特許第6831277号(P6831277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831277
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】電力供給装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/20 20060101AFI20210208BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20210208BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20210208BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20210208BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   B60Q1/20
   B60Q1/04 E
   B60R16/02 645Z
   B60K1/04
   B60L1/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-52525(P2017-52525)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-154236(P2018-154236A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】家邊 裕文
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−235583(JP,A)
【文献】 特開平11−334460(JP,A)
【文献】 特開2007−276704(JP,A)
【文献】 特開2008−100592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/20
B60K 1/04
B60L 1/00
B60Q 1/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補機用バッテリから電力が供給され、自動的に起動される電装品に電力を供給する電力供給装置であって、
電力を生成し、当該生成した電力を前記電装品に供給する電力生成手段と、
前記車両の周辺状況に関する周辺状況情報を取得する周辺状況情報取得手段と、
前記電装品が起動していない状態において、前記周辺状況情報取得手段で取得された前記周辺状況情報、前記電装品の自動起動の実行の判定に用いられる前記周辺状況情報に関する第1閾値に対して前記電装品の前記自動起動が実行されない側に設定された第2閾値と、を比較し、前記比較の結果、前記周辺状況情報が前記第2閾値と同じか前記第2閾値よりも前記第1閾値側である場合に、前記電力生成手段に起動している場合における前記電装品の消費電力に応じた電力を生成させる電力制御手段と、
を備えることを特徴とする電力供給装置。
【請求項2】
前記車両の車速を取得する車速取得手段を備え、
前記第1閾値は、前記車速に応じて変化する値であり、
前記第2閾値は、前記車速に応じて変化する値であり、
前記電力制御手段は、前記周辺状況情報取得手段で取得された前記周辺状況情報が、前記車速取得手段で取得された前記車速に対応する前記第2閾値と同じか前記第2閾値よりも前記車速に対応する前記第1閾値側である場合に前記電力生成手段に前記電装品の前記消費電力に応じた前記電力を生成させることを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記車速取得手段は、前記車両の所定時間後の車速を推定し、
前記電力制御手段は、前記周辺状況情報取得手段で取得された前記周辺状況情報が、前記車速取得手段で推定された前記所定時間後の車速に対応する前記第2閾値と同じか前記第2閾値よりも前記所定時間後の車速に対応する前記第1閾値側である場合に前記電力生成手段に前記電装品の前記消費電力に応じた電力を生成させることを特徴とする請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記電装品は、フォグランプであり、
前記周辺状況情報取得手段は、前記周辺状況情報として前記車両の周辺の霧量を取得し、
前記第1閾値は、前記霧量に関し、前記霧量が当該第1閾値以上である場合に前記フォグランプの自動点灯が実行される値であり、
前記第2閾値は、前記霧量に関し、前記第1閾値よりも小さい値であり、
前記電力制御手段は、前記フォグランプが消灯している状態において、前記霧量が前記第2閾値以上である場合に、点灯した状態の前記フォグランプの消費電力に応じた電力を前記電力生成手段に生成させることを特徴とする請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記車両の車速を取得する車速取得手段を備え、
前記第1閾値は、前記車速に応じて変化し、前記車速が低いほど値が大きくなるよう設定され、
前記第2閾値は、前記車速に応じて変化し、前記車速が低いほど値が大きくなるよう設定され、
前記第1閾値及び前記第2閾値は、同じ前記車速で比較した場合に、前記第2閾値の方が前記第1閾値よりも小さい値が設定されることを特徴とする請求項4に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記車速取得手段は、前記車両の所定時間後の車速を推定し、
前記電力制御手段は、前記フォグランプが消灯している状態において、前記霧量が、前記車速取得手段で推定された前記所定時間後の車速に対応する前記第2閾値以上である場合に、前記電力生成手段に前記フォグランプの前記消費電力に応じた電力を生成させることを特徴とする請求項5に記載の電力供給装置。
【請求項7】
前記車両は、駆動源として少なくとも電動モータを備え、
前記電力生成手段は、前記電動モータに電力を供給する電動モータ用バッテリの電圧を降圧して電力を生成することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給装置に関し、特に、自動的に起動される電装品に電力を供給する電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるフォグランプを自動的に点灯させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、車両の前方に近赤外光を照射し、この照射領域から近赤外光を受光することで視界画像を撮影し、この視界画像の輝度分布に基づいて霧の有無を判定し、霧が有ると判定した場合にフォグランプを点灯させる車両視界支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−235444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、駆動源としてエンジンと電動モータを備えるハイブリッド車は補機用バッテリと電動モータに電力を供給する高電圧バッテリを備えているので、ハイブリッド車の中には、補機用バッテリの電力と、高電圧バッテリをDCDCコンバータによって降圧することで生成される電力とをフォグランプに供給可能な構成を有するものがある。しかしながら、このような構成のハイブリッド車に特許文献1に開示の技術のようなフォグランプの自動点灯機能が適用された場合、自動点灯条件を満たすとフォグランプが自動的に点灯されるので、DCDCコンバータによってフォグランプ用の電力が上乗せされて生成されるまで、補機用バッテリからフォグランプ用の電力が持ち出される。これにより、補機用バッテリの放電が進む。特に、補機用バッテリのSOC(State Of Charge:充電率)が低いときに、補機用バッテリから多くの電力が持ち出されると、補機用バッテリの電圧が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、電装品が自動的に起動されたとしても補機用バッテリの放電を抑制することが可能な電力供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電力供給装置は、補機用バッテリから電力が供給され、自動的に起動される電装品に電力を供給する電力供給装置であって、電力を生成し、当該生成した電力を前記電装品に供給する電力生成手段と、車両の周辺状況に関する周辺状況情報を取得する周辺状況情報取得手段と、周辺状況情報取得手段で取得された周辺状況情報が、電装品の自動起動条件である車両の周辺状況に関する閾値を含む第1条件よりも緩和された第2条件を満たした場合に電力生成手段に電装品の消費電力に応じた電力を生成させる電力制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る電力供給装置では、周辺状況情報取得手段で取得された周辺状況情報が第2条件を満たした場合に電力生成手段に電装品用の電力を生成させる。この第2条件は電装品を自動的に起動させる第1条件よりも緩和されているので(つまり、第2条件は第1条件よりも満たされ易い条件であるので)、第1条件が満たされる前に第2条件が満たされる。これにより、電装品が自動的に起動される前に、電装品用の電力を予め準備しておくことができる。そのため、電装品の起動によって補機用バッテリから持ち出される電力を抑えることができる。このように、本発明に係る電力供給装置によれば、電装品が自動的に起動されたとしても補機用バッテリの放電を抑制することが可能となる。なお、周辺状況情報は、車両の周辺(外部)において変化する各種状況(例えば、天候、明るさ、自車両周辺に存在する他車両)に関する情報である。
【0008】
本発明に係る電力供給装置では、車速を取得する車速取得手段を備え、第1条件及び第2条件は、車速に応じた閾値からなる条件であり、電力制御手段は、周辺状況情報取得手段で取得された周辺状況情報と車速取得手段で取得された車速が第2条件を満たした場合に電力生成手段に電装品の消費電力に応じた電力を生成させることが好ましい。このように構成することで、車両の周辺状況が殆ど変化しない場合でも車速の変化によって、電装品が自動的に起動されるタイミングの前(第1条件が満たされる前)に電力生成手段での電装品用の電力の生成の準備タイミングを判別することができ、電装品が起動される前に電装品用の電力を準備することができる。
【0009】
本発明に係る電力供給装置では、車速取得手段は、所定時間後の車速を推定し、電力制御手段は、周辺状況情報取得手段で取得された周辺状況情報と車速取得手段で推定された所定時間後の車速が第2条件を満たした場合に電力生成手段に電装品の消費電力に応じた電力を生成させることが好ましい。この所定時間後の推定車速を用いることで、実際の車速を用いる場合よりも電力生成の準備タイミングを早いタイミングで判別することができる場合があり、この場合には電装品用の電力の準備時間を長くすることができる。これにより、第1条件と第2条件との車速に応じた車両の周辺状況に関する閾値の差を小さくした場合でも、電装品用の電力の準備時間を十分に確保することができる。
【0010】
本発明に係る電力供給装置では、電装品は、フォグランプであり、周辺状況情報取得手段は、車両の周辺の霧量を取得し、第1条件及び第2条件は、霧量の閾値を含む条件であり、第2条件は、第1条件で設定されている霧量の閾値よりも低い霧量の閾値が設定されることが好ましい。このように構成することで、フォグランプが自動的に点灯される前に、フォグランプ用の電力を予め準備することができるので、フォグランプの点灯によって補機用バッテリから持ち出される電力を抑えることができる。
【0011】
本発明に係る電力供給装置では、第1条件及び第2条件は、車速に応じた霧量の閾値からなる条件であり、車速が低いほど霧量の閾値として高い値が設定され、第2条件は、各車速において第1条件で設定されている霧量の閾値よりも低い霧量の閾値が設定されることが好ましい。このように構成することで、車両の周辺の霧量が殆ど変化しない場合でも車速の変化によって、フォグランプが点灯されるタイミングの前(第1条件が満たされる前)にフォグランプ用の電力の生成の準備タイミングを判別することができ、フォグランプが点灯される前にフォグランプ用の電力を準備することができる。
【0012】
本発明に係る電力供給装置では、車両は、駆動源として少なくとも電動モータを備え、電力生成手段は、電動モータに電力を供給する電動モータ用バッテリの電圧を降圧して電力を生成することが好ましい。このように構成することで、電動モータ用バッテリの電力を利用して電装品用の電力を準備することができ、補機用バッテリの放電を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電装品が自動的に起動されたとしても補機用バッテリの放電を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る電力供給装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る電力供給装置で用いる第2判定ラインとフォグランプの自動点灯判定用の第1判定ラインの一例を示す図である。
図3】実施形態に係る電力供給装置の制御に関するタイミングチャートの一例を示す図である。
図4】実施形態に係るBCUでの処理の流れを示すフローチャートである。
図5】実施形態に係るHEVCUでの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
実施形態では、本発明に係る電力供給装置を、駆動源としてエンジンと電動モータを備えるハイブリッド車に搭載され、自動的に点灯/消灯されるフロント用のフォグランプ(特許請求の範囲に記載の電装品に相当)に電力を供給する電力供給装置に適用する。
【0017】
図1及び図2を参照して、実施形態に係る電力供給装置1について説明する。図1は、実施形態に係る電力供給装置1の構成を示すブロック図である。図2は、実施形態に係る電力供給装置1で用いる第2判定ラインとフォグランプ2の自動点灯判定用の第1判定ラインの一例を示す図である。
【0018】
電力供給装置1は、自動的に点灯/消灯されるフロント用のフォグランプ2に電力を供給する。特に、電力供給装置1は、フォグランプ2が自動的に点灯される前にフォグランプ2用の電力を予め準備する。この電力供給装置1の制御は、例えば、BCU(Body Control Unit)3で取得した周辺状況情報(車両周辺の霧量)を利用して、HEVCU(Hybrid Electric Vechicle Control Unit)4によって実施される。BCU3とHEVCU4とは、例えば、CAN(Controller Area Network)5を介して情報を送受信する。
【0019】
フォグランプ2は、左右一対であり、車両の前端部に所定間隔をあけて配設される。フォグランプ2には、DCDCコンバータ6(特許請求の範囲に記載の電力生成手段に相当)が接続され、DCDCコンバータ6で生成された電力が供給される。また、フォグランプ2には、補機用バッテリ7が接続され、補機用バッテリ7に蓄えられている電力が供給される。なお、フォグランプ2には、例えば、リレー(図示省略)が接続されており、点灯時にはこのリレーがオンされて、リレーを介して電力(電流)が供給される。
【0020】
DCDCコンバータ6は、高電圧バッテリ8の直流の高電圧を降圧し、電力を生成する。生成された電力は、フォグランプ2などの電装品に供給される。また、この生成された電力は、補機用バッテリ7に蓄えられる。DCDCコンバータ6は、出力する電流(電力)を調整可能である。DCDCコンバータ6は、例えば、HEVCU4によって出力電流(出力電力)が制御される。
【0021】
補機用バッテリ7は、車両に搭載される各種電装品に電力を供給するバッテリである。補機用バッテリ7は、12Vのバッテリである。補機用バッテリ7は、例えば、鉛バッテリである。補機用バッテリ7は、DCDCコンバータ6によって充電される。
【0022】
高電圧バッテリ8は、駆動源の一つである電動モータ(図示省略)に電力を供給するバッテリである。また、高電圧バッテリ8は、電動モータで発電した電力を蓄えるバッテリである。高電圧バッテリ8は、補機用バッテリ7よりも高電圧のバッテリであり、例えば、数100Vのバッテリである。高電圧バッテリ8は、例えば、リチウムイオンバッテリである。
【0023】
BCU3は、車両のボディ系の各種機器(例えば、ヘッドランプ、フォグランプ、ドアミラー、ワイパ)の統括的な制御を行うコントロールユニットである。特に、BCU3は、自動点灯モードの場合に、フォグランプ2を自動的に点灯/消灯させる制御を行う。BCU3は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラムなどを記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、その記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び、入出力I/Fなどを有して構成されている。
【0024】
BCU3には、制御に必要な情報を取得するために、湿度センサ30、温度センサ31などの各種センサ、及び、フォグランプ用スイッチ32などの各種スイッチが接続されている。湿度センサ30は、車両の外部の湿度を検出する。温度センサ31は、車両の外部の温度(気温)を検出する。フォグランプ用スイッチ32は、フォグランプ2用のスイッチであり、例えば、オフ(手動操作での消灯)、オン(手動操作での点灯)、自動点灯モード(自動での点灯/消灯)を切り替えることができる。また、BCU3は、CAN5を介してHEVCU4から車速などの情報を取得する。
【0025】
BCU3には、フォグランプ2に対する制御を行うために、霧量取得部3a(特許請求の範囲に記載の周辺状況情報取得手段に相当)と、フォグランプ点灯制御部3bとを有している。これらの各部3a,3bの処理は、BCU3においてROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることで実現される。
【0026】
霧量取得部3aは、車両の周辺の霧量を取得する。霧量取得部3aは、例えば、湿度センサ30で検出された車両の外部の湿度と温度センサ31で検出された車両の外部の温度(気温)を用いて霧量を算出する。
【0027】
ところで、空気中に存在する水蒸気の量が各気温における飽和水蒸気量(1mの空気中に存在できる水蒸気の量)を超えると、この超えた分が凝結して霧(水滴)となり、超えた量が多くなるほど霧が濃くなる。飽和水蒸気量は、気温が低下するほど小さくなる。そこで、霧量取得部3aは、例えば、現在の気温に応じた飽和水蒸気量を取得するとともに現在の湿度(例えば、絶対湿度)から1mの空間に存在する水蒸気の量を取得し、この1mの空間に存在する水蒸気の量から飽和水蒸気量を減算し、この減算量から霧量を求める。1mの空間に存在する水蒸気の量が飽和水蒸気量未満の場合には、霧量を0とする。
【0028】
フォグランプ点灯制御部3bは、フォグランプ用スイッチ32で自動点灯モードが選択されている場合、車速と霧量に基づいてフォグランプ2の点灯/消灯制御を行う。フォグランプ点灯制御部3bは、例えば、図2に示す車速に応じた霧量の閾値を示す第1判定ラインL1を用いて、点灯/消灯制御を行う。第1判定ラインL1は、車速が高くなるほど霧量の閾値が小さくなり、車速が所定車速以上になると霧量の閾値が一定値であるラインである。この第1判定ラインL1における各車速に応じて設定される霧量の閾値は、適合で決められる。
【0029】
フォグランプ点灯制御部3bは、フォグランプ2の消灯中に、車速と霧量との関係(二次元座標点)が第1判定ラインL1以上になったか否か(点灯条件を満たしたか否か)を判定する。第1判定ラインL1以上になった場合(車速と霧量とからなる二次元座標点が第1判定ラインL1の上側になった場合)、フォグランプ点灯制御部3bは、フォグランプ2を点灯させる(例えば、上述したリレーをオンさせる)。一方、フォグランプ点灯制御部3bは、フォグランプ2の点灯中に、車速と霧量との関係(二次元座標点)が第1判定ラインL1未満になったか否か(消灯条件を満たしたか否か)を判定する。第1判定ラインL1未満になった場合(車速と霧量とからなる二次元座標点が第1判定ラインL1の下側になった場合)、フォグランプ点灯制御部3bは、フォグランプ2を消灯させる(例えば、上述したリレーをオフさせる)。
【0030】
この点灯/消灯制御において点灯と消灯のハンチングを防止するために、例えば、消灯条件を判定する場合、図2に示すように、第1判定ラインL1における各車速の霧量の閾値よりも少し小さくした消灯判定用の第1判定ラインL1’を用いてもよい。
【0031】
なお、フォグランプ点灯制御部3bは、フォグランプ用スイッチ32でオン(点灯)が選択されている場合、フォグランプ2を点灯させる。また、フォグランプ点灯制御部3bは、フォグランプ用スイッチ32でオフ(消灯)が選択されている場合、フォグランプ2を消灯させる。
【0032】
HEVCU4は、ハイブリッド車の統括的な制御を行うコントロールユニットである。HEVCU4は、DCDCコンバータ6の電流(電力)制御も行い、特に、フォグランプ2の自動点灯前にDCDCコンバータ6にフォグランプ2用の電力を予め準備させる。HEVCU4は、BCU3と同様に、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、バックアップRAM、及び、入出力I/Fなどを有して構成されている。
【0033】
HEVCU4には、制御に必要な情報を取得するために、車速センサ40、加速度センサ41、電流センサ42、電圧センサ43などの各種センサが接続されている。車速センサ40は、車両の速度を検出する。加速度センサ41は、車両の前後方向の加速度などを検出する。電流センサ42は、補機用バッテリ7の電流を検出する。電圧センサ43は、補機用バッテリ7の電圧を検出する。また、HEVCU4は、CAN5を介してBCU3から霧量などの情報を取得する。
【0034】
HEVCU4には、DCDCコンバータ6に対する制御を行うために、SOC判定部4aと、電力制御部4b(特許請求の範囲に記載の電力制御手段に相当)とを有している。これらの各部4a,4bの処理は、HEVCU4においてROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることで実現される。
【0035】
SOC判定部4aは、補機用バッテリ7のSOCを推定する。SOC判定部4aは、例えば、電流センサ42で検出された電流や電圧センサで検出された電圧を用いて、周知の推定方法を用いてSOCを推定する。この推定方法としては、例えば、電流積分法がある。そして、SOC判定部4aは、この推定したSOCが閾値(例えば、50%)未満か否かを判定する。SOCが閾値以上と判定された場合、補機用バッテリ7の過充電を防止するために、フォグランプ2の自動点灯前にフォグランプ2用の電力を予め準備する制御が実施されない。
【0036】
電力制御部4bは、SOC判定部でSOCが閾値未満の場合、車速と霧量に基づいて点灯準備条件を満たした場合にはフォグランプ2の自動点灯前にフォグランプ2用の電力を予め準備する。具体的には、電力制御部4cは、例えば、図2に示す車速に応じた霧量の閾値を示す第2判定ラインL2を用いて、フォグランプ2用の電力を準備するか否かを判定する。第2判定ラインL2は、第1判定ラインL1における各車速の霧量の閾値よりも所定量小さくした霧量の閾値が設定されたラインである。この所定量は、適合で決められる。
【0037】
電力制御部4bは、フォグランプ2の消灯中に、車速と霧量との関係(二次元座標点)が第2判定ラインL2以上になったか否か(点灯準備条件を満たしたか否か)を判定する。第2判定ラインL2以上になった場合(車速と霧量とからなる二次元座標点が第2判定ラインL2の上側になった場合)、電力制御部4bは、DCDCコンバータ6で通常出力している電流(電力)よりも大きい電流(電力)を出力するようにDCDCコンバータ6を制御する。以下では、この通常の電流をMIDレベルの電流とし、この通常より大きくする電流をHIGHレベルの電流とする。このHIGHレベルの電流(電力)は、フォグランプ2の消費電力に応じて決められる。電力制御部4bは、フォグランプ2が点灯から消灯に切り替わると、HIGHレベルの電流から通常のMIDレベルの電流に戻るようにDCDCコンバータ6を制御する。なお、DCDCコンバータ6では、通常、MIDレベルの電流を生成している。
【0038】
ところで、短時間の間に霧量が殆ど変化しないと想定すると、例えば、図2に示すように、車両の加速中、霧量がF1のときに、車速がV1になると第2判定ラインL2に達して、点灯準備条件を満たすので、DCDCコンバータ6によるフォグランプ2用の電力の準備が開始される。さらに、車速がV2になると第1判定ラインL1に達して、点灯条件を満たすので、フォグランプ2が点灯される。この点灯準備タイミングから点灯タイミングまでのフォグランプ2用の電力の準備期間にはDCDCコンバータ6によって通常よりも多くの電力が生成され、この予め準備された電力がフォグランプ2に供給される。
【0039】
なお、補機用バッテリ7のSOCに関係なく、点灯準備条件を満たした場合にはフォグランプ2用の電力を準備するようにしてもよい。この場合、HEVCU4にはSOC判定部4aが設けられず、SOC推定及びSOC判定の各処理は行われない。
【0040】
また、電力制御部4bでは車速センサ40で検出された実際の車速を用いて点灯準備条件を判定してもよいし、あるいは、所定時間後(例えば、数秒後)の推定車速を用いて点灯準備条件を判定してもよい。所定時間後の推定車速を用いる場合、HEVCU4には車速推定部が設けられる。車速推定部は、例えば、車速センサ40で検出された車速と加速度センサ41で検出された車両の前後方向の加速度を用いて所定時間後の加速度を推定する。なお、加速度センサ41で検出された加速度の代わりに、アクセルペダルセンサで検出されたアクセルペダルの開度とブレーキペダルセンサで検出されたブレーキペダルの踏み込み量を用いてもよい。
【0041】
所定時間後の車速を用いて点灯準備条件を判定すると、例えば、車両が加速中の場合、実車速を用いて点灯準備条件を判定する場合よりも点灯準備条件を満たすタイミングが早くなる。したがって、所定時間後の車速を用いる場合、実車速を用いる場合よりも、点灯準備タイミングから点灯タイミングまでの準備時間が長くなる。そこで、所定時間後の車速を用いる場合、実車速を用いる場合よりも、DCDCコンバータ6でのHIGHレベルの出力電流を小さくしてもよい。
【0042】
また、所定時間後の車速を用いる場合、実車速を用いる場合よりも、第1判定ラインと第2判定ラインとの各車速に応じた霧量の閾値の差(上述した所定量)を小さくしてもよい。例えば、図2に示すように、第2判定ラインをL2からL2’にした場合でも、実車速V1のときに所定時間後の車速(推定値)がV3であったとすると、実車速V1は第2判定ラインL2’に達していないが、所定時間後の車速V3は第2判定ラインL2’に達しているので、点灯準備条件を満たす。したがって、所定時間後の車速を用いる場合、実車速を用いる場合よりも、第2判定ラインを第1判定ラインに近づけても、点灯準備タイミングから点灯タイミングまでの準備時間を十分に確保することができる。
【0043】
次に、図3を参照して、フォグランプ2が自動的に点灯される場合の電力供給装置1の制御に関するタイミングの一例を説明する。図3は、実施形態に係る電力供給装置1の制御に関するタイミングチャートの一例を示す図である。図3では、横軸は時刻である。
【0044】
図3では、上から順に、実車速を用いて判定した場合の点灯準備条件を満たしたか否かを示すグラフ、所定時間後の推定車速を用いて判定した場合の点灯準備条件を満たしたか否かを示すグラフ、点灯条件を満たしたか否かを示すグラフ、実車速を示すグラフ、所定時間後の推定車速を示すグラフ、実車速を用いて点灯準備条件を判定した場合のDCDCコンバータ6の出力電流を示すグラフ、推定車速を用いて点灯準備条件を判定した場合のDCDCコンバータ6の出力電流を示すグラフ、フォグランプ2の点灯/消灯を示すグラフである。
【0045】
実車速を用いた場合、時刻t2で車速と霧量との関係が点灯準備条件を満たす。この時刻t2で、HEVCU4(電力供給装置1)による制御により、DCDCコンバータ6の出力電流が通常のMIDレベルの電流よりも大きなHIGHレベルの電流に変えられ、フォグランプ2用の電力が上乗せされて生成される。この時刻t2(点灯準備タイミング)から、フォグランプ2用の電力が準備され、補機用バッテリ7に蓄えられる。
【0046】
所定時間後の推定車速を用いた場合、車両が加速しているので、時刻t2よりも早い時刻t1で推定車速と霧量との関係が点灯準備条件を満たす。この時刻t1で、HEVCU4(電力供給装置1)による制御により、DCDCコンバータ6の出力電流が通常のMIDレベルの電流よりも大きなHIGHレベルの電流に変えられ、フォグランプ2用の電力が上乗せされて生成される。この時刻t2よりも前の時刻t1(点灯準備タイミング)から、フォグランプ2用の電力が準備され、補機用バッテリ7に蓄えられる。
【0047】
時刻t1,t2以降も車両が加速しているので、時刻t3で車速と霧量との関係が点灯条件を満たす。この時刻t3(点灯タイミング)で、BCU3による制御により、フォグランプ2が点灯される。この時刻t3までに、フォグランプ2用の電力が予め準備される。
【0048】
次に、図1及び図2を参照しつつ、電力供給装置1の動作を図4図5のフローチャートに沿って説明する。ここでは、まず、BCU3によるフォグランプ2の点灯/消灯制御について説明し、次に、HEVCU4によるフォグランプ2用の電力準備制御について説明する。図4は、実施形態に係るBCU3での処理の流れを示すフローチャートである。BCU3では、以下の処理を所定時間毎に繰り返し実施する。図5は、実施形態に係るHEVCU4での処理の流れを示すフローチャートである。HEVCU4では、以下の処理を所定時間毎に繰り返し実施する。
【0049】
BCU3は、HEVCU4から車速を取得する(S10)。BCU3は、湿度センサ30で検出された湿度や温度センサ31で検出された温度を用いて、車両周辺の霧量を取得する(S12)。そして、BCU3は、車速と霧量との関係が点灯条件を満たすか否かを判定する(S14)。
【0050】
S14の判定にて点灯条件を満たすと判定された場合、BCU3は、フォグランプ2の点灯制御を行う(S16)。これにより、フォグランプ2は、点灯される。S14の判定にて点灯条件を満たさないと判定された場合、BCU3は、フォグランプ2の消灯制御を行う(S18)。これにより、フォグランプ2は、消灯される。
【0051】
一方、HEVCU4は、補機用バッテリ7のSOCを推定する(S20)。そして、HEVCU4は、補機用バッテリ7のSOCが閾値未満か否かを判定する(S22)。S22の判定にてSOCが閾値以上と判定された場合、HEVCU4は、通常のMIDレベルの電流が出力されるようにDCDCコンバータ6を制御する(S32)。
【0052】
HEVCU4は、車速センサ4で検出された車速を取得する(S24)。HEVCU4は、BCU3から車両周辺の霧量を取得する(S26)。そして、HEVCU4は、車速と霧量との関係が点灯準備条件を満たすか否かを判定する(S28)。
【0053】
S28の判定にて点灯準備条件を満たすと判定された場合、HEVCU4は、HIGHレベルの電流が出力されるようにDCDCコンバータ6を制御する(S30)。この点灯準備条件を満たすタイミングは、上述したBCU3でのS14の判定にて点灯条件を満たすと判定されるタイミングよりも早いタイミングである。したがって、DCDCコンバータ6では、フォグランプ2の点灯前に、通常よりも大きな電流(電力)を出力し、補機用バッテリ7を充電する。これによって、補機用バッテリ7にはフォグランプ2の点灯前に通常よりも多くの電力が蓄えられ、フォグランプ2用の電力が予め準備される。この予め準備された電力は、点灯されたフォグランプ2に供給される。これにより、フォグランプ2の点灯によって補機用バッテリ7から持ち出される電力が抑えられる。一方、S28の判定にて点灯準備条件を満たさないと判定された場合、HEVCU4は、通常のMIDレベルの電流が出力されるようにDCDCコンバータ6を制御する(S32)。
【0054】
実施形態に係る電力供給装置1によれば、フォグランプ2が自動的に点灯される前にDCDCコンバータ6にフォグランプ2用の電力を予め準備させることで、フォグランプの自動点灯による補機用バッテリ7の放電を抑制することができる。これにより、補機用バッテリ7のSOCの低下を抑制でき、補機用バッテリ7の劣化を抑制することができる。また、補機用バッテリ7のSOCが低い場合でも、フォグランプ2の点灯前にフォグランプ2用の電力が予め蓄えられるので、補機用バッテリ7の電圧低下を防止することができる。
【0055】
実施形態に係る電力供給装置1によれば、霧量に加えて車速を用いて点灯準備条件を判定することにより、霧量が殆ど変化しない場合でも車速の変化によって、フォグランプ2が自動点灯されるタイミングの前(点灯条件が満たされる前)にDCDCコンバータ6でのフォグランプ2用の電力の準備開始タイミングを判別することができ、フォグランプ2が自動点灯される前にフォグランプ2用の電力を準備することができる。
【0056】
実施形態に係る電力供給装置1によれば、点灯準備条件の判定用の車速として所定時間後の推定車速を用いることにより、実車速を用いる場合よりも点灯準備タイミングを早いタイミングで判別することができ、フォグランプ2用の電力の準備時間を長くすることができる。これにより、点灯条件(第1判定ライン)と点灯準備条件(第2判定ライン)との車速に応じた霧量の閾値の差を小さくした場合(第2判定ラインを第1判定ラインに近づけた場合)でも、フォグランプ2用の電力の準備時間を十分に確保することができる。このようにした場合、電力の準備時間が長くなり過ぎず、フォグランプ2用に準備した電力が無駄になってしまうことを抑制しつつ、点灯準備を適切に行うことができる。
【0057】
実施形態に係る電力供給装置1によれば、補機用バッテリ7のSOCが閾値以上の場合にはフォグランプ2用の電力の準備を行わないので、通常よりも多くの電力が充電されることによる補機用バッテリ7の過充電を防止でき、補機用バッテリ7の劣化を抑制することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では駆動源としてエンジンと電動モータを備えるハイブリッド車に適用したが、駆動源としてエンジンのみを備える車両や電動モータのみを備える車両に適用してもよい。
【0059】
上記実施形態ではフォグランプ2用の電力を生成する手段として電動モータ用の高電圧バッテリ8を降圧して電力を生成するDCDCコンバータ6を用いたが、エンジンの動力を利用して発電するジェネレータ(オルタネータ)などを用いてもよい。
【0060】
上記実施形態では各センサ40,41で検出された湿度と温度から霧量を取得する例を示したが、他の方法で霧量を取得してもよく、例えば、車両の周辺を撮像し、撮像した画像から霧量を取得する方法がある。霧量は、飽和水蒸気量に対する相対値(例えば、霧の濃度)などで表されてもよい。
【0061】
上記実施形態では自動的に点灯されるフロント用のフォグランプ2に電力を供給する電力供給装置1に適用したが、自動的に起動される他の電装品に電力を供給する電力供給装置に適用してもよく、例えば、自動的に点灯されるリヤ用のフォグランプに電力を供給する電力供給装置、自動的に点灯されるヘッドランプに電力を供給する電力供給装置、自動的にLoからHiに切り替えられるヘッドランプに電力を供給する電力供給装置、自動的に起動されるワイパに電力を供給する電力供給装置がある。
【0062】
自動的に点灯されるヘッドランプ用の電力を準備する電力供給装置の場合、例えば、車速センサで車速を検出すると共に照度センサで車両の周辺の照度(周辺状況情報)を検出し、車速と照度との関係が点灯準備条件(ヘッドランプの自動点灯条件よりも緩和された条件)を満たすか否かを判定し、点灯準備条件を満たすと判定された場合にヘッドランプ用の電力の生成を開始し、ヘッドランプの自動点灯前にヘッドランプ用の電力を準備する。
【0063】
自動的にLoからHiに切り替えられるヘッドランプ用の電力を準備する電力供給装置の場合、例えば、車速センサで車速を検出すると共にレーダセンサの検出情報あるいはカメラで撮像した画像情報を用いて前方車両との距離(周辺状況情報)を取得し、車速と前方車両との距離との関係が切替準備条件(LoからHiへの自動切替条件よりも緩和された条件)を満たすか否かを判定し、切替準備条件を満たすと判定された場合にHi用の電力の生成を開始し、自動切替前にヘッドランプのHi用の電力を準備する。
【0064】
自動的に起動されるワイパ用の電力を準備する電力供給装置の場合、例えば、車速センサで車速を検出すると共に雨滴センサで車両の周辺の雨滴量(周辺状況情報)を検出し、車速と雨滴量との関係が起動準備条件(ワイパの自動起動条件よりも緩和された条件)を満たすか否かを判定し、起動準備条件を満たすと判定された場合にワイパ用の電力の生成を開始し、ワイパの自動起動前にワイパ用の電力を準備する。
【符号の説明】
【0065】
1 電力供給装置
2 フォグランプ
3 BCU
3a 霧量取得部
3b フォグランプ点灯制御部
4 HEVCU
4a SOC判定部
4b 電力制御部
6 DCDCコンバータ
7 補機用バッテリ
8 高電圧バッテリ
30 湿度センサ
31 温度センサ
32 フォグランプ用スイッチ
40 車速センサ
41 加速度センサ
42 電流センサ
43 電圧センサ
図1
図2
図3
図4
図5