(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
エキシマランプの放電容器を構成する内管と外管の管体に、紫外線を阻止する遮光部を設けることで、ファイバー効果による結合部への紫外線の集中を抑制して、結合部におけるマイクロクラックの発生を防止するエキシマランプがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、内側管に内径が拡径されている拡径部(遮光部)を設けて、この拡径部が外側管の端部に接合させて放電空間を形成して、内側管から延びる延長管部の外表面上に配置された有機物材料(継手のOリング)への真空紫外線の照射を防止(遮光)できる誘電体バリア放電ランプ装置がある(特許文献2参照)。
【0004】
このように放電容器の一部に遮光部を設けると、放電容器内の放電によって発生する高エネルギーの紫外線により遮光部が劣化(脆化)するので、遮光部を起点として放電容器が破損するおそれがあり、放電ランプの信頼性を高めることができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点に鑑みて、この発明が解決しようとする課題は、遮光部を起点とした放電容器の破損を防ぎ、信頼性が高い放電ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
放電用ガスが封入された放電部と、放電部に連設され、支持部材により支持される非放電部とを有し、非放電部には、放電部から支持部材により支持される部分までの間の少なくとも一部に遮光部を設けたことにより、ファイバー効果により伝わった紫外線が支持部材に照射されたり、開口部から密閉容器の外部へ紫外線が放出したりすることを防ぐ放電ランプを提供することができる。
【0008】
更に、放電部は、内側管と外側管とが少なくとも一端で溶着して形成され、非放電部は、内側管または外側管により形成した延伸部であることにより、別部材を封止部に溶着させることなく遮光部を設けた放電ランプを提供することができる。
【0009】
放電部は、内側管と外側管とが少なくとも一端で溶着して形成され、非放電部は、内側管および外側管とは別部材を溶着して形成した延伸部であることにより、開口部の内径や断面形状に応じて延伸部の外径や断面形状を選択できるので、設計の自由度を増すことができる。
【0010】
遮光部は、非放電部で支持される側に向けて延伸部の内径または外径を拡径した拡径部であることにより、延伸部をファイバー効果で伝わる紫外線を減衰させる(管壁外部へ放出させる)遮光部としての機能を有する放電ランプを提供することができる。
【0011】
遮光部は、内側管の内周面側に配設した内側電極と電気的に接続され、延伸部の内周面と溶着した給電線であることにより、内側管延伸部をファイバー効果で伝わる紫外線の一部は、引出線により遮られて(吸収や散乱などにより)減衰させる遮光部としての機能を有する放電ランプを提供することができる。
【0012】
延伸部において密閉シールされることにより、ファイバー効果により伝わった紫外線が支持部材に照射されたり、紫外線が密閉容器の開口部から外部へ放出したりすることを防ぐことができ、遮光部を起点とした放電容器が破損することを防ぐことができる。
【0013】
更に、放電部の外側管は、径方向の肉厚が0.8mm〜1.5mm、内径が5mm〜20mmであることにより、ファイバー効果により伝わる紫外線が、延伸部の形状による影響を受けやすく、遮光(吸収や散乱など)の効果が大きい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、遮光部を起点とした放電容器の破損を防ぐことができるので、信頼性が高い放電ランプを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
図1は、第1の実施形態である放電ランプを用いた照射装置の概略的断面図である。
【0017】
図1に記載の照射装置は、放電ランプ1により紫外線を照射される被照射体Mを内部に配設した密閉容器50により構成される。
【0018】
エキシマランプである放電ランプ1は、放電空間Sに封入した放電用ガスを放電させることで紫外線を放射する放電部L1と、密閉容器50の開口部51において支持部材(密閉シール部材)52により密閉シール(支持)される非放電部L2とからなる。
【0019】
放電部L1は、それぞれ石英ガラスなどの誘電材料から成る有底筒状の内側管11と外側管12とを封止部31にて溶着することで形成される。非放電部L2は、封止部31よりも開口部51側に延伸させた内側管延伸部21により形成される。
【0020】
上記の放電部L1に対して、内側管11の内部に配設した内側電極41と、外側管12の外周面上に配設した外側電極42と、内側電極41と電気的に接続された引出線43と給電線44と、外側電極42と電気的に接続された外側給電線(図示せず)とを設けて、交流高電圧電源(図示せず)に電気的に接続して、放電ランプ1に電力が供給される。
【0021】
本実施形態においては、内側管11の内部に内側電極41を配設し、外側管12の外周面上に外側電極42を配設したが、外側管12の外周面上に更に被覆管を設けて放電ランプの外部(密閉容器内)との間を絶縁しても良い。また、内側電極41を配設しないで、外側管12の外周面上(上記被覆管の内周面との間)に放電空間Sを挟んで対向する一対の電極を配設してもよい。このときは、上記被覆管を外側管の外周面と溶着させることで、両電極の間を電気的に絶縁するとよい。
【0022】
内側電極41と外側電極42との間に高周波高電圧が印加されると、誘電体(内側管11と外側管12)を介して、内側電極41と外側電極42とが対向しているランプ軸方向範囲(有効発光領域)の放電空間Sにて放電が生じる。
【0023】
放電が生じると、所定スペクトルのエキシマ光が放射される。例えば、放電用ガスがXeガスでは172nm、Arガスでは126nm、Krガスでは146nm、ArBrガスでは165nm、ArFガスでは193nm、KrClガスでは222nm、XeIガスでは253nm、XeClガスでは308nm、XeBrガスでは283nm、KrBrガスでは207nmの波長を含む紫外線が放射される。
【0024】
放電によって生じた紫外線は、外側管12を透過して、放電ランプ1の外部(密閉容器内)に放出され、減圧状態とした密閉容器50内に配設した被照射物Mに対して紫外線が照射される。
【0025】
本実施形態においては、密閉容器50内を減圧状態としたが、密閉容器50内は、酸素や希ガスなどの気体を封入してもよいし、液体を封入してもよい。また、固体である被照射物Mに対して紫外線を照射したが、気体や液体に対して紫外線照射を行ってもよい。例えば、液体である被照射物を満たした容器内(水槽)は、外部に対して密閉する必要なく(即ち、鉛直方向上側は大気に解放されている)、水槽の側面に設けた開口部に放電ランプを挿入して、この開口部から被照射物が漏出しないように密閉シールしてもよい。
【0026】
放電によって生じた紫外線の一部は、外側管12の管壁内(管壁の境界面)での反射を繰り返すことによるファイバー効果(通信回路に用いる光ファイバーと同様の原理による効果)により伝わったり、封止部31や内側管延伸部21にも照射されたりするが、内側管延伸部21の少なくとも一部が遮光部としての機能を有するので、ファイバー効果により伝わった紫外線が支持部材52に照射されたり、開口部51から密閉容器50の外部へ紫外線が放出したりすることを防ぐことができる。
【0027】
本実施形態で用いた放電ランプ1の外側管12は、内径が5mm〜20mm、肉厚が0.8mm〜1.5mmである。このような形状の放電ランプ1を開口部51で支持するためには、延伸部の外径が小さく(曲率が大きく)なり、内径に対する肉厚の割合が大きくなるで、ファイバー効果により伝わる紫外線が、延伸部の形状による影響を受けやすく、遮光(吸収や散乱など)の効果が大きい。以下で、本実施形態における遮光部について説明をする。
【0028】
少なくとも封止部31付近の内側管延伸部21において、引出線43の一部が内側管延伸部21に溶着して一体となるように埋め込まれていることで、内側管延伸部21をファイバー効果で伝わる紫外線の一部は、引出線43により遮られて(吸収や散乱などにより)減衰する。即ち、封止部31から支持部材52までの間の少なくとも一部で、引出線43と溶着した内側管延伸部21の一部が、遮光部としての機能を有する。このような機能を得るためには、引出線43の外周面が鏡面状態とはならないようにするとよい。
【0029】
更に、内側管延伸部21は、封止部31から支持部材52までの間で、放電部L1側から開口部51側に向かって内径が拡径していることで、内側管延伸部21をファイバー効果で伝わる紫外線を減衰させる(管壁外部へ放出させる)ことができる。即ち、内側管延伸部21の拡径部23が、遮光部としての機能を有する。従来技術のように放電部の一部として内側管の内径を拡径したときに比べて、拡径部(遮光部)の劣化による放電容器(放電部)の破損を防ぐことができる。
【0030】
拡径部23は、内側管延伸部21の内径だけでなく、併せて外径も拡径させても良い。例えば、内側管11の外径に合わせて封止部31側の外側管延伸部の外径は小さくして、開口部51の内径に合わせて支持部材52側の外側管延伸部の外径を大きくしてもよい。
【0031】
また、内側管11とは径方向断面形状が異なる別部材を封止部31に溶着することで内側管延伸部21としてもよく、封止部31と溶着する部分によって、ファイバー効果で伝わる紫外線を減衰させる(管壁外部へ放出させる)こともできる。このように、開口部51の内径や断面形状に応じて内側管延伸部21の外径や断面形状を選択できるので、設計の自由度を増すことができる。
【0032】
また、内側管延伸部21には、放電部L1の外側管12(内側管11)よりも放電によって生じた紫外線の波長に対する透過率が低い材料を用いるとよい。例えば、紫外線を吸収または散乱する遮光材を分散させた不透明石英ガラスまたはバイコールガラスやオゾンレスガラスなどを用いることで、遮光材としての機能を有することができる。
【0033】
このように、放電ランプの少なくとも封止部から支持部材により密閉シール(支持)される部分までの間の内側管延伸部に、引出線や拡径部等による遮光部を設けることにより、ファイバー効果により伝わった紫外線が支持部材に照射されたり、紫外線が密閉容器の開口部から外部へ放出したりすることを防ぐことができ、遮光部を起点とした放電容器が破損することを防ぐことができる。
【0034】
(実施形態2)
図2は、第2の実施形態である放電ランプを用いた照射装置の概略的断面図である。
【0035】
図2に記載の照射装置は、放電ランプ101により紫外線を照射される被照射体Mを内部に配設した密閉容器150により構成される。以下、実施形態1と共通する内容については省略する。
【0036】
エキシマランプである放電ランプ101は、放電空間Sに封入した放電用ガスを放電させて紫外線を放射する放電部L1と、密閉容器150の開口部151において支持部材(密閉シール部材)152により密閉シール(支持)される非放電部L2とからなる。
【0037】
放電部L1は、それぞれ石英ガラスなどの誘電材料から成る有底筒状の内側管111と外側管112とを封止部131にて溶着することで形成される。非放電部L2は、封止部131よりも開口部151側に延伸させた内側管延伸部121と外側管延伸部122とにより形成される。
【0038】
本実施形態においては、放電用ガス(Xeガス)から放射される172nmの波長を含む紫外線に対して高い透過率を有する石英ガラス管を外側管112に用いた。それに対して、外側管延伸部122は波長172nmに対して低い(10%以下の)透過率を有する石英ガラス管を用いることで、遮光部としての機能を有する。
【0039】
上記の放電部L1に対して、実施形態1と同様に、内側管111の内部に配設した内側電極141と、外側管112の外周面上に配設した外側電極142と、引出線143、給電線144と外側給電線(図示せず)とを設けて、交流高電圧電源(図示せず)に電気的に接続されており、放電ランプ101に電力が供給される。
【0040】
実施形態1と同様に、外側管112の外周面上に更に被覆管を設けて放電ランプの外部(密閉容器内)との間を絶縁しても良い。また、内側電極141を配設しないで、外側管112の外周面上(上記被覆管の内周面との間)に放電空間Sを挟んで対向する一対の電極を配設してもよい。
【0041】
内側電極141と外側電極142との間に高周波高電圧が印加されると、誘電体(内側管111と外側管112)を介して、内側電極141と外側電極142とが対向しているランプ軸方向範囲(有効発光領域)の放電空間Sにて放電が生じる。
【0042】
放電が生じると、所定スペクトルのエキシマ光が放射される。放電によって生じた紫外線は、外側管112を透過して、放電ランプ101の外部(密閉容器150内)に放出され、減圧状態とした密閉容器150内に配設した被照射物Mに対して紫外線が照射される。
【0043】
放電によって生じた紫外線の一部は外側管112の管壁内部をファイバー効果により伝わったり、封止部131や内側管延伸部121にも照射されたりするが、内側管延伸部121と外側管延伸部122の少なくとも一部が遮光部としての機能を有するので、ファイバー効果により伝わった紫外線が支持部材に照射されたり、開口部から密閉容器の外部へ紫外線が放出したりすることを防ぐことができる。以下で、本実施形態における遮光部について説明をする。
【0044】
外側管延伸部122は、封止部131から支持部材152までの間で、放電部L1側から開口部151側に向かって内径と外径が拡径していることで、外側管延伸部122をファイバー効果で伝わる紫外線を減衰させる(管壁外部へ放出させる)ことができる。即ち、外側管延伸部122の拡径部124が、遮光部としての機能を有する。従来技術のように放電部の一部として内径が拡径することによる遮光部を設けたときに比べて、遮光部(拡径部)の劣化による放電容器(放電部)の破損を防ぐことができる。
【0045】
また、外側管延伸部122の放電部L1側(封止部131と溶着する部分)の肉厚(管の径方向の厚さ)を厚くして、開口部151側に向かって薄くした拡径部とすることによって、ファイバー効果で伝わる紫外線を減衰させる(管壁外部へ放出させる)させてもよい。なお、遮光部である拡径部124は、封止部131と溶着する部分以外でもよく、放電部L1(封止部131)よりも支持部材152側に設ければよい。
【0046】
本実施形態においては、外側管延伸部122は、外側管112とは別部材を封止部131において溶着して延伸させているので、外側管112とは断面形状が異なる別部材を封止部131に溶着することで外側管延伸部122としてもよい。このときは、開口部151の断面形状に応じて外側管延伸部122の断面形状を選択できるので、設計の自由度を増すことができる。例えば、外径が大きい放電ランプに対しても、開口部の内径を小さくすることができる。
【0047】
また、放電部L1よりも長い外側管112が封止部131を通って開口部151側まで延伸しても良いし、延伸した途中で別部材を溶着して延伸させても良い。例えば、段継ガラス管を介して外側管延伸部を金属管等に接続するときには、段継ガラスが紫外線により劣化することを防ぐために、遮光部を設ける。
【0048】
内側管延伸部121は、放電部L1よりも長い内側管111が封止部131を通って開口部151側まで延伸しているが、内側管111とは別部材を溶着して延伸させても良い。
【0049】
更に、外側管延伸部122に対して、実施形態1における遮光部を設ける方法の少なくとも1つの方法により遮光部を形成してもよい。また、内側管延伸部121に対しても同様に遮光部(拡径部123)を形成してもよい。
【0050】
このように、放電ランプの少なくとも封止部から支持部材により密閉シール(支持)される部分までの間の外側管延伸部に、拡径部等による遮光部を設けることにより、ファイバー効果により伝わった紫外線が支持部材に照射されたり、紫外線が密閉容器の開口部から外部へ放出したりすることを防ぐことができ、遮光部を起点とした放電容器が破損することを防ぐことができる。