【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によるマルチコア光ファイバでは、離隔されたコアによって空間的な信号の乗算(multiplication)が可能となる。「離隔されたコア」という言葉は、コア間のクロストークが最小の許容可能レベルに維持される状況として理解するものとする。コアの離隔は、光ファイバ微細構造の特徴によって容易になる。すなわち、本発明による光ファイバでは、クラッドの屈折率に対して屈折率を低下させた空間によってコアを相互に分離させる。この空間は、例えばガス、好ましくは空気又は流体又はポリマーが充填された孔、又は屈折率を低下させることが可能なドーピングを行った別のガラスの空間の形態をとり得る。更に、本発明によるマルチコア光ファイバは、例えばセンサ用途のような電気通信でない用途に用いることも可能である。
【0019】
本発明による微細構造マルチコア光ファイバは、複数の基本セルを内包するものであって、基本セルの各々は、
クラッドのファイバ材料の屈折率よりも屈折率が
増加したドーピングされた石英ガラ
スから作られたコアと、クラッドのファイバ材料の屈折率よりも屈折率が低く
い流体を充填した孔の形態をとることができ、格子定数の距離内に存在する長手領域と、を含んでいる。微細構造マルチコア光ファイバは、コアを取り囲む上記長手領域を辺の長さが格子定数Λの2倍に等しい六角形の外周上に配置し、コアを上記長手領域)によって作られた六角形の中心に有する少なくとも2つの基本セルを含んでいる。
【0020】
コアの外側であって、コア
を取り囲む長手領域の内側エリアは、好ましくはガラス、特に石英ガラス
、又はポリマーで作製され、内側クラッドを
作っている。孔により作られる
長手領域は、内側微細構造クラッドを構成する。基本セルの内側微細構造クラッドの外側エリアは外側クラッドで作られる。コアが配置されているエリア、並びに内側クラッド及び内側微細構造クラッドが、共に微細構造エリアを構成する。
【0021】
上記微細構造の第1の基本セルは、好ましくはマルチコア光ファイバの幾何学的中心に配置され、他の基本セルは、辺又は頂点が第1の基本セルに付着している。相互に並置された他の基本セルがコア周囲の孔を共有すると有利である。
【0022】
第1の基本セルがマルチコア光ファイバの幾何学的中心に配置されていない場合は、本発明による微細構造エリアの幾何学的な重心を
本発明によるマルチコア光ファイバの幾何学的中心に局部配置すると有利である。
【0023】
マルチコア光ファイバの外側クラッドの直径D1は、微細構造に埋め込まれる基本セルの数に応じて自由に選択されるが、好ましくは、最も外側の孔から石英ガラス母材の縁(外側クラッドの縁)までの距離を
最低限30μmに維持する。
【0024】
光ファイバの幾何学的中心に基本セルが局部配置された微細構造の場合、この基本セルを取り囲む基本セルが、いわゆる第1のリングを形成する。これらの基本セルが共通の辺を有する場合、第1のリングのコアは六角形の頂点にあり、この六角形の辺bは、格子定数の3倍にaを乗算した値に等しい。ここで、a=2/3×√3である。これらの基本セルが頂点を共有する場合、第1のリングのコアは六角形の頂点にあり、六角形の辺bは格子定数の4倍の値に等しい。
【0025】
基本セルのコアに続くリングは、これらの基本セルが共通の辺を有する場合、六角形の頂点及び辺の中点に配置され、この六角形の辺は、格子定数の6倍の値にaを乗算した値に等しい。ここでa=2/3×√3である。これらの基本セルが頂点を共有する場合、第1のリングのコアは六角形の頂点に配置され、この六角形の辺dは格子定数の8倍の値に等しい。
【0026】
後続の各リングについて、乗数aは算術的な増大を示し、リング数が増えた場合は、マルチコア光ファイバの外側クラッドの寸法の拡大を検討しなければならない。
【0027】
コア材料と
外側及び内側クラッド材
料との間の屈折率の差は
、光波長λ=1550nmにおいてΔ=5.63×10
−3±2.9×10
−3に等しい。
【0028】
また、格子定数Λ
は(7.8±3.6)μmに等しく、光ファイバのコア直径
は(0.7±0.46)×Λに等しく、空気が充填された孔の直径
は(0.7±0.3)×Λに等しく、クラッド直径
はΛ×13+(50±20)μmに等し
い。
【0029】
増幅を伴う信号伝送に本発明を適用する場合
、光ファイバのコアに
、希土類のイオンを
ドーピングする。コアに3×10
18/cm
−3〜120×10
18/cm
−3のレベルで
エルビウムをドーピングし、これによって、コアとクラッドとの屈折率の差を
、光波長λ=1550nmにおいてΔ=2.5×10
−2−2.1×10
−2〜2.5×10
−2+1.6×10
−2とす
る。
【0030】
好ましくは、格子定数Λが(7.8±3.6)μmに等しく、ファイバコアの直径が(0.5±0.46)×Λに等しく、空気が充填された孔の直径が(0.6±0.3)×Λに等しく、クラッドの直径がΛ×13+(50±20)μmに等しい
のが望ましい。
【0031】
アクティブなバージョンで光ファイバを伝送に用いる場合、光ファイバ微細構造を
、流体が充填された追加の孔エリア(孔とも称する)で取り囲んで、追加クラッドを設けると有利である。追加の孔エリア(外側微細構造クラッドとも称する)は、微細構造エリアを取り囲む。外側微細構造クラッドは、外側クラッドを2つのエリアに分割する。すなわち、外側微細構造クラッドと微細構造エリアの外側の孔との間に位置する近位外側クラッドのエリアと、外側微細構造クラッドの外側で光ファイバの縁まで位置する遠位外側クラッドのエリアである。
【0032】
光ファイバの微細構造が
、流体
で充填され、外側微細構造クラッドと称する追加クラッドを構成する追加の領域で取り囲まれているとき、追加クラッドを有する上記光ファイバの上記外側微細構造クラッドの一部である上記追加の領域は、好ましくは六角形及び円形から選択された形態の外周上に配置される。光ファイバの自由に選択された基本セル(複数の基本セル)は、長手領域によって部分的に囲まれている。
【0033】
これにより、外側微細構造クラッドの孔の直径は格子定数Λよりも小さいことが好ましい。外側微細構造クラッドを構成する孔が六角形の辺及び頂点上にあり、外側微細構造クラッドの孔の中心間の距離が格子定数Λに等しい場合、外側微細構造クラッドに含まれる孔は、好ましくは円形の断面を示し、好ましくは少なくとも30μmの距離にある。また、追加クラッドを有する光ファイバの場合、内側微細構造クラッドを構成する孔の直径が、格子定数に比べて好ましくは(20±15)%小さいことが好ましい。
【0034】
光ファイバの切断(cleaving)をある程度容易にすることが好ましく、好ましくは微細構造の基本セルの最も外側の孔を使用せず、及び/又は孔のサイズに自由に差を付ける。接合を容易にするため、光ファイバ
の微細構造において、いわゆる1つのマーカ又は複数のマー
カを用いることが好ましい。
【0035】
本発明による
微細構造マルチコア光ファイバのコアを指定する装置は、キャピラリ内に並列配置された複数のシングルコアシングルモード光ファイバ(シングルモード光ファイバとも称する)を、本発明によるマルチコア光ファイバのコアの数に対応した数だけ含み、シングルモード光ファイバを収容した前記キャピラリは、本発明によるマルチコア光ファイバに接続され、キャピラリ内の
シングルモード光ファイバの断面及びマルチコア光ファイバの断面が、それらの構成において平行である。シングルモード光ファイバを収容したキャピラリ内に、上記マルチコア光ファイバの接続されないコアの数に対応した数のガラスロッドがあり、キャピラリが、長手方向の
伸長と組み合わせて、温度の影響下で幾何学的寸法が変化しやすい、ドーピングされていない石英ガラス及びポリマーから選択された材料で作製されている。
【0036】
本発明による微細構造光ファイバの全てのコアを指定しない場合、キャピラリ内のシングルモード光ファイバを、シングルモード光ファイバの直径に等しい直径を有するガラスロッドで置き換えてもよい。キャピラリ内のガラスロッドの数は、シングルモード光ファイバに接続されないマルチコア光ファイバのコア数に対応する。システム製造の別の例では、本発明によるマルチコア光ファイバのコアの数又は配置が、中央のマルチコア光ファイバのコアの周りに閉じたリングの構造を構成しない場合、ガラスロッドは、本発明によるマルチコア光ファイバのコアを指定するための装置構造の充填材となる。
【0037】
ガラス又はポリマーのキャピラリは、長手方向の
伸長と組み合わせて、温度の影響下で幾何学的寸法が変化しやすい材料で作製される。キャピラリの長さは、好ましくは光ファイバ要素の加工/接続工程で、フィラメント接続機(filament splicer)に基づいて加熱しながら
伸長する装置に搭載できるように適宜選択される。ガラスキャピラリは、ドーピングされていない石英ガラスで作製することが好ましい。
【0038】
本発明による微細構造マルチコア光ファイバの
、コアを指定するための装置の製造方法は、以下の
各段階を含む。
1.マルチコア光ファイバのコアの数、コアの直径、及びコア間の距離を求めてマルチコア光ファイバの
微細構造を解析する。
2.マルチコア光ファイバを接続するシングルモード光ファイバのコア及びクラッドの直径を測定し、シングルモード光ファイバのテーパ化の程度を決定する。
3.シングルモード光ファイバのクラッドを除去し、その表面を洗浄する。
4.実行され得るテーパ化及び相互再組み立ての後で、マルチコア光ファイバのコアとシングルモード光ファイバのコアとの位置合わせが可能となるように、シングルモード光ファイバの露出した洗浄済みの部分(fragment)
をエッチングする。
5.計算したテーパ化の程度に従ってシングルモード光ファイバをテーパ化して、マルチコア光ファイバのコア直径の寸法に等しいコア直径を達成可能とす
る。
6.シングルモード光ファイバ及びガラスロッドを挿入することができ、挿入された要素が自由に動けないか又は動きが制限されるようなサイズにテーパ化することによって、キャピラリを準備する。
7.シングルモード光ファイバ及びガラスロッドをキャピラリ内に収容する。
8.加熱及び
伸長によってキャピラリ内に収容し接合した
微細構造物をテーパ化及び固定す
る。
9
.光ファイバ用カッターを用いて、長手方向のキャピラリの軸に対して直角に、接合した
微細構造物を収容したキャピラリを切断
し、キャピラリ表面を、キャピラリ内に収容した
微細構造物と共に研磨する。
10.マルチコア光ファイバを切断し
、その表面を研磨する。
11.キャピラリ及び内部に収容され接合された
微細構造物をマルチコア光ファイバに対して配向する。
12.
接合技術として開示されているいずれかの最新技術によって、キャピラリ及びその内部の
微細構造物にマルチコア光ファイバを接続する。
【0039】
エッチングプロセスは、好ましくは約40%の濃度のフッ化水素酸を用いて、好ましくは21℃の温度で実行する。
【0040】
キャピラリ及びそ
の内部
の微細構造物のテーパ化は、
接合されたシングルモード光ファイバを備えたキャピラリが内部
の微細構造物に固定されるように行うのが好ましい。
【0041】
この場合、シングルモード光ファイバの直径が、マルチコア光ファイバのコア間の距離よりも著しく大きいときには
、テーパ化及びエッチングの
前記段階4,5を入れ替えてもよく、接続される
マルチコア光ファイバの幾何学的形状に応じて、前記段階
4,5を省略してもよい。
【0042】
マルチコア光ファイバのコアがシングルモード光ファイバのコアの直径と異なる直径を有する場合、テーパ化は、キャピラリ内の
微細構造物としてのシングルモード光ファイバのコアの直径がマルチコア光ファイバのコアの直径と等しくなるまで継続し、本発明による光ファイバの直径が、これに接続されるシングルモード光ファイバの直径よりも大きい場合は、シングルモード光ファイバをキャピラリ内でテーパ化した後、本発明による光ファイバもテーパ化するのがよい。
【0043】
マルチコア光ファイバ及びキャピラリ内の構造物の配向は、好ましくは、マルチコア光ファイバのコアの1つに光が送出されるように行われると共に、融着しながら、キャピラリ内のシングルモード光ファイバの1本にパワーのどの部分が伝達されたかを調べることによって、組み立てられる融着接合を制御するように行う。別の組立例では、キャピラリ内のシングルモード光ファイバの1本に光が送出されると共に、融着しながら、マルチコア光ファイバのコアの1つにパワーのどの部分が伝達されたかを調べる。
【0044】
接合は、いずれかに開示するガラスプロセッサ、好ましくはガラス加工台を用いて実行される。外径が250μm以下のマルチコア光ファイバでは、フィラメント融着機を用いることが好ましく、直径がもっと大きい場合は、フィラメント融着機に基づいて光ファイバ要素を加工/接続するための台上で融着を実行することが好ましい。また、シングルモード光ファイバ、キャピラリ、及び内部構造物が収容されたキャピラリのテーパ化を、フィラメント融着機を用いて、又はフィラメント融着機に基づく光ファイバ加工/接続台を用いて実行することが好ましい。
【0045】
接合しながら、マルチコア光ファイバの直径及び内部構造物を含むキャピラリの幾何学的形状に応じて、ガラス加工台の加熱要素のパワーは、光学損失が小さく耐久性の高い機械的接続を保証するレベルに選択する。フィラメントパワーレベルに関係した特定のファイバ直径、融着時間、融着前の遅延、光ファイバ相互のシフト距離、及び光ファイバ間の距離についての設定値は、融着の前に実験的に選択される。
【0046】
信号増幅の必要がない短い導波(guidance)距離の場合、本発明による微細構造導波マルチコア光ファイバは、コアを指定するための2つの装置の間に配置される。これらの装置の一方は、送信器と標準的なシングルモード光ファイバとを用いて信号を特定のコアに送出することができ、第2の装置は、特定のコアからの信号を受信し、これを標準的なシングルモード光ファイバを介して再び送出することができる。
【0047】
信号増幅が必要である伝送距離の場合、伝送システムを以下のように構成することが好ましい。送信器からの信号を、シングルモード光ファイバを介して、コアを指定するための装置に送信する。次いでこの信号を、本発明による微細構造ファイバを介して導波する。増幅が必要とされる距離である場合、1つの電気通信ライン内で循環的に、増幅モジュールを設置する。増幅モジュールを用いた光増幅の後、信号は、本発明による微細構造マルチコア光ファイバを介して更に導波される。コアを指定するための装置によって、特定のコアからの信号をシングルモード光ファイバに送出する。このようにして信号を受信器まで伝送する。増幅モジュールは2つの指定装置から成る。その一方は、微細構造マルチコア光ファイバの特定のコアからの信号をシングルモード光ファイバに送出し、他方は、光ファイバからの信号を微細構造マルチコア光ファイバのコアに伝達することができる。このモジュールでは、シングルモード光ファイバを介した信号導波ライン上に、一体型の光ファイバ増幅要素がある。このような要素は、例えば市販のエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)とすればよい。
【0048】
また、追加クラッドが適用された本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバを用いて増幅を行うことも可能である。これにより、横励起として、又は本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバの前面からの励起として、励起を実行することができる。横励起及び前面励起の技術は開示されており、伝送システムのこの変形に適用するために何の変更も必要ない。直接励起を用いる伝送システムの変形は、送信器からの信号を、標準的なシングルモード光ファイバを介して、本発明による個別コア指定装置に導波するという特徴がある。次いで信号を、本発明による微細構造マルチコア光ファイバを介して導波する。信号増幅が必要な距離を信号伝送する場合、増幅モジュールを用いる(また、1つの電気通信ライン内で循環的に)。増幅モジュールにおいて、本発明による微細構造マルチコア光ファイバは、いずれかの開示技術によって、本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバに接続されている。この接続は、光ファイバ(複数の光ファイバ)励起を用いる開示技術によって、追加クラッドを有する変形の本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバの励起を可能とする。次に、本発明による追加クラッドを有する微細構造アクティブマルチコア光ファイバにおいて信号を増幅する。次いで、本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバを、本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバに接合する。次いで、本発明による光ファイバを介して導波された信号を、個別コア指定装置に送出する。このステップの後、特定のコアからの信号を、標準的な光ファイバを介して受信器に送信する。
【0049】
また、本発明による微細構造マルチコア光ファイバと本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバの双方を用いて、他の伝送システムを製造することも可能である。