(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のセラミックヒータにおいては、コート層が、酸化チタンを主成分として形成されており、金属材料を主成分としていることから、材料コストが高くなる虞がある。
【0006】
そこで、本開示の一側面は、流体加熱用のセラミックヒータにおいて、セラミックヒータの表面を被覆するコート層を備えるにあたり、コストを低減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面のセラミックヒータは、セラミック体と、コート層と、を備える。セラミック体は、発熱抵抗体を有する筒状に構成されている。コート層は、セラミック体の表面のうち少なくとも一部を被覆するように構成されている。
【0008】
コート層は、ガラスを主体として構成されるとともに、外面被覆層と、内面被覆層と、を備える。外面被覆層は、セラミック体の筒状外表面のうち少なくとも発熱抵抗体の形成領域を被覆するように構成されている。内面被覆層は、セラミック体の筒状内表面のうち少なくとも発熱抵抗体の形成領域を被覆するように構成されている。
【0009】
このようにコート層がガラスを主体として構成されることで、コート層が金属主体で構成される場合に比べて、材料コストを低減できる。とりわけ、コート層は、外面被覆層および内面被覆層を備えており、セラミックヒータにおけるコート層の材料使用量が大きいことから、コスト低減の効果を一層得ることができる。
【0010】
なお、このセラミックヒータは、外面被覆層および内面被覆層が、それぞれ、セラミック体の筒状外表面および筒状内表面のうち少なくとも発熱抵抗体の形成領域を被覆することから、セラミックヒータの表面にスケールが付着することを抑制できる。
【0011】
次に、本開示のセラミックヒータにおいては、外面被覆層は、セラミック体のうち発熱抵抗体の形成領域よりも先端側に位置する先端側領域の少なくとも一部を覆うように構成されてもよい。
【0012】
このような構成の外面被覆層を備えることで、セラミック体のうち先端側領域の少なくとも一部をコート層で保護することができ、他部材との衝突によりセラミック体の先端側領域が破損することをコート層で抑制できる。
【0013】
なお、必ずしもセラミック体の先端側領域の全体に外面被覆層を形成する必要はなく、例えば、セラミック体のうち先端面にはコート層を設けない構成であっても良い。このような構成を採ることで、コート層の影響によって、セラミックヒータの軸線方向全体寸法に誤差が生じるのを抑制できる。
【0014】
次に、本開示のセラミックヒータにおいては、外面被覆層は、発熱抵抗体の形成領域よりも先端側の先端側領域における自身の厚さ寸法の最大値が、発熱抵抗体の形成領域における自身の厚さ寸法の最大値よりも大きい構成であってもよい。
【0015】
このように、発熱抵抗体の形成領域ではなく先端側領域において厚さ寸法が最大値となる構成の外面被覆層を備えることで、セラミック体のうち先端側領域を保護し易くなり、他部材との衝突などによりセラミック体のうち先端側領域が破損することを抑制できる。
【0016】
次に、本開示のセラミックヒータにおいては、セラミック体は、発熱抵抗体の形成領域よりも先端側において、筒状外表面に段差部を備えてもよく、外面被覆層は、筒状外表面のうち段差部において自身の厚さ寸法が最大値となる構成であってもよい。
【0017】
つまり、段差部を備えるセラミック体においては、段差部は、他部材との衝突により破損しやすい部位となる。このようなセラミック体を備えるセラミックヒータにおいて、段差部において自身の厚さ寸法が最大値となる構成の外面被覆層を備えることで、セラミック体の段差部が他部材との衝突などにより破損することを抑制できる。
【0018】
次に、本開示のセラミックヒータにおいては、セラミック体は、セラミック製の筒状の支持体と、セラミックシートと、を備えてもよい。セラミックシートは、支持体の外周に巻き付けられ、発熱抵抗体を埋設して構成されている。
【0019】
このようなセラミックヒータによれば、支持体にセラミックシートを巻き付けることでセラミック体を得ることができるので、セラミック体の広範囲にわたり均一な発熱が可能な構成を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.実施形態]
[1−1.構成]
本実施形態のセラミックヒータ11は、例えば温水洗浄便座の熱交換ユニットの熱交換器において、洗浄水を温めるために用いられるものである。
【0022】
図1に示されるように、このセラミックヒータ11は、円筒状をなすセラミック製のヒータ本体13と、ヒータ本体13に外嵌されるフランジ15とを備えている。フランジ15は、例えばアルミナ等のセラミックスによって形成されている。また、ヒータ本体13とフランジ15とは、ガラスロウ材23にて接合されている。
【0023】
図1、
図2に示されるように、ヒータ本体13は、円筒状をなすセラミック製の支持体17と、支持体17の外周に巻き付けられたセラミックシート19とを備えて構成されている。支持体17は、軸先方向にわたり貫通する貫通孔17A(
図9,
図10参照)を備えた円筒形状に形成されている。本実施形態において、支持体17及びセラミックシート19は、アルミナ(Al
2O
3)等のセラミックからなる。アルミナの熱膨張係数は、50×10
−7/K〜90×10
−7/Kの範囲内であり、本実施形態においては、70×10
−7/K(30℃〜380℃)となっている。
【0024】
また、本実施形態では、支持体17の外径が12mm、内径が8mm、長さが65mmに設定され、セラミックシート19の厚さが0.5mm、長さが60mmに設定されている。なお、セラミックシート19は、支持体17の外周を完全には覆っていない。このため、セラミックシート19の巻き合わせ部20には、支持体17の軸線方向に沿って延びるスリット21が形成されている。また、本実施形態において、支持体17及びセラミックシート19の表面のうち少なくとも一部は、釉薬層61によって覆われている。
【0025】
釉薬層61は、SiをSiO
2換算にて60〜74重量%、AlをAl
2O
3換算にて16〜30重量%含有したガラスセラミックとして構成される。すなわち、釉薬層61は、無鉛物質から構成される。なお、無鉛物質とは、鉛を含まない物質を表す。ただし、無鉛物質は、完全に鉛を含まない物質に限らず、還元雰囲気に晒されたときに、鉛を含むことによる変色が目視できない程度であれば、ごく微量の鉛が含まれる物質であってもよい。
【0026】
また、釉薬層61は、塗布された釉薬を焼成することによって形成される。本実施形態の釉薬層61に用いる釉薬には、転移点830℃、屈伏点900℃以上、融点1128℃のものが用いられる。
【0027】
なお、転移点とは、熱膨張曲線の傾きが急激に変化する温度を示す。また、屈伏点とは、熱膨張測定においてガラスの軟化によりガラスの伸びが検出できなくなり、熱膨張曲線の屈曲点として現れる温度を示す。
【0028】
また、釉薬層61の熱膨張係数は、60×10
−7/K(30〜700℃)のものを用いている。すなわち、釉薬層61は、ヒータ本体13の支持体17よりも熱膨張率が小さくなるように構成されているとよい。
【0029】
釉薬層61は、自身の屈伏点が当該セラミックヒータ11使用時の最高温度以上となるように材料が選択される。なお、釉薬層61の屈伏点に応じてヒータ配線41の仕様が決定されてもよい。ここで、セラミックヒータ11使用時の最高温度とは、例えば、当該セラミックヒータ11使用時の最大出力でヒータ配線41を発熱させたときのヒータ配線41の温度を意味する。
【0030】
つまり、釉薬層61がヒータ配線41によって釉薬の屈伏点以上の温度にならないように釉薬やヒータ配線41の出力等が設定される。
図2、
図3に示されるように、セラミックシート19には、蛇行したパターン形状のヒータ配線41と、一対の内部端子42とが内蔵されている。本実施形態において、ヒータ配線41及び内部端子42は、タングステン(W)を主成分として含んでいる。なお、各内部端子42は、図示しないビア導体等を介して、
図1に示すように、セラミックシート19の外周面に形成された外部端子43に電気的に接続されている。
【0031】
また、ヒータ配線41は、支持体17の軸線方向に沿って延びる複数の配線部44と、隣接する配線部44同士を接続する接続部45とを備えている。セラミックシート19を厚さ方向から見たときに両端部に位置する一対の配線部44は、
図2に示すセラミックシート19の巻き合わせ部20を挟んで互いに反対側に配置されており、第1端が内部端子42に接続されるとともに、第2端が接続部45を介して隣接する配線部44の第2端に接続されている。
【0032】
なお、第1端とは、
図3では上端を示し、第2端とは、
図3では下端を示す。また、セラミックシート19を厚さ方向から見たときに上記した一対の配線部44間に位置する配線部44は、第1端が接続部45を介して隣接する配線部44の第1端に接続されるとともに、第2端が接続部45を介して隣接する配線部44の第2端に接続されている。
【0033】
図2、
図3に示されるように、本実施形態の配線部44は、線幅W1が0.60mm、厚さが15μmに設定されている。同様に、本実施形態の接続部45も、線幅W2が0.60mm、厚さが15μmに設定されている。すなわち、配線部44の線幅W1は、接続部45の線幅W2と同一になっている。また、配線部44の厚さも接続部45の厚さと同一であるため、配線部44の断面積は、接続部45の断面積と同一になっている。
【0034】
なお、
図2に示されるように、セラミックシート19において、後にヒータ配線41となる配線部44の表面46からセラミックシート19の外周面47までの厚さtは、0.2mmとなっている。また、巻き合わせ部20において、配線部44の端縁からセラミックシート19の端面48までの距離wは、0.7mmである。ここで、「距離w」とは、円筒状をなす支持体17の周方向に沿った長さをいう。さらに、巻き合わせ部20を挟んで互いに反対側に配置される一対の配線部44間の距離Lは、2.4mmである。ここで、「距離L」とは、一対の配線部44の端縁同士をつなぐ直線の長さをいう。なお、巻き合わせ部20に形成されたスリット21の幅は、L−2wの式から導き出されるものであり、本実施形態では1mmとなっている。
【0035】
次に、
図10に示すように、釉薬層61は、外面被覆層61Aと、内面被覆層61Bと、を備えている。
外面被覆層61Aは、ヒータ本体13(支持体17,セラミックシート19)の筒状外表面のうち少なくともヒータ配線41の形成領域を被覆するように構成されている。内面被覆層61Bは、ヒータ本体13(支持体17,セラミックシート19)の筒状内表面(貫通孔17Aの内表面)のうち少なくともヒータ配線41が配置された領域Hを被覆するように構成されている。
【0036】
また、外面被覆層61Aは、ヒータ本体13(支持体17,セラミックシート19)のうちヒータ配線41が配置された領域Hよりも先端側に位置する先端側領域Fの少なくとも一部を覆うように構成されている。さらに、外面被覆層61Aは、先端側領域Fにおける自身の厚さ寸法の最大値T2が、領域Hにおける自身の厚さ寸法の最大値T1よりも大きい構成である(T2>T1)。
【0037】
また、ヒータ本体13は、領域Hよりも先端側の先端側領域Fにおいて、筒状外表面に段差部19Aを備えている。段差部19Aは、セラミックシート19の先端部でもあり、ヒータ本体13の筒状外表面のうち径方向寸法が変化する部位でもある。
【0038】
そして、外面被覆層61Aは、ヒータ本体13の筒状外表面のうち段差部19Aにおいて、自身の厚さ寸法が最大値T2となる構成である。
[1−2.製造方法]
次に、本実施形態のセラミックヒータ11を製造する方法を説明する。
【0039】
まず、アルミナを主成分とする粘土状のスラリーを従来周知の押出機(図示略)に投入し、筒状部材を成形する。そして、成形した筒状部材を乾燥させた後、所定の温度(例えば約1000℃)に加熱する仮焼成を行うことにより、
図4に示すような支持体17を得る。
【0040】
また、アルミナ粉末を主成分とするセラミック材料を用いて、セラミックシート19となる第1,第2のセラミックグリーンシート51,52を形成する。なお、セラミックグリーンシートの形成方法としては、ドクターブレード法などの周知の成形法を用いることができる。
【0041】
そして、従来周知のペースト印刷装置(図示略)を用いて、第1のセラミックグリーンシート51の表面上に導電性ペーストを印刷する。本実施形態では、導電性ペーストとしてタングステンペーストを採用する。その結果、
図5に示すように、第1のセラミックグリーンシート51の表面上に、ヒータ配線41及び内部端子42となる未焼成電極53が形成される。なお、未焼成電極53の位置は、例えば、ヒータ配線41の位置に対して焼成時の収縮分を加えた大きさとなるように調整される。
【0042】
そして、導電性ペーストの乾燥後、第1のセラミックグリーンシート51の印刷面、すなわち、未焼成電極53の形成面上に、第2のセラミックグリーンシート52を積層し、シート積層方向に押圧力を付与する。その結果、
図6に示すように、各セラミックグリーンシート51,52が一体化され、グリーンシート積層体54が形成される。
【0043】
なお、第2のセラミックグリーンシート52の厚さは、例えば、ヒータ配線41の配線部44のうち最も外側に配置された配線部44からセラミックシート19の外周面47までの厚さtに対して焼成時の収縮分を加えた大きさとなるように調整される。さらに、ペースト印刷装置を用いて、第2のセラミックグリーンシート52の表面上に導電性ペーストを印刷する。その結果、第2のセラミックグリーンシート52の表面上に、外部端子43となる未焼成電極55が形成される。
【0044】
次に、
図7に示すように、グリーンシート積層体54の片側面にアルミナペースト等のセラミックペーストを塗布し、グリーンシート積層体54を支持体17の外周面18に巻き付けて接着する。このとき、グリーンシート積層体54の端部同士が重ならないようにグリーンシート積層体54のサイズを調節する。
【0045】
次に、未焼成電極55よりも先端側の所定の領域に対して釉薬を塗布し、周知の手法に従って乾燥工程や脱脂工程などを行った後、グリーンシート積層体54のアルミナ及びタングステンが焼結しうる所定の温度に加熱する同時焼成を行う。ここでの所定の温度には、例えば、1400℃〜1600℃程度の温度を採用できる。
【0046】
その結果、セラミックグリーンシート51,52中のアルミナ、及び、導電性ペースト中のタングステンが同時焼結し、グリーンシート積層体54がセラミックシート19となり、未焼成電極53がヒータ配線41及び内部端子42となり、未焼成電極55が外部端子43となる。また、外部端子43よりも先端側の所定の領域において、釉薬層61が形成される。
【0047】
この際の釉薬の塗布に関しては、例えば、セラミックシート19が焼結された支持体17を支持体17の先端側、すなわち、支持体17において外部端子43から遠い側の端部を鉛直方向の下側に向けて、支持体17の先端側から規定の位置まで釉薬が溜められた槽に浸すことによって、釉薬を塗布する。
【0048】
ただし、規定の位置とは、
図1および
図3に示すように、セラミックシート19のうちのヒータ配線41が配置された領域を領域Hとしたときに、この領域Hの全体を覆う位置であって、外部端子43が覆われない位置を示す。
図1では、ハッチングされた領域が釉薬層61を形成した領域を示す。なお、領域Hは、ヒータ配線41が折り返して配置される範囲内を示す。
【0049】
この工程によって、釉薬は、ヒータ本体13の表面のうちの外周面および内周面に塗布され、これを焼成することによって、釉薬層61がヒータ本体13の表面のうちの外周面および内周面を被覆することになる。
【0050】
なお、釉薬層61の厚さは、釉薬の粘度を調整することで任意に設定することができる。また、釉薬を塗布する手法は、刷毛で塗る手法や吹付け等、任意の手法を採用することができる。これらの手法を用いることで、釉薬層61の厚さ寸法に関して、先端側領域Fにおける外面被覆層61Aの厚さ寸法の最大値T2が、領域Hにおける外面被覆層61Aの厚さ寸法の最大値T1よりも大きい構成となるように(T2>T1)、釉薬の塗布状態を調整する。本実施形態では、ヒータ本体13の筒状外表面のうち段差部19Aにおいて、外面被覆層61Aの厚さ寸法が最大値T2となるように、釉薬の塗布状態を調整する。また、本実施形態では、ヒータ本体13のうち支持体17の先端面17Bには釉薬層61が形成されないように、先端面17Bに塗布された釉薬を焼成前に除去する工程を実施する。なお、釉薬層61の厚さ(詳細には、外面被覆層61Aおよび内面被覆層61Bのそれぞれの最大厚さ寸法)は、グリーンシート積層体54の厚さよりも薄くなるように塗布時に調整される。
【0051】
その後、外部端子43にニッケルめっきを施し、ヒータ本体13とする。なお、釉薬層61は焼結後のヒータ本体13に対し、釉薬を塗布しこれを焼き付けることで形成してもよい。
【0052】
次に、アルミナ性のフランジ15を、ヒータ本体13の所定の取付位置に外嵌する。すなわち、フランジ15は、
図1および
図8に示すように、中央に挿通孔15Aを有する円筒状に形成されており、
図1および
図9に示すように、挿通孔15Aにヒータ本体13を挿通した状態で保持される。
【0053】
この際、
図1に示すように、ガラスロウ材23を介してヒータ本体13とフランジ15とを溶着固定し、セラミックヒータ11を完成させる。ここで、ガラスロウ材23には、例えば、日本電気硝子製のBH−W等の材料を用いることができる。この材料を用いる場合、ガラスロウ材23は、転移点470℃、屈伏点550℃となる。
【0054】
すなわち、釉薬およびガラスロウ材23は、釉薬層61の屈伏点がガラスロウ材23の屈伏点以上の温度となるように設定される。
[1−3.実験例]
以下、本実施形態のセラミックヒータ11の性能を評価するために行った実験例について説明する。
【0055】
まず、測定用サンプルを次のように準備した。ヒータ配線の表面からセラミックシートの外周面までの厚さtが0.18mm、ヒータ配線の端縁からセラミックシートの端面までの距離wが0.6mm、巻き合わせ部を挟んで互いに反対側に配置される一対の配線部間の距離Lが1.4mm、巻き合わせ部に形成されたスリットの幅(=L−2w)が0.2mmとなるセラミックヒータを準備し、これに釉薬層を形成しサンプルAとした。なお、厚さt、距離w、距離Lについては
図2にて示す定義に従う。
【0056】
また、比較例として、釉薬層61を備えないセラミックヒータを準備し、これをサンプルBとした。なお、サンプルA,Bの違いは、釉薬層の有無のみであり、その他の構成は同一である。なお、このとき、サンプルAの表面の算術平均表面粗さ(Ra)は、サンプルBの表面の算術平均表面粗さ(Ra)よりも小さかった。これより、釉薬層の算術平均表面粗さ(Ra)は、セラミックシート表面の算術平均表面粗さ(Ra)よりも小さいということが云える。また、釉薬層61の厚さは、セラミックシートの厚さよりも薄かった。
【0057】
サンプルA,Bを同条件にて水道水中にて水道水を流動させつつヒータを作動させたところ、サンプルBに付着するスケールの量に対して、サンプルAに付着するスケールの量が減少するという結果が得られた。
【0058】
[1−4.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)セラミックヒータ11は、ヒータ本体13と、釉薬層61と、を備える。ヒータ本体13は、ヒータ配線41を有する筒状に構成されている。釉薬層61は、ヒータ本体13の表面のうち少なくとも一部を被覆するように構成されている。
【0059】
釉薬層61は、ガラスを主体として構成されるとともに、外面被覆層61Aと、内面被覆層61Bと、を備える。外面被覆層61Aは、ヒータ本体13の筒状外表面のうち少なくともヒータ配線41の形成領域(領域H)を被覆するように構成されている。内面被覆層61Bは、ヒータ本体13の筒状内表面のうち少なくともヒータ配線41の形成領域(領域H)を被覆するように構成されている。
【0060】
このように釉薬層61(コート層)がガラスを主体として構成されることで、コート層が金属主体で構成される場合に比べて、材料コストを低減できる。とりわけ、釉薬層61は、外面被覆層61Aおよび内面被覆層61Bを備えており、セラミックヒータ11における釉薬層61の材料使用量が大きいことから、コスト低減の効果を一層得ることができる。
【0061】
なお、このセラミックヒータ11は、外面被覆層61Aおよび内面被覆層61Bが、それぞれ、ヒータ本体13の筒状外表面および筒状内表面のうち少なくともヒータ配線41の形成領域(領域H)を被覆することから、セラミックヒータ11の表面にスケールが付着することを抑制できる。
【0062】
(1b)セラミックヒータ11においては、外面被覆層61Aは、ヒータ本体13のうちヒータ配線41の形成領域(領域H)よりも先端側に位置する先端側領域Fの少なくとも一部を覆うように構成されている。
【0063】
このような構成の外面被覆層61Aを備えることで、ヒータ本体13のうち先端側領域Fの少なくとも一部を釉薬層61(外面被覆層61A)で保護することができ、他部材との衝突によりヒータ本体13の先端側領域Fが破損することを釉薬層61(外面被覆層61A)で抑制できる。
【0064】
なお、必ずしもヒータ本体13の先端側領域Fの全体に釉薬層61を形成する必要はなく、本実施形態では、ヒータ本体13のうち支持体17の先端面17Bには釉薬層61を設けない構成を採用している。このような構成を採ることで、釉薬層61の影響によって、セラミックヒータ11の軸線方向全体寸法に誤差が生じるのを抑制できる。
【0065】
(1c)セラミックヒータ11においては、ヒータ配線41の形成領域(領域H)よりも先端側の先端側領域Fにおける外面被覆層61Aの厚さ寸法の最大値T2が、ヒータ配線41の形成領域(領域H)における外面被覆層61Aの厚さ寸法の最大値T1よりも大きい構成である。
【0066】
このように、ヒータ配線41の形成領域(領域H)ではなく先端側領域Fにおいて厚さ寸法が最大値となる構成の外面被覆層61Aを備えることで、ヒータ本体13のうち先端側領域Fを保護し易くなり、他部材との衝突などによりヒータ本体13のうち先端側領域Fが破損することを抑制できる。
【0067】
(1d)セラミックヒータ11においては、ヒータ本体13は、ヒータ配線41の形成領域(領域H)よりも先端側において、筒状外表面に段差部19Aを備えている。外面被覆層61Aは、筒状外表面のうち段差部19Aにおいて自身の厚さ寸法が最大値T2となる構成である。
【0068】
つまり、段差部19Aを備えるヒータ本体13においては、段差部19Aは、他部材との衝突により破損しやすい部位となる。このようなヒータ本体13を備えるセラミックヒータ11において、段差部19Aにおいて自身の厚さ寸法が最大値となる構成の外面被覆層61Aを備えることで、ヒータ本体13の段差部19Aが他部材との衝突などにより破損することを抑制できる。
【0069】
(1e)セラミックヒータ11においては、ヒータ本体13は、セラミック製の支持体17と、セラミックシート19と、を備える。セラミックシート19は、支持体17の外周に巻き付けられ、ヒータ配線41を埋設して構成されている。
【0070】
このようなセラミックヒータ11によれば、支持体17にセラミックシート19を巻き付けることでヒータ本体13を得ることができるので、ヒータ本体13の広範囲にわたり均一な発熱が可能な構成を実現できる。
【0071】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0072】
(2a)上記実施形態では、セラミックヒータ11の支持体17が筒状をなしていたが、これに限定されるものではない。例えば、支持体17は、棒状や板状をなしていてもよい。すなわち、セラミックヒータ11は、例えば、ファンヒータ、電気温水器、24時間風呂等、温水洗浄便座とは別のものに用いられてもよい。
【0073】
(2b)上記実施形態では、セラミックヒータ11は、一対の内部端子42間に印加される電圧の種別については規定していないが、交流電圧が印可されてもよいし、直流電圧が印可されてもよい。
【0074】
(2c)上記実施形態では、セラミックヒータ11は、釉薬層61を形成したが、これに限定されるものではない。例えば、ガラスを主体とし、鉄等の金属を微量混合したコート層であってもよい。
【0075】
(2d)上記実施形態では、釉薬層61の外面被覆層61Aにおける厚さ寸法の最大値T2となる部位が、段差部19Aに対応する位置に形成される構成について説明したが、外面被覆層61Aは、このような構成に限られることはない。例えば、先端側領域Fにおいて、最大値T2となる部位が形成される構成の外面被覆層61Aであってもよい。
【0076】
(2e)上記実施形態では、ヒータ本体13のうち支持体17の先端面17Bには釉薬層61を設けない構成について説明したが、このような構成に限られることはない。例えば、先端面17Bに釉薬層61を設けた構成のセラミックヒータであってもよい。
【0077】
(2f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0078】
(2g)上述したセラミックヒータ11の他、当該セラミックヒータ11を構成要素とするシステムなど、種々の形態で本開示を実現することもできる。
[3.文言の対応関係]
ヒータ配線41は発熱抵抗体の一例に相当し、ヒータ本体13はセラミック体の一例に相当する。また、釉薬層61はコート層の一例に相当する。