(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0024】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
本実施形態に係る微粒子検出システムの構成について説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る微粒子検出システム10の全体構成を説明するための説明図である。
図1(a)は、微粒子検出システム10を搭載した車両500の概略構成を例示した説明図である。
図1(b)は、車両500に取り付けられた微粒子検出システム10の概略構成を例示した説明図である。
【0026】
微粒子検出システム10は、微粒子センサ100と、ケーブル200と、センサ駆動部300とを含んで構成され、内燃機関400から排出される排ガスに含まれる煤などの微粒子の量を測定する。内燃機関400とは、車両500の動力源であり、ディーゼルエンジン等によって構成されている。
【0027】
微粒子センサ100は、内燃機関400から延びる排ガス配管402に取り付けられるとともに、ケーブル200によってセンサ駆動部300と電気的に接続されている。本実施形態では、微粒子センサ100は、排ガス配管402のうちフィルタ装置410(例えば、DPF(Diesel particulate filter ))よりも下流側部分に取り付けられている。微粒子センサ100は、排ガスに含まれる微粒子の量に相関する信号をセンサ駆動部300に出力する。
【0028】
センサ駆動部300は、微粒子センサ100を駆動させるとともに、微粒子センサ100から入力される信号に基づいて、排ガス中の微粒子の量を検出(測定)する。センサ駆動部300が検出する「排ガス中の微粒子の量」とは、排ガス中の微粒子の表面積の合計に比例する値であってもよいし、微粒子の質量の合計に比例する値であってもよい。または、排ガスの単位体積中に含まれる微粒子の個数に比例する値であってもよい。センサ駆動部300は、車両500側の車両制御部420と電気的に接続されており、検出した排ガス中の微粒子量を示す信号を車両制御部420に出力する。
【0029】
車両制御部420は、センサ駆動部300から入力される信号に応じて、内燃機関400の燃焼状態や、燃料配管405を介して燃料供給部430から内燃機関400に供給される燃料の供給量などを制御する。車両制御部420は、例えば、排ガス中の微粒子量が所定量よりも多い場合には、フィルタ装置410の劣化や異常を車両500の運転手に警告するように構成されていてもよい。センサ駆動部300と車両制御部420は、それぞれ電源部440に電気的に接続されており、電源部440から電力が供給される。
【0030】
図1(b)に示すように、微粒子センサ100は、円筒形状の先端部100eを備えており、この先端部100eが排ガス配管402の内側に挿入された状態で、排ガス配管402の外表面に固定されている。ここでは、微粒子センサ100の先端部100eは、排ガス配管402の延伸方向DLに対してほぼ垂直に挿入されている。先端部100eのケーシングCSの表面には、排ガスをケーシングCSの内部に取り込むための流入孔45と、取り込んだ排ガスをケーシングCSの外部に排出するための排出孔35と、が設けられている。排ガス配管402の内部を流通する排ガスの一部は、流入孔45を介して先端部100eのケーシングCSの内部に取り込まれる。取り込まれた排ガス中に含まれる微粒子は、微粒子センサ100が生成するイオン(ここでは、陽イオン)によって帯電する。帯電した微粒子を含む排ガスは、排出孔35を介してケーシングCSの外部に排出される。ケーシングCSの内部の構成や、微粒子センサ100の具体的な構成については後述する。
【0031】
微粒子センサ100の後端部100rには、ケーブル200が取り付けられている。ケーブル200は、第1配線221と、第2配線222と、信号線223と、空気供給管224と、を束ねた構成を備えている。ケーブル200を構成する配線221〜223と、空気供給管224は、それぞれ可撓性の部材によって構成されている。第1配線221、第2配線222、および、信号線223は、センサ駆動部300の電気回路部700に電気的に接続され、空気供給管224は、センサ駆動部300の空気供給部800に接続されている。
【0032】
センサ駆動部300は、センサ制御部600と、電気回路部700と、空気供給部800と、を備えている。センサ制御部600と電気回路部700との間、および、センサ制御部600と空気供給部800との間はそれぞれ電気的に接続されている。
【0033】
センサ制御部600は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、電気回路部700と、空気供給部800と、を制御する。また、センサ制御部600は、電気回路部700から入力される信号から排ガス中の微粒子の量を検出(測定)し、排ガス中の微粒子量を表す信号を車両制御部420に出力する。
【0034】
電気回路部700は、第1配線221および第2配線222を介して、微粒子センサ100を駆動するための電力を供給する。また、電気回路部700は、信号線223を介して微粒子センサ100から排ガスに含まれる微粒子の量に相関する信号が入力される。電気回路部700は、信号線223から入力される信号を用いて、排ガス中の微粒子量に応じた信号をセンサ制御部600に出力する。これらの信号の具体的な内容については後述する。
【0035】
空気供給部800は、ポンプ(図示しない)を含んで構成されており、センサ制御部600からの指示に基づいて、空気供給管224を介して、高圧空気を微粒子センサ100に供給する。空気供給部800から供給される高圧空気は、微粒子センサ100の駆動に用いられる。なお、空気供給部800が供給するガスの種類は空気以外であってもよい。
【0036】
[1−2.微粒子センサ]
図2は、微粒子センサ100の先端部100eの概略構成を模式的に示した説明図である。
【0037】
微粒子センサ100の先端部100eは、イオン発生部110と、排ガス帯電部120と、イオン捕捉部130と、を備えている。ケーシングCSは、イオン発生部110、排ガス帯電部120、および、イオン捕捉部130の3つの機構部が、この順に先端部100eの基端側(
図2の上方)から先端側(
図2の下方)に向かって(微粒子センサ100の軸線方向に沿って)並んだ構成を有している。ケーシングCSは、導電性部材によって形成され、信号線223(
図1)を介して二次側グランドSGL(
図3)に接続されている。
【0038】
イオン発生部110は、排ガス帯電部120に供給するイオン(ここでは陽イオン)を発生するための機構部であり、イオン発生室111と、第1電極112と、を含んで構成されている。イオン発生室111は、ケーシングCSの内側に形成された小空間であり、内周面には空気供給孔55とノズル41とが設けられ、内部には第1電極112が突出した状態で取り付けられている。空気供給孔55は、空気供給管224(
図1)と連通しており、空気供給部800(
図1)から供給される高圧空気をイオン発生室111に供給する。ノズル41は、イオン発生部110と排ガス帯電部120との間を区画する隔壁42の中心部付近に設けられた微小孔(オリフィス)であり、イオン発生室111で発生したイオンを排ガス帯電部120の帯電室121に供給する。第1電極112は、棒状の外形を備え、先端部が隔壁42と近接するようにして基端部がセラミックパイプ25を介してケーシングCSに固定されている。第1電極112は、第1配線221(
図1)を介して電気回路部700(
図1)に接続されている。
【0039】
イオン発生部110は、電気回路部700から供給される電力により、第1電極112を陽極とし、隔壁42を陰極として、電圧(例えば、2〜3kV)が印加されるよう構成されている。イオン発生部110は、この電圧の印加によって、第1電極112の先端部と、隔壁42との間にコロナ放電を生じさせることによって、陽イオンPIを発生する。イオン発生部110において発生した陽イオンPIは、空気供給部800(
図1)から供給される高圧空気とともに、ノズル41を介して排ガス帯電部120の帯電室121に噴射される。ノズル41から噴射される空気の噴射速度は音速程度としてもよい。
【0040】
排ガス帯電部120は、排ガスに含まれる微粒子を陽イオンPIによって帯電させるための部位であり、帯電室121を備えている。帯電室121は、イオン発生室111と隣接する小空間であり、ノズル41を介してイオン発生室111と連通している。また、帯電室121は、流入孔45を介して、ケーシングCSの外部と連通し、ガス流路31を介してイオン捕捉部130の捕捉室131と連通している。帯電室121は、ノズル41から陽イオンPIを含む空気が噴射されたときに内部が負圧になり、流入孔45を介してケーシングCSの外部の排ガスが流入するように構成されている。そのため、ノズル41から噴射された陽イオンPIを含む空気と、流入孔45から流入した排ガスとは、帯電室121の内部において混合される。このとき、流入孔45から流入した排ガスに含まれる煤S(微粒子)の少なくとも一部には、ノズル41から供給される陽イオンPIが帯電される。帯電した煤Sと帯電に供されなかった陽イオンPIとを含む空気は、ガス流路31を介してイオン捕捉部130の捕捉室131に供給される。
【0041】
イオン捕捉部130は、煤S(微粒子)の帯電に使用されなかったイオンを捕捉するための部位であり、捕捉室131と、第2電極132と、を含んで構成されている。捕捉室131は、帯電室121と隣接する小空間であり、ガス流路31を介して帯電室121と連通している。また、捕捉室131は、排出孔35を介して、ケーシングCSの外部と連通している。第2電極132は、略棒状の外形を備え、長手方向がガス流路31を流通する空気の流通方向(ケーシングCSの延伸方向)に沿うようにしてケーシングCSに固定されている。第2電極132は、第2配線222(
図1)を介して電気回路部700(
図1)に接続されている。第2電極132は、ケーシングCSとは電気的に絶縁されている。
【0042】
第2電極132は、100V程度の電圧が印加されており、煤Sの帯電に供されなかった陽イオンの捕捉を補助する補助電極として機能する。具体的には、イオン捕捉部130は、電気回路部700から供給される電力によって、第2電極132を陽極とし、帯電室121及び捕捉室131を構成するケーシングCSを陰極とした電圧が印加されている。これにより、煤Sの帯電に用いられなかった陽イオンPIは、第2電極132から斥力を受けて、その移動方向が第2電極132から離れる方向へと反らされる。移動方向が反らされた陽イオンPIは、陰極として機能する捕捉室131やガス流路31の内周壁に捕捉される。一方、陽イオンPIが帯電された煤Sは、陽イオンPIの単体と同様に第2電極132から斥力を受けるが、質量が陽イオンPIと比較して大きいため、斥力によってその進行方向に与えられる影響が、単体の陽イオンPIに比較して小さい。そのため、帯電した煤Sは、排ガスの流れに従って、排出孔35からケーシングCSの外部へと排出される。
【0043】
微粒子センサ100は、イオン捕捉部130における陽イオンPIの捕捉量に応じた電流の変化を示す信号を出力する。センサ制御部600(
図1)は、微粒子センサ100から出力された信号に基づいて、排ガス中に含まれる煤Sの量を検出する。
【0044】
[1−3.電気回路部]
図3は、電気回路部700の概略構成を例示した説明図である。
電気回路部700は、電源回路710と、絶縁トランス720と、コロナ電流測定回路730と、イオン電流測定回路740と、第1整流回路751と、第2整流回路752と、を備えている。
【0045】
電源回路710は、第1電源回路710aと、第2電源回路710bと、を備える。絶縁トランス720は、第1絶縁トランス720aと、第2絶縁トランス720bと、を備える。
【0046】
第1電源回路710aは、電源部440から供給される電力を昇圧して第1絶縁トランス720aに供給するとともに、第1絶縁トランス720aを駆動させる。第1電源回路710aは、第1放電電圧制御回路711aと、第1トランス駆動回路712aと、を備えている。第1放電電圧制御回路711aは、センサ制御部600の制御によって、第1絶縁トランス720aに供給される電力の電圧値を任意に変更可能に構成されている。ここでは、センサ制御部600は、第1配線221を介して微粒子センサ100の第1電極112に供給される入力電流Iinの電流値が予め設定された目標電流値Ita(例えば、5μA)となるように第1絶縁トランス720aに供給される電力の電圧値を制御する。これにより、イオン発生部110において、コロナ放電によって発生する陽イオンPIの発生量を一定にすることができる。
【0047】
第1トランス駆動回路712aは、第1絶縁トランス720aの一次側のコイル(一次巻線)に流れる電流の方向を切り換え可能なスイッチを含んで構成されており、このスイッチの切り換えによって第1絶縁トランス720aを駆動させる。本実施形態では、第1絶縁トランス720aの回路方式は、プッシュプルとして構成されているが、第1絶縁トランス720aの回路方式は、これに限定されず、例えば、ハーフブリッジやフルブリッジなどであってもよい。
【0048】
第1絶縁トランス720aは、第1電源回路710aから供給される電力に対して電圧変換をおこない、変換後の電力を二次側の第1整流回路751に供給する。本実施形態の第1絶縁トランス720aは、一次側のコイル(一次巻線)と二次側のコイル(二次巻線)とが物理的に接触しておらず、磁気によって結合するように構成されている。第1絶縁トランス720aの一次側の回路としては、第1電源回路710aのほか、センサ制御部600や電源部440が含まれる。第1絶縁トランス720aの二次側の回路としては、微粒子センサ100や第1整流回路751が含まれる。
【0049】
第2電源回路710bは、電源部440から供給される電力を昇圧して第2絶縁トランス720bに供給するとともに、第2絶縁トランス720bを駆動させる。第2電源回路710bは、第2放電電圧制御回路711bと、第2トランス駆動回路712bと、を備えている。第2放電電圧制御回路711bは、センサ制御部600の制御によって、第2絶縁トランス720bに供給される電力の電圧値を任意に変更可能に構成されている。ここでは、センサ制御部600は、第2配線222を介して微粒子センサ100の第2電極132に印加される電圧が予め定められた目標電圧値(例えば、100V)となるように、第2絶縁トランス720bに供給される電力の電圧値を制御する。
【0050】
第2トランス駆動回路712bは、第2絶縁トランス720bの一次側のコイルに流れる電流の方向を切り換え可能なスイッチを含んで構成されており、このスイッチの切り換えによって第2絶縁トランス720bを駆動させる。本実施形態では、第2絶縁トランス720bの回路方式は、プッシュプルとして構成されているが、第2絶縁トランス720bの回路方式は、これに限定されず、例えば、ハーフブリッジやフルブリッジなどであってもよい。
【0051】
第2絶縁トランス720bは、第2電源回路710bから供給される電力に対して電圧変換をおこない、変換後の電力を二次側の第2整流回路752に供給する。本実施形態の第2絶縁トランス720bは、一次側のコイルと二次側のコイルとが物理的に接触しておらず、磁気によって結合するように構成されている。第2絶縁トランス720bの一次側の回路としては、第2電源回路710bのほか、センサ制御部600や電源部440が含まれる。第2絶縁トランス720bの二次側の回路としては、微粒子センサ100や第2整流回路752が含まれる。
【0052】
コロナ電流測定回路730、イオン電流測定回路740は、絶縁トランス720(第1絶縁トランス720a,第2絶縁トランス720b)の一次側の回路と二次側の回路との間に跨がる回路であり、両方の回路にそれぞれ電気的に接続されている。
【0053】
コロナ電流測定回路730は、絶縁トランス720(第1絶縁トランス720a,第2絶縁トランス720b)の一次側の回路に電気的に接続される回路部分と、二次側の回路に電気的に接続されている回路部分との間が物理的に絶縁されている。ここでは、一次側の回路の基準電位を示すグランド(接地配線)を「一次側グランドPGL」とも呼び、二次側の回路の基準電位を示すグランドを「二次側グランドSGL」とも呼ぶ。
【0054】
コロナ電流測定回路730は、入力側部分(二次側の回路に接続される部分)と出力側部分(一次側の回路に接続される部分)との間が電気的に絶縁されたいわゆる光結合式のアイソレーションアンプとして構成されている。つまり、コロナ電流測定回路730の入力側部分は、信号線223(
図3)を流れる電流の電流値を示すアナログの電圧信号を増幅し、そのアナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタルの電圧信号を光信号に変換する。この入力部分は、LEDを有する発光部を備えており、この発光部からコロナ電流測定回路730の出力側部分に対して、信号線223を流れる電流の電流値に応じて変化する光信号を出力する。コロナ電流測定回路730の出力側部分は、フォトダイオードを有する受光部を備えており、この受光部は、コロナ電流測定回路730の入力側部分の発光部から出力される光信号を電流信号に変換する。コロナ電流測定回路730は、出力側部分の発光部と入力側部分の受光部との間が、電気的、物理的に絶縁されており、光によって信号伝達されるように構成されている。コロナ電流測定回路730の出力側部分は、受光部から出力された電流信号を電流−電圧変換回路を用いて電圧信号に変換し、この電圧信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し、アナログの電圧信号をセンサ制御部600に対して出力する。コロナ電流測定回路730は、上述の構成を備えることによって、一次側と二次側との間の絶縁を保ちつつ、二次側の信号線223から入力された信号を一次側のセンサ制御部600に出力することができる。
【0055】
絶縁トランス720(第1絶縁トランス720a,第2絶縁トランス720b)は、一次側のコイルの端部が一次側グランドPGLに接続され、二次側のコイルの端部が二次側グランドSGLに接続されている。信号線223は、一方の端部がケーシングCSに接続され、他方の端部が二次側グランドSGLに接続されている。
【0056】
第1整流回路751は、ショート保護用抵抗753を介して第1電極112に接続されており、変換した電力を第1配線221を介して第1電極112に供給する。すなわち、第1整流回路751から供給される電圧は、ほぼ第1電極112における放電電圧となり、第1整流回路751から供給される電流は、第1電極112に入力される入力電流Iinとなる。第2整流回路752は、ショート保護用抵抗754を介して第2電極132に接続されており、変換した電圧を第2配線222を介して第2電極132に印加する。
【0057】
イオン電流測定回路740は、イオン捕捉部130において捕捉されずに流出した陽イオンPIに相当する電流(Iesc)の電流値を検出するとともに、流出した陽イオンPIに相当する電流(補償電流Ic)を二次側の回路に供給する。イオン電流測定回路740は、配線771を介して二次側の信号線223(詳細には、信号線223のうちケーシングCSとシャント抵抗230との間)に接続されるとともに、配線772および配線773を介して一次側のセンサ制御部600に接続される。また、イオン電流測定回路740は、配線775を介して一次側グランドPGLに接続されている。イオン電流測定回路740は、配線772を介して、イオン捕捉部130において捕捉されずに流出した陽イオンPIの量に相当する電流(Iesc)の電流値を示す信号SWescをセンサ制御部600に出力する。また、イオン電流測定回路740は、配線773を介して、信号SWescを増幅させた高感度信号としての信号SSescをセンサ制御部600に出力する。
【0058】
コロナ電流測定回路730は、配線761、762を介して信号線223に接続され、配線763を介してセンサ制御部600に接続されている。配線761と配線762は、信号線223に設けられたシャント抵抗230を間に挟んでそれぞれ信号線223に接続されている。コロナ電流測定回路730は、信号線223をケーシングCSから二次側グランドSGLに向けて流れる二次側電流(Idc+Itrp+Ic)の電流値を示す信号Sdc+trp+cをセンサ制御部600に出力する。ここで「電流値を示す信号」とは、電流値を直接的に示す信号に限定されず、電流値を間接的に示す信号も該当する。例えば、信号から得られる情報に演算式やマップを適用することによって電流値を特定できる信号も「電流値を示す信号」に含まれる。なお、イオン電流測定回路740から供給(補充)される補償電流Icは、ケーシングCSから流出した陽イオンPIに相当する電流に相当するため、この補償電流Icを加えた形でケーシングCSから二次側グランドSGLに流れる二次側電流の電流値、即ちシャント抵抗230に流れる二次側電流(Idc+Itrp+Ic)の電流値は、入力電流Iinの電流値と等しくなる。
【0059】
センサ制御部600は、コロナ電流測定回路730から入力される信号Sdc+trp+cを用いて、入力電流Iinの電流値が目標電流値Itaとなるように、第1放電電圧制御回路711aを制御する。すなわち、コロナ電流測定回路730とセンサ制御部600は、コロナ電流(=入力電流Iin)の電流値を一定にするための定電流回路を構成する。コロナ電流の電流値は、イオン発生部110における陽イオンPIの発生量と相関するため、この定電流回路によってイオン発生部110における陽イオンPIの発生量が一定に保たれる。
【0060】
イオン捕捉部130で捕捉されずに流出した陽イオンPIに相当する電流の電流値を、イオン電流測定回路740で検出する方法について説明する。
ここでは、第1配線221から第1電極112に供給される電流を「入力電流Iin」と呼ぶほか、コロナ放電により、第1電極112から隔壁42を介してケーシングCSに流れる電流を「放電電流Idc」と呼び、コロナ放電により発生した陽イオンPIのうち、煤Sの帯電に用いられ、ケーシングCSの外部へと漏洩する陽イオンPIの電荷に相当する電流を「信号電流Iesc」と呼び、ケーシングCSに捕捉された陽イオンPIの電荷に相当する電流を「捕捉電流Itrp」と呼ぶ。これらの4つの電流は、下記の[数1]に示す式(1)の関係が成り立つ。
【0061】
[数1]
Iin = Idc + Itrp + Iesc ・・・ (1)
ここで、信号電流Iescは、イオン電流測定回路740が出力する、流出した陽イオンPIに相当する電流(補償電流Ic)に相当する電流値を示す信号である。そこで、イオン電流測定回路740が、この補償電流Icを検出することで、イオン捕捉部130において捕捉されずに流出した陽イオンPIに相当する電流(Iesc)の電流値を検出することができる。なお、補償電流Icは、一次側グランドPGLと二次側グランドSGLとの差分値を示す信号でもある。
【0062】
[1−4.回路筐体]
次に、電気回路部700およびセンサ制御部600を収容する回路筐体900について説明する。
【0063】
図4は、回路筐体900の電磁気遮蔽構造を模式的に示した構成図である。
回路筐体900は、外部ケース921と、内部ケース923と、を備えている。外部ケース921および内部ケース923は、それぞれ、電磁気ノイズを遮断する金属材料(例えば、アルミ、銅、鉄など)で構成された容器である。外部ケース921は、一次側グランドPGLに接続されている。内部ケース923は、二次側グランドSGLに接続されている。
【0064】
外部ケース921は、制御用基板911と、内部ケース923と、を内部に収容する。
制御用基板911は、センサ制御部600と、第1トランス駆動回路712aと、第2トランス駆動回路712bと、コロナ電流測定回路730と、を備える回路基板である。制御用基板911は、第1絶縁部材924により外部ケース921から電気的に絶縁されている。
【0065】
第1絶縁部材924は、PPS、PBTなどの樹脂材料で形成されている。第1絶縁部材924は、電源接続部924aを備えている。電源接続部924aは、電源部440と接続するためのコネクタである。電源接続部924aは、ケーブル933を介して制御用基板911と電気的に接続された金属端子(図示省略)が配置されている。
【0066】
内部ケース923は、第2絶縁部材925により外部ケース921から電気的に絶縁されている。第2絶縁部材925は、PPS、PBTなどの樹脂材料で形成されている。
内部ケース923は、高圧発生用基板913と、絶縁トランス720と、を内部に収容する。
【0067】
高圧発生用基板913は、第1放電電圧制御回路711aと、第2放電電圧制御回路711bと、イオン電流測定回路740と、第1整流回路751と、第2整流回路752とショート保護用抵抗753と、ショート保護用抵抗754と、シャント抵抗230と、を備える回路基板である。高圧発生用基板913は、第1配線221、第2配線222、信号線223を介して微粒子センサ100と接続されている。高圧発生用基板913は、第3絶縁部材926により内部ケース923から電気的に絶縁されている。第3絶縁部材926は、PPS、PBTなどの樹脂材料で形成されている。
【0068】
回路筐体900には、制御用基板911と高圧発生用基板913とを接続する二重シールド配線931が収容されている。二重シールド配線931は、制御用基板911と高圧発生用基板913との間で各種信号や電流などを通電するための信号線と、信号線を覆い電磁気ノイズから遮蔽するシールド線と、を備えている。シールド線は、信号線を覆う内部シールド線と、内部シールド線を覆う外部シールド線と、を備えている。内部シールド線および外部シールド線は、いずれか一方が一次側グランドPGLに接続され、他方が二次側グランドSGLに接続される。
【0069】
次に、回路筐体900の製造工程について説明する。
図5は、回路筐体900の製造工程における各段階の状態を示した説明図である。
まず、第1段階では、内部ケース923の一部である内部本体部材923aと、第1絶縁部材924と、を一体に固定する作業を実施する。
【0070】
このとき、内部本体部材923aと第1絶縁部材924との間には、第2絶縁部材925の一部である絶縁間隙部材925aが配置されている。内部本体部材923aの内部には、第3絶縁部材926が配置されている。第3絶縁部材926の内部には、高圧発生用基板913および絶縁トランス720が配置されている。第1絶縁部材924の内部には、制御用基板911が配置されている。制御用基板911と高圧発生用基板913とは、二重シールド配線931を介して互いに接続されている。
【0071】
次の第2段階では、内部ケース923の一部である内部蓋部材923bを、内部本体部材923aの開口部分を覆うように配置する作業を実施する。これにより、内部本体部材923a、内部蓋部材923bを備える内部ケース923が完成する。内部ケース923は、高圧発生用基板913と、絶縁トランス720と、第3絶縁部材926と、を内部に収容する。
【0072】
次の第3段階では、第2絶縁部材925の一部である絶縁収容部材925bを内部ケース923の外側に配置した後、第2絶縁部材925の一部である絶縁蓋部材925cを絶縁収容部材925bの開口部分を覆うように配置する作業を実施する。これにより、絶縁間隙部材925a、絶縁収容部材925b、絶縁蓋部材925cを備える第2絶縁部材925が完成する。第2絶縁部材925は、内部ケース923を内部に収容する。
【0073】
次の第4段階では、外部ケース921の一部である外部本体部材921aの内部に、第1絶縁部材924および第2絶縁部材925を配置する作業を実施する。外部本体部材921aは、内部に区画壁921cを備えている。区画壁921cは、外部本体部材921aの内部空間を、第1空間921dと、第2空間921eとに分割している。第1空間921dは、第1絶縁部材924を配置するための空間であり、第2空間921eは、第2絶縁部材925を配置するための空間である。
【0074】
次の第5段階では、外部ケース921の一部である外部蓋部材921bを、外部本体部材921aの開口部分を覆うように配置する作業を実施する。これにより、外部本体部材921aおよび外部蓋部材921bを備える外部ケース921が完成する。外部ケース921は、第1絶縁部材924と、第2絶縁部材925と、を内部に収容する。
【0075】
このような作業を実施することで、回路筐体900が完成する。
このような構成の回路筐体900は、内部ケース923が、高圧発生用基板913および絶縁トランス720を覆うとともに、外部ケース921が、制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)、内部ケース923を覆うように構成されている。
【0076】
これにより、制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)は、外部ケース921の内側の空間であり、かつ内部ケース923の外側の空間である第1空間921dに配置される。高圧発生用基板913および絶縁トランス720は、内部ケース923の内部空間である第2空間921eに配置される。
【0077】
つまり、回路筐体900は、「制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)」と、「高圧発生用基板913および絶縁トランス720」とが、内部ケース923により区切られた異なる2つの空間(第1空間921d、第2空間921e)にそれぞれ配置されるように構成されている。
【0078】
なお、
図3においても、第1空間921dおよび第2空間921eに相当する領域を示している。
[1−5.効果]
以上説明したように、本実施形態の微粒子検出システム10は、微粒子センサ100と、高圧発生用基板913と、絶縁トランス720と、制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)と、回路筐体900と、を備えている。
【0079】
高圧発生用基板913および絶縁トランス720は、一次巻線での一次電流の通電切替により二次巻線に発生する高電圧を微粒子センサ100に供給する。詳細には、第1絶縁トランス720aにおいて、一次巻線での一次電流の通電切替により二次巻線に発生する高電圧を、微粒子センサ100の第1電極112に供給する。第2絶縁トランス720bにおいて、一次巻線での一次電流の通電切替により二次巻線に発生する高電圧を、微粒子センサ100の第2電極132に供給する。
【0080】
第1トランス駆動回路712aは、第1絶縁トランス720aの一次巻線における一次電流を制御する。第2トランス駆動回路712bは、第2絶縁トランス720bの一次巻線における一次電流を制御する。
【0081】
センサ制御部600は、微粒子センサ100で生成されたセンサ信号の信号処理を行う。詳細には、センサ制御部600は、電気回路部700から入力される信号から排ガス中の微粒子の量を検出(測定)し、排ガス中の微粒子量を表す信号を車両制御部420に出力する。
【0082】
回路筐体900は、外部ケース921および内部ケース923を備えている。内部ケース923は、高圧発生用基板913および絶縁トランス720を覆うとともに、電磁気ノイズを遮断する金属材料で構成されている。外部ケース921は、制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)および内部ケース923を覆うとともに、電磁気ノイズを遮断する金属材料で構成されている。
【0083】
これにより、制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)は、外部ケース921の内側の空間であり、かつ内部ケース923の外側の空間である第1空間921dに配置されている。高圧発生用基板913および絶縁トランス720は、内部ケース923の内部空間である第2空間921eに配置されている。
【0084】
つまり、微粒子検出システム10では、「制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)」と、「高圧発生用基板913および絶縁トランス720」とが、内部ケース923により区切られた異なる2つの空間(第1空間921d、第2空間921e)にそれぞれ配置されている。
【0085】
このような構成であれば、「高圧発生用基板913および絶縁トランス720」において一次電流の通電切替時に一次巻線で電磁気ノイズが発生しても、その電磁気ノイズが内部ケース923によって遮断される。このため、一次巻線で発生した電磁気ノイズが「制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)」に与える影響を低減できる。
【0086】
また、外部ケース921を備えることで、外部からの電磁気ノイズが制御用基板911に到達することを抑制できる。このため、外部からのノイズが制御用基板911に与える影響を低減できる。
【0087】
よって、この微粒子検出システム10は、一次巻線で発生した電磁気ノイズが制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)に与える影響を低減できるため、電磁気ノイズの影響により微粒子の検出精度が低下することを抑制できる。さらに、外部からの電磁気ノイズが制御用基板911(第1トランス駆動回路712a、第2トランス駆動回路712b、センサ制御部600、コロナ電流測定回路730)に与える影響も低減できる。
【0088】
[1−6.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
微粒子検出システム10が微粒子検出システムの一例に相当し、微粒子センサ100が微粒子センサの一例に相当し、高圧発生用基板913および絶縁トランス720が高電圧発生部の一例に相当し、絶縁トランス720が変圧器の一例に相当し、第1トランス駆動回路712aおよび第2トランス駆動回路712bが一次電流制御部の一例に相当する。センサ制御部600がセンサ信号処理部に相当し、内部ケース923が内部シールド部の一例に相当し、外部ケース921が外部シールド部の一例に相当する。
【0089】
[2.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0090】
例えば、上記実施形態では、第1トランス駆動回路712aおよび第2トランス駆動回路712bが制御用基板911(換言すれば、第1空間921d)に配置される構成について説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、第1トランス駆動回路712aおよび第2トランス駆動回路712bが高圧発生用基板913(第2空間921e)に配置される構成であっても良い。
図6は、このような構成における第1空間921dおよび第2空間921eに相当する領域を示した説明図である。
【0091】
このような構成は、第1トランス駆動回路712aおよび第2トランス駆動回路712bとして、センサ制御部600およびコロナ電流測定回路730への影響が生じる電磁気ノイズを発生するトランス駆動回路を採用した場合に有効である。つまり、第1トランス駆動回路712aおよび第2トランス駆動回路712bで電磁気ノイズが発生した場合でも、内部ケース923でその電磁気ノイズを遮断でき、その電磁気ノイズがセンサ制御部600およびコロナ電流測定回路730に与える影響を抑制できる。よって、このような構成の微粒子検出システムは、第1トランス駆動回路712aおよび第2トランス駆動回路712bで発生した電磁気ノイズの影響により微粒子の検出精度が低下することを抑制できる。
【0092】
また、上記実施形態では、微粒子センサ100として第2電極132を有する形態について説明したが、第2電極132を省略して微粒子センサを構成するようにしてもよい。第2電極132を省略しても、帯電微粒子の量に応じて微粒子の量を測定することは可能であり、第2電極132を省略した分だけ微粒子センサをシンプルな構成にできる。その場合には、電気回路部700から、第2電源回路710b、第2絶縁トランス720b、第2整流回路752、ショート保護用抵抗754、第2配線222についても省略してもよい。
【0093】
また、微粒子検出システムを構成する微粒子センサは、イオン発生部が排ガス帯電部の外側に並んで設けられる構成に限られることはなく、例えば、イオン発生部が排ガス帯電部内に配置される構成であってもよい。さらに、微粒子検出システムを構成する微粒子センサとしてイオン発生部を排ガス帯電部内に配置する場合には、センサ駆動部から空気供給部を省略し、微粒子センサは、帯電室に空気供給部による高圧空気の供給を行わない構成を採るようにしてもよい。このような微粒子センサとしては、例えば、本願の出願人が出願している特開2015−129711号公報に開示されたセンサ構造を適用することが可能であり、その開示内容の全体は参照によりここに組み込まれる。また、コロナ電流測定回路は、光結合式のアイソレーションアンプに限られることはなく、例えば、磁気結合式や容量結合式のアイソレーションアンプであってもよい。