(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、飛行装置の複数の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
図1および
図2に示すように、第1実施形態の飛行装置10は、基体11、スラスタ12およびソナーモジュール13を備えている。基体11は、本体14および腕部15を有している。本体14は、基体11の重心位置に設けられている。腕部15は、この本体14から外側に突出している。本実施形態の場合、基体11は、本体14の周方向へ等間隔に4本の腕部15を有している。腕部15の本数は、2本以上であれば、4本に限らず任意に設定することができる。
【0009】
基体11の腕部15には、それぞれスラスタ12が設けられている。スラスタ12は、いずれも腕部15の本体14と反対側の端部に設けられている。これらのスラスタ12は、いずれもプロペラ16と、このプロペラ16を回転駆動するモータ17とを有している。スラスタ12は、モータ17の駆動力によってプロペラ16が回転することにより推進力を発生する。
【0010】
飛行装置10は、
図2に示すように制御部20およびバッテリ21を備えている。制御部20およびバッテリ21は、いずれも本体14に収容されている。
図3に示すように制御部20は、演算部22を有している。演算部22は、例えばCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成されている。制御部20は、演算部22のROMに記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、スラスタ12およびソナーモジュール13をはじめとする飛行装置10の各部を制御する。
【0011】
飛行装置10は、姿勢検出部23を備えている。姿勢検出部23は、GPSセンサ24、加速度センサ25、角速度センサ26、地磁気センサ27および高度センサ28などを有している。姿勢検出部23は、GPSセンサ24、加速度センサ25、角速度センサ26、地磁気センサ27および高度センサ28から基体11の姿勢を検出する。GPSセンサ24は、GPS(Global Positioning System)信号を受信して、現在位置を検出する。加速度センサ25は、ロール軸に相当するx軸、ピッチ軸に相当するy軸、およびヨー軸に相当するz軸の三次元の各方向において基体11に加わる加速度を検出して姿勢検出部23へ出力する。同様に、角速度センサ26は、基体11に加わる3次元の各方向における角速度を検出して姿勢検出部23へ出力する。地磁気センサ27は地磁気を検出して姿勢検出部23へ出力し、高度センサ28は基体11の高度を検出して姿勢検出部23へ出力する。姿勢検出部23は、受信および検出した各種の信号に基づいて、基体11の飛行方向、飛行高度および姿勢角などの各種の情報を検出する。
【0012】
飛行装置10は、別体となったプロポ30からの入力された操作に基づいて飛行する。操作者は、プロポ30を通して、飛行装置10の飛行方向、飛行姿勢および飛行速度を入力する。入力された操作は、無線または有線の通信を経由して飛行装置10へ送信される。飛行装置10は、受信部31を備えている。受信部31は、プロポ30から送信された操作の指示を受信し、制御部20へ出力する。制御部20は、受信部31で受信した指示、および姿勢検出部23で検出した基体11の姿勢に基づいてスラスタ12を制御する。
【0013】
飛行装置10は、ソナーモジュール13を備えている。ソナーモジュール13は、
図1および
図2に示すように基体11の本体14に、基体11の中心を基準として半球面上に配置されている。基体11の中心は、ヨー軸に一致する。第1実施形態の場合、飛行装置10は、
図4に示すように9つのソナーモジュール131〜139を備えている。これらのソナーモジュール131〜139のうち8つのソナーモジュール131〜138は、基体11の中心、つまりヨー軸を基準とする円周上に等間隔に8つ配置される。これとともに、残る1つのソナーモジュール139は、基体11の中心を基準とする半球面上となるように、基体11のヨー軸方向の上方に配置されている。すなわち、ソナーモジュール139は、円周上に配置されている他のソナーモジュール131〜138よりもヨー軸方向で上方に設けられている。これにより、ソナーモジュール131〜139は、
図2の二点鎖線で示すように超音波の照射面が半円球面に配置される。なお、ソナーモジュール13は、
図5に示すようにソナーモジュール139を省略することにより、基体11の中心を基準とする円周上にのみ配置する構成としてもよい。また、ソナーモジュール13の数は、図示した例に限らず、任意に設定することができる。
【0014】
ソナーモジュール13は、
図3および
図4に示すように照射部41および受信部42が一体にモジュール化されている。照射部41は、超音波を照射する。受信部42は、照射部41から照射された超音波を受信する。ソナーモジュール13は、照射部41から照射された超音波を受信部42で受信することにより、基体11から基体11の外部の障害物までの距離を検出する。各ソナーモジュール13は、検出した障害物までの距離を制御部20へ出力する。
【0015】
第1実施形態の場合、円周上に配置される8つのソナーモジュール131〜138は、
図6に示すように基体11のヨー軸に垂直なロール軸およびピッチ軸によって形成されるx−y平面に対して傾斜して設けられている。
図6は、ソナーモジュール131〜138のうちソナーモジュール133およびソナーモジュール137を図示している。すなわち、第1実施形態の場合、8つのソナーモジュール131〜138は、
図6の矢印Bに示すように基体11の水平面よりもややヨー軸の上方へ向けて超音波を照射する。ソナーモジュール13の照射部41は、
図6の矢印Bに一致する中心軸から±30°〜40°の範囲で円錐状に超音波を照射する。そこで、このようにソナーモジュール13の角度を調整することにより、照射部41から照射された超音波は、スラスタ12のプロペラ16との干渉が回避される。照射部41から照射された超音波がスラスタ12のプロペラ16にあたると、プロペラ16が障害物として誤検出され、障害物までの正確な距離の検出が困難になる。第1実施形態のように円周上に配置されるソナーモジュール13をヨー軸に対して傾斜して設置することにより、プロペラ16の誤検出が低減され、障害物までの正確な距離が検出される。一方、
図4および
図6に示すように基体11の中心に配置されるソナーモジュール139は、照射される超音波の中心軸がヨー軸と一致している。すなわち、ソナーモジュール139の照射部41は、ヨー軸の上方へ向けて超音波を照射する。
【0016】
第1実施形態の場合、飛行装置10は、上記の構成に加え、
図3に示すように警告部50を備えている。警告部50は、制御部20に接続しており、ソナーモジュール13で検出された障害物までの距離が設定距離以下になると警告を発する。具体的には、制御部20は、ソナーモジュール13で検出した基体11と障害物との間の距離が設定距離以下になると、警告部50を作動させる。これにより、警告部50は、プロポ30の操作者に、五感を通して飛行装置10と障害物との距離が設定距離以下となったことを報知する。警告部50は、飛行装置10またはプロポ30において警告を発する。警告部50は、例えば飛行装置10やプロポ30に設けられているランプなどを通して視覚的に警告したり、ブザーなどを通して聴覚的に警告したりする。また、警告部50は、プロポ30に設けられているバイブレータの振動などによって触覚的に操作者に警告してもよい。設定距離は、飛行装置10の安全性を考慮して予め任意に設定されている。
【0017】
次に、上記の構成による飛行装置10の障害物の検出について説明する。
第1実施形態の場合、飛行装置10は、
図4に示すように半球面上に配置された9つのソナーモジュール131〜139を備えている。制御部20は、半球面上に配置されている9つのソナーモジュール131〜139に対して、順に超音波の照射を指示する。制御部20は、例えばソナーモジュール131から順に1つずつ超音波を照射する。制御部20は、9つのソナーモジュール131〜139において一定の間隔でそれぞれ超音波を照射する。そして、9つのソナーモジュール131〜139で超音波を1回ずつ照射するまで期間は、1周期とする。制御部20は、例えば数ミリ秒〜数秒の周期で9つのソナーモジュール131〜139から超音波を照射する。このように9つのソナーモジュール131〜139において一定の間隔でそれぞれ超音波を照射することにより、いずれかのソナーモジュールで照射した超音波と他のソナーモジュールで照射した超音波とが干渉することはない。
【0018】
第1実施形態の場合、
図7に示すように1つのソナーモジュール13から照射された超音波は、隣り合う2つのソナーモジュール13によっても受信される。例えば、ソナーモジュール131から照射された超音波は、ソナーモジュール131だけでなく、ソナーモジュール131の隣りに設けられているソナーモジュール132およびソナーモジュール138によっても受信される。この場合、ソナーモジュール131は、照射ソナーモジュールに相当する。このように、1つのソナーモジュール13による1つの照射ノードに対して受信ノードを複数に設定することにより、障害物の方向を検出することができる。すなわち、制御部20は、超音波を照射するソナーモジュール131からだけでなく、これと隣り合って配置されているソナーモジュール132およびソナーモジュール138からも超音波の受信強度を取得する。制御部20は、この3つのソナーモジュール131、132、138で受信した超音波の受信強度を用いて障害物までの距離だけでなく方向を推定する。このように受信ノードを増すことにより、障害物の方向および距離の推定精度は向上する。なお、1つのソナーモジュール13から照射した超音波は、3つのソナーモジュール13に限らず、4つ以上のソナーモジュール13で受信してもよい。例えばソナーモジュール13を円周上または半球面上において密に配置する場合、1つのソナーモジュール13から照射した超音波は4つ以上のソナーモジュール13で受信することができる。
【0019】
また、制御部20は、円周上に配置されている8つのソナーモジュール131〜138のうち2つから超音波を同時に照射してもよい。
図4に示すように例えば基体11の中心を挟んで反対側に配置されているソナーモジュール131とソナーモジュール135とは、照射した超音波が互いに干渉することがない。そこで、制御部20は、
図8に示すように対称に配置されているソナーモジュール131とソナーモジュール135、ソナーモジュール132とソナーモジュール136、ソナーモジュール133とソナーモジュール137、ソナーモジュール134とソナーモジュール138とから同時に超音波を照射する構成としてもよい。これにより、制御部20は、1回の超音波の照射周期で取得することができる情報が増加する。
【0020】
以上説明した第1実施形態では、複数のソナーモジュール13は、基体11の中心を基準として円周上または半球面上に複数設けられている。このように円周上または半球面上に複数のソナーモジュール13を設けることにより、基体11の周囲において障害物までの距離だけでなく方向も容易に把握される。したがって、ヨー軸の上方だけでなく、ヨー軸に垂直な水平方向のいずれの方向でも障害物の存在、およびその障害物までの距離を検出することができる。
【0021】
また、第1実施形態では、ソナーモジュール13で検出された障害物までの距離が最小距離以下になると、制御部20は警告部50を通して警告する。これにより、飛行装置10の操縦者は、視覚的に飛行装置10を視認できない環境下でも、飛行装置10が障害物と干渉する前に飛行装置10の操作が可能となる。したがって、障害物との接触などを未然に回避することができ、安全性を高めることができる。
【0022】
第1実施形態では、ソナーモジュール13は基体11に対して傾斜して設けられている。具体的には、円周上に配置されているソナーモジュール131〜138は、基体11のヨー軸に対して垂直な平面から上方へ傾斜している。そのため、ソナーモジュール131〜138から照射された超音波は、スラスタ12のプロペラ16による反射が低減される。これにより、プロペラ16の検出による障害物の誤検出は低減される。したがって、障害物の方向および距離を高い精度で検出することができる。
【0023】
第1実施形態では、例えばソナーモジュール131から照射された超音波は、ソナーモジュール131だけでなく、隣り合うソナーモジュール132およびソナーモジュール138によっても受信される。これにより、制御部20は、3つのソナーモジュール131、132、138で受信された超音波の反射強度を用いて障害物の方向および距離を推定する。したがって、障害物の方向および距離の推定精度を高めることができる。また、このとき干渉しない位置関係による複数のソナーモジュール13から同時に超音波を照射してもよい。このように複数のソナーモジュール13から同時に超音波を照射することにより、超音波の1周期の照射によって取得される情報量が増大する。したがって、障害物の方向および距離の推定精度をより高めることができる。
【0024】
(第2実施形態)
第2実施形態による飛行装置を
図9に示す。
第2実施形態の場合、飛行装置10の構造的な構成は第1実施形態と共通している。第2実施形態では、制御部20は、コンピュータプログラムを実行することにより、進行方向検出部61および照射制御部62をソフトウェア的に実現している。これら、進行方向検出部61および照射制御部62は、ソフトウェア的に限らず、ハードウェア的、またはハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現してもよい。
【0025】
進行方向検出部61は、基体11の進行方向を検出する。具体的には、進行方向検出部61は、例えば姿勢検出部23のGPSセンサ24で検出した進行方向、加速度センサ25で検出した加速度、角速度センサ26で検出した角速度、および地磁気センサ27で検出した地磁気などから基体11の進行方向を検出する。このとき、進行方向検出部61は、基体11の進行方向だけでなく、その進行方向への飛行速度も検出する。
【0026】
照射制御部62は、ソナーモジュール13からの超音波の照射を制御する。具体的には、照射制御部62は、ソナーモジュール13を「全方位センシングモード」または「固定方位センシングモード」のいずれかに切り替える。
(全方位センシングモード)
照射制御部62は、基体11が停止または静止していると考えられるとき、「全方位センシングモード」で超音波の照射を制御する。すなわち、照射制御部62は、進行方向検出部61で基体11の停止または静止が検出されたとき、「全方位センシングモード」として複数のソナーモジュール13において予め設定された設定順序に基づいて超音波を照射する。照射制御部62は、「全方位センシングモード」のとき、例えば上述の第1実施形態で説明したようにソナーモジュール131からソナーモジュール138の順に超音波を照射する。このように、「全方位センシングモード」では、すべてのソナーモジュール13で順に超音波を照射し、ヨー軸を中心とする基体11の上方の全方位において障害物を検出する。設定順序は、一例であり、任意に変更することができる。
【0027】
(固定方位センシングモード)
照射制御部62は、基体11が移動していることが考えられるとき、「固定方位センシングモード」で超音波の照射を制御する。すなわち、照射制御部62は、進行方向検出部61で基体11の移動にともなう進行方向が検出されたとき、「固定方位センシングモード」として複数のソナーモジュール13のうち基体11の進行方向の前方に位置するソナーモジュール13から超音波を照射する。つまり照射制御部62は、基体11の移動が検出されると「固定方位センシングモード」に移行し、複数のソナーモジュール13のうち進行方向の前方に位置するソナーモジュール13から超音波を照射する。例えば
図1の矢印で示す飛行方向Fへ飛行しているとき、照射制御部62は、この飛行方向Fの前方側に位置するソナーモジュール131から超音波を照射する。また、例えば飛行装置10が単純に上昇つまりヨー軸方向の上方へ移動していることが検出されたとき、ソナーモジュール139から超音波を照射する。ここで、基体11の移動とは、地面に対する移動を意味する。すなわち、基体11の速度は、対地速度を意味する。
第2実施形態の場合でも、障害物で反射した超音波の強度は、超音波を照射したソナーモジュール13だけでなくこれに隣り合う複数のソナーモジュール13で受信される。
【0028】
(センシングモードの切り替え制御)
次に、上記のセンシングモードを切り替える制御の例を
図10に基づいて説明する。
進行方向検出部61は、飛行装置10の電源がオンになっている間、基体11の速度すなわち移動速度を検出する(S101)。進行方向検出部61は、姿勢検出部23の各種センサの出力値に基づいて基体11の速度を検出する。進行方向検出部61は、検出した基体11の速度が「0」であるか否かを判断する(S102)。
【0029】
進行方向検出部61は、検出した基体11の速度が「0」であると判断すると(S102:Yes)、プロポ30への入力値が予め設定された入力上限値以下であるか否かを判断する(S103)。飛行装置10は、プロポ30によって遠隔操作されている。すなわち、飛行装置10を遠隔操作するためには、プロポ30に入力上限値より大きな入力が行なわれる。そこで、進行方向検出部61は、プロポ30への入力値が予め設定された入力上限値以下、つまり意図的な入力がされていないかどうかを確認する。入力上限値は、飛行装置10やプロポ30の特性に応じて設定されている。
【0030】
照射制御部62は、S103においてプロポ30への入力値が入力上限値以下であると判断すると(S103:Yes)、「全方位センシングモード」に設定する(S104)。すなわち、プロポ30への入力値が入力上限値以下であるとき、基体11は停止または静止していると考えられる。そこで、照射制御部62は、基体11の全方位において障害物を検出するために、センシングモードを「全方位センシングモード」に設定する。
【0031】
一方、S102において基体11の速度が「0」でないと判断されたとき(S102:No)、またはS103においてプロポ30への入力値が入力上限値よりも大きいと判断されたとき(S103:No)、照射制御部62は「固定方位センシングモード」に設定する。すなわち、S102において基体11の速度が「0」でないと判断されたとき、基体11は特定の方向へ向けて移動または上昇していると考えられる。また、S103において入力値が入力上限値より大きいと判断されたとき、基体11はプロポからの指示にしたがって飛行していることが考えられる。そこで、照射制御部62は、基体11が移動する進行方向前方において優先的に障害物を検出するために「固定方位センシングモード」に設定する(S105)。照射制御部62は、S105で「固定方位センシングモード」に設定すると、S101で検出した基体11の速度、飛行方向および姿勢角に基づいて、複数のソナーモジュール13のうちどのソナーモジュール13から優先的に超音波を照射するかを設定する(S106)。
【0032】
第2実施形態では、条件に応じて「全方位センシングモード」と「固定方位センシングモード」とを切り替えている。基体11が停止または静止しているとき、障害物が存在する方向の推定は困難である。そこで、照射制御部62は、基体11が停止または静止しているとき、基体11の全方位へ向けて超音波を照射する「全方位センシングモード」を実行する。一方、基体11の特定の方向へ飛行しているとき、飛行装置10はその飛行方向で障害物と干渉するおそれがある。そこで、照射制御部62は、基体11が移動しているときは飛行方向の前方へ向けて優先的に超音波を照射する「固定方位センシングモード」を実行する。このように、すべてのソナーモジュール13のうち飛行方向の前方にあたる一部のソナーモジュール13を優先的に使用することにより、特定のソナーモジュール13による障害物の検出が繰り返され、障害物を検出する周期は短縮される。その結果、障害物の検出精度が向上する。したがって、飛行装置10の飛行方向に応じて、より早期かつ確実な障害物の検出を行なうことができる。
【0033】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第2実施形態の応用例である。第3実施形態では、飛行装置10が飛行中に受ける風の影響を考慮している。
飛行装置10は、建物などの設備の内部を飛行するとき、風や気流といった外乱の影響をほとんど受けない。一方、飛行装置10が屋外を飛行するとき、風や気流などの外乱の影響を受けやすくなる。例えば飛行装置10が風の影響を受けるとき、基体11は風上から風下へ流されやすくなる。そこで、照射制御部62は、風下側のソナーモジュール13からの超音波の照射を優先する。具体的には、照射制御部62は、進行方向検出部61において基体11の進行方向を取得するとともに、姿勢検出部23で基体11の姿勢角を取得する。そして、照射制御部62は、取得した基体11の進行方向と基体11の姿勢角とがずれているか否かを判断する。照射制御部62は、基体11の進行方向と姿勢角とがずれているとき、進行方向検出部61で検出された基体11の進行方向へ基体11が風で流されていると判断する。この判断を用いて、照射制御部62は、基体11の姿勢角を「0」としたときの風向き方向下流側、すなわち風下側を検出する。照射制御部62は、複数のソナーモジュール13のうち、風下側に設けられているソナーモジュール13から超音波を照射する。これにより、基体11が風下へ流されていく場合、進行方向の前方である風下に位置する障害物が優先して検出される。
【0034】
以下、風の方向を推定する処理の一例を
図11に基づいて説明する。
(風の方向推定)
進行方向検出部61は、基体11の速度すなわち移動速度を検出する(S201)。進行方向検出部61は、S201において検出した基体11の速度から、基体11の速度が「0」であるか否かを判断する(S202)。進行方向検出部61は、基体11の速度が「0」のとき(S202:Yes)、プロポ30に入力される操作ベクトルを取得する(S203)。操作ベクトルは、プロポ30へ入力される操作方向および操作量に対応する。進行方向検出部61は、S203で取得したプロポ30の操作ベクトルと、基体11の速度ベクトルとが異なっているか否かを判断する(S204)。基体11の速度ベクトルは、基体11の飛行方向および飛行速度に対応する。
【0035】
進行方向検出部61は、プロポ30の操作ベクトルと基体11の速度ベクトルとが異なっているとき(S204:Yes)、基体11の進行方向と風向きとが同一である、つまり基体11の進行方向に沿った向きの風があると判断する(S205)。すなわち、S202において基体11の速度が「0」と判断されたにもかかわらず、操作ベクトルと速度ベクトルとが異なっているとき、基体11は風に対抗して飛行し、結果として対地速度が「0」となっていることになる。そこで、進行方向検出部61は、この場合、基体11の進行方向へ向けて風があると判断する。
【0036】
進行方向検出部61は、基体11の速度が「0」でないとき(S202:No)、プロポ30への入力操作がないか判断する(S206)。進行方向検出部61は、S205においてプロポ30への入力操作がないと判断したとき(S205:Yes)、微風であると判断する(S206)。すなわち、S202において基体11の速度が「0」でないと判断されているものの、S206においてプロポ30への入力操作がないと判断された場合、基体11は緩やかに移動していると考えられる。その結果、基体11の周囲は微風であると判断される。
【0037】
同様に、進行方向検出部61は、S204において操作ベクトルと速度ベクトルとが異なっていないと判断したとき(S204:No)、風がないと判断する(S207)。すなわち、操作ベクトルと速度ベクトルとが同一であるとき、基体11はプロポ30に入力された操作量にしたがって操作者の意図通りに飛行していることになる。そのため、基体11の飛行に影響する風はないと判断される。
【0038】
進行方向検出部61は、S206でプロポ30への入力操作があると判断されたとき(S206:No)、プロポ30への入力操作と逆方向へ風があると判断する(S207)。すなわち、S202において基体11の速度が「0」でないと判断され、S207においてプロポ30への入力操作があると判断された場合、基体11は風に流されて飛行していると考えられる。その結果、プロポ30の操作と逆方向へ風があると判断される。
以上の手順によって、風の方向が推定される。照射制御部62は、上記の手順によって推定した風の方向を用いて、複数のソナーモジュール13のうち風下側に位置するソナーモジュール13から超音波を照射する。
【0039】
第3実施形態では、障害物の検出に際して風の影響を考慮している。進行方向検出部61は、基体11の速度と例えばプロポ30の操作量などの基体11の姿勢角との関係から風向きを推定する。照射制御部62は、進行方向検出部61で推定された風向きに基づいて、複数のソナーモジュール13のうち風下側のソナーモジュール13から超音波を照射する。これにより、基体11が風に流される場合でも、風下側の障害物が優先的に検出される。したがって、より早期に確実な障害物の検出を行なうことができる。
【0040】
(第4実施形態)
第4実施形態は、第2実施形態の応用形態である。第4実施形態では、基体11の飛行速度および障害物の有無に応じてセンシングモードが切り替えられる。
(基本動作)
図12に基づいて、第4実施形態による飛行装置10の基本動作について説明する。第4実施形態では、照射制御部62は、基体11の速度に基づいて初期的なセンシングモードを設定する。具体的には、進行方向検出部61は、基体11の速度を検出する(S301)。そして、進行方向検出部61は、S301で検出した基体11の速度に基づいて基体11の速度が「0」であるか否かを判断する(S302)。照射制御部62は、基体11の速度が「0」のとき(S302:Yes)、「全方位センシングモード」に設定する(S303)。一方、照射制御部62は、基体11の速度が「0」でないとき(S302:No)、「固定方位センシングモード」に設定する(S304)。このように、照射制御部62は、基体11の速度に基づいて初期的なセンシングモードを設定する。この後、照射制御部62は、各センシングモードにおいて、特定の条件においてセンシングモードを切り替える。
【0041】
(全方位センシングモードの処理の流れ)
「全方位センシングモード」における処理の流れについて
図13に基づいて説明する。
照射制御部62は、S303において「全方位センシングモード」に設定されると、ソナーモジュール13を用いて全方位へ超音波を照射する処理を実行する(S401)。すなわち、照射制御部62は、すべてのソナーモジュール13から超音波を順に照射して、基体11の全方位で障害物を検出する。照射制御部62は、予め設定された設定範囲内に障害物があるか否かを判断する(S402)。すなわち、照射制御部62は、すべてのソナーモジュール13から基体11の全方位において、設定範囲内に障害物があるか否かを判断する。設定範囲は、警告部50による警告を行なうための範囲であり、例えば基体11から数mなど基体11の性能に応じて設定されている。なお、設定範囲は、固定値でもよく、基体11の飛行速度などに応じて変化する変動値としてもよい。
【0042】
制御部20は、S402で設定範囲内に障害物が検出されると(S402:Yes)、警告部50から警告を発する(S403)。すなわち、制御部20は、警告部50を作動させ、操作者に障害物の存在を報知する。そして、照射制御部62は、センシングモードを「全方位センシングモード」から「固定方位センシングモード」に変更する(S404)。すなわち、照射制御部62は、障害物が検出された方向を優先するために「固定方位センシングモード」に変更する。これにより、ソナーモジュール13の超音波は、障害物が検出された方向へ優先的に照射される。そのため、障害物の検出精度が向上する。制御部20は、S404において「固定センシングモード」に変更した後、
図12に示すS301にリターンし、S301以降の処理を繰り返す。また、制御部20は、S402で設定範囲内に障害物が検出されないとき(S402:No)、S301へリターンしてS301以降の処理を繰り返す。
【0043】
(固定方位センシングモードの処理の流れ)
「固定方位センシングモード」における処理の流れについて
図14に基づいて説明する。
照射制御部62は、S304において「固定方位センシングモード」に設定されると、ソナーモジュール13を用いて障害物の存在が推定される方向へ優先的に超音波を照射する処理を実行する(S501)。すなわち、照射制御部62は、すべてのソナーモジュール13のうち障害物の存在が推定される側に設けられているソナーモジュール13から超音波を照射して、特定の方位で障害物を検出する。照射制御部62は、予め設定された設定範囲内に障害物があるか否かを判断する(S502)。すなわち、照射制御部62は、特定の方位において設定範囲内に障害物があるか否かを判断する。
【0044】
制御部20は、S502で設定範囲内に障害物が検出されると(S502:Yes)、警告部50から警告を発する(S503)。制御部20は、S503において警告部50から警告を発すると、S301へリターンし、S301以降の処理を繰り返す。一方、進行方向検出部61は、S502で設定範囲内に障害物が検出されないとき(S502:No)、基体11の速度を検出する(S504)。基体11の速度は、S301で検出した基体11の速度を用いてもよく、S504であらためて検出してもよい。そして、進行方向検出部61は、基体11の速度が「0」であるか否かを判断する(S505)。照射制御部62は、基体11の速度が「0」であると判断されると(S505:Yes)、センシングモードを「固定方位センシングモード」から「全方位センシングモード」へ変更する(S506)。すなわち、照射制御部62は、基体11の速度が「0」であることから、全方位における障害物の検出へ移行する。制御部20は、S506においてセンシングモードを「全方位センシングモード」へ変更すると、S301へリターンし、S301以降の処理を繰り返す。また、制御部20は、基体11の速度が「0」でないと判断されると(S505:No)、S301へリターンし、S301以降の処理を繰り返す。
第4実施形態では、基体11の速度および障害物の有無に応じてセンシングモードを変更している。これにより、センシングモードは、基体11の飛行条件に応じて設定される。したがって、障害物の検出をより早く、より確実に実行することができる。
【0045】
(第5実施形態)
第5実施形態による飛行装置を
図15に示す。
第5実施形態は、第4実施形態の応用形態である。第5実施形態では、飛行装置10は、記憶部63を備えている。記憶部63は、マップデータを記憶している。マップデータは、飛行装置10が予定する飛行経路とともに、障害物の位置が記憶されている。
照射制御部62は、基体11の位置および速度と記憶部63に記憶されたマップにおける障害物の位置に基づいて初期的なセンシングモードを設定する。具体的には、
図16に示すように進行方向検出部61は、基体11の速度を検出する(S601)。そして、進行方向検出部61は、S601で検出した基体11の速度に基づいて基体11の速度が「0」であるか否かを判断する(S602)。照射制御部62は、基体11の速度が「0」のとき(S602:Yes)、マップデータに基づいて障害物がないことを確認する(S603)。すなわち、照射制御部62は、記憶部63に記憶されているマップデータに基づいて、このマップデータと最新の飛行位置とを照合する。そして、照射制御部62は、最新の飛行位置の近辺に障害物があるか否かを判断する。照射制御部62は、最新の飛行位置の近辺に障害物がないと判断すると(S603:Yes)、「全方位センシングモード」に設定する(S604)。一方、照射制御部62は、基体11の速度が「0」でないとき(S402:No)、および最新の飛行位置の近辺に障害物があると判断すると(S403:No)、「固定方位センシングモード」に設定する(S605)。このように、照射制御部62は、基体11の速度および飛行経路の障害物に基づいて初期的なセンシングモードを設定する。この後、照射制御部62は、各センシングモードにおいて、第4実施形態と同様に特定の条件においてセンシングモードを切り替える。
「全方位センシングモード」の処理の流れ、および「固定方位センシングモード」の処理の流れは第4実施形態と共通するので説明を省略する。
【0046】
第5実施形態では、基体11の速度および飛行経路で予測される障害物の有無に応じて初期的なセンシングモードを変更している。これにより、センシングモードは、基体11の飛行条件および最新の飛行位置に応じて設定される。したがって、障害物の検出をより早く、より確実に実行することができる。
【0047】
(第6実施形態)
第6実施形態による飛行装置を
図17に示す。
第6実施形態による飛行装置10は、スラスタ12よりも外側に枠部材70を備えている。枠部材70は、基体11に支持されている。第6実施形態の場合、枠部材70は、基体11の腕部15から伸びる支持部71に支持されている。ソナーモジュール13は、一部または全部がこの枠部材70に設けられている。第6実施形態の場合、9つのソナーモジュール13のうち8つが枠部材70に設けられ、残る1つが基体11の本体14に設けられている。8つのソナーモジュール131〜138は、基体11の中心を基準とする円周上に配置されている。これらのソナーモジュール131〜138は、枠部材70から外側に向けて超音波を照射する。また、残る1つのソナーモジュール139は、基体11の本体14に設けられている。このソナーモジュール139は、基体11の上方すなわちヨー軸に沿って超音波を照射する。
【0048】
飛行装置10は、安全性を高めたり、強度を高めるために、枠部材70を備える場合がある。このように枠部材70を備える飛行装置10の場合、ソナーモジュール13は少なくとも一部を枠部材70に設けることができる。基体11よりも外側に位置する枠部材70にソナーモジュール13を設けることにより、ソナーモジュール13とスラスタ12との干渉が低減される。また、より外周側に位置する枠部材70にソナーモジュール13を設けることにより、障害物の検出がより早められる。したがって、障害物の確実かつ早期の検出を図ることができる。
【0049】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
第1実施形態で説明したソナーモジュール13の照射周期は、第2実施形態の照射制御部62によって制御する構成としてもよい。また、複数の実施形態では、飛行装置10をプロポ30による遠隔操作によって操作する例を説明した。しかし、飛行装置10は、外部からの操作を必要とすることなく、予め設定された飛行経路を自立的に飛行する構成としてもよい。この場合、制御部20は、ソナーモジュール13で検出した障害物に基づいてスラスタ12を制御し、基体11の飛行を自立的に制御する。
【0050】
また、上述の第1実施形態〜第5実施形態では、基体11の本体14にソナーモジュール13を配置する例を説明した。しかし、飛行装置10は、
図18および
図19に示すように基体11の本体14にジンバル72を備えていることがある。ジンバル72は、例えば
図18に示すように撮影装置としてのカメラ、あるいは
図19に示すように運搬装置としての荷台で構成されている。このように、ジンバル72を備える飛行装置10の場合、ソナーモジュール13は少なくとも1つをこのジンバル72に設けてもよい。ソナーモジュール13をジンバル72に設けることにより、ソナーモジュール13から照射された超音波とスラスタ12のプロペラ16との干渉はより低減される。したがって、障害物までの距離や方向を高い精度で検出することができる。
【0051】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。