(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透析用粉末剤を溶解して透析用原液を得るとともに、その溶解された透析用原液を所定量収容し得る溶解槽を具備し、透析治療中、患者に透析治療を施すための複数の透析装置側に前記溶解槽の透析用原液を送液するのに伴って、追加の透析用粉末剤を所定量毎に投入させて溶解し得る溶解装置において、
過去の透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入したタイミングを実績投入タイミングとして記憶する記憶手段と、
前記記憶手段で記憶された実績投入タイミングに基づいて、これから行われる透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入するタイミングを予測投入タイミングとして予測する予測手段と、
前記予測手段で予測されたタイミングであって透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入するタイミングである前記予測投入タイミングを表示する表示手段と、
を具備したことを特徴とする溶解装置。
透析治療において必要とされる透析用粉末剤の総量を入力し得るとともに、入力された透析用粉末剤の総量に基づいて、透析用粉末剤を追加投入すべき追加回数と、各追加投入タイミングで投入すべき透析用粉末剤の追加量とを設定し得る設定手段を具備し、前記表示手段は、前記予測投入タイミングと併せて前記設定手段で設定された追加回数及び追加量を表示可能とされたことを特徴とする請求項1記載の溶解装置。
前記設定手段で設定された追加回数又は追加量を任意に変更可能とされるとともに、前記予測手段は、当該変更に対応して前記予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを前記表示手段にて表示させ得ることを特徴とする請求項2記載の溶解装置。
前記記憶手段は、医療施設における患者の治療日程に対応した特定の治療日毎に前記実績投入タイミングを記憶するとともに、前記予測手段は、当該特定の治療日毎の予測投入タイミングを予測して前記表示手段で表示させ得ることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の溶解装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術においては、溶解槽内に収容された透析用粉末剤が所定の液位を下回った際、これを液位センサ等にて検出して医療従事者等の作業者に対して報知することにより、透析用粉末剤を追加で投入させ得る構成とされているものの、追加の透析用粉末剤の投入タイミングを予め把握させることができない構成であった。よって、作業者が他の作業を行っている最中であっても優先して透析用粉末剤の追加投入を行う必要があり、早急に対応できない場合、透析用原液が不足してしまう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、追加の透析用粉末剤の投入タイミングを作業者に対して予め把握させることができる溶解装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、透析用粉末剤を溶解して透析用原液を得るとともに、その溶解された透析用原液を所定量収容し得る溶解槽を具備し、透析治療中、患者に透析治療を施すための複数の透析装置側に前記溶解槽の透析用原液を送液するのに伴って、追加の透析用粉末剤を所定量毎に投入させて溶解し得る溶解装置において、過去の透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入したタイミングを実績投入タイミングとして記憶
する記憶手段と、前記記憶手段で記憶された実績投入タイミングに基づいて、これから行われる透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入するタイミングを予測投入タイミングとして予測
する予測手段と、前記予測手段で予測された
タイミングであって透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入するタイミングである前記予測投入タイミングを表示
する表示手段とを具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の溶解装置において、透析治療において必要とされる透析用粉末剤の総量を入力し得るとともに、入力された透析用粉末剤の総量に基づいて、透析用粉末剤を追加投入すべき追加回数と、各追加投入タイミングで投入すべき透析用粉末剤の追加量とを設定し得る設定手段を具備し、前記表示手段は、前記予測投入タイミングと併せて前記設定手段で設定された追加回数及び追加量を表示可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の溶解装置において、前記設定手段で設定された追加回数又は追加量を任意に変更可能とされるとともに、前記予測手段は、当該変更に対応して前記予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを前記表示手段にて表示させ得ることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の溶解装置において、前記溶解槽内に収容された透析用原液の液位を連続的且つリアルタイムに検出可能な液位検出手段と、前記液位検出手段で検出された透析用原液の液位に基づいて前記透析用粉末剤の追加投入タイミングを報知し得る報知手段とを具備するとともに、前記予測手段は、前記報知手段で報知された追加投入タイミングに基づいて次回以降の前記予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを前記表示手段にて表示させ得ることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の溶解装置において、前記記憶手段は、医療施設における患者の治療日程に対応した特定の治療日毎に前記実績投入タイミングを記憶するとともに、前記予測手段は、当該特定の治療日毎の予測投入タイミングを予測して前記表示手段で表示させ得ることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載の溶解装置において、前記表示手段で表示される予測投入タイミングは、時刻又は溶解開始時からの経過時間とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、過去の透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入したタイミングを実績投入タイミングとして記憶
する記憶手段と、記憶手段で記憶された実績投入タイミングに基づいて、これから行われる透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入するタイミングを予測投入タイミングとして予測
する予測手段と、予測手段で予測された
タイミングであって透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入するタイミングである予測投入タイミングを表示
する表示手段とを具備したので、追加の透析用粉末剤の投入タイミングを作業者に対して予め把握させることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、透析治療において必要とされる透析用粉末剤の総量を入力し得るとともに、入力された透析用粉末剤の総量に基づいて、透析用粉末剤を追加投入すべき追加回数と、各追加投入タイミングで投入すべき透析用粉末剤の追加量とを設定し得る設定手段を具備し、表示手段は、予測投入タイミングと併せて設定手段で設定された追加回数及び追加量を表示可能とされたので、追加回数及び追加量と併せて追加の透析用粉末剤の投入タイミングを作業者に対して予め把握させることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、設定手段で設定された追加回数又は追加量を任意に変更可能とされるとともに、予測手段は、当該変更に対応して予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを表示手段にて表示させ得るので、追加回数又は追加量の変更に伴う予測投入タイミングのずれを自動的に修正して表示させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、溶解槽内に収容された透析用原液の液位を連続的且つリアルタイムに検出可能な液位検出手段と、液位検出手段で検出された透析用原液の液位に基づいて透析用粉末剤の追加投入タイミングを報知し得る報知手段とを具備するとともに、予測手段は、報知手段で報知された追加投入タイミングに基づいて次回以降の予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを表示手段にて表示させ得るので、予測投入タイミングが報知手段で報知された実際の追加投入タイミングに対してずれた場合、そのずれを修正して表示させることができ、予測投入タイミングを精度よく予測することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、記憶手段は、医療施設における患者の治療日程に対応した特定の治療日毎に実績投入タイミングを記憶するとともに、予測手段は、当該特定の治療日毎の予測投入タイミングを予測して表示手段で表示させ得るので、患者の治療日程が予め決まっている透析治療において、予測投入タイミングをより精度よく予測することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、表示手段で表示される予測投入タイミングは、時刻又は溶解開始時からの経過時間とされるので、追加の透析用粉末剤の投入タイミングを作業者に対してより正確に把握させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る溶解装置は、透析用粉末剤を溶解し透析用原液を得るものであって、
図1〜5に示すように、透析用粉末剤を溶解して透析用原液を得るとともに、その溶解された透析用原液を所定量収容し得る第1溶解槽2及び第2溶解槽3と、入力手段4と、記憶手段5と、設定手段6と、予測手段7と、表示手段8と、液位検出手段9と、報知手段10とを有して構成されている。
【0022】
第1溶解槽2は、重炭酸ナトリウムを含まないもの(A剤)又は重炭酸ナトリウム(B剤)の2種類のうち何れかから成る透析用粉末剤を投入可能な収容空間を有するとともに、給水源から延設された給水ラインL1が接続されている。かかる給水ラインL1には、
図5に示すように、電磁弁等から成るバルブV1が配設されており、このバルブV1を開状態とすることにより第1溶解槽2内に給水可能とされている。しかして、給水源から所定量の水を第1溶解槽2内に供給して収容させた後、その水の量に対して決められた量(規定量)の透析用粉末剤を第1溶解槽2に投入することにより、所定量及び所定濃度の透析用原液を得ることができる。
【0023】
第2溶解槽3は、第1溶解槽2に投入される透析用粉末剤と同種の透析用粉末剤を投入可能な空間を有するとともに、
図5に示すように、当該第2溶解槽3と第1溶解槽2とを連結する接続ラインL4が接続されている。かかる接続ラインL4には、電磁弁等からなるバルブV2、V3、V4が配設されており、これらバルブV2、V3、V4を開状態にすることにより、第1溶解槽2内の液体を第2溶解槽3内に移送可能とされている。なお、本実施形態に係る第2溶解槽3は、第1溶解槽2に比べて相対的に容量が小さなタンクとされ、オーバーフローラインL5にて第1溶解槽2に接続されている。
【0024】
また、第1溶解槽2は、給水ラインL1及び接続ラインL4の他、接続ラインL2が接続されている。かかる接続ラインL2は、一端が第1溶解槽2に接続されるとともに、他端が接続ラインL4における接続部b(バルブV2とバルブV3との間の位置)に接続されている。さらに、接続ラインL2における接続部a(ポンプP1の配設部位と接続部bとの間の位置)には、送液ラインL3の基端が接続されている。かかる送液ラインL3は、ポンプP2が配設されるとともに、電磁弁等から成るバルブV5が配設されている。なお、送液ラインL3と接続ラインL4との間には、電磁弁等から成るバルブV6が配設された接続ラインL6が接続されている。
【0025】
送液ラインL3は、その途中にポンプP2が配設されるとともに、先端が透析液供給装置B(
図4参照)に接続されており、溶解装置1で作製された透析用原液を透析液供給装置Bに送液可能とされている。かかる透析液供給装置Bは、溶解装置1から送液された透析用原液を所定濃度に希釈して透析液を作製するもので、
図4に示すように、配管を介して複数の透析装置Aに接続されている。しかして、溶解装置1で作製された透析用原液は、透析液供給装置Bで所定濃度の透析液とされ、各透析装置Aに送液されて透析治療が施されるようになっている。
【0026】
液位検出手段9は、第1溶解槽2に配設されたセンサから成るもので、第1溶解槽2内に収容された透析用原液の液位を連続的且つリアルタイムに検出可能なものである。本実施形態に係る液位検出手段9は、第1溶解槽2内に収容された液体の液面に浮いて上下移動可能な浮き手段を有した磁歪式リニア変位センサで構成されており、浮き手段の位置を連続的且つリアルタイムに検出することにより、液面(すなわち液位)を検知可能とされている。
【0027】
なお、液位検出手段9は、第1溶解槽2内に収容された透析用原液(供給された水又は溶液であってもよい)の液位を連続的且つリアルタイムに検出可能なものであれば、接触式又は非接触式のどちらのタイプでもよく、本実施形態の如く浮き手段による磁歪式リニア変位センサの他、超音波センサ等により構成するようにしてもよい。また、本実施形態においては、液位検出手段9が第1溶解槽2のみに配設されているが、当該第1溶解槽2と共に第2溶解槽3にも配設するようにしてもよい。
【0028】
さらに、液位検出手段9は、報知手段10と電気的に接続されている。かかる報知手段10は、液位検出手段9で検出された透析用原液の液位に基づいて透析用粉末剤の追加投入タイミングを報知し得るもので、音声や効果音等を出力させるスピーカや警告灯などから構成されている。すなわち、液位検出手段9にて検出された液位が所定の高さより低く、透析用原液が不足すると予測される時点において、報知手段10にて報知することにより、追加の透析用粉末剤を医療従事者等の作業者に投入させ、追加溶解することにより透析用原液を追加で作製することができるのである。
【0029】
次に、本実施形態に係る溶解装置1による溶解のための動作について説明する。
先ず、透析治療前(治療前日の夜等)において、
図6に示すように、第2溶解槽3に所定量(準備溶解袋数)の透析用粉末剤を投入して収容させておく。そして、バルブV1、V2を開状態としつつバルブV3〜V6を閉状態とすることにより、給水源から第1溶解槽2に給水するとともに、ポンプP1を駆動させることにより、供給された水を循環させる。
【0030】
その後、
図7に示すように、バルブV1、V3、V4を開状態としつつバルブV2、V5、V6を閉状態とし、給水源からの給水及びポンプP1の駆動を継続して行わせることにより、第1溶解槽2内の水を第2溶解槽3に送り込む。これにより、予め第2溶解槽3内に収容された透析用粉末剤に水が送り込まれて溶解するとともに、その溶解液(透析用原液となる過程の溶液)がオーバーフローラインL5を介して第1溶解槽2に送り込まれることとなる。
【0031】
そして、所定量の給水が行われると、
図8に示すように、バルブV3、V4を開状態としつつバルブV1、V2、V5、V6を閉状態とし、給水源からの給水を停止する一方、ポンプP1の駆動を継続して行わせることにより、第1溶解槽2と第2溶解槽3との間で透析用原液を循環させる。これにより、作製した透析用原液を攪拌することができ、均一な濃度の透析用原液を得ることができる。
【0032】
上記のように第1溶解槽2及び第2溶解槽3のそれぞれに透析用原液が収容された状態において、
図9に示すように、バルブV5を開状態としつつバルブV1〜V4、V6を閉状態とし、ポンプP1及びポンプP2を駆動させることにより、送液ラインL3を介して第1溶解槽2内の透析用原液を透析液供給装置Bに送液することができ、所定濃度の透析液を各透析装置Aに供給させて透析治療を行わせることができる。
【0033】
その後、液位検出手段9にて第1溶解槽2内の透析用原液の液位が所定高さに達すると、報知手段10にて追加投入のための報知がなされる。この場合、
図10に示すように、バルブV1、V2、V4、V6を開状態としつつバルブV3、V5を閉状態とし、給水源からの給水を行わせる一方、ポンプP2の駆動を継続して行わせることにより、第1溶解槽2に代えて第2溶解槽3内の透析用原液を透析液供給装置Bに送液する。
【0034】
しかして、第1溶解槽2内に所定量(追加投入袋数)の追加の透析用粉末剤を投入させることができ、その投入された透析用粉末剤が給水源からの給水によって溶解されることとなる。なお、ポンプP1を駆動させることにより、透析用原液となる過程の溶液を循環させることができる。これにより、第1溶解槽2に代えて第2溶解槽3からの透析用原液の送液が引き続き行われるとともに、第1溶解槽2において追加の透析用粉末剤を投入させて溶解することができる。
【0035】
そして、所定量の給水が行われると、
図11に示すように、バルブV2、V4、V6を開状態としつつバルブV1、V3、V5を閉状態とし、給水源からの給水を停止する一方、ポンプP1、P2の駆動を継続して行わせることにより、第2溶解槽3から透析用原液の送液を引き続き行わせるとともに、第1溶解槽2内の透析用原液を循環させて攪拌し、均一な濃度の透析用原液を得ることができる。
【0036】
上記のように第1溶解槽2に透析用原液が収容された状態において、
図12に示すように、バルブV2〜V5を開状態としつつバルブV1、V6を閉状態とし、ポンプP1及びポンプP2を駆動させることにより、送液ラインL3を介して第1溶解槽2内の透析用原液を透析液供給装置Bに送液することができ、所定濃度の透析液を各透析装置Aに供給させて透析治療を行わせることができる。このとき、第1溶解槽2内の透析用原液の一部は、第2溶解槽3内に移送され、オーバーフローラインL5にてオーバーフローする状態まで透析用原液が送り込まれることとなる。
【0037】
その後、
図9に示すように、バルブV5を開状態としつつバルブV1〜V4、V6を閉状態とし、ポンプP1及びポンプP2を駆動させることにより、送液ラインL3を介して第1溶解槽2内の透析用原液を透析液供給装置Bに送液することができ、所定濃度の透析液を各透析装置Aに供給させて透析治療を行わせることができる。これにより、第1溶解槽2にて追加溶解された透析用原液を透析液供給装置Bに供給することができるので、各透析装置Aによる透析治療を継続して行わせることができる。
【0038】
このように、本実施形態に係る溶解装置1は、透析治療中、患者に透析治療を施すための複数の透析装置A側に第1溶解槽2及び第2溶解槽3の透析用原液を送液するのに伴って、追加の透析用粉末剤を所定量毎(本実施形態においては透析用粉末剤を収容する袋単位(袋数))に投入させて溶解し得るものであり、所謂バッチ式と称される溶解装置から成るものとされている。
【0039】
ここで、本実施形態に係る溶解装置1の筐体部には、
図5に示すように、入力手段4と、記憶手段5と、設定手段6と、予測手段7と、表示手段8とを有して構成されている。入力手段4は、操作者が入力操作可能な操作スイッチやタッチパネル等により構成されたもので、本実施形態においては、透析治療において必要とされる透析用粉末剤の総量を入力し得るものとされている。
【0040】
表示手段8は、溶解作業に関する種々表示を行い得る液晶モニタ等にて構成されるもので、本実施形態においては、入力手段4と表示手段8とを兼用するタッチパネルにて構成されている。なお、入力手段4と表示手段8とを兼用するタッチパネルとするものの他、入力手段4と表示手段8とを別個に具備するものとしてもよい。
【0041】
記憶手段5は、過去の透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入したタイミングを実績投入タイミングとして記憶し得るもので、本実施形態においては、病院等の医療施設における患者の治療日程に対応した特定の治療日毎(具体的には曜日毎)に実績投入タイミングを記憶するよう構成されている。すなわち、透析患者は、通常、決まった曜日(例えば月曜日、水曜日及び金曜日)に透析治療を受けることから、医療従事者も曜日毎に決まった作業を行うこととなる。したがって、曜日(患者の治療日程に対応した特定の治療日毎)によって透析用原液や透析液の消費量及び流量がほぼ一定となるので、曜日毎に実績投入タイミングを記憶すれば追加の透析用粉末剤を投入するタイミングを精度よく予測することができる。
【0042】
設定手段6は、入力手段4にて入力された透析用粉末剤の総量に基づいて、透析用粉末剤を追加投入すべき追加回数と、各追加投入タイミングで投入すべき透析用粉末剤の追加量とを自動的に設定し得るものである。例えば、表示手段8において、
図13に示すようなメニュー画面で特定の曜日(例えば月曜日)を選択し、その日に必要とされる透析用粉末剤の総量を入力すると、準備溶解量(治療前に予め溶解する袋数)と、透析用粉末剤を追加する回数(追加回数)と、各追加タイミングで投入すべき透析用粉末剤の投入量(追加時の袋数)とを自動的に割り振って設定し、
図14に示すように、表示手段8にて表示させるよう構成されている。
【0043】
予測手段7は、記憶手段5で記憶された実績投入タイミング(本実施形態においては時刻)に基づいて、これから行われる透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入するタイミングを予測投入タイミングとして予測し得るものである。具体的には、記憶手段5で記憶された実績投入タイミングのうち直近のもの(これから透析治療する日が月曜日であれば、先週の月曜日のもの)が予測投入タイミングとされるとともに、その後の曜日毎の透析治療日において、実績投入タイミングを順次上書き保存し、記憶手段5で記憶される実績投入タイミングを透析治療日毎にアップデート(記憶した情報を更新)するようになっている。
【0044】
また、予測手段7による予測投入タイミングの予測方法として、上記のものに限らず、例えば過去の透析治療中における複数の実績投入タイミングを記憶手段5で記憶しておき、その平均値等を演算して予測投入タイミングとするもの、或いは曜日毎の透析用原液の消費パターン(消費傾向)が一定となったことを条件として、その消費パターンに基づいて予測投入タイミングを予測するもの等であってもよい。
【0045】
なお、最初に本装置を使用する場合や試運転を行う場合等、記憶手段5にて実績投入タイミングが記憶されていない場合、例えば1クール(特定の医療施設において1日で行われる治療の単位)を5時間とし、そのうち準備作業に30分、返血作業に30分及び液置換に30分それぞれかかることを想定し、クール毎の血液治療の開始時刻及び患者の数(床数)等を考慮すれば、実績投入タイミングが記憶されていなくても透析用粉末剤の投入タイミングを予測することができる。
【0046】
また、溶解工程において、その日の透析用粉末剤の総量(袋数)が一時的に増加する場合、袋数1つにつき患者が1人変更になったと想定し、それまでの実績データに透析用原液の消費速度を対応させて透析用原液の消費傾向を作成し、透析用粉末剤の投入タイミングを予測してもよく、透析用粉末剤の総量(袋数)が恒久的に増加する場合、袋数1つにつき患者が1人変更になったと想定し、透析用原液の消費速度を対応させて透析用原液の消費傾向を作成し、透析用粉末剤の投入タイミングを予測してもよい。
【0047】
表示手段8は、上述の如く溶解作業に関する種々表示を行い得るもので、特に本実施形態においては、
図14に示すように、予測手段7で予測された予測投入タイミングを表示し得るよう構成されている。また、本実施形態に係る表示手段8は、同図に示すように、予測手段7で予測された予測投入タイミングと併せて設定手段6で設定された追加回数及び追加量が表示されている。しかるに、本実施形態においては、表示手段8で表示される予測投入タイミングが「時刻」とされているが、投入タイミングが分かる他の形態であってもよく、例えば溶解開始時からの経過時間を予測投入タイミングとして表示するようにしてもよい。
【0048】
さらに、本実施形態に係る予測手段7は、報知手段10で報知された追加投入タイミングに基づいて次回以降の予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを表示手段8にて表示させ得るよう構成されている。例えば、
図17に示すように、報知手段10で報知された実際の追加投入タイミングと、そのときの予測手段7で予測された予測投入タイミングとの時間差(Δt)を算出し(S1)、次回以降の予測投入タイミングを時間差(Δt)だけずらす(S2)ことにより、予測投入タイミングを逐次修正し、その修正された予測投入タイミングが表示手段8にて表示されることとなる。
【0049】
またさらに、本実施形態においては、設定手段6で設定された追加回数又は追加量を任意に変更可能とされるとともに、予測手段7は、当該変更に対応して予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを表示手段8にて表示させ得るよう構成されている。例えば、
図15に示すように、1回目における透析用粉末剤の追加量を10袋から8袋に変更した場合、その分、最終回(同図においては4回目)における追加量を修正して表示するとともに、2回目以降の予測投入タイミングをずらして表示させる。また、
図16に示すように、1回あたりの透析液粉末剤の追加量を8袋に減らし、追加回数を5回に増加させることも可能とされている。
【0050】
このように、追加量(袋数)を変更する場合、
図19に示すように、記憶手段5にて過去の透析治療における透析用原液の経時的な消費傾向を記憶しておく。そして、例えば
図18に示すように、変更される袋数から生成される透析用原液の量を算出し(S1)、その透析用原液が消費される時刻を記憶手段5に記憶されたデータ(透析用原液の経時的な消費傾向)から予測(S2)した後、袋数が変更された以降の予測投入タイミングを修正(S3)することにより、その修正された予測投入タイミングが表示手段8にて表示されることとなる。
【0051】
上記実施形態によれば、過去の透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入したタイミングを実績投入タイミングとして記憶し得る記憶手段5と、記憶手段5で記憶された実績投入タイミングに基づいて、これから行われる透析治療中における追加の透析用粉末剤を投入するタイミングを予測投入タイミングとして予測し得る予測手段7と、予測手段7で予測された予測投入タイミングを表示し得る表示手段8とを具備したので、追加の透析用粉末剤の投入タイミングを作業者に対して予め把握させることができる。
【0052】
また、透析治療において必要とされる透析用粉末剤の総量を入力し得るとともに、入力された透析用粉末剤の総量に基づいて、透析用粉末剤を追加投入すべき追加回数と、各追加投入タイミングで投入すべき透析用粉末剤の追加量とを設定し得る設定手段6を具備し、表示手段8は、予測投入タイミングと併せて設定手段6で設定された追加回数及び追加量を表示可能とされたので、追加回数及び追加量と併せて追加の透析用粉末剤の投入タイミングを作業者に対して予め把握させることができる。
【0053】
さらに、設定手段6で設定された追加回数又は追加量を任意に変更可能とされるとともに、予測手段7は、当該変更に対応して予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを表示手段8にて表示させ得るので、追加回数又は追加量の変更に伴う予測投入タイミングのずれを自動的に修正して表示させることができる。
【0054】
またさらに、溶解槽(2、3)内に収容された透析用原液の液位を連続的且つリアルタイムに検出可能な液位検出手段9と、液位検出手段9で検出された透析用原液の液位に基づいて透析用粉末剤の追加投入タイミングを報知し得る報知手段10とを具備するとともに、予測手段7は、報知手段10で報知された追加投入タイミングに基づいて次回以降の予測投入タイミングを修正し、その修正された予測投入タイミングを表示手段8にて表示させ得るので、予測投入タイミングが報知手段10で報知された実際の追加投入タイミングに対してずれた場合、そのずれを修正して表示させることができ、予測投入タイミングを精度よく予測することができる。
【0055】
特に、本実施形態に係る記憶手段5は、医療施設における患者の治療日程(治療サイクル)に対応した特定の治療日毎(本実施形態においては曜日毎)に実績投入タイミングを記憶するとともに、予測手段7は、当該特定の治療日毎の予測投入タイミングを予測して表示手段で表示させ得るので、患者の治療日程が予め決まっている透析治療において、予測投入タイミングをより精度よく予測することができる。
【0056】
さらに、表示手段8で表示される予測投入タイミングは、時刻又は溶解開始時からの経過時間とされるので、追加の透析用粉末剤の投入タイミングを作業者に対してより正確に把握させることができる。なお、本実施形態においては、予測投入タイミングと併せて設定手段6で設定された追加回数及び追加量を表として表示しているので、追加タイミングを視覚的に把握させることができる。これらの表示は、表以外、グラフ等として表示されるようにしてもよい。
【0057】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば
図20に示すように、所定量の透析用粉末剤を収容する収容手段Mと、収容手段M内の透析用粉末剤を所定量ずつ溶解槽Tに供給し得るフィーダFと、収容手段M内の透析用粉末の重量を経時的に計測し得る重量計Sとを有した溶解装置に適用してもよい。この場合、追加の透析用粉末剤は、収容手段Mに対して投入されることとなり、その実績投入タイミングが記憶されるとともに予測投入タイミングを予測して表示手段8にて表示させることができる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る溶解装置1は、透析用粉末剤を投入して溶解するための第1溶解槽2及び第2溶解槽3を具備しているが、1つの溶解槽を具備したもの或いは3つ以上の溶解槽を具備したものに適用してもよい。また、記憶手段5は、曜日毎に実績投入タイミングを記憶し、曜日毎に表示手段8にて予測投入タイミングを表示しているが、医療施設における患者の治療日程に対応した特定の治療日毎であれば、他の日程であってもよい。