特許第6831241号(P6831241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831241微細構造マルチコア光ファイバ(MMOF)、及び微細構造マルチコア光ファイバのコアを個別に指定するための装置、及びこの装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831241
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】微細構造マルチコア光ファイバ(MMOF)、及び微細構造マルチコア光ファイバのコアを個別に指定するための装置、及びこの装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20210208BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   G02B6/02 461
   G02B6/02 451
   G02B6/02 411
   G02B6/26
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-540010(P2016-540010)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-504053(P2017-504053A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】PL2014050077
(87)【国際公開番号】WO2015088365
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年12月14日
(31)【優先権主張番号】P.406499
(32)【優先日】2013年12月15日
(33)【優先権主張国】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】516092968
【氏名又は名称】インフォテック エスピー.オー.オー.
【氏名又は名称原語表記】INPHOTECH SP. O. O.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】ナシロフスキ,トマシュ
(72)【発明者】
【氏名】パヴリック,カタジーナ ヨアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ホルディンスキ,ズビグニエフ
(72)【発明者】
【氏名】ムラフスキ,ミハウ
(72)【発明者】
【氏名】テンダーレンダ,タデウシュ
(72)【発明者】
【氏名】ナピエララ,マレック
(72)【発明者】
【氏名】ズイオロヴィチュ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】オストロフスキ,ウーカシュ
(72)【発明者】
【氏名】スロウィコフスキ,マテウシュ
(72)【発明者】
【氏名】エスゾトエステカイエヴィチュ,ウーカシュ
(72)【発明者】
【氏名】シマンスキ,ミハウ
(72)【発明者】
【氏名】ステンピエニ,カロル
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−170062(JP,A)
【文献】 特開2011−180243(JP,A)
【文献】 特表2005−500583(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/172997(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/073821(WO,A1)
【文献】 特開2012−208236(JP,A)
【文献】 特開2013−142791(JP,A)
【文献】 特開2013−142792(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0043878(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02− 6/036
G02B 6/26− 6/27
G02B 6/30− 6/34
G02B 6/42− 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基本セルを内包する微細構造を備えた微細構造マルチコア光ファイバであって、
前記基本セルの各々は、
クラッド(4.1)のファイバ材料の屈折率よりも屈折率が増加したドーピングされた石英ガラスから作られたコア(2.1)と、
クラッド(4.1)のファイバ材料の屈折率よりも屈折率が低い流体を充填した孔の形態をとることができ、格子定数Λの距離内に存在する長手領域(3.1)と、
を含んでおり、
前記コアを取り囲む前記長手領域(3.1)を辺の長さが格子定数Λの2倍に等しい六角形の外周上に配置し、前記コア(2.1)を前記長手領域(3.1)によって作られる六角形の中心に有する少なくとも2つの基本セルを含み、
隣接する前記基本セルは、前記コア(2.1)を取り囲む共通の長手領域(3.1)を有し、
内側の前記コア(2.1)の材料と外側の前記クラッド(4.1)の材料との間の屈折率の差が、光波長λ=1550nmにおいてΔ=5.63×10−3±2.9×10−3に等しく、前記格子定数Λが(7.8±3.6)μmに等しく、ファイバコア(2.1)の直径が(0.7±0.46)×Λに等しく、空気が充填された長手領域(3.1)としての孔の直径が(0.7±0.3)×Λに等しく、クラッド(4.1)の直径が{Λ×13+(50±20)}μmに等しい
ことを特徴とする、微細構造マルチコア光ファイバ。
【請求項2】
前記光ファイバの前記微細構造が流体で充填され、外側微細構造クラッドと称する追加クラッドを構成する追加の領域(5.1)で取り囲まれており、前記領域(5.1)の直径が格子定数Λに等しいか、それよりも小さいことを特徴とする、請求項に記載の光ファイバ。
【請求項3】
追加クラッドを有する前記光ファイバの前記外側微細構造クラッドの一部である前記領域(5.1)が六角形の外周上に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記光ファイバの自由に選択された基本セル(複数の基本セル)が前記長手領域(3.1)によって部分的に囲まれていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記光ファイバの自由に選択された基本セル(複数の基本セル)が、直径の異なる前記長手領域(3.1)によって部分的に囲まれていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記光ファイバの前記微細構造において、追加の領域の形態をとった1つ又は複数のいわゆるマーカ(6.1)があることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の微細構造マルチコア光ファイバのコアを指定するための装置において、キャピラリ(S.3)内に並列配置された複数のシングルコアシングルモード光ファイバ(シングルモード光ファイバとも称する)を、前記マルチコア光ファイバの前記コア(2.1)の数に対応した数だけ含み、前記シングルモード光ファイバを収容した前記キャピラリ(S.3)が、前記マルチコア光ファイバに接続され、前記キャピラリ内の前記シングルモード光ファイバの断面及び前記マルチコア光ファイバの断面が、それらの構成において平行であり、
前記キャピラリ(S.3)が、長手方向の伸長と組み合わせて、温度の影響下で幾何学的寸法が変化しやすい、ドーピングされていない石英ガラス及びポリマーから選択された材料で作製されている
ことを特徴とする、装置。
【請求項8】
前記シングルモード光ファイバを収容した前記キャピラリ(S.3)内に、前記マルチコア光ファイバの接続されないコアの数に対応した数のガラスロッドがあることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の微細構造マルチコア光ファイバの、コアを個別に指定するための装置の製造方法であって、
1.前記マルチコア光ファイバのコアの数、コアの直径、及びコア間の距離を求めて前記マルチコア光ファイバの微細構造を解析すること、
2.前記マルチコア光ファイバを接続するシングルモード光ファイバのコア及びクラッドの直径を測定し、前記シングルモード光ファイバのテーパ化の程度を決定すること、
3.シングルモード光ファイバの前記クラッドを除去し、その表面を洗浄すること、
4.実行され得るテーパ化及び相互再組み立ての後で、前記マルチコア光ファイバの前記コアと前記シングルモード光ファイバの前記コアとの位置合わせが可能となるように、前記シングルモード光ファイバの露出した洗浄済みの部分をエッチングすること、
5.前記決定したテーパ化の程度に従ってシングルモード光ファイバをテーパ化し、前記マルチコア光ファイバの前記コアの直径の寸法に等しい、前記シングルモード光ファイバのコア直径を実現し得るようにすること、
6.シングルモード光ファイバ及びガラスロッドを挿入することができ、前記挿入された要素が自由に動けないか又は動きが制限されるようなサイズにテーパ化することによって、キャピラリを準備すること、
7.シングルモード光ファイバ及びガラスロッドを前記キャピラリ内に収容すること、
8.加熱及び伸長によって前記キャピラリ内に収容し接合した、シングルモード光ファイバ及びガラスロッドを有する微細構造物をテーパ化及び固定すること、
9.光ファイバ用カッターを用いて、長手方向のキャピラリの軸に対して直角に、前記収容し接合した前記微細構造物を有する前記キャピラリを切断し、前記キャピラリの表面を、前記キャピラリ内に収容した前記微細構造物と共に研磨すること、
10.前記マルチコア光ファイバを切断し、その表面を研磨すること、
11.前記キャピラリ及び内部に収容して接合された前記微細構造物と共に、前記キャピラリを前記マルチコア光ファイバに対して配向すること、
12.接合技術として開示されているいずれかの最新技術によって、前記キャピラリ及びその内部の前記微細構造物に前記マルチコア光ファイバを接続すること、
の各段階を実行する、方法。
【請求項10】
前記キャピラリ(S.3)及びその内部の微細構造物の前記テーパ化は、前記キャピラリが内部の前記微細構造物に固定されるように行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記マルチコア光ファイバの前記コアがシングルモード光ファイバの前記コアの直径と異なる直径を有する場合には、前記テーパ化は、前記キャピラリ内の前記微細構造物のシングルモード光ファイバの前記コアの直径が前記マルチコア光ファイバの前記コアの直径と等しくなるまで継続し、
前記マルチコア光ファイバの直径が、接続される前記シングルモード光ファイバの前記直径よりも大きい場合には、該シングルモード光ファイバを前記キャピラリ内でテーパ化した後、前記マルチコア光ファイバもテーパ化することを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、微細構造マルチコア光ファイバ(MMOF)、及び微細構造マルチコア光ファイバのコアを個別に指定(アドレス)するための装置の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
電気通信システムに光ファイバが導入されたことで、情報伝達の有効性は著しく向上した。光ファイバ1本当たり10テラビット/秒に達する超大容量レベルの伝送チャネルの需要が急速に高まっているため、現在用いられている従来のシングルモード光ファイバに取って代わるある種のブレイクスルーが必要とされているようである。例えば時間、波長、偏光、及びその他の領域における今日までの多重化技法は、伝送帯域に対する指数関数的なニーズの増大を満たすには全く満足できるものではない。マルチコア光ファイバを用いた空間分割多重化(SDM:space-division multiplexing)技法によって、1つの解決策がもたらされる。SDMは、別個の伝送チャネルとして用いられる分離したコアを有するマルチコア光ファイバで実施されている。SDMの1つのタイプが、モード分割多重化(MDM:mode-division multiplexing)、すなわち、マルチモード伝搬が行われ、各モードが別個の伝送チャネルを表す、結合コアを有する光ファイバ構造の適用である。しかしながら、モード分割多重化において、モードを指定する有効な技法はまだ知られていない。
【0003】
空間分割多重化技法は、例えば波長分割多重化(WDM)、周波数分割多重化(FDM)、及びその他の技法のような他の多重化技法と共に用いられる場合があり、これによって更に容量の増大を図る。
【0004】
マルチコア光ファイバ及びSDMを用いた伝送に求められる基本的な要件は、コア間のクロストークを抑制することである。すなわち、1つの伝送チャネルのユーザは、伝送媒体を共用する他のユーザの存在を感じてはならない。SDMを用いた商業的に費用対効果の大きい伝送のための他の要件は、実際の伝送システムに合致したパラメータを有する光ファイバの設計である。そのようなパラメータには、光ファイバの幾何学的寸法(標準的なシングルモード光ファイバと同じコア直径及び/又は同じマルチコア光ファイバ直径を達成可能であること)、分散(分散ゼロ波長(ZDW)及びZDWにおける分散勾配を含む)、伝送損失、曲げ損失、偏光に依存する損失、カットオフ波長、及び非線形が含まれる。また、曲げ部分における許容可能レベルのクロストーク及び曲げ部分における分散を保証することも必要である。
【0005】
クロストークを低減させるには、マルチコア光ファイバのコアを適切に離隔させなければならない。コア離隔のため、実際上はクロストーク低減のために、いくつかの手法がすでに知られている。それらには、コア間の空間を拡大することによる隣接モードの重複の低減、屈折率又は直径を変化させた不均一なコアの製造、コア周囲の屈折率プロファイルを変化させた構造の使用が含まれる。上記3つの手法を組み合わせることも可能である。コア間の空間を拡大するには、コアを広範囲に散在させて許容可能なクロストークレベルを達成する必要があるので、そのようなファイバでは高密度のチャネルが得られない。不均一なコアの概念は、マルチコア光ファイバのコアの屈折率又は直径にあまり大きくない差がある場合にそのようなコア間のクロストークレベルが著しく低減するという観察から生まれた。そのような光ファイバを設計するには、満足できるクロストークレベル及びチャネル密度を保証する最小数の様々なコアについて徹底的に解析する必要がある。上記の2つの方法、すなわちコアの散在と不均一コアの使用の場合、曲げ損失が大きく、また曲げ部分におけるクロストークレベルが高くなるという問題がある。コア周囲の屈折率を変化させた構造(トレンチ付ファイバ(trench-assisted fiber))の適用では、曲げ損失、曲げ部分におけるクロストークに伴う問題が部分的に軽減し、概してクロストークレベルが低減する。
【0006】
SDMを用いた伝送システムの設計における別の側面として、マルチコア光ファイバを実際のシステムと融合させるため、マルチコア光ファイバのコアを標準的なシングルモード光ファイバと接続する方法を開発する必要がある。これには、特定のコアとの間で信号を入力/出力可能とすることが含まれる。更に、今後計画される伝送システムでは、既存の要素及び技術をできるだけ多く用いることで、そういった新しい伝送システムの実施プロセスの費用対効果を高めると共に、実施プロセスにかかる時間を引き延ばさないようにしなければならない。
【0007】
トレンチ付ファイバを用いた構造は、例えば非特許文献1によって知られている。コア周囲に低屈折率の層を適用することでコアの離隔が達成され、更に、クロストークレベルを低減するため不均一なコアも用いられる。
【0008】
また、非特許文献2では、各コアの周囲の6個の空孔によってコア間が離隔された光ファイバが提案されている。しかしながら、この場合の離隔は、コアを広く散在させることなくクロストークを低減するには満足できるものではない。この提案された解決策において1km超のレベルのビート長を達成するため、10μm未満のネットワーク定数(隣接孔の中心間の距離)では光ファイバのシングルモード動作を得ることができないが、コアは格子定数の4倍に等しい距離に散在させなければならない。このタイプの光ファイバは「ホールアシストファイバ(hole-assisted fiber)」と呼ばれる。従来の微細構造光ファイバでは、空孔は光伝搬にアクティブに関与し、伝搬の効果を保証するのは、空孔の存在がコア内の光閉じ込めを生じることだけである。「ホールアシスト」タイプの光ファイバでは、適用される微細構造は主として、コア間のクロストークを防止するようにコア相互を離隔しなければならない。原則として「ホールアシスト」ファイバでは、ドーピングされたコアが微細構造の中央に適用され、標準的なシングルモード光ファイバと同じ原理によって光の伝搬を可能とするが、1つの利点として、孔はコア間のクロストークを低減させるが、伝搬機構に大きく関与することはない。
【0009】
特許文献1により、光伝送システム、マルチコア光ファイバ、及びこのファイバの製造方法は既知である。この発明の出願による伝送システムでは、マルチコア光ファイバの隣接するコアに一連の波長が同時に導入され、従って、波長分割多重化システムと同時に空間多重化システムが用いられる。光ファイバのコアは、複数の孔から成る2つのリングで囲まれている。固定コアを有する光ファイバ(従来の微細構造光ファイバ)の場合、コア内の光伝搬は空孔の存在によって保証される。この解決策の記載において提示された別の変形では、中央にも孔があり、フォトニックバンドギャップの存在に関連して伝搬機構が生じる。この記載による光ファイバでは、コアに最も近い孔のリングを使用しないようにすることは計画されていない。
【0010】
また、特許文献2が開示する光ファイバ設計では、クラッドが、六方格子の節として作成された多くの孔を有する。この発明による光ファイバは、20mmの曲げ半径で曲げ損失が5dB/m未満であることにより特徴付けられる。この発明による光ファイバは、孔の構造が光伝搬を保証する微細構造光ファイバである。高いカップリング値を得るため、コア間に多くの空気層を適用する必要があるので、達成されるチャネル数が少なくなる。また、この記載には光ファイバ配向の構成も開示されている。この構成では1つのコアがシフトされた。そのような構成では、この(シフトされた)コアは伝搬に関与しない。上記記載の伝送システムでは、コア間の干渉を抑えるため、曲げから生じる応力、横応力、又は双方のタイプの応力を発生させる追加要素を適用する必要がある。
【0011】
また、特許文献3は、テーパ状光ファイバカプラを用いた励起方法を開示する。この場合、前方励起(frontal pumping)を用い、マルチコア光ファイバに接続されたファイバ束からの1本の光ファイバを、励起による信号を伝送する光ファイバで置き換える。また、特許文献4によるデータ伝送システムが開示されている。この場合、マルチコア光ファイバのコア間のカップリングを、モードのカップリングによりサポートされるデータ伝送のために用いるが、コアは離隔されていない。
【0012】
また、特許文献5には、マルチコア光ファイバ及びコアの配置が開示されている。この構成では、マルチコアファイバは、六方格子の節の各点に配置された多くのシングルコアを含む。これにより、屈折率プロファイルが異なる少なくとも2つのタイプのコアがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0209106号明細書
【特許文献2】米国特許第2013064543号明細書
【特許文献3】米国特許第20110279888号明細書
【特許文献4】欧州特許第2336813号明細書
【特許文献5】欧州特許第2610656号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】”Reduction of Crosstalk by Trench-Assisted Multi-Core Fiber” OSA/OFC/NFOEC 2011
【非特許文献2】”Multi-Core Hole-Assisted Fibers for High Core Density Space Division Multiplexing” from the Conference on Optoelectronics and telecommunications-OECC 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
SMDを用いたシステムに伴う最も差し迫った問題の中に、隣接伝送チャネル間のクロストーク低減、及びできる限り小さい曲げ損失の達成、光ファイバケーブルの設置を容易にする簡略化に伴う問題がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、最小のクロストークを保証することができ、伝送損失、曲げ損失、偏光に依存する損失、分散、カットオフ波長、非線形、及び幾何学的パラメータ等のパラメータが標準的なシングルモード光ファイバのパラメータにできる限り近い光ファイバ構造の設計である。同時に、本発明の目的は、クロストーク、分散、カットオフ波長を含むパラメータが曲げ箇所で許容できないほどに変化しない構造の設計である。更に、本発明の目的は、本発明によるマルチコア光ファイバを標準的なシングルモード光ファイバと接続するための装置の製造方法を拡大及び設計し、マルチコア光ファイバの特定のコアの正確な指定及びこの特定のコアからの信号の受信を保証する、受動的なもの及び能動的のものの双方の、ある範囲に渡ったコンパチブルな解決策の設計である。特定の要素、すなわち本発明による受動的及び能動的の双方のマルチコア光ファイバ、並びに上記の要素に専用の、マルチコア光ファイバのコアを標準的なシングルモード光ファイバと接続するために用いる装置の使用について、以下の実施例に提示する。本発明の目的は、例えばスタックアンドフロー方法のような既知の経済的に正当化される方法によって製造することができる構造の設計である。更に、本発明の目的は、すでに伝送システムで稼働している装置をできるだけ多く利用し、更に、例えばEDFA増幅器及び励起技術のような開示された技術を利用することができる伝送システムコンポーネントの設計である。
【0017】
微細構造マルチコア光ファイバ、微細構造マルチコア光ファイバのコアを別個に指定するための装置、及び装置を構築する方法は、標準的なシングルモード光ファイバと比較した場合、容量レベルの著しい増大及びクロストークの解消を保証し、同時に伝送損失の最適化と曲げ損失の軽減を図る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によるマルチコア光ファイバでは、離隔されたコアによって空間的な信号の乗算(multiplication)が可能となる。「離隔されたコア」という言葉は、コア間のクロストークが最小の許容可能レベルに維持される状況として理解するものとする。コアの離隔は、光ファイバ微細構造の特徴によって容易になる。すなわち、本発明による光ファイバでは、クラッドの屈折率に対して屈折率を低下させた空間によってコアを相互に分離させる。この空間は、例えばガス、好ましくは空気又は流体又はポリマーが充填された孔、又は屈折率を低下させることが可能なドーピングを行った別のガラスの空間の形態をとり得る。更に、本発明によるマルチコア光ファイバは、例えばセンサ用途のような電気通信でない用途に用いることも可能である。
【0019】
本発明による微細構造マルチコア光ファイバは、複数の基本セルを内包するものであって、基本セルの各々は、クラッドのファイバ材料の屈折率よりも屈折率が増加したドーピングされた石英ガラスから作られたコアと、クラッドのファイバ材料の屈折率よりも屈折率が低くい流体を充填した孔の形態をとることができ、格子定数の距離内に存在する長手領域と、を含んでいる。微細構造マルチコア光ファイバは、コアを取り囲む上記長手領域を辺の長さが格子定数Λの2倍に等しい六角形の外周上に配置し、コアを上記長手領域)によって作られた六角形の中心に有する少なくとも2つの基本セルを含んでいる。
【0020】
コアの外側であって、コアを取り囲む長手領域の内側エリアは、好ましくはガラス、特に石英ガラス又はポリマーで作製され、内側クラッドを作っている。孔により作られる長手領域は、内側微細構造クラッドを構成する。基本セルの内側微細構造クラッドの外側エリアは外側クラッドで作られる。コアが配置されているエリア、並びに内側クラッド及び内側微細構造クラッドが、共に微細構造エリアを構成する。
【0021】
上記微細構造の第1の基本セルは、好ましくはマルチコア光ファイバの幾何学的中心に配置され、他の基本セルは、辺又は頂点が第1の基本セルに付着している。相互に並置された他の基本セルがコア周囲の孔を共有すると有利である。
【0022】
第1の基本セルがマルチコア光ファイバの幾何学的中心に配置されていない場合は、本発明による微細構造エリアの幾何学的な重心を本発明によるマルチコア光ファイバの幾何学的中心に局部配置すると有利である。
【0023】
マルチコア光ファイバの外側クラッドの直径D1は、微細構造に埋め込まれる基本セルの数に応じて自由に選択されるが、好ましくは、最も外側の孔から石英ガラス母材の縁(外側クラッドの縁)までの距離を最低限30μmに維持する。
【0024】
光ファイバの幾何学的中心に基本セルが局部配置された微細構造の場合、この基本セルを取り囲む基本セルが、いわゆる第1のリングを形成する。これらの基本セルが共通の辺を有する場合、第1のリングのコアは六角形の頂点にあり、この六角形の辺bは、格子定数の3倍にaを乗算した値に等しい。ここで、a=2/3×√3である。これらの基本セルが頂点を共有する場合、第1のリングのコアは六角形の頂点にあり、六角形の辺bは格子定数の4倍の値に等しい。
【0025】
基本セルのコアに続くリングは、これらの基本セルが共通の辺を有する場合、六角形の頂点及び辺の中点に配置され、この六角形の辺は、格子定数の6倍の値にaを乗算した値に等しい。ここでa=2/3×√3である。これらの基本セルが頂点を共有する場合、第1のリングのコアは六角形の頂点に配置され、この六角形の辺dは格子定数の8倍の値に等しい。
【0026】
後続の各リングについて、乗数aは算術的な増大を示し、リング数が増えた場合は、マルチコア光ファイバの外側クラッドの寸法の拡大を検討しなければならない。
【0027】
コア材料と外側及び内側クラッド材料との間の屈折率の差は、光波長λ=1550nmにおいてΔ=5.63×10−3±2.9×10−3に等しい
【0028】
また、格子定数Λ(7.8±3.6)μmに等しく、光ファイバのコア直径(0.7±0.46)×Λに等しく、空気が充填された孔の直径(0.7±0.3)×Λに等しく、クラッド直径Λ×13+(50±20)μmに等しい。
【0029】
増幅を伴う信号伝送に本発明を適用する場合、光ファイバのコアに、希土類のイオンをドーピングする。コアに3×1018/cm−3〜120×1018/cm−3のレベルでエルビウムをドーピングし、これによって、コアとクラッドとの屈折率の差を、光波長λ=1550nmにおいてΔ=2.5×10−2−2.1×10−2〜2.5×10−2+1.6×10−2とする。
【0030】
好ましくは、格子定数Λが(7.8±3.6)μmに等しく、ファイバコアの直径が(0.5±0.46)×Λに等しく、空気が充填された孔の直径が(0.6±0.3)×Λに等しく、クラッドの直径がΛ×13+(50±20)μmに等しいのが望ましい
【0031】
アクティブなバージョンで光ファイバを伝送に用いる場合、光ファイバ微細構造を流体が充填された追加の孔エリア(孔とも称する)で取り囲んで、追加クラッドを設けると有利である。追加の孔エリア(外側微細構造クラッドとも称する)は、微細構造エリアを取り囲む。外側微細構造クラッドは、外側クラッドを2つのエリアに分割する。すなわち、外側微細構造クラッドと微細構造エリアの外側の孔との間に位置する近位外側クラッドのエリアと、外側微細構造クラッドの外側で光ファイバの縁まで位置する遠位外側クラッドのエリアである。
【0032】
光ファイバの微細構造が、流充填され、外側微細構造クラッドと称する追加クラッドを構成する追加の領域で取り囲まれているとき、追加クラッドを有する上記光ファイバの上記外側微細構造クラッドの一部である上記追加の領域は、好ましくは六角形及び円形から選択された形態の外周上に配置される。光ファイバの自由に選択された基本セル(複数の基本セル)は、長手領域によって部分的に囲まれている。
【0033】
れにより、外側微細構造クラッドの孔の直径は格子定数Λよりも小さいことが好ましい。外側微細構造クラッドを構成する孔が六角形の辺及び頂点上にあり、外側微細構造クラッドの孔の中心間の距離が格子定数Λに等しい場合、外側微細構造クラッドに含まれる孔は、好ましくは円形の断面を示し、好ましくは少なくとも30μmの距離にある。また、追加クラッドを有する光ファイバの場合、内側微細構造クラッドを構成する孔の直径が、格子定数に比べて好ましくは(20±15)%小さいことが好ましい。
【0034】
光ファイバの切断(cleaving)をある程度容易にすることが好ましく、好ましくは微細構造の基本セルの最も外側の孔を使用せず、及び/又は孔のサイズに自由に差を付ける。接合を容易にするため、光ファイバの微細構造において、いわゆる1つのマーカ又は複数のマーカを用いることが好ましい。
【0035】
本発明による微細構造マルチコア光ファイバのコアを指定する装置は、キャピラリ内に並列配置された複数のシングルコアシングルモード光ファイバ(シングルモード光ファイバとも称する)を、本発明によるマルチコア光ファイバのコアの数に対応した数だけ含み、シングルモード光ファイバを収容した前記キャピラリは、本発明によるマルチコア光ファイバに接続され、キャピラリ内のシングルモード光ファイバの断面及びマルチコア光ファイバの断面が、それらの構成において平行である。シングルモード光ファイバを収容したキャピラリ内に、上記マルチコア光ファイバの接続されないコアの数に対応した数のガラスロッドがあり、キャピラリが、長手方向の伸長と組み合わせて、温度の影響下で幾何学的寸法が変化しやすい、ドーピングされていない石英ガラス及びポリマーから選択された材料で作製されている。
【0036】
本発明による微細構造光ファイバの全てのコアを指定しない場合、キャピラリ内のシングルモード光ファイバを、シングルモード光ファイバの直径に等しい直径を有するガラスロッドで置き換えてもよい。キャピラリ内のガラスロッドの数は、シングルモード光ファイバに接続されないマルチコア光ファイバのコア数に対応する。システム製造の別の例では、本発明によるマルチコア光ファイバのコアの数又は配置が、中央のマルチコア光ファイバのコアの周りに閉じたリングの構造を構成しない場合、ガラスロッドは、本発明によるマルチコア光ファイバのコアを指定するための装置構造の充填材となる。
【0037】
ガラス又はポリマーのキャピラリは、長手方向の伸長と組み合わせて、温度の影響下で幾何学的寸法が変化しやすい材料で作製される。キャピラリの長さは、好ましくは光ファイバ要素の加工/接続工程で、フィラメント接続機(filament splicer)に基づいて加熱しながら伸長する装置に搭載できるように適宜選択される。ガラスキャピラリは、ドーピングされていない石英ガラスで作製することが好ましい。
【0038】
本発明による微細構造マルチコア光ファイバのコアを指定するための装置の製造方法は、以下の各段階を含む。
1.マルチコア光ファイバのコアの数、コアの直径、及びコア間の距離を求めてマルチコア光ファイバの微細構造を解析する。
2.マルチコア光ファイバを接続するシングルモード光ファイバのコア及びクラッドの直径を測定し、シングルモード光ファイバのテーパ化の程度を決定する。
3.シングルモード光ファイバのクラッドを除去し、その表面を洗浄する。
4.実行され得るテーパ化及び相互再組み立ての後で、マルチコア光ファイバのコアとシングルモード光ファイバのコアとの位置合わせが可能となるように、シングルモード光ファイバの露出した洗浄済みの部分(fragment)をエッチングする。
5.計算したテーパ化の程度に従ってシングルモード光ファイバをテーパ化して、マルチコア光ファイバのコア直径の寸法に等しいコア直径を達成可能とする。
6.シングルモード光ファイバ及びガラスロッドを挿入することができ、挿入された要素が自由に動けないか又は動きが制限されるようなサイズにテーパ化することによって、キャピラリを準備する。
7.シングルモード光ファイバ及びガラスロッドをキャピラリ内に収容する。
8.加熱及び伸長によってキャピラリ内に収容し接合した微細構造物をテーパ化及び固定する。
.光ファイバ用カッターを用いて、長手方向のキャピラリの軸に対して直角に、接合した微細構造物を収容したキャピラリを切断し、キャピラリ表面を、キャピラリ内に収容した微細構造物と共に研磨する。
10.マルチコア光ファイバを切断し、その表面を研磨する。
11.キャピラリ及び内部に収容され接合された微細構造物をマルチコア光ファイバに対して配向する。
12.接合技術として開示されているいずれかの最新技術によって、キャピラリ及びその内部の微細構造物にマルチコア光ファイバを接続する。
【0039】
エッチングプロセスは、好ましくは約40%の濃度のフッ化水素酸を用いて、好ましくは21℃の温度で実行する。
【0040】
キャピラリ及びその内の微細構造物のテーパ化は、接合されたシングルモード光ファイバを備えたキャピラリが内部の微細構造物に固定されるように行うのが好ましい。
【0041】
この場合、シングルモード光ファイバの直径が、マルチコア光ファイバのコア間の距離よりも著しく大きいときには、テーパ化及びエッチングの前記段階4,5を入れ替えてもよく、接続されるマルチコア光ファイバの幾何学的形状に応じて、前記段階4,5を省略してもよい。
【0042】
マルチコア光ファイバのコアがシングルモード光ファイバのコアの直径と異なる直径を有する場合、テーパ化は、キャピラリ内の微細構造物としてのシングルモード光ファイバのコアの直径がマルチコア光ファイバのコアの直径と等しくなるまで継続し、本発明による光ファイバの直径が、これに接続されるシングルモード光ファイバの直径よりも大きい場合は、シングルモード光ファイバをキャピラリ内でテーパ化した後、本発明による光ファイバもテーパ化するのがよい。
【0043】
マルチコア光ファイバ及びキャピラリ内の構造物の配向は、好ましくは、マルチコア光ファイバのコアの1つに光が送出されるように行われると共に、融着しながら、キャピラリ内のシングルモード光ファイバの1本にパワーのどの部分が伝達されたかを調べることによって、組み立てられる融着接合を制御するように行う。別の組立例では、キャピラリ内のシングルモード光ファイバの1本に光が送出されると共に、融着しながら、マルチコア光ファイバのコアの1つにパワーのどの部分が伝達されたかを調べる。
【0044】
接合は、いずれかに開示するガラスプロセッサ、好ましくはガラス加工台を用いて実行される。外径が250μm以下のマルチコア光ファイバでは、フィラメント融着機を用いることが好ましく、直径がもっと大きい場合は、フィラメント融着機に基づいて光ファイバ要素を加工/接続するための台上で融着を実行することが好ましい。また、シングルモード光ファイバ、キャピラリ、及び内部構造物が収容されたキャピラリのテーパ化を、フィラメント融着機を用いて、又はフィラメント融着機に基づく光ファイバ加工/接続台を用いて実行することが好ましい。
【0045】
接合しながら、マルチコア光ファイバの直径及び内部構造物を含むキャピラリの幾何学的形状に応じて、ガラス加工台の加熱要素のパワーは、光学損失が小さく耐久性の高い機械的接続を保証するレベルに選択する。フィラメントパワーレベルに関係した特定のファイバ直径、融着時間、融着前の遅延、光ファイバ相互のシフト距離、及び光ファイバ間の距離についての設定値は、融着の前に実験的に選択される。
【0046】
信号増幅の必要がない短い導波(guidance)距離の場合、本発明による微細構造導波マルチコア光ファイバは、コアを指定するための2つの装置の間に配置される。これらの装置の一方は、送信器と標準的なシングルモード光ファイバとを用いて信号を特定のコアに送出することができ、第2の装置は、特定のコアからの信号を受信し、これを標準的なシングルモード光ファイバを介して再び送出することができる。
【0047】
信号増幅が必要である伝送距離の場合、伝送システムを以下のように構成することが好ましい。送信器からの信号を、シングルモード光ファイバを介して、コアを指定するための装置に送信する。次いでこの信号を、本発明による微細構造ファイバを介して導波する。増幅が必要とされる距離である場合、1つの電気通信ライン内で循環的に、増幅モジュールを設置する。増幅モジュールを用いた光増幅の後、信号は、本発明による微細構造マルチコア光ファイバを介して更に導波される。コアを指定するための装置によって、特定のコアからの信号をシングルモード光ファイバに送出する。このようにして信号を受信器まで伝送する。増幅モジュールは2つの指定装置から成る。その一方は、微細構造マルチコア光ファイバの特定のコアからの信号をシングルモード光ファイバに送出し、他方は、光ファイバからの信号を微細構造マルチコア光ファイバのコアに伝達することができる。このモジュールでは、シングルモード光ファイバを介した信号導波ライン上に、一体型の光ファイバ増幅要素がある。このような要素は、例えば市販のエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)とすればよい。
【0048】
また、追加クラッドが適用された本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバを用いて増幅を行うことも可能である。これにより、横励起として、又は本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバの前面からの励起として、励起を実行することができる。横励起及び前面励起の技術は開示されており、伝送システムのこの変形に適用するために何の変更も必要ない。直接励起を用いる伝送システムの変形は、送信器からの信号を、標準的なシングルモード光ファイバを介して、本発明による個別コア指定装置に導波するという特徴がある。次いで信号を、本発明による微細構造マルチコア光ファイバを介して導波する。信号増幅が必要な距離を信号伝送する場合、増幅モジュールを用いる(また、1つの電気通信ライン内で循環的に)。増幅モジュールにおいて、本発明による微細構造マルチコア光ファイバは、いずれかの開示技術によって、本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバに接続されている。この接続は、光ファイバ(複数の光ファイバ)励起を用いる開示技術によって、追加クラッドを有する変形の本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバの励起を可能とする。次に、本発明による追加クラッドを有する微細構造アクティブマルチコア光ファイバにおいて信号を増幅する。次いで、本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバを、本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバに接合する。次いで、本発明による光ファイバを介して導波された信号を、個別コア指定装置に送出する。このステップの後、特定のコアからの信号を、標準的な光ファイバを介して受信器に送信する。
【0049】
また、本発明による微細構造マルチコア光ファイバと本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバの双方を用いて、他の伝送システムを製造することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明による微細構造光ファイバを図面に示す。
図1】好ましい製造例における本発明による光ファイバの断面図である。
図2】基本セルの配置について他の有利な変形例を示す説明図である。
図3】別の好ましい製造例における光ファイバの断面図である。
図4】別の好ましい製造例における光ファイバの断面図である。
図5】別の好ましい製造例における光ファイバの断面図である。
図6】別の好ましい製造例における光ファイバの断面図である。
図7】追加クラッドを有する本発明による光ファイバを示す説明図である。
図8】別の追加クラッド構成における追加クラッドを有する本発明に従った光ファイバを示す。
図9】別の追加クラッド構成における追加クラッドを有する本発明による光ファイバを示す説明図である。
図10】キャピラリ内に配置されたシングルモード光ファイバの断面図である。
図11】マルチコア光ファイバと内部光ファイバ構造物を含むキャピラリとの並置を概略的に示す説明図である。
図12】好ましい製造例における本発明による微細構造マルチコア光ファイバを用いた導波システムを示す説明図である。
図13】別の好ましい製造例における本発明による微細構造マルチコア光ファイバを用いた導波システムを示す説明図である。
図14】別の好ましい製造例における本発明による微細構造マルチコア光ファイバを用いた導波システムを示す説明図である。
図15】好ましいマーカ位置を有する本発明による光ファイバを示す説明図である。
図16】好ましい製造例における別の好ましいマーカ位置を有する本発明による光ファイバを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(実施例1)
本発明による伝送用の微細構造マルチコア光ファイバ、及び本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバは、複数の基本セルを内包する微細構造を含む。基本セルの各々は、クラッド4.1のファイバ材料の屈折率よりも屈折率が増加したドーピングされた石英ガラスから作られたコアと、クラッド4.1のファイバ材料の屈折率よりも屈折率が低い流体を充填した孔の形態をとることができ、格子定数Λの距離内に存在する長手領域(以下、単に「孔」という)3.1と、を含む。
【0052】
内側のコア2.1の材料と外側のクラッド4.1の料との間の屈折率の差は、光波長λ=1550nmにおいてΔ=5.2×10−3±0.5×10−3である。
【0053】
基本セルは、コア2.1の直径D2、孔3.1の直径D3、及び隣接した孔3.1の中心間の距離に相当する格子定数Λによって特徴付けられる。孔3.1の中心は六角形の頂点及び辺の中点に配置され、この六角形の中心にコア2.1が指定され、孔3.1の軸により作られる六角形の辺cの長さは、格子定数Λの2倍の値に等しい。微細構造エリア内並置された基本セルは、外側クラッド4.1で覆われている。
【0054】
微細構造の第1の基本セルは、マルチコア光ファイバの幾何学的中心に配置され、他の基本セルは辺が第1の基本セルに付着している。相互に並置された他の基本セルは、コア周囲の孔を共有する。
【0055】
光ファイバの幾何学的中心に配置された基本セルを取り囲む基本セルは、いわゆる第1のリングを構成する。第1のリングのコアは六角形の頂点に位置し、この六角形の辺bは、格子定数の3倍にaを乗算した値に等しい。ここで、a=2/3×√3である。
【0056】
光ファイバの幾何学的パラメータは以下のように決定する。
・クラッド4.1の外径D1は(146.4±5)μmである。
・コア2.1の直径D2は(8.2±0.5)μmである。
・孔3.1の直径D3は(7.7±0.2)μmである。
・格子定数Λは(8.2±0.5)μmである。
【0057】
この製造例では、マルチコア光ファイバのコアの直径は、標準的なシングルモード光ファイバのコアの直径とほぼ等しい。
【0058】
本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバのコアを指定するための装置は、キャピラリに封入されて本発明による微細構造マルチコア光ファイバを介して接続された7本の標準的なシングルモード光ファイバを含む。キャピラリ内の光ファイバの断面は、マルチコア光ファイバの断面に対して平行である。
【0059】
キャピラリは、長手方向の伸長と組み合わせて、温度の影響下で幾何学的寸法が変化しやすい材料で作製する。キャピラリはドーピングされていない石英ガラスで作製される。
【0060】
コアを指定するための装置の製造方法は、以下の通りである。
1.マルチコア光ファイバのコアの数、コアの直径、及びコア間の距離を求めてマルチコア光ファイバの微細構造を解析する。
2.マルチコア光ファイバを接続するシングルモード光ファイバのコアS.1及びクラッドS.2の直径を測定し、シングルモード光ファイバのテーパ化の程度を決定する。
3.シングルモード光ファイバのクラッドを除去し、その表面を洗浄する。
4.シングルモード光ファイバの露出した洗浄済みの部分を、好ましくはフッ化水素酸によりエッチングし、マルチコア光ファイバのコアとシングルモード光ファイバのコアとの位置合わせを可能とする。
5.決定したテーパ化の程度に従ってシングルモード光ファイバをテーパ化して、マルチコア光ファイバのコアの直径の寸法に等しいコアの直径を実現し得るようにする。
6.シングルモード光ファイバ及びガラスロッドを挿入することができ、挿入された要素が自由に動けないか又は動きが制限されるようなサイズにテーパ化することによって、キャピラリS.3を準備する。
7.シングルモード光ファイバ及びガラスロッドをキャピラリ内に収容する。
8.加熱及び伸長によってキャピラリ内に収容し接合した、シングルモード光ファイバ及びガラスロッドを有する微細構造物をテーパ化及び固定すると共に、マルチコア光ファイバもテーパ化する。
9.ファイバを制御しつつ伸長しながら、様々な外径及び内部構造を有する光ファイバ用カッターを用いて、長手方向のキャピラリの軸に対して直角に、上記接合した微細構造を収容するキャピラリを切断し、キャピラリの表面を、キャピラリ内に収容されており、シングルモード光ファイバ及びガラスロッドを有する微細構造物と共に研磨する。
10.マルチコア光ファイバを切断し、その表面を研磨する。
11.キャピラリ及び内部に収容され接合された微細構造物をマルチコア光ファイバに対して配向する。
12.融着によって、キャピラリ及びその内部構造物にマルチコア光ファイバを接続する。
【0061】
7個のコアを有するマルチコア光ファイバを標準的なシングルモード光ファイバ(7本)に接続する際に、マルチコア光ファイバのコア数、マルチコア光ファイバのコア直径(8.2μm)、マルチコア光ファイバのコア間の距離(約28μm)を決定する必要がある。シングルモード光ファイバのクラッドの直径(約125μm)、及びマルチコア光ファイバのクラッドの直径(約146μm)を決定する。
【0062】
エッチングは、40%濃度のフッ化水素酸を用いて21℃で実行する。約63μm/hのエッチングレートによって、約46分間以内にシングルモード光ファイバの必要な直径である28μmを達成することができる。
【0063】
初期内径が200μmであり外径が286μmであるキャピラリを、それぞれ対応する89μm及び127μmの寸法までテーパ化する。
【0064】
89μm/127μmにテーパ化したキャピラリ内に、エッチングしたシングルモード光ファイバを入れていき、1つのキャピラリ内に7本の光ファイバを収容する。
【0065】
キャピラリ及びその内部の微細構造物のテーパ化は、、接合されたシングルモード光ファイバを備えたキャピラリが、内の微細構造物に固定されるように行う。従って、キャピラリは、エッチングしたシングルモード光ファイバと共に、89μm/127μmのサイズから72μm/103μmのサイズまでテーパ化される。
【0066】
キャピラリ及びその内部に収容され接合された構造物のテーパ化プロセスの間に、光ファイバのコアも直径が縮小し(7μmまで)、コア間の距離も24μmまで縮小するので、マルチコア光ファイバもテーパ化しなければならない。マルチコア光ファイバは、コア直径が約7μmの値に達するまで(すなわちクラッド直径が約125μmになるまで)テーパ化する。
【0067】
キャピラリを、内部に接合されエッチングされた光ファイバと共に切断した後、更にテーパ化したマルチコア光ファイバも切断した後、マルチコアファイバ及びキャピラリ内の構造物の配向を行う。これは、マルチコア光ファイバの外側コアの1つに光が送出されるように行い、更に、融着の間に、キャピラリ内のシングルモード光ファイバの1本にパワーのどの部分が伝達されたかを調べて行う。
【0068】
シングルモード光ファイバ、キャピラリ、及び内部に接合された構造物が収容されているキャピラリのテーパ化は、光ファイバ要素の加工/接続に用いられるVytran GPX−3400フィラメント融着機によって実行される。
【0069】
融着の間、マルチコア光ファイバの直径及び内部構造物を含むキャピラリの幾何学的形状に応じて、ガラス加工台の加熱パワーは、機械的に耐久性が高く、光学損失が小さい接続が得られるように選択する。Vytran GPX−3400ガラス加工台の光ファイバ要素加工/接続の予め設定された値は以下の通りである。
【0070】
【表1】
【0071】
空間的な乗算を用いた、本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバを使用した信号伝送方法は、開示した伝送システムに対する代替案である。マルチコア光ファイバを用いた伝送方法は、本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバを主な導波媒体として用いる。マルチコア光ファイバにおいてコアを指定する問題は、本発明による微細構造マルチコア光ファイバのコアを個別に指定するための装置及び技法を用いることで解決される。
【0072】
増幅の必要がない短い伝送距離の場合(図12を参照)、本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバ1は、コアを指定するための2つの装置3及び4の間に配置される。これらの装置の一方は、送信器5と標準的なシングルモード光ファイバ2とによって信号を特定のコアに送出することができ、第2の装置4は、特定のコアからの信号を受信し、これを標準的なシングルモード光ファイバ2を介して受信器6に送出することができる。
【0073】
信号増幅が必要である伝送距離の場合は、以下のように構成される(図13を参照)。送信器5からの信号を、シングルモード光ファイバ2を介して、コア指定装置3に導波する。次いでこの信号を、本発明による微細構造ファイバ1を介して導波する。増幅が必要な距離上に、1つの電気通信ライン内で多数回の繰り返しが可能である増幅モジュール7を設置する。モジュール7による光増幅の後、信号は、本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバを介して更に導波される。コア指定装置4を用いて、特定のコアからの信号をシングルモード光ファイバ2に送出する。このようにして信号を受信器6まで送達する。増幅モジュール7は、2つのコア指定装置4’及び3’から成る。そのうち第1の装置4’は、本発明による微細構造マルチコア光ファイバの特定のコアからの信号をシングルモード光ファイバ2に送出し、第2のコア指定装置3’は、光ファイバ2からの信号を微細構造マルチコア光ファイバ1のコアに送出する。この増幅モジュール7では、シングルモード光ファイバ2を介した信号導波ライン上に、一体型の光ファイバ増幅要素8がある。このような要素8は、例えば市販のエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)とすればよい。
【0074】
(実施例2)
本発明による微細構造マルチコア光ファイバは、複数の基本セルを内包する微細構造を含む。基本セルの各々は、クラッド(4.1)のファイバ材料の屈折率よりも屈折率が増加したドーピングされた石英ガラスから作られたコア(2.1)と、クラッド(4.1)のファイバ材料の屈折率よりも屈折率が低い流充填した、格子定数Λの距離内に存在する孔(3.1)と、を含む。
【0075】
内側のコア(2.1)の材料と外側のクラッド(4.1)の材料との間の屈折率の差は、光波長λ=1550nmにおいてΔ=5.2×10−3±0.5×10−3である。
【0076】
基本セルは、コア直径D2、孔直径D3、及び隣接した孔の中心間の距離に相当する格子定数Λによって特徴付けられる。孔の中心は六角形の頂点及び辺の中点に配置され、この六角形の中心にはコアが指定され、孔の軸によって作られる六角形の辺cの長さは格子定数Λの2倍の値に等しい。微細構造エリア内で並置された基本セルは、外側クラッドで覆われている。
【0077】
微細構造の第1の基本セルはマルチコア光ファイバの幾何学的中心に配置され、他の基本セルは辺が第1の基本セルに付着している。相互に並置された他の基本セルは、コア周囲の孔を共有する。
【0078】
光ファイバの幾何学的中心に配置された基本セルを取り囲む基本セルは、いわゆる第1のリングを構成する。第1のリングのコアは六角形の頂点に位置し、この六角形の辺bは、格子定数の3倍にaを乗算した値に等しい。ここで、a=2/3×√3である。
【0079】
光ファイバの幾何学的パラメータは以下のように決定する。
・クラッド4.1の外径D1は(125±5)μmである。
・コア2.1の直径D2は(7±0.5)μmである。
・孔3.1の直径D3は(6.6±0.1)μmである。
・格子定数Λは(7±0.5)μmである。
【0080】
この製造例では、マルチコア光ファイバのクラッドの直径は、標準的なシングルモード光ファイバのクラッドの直径とほぼ等しい。
【0081】
本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバは、基本セルが配置された微細構造エリアを含む。基本セルの各々は、石英ガラスのコアを有すると共に、その周囲に、空気が充填された12個の長手方向の孔を有する。これらの孔は、石英ガラス母材に配置されている。内側のコア材料と外側のクラッド材料との間の屈折率の差は、光波長λ=1550nmにおいて2.5×10−2±0.5×10−2である。これにより、コアは、約20×1018/cm−3〜約100×1018/cm−3までのレベルでエルビウムがドーピングされている。
【0082】
基本セルは、コア直径D2、孔直径D3、及び格子定数Λに相当する孔間の距離によって特徴付けられる。
【0083】
孔の中心は六角形の頂点及び辺の中点に配置され、この六角形の中心にはコアが指定され、孔の軸によって作られる六角形の辺cの長さはネットワーク定数Λの2倍に等しい。微細構造エリア内に配置された基本セルは、外側クラッドで囲まれている。
【0084】
微細構造の第1の基本セルは、好ましくはマルチコア光ファイバの幾何学的中心に配置され、他の基本セルは、辺又は頂点が第1の基本セルに付着している。相互に並置された他の基本セルは、コア周囲の孔を共有する。
【0085】
光ファイバの幾何学的中心に配置された基本セルを取り囲む基本セルは、いわゆる第1のリングを構成する。第1のリングのコアは六角形の頂点に位置し、この六角形の辺bは、格子定数の3倍にaを乗算した値に等しい。ここで、a=2/3×√3である。
【0086】
本発明による光ファイバは、基本セルにより生成された微細構造エリアの周囲に追加グループの孔5.1を配置することによって、追加クラッドが設けられている。
【0087】
追加クラッドを有する光ファイバの外側微細構造クラッドの一部である孔5.1は、直径D4の円上に配置されている。これにより、外側微細構造クラッドの孔5.1の直径D5の大きさは、格子定数Λよりも小さいことが好ましい。外側微細構造クラッドの孔は、円形の断面を示し、ファイバの縁から少なくとも30μmの距離に配置されている。
【0088】
追加クラッドを有する7コア光ファイバの寸法は以下の通りである。
・クラッド4.1の外径D1は(151±5)μmである。
・コア2.1の直径D2は(2.9±0.5)μmである。
・孔3.1の直径D3は(5.5±0.5)μmである。
・格子定数Λは(7±0.5)μmである。
・追加クラッドの直径D4は(90±2)μmである。
・追加クラッドを生成する孔5.1の直径D5は(6±0.5)μmである。
【0089】
本発明による微細構造マルチコア光ファイバのコア指定のための装置は、キャピラリ内に配置されて本発明による微細構造マルチコア光ファイバに接続された7本の標準的なシングルモード光ファイバを有する。キャピラリ内の光ファイバの断面は、マルチコア光ファイバの断面に対して平行である。
【0090】
キャピラリは、長手方向の伸長と組み合わせて、温度の影響下で幾何学的寸法が変化しやすい材料で作製する。キャピラリはドーピングされていない石英ガラスで作製される。
【0091】
コア指定装置の製造方法(動作シーケンス1〜12)は、実施例1のものと同一である。7個のコアを有するマルチコア光ファイバを標準的なシングルモード光ファイバと接続する際に、以下のパラメータを規定する。すなわち、マルチコア光ファイバ1のコア数(7)、マルチコア光ファイバのコア直径(7μm)、マルチコア光ファイバのコア間の距離(約24μm)である。シングルモード光ファイバのクラッドの直径(約125μm)、及びマルチコア光ファイバのクラッドの直径(約125μm)を決定する。
【0092】
エッチングは、20%濃度のフッ化水素酸を用いて21℃で実行する。約15μm/hのエッチングレートによって、約158分間以内にシングルモード光ファイバの必要な直径である28μmを達成することができる。
【0093】
初期内径が200μmであり外径が286μmであるキャピラリを、それぞれ対応する89μm及び127μmの寸法までテーパ化する。
【0094】
89μm/127μmにテーパ化したキャピラリ内に、エッチングしたシングルモード光ファイバを入れていき、1つのキャピラリ内に7本の光ファイバを収容する。
【0095】
キャピラリ及びその内部構造物のテーパ化は、キャピラリが収容された光ファイバが共に内部構造物に固定されるように行う。従ってキャピラリは、エッチングしたシングルモード光ファイバと共に、89μm/127μmのサイズ〜72μm/103μmのサイズまでテーパ化される。
【0096】
キャピラリを、内部で接合されエッチングされた光ファイバと共に切断した後、更にテーパ化したマルチコア光ファイバも切断した後、マルチコア光ファイバ及びキャピラリ内の構造物の配向を行う。これは、マルチコア光ファイバの外側コアの1つに光が送出されるように行い、更に、融着しながら、キャピラリ内のシングルモード光ファイバの1本にパワーのどの部分が伝達されたかを調べて行う。
【0097】
シングルモード光ファイバ、キャピラリ、及び内部に接合された構造物が収容されているキャピラリのテーパ化は、光ファイバ要素の加工/接合に用いられるVytran GPX−3400フィラメント融着機によって実行される。
【0098】
融着しながら、マルチコア光ファイバの直径及び内部構造物を含むキャピラリの幾何学的形状に応じて、ガラス加工台の加熱パワーは、機械的に耐久性が高く、光学損失が小さい接合が得られるように選択される。Vytran GPX−3400フィラメント融着機の光ファイバ要素加工/接合の予め設定された値は以下の通りである。
【0099】
【表2】
【0100】
空間的な乗算を用いた、本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバを使用した信号伝送方法は、開示した伝送システムに対する代替案である。マルチコア光ファイバを用いた伝送方法は、本発明による微細構造マルチコア導波光ファイバを主な導波媒体として用いる。マルチコア光ファイバにおいてコアを指定する問題は、本発明による微細構造マルチコア光ファイバのコアを個別に指定するための装置及び技法を用いることで解決される。
【0101】
信号増幅が必要である伝送距離の場合には、以下のように構成される(図14を参照)。
【0102】
伝送の間、追加クラッドを有する変形の本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバに、励起が直接行われる。これにより、横励起として、又は追加クラッドを有する変形の本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバの前面からの励起として、励起を実行することができる。横励起及び前面励起の技術は開示されており、導波システムのこの変形に適用するために何の変更も必要ない。直接励起を用いる導波システムの変形は、送信器5からの信号を、標準的なシングルモード光ファイバ2を介して、本発明による個別コア指定装置3に導波するという特徴がある。次いで信号を、本発明による微細構造マルチコア光ファイバ1を介して導波する。
【0103】
信号増幅が必要とされる距離を信号伝送する場合、増幅モジュール7を用いる(また、1つの電気通信ライン内で循環的に)。要素9内で、追加クラッド1’を有する変形における本発明の開示された技術により、励起光ファイバ(複数の光ファイバ)10’を用いると共に、光ファイバ1’及び伝送光ファイバ1の融着接合を用いて、微細構造アクティブマルチコア光ファイバに励起を行う。具体的には、アクティブファイバを励起する側は、本発明の機能的本質には重要でない。追加クラッド1’を有する変形の本発明による微細構造アクティブマルチコア光ファイバにおいて、信号を増幅する。この光ファイバは、スプライス接続11を介して、本発明による微細構造マルチコア光ファイバ1に接続されている。光ファイバ1を介して導波された信号を、次いで本発明による個別コア指定装置4に送出し、このステップの後、特定のコアからの信号を、標準的な光ファイバ2を介して受信器6に送信する。
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