特許第6831286号(P6831286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831286
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ガス燃焼装置
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20210208BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20210208BHJP
   F23N 5/26 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   F23K5/00 304
   F23N1/00 102Z
   F23N5/26 101A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-82856(P2017-82856)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-179449(P2018-179449A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】赤木 万之
【審査官】 堀川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−016910(JP,A)
【文献】 特開平08−075144(JP,A)
【文献】 特開平09−133351(JP,A)
【文献】 特開2000−028131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F23N 1/00
F23N 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される燃料ガスをバーナで燃焼させ、成分の異なる複数のガス種に対応可能なガス燃焼装置において、
前記燃料ガスの燃焼の制御に関する燃焼データを、前記複数のガス種毎に記憶する記憶部と、
前記ガス燃焼装置の設置者による操作に応じて、前記複数のガス種の中から何れかを設定するガス種設定部と、
前記ガス種設定部で設定されたガス種の前記燃焼データに基づいて、前記燃料ガスの燃焼を制御する制御部と
を備え、
前記ガス燃焼装置の設置前の初期状態では、前記ガス種設定部で前記複数のガス種の何れも設定されておらず、
前記制御部は、前記ガス燃焼装置の設置後に前記ガス種設定部で前記複数のガス種の何れかが設定されるまでは、供給される前記燃料ガスの燃焼を開始せず、
前記ガス種設定部は、前記設置者の操作による移動で複数の設定位置を切り換えることが可能なスイッチであり、
前記複数のガス種の各々が前記複数の設定位置の何れかに対応付けられていると共に、該複数の設定位置の中の少なくとも1つは、前記複数のガス種の何れも対応付けられていないガス種未設定位置であり、
前記初期状態では、前記スイッチが前記ガス種未設定位置になっている
ことを特徴とするガス燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス燃焼装置において、
前記ガス種設定部は、前記ガス燃焼装置のガス種以外の使用条件を設定する各種のスイッチとは離して別個に設けられた専用のスイッチである
ことを特徴とするガス燃焼装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス燃焼装置において、
前記ガス燃焼装置の設置後に電源が投入されると、前記ガス種設定部におけるガス種の設定を報知する報知部を備える
ことを特徴とするガス燃焼装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のガス燃焼装置において、
前記複数のガス種は、天然ガスおよび液化石油ガスの2種類である
ことを特徴とするガス燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給される燃料ガスをバーナで燃焼させるガス燃焼装置に関し、特に、成分の異なる複数のガス種に対応可能なガス燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器や暖房機などに搭載され、供給される燃料ガスをバーナで燃焼させるガス燃焼装置が知られている。ガス燃焼装置では、必要とされる熱量に応じて燃料ガスを燃焼させるための燃焼データ(例えば、燃料ガスの供給量を調節する比例弁の弁開度や、燃焼用空気の供給量を調節するファンの回転数と、必要とされる熱量との対応関係)を予め記憶部に記憶しておき、その燃焼データに基づいて燃料ガスの燃焼を制御することで、燃料ガスを適切に燃焼させることが可能になっている。
【0003】
また、供給される燃料ガスの成分(ガス種)は、ガス燃焼装置が設置される地域などによって異なることがあり、当然ながら、燃焼データはガス種毎に異なる。そのため、ガス燃焼装置の中には、複数のガス種の各々に対応する燃焼データを予め記憶部に記憶しているものがあり(例えば、特許文献1)、ガス種に応じて燃焼データの切り換えが可能になっている。こうしたガス燃焼装置は、工場で複数のガス種の中から何れかを設定して出荷されるのが一般的であり、購入者は、供給される燃料ガスに相応する型式の製品を選択して購入するか、あるいは、供給される燃料ガスに合わせてガス種の設定を設置時に変更するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−28131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のように複数のガス種の中から何れかが予め設定されたガス燃焼装置では、型式の選び間違いや、設定の変更し忘れなどで、実際に供給される燃料ガスとガス種の設定が一致していない誤った設定のまま燃料ガスを燃焼させてしまうことがあるという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、複数のガス種に対応可能なガス燃焼装置で、供給される燃料ガスとガス種の設定が一致していない誤った設定での使用を防ぐことが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明のガス燃焼装置は次の構成を採用した。すなわち、
供給される燃料ガスをバーナで燃焼させ、成分の異なる複数のガス種に対応可能なガス燃焼装置において、
前記燃料ガスの燃焼の制御に関する燃焼データを、前記複数のガス種毎に記憶する記憶部と、
前記ガス燃焼装置の設置者による操作に応じて、前記複数のガス種の中から何れかを設定するガス種設定部と、
前記ガス種設定部で設定されたガス種の前記燃焼データに基づいて、前記燃料ガスの燃焼を制御する制御部と
を備え、
前記ガス燃焼装置の設置前の初期状態では、前記ガス種設定部で前記複数のガス種の何れも設定されておらず、
前記制御部は、前記ガス燃焼装置の設置後に前記ガス種設定部で前記複数のガス種の何れかが設定されるまでは、供給される前記燃料ガスの燃焼を開始せず、
前記ガス種設定部は、前記設置者の操作による移動で複数の設定位置を切り換えることが可能なスイッチであり、
前記複数のガス種の各々が前記複数の設定位置の何れかに対応付けられていると共に、該複数の設定位置の中の少なくとも1つは、前記複数のガス種の何れも対応付けられていないガス種未設定位置であり、
前記初期状態では、前記スイッチが前記ガス種未設定位置になっている
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明のガス燃焼装置では、燃料ガスの燃焼を開始させるにはガス種の設定作業が必須であることから、設置者がガス種を設定し忘れることがない。そして、ガス種の設定に際して設置者が供給される燃料ガスを確認することで、複数のガス種の中の何れかが予め(出荷時に)設定されている場合とは異なり、実際に供給される燃料ガスとガス種の設定が一致していない誤った設定のまま燃料ガスを燃焼させてしまう事態を防ぐことができる。
【0010】
また、ガス種設置部としてのスイッチを設置者が操作して移動させ、複数の設定位置を切り換えることで、供給される燃料ガスに応じて簡単にガス種を設定することが可能である。しかも、複数の設定位置の中にはガス種未設定位置が含まれているので、初期状態ではスイッチをガス種未設定位置にしておくことで、複数のガス種の何れも設定されていない状態にすることができる。
【0011】
また、上述した本発明のガス燃焼装置では、ガス種設定部を、ガス種以外の使用条件を設定する各種のスイッチとは離して別個に設けられた専用のスイッチとしてもよい。
【0012】
このようにすれば、設置者によるガス種の設定に際して他の使用条件の設定との混乱を避けて、ガス種の設定ミスを防ぐことができる。
【0013】
また、こうした本発明のガス燃焼装置では、設置後に電源が投入されると、ガス種の設定を報知部で報知することとしてもよい。
【0014】
このようにすれば、設置したガス燃焼装置で試運転の電源投入時に、ガス種の設定状況を設置者に確認させることで、ガス種の設定し忘れや、ガス種の設定の間違いを設置者に気付かせることができる。
【0015】
また、こうした本発明のガス燃焼装置では、複数のガス種を、天然ガスおよび液化石油ガスの2種類としてもよい。
【0016】
このようにガス種の設定を天然ガスおよび液化石油ガスの2択に絞ることで、ガス種の設定ミスの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施例のガス燃焼装置10を搭載した給湯器1の構成を示した説明図である。
図2】本実施例の制御部24が燃料ガスの燃焼を制御するために実行する燃焼制御処理のフローチャートである。
図3】本実施例のガス燃焼装置10に設けられたガス種設定スイッチ26を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本実施例のガス燃焼装置10を搭載した給湯器1の構成を示した説明図である。給湯器1は、全体が外装ケース2で覆われており、外装ケース2は、前面側が開口した筐状に形成された本体と、本体の開口部を覆う前板とを有している。前板は、本体に対して着脱可能であり、給湯器1の設置時やメンテナンス時には、前板を外して作業を行う。図1では、前板の図示を省略している。
【0019】
ガス燃焼装置10は、燃焼室11内に収容された複数(本実施例では15本)のバーナ12や、バーナ12に向けて複数のノズル14が設けられて各ノズル14に燃料ガスを分配するマニホールド13や、マニホールド13に燃料ガスを供給するガス通路15などを備えている。
【0020】
ガス通路15には、ガス通路15を開閉する元弁16と、元弁16よりも下流側でガス通路15を通過する燃料ガスの流量を調節する比例弁17とが設けられている。また、本実施例のガス燃焼装置10では、複数(15本)のバーナ12が3つのバーナ群に分けられていることと対応して、比例弁17よりも下流側でガス通路15が3つに分岐しており、3本のバーナ12で構成される第1バーナ群に対応する分岐路を開閉する第1切換弁18aと、5本のバーナ12で構成される第2バーナ群に対応する分岐路を開閉する第2切換弁18bと、7本のバーナ12で構成される第3バーナ群に対応する分岐路を開閉する第3切換弁18cとを備えている。
【0021】
本実施例のガス燃焼装置10では、3つの切換弁18a〜18cの開閉を制御して何れのバーナ群に燃料ガスを供給するかによって、生成熱量(給湯能力)を切り換えることが可能である。例えば、必要とされる熱量が最小の場合は、第1切換弁18aのみを開弁する。一方、必要とされる熱量が最大の場合は、3つの切換弁18a〜18cの全てを開弁する。そして、その間の熱量が必要な場合は、3つの切換弁18a〜18cの中から適宜に1つ又は2つを選択して開弁する。
【0022】
また、燃焼室11には、バーナ12に燃焼用空気を供給するファン19が接続されていると共に、イグナイタ20の作動によって発生させた高電圧の放電で火花を飛ばす点火プラグ21や、バーナ12での着火(火炎)を検知するフレームロッド22などが設けられている。
【0023】
さらに、ガス燃焼装置10は、燃料ガスの燃焼を制御する制御部24を内蔵した電子ユニット23を搭載しており、上述の元弁16、比例弁17、3つの切換弁18a〜18c、ファン19、イグナイタ20、およびフレームロッド22がハーネスを介して電子ユニット23に接続されている。詳しくは後述するが、本実施例のガス燃焼装置10では、バーナ12で燃焼させる燃料ガスとして、成分の異なる複数のガス種に対応することが可能になっており、制御部24はガス種に応じて燃焼の制御を行う。また、電子ユニット23は、記憶部25を内蔵しており、記憶部25には、燃料ガスの燃焼の制御に関する燃焼データが複数のガス種毎に記憶されている。
【0024】
燃焼室11の上方には、熱交換器30が設けられている。熱交換器30の一端には給水通路31が接続されており、熱交換器30の他端には給湯通路33が接続されている。給水通路31を通じて供給された上水は、熱交換器30でバーナ12の燃焼排気との熱交換によって加熱された後、湯となって給湯通路33に流出する。給水通路31には、給水通路31を流れる上水の流量を検知する水量センサ32が設けられており、この水量センサ32はハーネスを介して電子ユニット23に接続されている。給湯通路33に設けられたカラン34を給湯器1の使用者が開けるなどして熱交換器30に上水が供給されると、水量センサ32で上水の流れが検知されるので、制御部24の制御によってバーナ12で燃焼が開始される。
【0025】
熱交換器30の上方には、排気口40が外装ケース2の前板から外側に突出するように設けられている。バーナ12の燃焼排気は、ファン19の送風によって上方に送られ、熱交換器30を通過すると、排気口40を通って給湯器1の外部に吐出される。
【0026】
また、給湯器1の使用者が操作可能なリモコン50が外装ケース2の外部に独立して設置されている。このリモコン50は、給湯器1の電源のON/OFFを行うための運転ボタン51や、給湯温度などを変更するための上下ボタン52や、給湯器1の運転状況や給湯温度などの設定状況を表示可能な表示部53などを備えており、電子ユニット23と有線または無線で通信可能に接続されている。
【0027】
図2は、本実施例の制御部24が燃料ガスの燃焼を制御するために実行する燃焼制御処理のフローチャートである。この処理は、リモコン50の運転ボタン51が操作されて給湯器1の電源がONになると開始される。本実施例の燃焼制御処理では、まず、ガス種の設定状況を取得する(STEP100)。前述したように本実施例のガス燃焼装置10では、複数のガス種に対応することが可能であり、給湯器1の設置時に設置者がガス種設定スイッチ26を操作して、複数のガス種の中から何れかを設定するようになっている。
【0028】
図3は、本実施例のガス燃焼装置10に設けられたガス種設定スイッチ26を示した説明図である。本実施例のガス種設定スイッチ26は、電子ユニット23の基板23aにコンデンサや、抵抗器や、集積回路(IC)といった電子部品と共に実装されており、給湯器1の設置者が外装ケース2の前板を外した状態で操作することが可能になっている。
【0029】
本実施例のガス種設定スイッチ26は、いわゆるスライドスイッチであり、左右方向にスライドさせることで、設定位置を3段階に切り換えることが可能である。図示した例では、左端の設定位置に天然ガス(NG)が対応付けられ、右端の設定位置に液化石油ガス(LP)が対応付けられており、中央の設定位置は、何れのガス種も対応付けられていないガス種未設定位置になっている。そして、給湯器1の出荷時(給湯器1の設置前)には、ガス種設定スイッチ26がガス種未設定位置の状態にあり、給湯器1の設置者が、供給される燃料ガスに応じてガス種設定スイッチ26の設定位置を切り換えて、天然ガスおよび液化石油ガスの2種類の中から何れかを設定する。尚、ガス種設定スイッチ26における複数の設定位置の切り換えは、直線移動に限られず、回転移動であってもよい。また、本実施例のガス種設定スイッチ26は、本発明の「ガス種設定部」に相当している。
【0030】
また、図3に示されるように、電子ユニット23の基板23aには、ディップスイッチ27がガス種設定スイッチ26とは離して別個に設置されている。図示したディップスイッチ27では、1つのパッケージの中に8つのスイッチが並んでおり、これらのON/OFFを切り換えることで、給湯器1(ガス燃焼装置10)におけるガス種以外の各種使用条件を設定することが可能になっている。尚、各種使用条件を設定するスイッチは、パッケージ化されたディップスイッチ27に限られず、例えば、複数のタクタイルスイッチを並べて設置しておいてもよい。
【0031】
図2の燃焼制御処理では、ガス種設定スイッチ26の設定位置に基づいてガス種の設定状況を取得すると(STEP100)、取得したガス種の設定状況をリモコン50の表示部53に表示する(STEP102)。表示部53は、液晶表示器で構成されており、例えば、ガス種設定スイッチ26の設定位置が、左端であれば「NG」と表示し、右端であれば「LP」と表示し、中央であれば「未設定」と表示する。尚、本実施例の表示部53は、本発明の「報知部」に相当している。
【0032】
次に、2つのガス種(NG,LP)の何れかが設定されているか否かを判断する(STEP104)。何れのガス種も設定されておらず、未設定である場合は(STEP104:no)、先の処理に進むことなく、図2の燃焼制御処理を終了する。
【0033】
一方、何れかのガス種が設定されている場合は(STEP104:yes)、給湯器1(ガス燃焼装置10)におけるガス種以外の各種使用条件の設定状況を取得する(STEP106)。前述したようにディップスイッチ27が電子ユニット23の基板23aに実装されており、ディップスイッチ27の各スイッチのON/OFFの状態に基づいて、各種使用条件の設定状況を取得する。
【0034】
続いて、ガス種および各種使用条件の設定に応じて燃焼データを記憶部25から読み出す(STEP108)。燃料ガスを適切に燃焼させるには、燃焼用空気と燃料ガスとを適切な比率(空燃比)で混合させなければならないことから、必要とされる熱量(燃焼量)と、燃料ガスの供給量を調節する比例弁17の弁開度や、燃焼用空気の供給量を調節するファン19の回転数との対応関係(関係式やデータテーブル)が燃焼データとして記憶部25に記憶されている。また、本実施例のガス燃焼装置10では、バーナ12やマニホールド13のノズル14といった部品が共通でありながら、2つのガス種(NG,LP)に対応することが可能であり、成分が異なるガス種では空燃比や、熱量(NG(13A):約11000kcal/m,LP:約24000kcal/m)が異なるため、燃焼データはガス種毎に記憶されている。
【0035】
さらに、燃焼データは、給湯器1(ガス燃焼装置10)の使用条件に応じて細分化されている。例えば、給湯器1の設置場所などに応じて排気口40の形状を選択する場合には、排気口40の形状の違い(排気バリエーション)によって通路抵抗が異なるので、燃焼室11に燃焼用空気を送り込むファン19の回転数が異なる。また、排気通路の長さが延長される場合にも、通路抵抗が変わるのでファン19の回転数が変更される。加えて、給水通路31と給湯通路33とを接続するバイパス通路の有無などによって、設定された給湯温度に対して求められる熱交換器30からの出湯温度が異なることがある。このため、排気バリエーションや、排気通路の延長の有無や、出湯温度などの使用条件に応じて細分化された燃焼データが記憶部25に記憶されている。このようにガス種だけでなく各種の使用条件を参照することで、より細やかな燃焼の制御が可能となる。
【0036】
ガス種および各種使用条件の設定に応じて燃焼データを読み出すと、燃焼開始条件が成立したか否かを判断する(STEP110)。本実施例のガス燃焼装置10では、水量センサ32で検知される上水の流量が所定値以上になることを燃焼開始条件の成立としており、燃焼開始条件が成立した場合は(STEP110:yes)、バーナ12で燃焼を開始させる処理(燃焼開始処理)を実行する(STEP112)。
【0037】
燃焼開始処理では、以下のような処理を行う。まず、設定された給湯温度や水量センサ32で検知される上水の流量から必要な熱量を算出する。次に、STEP108で読み出した燃焼データを参照しながら、必要とされる熱量に応じて燃料ガスの供給量(比例弁17の弁開度)や、3つの切換弁18a〜18cの中から開弁する切換弁や、燃焼用空気の供給量(ファン19の回転数)を決定する。そして、ファン19を作動させ、比例弁17、切換弁18を開弁した後、イグナイタ20をONにして点火プラグ21で火花を飛ばしながら、元弁16を開弁して燃料ガスの供給を開始し、フレームロッド22で着火(火炎)を確認する。
【0038】
こうしてバーナ12で燃焼を開始したら、燃焼停止条件が成立したか否かを判断する(STEP114)。本実施例のガス燃焼装置10では、水量センサ32で検知される上水の流量が所定値を下回ることを燃焼停止条件の成立としており、未だ燃焼停止条件が成立していない場合は(STEP114:no)、次に、給湯温度や上水の流量などの給湯条件が変更されたか否かを判断する(STEP116)。
【0039】
給湯条件が変更された場合は(STEP116:yes)、給湯条件の変更に伴ってバーナ12での燃焼を変更する処理(燃焼変更処理)を実行する(STEP118)。燃焼変更処理では、以下のような処理を行う。まず、変更後の給湯温度や上水の流量から必要な熱量を改めて算出し、STEP108で読み出した燃焼データを参照しつつ、必要な熱量に応じて燃料ガスの供給量(比例弁17の弁開度)や、3つの切換弁18a〜18cの中で開弁する切換弁や、燃焼用空気の供給量(ファン19の回転数)を再び決定する。そして、決定に従って、ファン19の回転数や、比例弁17の弁開度や、開弁する切換弁18を変更する。
【0040】
一方、給湯条件が変更されていない場合は(STEP116:no)、燃焼変更処理(STEP118)を省略して、STEP114に戻り、燃焼停止条件が成立したか否かを再び判断する。処理を繰り返すうちに、燃焼停止条件が成立した場合は(STEP114:yes)、バーナ12での燃焼を停止する処理(燃焼停止処理)を実行する(STEP120)。燃焼停止処理では、元弁16を閉弁して燃料ガスの供給を停止した後、ファン19を停止する。
【0041】
バーナ12での燃焼を停止すると、続いて、リモコン50の運転ボタン51の操作で給湯器1の電源がOFFにされたか否かを判断する(STEP122)。未だ運転ボタン51で電源がOFFにされていない場合は(STEP122:no)、STEP110に戻って、燃焼開始条件が成立したか否かを再び判断する。そして、燃焼開始条件が成立した場合は(STEP110:yes)、上述したSTEP112〜STEP120の処理を繰り返す。
【0042】
一方、燃焼開始条件が成立していない場合は(STEP110:no)、STEP112〜STEP120の処理を省略して、STEP122に進み、運転ボタン51で電源がOFFにされたか否かを再び判断する。こうした処理を繰り返すうちに運転ボタン51で電源がOFFにされた場合は(STEP122:yes)、図2の燃焼制御処理を終了する。
【0043】
以上に説明したように本実施例のガス燃焼装置10では、給湯器1の出荷時(設置前)には複数のガス種(NG,LP)の何れも設定されておらず、設置後に何れかのガス種が設定されないと、供給される燃料ガスの燃焼を開始しないようになっている。こうすれば、燃料ガスの燃焼を開始させるにはガス種の設定作業が必須であることから、設置者がガス種を設定し忘れることがない。そして、ガス種の設定に際して設置者が供給される燃料ガスを確認することで、複数のガス種の中の何れかが予め(出荷時に)設定されている場合とは異なり、実際に供給される燃料ガスとガス種の設定が一致していない誤った設定のまま燃料ガスを燃焼させてしまう事態を防ぐことが可能となる。
【0044】
加えて、給湯器1の設置現場で供給される燃料ガスに応じて設置者がガス種を設定することにより、工場では複数のガス種毎に型式を分けて生産する必要がなく、出荷時の型式を一本化することができると共に、ガス種を自動で検知する特殊なセンサ等が不要なので、複数のガス種に対応可能なガス燃焼装置10を搭載した給湯器1のコストの低減を図ることが可能となる。
【0045】
また、本実施例のガス燃焼装置10では、ガス種設定スイッチ26として電子ユニット23の基板23aにスライドスイッチが実装されており、複数の設定位置を設置者が切り換えることで、供給される燃料ガスに応じて簡単にガス種を設定することが可能である。しかも、ガス種設定スイッチ26の複数の設定位置の中にはガス種未設定位置(本実施例では中央の設定位置)が含まれているので、給湯器1の出荷時にはガス種設定スイッチ26をガス種未設定位置にしておくことで、複数のガス種の何れも設定されていない状態にすることができる。
【0046】
また、本実施例のガス種設定スイッチ26は、ガス種以外の各種使用条件を設定するディップスイッチ27とは離して別個に設けられている。これにより、設置者によるガス種の設定に際して他の使用条件の設定との混乱を避けて、ガス種の設定ミスを防ぐことができる。
【0047】
さらに、本実施例のガス燃焼装置10では、給湯器1の設置後にリモコン50の運転ボタン51の操作で電源がONになると、表示部53にガス種の設定を表示するようになっている。こうすれば、設置した給湯器1で試運転の電源投入時に、ガス種の設定状況を設置者に確認させることで、ガス種の設定し忘れや、ガス種の設定の間違いを設置者に気付かせることができる。
【0048】
以上、本実施例のガス燃焼装置10について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0049】
例えば、前述した実施例では、ガス燃焼装置10を搭載した給湯器1を例として説明した。しかし、ガス燃焼装置10の適用は給湯器1に限られず、例えば、ガス燃焼装置10を搭載した暖房機であってもよく、本発明を好適に適用することができる。
【0050】
また、前述した実施例では、ガス種の設定をガス種設定スイッチ26(スライドスイッチ)で行うようになっていたが、これに限られず、給湯器1の設置前の初期状態で複数のガス種の何れも設定されておらず、設置者の操作で何れかのガス種が設定されるようになっていればよい。例えば、所定の切換ボタンを押す毎に複数のガス種が順番に切り換わることとして、一巡すると何れのガス種も設定されていない初期状態に戻るようにしてもよい。
【0051】
また、設定可能なガス種の数は、複数であれば、2種類に限られず、3種類以上であってもよい。ただし、本実施例のようにガス種をNGおよびLPの2種類に絞ることで、ガス種の設定ミスの発生を抑制することができる。
【0052】
また、前述した実施例では、運転ボタン51の操作で給湯器1の電源がONになると、表示部53にガス種の設定を表示するようになっていたが、ガス種の設定を報知する方法は表示に限られず、図示しないスピーカから音声で出力してもよい。更に、ガス種の設定の報知は、電源がONになる度に行ってもよいが、給湯器1が設置されて最初の電源投入時にだけ行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…給湯器、 2…外装ケース、 10…ガス燃焼装置、
11…燃焼室、 12…バーナ、 13…マニホールド、
14…ノズル、 15…ガス通路、 16…元弁、
17…比例弁、 18…切換弁、 19…ファン、
20…イグナイタ、 21…点火プラグ、 22…フレームロッド、
23…電子ユニット、 23a…基板、 24…制御部、
25…記憶部、 26…ガス種設定スイッチ、 27…ディップスイッチ、
30…熱交換器、 31…給水通路、 32…水量センサ、
33…給湯通路、 34…カラン、 40…排気口、
50…リモコン、 51…運転ボタン、 52…上下ボタン、
53…表示部。
図1
図2
図3