(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の発電プラントの構成を示す模式図である。
図1の発電プラントは、2−2−1の多軸型のC/C発電プラントである。
【0013】
この発電プラントは、第1ユニット(#1ユニット)の構成要素として、第1ガスタービン(#1GT)11と、第1GT発電機12と、第1排熱回収ボイラ(#1HRSG)13と、第1高圧減圧弁14と、第1高圧アイソレーション弁15と、第1高圧バイパス弁16と、第1低圧減圧弁17と、第1低圧アイソレーション弁18と、第1低圧バイパス弁19とを備えている。第1排熱回収ボイラ13は、第1高圧ドラム13aと、第1高圧過熱器13bと、第1再熱器13cと、第1低圧ドラム13dと、第1低圧過熱器13eとを有している。上記のように、「第1」は適宜『#1』とも表記する。
【0014】
この発電プラントはさらに、第2ユニット(#2ユニット)の構成要素として、第2ガスタービン(#2GT)21と、第2GT発電機22と、第2排熱回収ボイラ(#2HRSG)23と、第2高圧減圧弁24と、第2高圧アイソレーション弁25と、第2高圧バイパス弁26と、第2低圧減圧弁27と、第2低圧アイソレーション弁28と、第2低圧バイパス弁29とを備えている。第2排熱回収ボイラ23は、第2高圧ドラム23aと、第2高圧過熱器23bと、第2再熱器23cと、第2低圧ドラム23dと、第2低圧過熱器23eとを有している。上記のように、「第2」は適宜『#2』とも表記する。
【0015】
この発電プラントはさらに、蒸気タービン31およびST発電機32を備え、バルブとしてMCV33、ICV34、および低圧CV35を備え、ヘッダとして高圧蒸気ヘッダ36、CRHヘッダ37、HRHヘッダ38、および低圧蒸気ヘッダ39を備えている。蒸気タービン31は、高圧(HP)タービン31aと、中圧(IP)タービン31bと、低圧(LP)タービン31cとを有している。
【0016】
第1ガスタービン11は、第1燃焼器(図示せず)から供給された燃焼ガスにより駆動される。第1GT発電機12は、第1ガスタービン11により駆動されて発電する。第1ガスタービン11から排出された排ガスG1は、第1排熱回収ボイラ13に送られる。
【0017】
第1排熱回収ボイラ13では、第1高圧ドラム13a内の水が、第1高圧蒸発器(図示せず)内で排ガスG1により加熱されて飽和蒸気となり、この飽和蒸気は、第1高圧過熱器13b内で排ガスG1により過熱されて過熱蒸気(第1高圧蒸気)となる。第1高圧蒸気は、蒸気流路L1に排出される。第1高圧減圧弁14と第1高圧アイソレーション弁15は、蒸気流路L1に設けられ、第1高圧バイパス弁16は、蒸気流路L1から分岐した蒸気流路L2に設けられている。蒸気流路L2は、第1高圧蒸気を復水器(図示せず)に棄てるために使用される。
【0018】
同様に、第2ガスタービン21は、第2燃焼器(図示せず)から供給された燃焼ガスにより駆動される。第2GT発電機22は、第2ガスタービン21により駆動されて発電する。第2ガスタービン21から排出された排ガスG2は、第2排熱回収ボイラ23に送られる。
【0019】
第2排熱回収ボイラ23では、第2高圧ドラム23a内の水が、第2高圧蒸発器(図示せず)内で排ガスG2により加熱されて飽和蒸気となり、この飽和蒸気は、第2高圧過熱器23b内で排ガスG2により過熱されて過熱蒸気(第2高圧蒸気)となる。第2高圧蒸気は、蒸気流路L3に排出される。第2高圧減圧弁24と第2高圧アイソレーション弁25は、蒸気流路L3に設けられ、第2高圧バイパス弁26は、蒸気流路L3から分岐した蒸気流路L4に設けられている。蒸気流路L4は、第2高圧蒸気を上記の復水器に棄てるために使用される。
【0020】
蒸気流路L2内の第1高圧蒸気と、蒸気流路L4内の第2高圧蒸気は、MCV33とCRHヘッダ37が設けられた蒸気流路L5に流入する。蒸気流路L5に流入した第1高圧蒸気と第2高圧蒸気は、高圧タービン31aに導入され、高圧タービン31aを駆動するのに用いられた後、CRHヘッダ37が設けられた蒸気流路L6に排出される。蒸気流路L6内の蒸気は、蒸気流路L7と蒸気流路L8とに流入する。
【0021】
蒸気流路L7に流入した蒸気は、第1再熱器13c内で排ガスG1により再び過熱(再熱)されて過熱蒸気(第1中圧蒸気)となる。第1中圧蒸気は、第1高圧蒸気よりも低圧であり、ICV34とHRHヘッダ38が設けられた蒸気流路L9に排出される。
【0022】
同様に、蒸気流路L8に流入した蒸気は、第2再熱器23c内で排ガスG2により再び過熱(再熱)されて過熱蒸気(第2中圧蒸気)となる。第2中圧蒸気は、第2高圧蒸気よりも低圧であり、蒸気流路L9に排出される。
【0023】
蒸気流路L9に流入した第1中圧蒸気と第2中圧蒸気は、中圧タービン31bに導入され、中圧タービン31bを駆動するのに用いられた後、蒸気流路L10に排出される。
【0024】
さらに、第1排熱回収ボイラ13では、第1低圧ドラム13d内の水が、第1低圧蒸発器(図示せず)内で排ガスG1により加熱されて飽和蒸気となり、この飽和蒸気が、第1低圧過熱器13e内で排ガスG1により過熱されて過熱蒸気(第1低圧蒸気)となる。第1低圧蒸気は、第1中圧蒸気よりも低圧であり、蒸気流路L11に排出される。第1低圧減圧弁17と第1低圧アイソレーション弁18は、蒸気流路L11に設けられ、第1低圧バイパス弁19は、蒸気流路L11から分岐した蒸気流路L12に設けられている。蒸気流路L12は、第1低圧蒸気を上記の復水器に棄てるために使用される。
【0025】
同様に、第2排熱回収ボイラ23では、第2低圧ドラム23d内の水が、第2低圧蒸発器(図示せず)内で排ガスG2により加熱されて飽和蒸気となり、この飽和蒸気が、第2低圧過熱器23e内で排ガスG2により過熱されて過熱蒸気(第2低圧蒸気)となる。第2低圧蒸気は、第2中圧蒸気よりも低圧であり、蒸気流路L13に排出される。第2低圧減圧弁27と第2低圧アイソレーション弁28は、蒸気流路L13に設けられ、第2低圧バイパス弁29は、蒸気流路L13から分岐した蒸気流路L14に設けられている。蒸気流路L14は、第2低圧蒸気を上記の復水器に棄てるために使用される。
【0026】
蒸気流路L12内の第1低圧蒸気と、蒸気流路L14内の第2低圧蒸気は、低圧CV35が設けられた蒸気流路L15に流入する。さらに、蒸気流路L15に流入した第1低圧蒸気と第2低圧蒸気は、中圧タービン31bから排出された蒸気と同様に、蒸気流路L10に流入する。蒸気流路L10に流入した蒸気は、低圧タービン31cに導入され、低圧タービン31cを駆動するのに用いられた後、上記の復水器に排出される。
【0027】
このように、第1排熱回収ボイラ13は、第1ガスタービン11からの排ガスG1の熱を利用して、第1高圧蒸気、第1中圧蒸気、および第1低圧蒸気を生成する。同様に、第2排熱回収ボイラ23は、第2ガスタービン12からの排ガスG2の熱を利用して、第2高圧蒸気、第2中圧蒸気、および第2低圧蒸気を生成する。高圧タービン31a、中圧タービン31b、および低圧タービン31cは、第1および第2排熱回収ボイラ13、23からの蒸気により駆動され、ST回転軸を回転させる。ST発電機32は、ST回転軸の回転を利用して発電を行う。
【0028】
図2は、第1実施形態の発電プラントの動作の課題を説明するためのグラフであり、この発電プラントの起動手順の例を示している。
【0029】
まず、第1ユニットと蒸気タービン31の起動手順を、
図2の「#1」「ST」の欄を参照して説明する。
【0030】
第1ユニットでは、時刻0分に第1ガスタービン11が起動する。第1ガスタービン11の回転数が上昇して定格回転数に到達すると、第1GT発電機12が並列され、第1ガスタービン11はスピニングリザーブ負荷の運転に移行する。
図2は、第1ガスタービン11の回転数と負荷の時間変化を示している。
【0031】
第1排熱回収ボイラ13は、第1ガスタービン11からの排ガスG1の熱を回収して第1高圧蒸気と第1低圧蒸気とを生成する。ただし、第1高圧蒸気は、第1低圧蒸気よりも先に生成される。
【0032】
第1高圧ドラム13aで発生した蒸気により第1高圧ドラム13aの器内圧が所定値に到達すると、第1高圧バイパス弁16が開弁され、第1高圧蒸気は復水器に導かれる(棄てられる)。
図2は、第1高圧バイパス弁16の開度と第1高圧蒸気の温度の時間変化を示している。
【0033】
第1高圧蒸気の圧力、流量、温度がいずれもそれぞれの所定のしきい値に到達したときに、高圧タービン31aへの通気許可が成立してMCV33が開弁する。圧力、流量、温度のなかで一番遅くしきい値に到達するのは温度である。第1高圧蒸気の温度のしきい値は、例えば430℃である。
【0034】
第1ユニットでは、時刻40分(第1ガスタービン11が起動してから40分経過後)に、第1高圧蒸気の温度が430℃に到達する。よって、時刻40分にMCV33が開弁され、蒸気タービン31の起動が開始される。これを第1高圧蒸気生成工程と呼び、
図2では「(1)」で示されている。
図2は、MCV33の開度と、蒸気タービン31の回転数が、時刻40分から上昇する様子を示している。MCV33が開弁されると、第1高圧蒸気が高圧タービン31aに流れ始めるため、第1高圧バイパス弁16の開度は減少する。
【0035】
蒸気タービン31が起動した後、ST発電機32は並列され、蒸気タービン31は初負荷状態に移行する。そして、蒸気タービン31のロータ部に発生する熱応力を軽減、緩和する目的でSTヒートソーク運転が行われる。
【0036】
STヒートソーク中に、第1低圧ドラム13dで発生した蒸気により低圧ドラム13dの器内圧が所定値に到達すると、第1低圧バイパス弁19が開弁され、第1低圧蒸気は復水器に導かれる(棄てられる)。
図2は、第1低圧バイパス弁19の開度の時間変化を示している。
【0037】
第1低圧蒸気の流量が所定のしきい値に到達したときに、低圧タービン31cへの通気許可が成立して低圧CV35が開弁する。本実施形態においては、第1低圧蒸気の流量の監視を、第1低圧バイパス弁19の開度の監視で代替する。そのため、第1低圧バイパス弁19の開度がしきい値に到達したときに、低圧タービン31cへの通気許可が成立して低圧CV35が開弁する。第1低圧バイパス弁19の開度のしきい値は、例えば15%である。
【0038】
第1ユニットでは、時刻70分(第1ガスタービン11が起動してから70分経過後)に、第1低圧バイパス弁19の開度が15%に到達する。よって、時刻70分に低圧CV35が開弁される。これを第1低圧蒸気生成工程と呼び、
図2では「(2)」で示されている。
図2は、低圧CV35の開度が、時刻70分から上昇する様子を示している。低圧CV35が開弁されると、第1低圧蒸気が低圧タービン31cに流れ始めるため、第1低圧バイパス弁19の開度は減少する。
【0039】
ここで、第1高圧蒸気の生成には40分しか要さないのに対し、第1低圧蒸気の生成には70分も要している。以下、第1低圧蒸気の生成が第1高圧蒸気の生成よりも遅れる理由を説明する。
【0040】
第1排熱回収ボイラ13内には、排ガスG1の入口側(上流側)から出口側(下流側)に向けて、第1高圧過熱器13b、第1再熱器13c、および第1低圧過熱器13eが順番に配置されている。これらは熱交換器であり、排ガスG1と蒸気との熱交換により蒸気を加熱(過熱)する。第1低圧過熱器13eに流入する排ガスG1は、第1高圧過熱器13aと第1再熱器13cで熱交換に使用されて温度が低下しているため、第1低圧蒸気の生成は遅れることになる。さらには、第1低圧蒸気の流量は、第1高圧蒸気の流量よりも小さくなる。
【0041】
なお、これは第2排熱回収ボイラ23でも同様である。よって、後述するように、第2低圧蒸気の生成は、第2高圧蒸気の生成よりも遅れることになる。さらには、第2高圧蒸気の発生流量は、第2低圧蒸気の発生流量よりも数倍大きい流量となる。
【0043】
上記のSTヒートソーク運転が所定時間だけ実施された後、復水器に棄てている全蒸気がMCV33や低圧CV35を通過することになるように、MCV33と低圧CV35の開度を増加させて蒸気タービン31の負荷を上昇させる。この過程で、第1高圧バイパス弁16と第1低圧バイパス弁19は全閉され、MCV33はIPC制御に移行する。
【0044】
本実施形態では、蒸気タービン31の起動から90分後にIPC移行が完了する。すなわち、時刻130分(第1ガスタービン11が起動してから130分経過後)にIPC移行が完了する。これをST起動〜IPC完了工程と呼び、
図2では「(3)」で示されている。本実施形態のIPC移行は、時刻120分に開始され、時刻130分に完了する。
【0045】
IPC移行の完了後には、第1ガスタービン11の負荷が定格値に向けて上昇し、MCV33と低圧CV35の開度も増加する。また、IPC移行の完了後には、第2排熱回収ボイラ23が生成する第2高圧蒸気と第2低圧蒸気を蒸気タービン31に供給する。そして、第2排熱回収ボイラ23のアドミッションが許容される。
【0046】
もしIPC移行の完了前に第2排熱回収ボイラ23のアドミッションが開始されると、第1高圧バイパス弁16と第2高圧バイパス弁26の両方が開弁している状況となり、これらの弁の圧力制御が相互干渉する問題が生じる。しかしながら、IPC移行の完了後には第1高圧バイパス弁16が閉弁されているため、この問題は生じない。
【0047】
次に、第2ユニットの起動手順を、
図2の「#2」の欄を参照して説明する。
【0048】
第2ユニットでは、時刻20分(第1ガスタービン11が起動してから20分経過後)に第2ガスタービン21が起動する。第2ガスタービン21の回転数が上昇して定格回転数に到達すると、第2GT発電機22が並列され、第2ガスタービン21はスピニングリザーブ負荷の運転に移行する。
図2は、第2ガスタービン21の回転数と負荷の時間変化を示している。以下の説明では、この「時刻20分」という第2ガスタービン22の起動時刻の問題点について説明する。
【0049】
第2排熱回収ボイラ23は、第2ガスタービン21からの排ガスG2の熱を回収して第2高圧蒸気と第2低圧蒸気とを生成する。ただし、第2高圧蒸気は、第2低圧蒸気よりも先に生成される。
【0050】
第2高圧ドラム23aで発生した蒸気により第2高圧ドラム23aの器内圧が所定値に到達すると、第2高圧バイパス弁26が開弁され、第2高圧蒸気は復水器に導かれる(棄てられる)。
図2は、第2高圧バイパス弁26の開度と第2高圧蒸気の温度の時間変化を示している。
【0051】
第2ユニットでは、第1ユニットと同様に、第2ガスタービン21が起動してから40分経過後に、第2高圧蒸気の温度が430℃に到達する。これを第2高圧蒸気生成工程と呼び、
図2では「(4)」で示されている。別言すると、第2高圧蒸気の温度は時刻60分に430℃に到達する。
【0052】
しかしながら、本実施形態の第2排熱回収ボイラ23のアドミッションは、時刻130分にIPC移行が完了しないと可能にならない。理由は、IPC移行の完了前には、第1高圧バイパス弁16と第2高圧バイパス弁26の両方が開弁しており、これらの弁の圧力制御が相互干渉する問題が生じるからである。そのため、時刻60〜130分の70分間は、第2高圧バイパス弁26の開弁状態が継続され、コスト(燃料)を費やして生成した第2高圧蒸気が、発電に寄与することなしに(すなわち蒸気タービン31を駆動することなしに)復水器に無駄に棄てられてしまう。
【0053】
時刻130分にIPC移行が完了すると、第2高圧アイソレーション弁25が開弁される(
図2参照)。その結果、第2高圧蒸気は高圧蒸気ヘッダ36に入り、第1高圧蒸気と合流してMCV33に流入し、蒸気タービン31を駆動する。
【0054】
この工程が第2排熱回収ボイラ23のアドミッションであるが、これは第2高圧蒸気のアドミッションなので、これを第2高圧アドミッション工程と呼び、
図2では「(6)」で示されている。
【0055】
第2高圧アイソレーション弁25の開弁開始と同時に、第2高圧バイパス弁26は閉弁を開始する。時刻140分に第2高圧バイパス弁26が全閉されたときに、第2高圧蒸気は全量がMCV33に流入し、第2高圧アドミッション工程が完了する。この工程の完了後は、第2高圧蒸気の全量が蒸気タービン31を駆動する状態になる。
【0056】
また、第2ユニットでは、第1ユニットと同様に、第2ガスタービン21が起動してから70分経過後に、第2低圧バイパス弁29の開度が15%に到達する。これを第2低圧蒸気生成工程と呼び、
図2では「(5)」で示されている。別言すると、第2低圧蒸気の開度は時刻90分に15%に到達する。
【0057】
しかしながら、本実施形態の第2排熱回収ボイラ23のアドミッションは、上述のように、時刻130分にIPC移行が完了しないと可能にならない。そのため、時刻90〜130分の40分間は、第2低圧バイパス弁29の開弁状態が継続され、コストを費やして生成した第2低圧蒸気が、発電に寄与することなしに復水器に無駄に棄てられてしまう。
【0058】
時刻130分にIPC移行が完了すると、第2低圧アイソレーション弁28が開弁される(
図2参照)。その結果、第2低圧蒸気は低圧蒸気ヘッダ39に入り、第1低圧蒸気と合流して低圧CV35に流入し、蒸気タービン31を駆動する。
【0059】
この工程も第2排熱回収ボイラ23のアドミッションであるが、これは第2低圧蒸気のアドミッションなので、これを第2低圧アドミッション工程と呼び、
図2では「(7)」で示されている。
【0060】
第2低圧アイソレーション弁28の開弁開始と同時に、第2低圧バイパス弁29は閉弁を開始する。時刻137分に第2低圧バイパス弁29が全閉されたときに、第2低圧蒸気は全量が低圧CV35に流入し、第2低圧アドミッション工程が完了する。この工程の完了後は、第2低圧蒸気の全量が蒸気タービン31を駆動する状態になる。
【0061】
時刻140分に第2高圧アドミッション工程と第2低圧アドミッション工程の双方が完了したときに、第2排熱回収ボイラ23のアドミッションは完了する。その後、第2ガスタービン21の負荷は定格値に向けて上昇し、これに伴って第2高圧蒸気と第2低圧蒸気の発生流量も増加する。また、第2高圧蒸気と第2低圧蒸気の発生流量が増加すると、MCV33と低圧CV35の開度も増加して、蒸気タービン31の負荷が増加する。
【0062】
蒸気タービン31の負荷が定格値に到達したとき、本実施形態の発電プラントの起動が完了する。
【0063】
なお、もし第2高圧バイパス弁26が未だ開弁中に第2ガスタービン21の負荷が定格値に向けて上昇すると、これに伴って増加する第2高圧蒸気を受けて働こうとするMCV33のIPC制御と、第2高圧バイパス弁26の圧力制御が相互干渉してしまう。
【0064】
同様に、もし第2低圧バイパス弁29が未だ開弁中に第2ガスタービン21の負荷が定格値に向けて上昇すると、これに伴って増加する第2低圧蒸気を受けて働こうとする低圧CV35のIPC制御と、第2低圧バイパス弁29の圧力制御が相互干渉してしまう。
【0065】
図2に示す制御によれば、これらの相互干渉を回避することが可能となる。しかしながら、コストを費やして生成した第2高圧蒸気と第2低圧蒸気の一部が、発電に寄与することなしに復水器に無駄に棄てられることが問題となる。
【0066】
図3は、第1実施形態の発電プラントの動作の課題を説明するためのグラフであり、
図2のグラフの一部を抽出したものである。
【0067】
具体的には、第1ユニットに関する(1)第1高圧蒸気生成工程、(2)第1低圧蒸気生成工程と、蒸気タービン31に関するST起動〜IPC完了工程と、第2ユニットに関する(4)第2高圧蒸気生成工程、(5)第2低圧蒸気生成工程、(6)第2高圧アドミッション工程、(7)第2低圧アドミッション工程とが抽出されている。
【0068】
ここで、時刻60〜130分の70分間は第2高圧蒸気が無駄に棄てられている問題について
図3で確認する。第2高圧蒸気生成工程は時刻60分に完了するが、ST起動〜IPC完了工程は時刻130分まで完了しない。そのため、この間の70分間は第2高圧バイパス弁26が無駄に開弁して、第2高圧蒸気が復水器に無駄に棄てられてしまう。
【0069】
同様に、時刻90〜130分の40分間は第2低圧蒸気が無駄に棄てられている問題について
図3で確認する。第2低圧蒸気生成工程は時刻90分に完了するが、ST起動〜IPC完了工程は時刻130分まで完了しない。そのため、この間の40分間は第2低圧バイパス弁29が無駄に開弁して、第2低圧蒸気が復水器に無駄に棄てられてしまう。
【0070】
このように、第2高圧蒸気や第2低圧蒸気が無駄に棄てられる原因は、第2ガスタービン21の起動開始時刻として時刻20分を選択したことにある。すなわち、第2ガスタービン21の起動開始が早すぎるのである。これは、第1ガスタービン11の起動時刻と第2ガスタービン21の起動時刻との時間差が短すぎるとも言い換えられる。
【0071】
図4は、第1実施形態の発電プラントの第1動作例を説明するためのグラフである。
【0072】
第1動作例では、第2ガスタービン21の起動開始時刻として時刻90分が選択されている。この90分という時刻は、第2高圧蒸気生成工程が第2ガスタービン21の起動から40分を要することに着目して選択されており、ST起動〜IPC完了工程が完了する時刻130分からこの40分を差し引いて算出されている。
【0073】
この場合、時刻130分にST起動〜IPC完了工程と第2高圧蒸気生成工程とが同時に完了する。第2高圧蒸気生成工程の完了時には、第2高圧蒸気の温度が430℃に到達し、第2高圧蒸気が蒸気タービン31に供給可能な状態に到達する。一方、ST起動〜IPC完了工程の完了時には、第2高圧アイソレーション弁25が開弁され、蒸気タービン31への第2高圧蒸気の供給が開始される。その結果、第1動作例では、第2高圧蒸気が上記状態に到達する時刻と、第2高圧蒸気のST供給が開始される時刻とが等しくなる。
【0074】
第1動作例では、第2ガスタービン21の起動開始時刻を20分から90分に遅らせたため、時刻130分まで第2高圧蒸気生成工程が完了しない。よって、時刻60〜130分の70分間に第2高圧蒸気が無駄に棄てられる問題を解消することができる。第1動作例では、時刻130分に第2高圧アイソレーション弁25が開弁し、第2高圧アドミッション工程が開始される。
【0075】
一方、第2低圧蒸気生成工程は、第2ガスタービン21の起動開始から70分を要するため、時刻160分に完了する。このとき、第2低圧アイソレーション弁28が開弁し、第2低圧アドミッション工程が開始される。第1動作例では、時刻90〜130分の40分間に第2低圧蒸気が無駄に棄てられる問題も解消することができる。
【0076】
第2ガスタービン21の出力がスピニングリザーブ負荷から定格出力に向けて上昇するのは、第2低圧アドミッション工程が完了する時刻167分であり、
図3の場合に比べて30分遅れる。よって、蒸気タービン31の出力が上昇して定格出力になるのも、
図3の場合に比べて30分遅れる。このように第2ガスタービン21や蒸気タービン31が定格出力に到達する時刻が遅くなると、発電プラントの起動完了が遅くなることになる。
【0077】
これは、第2ガスタービン21の起動開始時刻として時刻90分を選択すると、発電プラントの起動完了の遅れと引き換えに、第2高圧蒸気の経済性を向上できることを意味している。
【0078】
図5は、第1実施形態の発電プラントの第2動作例を説明するためのグラフである。
【0079】
第2動作例では、第2ガスタービン21の起動開始時刻として時刻60分が選択されている。この60分という時刻は、第2低圧蒸気生成工程が第2ガスタービン21の起動から70分を要することに着目して選択されており、ST起動〜IPC完了工程が完了する時刻130分からこの70分を差し引いて算出されている。
【0080】
この場合、時刻130分にST起動〜IPC完了工程と第2低圧蒸気生成工程が同時に完了する。第2低圧蒸気生成工程の完了時には、第2低圧バイパス弁29の開度が15%に到達し、第2低圧蒸気が蒸気タービン31に供給可能な状態に到達する。一方、ST起動〜IPC完了工程の完了時には、第2低圧アイソレーション弁28が開弁され、蒸気タービン31への第2低圧蒸気の供給が開始される。その結果、第2動作例では、第2低圧蒸気が上記状態に到達する時刻と、第2低圧蒸気のST供給が開始される時刻とが等しくなる。
【0081】
第2動作例では、第2ガスタービン21の起動開始時刻を20分から60分に遅らせたため、時刻130分まで第2低圧蒸気生成工程が完了しない。よって、時刻90〜130分の40分間に第2低圧蒸気が無駄に棄てられる問題を解消することができる。第2動作例では、時刻130分に第2低圧アイソレーション弁28が開弁し、第2低圧アドミッション工程が開始される。
【0082】
さらに、第2動作例では、第2ガスタービン21の起動開始時刻を第1動作例の90分から60分に早めたため、第2低圧アドミッション工程の開始の遅れは解消される。その結果、発電プラントの起動完了の遅れを緩和することができる。
【0083】
一方、第2高圧蒸気生成工程は時刻100分に完了するが、ST起動〜IPC完了工程は時刻130分まで完了しない。よって、時刻100〜130分の30分間は、第2高圧蒸気が復水器に無駄に棄てられてしまう。前述のように、第2高圧蒸気の発生流量は第2低圧蒸気の発生流量よりも数倍大きい流量となるため、第2高圧蒸気の無駄による経済的ロスは小さくない。しかしながら、第2高圧蒸気の無駄は、
図3の場合に比べて大いに低減されることに留意されたい。さらには、第2低圧蒸気の無駄は、より顕著に低減されることにも留意されたい。
【0084】
これは、第2ガスタービン21の起動開始時刻として時刻60分を選択すると、第2高圧蒸気のある程度の無駄の発生と引き換えに、発電プラントの高速起動性を向上できることを意味している。
【0085】
発電プラントの運用において、経済性を重視する場合には、
図4の第1動作例を採用することが望ましい。一方、高速起動性を重視する場合には、
図5の第2動作例を採用することが望ましい。
【0086】
発電プラントの運転員が経済性と高速起動性のどちらを優先するかは、ケースバイケースである。例えば、発電需要の逼迫度が大きい場面では、高速起動性を優先することが求められる。一方、発電需要の逼迫度が小さく、むしろ商用機としての経済性を追求すべき場面では、経済性を優先することが求められる。よって、発電プラントの運転員は、第1動作例と第2動作例のいずれかを都度選択することを希望すると考えられる。
【0087】
そこで、本実施形態では、発電プラントの制御機構のUI(User Interface)に、第1動作例の起動と第2動作例の起動との切り替え機能を用意する。以下、このような機能の詳細について説明する。
【0088】
図6は、第1実施形態の制御機構の構成を示すブロック図である。
【0089】
本実施形態の発電プラントは、
図1に示す構成要素に加えて、発電プラント全体を制御するプラント制御装置41と、第1ガスタービン11、第2ガスタービン21、蒸気タービン31等を制御するタービン制御装置42とを備えている。
【0090】
プラント制御装置41は、制御部51と、入力部52と、表示部53と、記憶部54とを備え、制御部51は、起動モード処理部51aと、スケジュール計算部51bと、自動化処理部51cと、対話部51dと、通信部51eとを備えている。タービン制御装置42は、第1GT−HRSG制御装置61と、第2GT−HRSG制御装置62と、ST制御装置63とを備えている。
【0091】
制御部51は、種々の情報処理を行うブロックであり、例えば、操作者の指示に応じて第1ガスタービン11、第2ガスタービン21、蒸気タービン31の起動制御を行う。本実施形態の制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、通信デバイス等により構成されており、ROMや記憶部54から読み出されたプログラムをCPUにより実行することで上記の情報処理や起動制御を行う。これにより、第1動作例や第2動作例の起動制御が実施される。
【0092】
入力部52は、操作者からの指示を受け付けるブロックであり、例えば、キーボードやマウスにより構成されている。表示部53は、操作者に提供するGUI(Graphical User Interface)を表示するブロックであり、例えば、液晶ディスプレイやスピーカにより構成されている。表示部53は、画面表示や音声出力により操作者に情報を提供することができる。記憶部54は、種々の情報を記憶するブロックであり、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やメモリインタフェースにより構成されている。本実施形態では、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体をメモリインタフェースに挿入し、記録媒体からHDD内にプログラムをインストールしてもよい。
【0093】
制御部51は、通信部51eを介してタービン制御装置42に接続されている。制御部51は、第1GT−HRSG制御装置61により第1ユニット(第1ガスタービン11、第1GT発電機12、第1排熱回収ボイラ13等)の動作を制御し、第2GT−HRSG制御装置62により第2ユニット(第2ガスタービン21、第1GT発電機22、第2排熱回収ボイラ23等)の動作を制御する。制御部51はさらに、ST制御装置63により蒸気タービン31、ST発電機32、MCV33、ICV34、低圧CV35等の動作を制御する。
【0094】
制御部51は、GUIとしてスケジュール計算設定画面71を表示し、そのための情報処理を起動モード処理部51a、スケジュール計算部51b、自動化処理部51c、および対話部51dにより実行する。対話部51dは設定画面表示部の例であり、起動モード処理部51a、スケジュール計算部51b、および自動化処理部51cは起動制御部の例である。これらのブロックの処理は、上記のプログラムにより実現される。これらのブロックの詳細については、
図7と
図8を参照して説明する。
【0095】
図7は、第1実施形態のスケジュール計算設定画面71の例を示した図である。
【0096】
スケジュール計算設定画面71は、複数の操作ボタン72と、起動コンポ選択領域73と、起動オーダ選択領域74と、目標設定入力領域75と、優先起動モード選択領域76とを有している。優先起動モード選択領域76は、第1モード選択領域の例である第1ラジオボタン76aと、第2モード選択領域の例である第2ラジオボタン76bとを有している。
【0097】
対話部51dは、第1および第2ガスタービン11、21の起動制御用のGUIとしてスケジュール計算設定画面71を表示する。操作者は、起動制御に関する種々の操作をスケジュール計算設定画面71上で行うことができ、これらの操作を対話部51dが受け付ける。以下、スケジュール計算設定画面71を単に「設定画面71」と略記する。
【0098】
起動コンポ選択領域73は、運転対象となるタービンの構成(起動コンポ)を選択するために使用される。1on1が選択された場合には、第1および第2ガスタービン11、21の一方と、蒸気タービン31とが運転対象となる。一方、2on1が選択された場合には、第1および第2ガスタービン11、21の両方と、蒸気タービン31とが運転対象となる。第1および第2動作例はいずれも、2on1が選択された場合に相当する。
【0099】
起動オーダ選択領域74は、第1ガスタービン11と第2ガスタービン21とを起動する順番(起動オーダ)を選択するために使用される。例えば、1台目として「GT(A)」が選択され、2台目として「GT(B)」が選択された場合には、まず第1ガスタービン11が起動され、次に第2ガスタービン21が起動される。一方、1台目として「GT(B)」が選択され、2台目として「GT(A)」が選択された場合には、まず第2ガスタービン21が起動され、次に第1ガスタービン11が起動される。第1および第2動作例はいずれも、後者の場合に相当する。
【0100】
以下、1台目として「GT(A)」が選択され、2台目として「GT(B)」が選択された場合の優先起動モードについて説明する。ただし、以下の説明は、文中の「第1ガスタービン11」と「第2ガスタービン21」とを入れ替えれば、1台目として「GT(B)」が選択され、2台目として「GT(A)」が選択された場合にも同様に成り立つ。
【0101】
優先起動モード選択領域76は、第1および第2ガスタービン11、21の優先起動モードを選択するために使用される。第1ラジオボタン76aをマウスでクリックすると、優先起動モードとして経済性優先モードが選択される。一方、第2ラジオボタン76bをマウスでクリックすると、優先起動モードとして高速起動モードが選択される。経済性優先モードと高速起動モードはそれぞれ、第1起動モードと第2起動モードの例である。
【0102】
経済性優先モードを選択すると、第1ガスタービン11の起動時刻と第2ガスタービン21の起動時刻との時間差の設定値として、第1設定時間が選択される。本実施形態の第1設定時間は90分であり、第2ガスタービン21が時刻90分に起動される。よって、経済性優先モードを選択すると、第1および第2ガスタービン11、21が第1動作例のように起動され、第2高圧蒸気の経済性を向上させることができる。90分という値は、第1値の例である。
【0103】
一方、高速起動モードを選択すると、第1ガスタービン11の起動時刻と第2ガスタービン21の起動時刻との時間差の設定値として、第1設定時間よりも短い第2設定時間が選択される。本実施形態の第2設定時間は60分であり、第2ガスタービン21が時刻60分に起動される。よって、高速起動モードを選択すると、第1および第2ガスタービン11、21が第2動作例のように起動され、発電プラントの高速起動性を向上させることができる。60分という値は、第2値の例である。
【0104】
このように、操作者は、優先起動モード選択領域76で経済性優先モードか高速起動モードかを選択することで、第2ガスタービン21を時刻90分に起動するか時刻60分に起動するかを選択することができる。制御部51は、後述するように、この選択に応じて第1および第2ガスタービン11、21の起動を制御する。
【0105】
対話部51dは、設定画面71上で受け付けた情報を起動モード処理部51aに通知する。具体的には、起動コンポ、起動オーダ、優先起動モード等の選択内容が起動モード処理部51aに通知される。
【0106】
起動モード処理部51aは、設定画面71上で「2on1」「経済性優先モード」が選択された場合には、第1および第2ガスタービン11、21を経済性優先モードで起動するためのスケジュール計算要求をスケジュール計算部51bに送信する。
【0107】
また、起動モード処理部51aは、設定画面71上で「2on1」「高速起動モード」が選択された場合には、第1および第2ガスタービン11、21を高速起動モードで起動するためのスケジュール計算要求をスケジュール計算部51bに送信する。
【0108】
また、起動モード処理部51aは、設定画面71上で「1on1」が選択された場合には、1台目として選択されたガスタービンを通常起動モードで起動し、残りのガスタービンを起動しないためのスケジュール計算要求をスケジュール計算部51bに送信する。
【0109】
図8は、第1実施形態のプラント制御方法を示すフローチャートであり、制御部51の動作のフローを示している。
【0110】
まず、操作者が設定画面71上で起動コンポや優先起動モードを入力すると(ステップS1)、対話部51dは、これらの入力内容を起動モード処理部51aに通知する。次に、起動モード処理部51aは、設定画面71上で「2on1」が選択された場合には(ステップS2)、設定画面71上で経済性優先モードが選択されたか高速起動モードが選択されたかを判断する(ステップS3)。
【0111】
経済性優先モードが選択された場合には、起動モード処理部51aは、第1および第2ガスタービン11、21を経済性優先モードで起動するためのスケジュール計算要求をスケジュール計算部51bに送信する(ステップS4)。
【0112】
この場合、スケジュール計算部51bは、経済性優先モードを考慮した発電プラントの起動スケジュールを計算する。その結果、第1および第2ガスタービン11、21の起動時刻がそれぞれ0分、90分に設定される。
【0113】
また、高速起動モードが選択された場合には、起動モード処理部51aは、第1および第2ガスタービン11、21を高速起動モードで起動するためのスケジュール計算要求をスケジュール計算部51bに送信する(ステップS5)。
【0114】
この場合、スケジュール計算部51bは、高速起動モードを考慮した発電プラントの起動スケジュールを計算する。その結果、第1および第2ガスタービン11、21の起動時刻がそれぞれ0分、60分に設定される。
【0115】
一方、設定画面71上で「1on1」が選択された場合には(ステップS2)、起動モード処理部51aは例えば、第1ガスタービン11を通常起動モードで起動し、第2ガスタービン21を起動しないためのスケジュール計算要求をスケジュール計算部51bに送信する(ステップS6)。
【0116】
この場合、スケジュール計算部51bは、通常起動モードを考慮した発電プラントの起動スケジュールを計算する。その結果、第1ガスタービン11の起動時刻が0分に設定され、第2ガスタービン21は起動されないこととなる。
【0117】
スケジュール計算部51bは、計算した起動スケジュールを示すスケジュールデータを記憶部54に格納する。自動化処理部51cは、記憶部54からスケジュールデータを読み込み、スケジュールデータに基づく運転制御信号を通信部51eを介してタービン制御装置42に送信する。その結果、発電プラントは、上記の起動スケジュールの通りにタービン制御装置42により起動され、第1および第2ガスタービン11、21は、設定された起動時刻に起動するように制御される。
【0118】
以上のように、本実施形態では、経済性優先モードと高速起動モードのいずれかを選択するための設定画面71を表示し、選択されたモードに応じて第1および第2ガスタービン11、21を起動する。具体的には、第1ガスタービン11の起動時刻と第2ガスタービン21の起動時刻との時間差が、選択されたモードに応じて設定される。
【0119】
よって、本実施形態では、経済性優先モードを選択することで、無駄な第2高圧蒸気および第2低圧蒸気の生成を抑制可能な時刻(90分)に第2ガスタービン21を起動させることができ、第2高圧蒸気の経済性を向上させることが可能となる。
【0120】
また、本実施形態では、高速起動モードを選択することで、無駄な第2低圧蒸気の生成を抑制しつつ発電プラントを高速で起動可能な時刻(60分)に第2ガスタービン21を起動させることができ、発電プラントの高速起動性を向上させることが可能となる。
【0121】
そして、本実施形態では、これらのモードを操作者が設定画面71上で適宜切り替えることができる。よって、本実施形態によれば、モードの選択や切り替えにより、無駄な蒸気生成の抑制と発電プラントの起動時間の短縮とを実現することが可能となる。本実施形態では、多軸型のC/C発電プラントの商用運転において、操作者が択一的な選択操作により第1および第2ガスタービン11、21の好適な起動時間差(優先起動モード)を簡単に選択することができ、希望に応じて経済性と高速起動性のいずれを優先するかを切り替えることができる。
【0122】
なお、本実施形態で経済性優先モードを選択すると、第2ガスタービン21が時刻90分に起動される。この場合、第2高圧蒸気が蒸気タービン31に供給可能な状態に到達する時刻と、第2高圧蒸気が蒸気タービン31に供給され始める時刻とが等しくなり、共に130分になる。90分という値は、第1値の例である。
【0123】
また、本実施形態で高速起動モードを選択すると、第2ガスタービン21が時刻60分に起動される。この場合、第2低圧蒸気が蒸気タービン31に供給可能な状態に到達する時刻と、第2低圧蒸気が蒸気タービン31に供給され始める時刻とが等しくなり、共に130分になる。60分という値は、第2値の例である。
【0124】
しかしながら、本実施形態の経済性優先モードでは、第2ガスタービン21は90分以外の第1時刻に起動されてもよく、本実施形態の高速起動モードでは、第2ガスタービン21は60分以外の第2時刻に起動されてもよい。例えば、第1時刻が第2時刻より遅いという条件を満たしつつ、第1時刻を90分以下に設定し、第2時刻を60分以上に設定してもよい。このような第1および第2時刻の例は、第1時刻=89分、第2時刻=61分である。この場合、第1時刻=90分、第2時刻=60分の場合とほぼ同等の効果を得ることができる。89分と61分という値はそれぞれ、第1値以下の値と第2値以上の値の例である。
【0125】
他にも、第1時刻=80分、第2時刻=70分のような例も考えられる。ただし、第1時刻での起動を経済性向上に適したものとするため、第1時刻は90分(第1値)に近い値とすることが望ましい。また、第2時刻での起動を高速起動に適したものとするため、第2時刻は60分(第2値)に近い値とすることが望ましい。よって、第1時刻は、第1値と第2値との平均値である75分以下であることが望ましく、第2時刻は、第1値と第2値との平均値である75分以上であることが望ましい。
【0126】
また、本実施形態では、2−2−1の多軸型のC/C発電プラントの起動制御について説明したが、この起動制御はその他の発電プラントにも適用可能である。例えば、この起動制御は、N−N−1の多軸型のC/C発電プラントにも適用可能である(Nは3以上の整数)。
【0127】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法、およびプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法、およびプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。