引張糸を介して前記第1のクランプアームに接続され、これによって閉環構造が形成され、前記第1のクランプアームと第2のクランプアームは、第1のバネ及び第2のバネの伸縮に伴って開閉することができる心耳鉗子を提供する。
【0006】
前記第1のバネは、一端が前記第1の空洞の端壁に接続され、他端が前記第1の引張糸を介して前記第2のクランプアームの対応する端部に接続され、前記第2のバネは、一端が前記第2の空洞の端壁に接続され、他端が前記第2の引張糸を介して前記第1のクランプアームの対応する端部に接続される。
【0007】
前記第1のバネの両端にそれぞれ前記第1の引張糸が接続され、前記第2のバネの両端にそれぞれ前記第2の引張糸が接続され、前記第1の引張糸が前記第2の引張糸に対応して接続され、或いは、前記第1のバネの両端がそれぞれ前記第1の引張糸を介して前記第2のクランプアームの両端に固定接続され、前記第2のバネの両端がそれぞれ前記第2の引張糸を介して前記第1のクランプアームの両端に固定接続される。
【0008】
前記第1のクランプアームの一端には、前記第1の空洞に連通する第1の糸通過用貫通孔が設けられ、前記第1の引張糸が前記第1の糸通過用貫通孔を貫通して前記第2のクランプアームの対応する端部に接続され、前記第2のクランプアームの一端には、前記第2の空洞に連通する第2の糸通過用貫通孔が設けられ、前記第2の引張糸が前記第2の糸通過用貫通孔を貫通して前記第1のクランプアームの対応する端部に接続される。
【0009】
前記第1のクランプアームの前記第1の糸通過用貫通孔から離れた一端には、前記第1の空洞の端口を封止するための第1のプラグが設けられ、前記第1のバネの一端が前記第1のプラグの端部に接続され、前記第2のクランプアームの前記第2の糸通過用貫通孔から離れた一端には、前記第2の空洞の端口を封止するための第2のプラグが設けられ、前記第2のバネの一端が前記第2のプラグの端部に接続される。
【0010】
前記第1のクランプアームの前記第1の糸通過用貫通孔に近い一端には第1の固定プーリが設けられ、前記第2のクランプアームの前記第2の糸通過用貫通孔に近い一端には第2の固定プーリが設けられ、前記第1の引張糸が前記第1の固定プーリを通過して前記第2のクランプアームの対応する端部に接続され、前記第2の引張糸が前記第2の固定プーリを通過して前記第1のクランプアームの対応する端部に接続される。
【0011】
前記第1のクランプアームの両端に、それぞれ、前記第1の空洞に連通する第1の糸通過用貫通孔が設けられ、前記第1の引張糸が対応して前記第1の糸通過用貫通孔を貫通し、前記第2のクランプアームの両端に、それぞれ、前記第2の空洞に連通する第2の糸通過用貫通孔が設けられ、前記第2の引張糸が対応して前記第2の糸通過用貫通孔を貫通し、前記第1のクランプアームの両端にそれぞれ第1の固定プーリが設けられ、前記第2のクランプアームの両端にそれぞれ第2の固定プーリが設けられ、前記第1の引張糸が、それぞれ、対応する前記第1の固定プーリを通過した後、それぞれ対応する前記第2の固定プーリを通過した前記第2の引張糸に対応して接続され、或いは、前記第1の引張糸が、それぞれ、対応する前記第1の固定プーリを通過した後、前記第2のクランプアームの両端に接続され、前記第2の引張糸が、それぞれ、対応する前記第2の固定プーリを通過した後、前記第1のクランプアームの両端に接続される。
【0012】
前記第1のクランプアームの端部には、前記第1の固定プーリを取り付ける第1の取付溝が設けられ、前記第2のクランプアームの端部には、前記第2の固定プーリを取り付ける第2の取付溝が設けられている。
【0013】
前記第1のクランプアーム及び前記第2のクランプアーム外にそれぞれ中間スリーブが外挿し、前記中間スリーブ外に複数の径方向スロットが設けられている。
【0014】
前記第1のクランプアーム及び前記第2のクランプアーム外に、それぞれ、編み物で織られた保護カバーがさらに外挿し、前記編み物は、PET、PTFE、PP、ワイヤ、PGA又はPDOを紡織したものであることができる。
【発明の効果】
【0015】
従来技術に比べ、本発明は、以下の利点を有する。
【0016】
本発明に提供される心耳鉗子は、第1のクランプアーム及び第2のクランプアームが平行に設けられ、前記第1のクランプアーム及び第2のクランプアーム内には、その軸方向に沿って設けられた第1の空洞及び第2の空洞が対応して設けられ、前記第1の空洞及び第2の空洞内には、第1のバネ及び第2のバネが対応して設けられ、前記第1のバネは、第1の引張糸を介して前記第2のクランプアームに接続され、前記第2のバネは、第2の引張糸を介して前記第1のクランプアームに接続され、これによって閉環構造が形成され、外力によって、前記第1のクランプアームと第2のクランプアームは、第1のバネ及び第2のバネの伸縮に伴って開閉することができる構成となっている。バネをクランプアーム内に設けることで、心耳鉗子の外形寸法を小さくし、心耳の周辺組織に対する圧迫、摩耗を軽減するとともに、心耳の厚さの増加に伴って、バネの変形量が大きくなるため、より大きい閉力を提供することができる。閉環構造全体が心耳を覆うことで、心耳が押し潰された後クランプアームから溢れるのを防止することができる。本発明の心耳鉗子は、構造設計が精巧であり、閉力が安定的かつ確実であり、操作しやすく、安全かつ有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係わる心耳鉗子の正面断面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係わる心耳鉗子(保護カバーが外挿している)の断面図である。
【
図3】本発明の実施例2に係わる心耳鉗子の正面断面図である。
【
図4】本発明の実施例3に係わる心耳鉗子搬送システム全体の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面及び実施例を結合して、本発明の具体的な実施形態についてさらに詳しく説明する。以下の例は本発明を説明するためのものであるが、本発明の範囲を限定していない。
【0019】
なお、本発明の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後ろ」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「トップ」、「ボトム」、「内」、「外」等の用語で示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、本発明の説明をしやすくしたり簡略化したりするために過ぎず、示される装置又は素子は必ず特定した方位を有し、特定した方位で構造され操作されることを明示又は暗示していないため、本発明を制限していると理解されてはならない。また、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、説明するために過ぎず、相対的な重要性を明示又は暗示するものと理解されてはならない。
【0020】
なお、本発明の説明において、そうでないと明確な規定及び限定がない限り、「取り付ける」、「繋がる」、「接続」といった用語を広義に理解すべきであり、例えば、固定接続であってもよいし、着脱可能な接続又は一体化した接続であってもよい。機械的に接続されてもよいし、電気的に接続されてもよい。直接繋がってもよいし、中間媒体を介して間接的に繋がってもよく、また、2つの素子内部が連通してもよい。当業者は、具体的な状況に応じて本発明における上述した用語の具体的な意味を理解することができる。
【0021】
また、本発明の説明において、そうでないと説明がない限り、「複数」、「複数本」、「複数グループ」は、2つ以上を意味する。
【0022】
本発明は心耳鉗子を提供し、該心耳鉗子は、対称に設けられた第1のクランプアーム及び第2のクランプアームを含み、前記第1のクランプアーム及び第2のクランプアーム内には、その軸方向に沿って設けられた第1の空洞及び第2の空洞が対応して設けられ、前記第1の空洞及び第2の空洞内には、第1のバネ及び第2のバネが対応して設けられ、前記第1のバネ及び第2のバネは、引張バネであることが好ましく、引張バネは、引張中、引張長さと引張力とが線形的に変化し、これによって安定した開閉力を提供することができる。第1のバネは、第1の空洞の長さ方向に沿って設けられ、第2のバネは、第2の空洞の長さ方向に沿って設けられ、前記第1のバネは、第1の引張糸を介して前記第2のクランプアームに接続され、前記第2のバネは、第2の引張糸を介して前記第1のクランプアームに接続され、これによって閉環構造が形成され、閉環構造全体が心耳を覆うことで、心耳が押し潰された後クランプアームから溢れるのを防止することができる。第1のバネを第1の空洞内に設け、第2のバネを第2の空洞内に設けることで、心耳鉗子全体の外形寸法を小さくし、心耳の周辺組織に対する圧迫、摩耗を軽減することができるとともに、心耳の厚さの増加に伴って、バネの変形量が大きくなるため、より大きい閉力を提供することができる。第1のバネ及び第2のバネは力が加わらず、即ち、元の状態にある場合、前記第1のクランプアーム及び第2のクランプアームは、バネ予張力によって当接し(即ち、閉状態にある)、そして、外力によって、前記第1のクランプアームと第2のクランプアームは、第1のバネ及び第2のバネの伸縮に伴って開閉する。例えば、外向きの引張力が加わると、第1のバネ及び第2のバネは引っ張られ、この時、前記第1のクランプアーム及び第2のクランプアームは開き、加わった引張力を解除すると、第1のバネ及び第2のバネが元の状態に戻り、この時、前記第1のクランプアーム及び第2のクランプアームは閉じて締め付けられる。開胸又は低侵襲手術において、左心耳を閉鎖するために、心耳鉗子を心臓外から左心耳根部に置き、閉力が安定かつ確実であり、操作しやすく、安全かつ有効である。具体的には、第1のクランプアーム及び第2のクランプアームの材質は、ステンレス鋼、コバルト系合金、白金イリジウム合金、ニッケルチタン合金又はマグネシウム系合金等の植込み型金属であることができる。第1のバネ及び第2のバネの材質は、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金等の植込み型金属であることができる。第1の引張糸及び第2の引張糸の材質は、患者の身体への影響を低減するように、PET(ポリエチレンテレフタレート)又は他の人体組織に吸収されやすい高分子材料(例えば、特定の使用期間を経た後自然に分解できる材料)又は可撓性金属線であることができる。
【0023】
本発明の内容をより明りょうに説明するために、以下のような具体的な実施例を通じて具体的に説明するが、本発明を限定するものではなく、本発明の発想の範囲内であれば、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
【0024】
(実施例1)
図1に示すように、第1のバネ12及び第2のバネ22を固定しやすくするために、前記第1のバネ12は、一端が前記第1の空洞11の端壁に接続され、他端が前記第1の引張糸13を介して前記第2のクランプアーム2の対応する端部に接続され、即ち、第1の引張糸13は、第1のクランプアーム1の端部から第2のクランプアーム2へ曲がる場合に、第2のクランプアーム2に近い一端に接続される。前記第2のバネ22は、一端が前記第2の空洞21の端壁に接続され、他端が前記第2の引張糸23を介して前記第1のクランプアーム1の対応する端部に接続され、即ち、第2の引張糸23は、第2のクランプアーム2の端部から第1のクランプアーム1へ曲がる場合に、第1のクランプアーム1に近い一端に接続される。これによって上述のような閉環構造が形成される。また、前記第1の引張糸13は、第1のバネ12と一体化して設けられることができ、例えば、金属線で第1のバネ12を製造する際に、予め加工に関与しない金属線の1区間を前記第1の引張糸13として用意し、もちろん、第1のバネ12と第1の引張糸13とが個別に設けられてもよく、溶接、締め付け等の方式により接続されている。同様に、第2のバネ22と第2の引張糸23は、上述と同様な方式で設けられることができる。
【0025】
第1の引張糸13及び第2の引張糸23を穿設しやすくするために、前記第1のクランプアーム1の一端には、前記第1の空洞11に連通する第1の糸通過用貫通孔14が設けられ、前記第1の引張糸13が前記第1の糸通過用貫通孔14を貫通して前記第2のクランプアーム2の対応する端部に接続される。前記第2のクランプアーム2の一端には、前記第2の空洞21に連通する第2の糸通過用貫通孔24が設けられ、前記第2の引張糸23が前記第2の糸通過用貫通孔24を貫通して前記第1のクランプアーム1の対応する端部に接続される。
【0026】
第1のバネ12及び第2のバネ22を取り付けやすくするために、前記第1のクランプアーム1の前記第1の糸通過用貫通孔14から離れた一端には第1のプラグ16が設けられ、第1のプラグ16は、前記第1の空洞11の端口を封止し、第1のプラグ16は、溶接、螺合等の方式により第1のクランプアーム1に接続されることができ、前記第1のバネ12の一端が前記第1のプラグ16の端部に接続され、両者を接続しておいた後、第1のバネ12を第1の空洞11の端口から第1の空洞11内に差し込み、それから、第1のプラグ16を用いて第1のクランプアーム1の端部を封止し、これによって第1のバネを第1の空洞11内に取り付けることが容易になる。同様に、前記第2のクランプアーム2の前記第2の糸通過用貫通孔24から離れた一端には第2のプラグ26が設けられ、前記第2のプラグ26は、前記第2の空洞21の端口を封止し、前記第2のバネ22の一端が前記第2のプラグ26の端部に接続され、両者を接続しておいた後、第2のバネ22を第2の空洞21の端口から第2の空洞21内に差し込み、それから、第2のプラグ26を用いて第2のクランプアーム2の端部を封止し、これによって第2のバネ22を第2の空洞21内に取り付けることが容易になる。
【0027】
第1の引張糸13及び第2の引張糸23の移動中の摩擦力を低減するために、前記第1のクランプアーム1の前記第1の糸通過用貫通孔14に近い一端には第1の固定プーリ15が設けられ、前記第2のクランプアーム2の前記第2の糸通過用貫通孔24に近い一端には第2の固定プーリ25が設けられ、前記第1の引張糸13は、前記第1の固定プーリ15を通過して前記第2のクランプアーム2の端部に接続され、さらに、前記第1の引張糸13と第2のクランプアーム2の端部は、ピン28等の固定接続部材によって接続されることができる。前記第2の引張糸23は、前記第2の固定プーリ25を通過して前記第1のクランプアーム1の端部に接続され、これに応じて、前記第2の引張糸23と第1のクランプアーム1の端部は、ピン18等の固定接続部材によって接続されることができる。
【0028】
第1の固定プーリ15、第2の固定プーリ25及び対応する固定接続部材を取り付けやすくするために、前記第1のクランプアーム1の両端にそれぞれ第1の取付溝17が設けられることができ、前記第2のクランプアーム2の両端にそれぞれ第2の取付溝27が設けられることができ、前記第1の固定プーリ15及びその他端に位置するピン18は、2つの前記第1の取付溝17内に対応して設けられることができ、前記第2の固定プーリ25及びその他端に位置するピン28は、2つの前記第2の取付溝27内に対応して設けられることができる。
【0029】
前記第1のクランプアーム1及び前記第2のクランプアーム2外にそれぞれ中間スリーブ(未図示)が外挿し、第1の引張糸13及び第2の引張糸23の位置決めをしやすくするように、前記中間スリーブ外に複数の径方向スロットが設けられ、中間スリーブの材質は、PU(ポリウレタン)又は他の植込み型プラスチック非金属であることができる。
【0030】
身体組織を保護し組織損傷をできる限り低減するために、
図2に示すように、前記第1のクランプアーム1及び第2のクランプアーム2外には、それぞれ、編み物で織られた保護カバー100もさらに外挿し、前記保護カバー100は閉じた環状をなし、第1のクランプアーム1、第1の引張糸、第2のクランプアーム2、第2の引張糸に沿って順に外挿し、端と端で接続されて環状を形成し、前記編み物は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ワイヤ、PGA(ポリグリコール酸)又はPDO(プロテインライン)等の高分子材料を紡織してなり、組織の這い上がり及び被覆に寄与する。軟質であり、受力面積が増大し、器具による組織の圧力を小さくし、身体組織への損傷を最小限に低減する。
【0031】
(実施例2)
本実施例2は、以下の点で実施例1と相違する。
図3に示すように、前記第1のバネ12の両端にそれぞれ前記第1の引張糸13が接続され、前記第2のバネ22の両端にそれぞれ前記第2の引張糸23が接続され、前記第1の引張糸13が前記第2の引張糸23に対応して接続され、これによって第1のクランプアーム1と第2のクランプアーム2との接続を実現する。或いは、前記第1のバネ12の両端は、それぞれ前記第1の引張糸13を介して前記第2のクランプアーム2の両端に固定接続され、前記第2のバネ22の両端は、それぞれ前記第2の引張糸23を介して前記第1のクランプアーム1の両端に固定接続される。
【0032】
前記第1のクランプアームの両端に、それぞれ、前記第1の空洞11に連通する第1の糸通過用貫通孔14が設けられ、前記第1の引張糸13がそれぞれ前記第1の糸通過用貫通孔14を貫通し、前記第2のクランプアーム2の両端に、それぞれ、前記第2の空洞21に連通する第2の糸通過用貫通孔24が設けられ、前記第2の引張糸23がそれぞれ前記第2の糸通過用貫通孔24を貫通する。前記第1のクランプアーム1の両端にそれぞれ第1の固定プーリ15が設けられ、前記第2のクランプアーム2の両端にそれぞれ第2の固定プーリ25が設けられている。前記第1の引張糸13は、それぞれ対応する第1の固定プーリ15を通過した後、それぞれ対応する第2の固定プーリ25を通過した前記第2の引張糸23に対応して接続される。或いは、前記第1の引張糸13は、それぞれ対応する第1の固定プーリ15を通過した後、前記第2のクランプアーム2の両端に接続され、前記第2の引張糸23は、それぞれ対応する第2の固定プーリ25を通過した後前記第1のクランプアームの両端に接続される。
【0033】
前記第1のクランプアームの両端にそれぞれ第1の取付溝17が設けられ、前記第2のクランプアーム2の両端にそれぞれ第2の取付溝27が設けられ、前記第1の固定プーリ15がそれぞれ2つの前記第1の取付溝17内に対応して設けられ、前記第2の固定プーリ25がそれぞれ2つの前記第2の取付溝27内に対応して設けられている。
【0034】
(実施例3)
図4及び
図5に示すように、本発明は、実施例1及び実施例2に係わる心耳鉗子を搬送するための心耳鉗子搬送システムをさらに提供し、ハンドルハウジング3と、プッシュロッド4と、接続管5と、支持台6とを含む。前記ハンドルハウジング3内にはその長さ方向に沿って設けられた通路が設けられ、前記プッシュロッド4の一端が前記通路に位置し、かつ前記通路と滑合して接続される。
【0035】
前記接続管5は、中空管路であり、その一端が前記ハンドルハウジング3に接続され、他端が前記支持台6に接続され、かつ三者は連通している。
【0036】
前記支持台6に取付窓61が設けられ、具体的には、前記支持台6は、閉環状に設けられた口字形となることが好ましく、その四隅は円弧状に面取りされ、前記取付窓61は、口字形の支持台6の中部貫通孔であり、前記取付窓61は、心耳鉗子を取り付けるためのものである。
【0037】
前記心耳鉗子は、開閉可能な第1のクランプアーム1及び第2のクランプアーム2を含み、第1のクランプアーム1と第2のクランプアーム2との間には、第1のクランプアーム1及び第2のクランプアーム2の開閉のために弾力を提供するバネが接続されている。前記第1のクランプアーム1又は第2のクランプアーム2は、取付窓61の一側に固定されるように、固定引張糸8を介して前記取付窓61の上側又は下側に固定接続され、前記固定引張糸8が前記支持台6、接続管5を順に通過した後、前記ハンドルハウジング3に固定接続され、これに応じて、前記第2のクランプアーム2又は第1のクランプアーム1が可動引張糸7を介して前記取付窓61の下側又は上側に移動可能に接続され、可動引張糸7を引っ張ることで、第2のクランプアーム2又は第1のクランプアーム1を取付窓61の他側へ移動させ、これにより心耳鉗子を開き、具体的には、前記可動引張糸7が前記支持台6、接続管5を順に通過した後、前記プッシュロッド4の端部に接続され、プッシュロッド4を引っ張ることで、第1のクランプアーム1と第2のクランプアーム2とを離間させることができ、プッシュロッド4をプッシュすることで、第1のクランプアーム1と第2のクランプアーム2とを閉じることができる。
【0038】
図4及び
図5に示すように、前記ハンドルハウジング3にボタン34が設けられ、前記プッシュロッド4は、その軸方向に沿ってシュートが設けられており、前記ボタン34の下端が前記シュートを貫通し、かつ弾性戻し素子が接続されており、手のひらでプッシュロッド4をプッシュすると、シュートがボタン34に対して移動し、前記プッシュロッド4が前記ハンドルハウジング3の下端までプッシュされると、前記ボタン34を押して、弾性戻し素子、例えば戻しバネ(未図示)を圧縮させ、ボタンにおける係着部により前記プッシュロッド4を係止し、ハンドルハウジング3とプッシュロッド4との位置ロックを実現し、この場合、第1のクランプアーム1と第2のクランプアーム2とを最大限に開き、プッシュロッドの位置がロックされたため、心耳鉗子は開いたままにされ、そのうえ、開いた心耳鉗子を該心耳鉗子搬送システムによって心耳根部に置くことが容易になり、置き位置を確認した後、ボタン34を押し、プッシュロッド4の位置ロックを解除し、第1のクランプアーム1と第2のクランプアーム2を左心耳根部にて閉じる。
【0039】
図2に示すように、前記支持台6の一方側のコーナーに管継手9が設けられ、管継手9の上面は支持台の上面と面一にされており、胸腔自体が非常に狭いため、管継手9を支持台の一方側に密着して設け、これは心臓組織との適合により有利であり、大動脈、肺静脈等の心臓組織を圧迫することがなく、操作の安全性を向上させる。
【0040】
トレースを容易に行うために、前記支持台6の外周にトレース溝62が設けられている。前記トレース溝62は前記管継手9に連通し、前記支持台6は前記管継手9を介して前記接続管5に接続されている。これにより、可動引張糸7及び固定引張糸8をトレース溝62から管継手9まで穿設し、接続管5内に伸ばすことが容易になる。
【0041】
前記トレース溝62内には、前記固定引張糸8及び可動引張糸7を通過させるための複数の糸通過孔63が設けられ、さらに、前記糸通過孔63は取付窓61の上、下側壁に対称に設けられている。
【0042】
図4〜6に示すように、前記接続管5は、完全たる所定屈曲角度の金属管、例えば、ステンレス鋼管、ニッケルチタン合金管又は他の医療用金属管であることができ、前記所定屈曲角度は、ニーズに応じて自由に調整することができ、360度死角なしの調整を実現することができ、もちろん、接続管5は1つの直管であるか、或いは、複数の接続分岐管を順に接続したものであることもでき、前記接続分岐管のうちの1つは、所定屈曲角度が設けられることができ、例えば、手動で所定角度に折り曲げられることができ、所定屈曲角度は、ニーズに応じて自由に調整することができ、360度死角なしの調整を実現することができる。もちろん、複数の接続分岐管はそれぞれ直管であってもよい。前記接続管5又は接続分岐管の前記ハンドルハウジング3に近い一端に糸切り溝10が設けられ、心耳鉗子が所定の位置に搬送された後、心耳鉗子を心耳にて開放するように、糸切り溝において可動引張糸及び固定引張糸を裁断し、胸腔の外で糸切りをすることで、胸腔の内部で糸切りをする中、患者の身体を傷つけることを回避する。
【0043】
前記ハンドルハウジング3は、上ケース32と下ケース33とを含み、まずプッシュロッド4を下ケース33内に設けてから、上ケース32と下ケース33を突き合わせて前記ハンドルハウジング3を形成し、これによりプッシュロッド4の取り付けが容易になる。
【0044】
支持台6の材質は、医療用ポリアミド+50%ガラス繊維又は他の医療用非金属材料であることができ、外挿押出変形、接着、螺合等の方式により接続管5と固定接続されることができる。
【0045】
本発明の操作過程は、以下の通りである。プッシュロッド4は、推力によってハンドルハウジング3に対して相対的に変位し、プッシュロッド4に固定される可動引張糸7はこれに伴って移動し、心耳鉗子の一方側のクランプアームを引き離し、2つのクランプアームが平行に開く。プッシュロッド4がハンドルハウジング3の下端までプッシュされると、ボタン34を押して前記プッシュロッド4を係止し、その位置をロックし、この場合、心耳鉗子の双方側のクランプアームが最大開き距離に達する。心耳鉗子を心耳鉗子搬送システムの先端と一緒に、創傷を介して患者の体内に挿入すると同時に、他の器具を介して心耳鉗子を左心耳の根部に外挿させる。置き位置が適切であると確認された後、手動でボタン34を押し、プッシュロッド4の位置ロックを解除し、この場合、心耳鉗子の双方側のクランプアームは、左心耳を密着させて締固めるように、バネ及び引張糸の作用により徐々に閉じられる。その後、糸切り溝10の開口から可動引張糸7及び固定引張糸8を裁断し、そして心耳鉗子搬送システムを創傷から取り出し、心耳鉗子に巻きつけられた残りの引張糸を取り出し、手術の実施が完了する。
【0046】
また、手術中、心耳鉗子の置き方向が手術のニーズを満足することができなければ、医者は、最適化した角度に達するように、実際の状況に応じて接続管を手動で折り曲げることができる。
【0047】
以上の実施例から分かるように、本発明の心耳鉗子は、構造設計が精巧であり、操作しやすく、安全かつ有効であり、また、心耳鉗子搬送システムは、開胸又は低侵襲手術において、心耳鉗子を心臓外から左心耳根部に容易かつ確実に置いて、左心耳を閉鎖し、更に永続的に閉鎖することができる。
【0048】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定することは意図していない。本発明の思想や原則内の如何なる修正、均等の置き換え、改良などは、すべて本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0049】
1…第1のクランプアーム、11…第1の空洞、12…第1のバネ、13…第1の引張糸、14…第1の糸通過用貫通孔、15…第1の固定プーリ、16…第1のプラグ、17…第1の取付溝、18…ピン、2…第2のクランプアーム、21…第2の空洞、22…第2のバネ、23…第2の引張糸、24…第2の糸通過用貫通孔、25…第2の固定プーリ、26…第2のプラグ、27…第2の取付溝、28…ピン、3…ハンドルハウジング、31…ボタン孔、32…上ケース、33…下ケース、34…ボタン、4…プッシュロッド、5…接続管、6…支持台、61…取付窓、62…トレース溝、63…糸通過孔、7…可動引張糸、8…固定引張糸、9…管継手、10…糸切り溝、100…保護カバー。