【文献】
European Journal of Medicinal Chemistry,2011年,46(4),p.1291-1305
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
【0015】
NF−κB抑制作用を呈するグランジフロル酸誘導体とは、下記の式(1)で示される構造からなるものである。
【0017】
前記の式(1)のようにグランジフロル酸の1分子とシンナミルアルコールの1分子とシステインの1分子からなる。これらの結合はすべて天然型であり、エステル結合を介して結合している。
【0018】
このグランジフロル酸誘導体は化学合成によりグランジフロル酸から合成することができる。しかし、その化学的な合成では原料のロスが著しいため、産業への利用は限定される。グランジフロル酸誘導体の標準品や微量な試供品を得るためには化学合成は好ましい。
【0019】
このグランジフロル酸誘導体の構造を解析することは有効成分の特定ができる点から好ましい。また、製品に利用して販売する時の含有量の指標として利用できることから好ましい。
【0020】
このグランジフロル酸誘導体の構造解析の一例として、たとえば、重水素化クロロホルム中の400MHzのH−NMRにより、ピークの位置は1.136、1.276〜1.676、1.957、2.17〜、2.27、2.470、2.486、2.801〜2.960、3.26〜3.88、4.96〜5.31、7.009、7.776、8.033、9.295ppmに認められる。
【0021】
さらに、このグランジフロル酸誘導体は高速液体クロマトグラフィーや質量分析装置で解析され、その構造が同定される。
【0022】
もともとグランジフロル酸はジテルペノイドであり、その有機酸である。グランジフロル酸は天然に存在する物質であり、化学式はC20H30O3である。また、グランジフロル酸は植物のウド、タラの木、各種ハーブなどの植物に含有されているため、食経験もあり、その安全性が高い。
【0023】
このグランジフロル酸自体は脂溶性であり核膜の脂質二重膜を通過しやすく、遺伝子に到達することからドラッグデリバリーの点から利点があり、薬動力学の点からも効果が確実に発揮されることから好ましい。
【0024】
このグランジフロル酸誘導体の中でグランジフロル酸部分は細胞膜や核膜の透過を促進し、核内に到達してNF−κB抑制作用を維持させる働きがある。
【0025】
また、構成成分であるシンナミルアルコールは、桂皮などの植物に含有される芳香族環を有する不飽和型のアルコールである。このシンナミルアルコールは化学式C9H10O1の構造であり、シナモンなどのハーブの葉に存在する有機アルコールである。桂皮アルコールともいわれ、芳香を有する特徴がある。
【0026】
このシンナミルアルコールはシナモンに含まれ、食経験もあることから安全性が高い。さらに、ベンゼン環を有することから疎水性を呈し、脂溶性を有する細胞膜にも浸透しやすいことは薬力学的に好ましい。
【0027】
このグランジフロル酸誘導体の中でシンナミルアルコール部分はDNAとNF−κBの結合を阻害することによりNF−κBの働きを抑制する。
【0028】
さらに、構成成分であるシステインはL型であり、天然型含硫アミノ酸である。システインはケラチンの構成アミノ酸で、非必須アミノ酸として中心的な役割を担っている。毛髪や皮膚の構成たんぱく質としても重要である。
【0029】
システインは還元型のSH基を有することから酸化を抑制する働きもあり、生体や組織内の酸化還元状態の安定化にも寄与している。システインは生体内で分解され、食経験も豊富であり、安全性も高い。
【0030】
このグランジフロル酸誘導体の中でシステインは還元状態を呈することによりグランジフロル酸誘導体の分解を抑制し、かつ、SH基の電子供与によりNF−κBの働きを抑制する。
【0031】
このグランジフロル酸誘導体はグランジフロル酸の炭素環部分及びシンナミルアルコールのベンゼン環部分が疎水性を呈して細胞膜の透過を促進する。
【0032】
一方、エステル結合部分とシステイン部分は水溶性を呈して細胞内液や核内での移動と反応性を高める。さらに、この結合により水素ガスを発生する働きを有する。すなわち、グランジフロル酸誘導体の粉末と水溶性溶媒と反応させることにより水素ガスを発生させる。水溶液とした場合の水素ガス濃度は1.6ppmである。
【0033】
NF−κBとDNAとの反応は水溶性反応ではあるもののヒストンや構成脂質には疎水性部分が存在することからグランジフロル酸誘導体の疎水性部分はヒストン内部に入り込み、NF−κBとDNAとの結合を阻害するために優れている。
【0034】
この阻害の形式は拮抗型であることから、阻害反応が固定化されることがないことから、過剰な反応や副作用が発生しない。この拮抗型のNF−κBとDNAとの結合部分の抑制は生体反応として好ましい。
【0035】
もともとNF−κBは精神的や肉体的ストレス、紫外線の刺激、環境汚染物質による汚染により活性化され、過剰な免疫反応やアレルギーを誘発する。たとえは、関節リウマチ、クローン病、アレルギー性肝炎や抗原抗体性腎炎などの炎症性疾患で過剰に発現している。また、水素ガスが発生することにより抗炎症作用が相乗的に増加することは好ましい。
【0036】
また、NF−κBは癌、敗血症、ウイルス感染、細菌感染、BSEや動脈硬化などの局所炎症部位で発現している。このグランジフロル酸誘導体によりNF−κBの抑制を行うことは種々の炎症や癌、動脈硬化などの疾患を抑制できることから好ましい。
【0037】
しかし、完全にNF−κBを抑制することは炎症を完全に抑制することになり、好ましくない。たとえば、感染に対する抵抗性や日和見感染の危惧があることから、好ましくない。このグランジフロル酸誘導体による拮抗型の抑制は抑制を調整できる点、副作用が少ないことから好ましい。
【0038】
また、このグランジフロル酸誘導体はアレルギーの予防にも利用できる。アレルギーは抗原がマクロファージやランゲルハンス細胞などの抗原提示細胞のNF−κBを抑制することにより抗原提示細胞の炎症性の反応が抑制されるというメカニズムである。
【0039】
このグランジフロル酸誘導体は生体内では腎臓のエステラーゼにより分解され、尿中に排泄される。分解は構成成分であるグランジフロル酸、または、グランジフロル酸、シンナミルアルコールとシステインである。したがって、このグランジフロル酸誘導体は体内に蓄積されることはなく、分解も生体内酵素で行われ、分解物も天然物であることから安全性が高い。
【0040】
このグランジフロル酸誘導体は筋肉細胞膜に浸透しやすく、筋肉の活動を高め、糖質も分解させる。糖質が消費されることから糖尿病やダイエット作用を呈する。筋肉では大量の活性酸素が発生することからこの活性酸素を除去する水素ガスを発生させることは筋肉を保護することから好ましい。
【0041】
さらに、このグランジフロル酸誘導体は皮膚上皮細胞の炎症も抑制し、シワの形成を抑制する。また、角質細胞を安定化させることにより皮膚角質のバリア機能を維持し、異物や刺激物、細菌の侵入を抑制する。この働きは化粧料として利用できる。
【0042】
このグランジフロル酸誘導体はアレルギー反応を抑制することから、抗アレルギー剤として利用できる。
【0043】
また、このグランジフロル酸誘導体は神経細胞の細胞膜に働き、細胞膜の電位と神経の伝導を高めることにより認知症やアルツハイマー症、パーキンソン症にも適している。また、発生する水素ガスは血液脳関門も通過することから脳の障害の回復に対して発生する水素ガスは好ましい働きを呈する。
【0044】
また、このグランジフロル酸誘導体は分解された構成成分がすべて自然界に存在する物質であり、その食経験や化粧品としての利用実績が豊富であることから安全性が確認されている。
【0045】
さらに、このグランジフロル酸誘導体は眼の角膜細胞、水晶体細胞、網膜細胞のNF−κBを抑制することにより結膜炎、白内障、緑内障、網膜剥離による炎症を抑制し、視力の回復に利用される。
【0046】
このグランジフロル酸誘導体は天然にも存在しており、ウドの根などに極微量認められる。このグランジフロル酸誘導体を精製により上記の植物から抽出することは可能である。
【0047】
ただし、精製には大量の原料を必要とすることから、製造方法として産業上への利用は制限される。
【0048】
このグランジフロル酸誘導体はウド葉などの植物から得ることが可能であるが、含有量が少ないことから、発酵法などにより増加させることは好ましい。発酵の方法として大豆と混合して納豆菌やベニコウジ菌により発酵させて得ることは食経験があり、増加量も多いことから好ましい。
【0049】
得られたグランジフロル酸誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするグランジフロル酸誘導体を分離精製することは、目的とするグランジフロル酸誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
【0050】
医薬品として、注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0051】
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
【0052】
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
【0053】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
【0054】
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0055】
食品製剤としてNF−κBを抑制させることによる機能性をもたらすサプリメント、滋養強壮系の食品、皮膚の健康を維持する美容サプリメント、神経、肝臓や腎臓の機能を向上させる健康食品、筋肉を増強し、脂肪を分解するダイエットなどを目的とした健康食品、美容食品などに利用される。また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
【0056】
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、NF−κBの抑制を介して上皮組織や筋肉、骨細胞の強化を目的として飼料やサプリメントとして利用される。
【0057】
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
【0058】
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
【0059】
得られた化粧料はNF−κBを抑制させることにより皮膚の構築を強固にし、シワを防止し、たるみを防ぐことは好ましい。
【0060】
また、このグランジフロル酸誘導体がNF−κBを抑制することにより抗菌作用を発揮し、炎症の抑制を目的とした歯磨き剤、洗口液や入浴剤などに利用できる。
【0061】
次に、ウドの根、大豆粉末と納豆菌を添加して発酵させた発酵液をベニコウジ菌で発酵する工程からなるNF−κB抑制作用を呈するグランジフロル酸誘導体の製造方法について説明する。
【0062】
ここでいうグランジフロル酸誘導体とはグランジフロル酸の1分子とシンナミルアルコールの1分子とシステインの1分子からなる物質であり、これらの結合はすべて天然型であり、エステル結合である。グランジフロル酸誘導体はNF−κBを抑制することにより、炎症や癌の増殖を抑制する。
【0063】
このグランジフロル酸誘導体のグランジフロル酸とシンナミルアルコールとシステインは天然に存在し、食経験も豊富であり、安全性が認められていることから好ましい。
【0064】
この誘導体は皮膚、神経、骨、筋肉、肝臓や腎臓などに働き、NF−κBを抑制することにより、炎症を抑制する。
【0065】
この製造方法とはウドの根、大豆粉末と納豆菌を添加して発酵させた発酵液をベニコウジ菌で発酵する工程からなる。
【0066】
原料となる物質はウドの根、大豆粉末、納豆菌及びベニコウジ菌である。
【0067】
ここでいうウドは学名Aralia cordataの植物であり、ウコギ科タラノキ属の多年草である。その新芽や根は独特の香りを有し、山菜として食用に好まれており、食経験も豊富である。
【0068】
また、ウドの根を利用した民間薬は独活であり、発汗、解熱、鎮痙、鎮痛に用いられている。ウドの根にはテルペノイド、色素、ポリフェノールやグランジフロル酸が含有されていることからグランジフロル酸誘導体を製造する原料として好ましい。
【0069】
ウドの根は日本、中国、台湾、アメリカなどいずれの国の由来でも良い。特に、日本産で低農薬や減農薬で生産されたものは好ましい。たとえば、有限会社庄屋の恵みで販売されている山形産のウドの根は品質が良いことから好ましい。
【0070】
ウドの根は乾燥され、粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うることから好ましい。
【0071】
3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
【0072】
原料となる大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
【0073】
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
【0074】
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
【0075】
さらに、ウドの根と大豆は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
【0076】
用いる納豆菌は学名バチルス サブチリスで日本では納豆の製造に汎用され、食経験が豊富で有用な食用菌である。沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。
【0077】
この納豆菌はウドの根と大豆からなるグランジフロル酸とシステインとシンナミルアルコールの結合を促進する。
【0078】
前記の発酵に関するそれぞれの添加量はウドの根の乾燥粉末1重量に対し、大豆粉末は0.04〜4重量及び納豆菌は0.002〜0.04重量が好ましい。納豆菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
【0079】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0080】
また、この発酵は40〜42℃に加温され、発酵は、2日間から10日間行われる。目的とするグランジフロル酸誘導体をHPLCやTLCにより定量することならびに、菌体の増殖性を確認することにより、発酵の工程管理を実施することは好ましい。
【0081】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0082】
この発酵の工程によってグランジフロル酸とシステインとシンナミルアルコールとが結合するものの、その結合が不安定であることから次のベニコウジ菌による発酵を行う。
【0083】
用いるベニコウジ菌は学名Monascuc purpureusの糸状菌であり、古くから日本、中国や台湾において紅酒や豆腐ようなどの発酵食品に利用されている。また、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。
【0084】
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は前記の発酵物1重量に対してベニコウジ菌は0.0002〜0.005重量が好ましい。ベニコウジ菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
【0085】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0086】
また、この発酵は39〜42℃に加温され、発酵は1日間から10日間行われる。この発酵の工程によってベニコウジ菌の還元作用によりこのグランジフロル酸誘導体の構造が安定化される。
【0087】
前記の発酵物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収し、菌を滅菌でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
【0088】
前記の還元反応物から、目的とするグランジフロル酸誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0089】
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするグランジフロル酸誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0090】
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
【0091】
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0092】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
【0093】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
【0094】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
【0095】
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0096】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜40倍量が好ましく、4〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から10〜39℃が好ましく、12〜37℃がより好ましい。
【0097】
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
【0098】
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
【0099】
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0100】
グランジフロル酸誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするグランジフロル酸誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
【0101】
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるグランジフロル酸誘導体が安定に維持されることから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
【0102】
また、このグランジフロル酸誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
【0103】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
【実施例1】
【0104】
山形県で減農薬と有機肥料により栽培されたウドの新根を有限会社庄屋の恵みより購入して用いた。この葉を水道水で水洗後、天日で乾燥させ、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、ウドの根の乾燥粉末粉砕物を1.0kg得た。
【0105】
北海道産の大豆をミキサー(クイジナート製)に供し、大豆の粉砕物1.1kgを得た。前記のウドの根と大豆の粉砕物をオートクレーブに供し、121℃、20分間、滅菌した。
【0106】
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水5kgを添加し、攪拌した。
【0107】
これとは別に、納豆本舗製の粉末納豆菌の10gを小型発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた発酵準備液を用意した。
【0108】
前記の前培養した納豆菌の発酵準備液とウドの根の乾燥粉末と大豆とを入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、40〜42℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
【0109】
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行った。発酵終了後、発酵タンクより発酵物を取り出し、煮沸滅菌した。この発酵物を濾過布により濾過して、納豆菌による発酵液1.6kgを得た。この発酵液1kgに対して紅麹本舗製のベニコウジ菌の10gを添加し、37℃で3日間発酵させた。
【0110】
この発酵物にエタノールを添加して煮沸滅菌した。これを濾過し、濾過液を目的とするグランジフロル酸誘導体とした。これを検体1とした。この検体1の溶液を凍結乾燥させることによりグランジフロル酸誘導体の粉末を得た。この粉末0.1gを精製水10mLに溶解した結果、ガスクロマドラフィー(島津製作所製)により定量したところ、水溶液中には1.6ppmの水素ガスが発生した。
【0111】
さらに、構造解析及び実験の目的で精製物を得た。つまり、前述の検体1のグランジフロル酸誘導体の100gに8%エタノール含有精製水の1Lを添加し、ダイアイオン(三菱化学製)600gを8%エタノール液に懸濁して充填したガラス製カラムに供した。
【0112】
これに2Lの8%エタノール液を添加して清浄し、さらに、60%エタノール液を2L添加して目的とするグランジフロル酸誘導体を溶出させ、濃縮して精製した。精製されたグランジフロル酸誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。これをグランジフロル酸誘導体の精製物11gを検体2とした。
【0113】
以下に、グランジフロル酸誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
【0114】
上記のように得られた検体2をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
【0115】
これを核磁気共鳴装置(400MHz、H−NMR、ブルカー製)で解析した結果、検体2からグランジフロル酸とシステインとシンナミルアルコールからなるグランジフロル酸誘導体が検出された。
【0116】
すなわち、H−NMRの重水素化クロロホルム中ケミカルシフトは1.136、1.276、1.340、1.513、1.631、1.676、1.957、2.177、2.275、2.470、2.486、2.801、2.837、2.923、2.960、3.262、3.816、3.889、4.964、5.241、5.319、7.009、7.776、8.033、9.295ppmであった。
【0117】
上記の解析結果は、化学的に合成した標準品と同一構造を呈することが判明したことから、検体2はグランジフロル酸1分子とシステイン1分子とシンナミルアルコール1分子がエステル結合したグランジフロル酸誘導体であると確認できた。
【0118】
以下にヒト皮膚上皮細胞を用いた確認試験について述べる。
(試験例2)
【0119】
クラボウ株式会社より購入したヒト由来皮膚上皮細胞を用いた。培養液として5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレ(FALCON製)に播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これを紫外線照射装置(アイグラフィクス株式会社製)により紫外線照射した。さらに、前記の検体1、検体2及び陽性対照としてEGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)を0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養して試験した。
【0120】
細胞を剥離後、細胞数を計数した後、細胞懸濁液を調整した。また、この細胞懸濁液を精製してたんぱく質部分を採取した。この部分を用いてNF−κB量をELISA法(NF−κBp65ELISA Kit、NOVAS製)を用いて分光光学的に定量した。さらに、細胞内のケラチン量について抗ケラチン抗体(低分子タイプ)を用いたELISA法にて測定した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。溶媒を添加した溶媒対照群と比較した。
【0121】
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により皮膚上皮細胞数は溶媒対照群に比して平均値として149%に増加した。また、検体2では219%に増加した。一方、EGFでは142%の増加であり、検体1及び検体2の方が優れていた。
【0122】
細胞内のNF−κB量については検体1により溶媒対照群に比して75%に減少した。また、検体2の添加によって溶媒対照の40%となった。EGFでは99%となり、検体1及び検体2のNF−κB量の減少が著しかった。
【0123】
NF−κBの増加は炎症の指標でもあることから、検体1と検体2の処理でNF−κBが減少したことは検体1と検体2には炎症を抑制する作用が確認された。EGFは成長因子であることから、炎症を抑制する働きは認められなかった。
【0124】
細胞内ケラチン量については検体1により溶媒対照群に比して159%に増加した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の277%となった。EGFでは152%となり、検体1及び検体2のケラチン産生の増加が著しかった。なお、検体1及び検体2を添加した培養液には水素ガスが1.6ppm発生していた。
【0125】
以下にヒト神経細胞の障害モデルを用いた確認試験について述べる。
(試験例3)
【0126】
コスモバイオから購入したヒト神経細胞(Human Neurons(HN))を用いた。培養液としては、専用の培養液(神経細胞増殖培地)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに1%のアクリルアミド水溶液を添加して神経細胞を弱らせた。
【0127】
ここに、前記の実施例1で得られた検体1及び検体2、陽性対照としてNGF(フナコシ(株)、ヒトタイプ)を0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
【0128】
培養後、細胞を剥離後、細胞数を計数した後、神経細胞懸濁液を調整し、神経細胞内のNF−κB量を測定した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。
【0129】
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により神経細胞数が溶媒対照群に比して平均値として148%に増加した。また、検体2では223%に増加した。一方、NGFでは144%の増加であり、検体1及び検体2の方が優れていた。
【0130】
神経細胞内のNF−κB量については検体1により溶媒対照群に比して61%に減少した。また、検体2の添加によっては溶媒対照の42%となった。NGFでは99%となり、検体1及び検体2の減少が著しかった。さらに、検体1及び検体2を添加した培養液には1.6ppmの水素ガスが発生したことを確認した。