(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831204
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】テープタイプ使い捨ておむつ、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20210208BHJP
A44B 18/00 20060101ALI20210208BHJP
A61F 13/62 20060101ALI20210208BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
A61F13/56 213
A44B18/00
A61F13/62 110
A61F13/15 360
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-194289(P2016-194289)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-51226(P2018-51226A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 英俊
【審査官】
▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−050575(JP,A)
【文献】
特開2016−104078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
A44B18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部と、股間部の前側及び後側にそれぞれ延出する腹側部分及び背側部分とを有し、
背側部分の各側部におけるウエスト側の部位及び脚周り側の部位にそれぞれ連結用突出部が設けられるか、又は背側部分の各側部に、ウエスト側の連結用突出部及び脚周り側の連結用突出部がミシン目を介して一体化された状態で設けられており、
ウエスト側の連結用突出部及び脚周り側の連結用突出部に、腹側部分と着脱自在に連結されるフック材を有する連結領域が設けられた、テープタイプ使い捨ておむつにおいて、
ウエスト側の連結用突出部の連結領域は、前記フック材が複数の部分に分離された分離部、又は前記フック材に形成された薄肉部が、先端側に向かって斜め上向きに当該連結領域の端から端まで連続する易折り曲げ部を有しており、
脚周り側の連結用突出部の連結領域は、前記フック材が複数の部分に分離された分離部、又は前記フック材に形成された薄肉部が、先端側に向かって斜め下向きに当該連結領域の端から端まで連続する易折り曲げ部を有している、
ことを特徴とするテープタイプ使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記斜め上向きに連続する易折り曲げ部及び前記斜め下向きに連続する易折り曲げ部は、幅方向に対する鋭角側交差角が30〜60度である、請求項1記載のテープタイプ使い捨ておむつ
【請求項3】
ウエスト側の連結用突出部の連結領域及び脚周り側の連結用突出部の連結領域は、前記フック材が複数の部分に分離された分離部、又は前記フック材に形成された薄肉部が、幅方向に沿って当該連結領域の端から端まで連続する易折り曲げ部を有しており、かつ
前記斜め上向きに連続する易折り曲げ部、前記斜め下向きに連続する易折り曲げ部、及び幅方向に沿って連続する易折り曲げ部以外の方向に沿う易折り曲げ部を有しない、請求項1又は2記載のテープタイプ使い捨ておむつ。
【請求項4】
股間部と、股間部の前側及び後側にそれぞれ延出する腹側部分及び背側部分とを有し、
背側部分の各側部におけるウエスト側の部位及び脚周り側の部位にそれぞれ連結用突出部が設けられるか、又は背側部分の各側部に、ウエスト側の連結用突出部及び脚周り側の連結用突出部がミシン目を介して一体化された状態で設けられており、
連結用突出部に、腹側部分と着脱自在に連結されるフック材を有する連結領域が設けられた、テープタイプ使い捨ておむつの製造方法において、
連結用突出部を製造するにあたり、
連結用突出部を形成する基材にフック材を貼り付け、
フック材を基材に貼り付けた後、基材を切断せずにフック材のみを所定方向に連続的に切断するか、又はフック材を基材に貼り付ける前若しくは貼り付けた後、フック材に、所定の方向に連続する易切り裂き線を形成し、
その後、フック材の切断の方向又は易切り裂き線の方向と交差する方向に、基材及びフック材を引っ張り、基材を延伸させるとともにフック材を切断の位置又は易切り裂き線の位置で分離し、分離部で分離された複数のフック材を有する連結領域を備えた連結用突出部を製造する、
ことを特徴とするテープタイプ使い捨ておむつの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープタイプ使い捨ておむつ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なテープタイプ使い捨ておむつは、前後方向中央から前側に延在する腹側部分と、後側に延在する背側部分とを有し、背側部分の両側部から突出する連結用突出部を有し、身体への装着に際して、連結用突出部を腰の両側から腹側外面に回して腹側外面に連結する構造を有している(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
このようなテープタイプ使い捨ておむつは、乳幼児向けとして用いられる他、介護用途(成人用途)で広く使用されているが、ウエスト周り及び脚周りが緩みやすいという問題点を有している。
【0004】
このため、従来、背側部分の各側部におけるウエスト側の端部及び脚周り側の端部にそれぞれ連結用突出部を設け(例えば特許文献1の
図8に示される例を参照。)、ウエスト側の連結用突出部と脚周り側の連結用突出部とを交差させ、ウエスト側の連結用突出部を斜め下向きに引っ張りつつ連結することによりウエスト周りをしっかりと締め付けるとともに、脚周り側の連結用突出部を斜め上向きに引っ張りつつ連結することにより脚周りをしっかりと締め付ける、いわゆるクロス止めが推奨されている。
【0005】
また、同様の装着形態を可能にするものとして、一体的な連結パネルの先端側が二股に分かれて上下一対の連結用突出部が形成された二股構造のものも知られている(例えば特許文献1の
図9に示される例を参照。)。
【0006】
さらに、ミシン目により連結パネルの先端側を上下二段に分割して上下一対の連結用突出部を形成することも提案されている(特許文献1、2参照)。以上の解決手法は、連結用突出部を上下一対設ける点で共通するものである。
【0007】
また、連結用突出部を上下一対設けるとともに、各突出部を幅方向に弾性伸縮可能としたものも提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
他方、これらテープタイプ使い捨ておむつにおいて、連結用突出部を腹側外面に連結する連結領域には、粘着剤が設けられることもあるが、粘着剤は係止力が弱く、繰り返して係止すると粘着力が低下するため、現在ではメカニカルファスナー(面ファスナー)のフック材(オス材)が設けられることが多くなっている。フック材は、シート状の基部の表面にJ字状やキノコ状のピンが多数形成されているものであり、全体が樹脂で形成されているものである。
【0009】
しかし、フック材は硬質な部材である。また、上下一対の連結用突出部を腹側部分に連結した場合、フック材が前後方向に並び、腹側部分の連結領域に占めるフック材の前後方向寸法が長くなる。つまり、装着状態では、変形しにくい連結領域が前後方向に長く形成されることになる。よって、例えば装着状態で仰臥位から座位に変わるとき等のように、腹部を折り曲げ、腹側部分に幅方向に延びる皺が発生したときには、
図11(a)に示すように、フック材9を有する連結領域5cが腹側部分Fの皺に追従して変形しにくいために、フック材9の前後方向の端部が捲れる等、フック材9の部分的剥離(図中点線で囲んだ部分)が発生しやすくなるという問題点がある。特に、クロス止めをした場合は、フック材が傾斜姿勢となり、前後方向寸法が長くなることにより、連結領域の前後方向の追従変形性が大きく低下する。
【0010】
フック材による硬質化については、フック材を分割することにより、柔軟性を向上させることが知られている(例えば特許文献3,4参照)が、これを上下一対の連結用突出部に適用したとしても、クロス止め時に連結領域の前後方向の追従変形性が低下することに変わりはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4683522号公報
【特許文献2】特開2010−022587号公報
【特許文献3】特開2004−344515号公報
【特許文献4】特表平11−507286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の主たる課題は、フック材を有する連結用突出部を上下一対備えたテープタイプ使い捨ておむつにおいて、クロス止めしたときの連結領域の前後方向の追従変形性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決した本発明の代表的態様は以下のとおりである。
<第1の態様>
股間部と、股間部の前側及び後側にそれぞれ延出する腹側部分及び背側部分とを有し、
背側部分の各側部におけるウエスト側の部位及び脚周り側の部位にそれぞれ連結用突出部が設けられるか、又は背側部分の各側部に、ウエスト側の連結用突出部及び脚周り側の連結用突出部がミシン目を介して一体化された状態で設けられており、
ウエスト側の連結用突出部及び脚周り側の連結用突出部に、腹側部分と着脱自在に連結されるフック材を有する連結領域が設けられた、テープタイプ使い捨ておむつにおいて、
ウエスト側の連結用突出部の連結領域は、先端側に向かって斜め上向きに連続する易折り曲げ部を有しており、
脚周り側の連結用突出部の連結領域は、先端側に向かって斜め下向きに連続する易折り曲げ部を有している、
ことを特徴とするテープタイプ使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
本発明のテープタイプ使い捨ておむつでは、クロス止めしたとき、ウエスト側の連結用突出部の連結領域の易折り曲げ部、及び脚周り側の連結用突出部の連結領域の易折り曲げ部がともに、幅方向又はそれに近い傾斜方向に沿う配置となるため、連結領域が前後方向変化に追従して折れ曲がりやすくなる。よって、クロス止めした装着状態で、腹部を折り曲げ、腹側部分におけるフック材の連結領域に幅方向に延びる皺が発生したときでも、連結領域が腹側部分の皺に追従して変形しやすくなり、フック材の部分的剥離が発生しにくくなる。なお、「先端側に向かって斜め上向き」とは、先端側に向かうにつれてウエスト側に位置する方向を意味し、「先端側に向かって斜め下向き」とは、先端側に向かうにつれて脚周り側に位置する方向を意味する。
【0015】
<第2の態様>
前記斜め上向きに連続する易折り曲げ部及び前記斜め下向きに連続する易折り曲げ部は、幅方向に対する鋭角側交差角が30〜60度である、第1の態様のテープタイプ使い捨ておむつ
【0016】
(作用効果)
易折り曲げ部の傾斜角度は、連結用突出部の突出長さ等に応じて適宜定めれば良いが、通常の場合、上記範囲内とすることにより、クロス止めしたときに易折り曲げ部が幅方向に近くなりやすくなる。
【0017】
<第3の態様>
ウエスト側の連結用突出部の連結領域及び脚周り側の連結用突出部の連結領域は、幅方向に沿って連続する易折り曲げ部を有しており、かつ前記斜め上向きに連続する易折り曲げ部、前記斜め下向きに連続する易折り曲げ部、及び幅方向に沿って連続する易折り曲げ部以外の方向に沿う易折り曲げ部を有しない、第1又は2の態様のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0018】
(作用効果)
このような幅方向に沿って連続する易折り曲げ部を有することにより、クロス止めせずに、ほぼ幅方向に沿う姿勢で連結用突出部を腹側部分に連結したときでも、連結領域の前後方向の追従変形性が良好となる。
【0019】
<第4の態様>
前記易折り曲げ部は、前記フック材が複数の部分に分離された分離部が位置する部分である、第1〜3のいずれか1つの態様のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0020】
(作用効果)
易折り曲げ部がこのようなフック材の分離部が位置する部分である(つまり複数のフック材が間隔を空けて又は空けずに並んでいる)と、追従変形性に優れるため好ましい。
【0021】
<第5の態様>
前記易折り曲げ部は、前記フック材に形成された薄肉部が位置する部分である、第1〜3のいずれか1つの態様のテープタイプ使い捨ておむつ。
【0022】
(作用効果)
易折り曲げ部がこのようなフック材の薄肉部が位置する部分であると、製造が容易となるため好ましい。
【0023】
<第6の態様>
股間部と、股間部の前側及び後側にそれぞれ延出する腹側部分及び背側部分とを有し、
背側部分の各側部におけるウエスト側の部位及び脚周り側の部位にそれぞれ連結用突出部が設けられるか、又は背側部分の各側部に、ウエスト側の連結用突出部及び脚周り側の連結用突出部がミシン目を介して一体化された状態で設けられており、
連結用突出部に、腹側部分と着脱自在に連結されるフック材を有する連結領域が設けられた、テープタイプ使い捨ておむつの製造方法において、
連結用突出部を製造するにあたり、
連結用突出部を形成する基材にフック材を貼り付け、
フック材を基材に貼り付けた後、基材を切断せずにフック材のみを所定方向に連続的に切断するか、又はフック材を基材に貼り付ける前若しくは貼り付けた後、フック材に、所定の方向に連続する易切り裂き線を形成し、
その後、フック材の切断の方向又は易切り裂き線の方向と交差する方向に、基材及びフック材を引っ張り、基材を延伸させるとともにフック材を切断の位置又は易切り裂き線の位置で分離し、分離部で分離された複数のフック材を有する連結領域を備えた連結用突出部を製造する、
ことを特徴とするテープタイプ使い捨ておむつの製造方法。
【0024】
(作用効果)
このような手法により、分離部で分離された複数のフック材を有し、追従変形性に優れた連結領域を有する連結用突出部を容易に製造することができる。特に単一のフック材から多数のフック材に分割する場合に好適である。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明によれば、フック材を有する連結用突出部を上下一対備えたテープタイプ使い捨ておむつにおいて、クロス止めしたときの連結領域の前後方向の追従変形性が改善される、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】テープタイプ使い捨ておむつの展開状態の内面側を示す平面図である。
【
図2】テープタイプ使い捨ておむつの展開状態の外面側を示す平面図である。
【
図11】(a)易折り曲げ部が無い場合、及び(b)易折り曲げ部がある場合の拡大断面図である。
【
図13】易折り曲げ部の各種例を示す断面図である。
【
図14】連結用突出部の製造工程を概略的に示す断面図である。
【
図15】連結用突出部の製造工程を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
図1〜
図7は、本発明に係るテープタイプ使い捨ておむつの一例を示しており、この使い捨ておむつは、液不透過性シート1の内面と、透液性のトップシート2との間に、吸収体3が介在された基本構造を有するものである。
【0028】
(吸収体)
吸収体3としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。また、必要に応じて、吸収体3はクレープ紙(図示せず)により包むことができる。また、吸収体3の形状は、図示のような砂時計形状の他、長方形状等、適宜定めることができる。吸収体3におけるパルプ目付けは100〜500g/m
2程度、厚みは1〜15mm程度であるのが望ましい。また、高吸収性ポリマーの目付けは0〜300g/m
2程度であるのが望ましい。
【0029】
(液不透過性シート)
液不透過性シート1は、吸収体3の周囲より外側に延在しており、吸収体3に吸収された排泄物の裏面側への移動を遮断するものである。液不透過性シート1としては、ポリエチレンフィルム等のプラスチックフィルムの他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。液不透過性シート1の単位面積あたりの重量は13〜40g/m
2であるのが好ましく、厚みは0.01〜0.1mmであるのが好ましい。
【0030】
おむつ外面を布のような外観、肌触りとするために、液不透過性シート1の裏面全体は外装シート12で覆われており、両シート1,12の外周縁はおむつの外周縁まで及んでいる。外装シート12としては各種の不織布を用いることができるが、スパンボンド不織布が好適である。外装シート12は省略することもできる。
【0031】
(トップシート)
トップシート2としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。また、不織布の加工方法としては、スパンレース法、スパンボンド法、SMS法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の公知の方法を用いることができる。トップシート2に用いる不織布の繊維目付けは15〜30g/m
2であるのが好ましく、厚みは0.05〜1mmであるのが好ましい。
【0032】
トップシート2は、吸収体3の周囲より外側に延在しており、吸収体3側縁より外側に延在する部分が液不透過性シート1にホットメルト接着剤等により固着されている。なお、図中の点模様は固着部分を表しているものである。
【0033】
(側部バリヤーシート)
図3及び
図4にも示されるように、物品内面の両側部(図示形態ではトップシート2の側縁部表面からその側方に延在する液不透過性シート1の表面)には、側部バリヤーシート4の幅方向外側の部分4xが前後方向全体にわたり貼り付けられている。側部バリヤーシート4は、各種不織布(スパンボンド不織布が好適である)の他、液不透過性シートに用いられるものと同様のプラスチックフィルム、又はこれらの積層シートを用いることができるが、肌への感触性の点で、撥水処理を施した不織布が好適である。側部バリヤーシート4の幅方向中央側の部分4cは、前後方向両端部では物品内面(図示形態ではトップシート2表面)にホットメルト接着剤等の手段により固着されているが、これらの間の中間部は非固定の自由部分となっており、この自由部分の先端部(展開状態における幅方向中央側の端部)には、細長状弾性伸縮部材4Gが前後方向に沿って伸長した状態でホットメルト接着剤等により固定されている。この細長状弾性伸縮部材4Gは図示例では所定の間隔を空けて複数本設けられているが、一本でも良い。細長状弾性伸縮部材4G(他の細長状弾性伸縮部材も同様)としては、糸状、紐状、帯状等に形成された天然ゴム又は合成ゴム、具体的にはスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、
シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。この自由部分は、細長状弾性伸縮部材4Gの収縮力が作用する結果、
図4に示されるように、物品内面(図示形態ではトップシート2表面)に対して起立する側部バリヤーを構成する。この起立部分の基端4bは側部バリヤーシート4における幅方向外側の固定部分4xと内側の部分4cとの境に位置する。なお、
図1中の右斜め上がりの斜線部分は側部バリヤーシート4の固着部分を示している。
【0034】
(フラップ部等)
使い捨ておむつ100の前後方向両端部では、液不透過性シート1、外装シート12、トップシート2及び側部バリヤーシート4が吸収体3の前後端よりも前後両側にそれぞれ延在され、吸収体3の存在しないエンドフラップ部EFが形成されている。一方、使い捨ておむつ100の左右両側部では、液不透過性シート1、外装シート12、トップシート2及び側部バリヤーシート4が吸収体3の側縁よりも側方にそれぞれ延在され、吸収体3の存在しないサイドフラップ部が形成されている。サイドフラップ部のうち腹側部分Fのウエスト側部分及び背側部分Bのウエスト側部分にそれぞれ位置する部分は、それらの間の中間部分よりも側方に延出されており、これらの部分が、おむつの胴周り部分となるウエスト側サイドフラップ部SFとなる。
【0035】
また、使い捨ておむつ100は、前後方向において、両側縁(脚開口の縁となる部分)Leが脚周りに沿う括れ曲線状をなす範囲として定まる股部Cと、この股部Cの前側及び後側にそれぞれ延出する部分であって、且つ両側縁が前後方向に沿う直線状をなす、腹側胴周り部TF及び背側胴周り部TBとを有する。
【0036】
(連結用突出部)
背側胴周り部TBには、その側縁からそれぞれ突出する連結パネル5が取り付けられるとともに、腹側胴周り部TFの表面に幅方向に沿ってフロントターゲットテープ6が貼り付けられている。連結パネル5は、背側胴周り部TBにおけるシート間にホットメルト接着剤等の手段により固定された固定部5fと、背側胴周り部TBの側縁のシート間から幅方向外側に突出する本体部5eとを有しており、本体部5eの前後方向中間に設けられたミシン目10を切り離すことによりウエスト側の連結用突出部51及び脚周り側の連結用突出部52に分離できるようになっている。
【0037】
図6に示す形態のように、ミシン目10により分割するのではなく、予め切断等によりウエスト側の連結用突出部51及び脚周り側の連結用突出部52が個別に形成されていてもよく、また図示しないが、別々に形成された連結用突出部51,52がウエスト側の部位及び脚周り側の部位にそれぞれ取り付けられていても良い。
【0038】
ウエスト側の連結用突出部51及び脚周り側の連結用突出部52の内面には、腹側部分Fの外面に着脱自在に連結されるフック材9を有する連結領域5cが設けられている。
図1に示す形態では、連結領域5cは、ウエスト側の連結用突出部51及び脚周り側の連結用突出部52の先端部にのみ設けられているが、
図6に示すように、幅方向に間隔を空けて複数個所に設けることもできる。フック材9は、メカニカルファスナー(面ファスナー)の雄材であり、シート状の基部9bと、この基部9bの表面から突出する多数のピン9p(フック状突起)とを有するものである(
図11、
図13参照)。フロントターゲットテープ6はピンが着脱可能に引っ掛かるループ6r(
図11参照)を表面に多数有するものであり、メカニカルファスナー(面ファスナー)の雌材が好適に用いられるが、本形態のように外装シート12に不織布を用いる場合には、この不織布の繊維がループとして機能するため、フロントターゲットテープ6を省略することもできる。
【0039】
連結パネル5は、十分な強度を有する不織布、特に複数層の不織布を積層したシート、ポリラミ不織布を好適に用いることができる。
【0040】
図5に示す形態のように、ウエスト側の連結用突出部51及び脚周り側の連結用突出部52は、本体部5eが幅方向に弾性伸縮する伸縮部を有していてもよい。伸縮部を形成するための手法は特に限定されず、例えば伸縮不織布やゴムシート等のようにそれ自体で弾性伸縮する素材で連結用突出部を形成することもできるが、図示形態では、各連結用突出部51,52の本体部5eのうち幅方向の少なくとも一部分を、第1のシートと第2のシートとを貼り合わせて形成するとともに、第1のシートと第2のシートとの間に弾性伸縮部材20を固定することにより、伸縮可能としている。弾性伸縮部材20としては、細長状のものの他、シート状のものも用いることができる。
【0041】
特徴的には、
図7に示すように、ウエスト側の連結用突出部51の連結領域5cは、先端側に向かって斜め上向きに連続する易折り曲げ部7を有しており、脚周り側の連結用突出部52の連結領域5cは、先端側に向かって斜め下向きに連続する易折り曲げ部7を有している。このため、
図9に示すように、ウエスト側の連結用突出部51を斜め下向きに、かつ脚周り側の連結用突出部52を斜め上向きにしてフロントターゲットテープ6に連結したとき、特に
図10に示すようにクロス止めしたとき、
図8に示すようにウエスト側の連結用突出部51の連結領域5cの易折り曲げ部7、及び脚周り側の連結用突出部52の連結領域5cの易折り曲げ部7がともに、幅方向又はそれに近い傾斜方向に沿う配置となるため、
図11(b)に点線で囲んで示すように、連結領域5cが前後方向変化に追従して折れ曲がりやすくなる。よって、クロス止めした装着状態で、腹部を折り曲げ、腹側部分Fにおけるフック材9の連結領域5cに幅方向に延びる皺が発生したときでも、連結領域5cが腹側部分Fの皺に追従して変形しやすくなり、フック材9の部分的剥離が発生しにくくなる。
【0042】
易折り曲げ部7はその連続方向と交差する方向に間隔を空けて複数本設けることが好ましいが、一本のみとすることもできる。易折り曲げ部7の太さ、間隔は適宜定めることができるが、通常の場合、易折り曲げ部7の連続方向と直交する方向における易折り曲げ部7の太さ7wは0〜5mm程度とすることが好ましく、易折り曲げ部7の連続方向と直交する方向における間隔7dは1〜10mm、特に3〜5mmとすることが好ましい。易折り曲げ部7の太さ7wは連続方向に一定であっても、変化してもよい。また、易折り曲げ部7は直線的に延びていることが好ましいが、曲線的に延びていてもよい。易折り曲げ部7を複数本設ける場合、すべての易折り曲げ部7の太さ7w、間隔7dを同じとするほか、異なるものとすることもできる。
【0043】
易折り曲げ部7の傾斜角度は、連結用突出部51,52の突出長さ等に応じて適宜定めれば良いが、通常の場合、幅方向に対する鋭角側交差角θ(易折り曲げ部7が曲線的に延びている場合は接線との交差角)が30〜60度であると、クロス止めしたときに易折り曲げ部7が幅方向に近くなりやすくなる。易折り曲げ部7を複数本設ける場合、すべての易折り曲げ部7の傾斜角度を同じ(平行)とするほか、異なるものとすることもできる。
【0044】
図12に示すように、ウエスト側の連結用突出部51の連結領域5c及び脚周り側の連結用突出部52の連結領域5cは、斜め方向の易折り曲げ部7に加えて、幅方向に沿って連続する易折り曲げ部7を有しているのも好ましい形態である。このような幅方向に沿って連続する易折り曲げ部7を有することにより、クロス止めせずに、ほぼ幅方向に沿う姿勢で連結用突出部51,52を腹側部分Fに連結したときでも、連結領域5cの前後方向の追従変形性が良好となる。ただし、易折り曲げ部7が様々方向に延びていると、連結領域5cの剛性が低くなるため、使用者によってはフロントターゲットテープ6に対して固定しにくくなるおそれがある。よって、図示形態のように、斜め上向きに連続する易折り曲げ部7、斜め下向きに連続する易折り曲げ部7、及び幅方向に沿って連続する易折り曲げ部7以外の方向に沿う易折り曲げ部7を有しないのも好ましい。
【0045】
易折り曲げ部7は、連結領域5cが折り曲がりやすくなる部分であり、例えば
図7に示すように、フック材9が複数の部分に分離された分離部9dが位置する部分とすることができる。この場合、複数のフック材9が易折り曲げ部7の連続方向と直交する方向に間隔を空けて又は空けずに並び、
図11にも示されるように、隣接するフック材9の間の部分が易折り曲げ部7となる。易折り曲げ部7がこのようなフック材9の分離部9dであると、追従変形性に優れるため好ましい。
【0046】
図13に示すように、易折り曲げ部7は、フック材9に形成された薄肉部9tが位置する部分とすることもできる。この場合、フック材9を細かく分割する必要がないため、製造が容易となる利点がある。
図13(a)に示される形態は、フック材9の基部9bに一方の面から厚み方向の途中まで切り込みctを入れることにより薄肉部9tを形成したものであり、
図13(b)に示される形態は、フック材9の基部9bに対して両面からほぼ同じ位置に切り込みctを入れることにより薄肉部9tを形成したものである。また、
図13(c)に示される形態は、エンボス加工によりフック材9の基部9bに一方の面から厚み方向の途中まで窪む溝ebを形成することにより薄肉部9tを形成したものであり、
図13(d)に示される形態は、エンボス加工によりフック材9の基部9bに両面から窪む溝ebを同じ位置に形成することにより薄肉部9tを形成したものである。
図13(e)に示される形態は、フック材9の基部9bを二層構造とし、ピン9pを有する側の層9b1を複数の部分に分離することにより、分離部9d分が薄肉部9tとなっている形態である。
【0047】
他方、上述の分離部9dによる易折り曲げ部7を備えた連結用突出部51,52は、以下のように製造すると、製造が容易となるため好ましい。すなわち、
図14(a)に示すように、まず、連結用突出部51,52を形成する基材8にフック材9を貼り付ける。そして、基材8への貼り付け後に、基材8を切断せずにフック材9のみを所定方向に連続的に切断する。これにより分離部9dが形成される、その後、
図14(b)にも示すように、フック材9の切断の方向と交差する方向に、基材8及びフック材9を引っ張り、基材8を延伸させるとともにフック材9を切断の位置で離間することにより、分離部9dが離間した複数のフック材9を有する連結領域5cを備えた連結用突出部51,52を製造することができる。
【0048】
図15(a)は、斜め方向に沿う切断により分離部9dを形成する形態の例であり、前述の
図7等に示す形態の易折り曲げ部7の製造を想定したものである。
図15(b)は、斜め方向及び幅方向に沿う切断により分離部9dを形成する形態の例であり、前述の
図12等に示す形態の易折り曲げ部7の製造を想定したものである。
図15(c)は、幅方向に沿う切断により分離部9dを形成する形態の例である。
【0049】
この場合、基材には、無延伸ポリプロピレン(CPP)や、低密度ポリエチレン(LDPE)等、延伸性に優れる物質からなるシートを用いることが好ましい。
【0050】
図示しないが、基材8への貼り付け後にフック材9を切断するのではなく、基材8への貼り付け前若しくは貼り付け後に、フック材9に所定方向に連続する易切り裂き線を形成し、その後の延伸により易切り裂き線でフック材9を複数の部分に分割することもできる。易切り裂き線は、他の部分より切り裂きやすい部分であり、ミシン目又は厚み方向全体にわたらない切り込みを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、上記例のようにテープタイプ使い捨ておむつに利用できるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…液不透過性シート、2…トップシート、3…吸収体、4…側部バリヤーシート、5…連結パネル、5c…連結領域、5e…本体部、51,52…連結用突出部、52…脚周り側の連結用突出部、51…ウエスト側の連結用突出部、6…ターゲットテープ、7…易折り曲げ部、9d…分離部、9t…薄肉部、8…基材、9…フック材、10…ミシン目、12…外装シート、20…弾性伸縮部材、F…腹側部分、B…背側部分。