(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1カテーテル部は、前記1または複数の第1生体管腔に留置された状態で、前記1または複数の第1生体管腔からの抜けを防止する抜け防止部を有する請求項1または2に記載の医療デバイス。
前記圧送部は、前記チューブ部材を蠕動させて、前記第1または複数の1生体管腔内の体液を前記第2生体管腔へ圧送する蠕動式のポンプ機構を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る医療デバイス10の全体構成を示す概略図、
図2は、第1留置針100の側面図、
図3は、
図2に示す3−3線に沿う第1留置針100の拡大断面図である。
【0012】
本実施形態に係る医療デバイス10は、リンパ浮腫に罹患した患者のリンパ管Lから静脈Pに向かってリンパ液を強制的に流すことによって、リンパ浮腫の治療および再発の防止を図ることを可能にするリンパ浮腫治療用の医療デバイスとして構成されている。
【0013】
図1に示すように、医療デバイス10は、概説すると、リンパ管L(第1生体管腔に相当)に留置される第1カテーテル部110を含む第1留置針100と、静脈P(第2生体管腔に相当)に穿刺して留置される第2カテーテル部210を含む第2留置針200と、第1カテーテル部110と第2カテーテル部210とを接続するチューブ部材300と、チューブ部材300を介してリンパ管L内のリンパ液(体液に相当)を静脈Pへ圧送するポンプ400(圧送部に相当)と、を有している。
【0014】
(留置針100,200)
第1留置針100および第2留置針200について説明する。なお、本明細書では、第1留置針100および第2留置針200を総称して留置針と称する。
【0015】
図1に示すように、第1留置針100は、第1カテーテル部110と、第1カテーテル部110の内腔に配置された状態で(
図2を参照)、リンパ管Lに対して穿刺される針先121を備える内針120と、内針120の基端側に取り付けられる内針ハブ130と、内針ハブ130の基端側に連結される把持部140と、を有している。
【0016】
なお、第1留置針100および第2留置針200の説明においては、内針120,220をリンパ管Lおよび静脈Pに対して穿刺する側(
図2の下側)を先端側と称し、把持部140,240が配置される側(
図2の上側)を基端側と称する。
【0017】
第1留置針100は、第1カテーテル部110を、他の構成部材(内針120、内針ハブ130および把持部140)から分離可能に構成されている。これにより、第1留置針100は、
図6(A)に示すように組み立てられた状態でリンパ管Lに穿刺されて、
図6(B)に示すように第1カテーテル部110のみをリンパ管Lに留置することができる。
【0018】
第1カテーテル部110は、内腔を有し、リンパ管Lに留置されるシース111と、シース111の基端側に取り付けられるカテーテルハブ112と、を有している。
【0019】
シース111は、柔軟性を有し、かつ、全部または一部が透明であることが好ましい。シース111の全部または一部が透明であることにより、シース111の内部に血液やリンパ液等の体液が流入したことを視認により確認することができる。
【0020】
カテーテルハブ112は、後述するチューブ部材300の第1端部310を接続可能に構成されている。カテーテルハブ112は、チューブ部材300の第1端部310が接続された状態で、シース111とチューブ部材300とを液密に連結可能に構成されている。
【0021】
図2、
図3に示すように、内針120は、シース111の内腔に挿通された状態で先端の針先121がシース111よりも先端側に突出している。この状態で、シース111の先端は、内針120の先端近傍に配置されている。これにより、内針120の先端がリンパ管L内に挿入されると、シース111も同一のリンパ管L内に挿入されるように構成されている。
【0022】
図1に示すように、第2留置針200は、第2カテーテル部210と、静脈Pに対して穿刺可能な針先を備える内針220と、内針220の基端側に取り付けられる内針ハブ230と、内針ハブ230の基端側に連結される把持部240と、を有している。なお、第2留置針200は、第1留置針100と略同一の構成を有しているため、第1留置針100の
図2、
図3に相当する図示を省略する。
【0023】
第2カテーテル部210は、内腔を有し、静脈Pに留置されるシース211と、シース211の基端側に取り付けられるカテーテルハブ212と、を有している。
【0024】
カテーテルハブ212は、後述するチューブ部材300の第2端部320を接続可能に構成されている。カテーテルハブ212は、チューブ部材300の第2端部320が接続された状態で、シース211とチューブ部材300とを液密に連結可能に構成されている。
【0025】
シース111,211の構成材料としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルナイロン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のメタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブタジエン、エチレン−テトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、およびシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種以上の樹脂が挙げられる。なお、上記樹脂は、1種を単独で使用されてもまたは2種以上を混合物の形態で使用してもよい。なお、リンパ管Lおよび静脈Pの内壁に対する摺動性を向上させるために、シース111,211の外表面に親水性コートを施してもよい。
【0026】
シース111,211の外径は、治療対象となるリンパ管Lや静脈Pの外径に合わせて適宜選択することが可能であるが、例えば、0.8mm以下に形成することが好ましい。リンパ管Lおよび静脈Pの外径が約1mmの場合、シース111の外径は、約0.7mmとすることができる。シース111,211の外径を上記のように設定することによって、より低侵襲な手技が可能となる。また、シース111,211の内径は、0.35mm以上であることが好ましい。シース111,211の内径を上記のように設定することによって、送液するリンパ液の流量を確保して、リンパ浮腫の迅速な治療が可能になる。
【0027】
(チューブ部材300)
図1に示すように、チューブ部材300は、第1カテーテル部110を介してリンパ管Lに接続される第1端部310と、第2カテーテル部210を介して静脈Pに接続される第2端部320と、を有している。チューブ部材300の第1端部310と第2端部320との間には、ポンプ400が配置されている。
【0028】
チューブ部材300の外径は、特に限定されないが、例えば、0.8mm以下に形成することできる。
【0029】
チューブ部材300内を流れるリンパ液はタンパク質濃度が非常に高いため、チューブ部材300の内表面に大量に吸着すると、チューブ部材300に目詰まりが生じる可能性がある。このため、チューブ部材300の内表面には、タンパク質等の付着を防止するコーティング等が施された付着防止表面を形成することが好ましい。
【0030】
付着防止表面は、例えば、親水性コーティング、フッ素系コーティング、シリコン系コーティング、微細凹凸構造を有する表面、および上記コーティングと凹凸構造を組み合わせた表面、シリコンオイルやフッ素系オイルなどの血液と混じり合わない安定な液相を保持する表面などをチューブ部材300の任意の箇所に形成することで構成できる。
【0031】
また、チューブ部材300の内表面には、血液が触れる可能性があるため、各種のコーティング等を施すことが好ましい。例えば、チューブ部材300を構成する材料中に抗血栓性物質を配合したり、チューブ部材300の内表面に抗血栓性物質をコーティングしたりすることが可能である。特に、第2端部320は、静脈P中の血液と接触する可能性が高いため、血栓等が付着するのを防止するために、第2端部320の内表面に抗血栓性を付加することが好ましい。
【0032】
上記の抗血栓性物質としては、ヘパリン、ヘパリン様物質、PMEA(ポリ(2 メトキシエチルアクリレート))、PEG(ポリエチレングリコール)、ベタイン系双性イオンポリマーなどを使用することが可能である。
【0033】
(ポンプ400)
ポンプ400は、チューブ部材300の一部を内蔵し、当該チューブ部材300の外周面を複数のフィンガ(図示せず)により押圧して、チューブ部材300を蠕動させて、リンパ管L内のリンパ液を静脈Pへ圧送する蠕動式のポンプ機構を備えている。
【0034】
当該ポンプ機構は、例えば、複数の偏心カムを備えるカムシャフト(図示せず)の回転動作に連動させて各フィンガをチューブ部材300に対して所定の周期で進退移動させることにより適正な流速でリンパ液を送液可能に構成することができる。より具体的には、リンパ液の送液方向の上流側に配置したフィンガによる押圧を解除してチューブ部材300内へリンパ液を流入させた後、各フィンガによってチューブ部材300をリンパ液の送液方向へ向かって順次に押圧して蠕動運動するように変形させることでリンパ液を送り出すことができる。このような蠕動式のポンプ機構を備えることにより、ポンプ400は送液するリンパ液の流量を調整可能に構成されている。
【0035】
次に、
図4〜
図6を参照して、本実施形態に係る医療デバイス10の使用例を説明する。
【0036】
図4は、医療デバイス10を使用した手技の各手順を示す図、
図5は、リンパ浮腫の手技例を示す図、
図6は、第1留置針100を使用した手技例を模式的に示す断面図である。
【0037】
図4を参照して、リンパ浮腫の治療方法は、概説すると、治療対象となるリンパ管Lを特定する特定工程(S11)と、皮膚を切開してリンパ管Lを露出させる露出工程(S12)と、リンパ管Lに第1留置針100を穿刺して第1カテーテル部110を留置する第1留置工程(S13)と、第1カテーテル部110とチューブ部材300の第1端部310とを接続する第1接続工程(S14)と、静脈Pに第2留置針200を穿刺して第2カテーテル部210を留置する第2留置工程(S15)と、第2カテーテル部210とチューブ部材300の第2端部320とを接続する第2接続工程(S16)と、ポンプ400を使用してリンパ液をリンパ管Lから静脈Pに送液する送液工程(S17)と、を有している。以下、各工程について説明する。
【0039】
特定工程(S11)では、治療対象となるリンパ管Lを特定する。特定方法としては、例えば、ICG(Indocyanine green)蛍光リンパ管造影法を用いることができる。
図5(A)には、ICG蛍光リンパ管造影法によりリンパ管Lを可視化した状態を模式的に示している。
【0040】
ICG蛍光リンパ管造影法では、ICG造影剤を患部となる下肢や上肢に数カ所注射し、公知の赤外線カメラを用いることによりリンパ管L内の流れを可視化する。そして、ICG造影剤の流れが滞るリンパ管Lのうち、任意のリンパ管Lを治療対象に特定する。例えば、下肢のリンパ浮腫を治療する場合は、足背、足首、下腿、膝上、膝下等に存在するリンパ管Lを治療対象として選択することができ、上肢のリンパ浮腫を治療する場合は、手首周囲、前腕、肘周囲等に存在するリンパ管Lを治療対象として選択することができる。
【0041】
また、リンパ管Lとしては、例えば、皮膚Sの直下に存在する浅層リンパ管を選択することができる。選択するリンパ管Lの外径は、例えば、1mm以上であることが好ましい。なお、後述する露出工程(S12)の後に、リンパ管Lを刺激してリンパ管Lの外径を拡張させてもよい。
【0043】
露出工程(S12)では、
図5(B)に示すように、治療対象として特定したリンパ管Lを覆う皮膚Sを切開して切開部dを形成し、リンパ管Lを露出させる。切開は、メス等の公知の処置具を使用して行うことが可能である。
【0044】
次に、第1留置工程(S13)を行う。
【0045】
第1留置工程(S13)は、第1留置針100を使用して実施することができる。
【0046】
第1留置工程(S13)を開始するにあたり、第1留置針100は、
図2に示すように、第1カテーテル部110、内針120、内針ハブ130および把持部140のそれぞれを一体的に組み付けた状態で準備する。
【0047】
次に、
図6(A)に示すように、リンパ管Lに第1留置針100の内針120を穿刺する。内針120の針先121をリンパ管Lの管壁L1に対して貫通させることにより、管壁L1に穿刺部位(穿孔)tを形成させると同時に、シース111の先端部を穿刺部位tに挿通させる。その後、
図6(B)に示すように、内針120、内針ハブ130および把持部140を抜去して、第1カテーテル部110のみをリンパ管Lに留置する。
【0048】
次に、第1接続工程(S14)を行う。
【0049】
第1接続工程(S14)では、
図1に示すように、チューブ部材300の第1端部310を第1カテーテル部110のカテーテルハブ112に接続する。これにより、第1カテーテル部110とチューブ部材300とが液密に連結される。
【0050】
次に、第2留置工程(S15)を行う。
【0051】
第2留置工程(S15)は、第2留置針200を使用して実施することができる。
【0052】
第2留置工程(S15)を開始するにあたり、第2留置針200は、第1留置工程(S13)と同様に、第2カテーテル部210、内針220、内針ハブ230および把持部240のそれぞれを一体的に組み付けた状態で準備する。
【0053】
次に、第2留置工程(S15)では、静脈Pに対して経皮的に第2留置針200の内針220を穿刺する。その後、内針220、内針ハブ230および把持部240を抜去して、第2カテーテル部210のみを静脈Pに留置する。なお、第2留置工程(S15)は、第1留置工程(S13)と同様であるため、図示は省略する。
【0054】
次に、第2接続工程(S16)を行う。
【0055】
第2接続工程(S16)では、
図1に示すように、チューブ部材300の第2端部320を第2カテーテル部210のカテーテルハブ212に接続する。これにより、第2カテーテル部210とチューブ部材300とが液密に連結される。
【0056】
なお、第2留置工程(S15)および第2接続工程(S16)は、第1留置工程(S13)および第1接続工程(S14)よりも先に実施してもよい。また、第1留置工程(S13)および第2留置工程(S15)を先に実施した後に、第1接続工程(S14)および第2接続工程(S16)を実施してもよい。
【0058】
送液工程(S17)では、ポンプ400を作動して、チューブ部材300を介してリンパ液をリンパ管L側から静脈P側(
図1の矢印方向)に送液する。これにより、リンパ浮腫の原因となるリンパ液の滞留が解消され、患部におけるむくみ等の症状が緩和してリンパ浮腫の治療が完了する。
【0059】
送液工程(S17)において、ポンプ400によって送液するリンパ液の流量(送液量)は、リンパ管Lや静脈Pの大きさによっても異なるが、例えば、100mL/hに設定することができる。また、ポンプ400によって送液する時間は、例えば、1〜24時間程度に設定することができる。
【0060】
リンパ浮腫の治療後、上記リンパ浮腫の治療工程(S11〜S17)を定期的に繰り返して行う。これにより、リンパ管Lや静脈Pが詰まってリンパ浮腫が再発する前に、コレステロール等の不純物や血栓などの詰まりの原因となる物質を強制的に流すことができる。その結果、リンパ浮腫の治療後の再発率を低減させることができる。リンパ浮腫の治療後に上記リンパ浮腫の治療工程(S11〜S17)を行う頻度は、例えば、3ヶ月に一回、または半年に一回程度とすることができる。
【0061】
なお、上記の使用例では、1本のリンパ管Lから静脈Pへリンパ液を送液する例について説明したが、複数のリンパ管Lから静脈Pへリンパ液を送液してもよい。この場合においても、上記の使用例と同様の手技を行うことができる。なお、送液するリンパ液の流量は、リンパ管の数に応じて変更することが好ましい。例えば、2本のリンパ管Lから静脈Pへリンパ液を送液する場合、ポンプ400によって送液するリンパ液の流量は、上記の使用例の約2倍(例えば、200mL/h)に設定することが好ましい。
【0062】
以上のように本実施形態に係る医療デバイス10は、リンパ管L(第1生体管腔)に接続される第1端部310と、静脈P(第2生体管腔)に接続される第2端部320と、を備えるチューブ部材300と、リンパ管L内のリンパ液(体液)を静脈Pへ圧送するポンプ400(圧送部)と、を有している。
【0063】
上記のように構成した医療デバイス10によれば、チューブ部材300を介してリンパ管Lと静脈Pとを接続し、ポンプ400によってリンパ管L内のリンパ液を静脈Pへ圧送することにより、リンパ液を強制的に送液することができる。また、ポンプ400によって定期的にリンパ管L内のリンパ液を静脈Pへ圧送することによって、コレステロール等の不純物や血栓などの詰まりの原因となる物質を強制的に流すことができる。その結果、リンパ浮腫の治療を行うとともに、リンパ浮腫の治療後の再発率を低減させることができる。
【0064】
また、ポンプ400は、チューブ部材300を蠕動させて、リンパ管L内のリンパ液を静脈Pへ圧送する蠕動式のポンプ機構を備えているため、リンパ液を強制的に送液できるとともに、送液するリンパ液の流量を調整することができる。
【0065】
また、医療デバイス10は、リンパ管Lに留置された状態で、リンパ管Lとチューブ部材300の第1端部310とを接続する第1カテーテル部110と、静脈Pに留置された状態で、静脈Pとチューブ部材300の第2端部320とを接続する第2カテーテル部210と、をさらに有している。第1カテーテル部110および第2カテーテル部210を介することによって、チューブ部材300の第1端部310および第2端部320を、リンパ管Lおよび静脈Pに対して比較的容易に接続することができる。
【0066】
また、医療デバイス10は、第1カテーテル部110と、第1カテーテル部110の内腔に配置された状態で、リンパ管Lに対して穿刺される内針120と、を含む第1留置針100と、第2カテーテル部210と、第2カテーテル部210の内腔に配置された状態で、静脈Pに対して穿刺される内針220と、を含む第2留置針200と、を有している。これにより、リンパ管Lに対して第1カテーテル部110を留置する手技および静脈Pに対して第2カテーテル部210を留置する手技を比較的容易に行うことができる。
【0067】
<第2実施形態>
次に、
図7〜
図11を参照して、第2実施形態に係る医療デバイスについて説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、第2実施形態において特に言及しない点については、上述した第1実施形態と同様に構成することができるものとする。
【0068】
図7は、医療器具500の概略斜視図、
図8は、
図7に示す8−8線に沿う医療器具500の断面図、
図9〜
図11は、医療器具500を使用した手技例を説明するための図である。
【0069】
前述した第1実施形態では、第1留置針100を使用して第1カテーテル部110をリンパ管Lに留置したが、本実施形態では、医療器具500を使用して第1カテーテル部110aをリンパ管Lに留置する点で相違する。その他の構成は、前述した第1実施形態と同様である。
【0070】
第2実施形態に係る医療デバイスは、第1カテーテル部110aをリンパ管Lに留置するための医療器具500と、静脈Pに穿刺して留置される第2カテーテル部210を含む第2留置針200と、第1カテーテル部110aと第2カテーテル部210とを接続するチューブ部材300aと、チューブ部材300aを介してリンパ管L内のリンパ液を静脈Pへ圧送するポンプ400と、を有している。
【0071】
(第1カテーテル部110a)
本実施形態に係る第1カテーテル部110aは、
図11(B)に示すように、オスコネクタに相当するチューブ部材300aの第1端部310aを内腔に挿入した状態で接続可能なメスコネクタとして構成されている。
【0072】
第1カテーテル部110aの基端部には、リンパ管Lに形成した穿刺部位tからの抜けを防止する抜け防止部113aが設けられている。抜け防止部113aは、径方向外方へ突出した形状を有する凸部により構成している。
図11(A)に示すように、抜け防止部113aは、リンパ管Lに形成した穿刺部位t内に第1カテーテル部110aを挿入した状態において、リンパ管L内に配置される。
【0073】
抜け防止部113aは、第1カテーテル部110aに対して穿刺部位tから抜け出る方向の力(
図11(A)中の上向きの力)が不用意に作用するような場合に、当該抜け防止部113aの上面をリンパ管Lの管壁L1の内面に当接させる。抜け防止部113aは、この当接により、リンパ管Lに対して第1カテーテル部110aが抜け出るのを防止する係止力を作用させる。このように、第1カテーテル部110aに抜け防止部113aを設けることにより、リンパ管Lに対して第1カテーテル部110aが固定された状態をより安定的に維持することが可能になる。なお、抜け防止部113aの形状は図示した形状に限定されることはなく、適宜変更することが可能である。
【0074】
図11(A)に示すように、第1カテーテル部110aは、その内面に凹状の嵌合部114aを有している。チューブ部材300aの第1端部310aは、その外面に第1カテーテル部110aの嵌合部114aに嵌合自在な凸状の嵌合部311aを有している。
図11(B)に示すように、第1カテーテル部110aに第1端部310aを挿入して互いの嵌合部114a,311aを嵌合させることにより、第1カテーテル部110aとチューブ部材300aとの連結が不用意に解除されることを防止することができる。
【0075】
(医療器具500)
図7、
図8に示すように、医療器具500は、第1カテーテル部110aを収容可能な内腔を有し、リンパ管Lに対して穿刺可能な針先511を備える穿刺部材510と、穿刺部材510内に収容した第1カテーテル部110aの移動を操作するための押し子520と、穿刺部材510の外周を覆うように配置された外筒530と、穿刺部材510をリンパ管Lに穿刺する際に、リンパ管Lの管壁L1を穿刺部材510側へ変形させるための負圧を発生する負圧発生部540と、を有している。
【0076】
なお、医療器具500の説明においては、穿刺部材510の針先511が形成された側(
図8の下側)を先端側とし、穿刺部材510の針先511が形成された側と反対側(
図8の上側)を基端側と称する。
【0077】
穿刺部材510は、中空状の部材により構成している。また、穿刺部材510は、その先端にリンパ管Lに穿刺可能な針先511を構成している。
【0078】
穿刺部材510は、例えば、生体適合性を備える公知の樹脂材料や金属材料により構成することができる。また、穿刺部材510は、針先511の穿刺性がある程度確保されるように、所定の硬度を有するように構成されていることが好ましい。穿刺部材510の構成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体,テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体,テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体,PVDF(ポリビニリデンフルオライド,ポリクロロトリフルオロエチレン,クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体や紫外線硬化樹脂等の樹脂材料、SUS、NiTi、CoCrなどの金属材料、ガラス、セラミックスなどを使用することができる。なお、穿刺部材510を樹脂材料により構成する場合、穿刺部材510の内部を外部から視認可能となるようにして手技の効率性を向上させるために、穿刺部材510を透明または半透明に形成することが好ましい。
【0079】
図8に示すように、押し子520は、棒状の本体部521と、本体部521の先端に配置され、第1カテーテル部110aを先端側へ移動させる押圧力を付与する押し込み部522と、を備えている。医療デバイス10を使用する使用者(術者等)は、本体部521を手指等により把持して押し子520を前進移動させることにより、第1カテーテル部110aを穿刺部材510の先端側へ前進移動させて、穿刺部材510の内腔510aから第1カテーテル部110aを押し出す操作を行うことができる。
【0080】
負圧発生部540は、穿刺部材510の内腔510aに負圧を発生させるピストンによって構成されている。具体的には、負圧発生部540は、穿刺部材510の内腔510aに挿入される棒状の本体部541と、本体部541の先端に設けられた弁体(プランジャ)542と、を有している。負圧発生部540の弁体542は、穿刺部材510の内腔510aに摺動可能に挿入される。
【0081】
図9(A)に示すように、負圧発生部540を使用する際は、外筒530により穿刺部材510の外周面を覆った状態とし、さらに、外筒530の先端開口部をリンパ管Lの管壁L1の外面に接するように配置することにより、穿刺部材510の周囲に気密な空間部gを区画する。
【0082】
外筒530により空間部gを区画した状態で、
図9(B)に示すように負圧発生部540の弁体542を穿刺部材510の基端側へ摺動させると、穿刺部材510を介して空間部gに吸引圧が作用し、空間部g内に負圧(陰圧)が発生する。これにより、リンパ管Lの管壁L1が持ち上げられて、管壁L1が穿刺部材510の針先511側へ近付くように変形する。リンパ管Lの管壁L1が変形すると、管壁L1において穿刺部材510の針先511が刺入される刺入目標位置bにおいてリンパ管Lの外径が広げられた状態になる。この状態で穿刺部材510をリンパ管Lに穿刺することにより、穿刺部材510の針先511がリンパ管Lを貫通するのを好適に防止することができる。
【0083】
また、吸引圧の作用により刺入目標位置bを捕捉した状態で穿刺部材510の針先511を刺入させることができるため、リンパ管Lの潰れや刺入目標位置bに対する位置ずれが防止される。さらに、管壁L1の膨出部(持ち上げられた部分)L2の周囲を外筒530により覆って保護した状態で穿刺を行うため、穿刺に伴い形成される穿刺部位tを穿刺直後に外筒530で保護することが可能になる。これにより、穿刺部位tを清潔な状態に保つことができ、かつ、手技時の周囲環境の影響により穿刺部位tやその周辺部位に損傷等が生じるのを防止することが可能になる。
【0084】
なお、
図9(B)に示すように、空間部gに負圧を発生させる際に弁体542の先端側に配置される押し子520の押し込み部522には、弁体542の摺動に伴う吸引作用が阻害されることのないように、軸方向に貫通する通孔523を形成している。
【0085】
負圧発生部540は、穿刺部材510の内面との間の気密性を維持しつつ、穿刺部材510の内腔510aを摺動することが可能となるように、弾性変形可能な樹脂材料により構成することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンエチレンブチレンスチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、塩素化ブチルゴム、シリコーンゴムなどを使用することが可能である。
【0086】
次に、本実施形態に係る医療デバイスの使用例を説明する。
【0087】
本実施形態に係る医療デバイスのリンパ浮腫の治療方法では、
図4を参照して、第1留置工程(S13)および第1接続工程(S14)が前述した実施形態のリンパ浮腫の治療方法と相違する。その他の工程は、前述した実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0088】
第1留置工程(S13)は、医療器具500を使用して実施することができる。
【0089】
第1留置工程(S13)を開始するにあたり、医療器具500は、
図7、
図8に示すように、第1カテーテル部110a、穿刺部材510、押し子520、外筒530および負圧発生部540のそれぞれを一体的に組み付けた状態で準備する。
【0090】
次に、
図9(A)に示すように、リンパ管Lの管壁L1に外筒530の先端部を接した状態とし、外筒530により空間部gを形成する。
【0091】
次に、
図9(B)に示すように、医療器具500の負圧発生部540を基端側へ引き上げるように移動させて、空間部g内に負圧を発生させる。この操作により、リンパ管Lの管壁L1の一部を穿刺部材510側へ変形させて、リンパ管Lの管壁L1に膨出部L2を形成する。
【0092】
次に、
図10(A)に示すように、穿刺部材510を先端側へ移動させて、リンパ管Lの膨出部L2に対して針先511を穿刺する。針先511を管壁L1に対して貫通させることにより、管壁L1に穿刺部位(穿孔)tを形成させる。
【0093】
次に、
図10(B)に示すように、押し子520を先端側へ移動させることにより、第1カテーテル部110aを先端側へ押し込む。この操作により、第1カテーテル部110aを穿刺部位tの内側まで移動させる。また、この際、第1カテーテル部110aの抜け防止部113aをリンパ管Lの内側に配置させる。その後、穿刺部材510を基端側へ移動させつつ、押し子520を先端側へ移動させることにより、穿刺部材510から第1カテーテル部110aを放出させる。
図11(A)に示すように、第1カテーテル部110aは、先端部がリンパ管Lの管腔内に挿入された状態で、かつ、基端部がリンパ管Lの管腔から露出された状態で、リンパ管Lに留置される。
【0094】
次に、第1接続工程(S14)を行う。
【0095】
第1接続工程(S14)では、
図11(B)に示すように、第1端部310aを第1カテーテル部110aに接続する。これにより、第1カテーテル部110aとチューブ部材300aとが液密に連結される。
【0096】
第2実施形態に係る医療器具500を備える医療デバイスにおいても、前述した第1実施形態と同様の効果が発揮される。
【0097】
また、医療デバイスは、リンパ管Lに対して穿刺可能な穿刺部材510と、穿刺部材510をリンパ管Lに穿刺する際に、リンパ管Lの管壁L1を穿刺部材510側へ近付くように変形させるための負圧を発生する負圧発生部540と、を有している。負圧発生部540によって、リンパ管Lの管壁L1を穿刺部材510側へ近付くように変形させることにより、リンパ管Lが潰れることが防止される。このため、穿刺部材510をリンパ管Lに比較的容易に穿刺することができる。また、リンパ管Lの管壁L1を穿刺部材510側へ変形させた状態で穿刺部材510をリンパ管Lの管壁L1に穿刺することによって、穿刺部材510がリンパ管Lを貫通するのを好適に防止することができる。
【0098】
また、第1カテーテル部110aは、リンパ管Lに留置された状態で、リンパ管Lからの抜けを防止する抜け防止部113aを有しているため、第1カテーテル部110aがリンパ管Lに留置された状態を安定して維持することができる。
【0099】
以上、実施形態を通じて本発明に係る医療デバイスを説明したが、本発明は実施形態において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0100】
例えば、圧送部は、体液を圧送することができる限りにおいて蠕動式のポンプ機構を備える構成に限定されず、公知の圧送装置を使用することができる。
【0101】
また、複数の第1生体管腔(リンパ管)から第2生体管腔(静脈)へ体液(リンパ液)を送液する場合、チューブ部材は、体液の流路を分岐させて、その分岐した端部に複数の第1端部を備える構成としてもよい。この場合、医療デバイスは、複数の第1生体管腔に第1カテーテル部を留置するための複数の第1留置針または複数の医療器具のいずれか一方を備える構成としてもよいし、第1留置針および医療器具の両方を備える構成としてもよい。
【0102】
また、第2実施形態に係る負圧発生部は、ピストンによって構成されているとしたが、穿刺部材側へ第1生体管腔の管壁を変形させるための負圧を発生することができる限りにおいてこれに限定されず、例えば、ポンプ等によって構成してもよい。
【0103】
また、前述した実施形態において説明した医療デバイスの各部の構造や部材の配置等は適宜変更することができ、図示により説明した付加的な部材の使用の省略や、その他の付加的な部材の使用等も適宜に行い得る。