(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
間欠的に回転するターンテーブルに、ワークを設置する複数のワーク設置領域が設けられ、前記各ワーク設置領域にはワークを設置するワーク設置部材があり、前記ターンテーブルの周囲に、加熱ステーションを含む複数のステーションがあり、前記加熱ステーションには誘導加熱コイルと外部駆動装置があり、前記各ワーク設置領域は、前記ターンテーブルの回転によって公転的に移動し、加熱ステーションに至ったワーク設置部材を外部駆動装置によって回転し、ワーク設置部材に設置されたワークを回転しつつ誘導加熱コイルによってワークを誘導加熱するターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置であって、
前記各ワーク設置領域にはワーク設置部材と直接又は間接的に係合する少なくとも一つの従動ギヤを有し、
外部駆動装置はモータと駆動ギヤと前記モータと駆動ギヤとの間で回転力を伝達する回転力伝達機構を有し、前記回転力伝達機構にワンウェイクラッチが含まれ、
外部駆動装置の駆動ギヤを従動ギヤに係合させてワーク設置部材を回転させ、
前記ターンテーブルが回転することによって移動する前記従動ギヤの公転的な移動速度が、前記駆動ギヤの歯の周速と同じか、又は速いことを特徴とするターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置。
ワーク設置部材と一体に回転する動力伝達ギヤが設けられており、前記動力伝達ギヤが前記従動ギヤと係合していることを特徴とする請求項1に記載のターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置。
各ワーク設置領域には複数の前記ワーク設置部材が設けられており、各ワーク設置部材に設けられた前記動力伝達ギヤ同士が係合していることを特徴とする請求項2に記載のターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置。
【背景技術】
【0002】
高周波焼入では、ワークは高周波誘導加熱された後、急冷される。
ところが、多数のワークを高周波焼入するのは非常に煩雑であり、多大な時間がかかる。そこで、複数のワークを順に円滑に高周波焼入することができるターンテーブルを有する高周波焼入装置が創案され、この様な高周波焼入装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているターンテーブル型高周波焼入装置はターンテーブルを有しており、ターンテーブルの周縁付近の部位には、ワークを設置するワーク設置部が設けられている。
また、ターンテーブルの周囲には、取付・取外ステーション、加熱ステーション、第1,第2冷却ステーションの四つの領域が環状に設けられている。ターンテーブルが回転すると、ワーク設置部は、取付・取外ステーション、加熱ステーション、第1,第2冷却ステーションの順に移動する。
【0004】
特許文献1のターンテーブル型高周波焼入装置では、加熱ステーションで高周波誘導加熱されて焼入温度に昇温した第1ワークが第1冷却ステーションに移動して冷却される。また、第1ワークが加熱ステーションから冷却ステーションに移動するときに、第1ワークとは別の第2ワークが取付・取外ステーションから加熱ステーションに移動し高周波誘導加熱される。さらに第2ワークが取付・取外ステーションから加熱ステーションに移動したときに、第1ワーク及び第2ワークとは別の第3ワークが取付・取外ステーションでターンテーブルのワーク設置部に設置される。
すなわち、先行するワークの熱処理が完了し当該ワークを高周波焼入装置から取外してから後続のワークを高周波焼入装置に設置するのではなく、特許文献1のターンテーブル型高周波焼入装置の様に、先行するワークが高周波焼入装置から取外される前に後続のワークの熱処理を開始できるようにすることにより、多数のワークの熱処理に要する全体の時間を短縮することができる。
【0005】
ところで、加熱ステーションでは、ワーク設置部は設置されたワーク毎に回転駆動されており、回転するワークに対して高周波電流が供給されている加熱コイルが近接対向し、ワークの周面が均一に誘導加熱される。このように、加熱ステーションでは、ワーク設置部(ワーク)は回転駆動されている。
【0006】
一方、ターンテーブルのワーク設置部に対してワークを装着する取付ステーションや、熱処理されたワークをターンテーブルから取外す取外ステーションでは、ワーク設置部は回転しておらず、停止したワーク設置部にワークが設置され、また、停止した状態のワーク設置部に設置されているワークが取り外される。すなわち、ワーク設置部は、回転駆動されていなければならないときと、回転が停止されていなければならないときとがある。
【0007】
そこで特許文献1に開示されているターンテーブル型高周波焼入装置では、ワーク設置部に従動ギヤを設け、加熱ステーションには駆動ギヤを設けている。そして、ターンテーブルが回転し、加熱ステーションに公転移動してきたワーク設置部の従動ギヤが、加熱ステーションに設けられた駆動ギヤと係合する。すなわち、加熱ステーションでは、駆動ギヤの動力が従動ギヤに伝達され、ワーク設置部がワークを設置した状態で回転(自転)する。
また、取付ステーションや取外ステーションには駆動ギヤは設けられていない。すなわち、取付ステーションや取外ステーションでは、ワーク及びワーク設置部は回転しない。よって、作業者は、ワーク設置部に対してワークを安全に着脱することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示されているターンテーブル型高周波焼入装置では、以下の様な点が危惧されている。
【0010】
すなわち、駆動ギヤは、加熱ステーションに配置されていてターンテーブルの回転に追従せず、ターンテーブルの回転中心の周囲を移動(公転移動)しない。そして、ターンテーブルと一体に回転移動(公転)するワーク設置部の従動ギヤが、駆動ギヤに接近し、両ギヤの歯同士が衝突して係合する。
【0011】
駆動ギヤの歯に従動ギヤの歯が衝突すると、従動ギヤの歯は衝撃を和らげる様に衝突する向きとは逆向きに回転して逃げることができるが、駆動ギヤは衝突によって回転することはなく、従動ギヤの歯を跳ね返すだけであり、駆動軸や歯そのものに負荷が掛かる。
【0012】
また、駆動ギヤは位置が固定されており、ターンテーブルが所定角度(例えば90度)回転する毎に公転移動してくる従動ギヤと係合する。
一方、従動ギヤはターンテーブルと共に回転移動(公転)し、同一の従動ギヤは、ターンテーブルが一周(360度)回転すると、駆動ギヤと再度係合する。
すなわち、駆動ギヤの歯には、ターンテーブルが所定角度(例えば90度)回転する毎に別の従動ギヤの歯が衝突して係合するが、同一の従動ギヤの歯は、ターンテーブルが一周回転するまでは駆動ギヤの歯と衝突して係合することがない。
そのため、従動ギヤの歯よりも駆動ギヤの歯の方が頻繁に衝突を繰り返し、破損し易い。
【0013】
そこで本発明は、位置が固定された駆動ギヤと、ターンテーブルに設けられていてターンテーブルが回転すると移動する従動ギヤが係合する際の衝撃を和らげることができるターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、間欠的に回転するターンテーブルに、ワークを設置する複数のワーク設置領域が設けられ、前記各ワーク設置領域にはワークを設置するワーク設置部材があり、前記ターンテーブルの周囲に、加熱ステーションを含む複数のステーションがあり、前記加熱ステーションには誘導加熱コイルと、外部駆動装置があり、前記各ワーク設置領域は、前記ターンテーブルの回転によって公転的に移動し、加熱ステーションに至ったワーク設置部材を外部駆動装置によって回転し、ワーク設置部材に設置されたワークを回転しつつ誘導加熱コイルによってワークを誘導加熱するターンテーブルを有する高周波焼入装置であって、前記各ワーク設置領域にはワーク設置部材と直接又は間接的に係合する少なくとも一つの従動ギヤを有し、外部駆動装置はモータと駆動ギヤと前記モータと駆動ギヤとの間で回転力を伝達する回転力伝達機構を有し、前記回転力伝達機構にワンウェイクラッチが含まれ、外部駆動装置の駆動ギヤを従動ギヤに係合させてワーク設置部材を回転させ、前記ターンテーブルが回転することによって移動する前記従動ギヤの公転的な移動速度が、前記駆動ギヤの歯の周速と同じか、又は速いことを特徴とするターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置である。
【0015】
請求項1に記載の発明では、ワーク設置部材と直接又は間接的に係合する少なくとも一つの従動ギヤを有するので、従動ギヤが回転するとワーク設置部材も回転する。すなわち、ワーク設置部材に設置されたワークも回転する。
加熱ステーションにある外部駆動装置の回転力伝達機構にワンウェイクラッチが含まれているので、駆動ギヤに回転駆動方向の外力が作用すると、駆動ギヤは設定された回転駆動速度を超えた回転速度で回転することができる。すなわち、駆動ギヤは回転方向の外力が作用すると加速して回転することができる。そのため、この外力による駆動ギヤに作用する衝撃が緩和される。
また、駆動ギヤの係合相手から駆動ギヤに回転方向と逆向きの外力を受けても、ワンウェイクラッチは係合相手に対して確実に回転駆動力を伝達することができる。
従動ギヤは公転的に移動して外部駆動装置の駆動ギヤに係合し、両ギヤが係合する際には、両ギヤの歯同士が衝突する。その結果、両ギヤの歯には衝突の衝撃が生じる。
ここで、ターンテーブルが回転することによって移動する従動ギヤの公転的な移動速度が、駆動ギヤの歯の周速と同じであると、両ギヤはほとんど衝突することなく係合する。よって、両ギヤに作用する衝撃は小さい。
また、従動ギヤの移動速度が駆動ギヤの歯の周速より速いと、従動ギヤの歯が駆動ギヤの歯を駆動ギヤの回転方向に押圧するように両ギヤの歯は衝突する。すなわち、駆動ギヤの歯の回転方向の後方側の歯面に、従動ギヤの歯が追突する。
このとき、駆動ギヤ側にワンウェイクラッチが設けられていなければ、従動ギヤの歯が駆動ギヤの歯に追突しても、駆動ギヤは歯の回転方向に加速して回転することはなく、設定された回転速度を維持し、衝突した従動ギヤの歯をはね返してしまう。そのため、駆動ギヤは、衝突の衝撃を真面(まとも)に受けることとなり、大きな負荷が掛かる。
ところが、本発明では、駆動ギヤ側にワンウェイクラッチが設けられているので、駆動ギヤの歯が従動ギヤの歯と衝突して回転方向に押圧されると、ワンウェイクラッチの作用によって、駆動ギヤは瞬間的に加速して設定された回転速度を超えた速度で回転し、両ギヤの歯の衝突の衝撃を緩和することができる。
また、従動ギヤは自由回転することができるので、従動ギヤの歯が駆動ギヤの歯と衝突すると、従動ギヤは、当該従動ギヤの歯が衝突した駆動ギヤの歯から離れる向きに自転する。
そのため、両ギヤの歯同士の衝突の衝撃は、この従動ギヤの自転によっても緩和される。よって、外部駆動装置の回転力伝達機構及び駆動ギヤと従動ギヤは破損しにくく、耐久性が高い。
そしてその後、駆動ギヤは、設定された回転速度で回転して従動ギヤと係合する。
その結果、駆動ギヤ側から従動ギヤ側へ動力が伝達され、ワーク設置部材及びワークが回転する。
ここで、公転的に移動するとは、各ワーク設置領域がターンテーブルの回転中心の周囲を周回することを意味している。すなわち、公転的に移動するとは、各ワーク設置領域が、ターンテーブルの回転中心までの距離を一定に保った状態でターンテーブルの回転中心の周りを移動することである。
また、従動ギヤの公転的な移動速度とは、従動ギヤ自身が自転しない状態で従動ギヤがターンテーブルと共に回転移動するときの従動ギヤの周速を意味している。すなわち、駆動ギヤの歯と衝突する従動ギヤの歯は、ターンテーブルが回転することによってターンテーブルの中心の周りを移動する。従動ギヤの歯の移動速度は、ターンテーブルの中心から当該歯までの距離と、ターンテーブルの回転角速度の積である。
【0016】
請求項2に記載の発明は、ワーク設置部材と一体に回転する動力伝達ギヤが設けられており、前記動力伝達ギヤが前記従動ギヤと係合していることを特徴とする請求項1に記載のターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置である。
【0017】
請求項2に記載の発明では、ワーク設置部材と一体に回転する動力伝達ギヤが設けられており、動力伝達ギヤが従動ギヤと係合しているので、ワーク設置部材には駆動ギヤとの衝突の衝撃が直接作用しない。そのため、ワーク設置部材を保護することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、各ワーク設置領域には複数の前記ワーク設置部材が設けられており、各ワーク設置部材に設けられた前記動力伝達ギヤ同士が係合していることを特徴とする請求項2に記載のターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置である。
【0019】
請求項3に記載の発明では、各ワーク設置領域には複数のワーク設置部材が設けられており、各ワーク設置部材に設けられた動力伝達ギヤ同士が係合しているので、各動力伝達ギヤは互いに動力伝達する。そのため、従動ギヤは、いずれかの動力伝達ギヤに動力を伝達すれば、全ての動力伝達ギヤが同期して回転する。すなわち、従動ギヤの位置を任意に選定することができ、レイアウトの自由度が高い。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記動力伝達ギヤのいずれかが前記従動ギヤであることを特徴とする請求項3に記載のターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置である。
【0021】
請求項4に記載の発明では、動力伝達ギヤのいずれかが従動ギヤであるので、動力伝達ギヤとは別に従動ギヤを設ける必要がなく、ワーク設置領域内の構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のターンテーブルを有する高周波誘導加熱装置では、位置が固定された駆動ギヤの歯と、ターンテーブルに設けられていてターンテーブルが回転すると移動する従動ギヤの歯とが衝突して係合する際に、両ギヤに掛かる衝突の衝撃が緩和される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示す様に、高周波焼入装置1(高周波誘導加熱装置)はターンテーブル10、誘導加熱コイル50、冷却ジャケット51を有している。
【0026】
図2に示す様に、ターンテーブル10は円板状の天板10a,ターンテーブル回転軸11,ターンテーブル駆動モータ4等を有している。天板10aの中心には、鉛直に起立したターンテーブル回転軸11が一体に接続されている。すなわち、ターンテーブル回転軸11によって天板10aは水平姿勢で支持されている。
【0027】
ターンテーブル回転軸11は、ターンテーブル駆動モータ4の図示しない出力軸とベベルギヤ等を介して係合しており、ターンテーブル駆動モータ4の動力を天板10aに伝達する機能を有している。
【0028】
ターンテーブル駆動モータ4は、天板10a及びターンテーブル回転軸11を矢印A方向に所定角度(本実施形態では90度)ずつ間欠的に回転させて停止させる機能を有している。すなわち、ターンテーブル駆動モータ4は、天板10aを90度単位で回転させ、天板10aをその90度毎の回転位置で停止させることができる。
ターンテーブル駆動モータ4の動作は、
図11に示す制御装置2によって制御されている。すなわち、制御装置2の指令によってターンテーブル駆動モータ4は動作する。
【0029】
図1に示す様に、円板状の天板10aの外周縁近傍の部分には、矢印30a〜30dで示す四つのワーク設置領域が設けられている。各ワーク設置領域30a〜30dは、ワークが設置される領域である。また、各ワーク設置領域30a〜30dは、天板10aの中心角90度間隔で設けられている。天板10aが回転すると、各ワーク設置領域30a〜30dは、天板10aの回転中心の周囲を公転的に移動する。
【0030】
ここで、公転的に移動するとは、各ワーク設置領域30a〜30dがターンテーブル10の回転中心の周囲を周回することを意味している。すなわち、公転的に移動するとは、各ワーク設置領域30a〜30dが、ターンテーブル10の回転中心までの距離を一定に保った状態でターンテーブル10の回転中心の周りを移動することである。
換言すると、各ワーク設置領域30a〜30dの公転移動とは、天板10aの回転中心周りに各ワーク設置領域30a〜30dが周回することを意味している。すなわち、ワーク設置領域30a〜30dは、天板10aの外縁付近に一体的に固定されており、天板10aが回転すると、各ワーク設置領域30aは、天板10aの外縁部分と共に回転中心周りを回転移動する。
【0031】
各ワーク設置領域30a〜30dには、
図3(b)に示す様な複数(四つ)の設置孔22と一つの設置孔27が設けられている。設置孔22及び設置孔27は、天板10aを貫通する貫通孔である。各設置孔22には、各々ワーク設置部材16が装着されており、設置孔27には従動ギヤ部材17が装着されている。すなわち、各ワーク設置領域30a〜30dには、それぞれ従動ギヤ部材17と複数(四つ)のワーク設置部材16が設けられている。
【0032】
図1,
図2,
図3(a)に示す様に、四つのワーク設置部材16は、円板状の天板10aの外周縁付近に弦をなす様に一列に並んで配置されている。また、従動ギヤ部材17は、四つのワーク設置部材16の並びの端に配置されており、天板10aの外縁からの距離が、四つのワーク設置部材16よりも外側になるように配置されている。すなわち、四つの設置孔22と一つの設置孔27は、四つのワーク設置部材16と一つの従動ギヤ部材17がこの様な配列となる様に天板10aに設けられている。
【0033】
次に、ワーク設置部材16について説明する。
図3(b)に示す様に、ワーク設置部材16は、外殻部23,蓋部24,ワーク載置部18,回転軸19,動力伝達ギヤ15を有している。
【0034】
外殻部23は筒状であって天板10aの設置孔22に固定される部位である。
外殻部23の上方には小径部があり、下方には大径部がある。また、小径部と大径部の境界には段28が形成されている。小径部が設置孔22に挿通されており、段28が天板10aの下面に当接している。また、段28は、天板10aの上方から天板10aを貫通するねじ(図示せず)によってねじ止めされている。これにより、外殻部23が天板10aに固定され、外殻部23(ワーク設置部材16)は、天板10aに対して上下方向及び水平方向の移動が規制されている。
【0035】
回転軸19は、筒状の外殻部23の内部を貫通しており、外殻部23と回転軸19は、上下に配置された軸受29a,29bを介して接続されている。すなわち、回転軸19は外殻部23(天板10a)に回転可能に支持されている。また、回転軸19は、天板10aを上下に貫通している。
【0036】
天板10aの上面側には、回転軸19の周囲を覆う蓋部24が装着されている。蓋部24には回転軸19を貫通させる貫通孔24aが設けられている。すなわち、回転軸19は、蓋部24の貫通孔24aを貫通して蓋部24の上方に突出している。
蓋部24は、外殻部23(段28)と共に共通のねじ(図示せず)で天板10aに固定されている。
【0037】
回転軸19の上端には、ワーク載置部18が固定されている。ワーク載置部18は、上端が開口した器状の部位であり、ワークを載置する部位である。
【0038】
動力伝達ギヤ15は、回転軸19の下部に一体に取付けられている。すなわち、動力伝達ギヤ15は、天板10aより下方の高さ位置の回転軸19に装着されている。
【0039】
以上説明した様に、ワーク設置部材16では、回転軸19,ワーク載置部18,動力伝達ギヤ15が一体化されており、これらが一体に回転する。
【0040】
次に従動ギヤ部材17について説明する。
従動ギヤ部材17は、回転軸20,従動ギヤ21,外殻部25,蓋部26を有している。
【0041】
外殻部25は、ワーク設置部材16の外殻部23と同様の構造を有しており、天板10aの設置孔27に挿通されていて、外殻部23と同様に天板10aにねじ止めされている。
回転軸20は、筒状の外殻部25の内部を貫通しており、外殻部25に対して軸受31a,31bを介して回転可能に固定されている。
従動ギヤ21は、回転軸20における天板10aよりも下方の高さ位置に固定されている。
すなわち、従動ギヤ部材17では、回転軸20と従動ギヤ21が一体化されており、外殻部25(天板10a)に対して回転可能である。
【0042】
この様に、従動ギヤ部材17は、ワーク設置部材16と似た様な構造を有しているが、ワーク載置部18を有していない点がワーク設置部材16の構造と大きく相違している。また、ワーク載置部18を有しないことに伴い、回転軸20の長さがワーク設置部材16の回転軸19よりも若干短い。
さらに、蓋部26には、ワーク設置部材16の蓋部24の様な貫通孔24aが設けられていない。すなわち、蓋部26は、回転軸20の周囲及び上部を覆っている。
【0043】
従動ギヤ部材17の外殻部25が天板10aの設置孔27に固定されているため、従動ギヤ部材17は、天板10aに対して上下方向及び水平方向の移動が規制されている。
【0044】
図3(b)に示す様に、同一のワーク設置領域(30a〜30d)内の各ワーク設置部材16の動力伝達ギヤ15は、直線状に並んでおり、隣接する動力伝達ギヤ15同士が互いに係合している。また、従動ギヤ21は、これらの動力伝達ギヤ15とは一直線上にはないが、直線状に並んだ動力伝達ギヤ15の列の一方の端付近に配置されていて、端に配置された動力伝達ギヤ15と係合している。すなわち、各動力伝達ギヤ15は従動ギヤ21を介して動力が付与されると一斉に回転する。
【0045】
次に、天板10aの周囲に視点を移すと、天板10aの周囲には、
図1に示す様に、取付ステーション6,取付確認ステーション7,加熱・冷却ステーション8,取出ステーション9の四つの領域がこの順に環状に設けられている。よって、天板10aが回転すると、各ワーク設置領域30a〜30dが、取付ステーション6,取付確認ステーション7,加熱・冷却ステーション8,取出ステーション9の順に移動する。
【0046】
取付ステーション6は、天板10aのワーク設置部材16にワークを取り付けるための領域である。
取付確認ステーション7は、ワーク設置部材16のワーク載置部18にワークが確実に設置されているか否かを確認するための領域である。
加熱・冷却ステーション8は、ワークを高周波誘導加熱及び冷却するための領域であり、ワークを高周波焼入するための領域である。
取出ステーション9は、ワークを天板10aから取り出すための領域である。
【0047】
図1に示す様に、加熱・冷却ステーション8には、誘導加熱コイル50,冷却ジャケット51,ワーク駆動部12(外部駆動装置)が設けられている。
【0048】
誘導加熱コイル50は、図示しない高周波誘導加熱装置の一部を構成しており、本実施形態では四つの誘導加熱コイル50が設けられている。すなわち、誘導加熱コイル50は、ワーク設置領域30a〜30dの各々に設けられたワーク設置部材16の数に対応する数だけ設けられている。
各誘導加熱コイル50には高周波電源3(
図11)から高周波電流が供給され、誘導加熱コイル50がワークに近接することによって、ワーク表面に高周波の誘導電流を励起させてワークを誘導加熱することができる。誘導加熱コイル50への高周波電流の供給と供給の遮断は、
図11に示す制御装置2によって制御されている。
また、高周波焼入装置1には、誘導加熱コイル50をワーク設置部材16に設置されたワークに対して近接及び離間させる移動装置(図示せず)が設けられている。この図示しない移動装置の動作も
図11に示す制御装置2で制御されている。
【0049】
冷却ジャケット51は、四つの噴射ノズル51aを有している。各噴射ノズル51aには、図示しない冷却液供給源から冷却液が導かれている。そして、ワークに向けて冷却液を噴射供給することができる。冷却液の噴射と噴射の停止は、
図11に示す制御装置2によって制御されている。
【0050】
また、高周波焼入装置1には、冷却ジャケット51(各噴射ノズル51a)をワーク設置部材16に設置されたワークに対して近接及び離間させる移動装置(図示せず)が設けられている。この図示しない移動装置の動作も
図11に示す制御装置2で制御されている。
【0051】
ワーク駆動部12(外部駆動装置)は、
図2に示す様に、ワーク駆動モータ5,駆動ギヤ13,回転力伝達機構14を有している。
【0052】
回転力伝達機構14は、
図6に示す様に、回転軸32,33を有しており、回転軸32にはギヤ34が設けられており、回転軸33にはギヤ35が設けられている。回転軸32,33は、鉛直姿勢で固定されており、ギヤ34,35は噛み合っている。
下方側の回転軸32は、ワーク駆動モータ5の出力軸(図示せず)と連結されており、出力軸から動力が伝達されている。また、回転軸33には駆動ギヤ13が設けられている。すなわち、回転力伝達機構14(回転軸32)は、ワーク駆動モータ5の図示しない出力軸と動力伝達されており、駆動ギヤ13は駆動モータ5で駆動される。
すなわち、回転力伝達機構14は複数の回転軸が互いに動力伝達可能に係合して構成されている。
【0053】
また、回転力伝達機構14は、ワンウェイクラッチ40(
図5)を有している。ワンウェイクラッチ40は、回転軸33と駆動ギヤ13の間に設けられている。すなわち、駆動ギヤ13は外歯ギヤであり、駆動ギヤ13の内周側に回転軸33が設けられており、ワンウェイクラッチ40は、両者の間に配置されている。換言すると、ワンウェイクラッチ40は、回転力伝達機構14に含まれている。
【0054】
ワンウェイクラッチ40は、周知のカムクラッチであり、駆動ギヤ13が矢印C(
図5)で示す回転駆動方向の外力が作用して押圧されると、駆動ギヤ13は矢印C方向に加速して回転することができる。すなわち、駆動ギヤ13は、矢印C方向の外力に逆らわないように回転することができる。換言すると、駆動ギヤ13は、矢印C方向に空回りすることができる。
【0055】
なお、ワンウェイクラッチ40は、回転力伝達機構14のいずれの箇所に設けてもよい。すなわち、回転力伝達機構14は、複数のシャフト(軸部材)をカップリングして繋いで構成することもでき、そのカップリング部分にワンウェイクラッチ40を設けてもよい。また、ワンウェイクラッチ40は、回転力伝達機構14(回転軸32)におけるワーク駆動モータ5(
図2)の出力軸との接続部分に設けることもできる。なお、回転力伝達機構14は、一本の回転軸で構成してもよい。
【0056】
ワーク駆動モータ5の動作は、
図11に示す制御装置2によって制御されている。
【0057】
次に、高周波焼入装置1の大まかな動作について説明し、その後、本発明の特徴的な構成を有するワーク駆動部12(外部駆動装置)と、天板10aに設けられたワーク設置領域30a(30b〜30d)について説明する。
【0058】
高周波焼入装置1では、
図1に示す取付ステーション6において、ワーク設置領域30aの各ワーク設置部材16(ワーク載置部18)にワークが設置される。ワークが設置されると、制御装置2(
図11)によってターンテーブル駆動モータ4(
図2,
図11)が駆動され、天板10a(ターンテーブル10)が
図1に示す矢印A方向に90度回転して停止し、ワーク設置領域30aは取付確認ステーション7に移動する。
【0059】
取付確認ステーション7では、ワーク設置領域30aの各ワーク設置部材16にワークが確実に取り付けられていることが作業者又は適宜設けられたセンサによって確認される。ワーク設置部材16におけるワークの設置状態が正常であることが確認されると、ターンテーブル駆動モータ4(
図2,
図11)が駆動され、天板10aは矢印A方向に90度回転して停止し、ワーク設置領域30aは加熱・冷却ステーション8に移動する。
【0060】
このとき、ワーク設置領域30aの従動ギヤ部材17の従動ギヤ21は、ターンテーブル10(天板10a)の回転中心周りを公転的に移動する。公転的に移動するとは、従動ギヤ21がターンテーブル10の回転中心の周囲を周回することを意味している。すなわち、公転的に移動するとは、従動ギヤ21が、ターンテーブル10の回転中心までの距離を一定に保った状態でターンテーブル10の回転中心の周りを移動することである。
【0061】
また、従動ギヤ21の公転的な移動速度はV1である。
ここで、従動ギヤ21の公転的な移動速度とは、従動ギヤ21自身が自転しない状態で従動ギヤ21がターンテーブル10と共に回転移動するときの従動ギヤ21の周速を意味している。すなわち、駆動ギヤ13の歯と衝突する従動ギヤ21の歯は、ターンテーブル10が回転することによってターンテーブル10の中心の周りを移動する。従動ギヤ21の歯の公転的な移動速度V1は、ターンテーブル10の中心から当該歯までの距離と、ターンテーブル10の回転角速度の積である。
【0062】
そして、ワーク設置領域30aの従動ギヤ部材17の従動ギヤ21は、加熱・冷却ステーション8に設けられた駆動ギヤ13と係合する。よって、ワーク設置領域30aの各ワーク設置部材16a〜16dの各動力伝達ギヤ15は、駆動ギヤ13から従動ギヤ21を介して動力が伝達可能な状態となる。従動ギヤ21と駆動ギヤ13の係合の仕方については後述する。
【0063】
加熱・冷却ステーション8では、制御装置2(
図11)による制御によってワーク設置領域30aの各ワーク設置部材16に取り付けられたワークに誘導加熱コイル50が接近して近接し、高周波電源3が稼働し、誘導加熱コイル50に高周波電流が通電される。
一方、ワーク(ワーク設置部材16)は、ワーク駆動部12(外部駆動装置)によって回転駆動され、停止する誘導加熱コイル50が、ワークの全周に渡って順次近接対向し、ワークの全周に渡って高周波の誘導電流が励起され、一様に高周波誘導加熱される。
【0064】
ワークが焼入温度に達すると、制御装置2は、誘導加熱コイル50をワークから離間させ、さらに冷却ジャケット51の噴射ノズル51aをワークに接近させ、噴射ノズル51aから冷却液(焼入液)を噴射供給する。これにより、ワークが急冷されて高周波焼入が完了する。
【0065】
ワークの高周波焼入が完了すると、制御装置2は、天板10aを矢印A方向に90度回転させ、ワーク設置領域30aは取出ステーション9に移動する。その際、ワーク設置領域30aの従動ギヤ部材17の従動ギヤ21と、ワーク駆動部12の駆動ギヤ13の係合が外れ、ワーク載置部18及びワークの回転(自転)が停止する。
【0066】
取出ステーション9では、ワークがワーク設置領域30aから取り出される。
【0067】
以上では、ワーク設置領域30aに着目してその動作を説明したが、その他のワーク設置領域30b〜30dにおいても、ワーク設置領域30aとタイミングをずらして同様の動作が行われる。すなわち、ターンテーブル10が90度回転する毎に、各ステーションでは、それぞれの工程が実施される。
【0068】
具体的には、ワーク設置部材16にワークが設置されたワーク設置領域30aが、取付ステーション6から取付確認ステーション7に移動したとき、ワーク設置領域30bは取付ステーション6に移動し、ワーク設置領域30bの各ワーク設置部材16にワークが取り付けられる。
【0069】
また、取付確認ステーション7において、各ワーク設置部材16へのワークの取付状態が正常であることが確認されたワーク設置領域30aが加熱・冷却ステーション8に移動したとき、取付ステーション6において、各ワーク設置部材16にワークが設置されたワーク設置領域30bが取付確認ステーション7に移動すると共に、ワーク設置領域30cが取付ステーション6に移動する。
【0070】
さらに、加熱・冷却ステーション8において、ワークが熱処理されたワーク設置領域30aが取出ステーション9に移動したとき、ワーク設置領域30bは加熱・冷却ステーション8に移動し、ワーク設置領域30cは取付確認ステーション7に移動し、ワーク設置領域30dが取付ステーション6に移動する。
【0071】
そして、取出ステーション9でワーク設置領域30aから熱処理が完了したワークが取り出されるタイミングでは、加熱・冷却ステーション8でワーク設置領域30bのワーク設置部材16上の各ワークが高周波誘導加熱及び冷却され、取付確認ステーション7では、ワーク設置領域30cのワーク設置部材16に対するワークの取付状態が確認され、取付ステーション6では、ワーク設置領域30dにワークが取り付けられる。
【0072】
すなわち、ターンテーブル10の天板10a上では、各ワーク設置領域30a〜30d毎に各々別の動作が同時に実施されており、各ワーク設置領域30a〜30dに取付けられたワークは、タイミングをずらして順に熱処理されて、天板10aから取り出される。
【0073】
次に、ワーク駆動部12(外部駆動装置)と、天板10aに設けられたワーク設置領域30a(30b〜30d)について説明する。
【0074】
図1,
図2に示す様に、加熱・冷却ステーション8には、ワーク駆動部12(外部駆動装置)が設置されている。ワーク駆動部12の駆動ギヤ13は、加熱・冷却ステーション8における固定位置でワーク駆動モータ5によって回転駆動されている。
【0075】
上述の様にターンテーブル10(天板10a)が回転すると、各ワーク設置領域30a〜30dの従動ギヤ部材17の従動ギヤ21が公転移動する。すなわち、各領域の従動ギヤ21は天板10aの回転中心(
図2に示すターンテーブル回転軸11の軸芯)の周囲を周回移動する。
そして、ワーク設置領域30aが加熱・冷却ステーション8に移動する際には、ワーク設置領域30aの従動ギヤ部材17の従動ギヤ21が固定位置で回転駆動されている駆動ギヤ13に接近して係合する。
【0076】
図7(a)に示す様に、駆動ギヤ13は定位置で矢印C方向に回転しており、駆動ギヤ13の各歯の周速は速度V2である。すなわち、駆動ギヤ13の各歯の歯先の円周方向の移動速度はV2である。
【0077】
一方、従動ギヤ21は公転軌道R上を速度V1で公転移動する。すなわち、従動ギヤ21の歯は、速度V1でターンテーブル10(天板10a)の回転中心の周囲を移動している。ここで公転軌道Rは、天板10aが回転した際における天板10aの回転中心(
図2に示すターンテーブル回転軸11の軸芯)周りの従動ギヤ部材17(従動ギヤ21)の移動軌跡である。
【0078】
従動ギヤ21における駆動ギヤ13の歯と係合する歯の公転軌道の半径は、従動ギヤ21の半径分だけ公転軌道Rの半径よりも大きくなり、従動ギヤ21の中心の公転移動速度に対し、駆動ギヤ13の歯と係合する歯の公転移動速度V1は若干速くなる。ここでは便宜上、従動ギヤ21の歯が公転軌道R上を速度V1で移動するものとしている。
また、各速度の大小関係は、V1>V2である。
【0079】
図7(b)に示す様に、従動ギヤ21が駆動ギヤ13に接近し、さらに
図7(c)に示す様に両ギヤは係合する。
図7(b)の状態から
図7(c)の状態に至るときには、両ギヤは次の様に動作する。
【0080】
公転移動速度V1が駆動ギヤ13の歯の周速V2よりも速い(V1>V2)ため、
図8に示す様に、従動ギヤ21の歯41の移動方向前方側の歯面41aが、駆動ギヤ13の歯42の回転方向後方側の歯面42aに衝突し、駆動ギヤ13の歯42が押圧力Fで押圧される。
【0081】
すなわち、駆動ギヤ13は、矢印Cで示す回転方向に押圧力Fで押圧される。駆動ギヤ13の歯42は、ワンウェイクラッチ40の作用によって駆動ギヤ13の矢印C方向(回転方向)に加速して本来の周速V2を超えた速さで回転移動する。すなわち、駆動ギヤ13は、衝突の衝撃を緩和する様に空回りする。また、従動ギヤ21の歯41は、駆動ギヤ13の衝突した歯42から離れる方向(後方)に移動する。
その結果、
図9に示す様に、駆動ギヤ13の次の歯43(歯42の回転方向後方側の歯)の回転方向前方側の歯面43aと、従動ギヤ21の歯41の移動方向後方側の歯面41bとが衝突して係合する。
【0082】
従動ギヤ21の歯41の歯面41bは、駆動ギヤ13の歯43の歯面43aを、駆動ギヤ13の回転方向とは逆方向に押圧するが、ワンウェイクラッチ40(
図5)の作用によって駆動ギヤ13は、歯43の周速V2を維持した状態で回転を継続する。そして、
図10に示す様に両ギヤが係合し、従動ギヤ21が周速V2で回転駆動される。すなわち、従動ギヤ21の歯41の移動方向後方側の歯面41bが、駆動ギヤ13の歯43の回転移動方向の前方側の歯面43aに押圧され、従動ギヤ21は周速V2で回転駆動される。ここで、駆動ギヤ13と従動ギヤ21の基準ピッチ円直径は同じである。
ちなみに、従動ギヤ21の公転移動は、ワーク設置領域30aが加熱・冷却ステーション8への移動が完了した
図8に示す状態となった時点で停止する。すなわち、このとき従動ギヤ21の公転移動速度V1がゼロとなる。
【0083】
この様に、両ギヤが係合する際には、駆動ギヤ13,従動ギヤ21の双方が互いに衝突の衝撃を緩和する方向に動き、両ギヤの衝突の衝撃は緩和される。
【0084】
駆動ギヤ13と従動ギヤ21とが係合したことにより、従動ギヤ21を介して駆動ギヤ13と各ワーク設置部材16の動力伝達ギヤ15とが動力伝達可能となる。よって、各ワーク設置部材16に取り付けられたワークは回転する。
【0085】
次に、ワーク設置領域30aの各ワーク設置部材16に取り付けられた各ワークの熱処理が完了すると、制御装置2(
図11)は、ターンテーブル駆動モータ4を駆動し、天板10aを90度回転させる。その結果、ワーク設置領域30aは、取出ステーション9に移動する。
【0086】
その際、従動ギヤ21は、公転移動速度V1(>V2)で移動するので、両ギヤの歯同士の位置関係は、
図9に示す様な、従動ギヤ21の歯41の後方側の歯面41bが駆動ギヤ13の歯43の回転方向前方側の歯面43aに押圧されている状態から、
図8に示す様な、従動ギヤ21の歯41の前方側の歯面41aが駆動ギヤ13の歯42の後方側の歯面42aに当接(衝突)した状態になる。
【0087】
そして、駆動ギヤ13が衝突の衝撃によって回転駆動方向に一瞬加速して元の回転速度(周速V2)に戻り、従動ギヤ21は、速度V1で移動(公転移動)し、従動ギヤ21の歯41は、
図8に示す様に、駆動ギヤ13の歯42の後方側の歯面42aに当接した状態を保ちながら速度V1で移動する。その際、従動ギヤ21は、
図8で見て反時計回りに回転する。すなわち、両ギヤが係合している間は、従動ギヤ21の歯41は駆動ギヤ13の歯42を越えて移動することができないため、従動ギヤ21は、公転軌道R上を速度V1(V1>V2)で公転移動しながら、駆動ギヤ13による回転駆動方向とは逆方向に回転する。
【0088】
そして、両ギヤが離間して係合が外れると、従動ギヤ21は速度V1で公転移動を続け、従動ギヤ21の回転(自転)は停止し、駆動ギヤ13はそのまま速度V2で回転し続ける。
【0089】
すなわち、従動ギヤ21の歯41の歯面41aが歯42の歯面42aに衝突した際には、駆動ギヤ13はワンウェイクラッチ40の作用によって回転駆動方向に加速して回転する。
その後、ワークの熱処理が完了し、ターンテーブル10が回転を開始すると、従動ギヤ21が公転移動を開始し、公転移動開始当初は両ギヤの歯面41a,42aの接触状態が保たれ、従動ギヤ21の公転移動がある程度進むと両ギヤの係合が外れる。このときにおいても、両ギヤの衝突の衝撃は小さく、両ギヤの耐久性は高い。
【0090】
さらに、駆動ギヤ13には、ワーク設置領域30bの従動ギヤ21が、上述の手順の様にして係合する。
【0091】
ここで、従動ギヤ21の公転移動速度V1と駆動ギヤ13の歯の周速V2が、V1=V2であると、駆動ギヤ13と従動ギヤ21はV1>V2の場合よりも衝突の衝撃は小さく、両ギヤの耐久性はさらに向上する。
【0092】
図3(a),
図3(b)に示す例では、従動ギヤ部材17(従動ギヤ21)は、ワーク設置部材16(動力伝達ギヤ15)の並びの端に配置されているが、従動ギヤ部材17(従動ギヤ21)の位置は任意に選定することができる。例えば、従動ギヤ部材17(従動ギヤ21)の両側にワーク設置部材16(動力伝達ギヤ15)を配置してもよい。
【0093】
本実施形態では、天板10a(ターンテーブル10)に従動ギヤ部材17(従動ギヤ21)を設け、従動ギヤ21を駆動ギヤ13に衝突させて係合させた場合について説明した。この場合には、ワーク設置部材16に衝突の衝撃が作用せず、ワーク設置部材16を保護することができる。
【0094】
一方、従動ギヤ部材17(従動ギヤ21)を設けず、いずれかのワーク設置部材16に設けた動力伝達ギヤ15を駆動ギヤ13に衝突させて係合させることもできる。この場合には、駆動ギヤ13と係合する動力伝達ギヤ15が、従動ギヤ部材17の従動ギヤ21の機能を果たす。この様にすると、従動ギヤ部材17を省略できる分だけ高周波焼入装置1の構造を簡素化することができる。
【0095】
また、本実施形態では、ワーク設置部材16を各ワーク設置領域30a〜30d毎に四つ設けた場合について説明したが、ワーク設置部材16は、各ワーク設置領域30a〜30d毎に一つ乃至三つずつ設けることもできる。また、レイアウトの制約がなければ、各ワーク設置領域30a〜30d毎に五以上のワーク設置部材16を設けてもよい。