(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)(A1)JIS K6249に準じて測定された23℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sで、分子鎖両末端のケイ素原子にそれぞれ結合したアルケニル基を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンの61質量%以上95質量%以下と、(A2)JIS K6249に準じて測定された23℃における粘度が10〜50,000mPa・sで、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に平均して0.6個以上2個未満有する直鎖状のポリオルガノシロキサンの5質量%以上39質量%以下と、からなる直鎖状のポリオルガノシロキサンと、(A3)式:SiO4/2で表される4官能型シロキサン単位を有し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に平均して2個以上有するレジン構造を有するポリオルガノシロキサンを含有し、
前記(A1)成分と前記(A2)成分と前記(A3)成分の合計に対する(A3)成分の含有割合が、6質量%以上25質量%以下であるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンと、
(B)(B1)JIS K6249に準じて測定された23℃における粘度が0.1〜200mPa・sで、分子鎖両末端のケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する直鎖状のポリオルガノシロキサンと、(B2)式:SiO4/2で表される4官能型シロキサン単位を有し、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有するレジン構造を有するポリオルガノシロキサンと、からなるポリオルガノハイドロジェンシロキサンを、
前記(B1)成分中の前記水素原子の、該水素原子と前記(B2)成分中の水素原子との合計に対するモル比が0.2を超え0.75以下となり、かつ前記(B1)成分中の水素原子と前記(B2)成分中の水素原子の合計の、前記(A)成分中のアルケニル基の合計に対するモル比が0.9以上2.1以下となる量、および
(C)ヒドロシリル化反応触媒の有効量
をそれぞれ含有してなることを特徴とする硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
前記硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の硬化物のJIS K6249に規定されたタイプEデュロメータで測定された硬さが、50以下である請求項1記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
前記(A2)直鎖状のポリオルガノシロキサンが、両末端にそれぞれアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、片末端にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、アルケニル基を含有しないポリオガノシロキサンの混合物である請求項1又は2に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
ポリエチレンテレフタレート製フィルムと一体成型した、前記硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の2mmの厚さの硬化物から、前記フィルムを500mm/分の速さで剥がすときの剥離力が、15mN/mm未満である請求項1〜5のいずれか1項記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
[硬化性ポリオルガノシロキサン組成物]
本発明の一実施形態の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)(A1)分子鎖両末端にそれぞれアルケニル基を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンの61質量%以上95質量%以下と、(A2)1分子中に平均して0.6個以上2個未満のアルケニル基を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンの5質量%以上39質量%以下と、からなる直鎖状のポリオルガノシロキサンと、(A3)アルケニル基を1分子中に平均して2個以上有するレジン構造を有するポリオルガノシロキサンを含有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンと、(B)(B1)分子鎖両末端に水素原子を1分子中に2個有する直鎖状のポリオルガノシロキサンと、(B2)水素原子を1分子中に3個以上有するポリオルガノシロキサンと、からなるポリオルガノハイドロジェンシロキサン、および(C)ヒドロシリル化反応触媒の有効量をそれぞれ含有する。
以下、実施形態の組成物の有する各成分について説明する。
【0016】
<(A)アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン>
本実施形態で用いられる(A)成分は、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の主剤(ベースポリマー)であり、(A1)分子鎖両末端にアルケニル基を有する直鎖状のポリオルガノシロキサン(以下、両末端アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンと示す。)と、(A2)平均して0.6個以上2個未満のアルケニル基を有する直鎖状のポリオルガノシロキサン(以下、2個未満のアルケニル基含有オルガノシロキサンと示す。)と、(A3)レジン構造を有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとを含有する。
【0017】
(A)成分において、(A1)成分と(A2)成分の合計100質量%中の(A1)成分の含有割合は、61質量%以上95質量%以下であり、(A2)成分の含有割合は5質量%以上39質量%以下である。また、(A1)成分と(A2)成分と(A3)成分の合計100質量%中の(A3)成分の含有割合は、6質量%以上25質量%以下である。さらに、(A1)成分の23℃における粘度(以下、単に粘度と示す。)は1,000〜1,000,000mPa・sであり、(A2)成分の粘度は10〜50,000mPa・sである。なお、本明細書における粘度は、特に説明している場合を除き、JIS K6249に準じて測定された値である。
【0018】
<(A1)両末端アルケニル基含有ポリオルガノシロキサン>
(A1)成分は、23℃における粘度が1,000〜1,000,000mPa・sで、分子鎖両末端にそれぞれアルケニル基を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンである。
なお、「ポリオルガノシロキサンが直鎖状である」とは、全シロキサン単位の合計量に対する、式:R
1SiO
3/2(R
1は、脂肪族不飽和結合を含まない非置換または置換の1価炭化水素基であり、アルケニル基以外の炭化水素基を例示することができる。)で表される3官能型シロキサン単位と、式:SiO
4/2で表される4官能型シロキサン単位の合計量が、モル分率で5%以下であることをいう。
【0019】
(A1)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基のような、炭素原子数が2〜6の非置換のアルキル基が挙げられる、これらの中でも、ビニル基が好ましい。(A1)成分としては、2個のアルケニル基を有し、かつ2個のアルケニル基が直鎖状の分子鎖の両末端のケイ素原子にそれぞれ1個ずつ結合しているものが好ましい。なお、2個のアルケニル基は、同じであってもよいし異なっていてもよいが、合成の容易さの観点から同じであることが好ましい。
【0020】
(A1)成分において、ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような、炭素原子数1〜6のアルキル基が挙げられる。合成が容易であることから、メチル基が好ましい。
(A1)成分の好ましい具体例としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0021】
(A1)成分の粘度は1,000〜1,000,000mPa・sである。粘度がこの範囲にある場合には、得られる硬化物の機械的特性が良好となり好ましい。(A1)成分の粘度は、3,500〜200,000mPa・sが好ましく、5,000〜150,000mPa・sが特に好ましい。
【0022】
<(A2)2個未満のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン>
(A2)成分は、1分子中に平均(以下、単に「平均」と示す。)して0.6個以上2個未満のアルケニル基を有する直鎖状のポリオルガノシロキサンであり、架橋密度を低下させ、硬化物の硬度を下げる役割を果たす。
【0023】
(A2)成分のアルケニル基は、分子骨格の中間のケイ素原子と末端のケイ素原子のいずれかに結合していてもよいが、反応速度や反応後に低硬度のゴム硬化物を形成する点から、分子末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0024】
(A2)成分であるアルケニル基を平均で0.6個以上2個未満有するポリオルガノシロキサンを得るには、例えば、両末端にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、アルケニル基を含有しない直鎖状ないし分岐状のポリオルガノシロキサンを、前記したアルケニル基の平均個数を満足させるように、かつ前述の粘度範囲を実現する平均分子量となるように配合し、硫酸、塩酸、活性白土等の酸触媒、または水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ触媒の存在下に、常法によりシロキサンの切断、平衡化を行う。この場合、原料の一部として、環状ポリシロキサン、特にビニル基を含有しない環状ポリシロキサンを併用してもよい。
【0025】
平衡化の後、常法により触媒を除去し、減圧下で加熱し、副生する低分子ポリオルガノシロキサンないし未反応の低分子ポリオルガノシロキサンを除去することにより、精製される。この手法により得られたポリオルガノシロキサンは、両末端にそれぞれアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、片末端にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、アルケニル基を含有しないポリオルガノシロキサンの混合物として得られる。例えば、平均して1個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの調製では、片末端アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンが約50モル%、両末端アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンが約25モル%、アルケニル基を含有しないポリオルガノシロキサンが約25モル%の混合物として得られる。
【0026】
さらに、(A2)成分は、前記方法により得られた1分子中に1個未満(例えば0.5個)のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、両末端にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンとを混合し調製しても良い。またさらに、アルケニル基数が平均で1個以上2個未満のものを得るには、片側末端にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンと、両末端にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンとを単に混合してもよい。すなわち、アルケニル基含有数の異なる複数種類のものを混合し、1分子当り平均して0.6個以上2個未満のアルケニル基を有するようにすることができる。
さらに、片側末端にアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンは、強塩基リビング重合反応によっても合成することができる。なお、強塩基リビング重合反応は、開始剤として有機アルカリ金属化合物を用いて、環状ポリオルガノシロキサンを開環重合させた後、クロロアルケニルシランで末端を封止する反応である。
なお、(A2)成分において、硬化物のタック性低減には、硬化反応に寄与しないフリーオイルや低分子シロキサンの含有量を少なくすることがより好ましい。
【0027】
(A2)成分の粘度は、10〜50,000mPa・sである。粘度がこの範囲である場合には、得られる硬化物の機械的特性が良好となり好ましい。(A2)成分の粘度は、10〜10,000mPa・sがさらに好ましく、100〜5,000mPa・sが特に好ましい。
【0028】
以下に示すように、(A1)成分と(A2)成分とからなる直鎖状のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンの合計100質量%中で、(A1)成分の含有割合は、61質量%以上95質量%以下であり、(A2)成分の含有割合は5質量%以上39質量%以下である。(A1)成分の含有割合は、65質量%以上95質量%以下であり、(A2)成分の含有割合は5質量%以上35質量%以下が好ましい。ここで説明した含有割合を数式で表すと、(A1)成分の含有割合は、W
A1/(W
A1+W
A2)で表せ、(A2)成分の含有割合は、W
A2/(W
A1+W
A2)で表せるため、以下の通りとなる。ここで、W
A1は(A1)成分の質量、W
A2は(A2)成分の質量である。
0.61≦W
A1/(W
A1+W
A2)≦0.95
0.05≦W
A2/(W
A1+W
A2)≦0.39
【0029】
(A2)成分の含有割合が5質量%未満で(A1)成分の含有割合が95質量%を超える場合には、所望の低硬度(例えば、タイプEデュロメータによる硬さが50以下)の硬化物が得られない。また、(A2)成分の含有割合が39質量%を超え(A1)成分の含有割合が61質量%未満の場合には、硬化物にオイルブリードが生じる。
【0030】
(A1)成分および(A2)成分のより好ましい含有割合は、(A1)成分と(A2)成分の合計100質量%中で、(A1)成分が70質量%以上90質量%以下であり、(A2)成分が10質量%以上30質量%以下である。
【0031】
<(A3)レジン構造を有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサン>
(A3)成分は、式:SiO
4/2で表される4官能型シロキサン単位(以下、Q単位という。)を含み、1分子中に平均して2個以上のアルケニル基を有するレジン構造(三次元網目構造)を有するポリオルガノシロキサンである。以下、「レジン構造を有する」ことを「レジン状」ともいう。(A3)成分の有するアルケニル基数のより好ましい範囲は、1分子中に平均2個以上である。
【0032】
(A3)成分であるレジン状ポリオルガノシロキサンは、Q単位の他に、式:R
23SiO
1/2で表される1官能型シロキサン単位と、式:R
22SiO
2/2で表される2官能型シロキサン単位を含有するものであることが好ましい。このようなポリオルガノシロキサンを使用することにより、強度が高く粘着性の低い硬化物が得られる。
【0033】
上記単位式において、R
2は、それぞれ独立に、アルケニル基または非置換のアルキル基である。レジン状ポリオルガノシロキサンの1分子中に存在する複数のR
2のうちで、少なくとも1個はアルケニル基である。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基等が挙げられる。ビニル基が好ましい。非置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等が挙げられる。非置換のアルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0034】
(A3)成分であるレジン状ポリオルガノシロキサンの例としては、
シロキサン単位が、式:R
33SiO
1/2(R
3は、非置換のアルキル基であり、複数のR
3は異なっていてもよい。以下同じ。)で表される1官能型シロキサン単位(以下、R
33SiO
1/2単位ともいう。)と、式:R
32R
4SiO
1/2(R
3は、非置換のアルキル基であり、R
4はアルケニル基である。以下同じ。)で表される1官能型シロキサン単位(以下、R
32R
4SiO
1/2単位ともいう。)と、式:R
32SiO
2/2で表される2官能型シロキサン単位(以下、R
32SiO
2/2単位ともいう。)と、Q単位とからなる共重合体、
R
33SiO
1/2単位と、R
32R
4SiO
1/2単位と、Q単位とからなる共重合体、
R
32R
4SiO
1/2単位と、R
32SiO
2/2単位と、Q単位とからなる共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
前記共重合体の中でも、シロキサン単位が、R
33SiO
1/2単位とR
32R
4SiO
1/2単位とQ単位とからなる共重合体が好ましい。
【0036】
より具体的には、シロキサン単位が、式:(CH
3)
2(CH
2=CH)SiO
1/2で表される1官能型シロキサン単位(以下、M
vi単位と示す。)と、式:(CH
3)
3SiO
1/2で表される1官能型シロキサン単位(以下、M単位と示す。)と、Q単位とから構成される共重合体が好ましい。さらに、M
vi単位とM単位とQ単位との比率は、Q単位1モルに対して、M
vi単位とM単位が合計で0.5〜2.0モルの範囲が好ましい。
【0037】
(A3)成分であるレジン状ポリオルガノシロキサンを得る方法は、特に限定されないが、例えば、アルケニル基を有するクロロシランとアルコキシシランに水を加えて加水分解するなどの方法で得ることができる。
【0038】
(A3)レジン状ポリオルガノシロキサンの好適な重量平均分子量Mwは、500〜8,000であり、1,000〜5,000の範囲がより好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと示す。)によるポリスチレン換算の値である。(B)レジン状ポリオルガノシロキサンのMwが500未満の場合は、硬化物の機械的強度が安定して得られず、8,000を超える場合は、組成物の粘度が高くなり、好ましくない。
【0039】
(A3)成分であるレジン状ポリオルガノシロキサンは、前記した直鎖状の(A1)成分および(A2)成分とともに、本実施形態の組成物のポリマー成分となる。
以下に示すように、(A)成分全体((A1)成分と(A2)成分と(A3)成分の合計)に対する(A3)成分の含有割合は、6質量%以上25質量%以下とする。ここで説明した含有割合を数式で表すと、(A3)成分の含有割合は、W
A3/(W
A1+W
A2+W
A3)で表せるため、以下の通りとなる。ここで、W
A1は(A1)成分の質量、W
A2は(A2)成分の質量、W
A3は(A3)成分の質量である。
0.06≦W
A3/(W
A1+W
A2+W
A3)≦0.25
【0040】
(A3)成分の含有割合が(A)成分全体の6質量%未満の場合には、強度が高い硬化物が得られない。また、硬化物の粘着性が高くなる。また、(A3)成分の含有割合が25質量%を超えると、硬化物の硬さが高くなりすぎて好ましくない。
【0041】
(A3)成分のより好ましい含有割合は、(A)成分全体に対して10質量%以上20質量%以下であり、10質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
【0042】
<(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン>
本実施形態で用いられる(B)成分は、(B1)分子鎖両末端のケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2個有する直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサン(以下、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンという。)と、(B2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン(以下、架橋性ポリオルガノハイドロジェンシロキサンという。)と、からなる。(B)成分は、前記(A)成分と反応し、架橋剤として作用する。
【0043】
<(B1)直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン>
(B1)成分において、ケイ素原子に結合した水素原子の数は1分子中に2個であり、2個の水素原子が分子の両末端のケイ素原子に1個ずつ結合している。
【0044】
(B1)成分である直鎖状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ケイ素原子に結合した水素原子以外に、ケイ素原子に結合した炭化水素基を有する。(B1)成分が有する炭化水素基は、脂肪族不飽和結合を含まない非置換の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような、炭素原子数1〜6のアルキル基が挙げられる。合成が容易であることから、メチル基が好ましい。
(B1)成分の好ましい具体例としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシリル基封鎖ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0045】
(B1)成分の粘度は0.1〜200mPa・sである。粘度がこの範囲にある場合には、得られる硬化物が低硬度で機械的特性が良好となる。(B1)成分の粘度は、1〜50mPa・sの範囲がより好ましい。(B1)成分は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
<(B2)架橋性ポリオルガノハイドロジェンシロキサン>
(B2)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)を1分子中に平均して3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。(B2)成分の分子構造に特に限定はなく、例えば、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状(レジン状)などの各種のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを使用することができるが、式:SiO
4/2で表される4官能型シロキサン単位(Q単位)を有するレジン状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであることが好ましい。さらに、このレジン状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、Q単位とともに1官能型シロキサン単位を有することが好ましい。(B2)成分は、前記(B1)成分とともに、そのSi−Hが(A)成分のアルケニル基と反応することで、架橋剤として作用する。
【0047】
(B2)成分であるレジン状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを得る方法は、特に限定されないが、例えば、水素原子を有するクロロシランと、テトラアルコキシシランおよび/またはポリシリケート(例えば、エチルポリシリケート)とを、トルエン、キシレン等の有機溶媒中で共加水分解および縮合させる。出発物質として、クロロシランを用いる代わりに、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを塩酸とともに仕込み、ジシロキサンを酸性条件で分解する方法を採ることもできる。
【0048】
(B2)成分であるレジン状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、シロキサン単位が、R
53SiO
1/2単位、R
52HSiO
1/2単位およびQ単位からなる共重合体、R
53SiO
1/2単位、R
52HSiO
1/2単位、R
52SiO
2/2単位およびQ単位からなる共重合体、R
53SiO
1/2単位、R
52HSiO
1/2単位、R
52SiO
2/2単位、R
5HSiO
2/2単位およびQ単位からなる共重合体、R
52HSiO
1/2単位およびQ単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0049】
上記単位において、R
5は、それぞれ独立に非置換のアルキル基である。非置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような、炭素原子数1〜6のアルキル基が挙げられる。合成が容易であることから、メチル基が好ましい。
【0050】
(B2)レジン状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとして、より具体的には、シロキサン単位が、式:(CH
3)
2HSiO
1/2で表される1官能型シロキサン単位(以下、M
H単位と示す。)と、式:(CH
3)
3SiO
1/2で表される1官能型シロキサン単位(M単位)と、Q単位とから構成される共重合体、またはM
H単位とQ単位とから構成される共重合体が好ましく、M
H単位とQ単位とから構成される共重合体が特に好ましい。
【0051】
M
H単位とQ単位とから構成される共重合体において、各単位の比率は、Q単位1モルに対してM
H単位が1.5〜2.2モルが好ましく、1.8〜2.1モルがさらに好ましい。より具体的には、(B2)成分は、単位式:[(CH
3)
2HSiO
1/2]
8[SiO
4/2]
4、または単位式:[(CH
3)
2HSiO
1/2]
10[SiO
4/2]
5で表されるように、4〜5個のQ単位が環状シロキサン骨格を形成し、各Q単位に2個ずつのM
H単位が結合している構造のものが特に好ましい。
【0052】
(B2)レジン状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン成分の粘度は、0.1〜200mPa・sであることが好ましい。粘度がこの範囲にある場合には、配合が容易であるうえに、得られる硬化物の機械的特性が良好となる。(A2)成分の粘度は、1〜100mPa・sがより好ましい。
【0053】
このような(B2)成分および前記(B1)成分の配合量は、(B1)成分中の水素原子の、該水素原子と(B2)成分中の水素原子との合計に対するモル比が、0.2を超え0.75以下となり、かつ(B1)成分中の水素原子と(B2)成分中の水素原子の合計の、前記した(A)成分中のアルケニル基の合計に対するモル比が、0.9以上2.1以下となる量である。ここで説明した含有割合を数式で表すと、それぞれ、H
B1/(H
B1+H
B2)、H/Viと示すことができ、H
B1は(B1)成分中の水素原子のモル数、H
B2は(B2)成分中の水素原子のモル数、Hは(B1)成分中の水素原子と(B2)成分中の水素原子の合計モル数、Viは(A)成分中のアルケニル基のモル数である。)
0.2<H
B1/(H
B1+H
B2)≦0.75
0.9≦H/Vi≦2.1
【0054】
H/Viが0.9未満である場合には、硬化物表面の粘着性が増大するため、好ましくない。また、H/Viが2.1を超えると、未反応のSi−Hが硬化物中に多量に残存するため、硬化物の特性が経時的に変化するおそれがある。H/Viのより好ましい範囲は、1.0以上1.8以下である。
【0055】
また、H/Viが0.9以上2.1以下であっても、H
B1/(H
B1+H
B2)が0.2以下である場合には、硬化物の硬くなりすぎて、低硬度の硬化物が得られない。さらに、H
B1/(H
B1+H
B2)が0.75を超えると、架橋度が低下し、強度の高い硬化物が得られない。
【0056】
<(C)ヒドロシリル化反応触媒>
(C)成分は、前記(A)成分のアルケニル基と、前記(B)成分の水素原子との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進する触媒である。(C)成分としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられるが、経済性の点から白金系触媒(白金または白金系化合物)が好ましい。白金系触媒としては、公知のものを使用することができ、熱で活性化する白金系触媒(以下、熱白金系触媒ともいう。)と紫外線で活性化する白金系触媒(以下、UV白金系触媒ともいう。)がある。熱白金系触媒の具体例としては、白金ブラック;塩化白金酸;塩化白金酸等のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニル基含有シロキサンまたはアセチレンアルコール類等との錯体などが例示される。
また、UV白金系触媒は、紫外線が照射されることにより触媒活性が表出されるように、白金系触媒を含む化合物として設計された紫外線活性の触媒である。UV白金系触媒としては、(η−ジオレフィン)−(σ−アリール)−白金錯体を含む光活性化可能触媒や、η5シクロペンタジエニル白金錯体化合物またはσ結合している配位子(好ましくは、σ結合しているアルキルまたはアリール配位子)を有する任意選択で置換されていてもよいシクロペンタジエニル配位子を有する錯体が適している。使用されうる光活性化されることが可能な白金触媒として、さらにジケトンから選択される配位子を有するものがある。
【0057】
(C)成分の配合量は有効量でよく、所望の硬化速度により適宜増減することができる。通常、組成物全体に対する含有割合が、白金元素に換算して0.5〜10質量ppmとなる量である。より好ましくは1〜5質量ppm、さらに好ましくは1〜3質量ppmである。白金系触媒の配合量が0.5ppm未満では、硬化性が著しく低下し、10ppmを超える場合には、硬化物の透明性が低下する。白金系触媒の配合量が0.5〜10質量ppmの範囲にある場合には、特性の良好な硬化物が得られ、また経済的にも有利である。
【0058】
<その他の任意成分>
本実施形態の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物には、前記(A)成分、(B)成分および(C)成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、反応抑制剤、接着性付与剤、ケイ素原子に結合した水素原子およびアルケニル基を含有しない非架橋性のポリオルガノシロキサン、耐熱性付与剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0059】
反応抑制剤は、前記組成物の反応を抑制するための成分であって、例えば、アセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤、具体的には、1−エチニル−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、トリアリルイソシアヌレート、ビニル基含有環状シロキサン4量体、メチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ)シラン等が挙げられる。
十分な混合時間を確保し、硬化物の架橋密度のばらつきを防止するなどの点からは、前記反応抑制剤を配合することが好ましい。
【0060】
また、硬化が進行しないように2液に分けて保存し、使用時に2液を混合して硬化を行うこともできる。2液混合タイプでは、脱水素反応の危険性の点から、(B)成分であるポリオルガノハイドロジェンシロキサンと(C)ヒドロシリル化反応触媒を同一の包袋とすることは避ける必要がある。
【0061】
本実施形態の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の粘度は、成形性や取扱いやすさの観点から、23℃において回転粘度計で測定した値として、500〜500,000mPa・sの範囲が好ましい。さらに好ましい範囲は1,000〜150,000mPa・sである。
【0062】
本実施形態の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、無機充填剤を含有しないことが好ましい。無機充填剤を含有しない組成としても、機械的特性(引張り強さ、伸び等)が良好な硬化物を得ることができる。また、無機充填剤を含有しない組成物とすることにより、光(例えば、可視光)の透過率の高い硬化物を得ることができる。
【0063】
本実施形態の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、必要に応じて加熱することで硬化する。硬化条件は特に限定されるものではないが、通常40〜200℃、好ましくは60〜170℃の温度に、0.5分〜10時間好ましくは1分〜6時間程度保持することで硬化する。
【0064】
[硬化物]
本実施形態の硬化物は、前記したポリオルガノシロキサン組成物を硬化してなるものである。この硬化物は、低硬度で機械的強度が高く、透明性が高い。また、液状物質のブリードがなく、表面の粘着性が低い。
本実施形態の好ましい硬化物としては、具体的に以下の特性を有する。
【0065】
<硬さ>
本実施形態の硬化物は、JIS K6249に規定されたタイプEデュロメータで測定された硬さが、50以下である。より好ましい硬さは、20〜45である。
【0066】
<引張り強さ>
本実施形態の硬化物は、JIS K6249に規定された引張り強さが0.5MPa以上である。より好ましい引張り強さは、0.6MPa以上である。
【0067】
<透明性>
本実施形態の硬化物は、厚さ2mmの試料の波長400nmの光の透過率が、90%以上である。より好ましい透過率は、92%以上である。
【0068】
<表面粘着性>
ポリオルガノシロキサン組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムと一体成型して得られた硬化物(厚さ2mm)から、フィルムを剥がすときの剥離力(剥離速度500mm/分)が、15mN/mm未満である。より好ましい剥離力は、10mN/mm未満である。
【0069】
本実施形態のポリオルガノシロキサン硬化物は、前記した特性を有するので、光学センサ、光学式接触センサ、圧力センサ、光学部材、人工皮膚などの用途に用いられ、特に、ロボットハンド用の光学式触覚センサの把持部の構成材料として適している。
【0070】
すなわち、光学式触覚センサにおいては、物体を把持する例えば半球状の把持部(タッチパッド)が物体と接触することによって、把持部の表面に施された格子状のドットパターンが変形する。そして、その変形を内部のCCDカメラで撮り画像解析することによって、加えられた触覚情報を得るように構成されている。そのため、把持部を構成する材料としては、高強度で高透明であり、硬すぎることがなく、また把持した物体の解放が容易なように、表面の粘着性が低いことが求められている。
本実施形態のポリオルガノシロキサン硬化物は、前記した特性を有し、低硬度で強度が高く、高透明で表面粘着性が低いので、光学式触覚センサの把持部を構成した場合、物体に損傷を与えることなく正確な触覚情報を得て、安定した把持および解放を達成することができる。
また、本実施形態のポリオルガノシロキサン硬化物は、画像表示装置を形成する材料、具体的には、画像表示装置の表示部と保護部間の充填材、としても好適に用いることができる。このような充填材として用いた場合、表示部と保護部との間に硬すぎることなく挟持され、安定した画像表示装置が得られる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。部は質量部を示し、粘度は特に断らない限り23℃における値である。
【0072】
以下の実施例および比較例に使用した各成分は次のものである。
(A1):両末端がそれぞれジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間がジメチルシロキサン単位からなる直鎖状ポリメチルビニルシロキサン(両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン)(粘度12,400mPa・s、ビニル基量0.060mmol/g)
(A2):アルケニル基を1分子中に平均して1個有するポリメチルビニルシロキサン(片末端ビニル基含有ポリジメチルシロキサン約50モル%、両末端ビニル基含有ポリジメチルシロキサン約25モル%、アルケニル基を含有しないポリジメチルシロキサン約25モル%の混合物)(粘度750mPa・s、ビニル基量0.050mmol/g)
(A3):単位式:M
5.25M
vi1Q
8で表されるレジン状ポリシロキサン(ビニル基量1.1mmol/g)
(B1):両末端がそれぞれジメチルハイドロジェンシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(粘度15mPa・s、SiH量1.3mmol/g)
(B2):単位式:M
H8Q
4で表されるレジン状ジメチルハイドロジェンシロキサン(粘度70mPa・s、SiH量10mmol/g)
(C):テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンを配位子として有する白金錯体溶液
反応抑制剤:ジメチルビス(1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシ)シラン
【0073】
なお、上記(A2)、(A3)および(B2)は、それぞれ以下の方法で得られたものである。
【0074】
<(A2)の調製>
オクタメチルシクロテトラシロキサン100部、1,1,3,3−テトラメチルジビニルジシロキサン0.43部、直鎖状ポリジメチルシロキサン(粘度5.1mPa・s)2.30部の混合溶液に、テトラメチルアンモニウムシラノレート0.04部を添加し、90〜100℃で3時間撹拌した。その後、副生した低沸点化合物を、100℃/3mmHgで留去して、1分子中に平均して1個のビニル基を含有するポリジメチルシロキサン(A2)を得た。
【0075】
<(A3)の調製>
クロロジメチルビニルシラン100部、クロロトリメチルシラン480部、テトラエトキシシラン680部およびキシレン600部をフラスコに入れて撹拌し、その中に水860部を滴下した。70〜80℃で1時間撹拌し、加水分解を行った後、分液しキシレン溶液を得た。次いで、キシレン300部と水酸化カリウム0.26部を加え、2時間加熱還流を行った。冷却後、リン酸を加えて中和を行い、不揮発分が60質量%になるように調整し、(A3)レジン状ポリシロキサンを得た。
なお、実施例で組成物を調製する際には、この溶液を(A1)と混合し(混合の質量比は、不揮発分で(A1):(A3)=5:5)、減圧条件下で150℃に加熱してキシレンを除去し、(A1)と(A3)の混合物としたものを使用した。
【0076】
<(B2)の調製>
テトラエトキシシラン100部、ジメチルクロロシラン92部およびトルエン60部の混合溶液を、過剰量の水を入れた反応容器に撹拌しながら滴下し、室温で共加水分解と縮合を行った。得られた有機相を、洗浄水が中性を示すまで水で洗浄し、脱水した後、トルエンと副生した低沸点化合物を100℃/5mmHgで留去して、(B2)レジン状ジメチルハイドロジェンシロキサンを得た。
【0077】
実施例1〜8、比較例1〜7
表1および表2に示す各成分を、それぞれ同表に示す割合となるように配合し混練して、ポリオルガノシロキサン組成物を調製した。
【0078】
実施例1〜8および比較例1〜7の各組成において、W
A2/(W
A1+W
A2)、W
A3/(W
A1+W
A2+W
A3)、H/ViおよびH
B1/(H
B1+H
B2)の値を算出した。これらの値をそれぞれ表1および表2に示す。
【0079】
次に、実施例1〜8および比較例1〜7で得られたポリオルガノシロキサン組成物について、以下に示すようにして、硬化物の物性(硬さ、引張強さ、伸び、引裂き強さ、光透過性、表面粘着性およびオイルブリードの有無)を測定し、評価した。結果を表1および表2の下欄に示す。なお、表中のオイルブリードの評価においては、オイルブリードがないものを○とし、オイルブリードが見られるものを×と記した。
【0080】
<硬さ、引張り強さ、伸びおよび引裂き強さ>
実施例1〜8および比較例1〜7で得られたポリオルガノシロキサン組成物を、金型内で100℃で10分間加熱して硬化させ、厚さ2mmのシート状硬化物を作製した。このシートからJIS K 6249に準拠したサイズの試験片を切り出し、23℃における硬さをタイプAデュロメータおよびタイプEデュロメータによりそれぞれ測定した。
また、試験片の引張強さ、伸びおよび引裂き強さ(クレッセント)を、それぞれJIS K 6249に規定の方法により測定した。
【0081】
<光透過性>
実施例1〜8および比較例1〜7で得られたポリオルガノシロキサン組成物を、金型内で100℃で10分間加熱して硬化させ、厚さ2mmのシート状硬化物を作製した。次いで、得られたシートから切り出した試験片(縦30mm×横30mm)に波長400nmの光を照射し、透過率を測定した。測定は、分光測色計(コニカミノルタ社製、装置名:CM−3500d)を使用して行った。
【0082】
<表面粘着性>
実施例1〜8および比較例1〜7で得られたポリオルガノシロキサン組成物を、金型内で100℃で10分間加熱して硬化させ、厚さ2mmのシート状硬化物を作製した。このとき、金型の内周面にPET製のフィルム(厚さ50μm)を貼り付けておき、硬化物の両面に2枚のPETフィルムがそれぞれ貼り合わされた試験片を得た。次いで、得られた試験片において、硬化物からフィルムを剥がすために要する剥離力を測定した。剥離力の測定は、オートグラフを使用し、フィルムを毎分500mmの速さで垂直に引き上げて硬化物から剥がす方法で行った。
剥離力が小さいほど、硬化物表面の粘着性が低いといえる。光学式触覚センサの把持部を構成する材料として使用する場合には、上記方法で測定された剥離力が15mN/mm未満であることが好ましい。
【0083】
<オイルブリードの有無>
実施例1〜8および比較例1〜7で得られたポリオルガノシロキサン組成物を、金型内で100℃で10分間加熱して硬化させ、厚さ2mmのシート状硬化物を作製した。得られたシート状硬化物を紙の上に置き、1日経過後、紙に染みができているか否かで、硬化物からのオイルブリードの有無を判定した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1から、以下のことがわかる。すなわち、(A1)、(A2)、(A3)、(B1)、(B2)および(C)の各成分が、本実施形態に規定する所定の組成で配合された実施例1〜8のポリオルガノシロキサン組成物から得られる硬化物は、タイプEデュロメータで測定された硬さが50以下と低いうえに、波長400nmの光の透過率(厚さ2mm)が90%以上と透明性が高く、かつ引張り強さが0.5MPa以上と機械的強度が高い。また、この硬化物は、液状物質のブリードがなく、さらに剥離力が小さく(15mN/mm未満)、表面の粘着性が低い。
【0087】
これに対して、比較例1のポリオルガノシロキサン組成物は、(A1)成分と(A2)成分とからなる直鎖状のアルケニル基ポリオルガノシロキサンの合計に対する(A1)両末端アルケニル基ポリオルガノシロキサンの含有割合が61質量%未満で、(A2)成分の含有割合(W
A2/(W
A1+W
A2))が39質量%を超えているので、硬化物の引張り強さが小さいばかりでなく、オイルブリードが生じている。
【0088】
また、比較例2および比較例5のポリオルガノシロキサン組成物は、W
A3/(W
A1+W
A2+W
A3)が、6質量%未満となっているので、硬化物の引張り強さが小さい。また、比較例2のポリオルガノシロキサン組成物は、剥離力が大きく(15mN/mm以上)、表面の粘着性が大きくなっている。さらに、硬化物にオイルブリードが生じている。
【0089】
比較例3のポリオルガノシロキサン組成物は、H/Vi比が0.9未満と低いので、硬化物の引張り強さが小さいばかりでなく、剥離力が15mN/mm以上と大きく、硬化物表面の粘着性が大きい。
比較例4のポリオルガノシロキサン組成物は、H
B1/(H
B1+H
B2)が0.75を超えているので、硬化物の引張り強さが小さいばかりでなく、剥離力が15mN/mm以上と大きく、硬化物表面の粘着性が大きい。
【0090】
比較例6のポリオルガノシロキサン組成物は、H
B1/(H
B1+H
B2)が0.2以下となっているので、硬化物のタイプEデュロメータで測定された硬さが50より大きく、十分に低硬度の硬化物が得られない。
比較例7のポリオルガノシロキサン組成物は、W
A3/(W
A1+W
A2+W
A3)が25質量%を超えているので、硬化物の硬さが大きく(50超)、好ましくない。