(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自己粘着層(A)と樹脂フィルム層(B)と表面層(C)の少なくとも3層をこの順で有する自己粘着性合成紙であって、下記条件(1)または(2)を満たす自己粘着性合成紙。
(1)自己粘着層(A)がプロピレン系樹脂を含み、
自己粘着層(A)表面をATR赤外分光スペクトル法で測定して得られるアイソタクチック結晶化度XPPが20〜65%である。ここで、XPPは、998±1cm-1、974±1cm-1および920±1cm-1の範囲における吸光度の最大値をそれぞれA998、A974、A920としたしたときに、以下の式により求められる。
XPP(%)=109×(A998−A920)/(A974−A920)−31.4
(2)自己粘着層(A)がエチレン系樹脂を含み、
自己粘着層(A)表面をATR赤外分光スペクトル法で測定して得られるポリエチレン結晶化度XPEが60〜75%である。ここで、XPEは、731±1cm-1および720±1cm-1の範囲における吸光度の最大値をそれぞれA731、A720としたときに、以下の式により求められる。
XPE(%)=100×(A731/A720)
そして、A720/A974が1.0未満のとき条件(1)を適用し、A720/A974が1.0以上のとき条件(2)を適用する。
前記プロピレン系樹脂が、120〜180℃に示差走査熱量測定法による吸熱ピークを有するプロピレン系樹脂及び0〜200℃に示差走査熱量測定法による吸熱ピークを有しない樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性合成紙。
前記0〜200℃に示差走査熱量測定法による吸熱ピークを有しない樹脂が、プロピレンとエチレン若しくはα−オレフィンとの共重合体、又はエチレンとα−オレフィンの共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の自己粘着合成紙。
前記自己粘着性合成紙の自己粘着層(A)側表面のJIS B0601:2003による算術平均粗さ(Ra)が、0.2〜0.7μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自己粘着性合成紙。
前記自己粘着性合成紙のJIS L1096:2010による曲げ反発A法(ガーレ法)による剛軟度が、0.05〜10mNであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の自己粘着性合成紙。
前記自己粘着性合成紙のJIS P8149:2000による不透明度が、50〜100%であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の自己粘着性合成紙。
JIS K7125:1999による前記自己粘着性合成紙の自己粘着層(A)側表面とガラス板との静摩擦係数が、0.7〜1.1であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の自己粘着性合成紙。
前記自己粘着性合成紙の自己粘着層(A)を水で湿らし、アクリル板に貼着して25℃で24時間保管後、自己粘着性合成紙を剥離した後のアクリル板の表面に視認できる痕残りがないことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の自己粘着性合成紙。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の自己粘着性合成紙は、自己粘着層(A)、樹脂フィルム層(B)及び表面層(C)の少なくとも3層をこの順で有する自己粘着性合成紙であり、合成紙の基材となる樹脂フィルム層(B)の一方の面に自己粘着性を有する層(A)が積層され、他方の面に印刷適性を有する表面層(C)が積層された構造を有する。
以下に、自己粘着層(A)、樹脂フィルム層(B)及び表面層(C)の各層について順次説明する。
【0016】
[自己粘着層(A)]
(1)自己粘着層(A)がプロピレン系樹脂を含み、
自己粘着層(A)表面をATR赤外分光スペクトル法で測定して得られるアイソタクチック結晶化度が20〜65%である、または
(2)自己粘着層(A)がエチレン系樹脂を含み、
自己粘着層(A)表面をATR赤外分光スペクトル法で測定して得られるポリエチレン結晶化度が60〜75%である。
より好ましくは(A)がプロピレン系樹脂を主として含む。
条件(1)と(2)とのどちらを採用するかについては、自己粘着層(A)表面をATR赤外分光スペクトル法で測定した時の720.0±1cm
−1における吸光度の最大値(A
720)と974.0±1cm
−1における吸光度の最大値(A
974)との比A
720/A
974が1.0未満のとき条件(1)を適用し、A
720/A
974が1.0以上のとき条件(2)を適用する。
ATR赤外分光スペクトル法としては、フーリエ変換赤外線分光光度計(FTIR)を使用し、減衰全反射法で測定することによって、測定試料の表面の結晶化度を測定することができる。ここで、FTIR法はゲルマニウムプリズムを使用し、積算回数は32〜128回が好ましい。また、吸光度の最大値は吸光度ピークの頂点とベースラインとの距離である。(田中 聡司,武内 伸代,竹元 賢治,中村 文雄:関税中央分析所報,46, 65 (2007).)
【0017】
(アイソタクチック結晶化度)
自己粘着層(A)表面のアイソタクチック結晶化度は、好ましくは20〜65%の範囲である。アイソタクチック結晶化度の値が20%未満の場合は巻き取りブロッキング抑制の点で問題が発生する可能性があり、また、65%を超える場合は密着力の点で問題が発生する可能性がある。
したがって、自己粘着層(A)表面のアイソタクチック結晶化度は上記範囲が好ましく、より好ましくは35〜62%、更に好ましくは40〜60%の範囲である。
ここで自己粘着層(A)表面のアイソタクチック結晶化度とは、アイソタクチックを含むポリプロピレン系樹脂から構成される自己粘着層(A)表面に占めるアイソタクチックの結晶領域の割合を意味する。
【0018】
自己粘着層(A)が、示差走査熱量測定法による、120〜180℃に吸熱ピークを有するプロピレン系樹脂と、0〜200℃に吸熱ピークを有しない樹脂とを混合する場合、示差走査熱量測定法による120〜180℃における吸熱ピークはポリマー中の結晶部分の融解に由来するピークである。したがって、示差走査熱量測定法による、120〜180℃に吸熱ピークを有するプロピレン系樹脂を含むことは自己粘着層(A)のアイソタクチック結晶化度を上げる作用があり、自己粘着性合成紙の製造において成形加工性を向上させたり、自己粘着性合成紙を複数枚重ねたときに自己粘着層(A)が貼りつき(ブロッキング)を起こすことを抑制したりする効果を奏する。また、0〜200℃に吸熱ピークを有しない樹脂は自己粘着層(A)のアイソタクチック結晶化度を下げる作用があり、自己粘着層(A)による粘着力が向上し、ガラスに対する静摩擦係数が向上したり、被着体に対する密着力が向上したりする効果を奏する。
【0019】
(ポリエチレン結晶化度)
自己粘着層(A)が十分な粘着強度を有するために、自己粘着層(A)は、ATR赤外分光スペクトル法より求めたポリエチレン結晶化度が60〜75%である。ポリエチレン結晶化度の値が60%未満の場合は巻き取りブロッキング抑制の点で問題が発生する可能性があり、また、75%を超える場合は密着力の点で問題が発生する可能性がある。62〜70%が好ましく、65〜68%がより好ましい。
【0020】
(プロピレン系樹脂)
自己粘着層(A)は、ATR赤外分光スペクトル法より求めたアイソタクチック結晶化度が20〜65%、好ましくは35〜62%、より好ましくは40〜60%であってよい。
自己粘着層(A)のアイソタクチック結晶化度が上記範囲であるためには、自己粘着層(A)がアイソタクチック結晶性を発現するホモプロピレンと非晶質性の樹脂とを混合することによってアイソタクチック結晶性を低下させてもよく、プロピレンと共重合可能な他のモノマーを共重合体成分として含むことによってアイソタクチック結晶性を低下させてもよい。自己粘着層(A)中にはプロピレン成分を5〜60質量%含むことが好ましく、10〜50質量%含むことがより好ましい。自己粘着層(A)が、示差走査熱量測定法による、120〜180℃に吸熱ピークを有するプロピレン系樹脂と0〜200℃に吸熱ピークを有しない樹脂とを混合することがさらに好ましい。
【0021】
ホモプロピレンと非晶質性の樹脂とを混合することによってアイソタクチック結晶性を低下させる場合、プロピレン系樹脂とプロピレン−エチレン−炭素数4〜20のα−オレフィン3元共重合体との混合物、プロピレン系樹脂とポリエチレンとの混合物、またはプロピレン系樹脂と水添スチレン系樹脂との混合物を好適に使用できる。この場合の両者の組成割合は、プロピレン系樹脂50〜10質量%に対して前記3元共重合体50〜90質量%、好ましくはプロピレン系樹脂40〜20質量%に対して前記3元共重合体60〜80質量%、プロピレン系樹脂50〜90質量%に対してポリエチレン50〜10質量%、好ましくはプロピレン系樹脂40〜20質量%に対してポリエチレン60〜80質量%、プロピレン系樹脂20〜50質量%に対して水添スチレン系樹脂50〜80質量%、好ましくはプロピレン系樹脂40〜30質量%に対して水添スチレン系樹脂60〜70質量%の組成物が(静止摩擦係数の向上および被貼付物に対する密着力)の面、(ブロッキング防止)の面から好適である。
【0022】
示差走査熱量測定法による、120〜180℃に吸熱ピークを有するプロピレン系樹脂と0〜200℃に吸熱ピークを有しない樹脂とを混合する場合、120〜180℃に吸熱ピークを有するプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体及び主性分にプロピレンを含有し、プロピレン以外の成分としてエチレンやαオレフィンと共重合したものが使用できる。この共重合体のうちプロピレン成分は95mol%以上100mol%未満であることによって120℃以上の吸熱ピークが出現するようになる。α−オレフィンの具体的な例としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどが挙げられる。
プロピレン以外の成分としてエチレンやα−オレフィンと共重合したものの具体的な例としては、プロピレン・エチレン共重合体やプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ペンテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ヘプテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ノネン共重合体、プロピレン・エチレン・1−デセン共重合体などの3元共重合体を挙げることができる。これら重合体は1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
一方、0〜200℃に吸熱ピークを有しない樹脂としては、プロピレンとエチレンや上記α−オレフィンとの共重合体、又はエチレンとα−オレフィンの共重合体であるか、水添スチレンブタジエンであることが好ましい。プロピレンとエチレンや上記α−オレフィンとの共重合体の場合、共重合体のうちプロピレン成分は95mol%未満であることによって吸熱ピークが出現しないようになる。
ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては特に限定されず、上記の特性を満足すれば、いかなる製造方法を用いてもよい。例えば、ポリプロピレンと共重合体とを多段重合により連続的に重合することによってポリプロピレン系樹脂組成物を製造することが例示できる。具体的には、複数の重合器を使用し、1段目でポリプロピレンを重合し、引き続き2段目でポリプロピレンの存在下にエチレンやα−オレフィンを重合しポリプロピレン系樹脂組成物を重合する方法を挙げることができる。また、個々に重合して得られたポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン共重合体とを溶融混練等によって混合することによりポリプロピレン系樹脂組成物を製造してもよい。具体的には、チタン担持触媒等のチーグラーナッタ触媒を用いて重合したエチレン−α−オレフィン共重合体を溶融混練する方法を挙げることができる。
120〜180℃に吸熱ピークを有するプロピレン系樹脂と0〜200℃に吸熱ピークを有しない樹脂とを含んでいるプロピレン系樹脂としては、市販の製品を使用することができ、具体的には、三井化学(株)社製のタフマーPN−2060や三井化学(株)社製のゼラスMC717R4が例示できる。ゼラス MC717R4の製造法は、1段目に結
晶性のポリプロピレンを重合し、2段目でエチレンを重合した連続的な重合法によって製造されたプロピレン系エラストマーであって、2段目に重合したエチレン成分の吸熱ピークは有さずに、1段目に重合したポリプロピレンの吸熱ピークのみ観察されると推定される。
【0024】
0〜200℃に吸熱ピークを有しない樹脂として使用可能な水添スチレン系樹脂としては、水添スチレン−ブタジエン共重合体(HSBR)、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体(SEBC)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等を例示でき、なかでも水添スチレン−ブタジエン共重合体(HSBR)が好ましい。自己粘着層(A)が十分な粘着強度を有するために、水添スチレン系樹脂のスチレン含有量が30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。スチレン含有量が30質量%を超えると、粘着層の柔軟性が劣り、粘着強度が低下する傾向がある。
このような水添スチレン系樹脂としては、市販の製品を使用することができ、具体的には、JSR(株)社製のダイナロン1320Pを挙げることができる。
【0025】
一方、プロピレンと共重合可能な他のモノマーを共重合体成分として含むことによってアイソタクチック結晶性を低下させる場合、共重合ポリマーとしては、共重合体の質量基準でプロピレン単位を95〜99.9質量%、好ましくは98〜99.9質量%の範囲で含むプロピレン−エチレンランダム共重合体が好ましい。プロピレン単位が95質量%を大きく下回ると、自己粘着性合成紙の柔軟性が過剰になりブロッキングが悪化する傾向がある。
【0026】
(ポリエチレン系樹脂)
自己粘着層(A)は、ATR赤外分光スペクトル法より求めたポリエチレン結晶化度が60〜75%、好ましくは63〜72%、より好ましくは65〜70%であってよい。本
発明に使用できるポリエチレン系樹脂としては、高圧法によって重合した低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、またはエチレンとα−オレフィンとの共重合体が好ましい。共重合体の具体的な例としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘプテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−ノネン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体などを挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。このとき、α−オレフィンは共重合体の質量基準で0.5〜15質量%であることが好ましく、1.0〜10質量%がより好ましい。
このようなポリエチレン系樹脂としては、市販の製品を使用することができ、具体的には、高圧法ポリエチレンの例としては日本ポリエチレン社製のノバテックLD LC602Aを挙げることができ、エチレン・α−オレフィン共重合体の例としては、プライムポリマー社製のエボリュー SP1071Cを挙げることができる。
【0027】
自己粘着層(A)の厚みは2〜10μmが好ましく、より好ましくは2〜5μmである。この自己粘着層(A)の厚みが2μm未満の場合は被貼付物に対する密着力が劣りやすく、また、10μmを超える場合は自己粘着性合成紙がカールし易くなる。
【0028】
(算術平均粗さ(Ra))
本発明の自己粘着層(A)は、粘着性の観点から、表面粗さ(JIS−B−0601:1994に準拠して測定される算術平均粗さ(Ra)が0.2〜0.7μmであることが好ましい。同表面粗さは、0.3〜0.6μmであることがより好ましい。表面粗さが0.2μm未満では自己粘着層(A)の密着力が高くなりすぎて剥離後の汚染度が劣るものとなる場合があり、一方、表面粗さが0.7μmを超えると自己粘着層(A)の吸着面が起伏の影響を受けて平滑性を保てなくなり、被貼付物に対する密着力が低下する場合がある。自己粘着層(A)の表面粗さを所望の値にする為には、素材自体が上記範囲のものを選定するか、或いは前述のエンボス加工やシボ加工により表面に上記範囲の起伏を加えることが好ましい。
なお、自己粘着層(A)表面における算術平均粗さ(Ra)の具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0029】
[樹脂フィルム層(B)]
樹脂フィルム層(B)は自己粘着性合成紙のコア部分となる層であり、延伸フィルムが好適に使用できる。この延伸フィルムは、単相フィルム、積層フィルムのいずれも使用可能である。また、樹脂フィルム層(B)で使用する樹脂材料は、自己粘着層(A)の一成分として使用するポリプロピレン系樹脂と同一のものでよい。この樹脂フィルム層(B)のそれぞれの面に自己粘着層(A)又は表面層(C)が積層されるが、それらの層との接着性改善のためにコロナ放電処理を行うことも有効である。
【0030】
(無機粉末及び有機フィラー)
本発明において、後述する表面層(C)に印刷された印刷情報を隠蔽するためには、樹脂フィルム層(B)は不透明であることが好ましい。樹脂フィルム層(B)の不透明度は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
樹脂フィルム層(B)に添加することができる無機粉末又は有機フィラーの体積平均粒径は、基層(A)の白色化および不透明化を達成する観点から、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上である。一方、成膜加工時の流動特性やフィルムの破断し難さの観点から通常10μm以下、好ましくは5μm以下である。なお、本発明において、体積平均粒径の測定は、レーザー回折による粒度分布計を用いて行う。
【0031】
樹脂フィルム層(B)に用いる無機粉末の種類としては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、白土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ、ゼオライト、マイカ、セリサイト、ベントナイト、セピオライト、バーミキュライト、ドロマイト、ワラストナイト、ガラスファイバー等が挙げられる。中でも、白色化、不透明化、および樹脂成形性の観点から、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンが好ましく、炭酸カルシウム、酸化チタンが更に好ましい。
樹脂フィルム層(B)が無機粉末を含有する場合は、樹脂フィルム層(B)の不透明度や白色度を高くする観点から、樹脂フィルム層(B)には、無機粉末を1質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましい。一方、後述する樹脂フィルム層(B)の製造時における延伸の安定性の観点からは、樹脂フィルム層(B)には、無機粉末を70質量%以下含むことが好ましく、60質量%以下含むことがより好ましく、50質量%以下含むことが更に好ましく、30質量%以下含むことが最も好ましい。
【0032】
樹脂フィルム層(B)が有機フィラーを含有する場合は、有機フィラーの機能を発現する観点から0.01質量%以上含有することが好ましい。一方、印刷後の外観を良好にする観点からは、20質量%以下含有することが好ましく、10質量%以下含有することがより好ましい。有機フィラーとしては、樹脂フィルム層(B)の主成分である熱可塑性樹脂と異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。中でも、樹脂フィルム層(B)の主成分である熱可塑性樹脂より、高い融点またはガラス転移点を示す樹脂を選択することがより好ましい。例えば、樹脂フィルム層(B)の主成分である熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂(融点が80〜160℃)の場合は、有機フィラーの融点は170〜300℃であることが好ましく、有機フィラーのガラス転移点は170〜280℃であることが好ましい。このような融点またはガラス転移点を示す有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6等が挙げられ、樹脂フィルム層(B)の主成分である熱可塑性樹脂とは相溶しない樹脂を選択することがより好ましい。
樹脂フィルム層(B)の主成分である熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合は、有機フィラーとしては、上記列挙した樹脂に加えてポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、樹脂フィルム層(B)の主成分である熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂の場合は、有機フィラーとしては、上記列挙した樹脂に加えて高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、環状ポリオレフィン等が挙げられる。
【0033】
(延伸フィルム)
樹脂フィルム層(B)は延伸フィルムであることが好ましく、延伸フィルムは一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、積層フィルムの場合は一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムの組合せであってもよい。この樹脂フィルム層(B)の厚みは40〜200μmが好ましく、より好ましくは50〜150μmである。この樹脂フィルム層(B)の厚みが40μm未満の場合はガーレ剛軟度が低くなり、被貼付物に貼付するときの作業性が劣るものとなり易く、また、200μmを超える場合はカールし易くなったり巻回しにくくなったりする。
【0034】
(延伸)
樹脂フィルム層(B)は、少なくとも1軸方向に延伸された延伸樹脂フィルム層を含むことが好ましい。樹脂フィルム層の延伸は、通常用いられる種々の方法のいずれかによって行うことができる。
延伸の温度は、樹脂フィルム層(B)に主に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上、結晶部の融点以下の温度範囲で、その熱可塑性樹脂に好適な公知の温度範囲で行うことができる。具体的には、樹脂フィルム層(B)の熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合は100〜166℃、高密度ポリエチレン(融点121〜136℃)の場合は70〜135℃であり融点より1〜70℃低い温度である。また、
延伸速度は20〜350m/分にするのが好ましい。
【0035】
延伸方法としては、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、縦延伸と横延伸を組み合わせた逐次2軸延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時2軸延伸などを挙げることができる。又、インフレーションフィルムの延伸方法としては、チューブラー法による同時2軸延伸を挙げることができる。
延伸倍率は特に限定されず、樹脂フィルム層(B)に用いる熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしはその共重合体を使用し、これを一方向に延伸する場合は、約1.2〜12倍、好ましくは2〜10倍であり、2軸延伸の場合には、面積倍率で1.5〜60倍、好ましくは4〜50倍である。その他の熱可塑性樹脂を使用し、これを一方向に延伸する場合は、1.2〜10倍、好ましくは2〜5倍であり、2軸延伸の場合には、面積倍率で1.5〜20倍、好ましくは4〜12倍である。
【0036】
このようにして得られる樹脂フィルム層(B)は、空孔をフィルム内部に多数有するものであり、次式(1)で算出された空孔率が5〜60%であることが好ましく、10〜45%であることがより好ましい。空孔の存在により、光拡散率の向上し、不透明度の高い樹脂フィルム層(B)を得ることが可能となる。
【0038】
[表面層(C)]
本発明における表面層(C)は、自己粘着性合成紙に帯電防止性能を付与することによって印刷工程でのトラブルを発生し難くしてハンドリング性を改善させるとともに、表面層(C)と印刷インキとの密着性を向上させて、その印刷適性を向上させるものである。
その結果、本発明の自己粘着性合成紙は多様な印刷方式に対応することができる。
表面層(C)が帯電防止性能を有することにより、自己粘着性合成紙が内部に電荷を有している場合であっても、表面層(C)面は静電吸着力が低いものとなり、印刷工程でロールへの貼り付きやシート同士のブロッキング等のトラブルが発生し難いものとなる。
【0039】
(表面抵抗率)
表面層(C)の表面抵抗率は、JIS K6911:2006に準拠して測定した表面抵抗率が1×10
-1〜9×10
12Ωであることが好ましく、より好ましくは1×10
-7
〜9×10
11Ωである。
表面層(C)の表面抵抗率が9×10
12Ωを超えてしまうと、自己粘着性合成紙が印刷工程でロールへの貼り付きやシート同士のブロッキング等のトラブルが発生し易いものとなる場合がある。一方、表面層(C)の表面抵抗率が1×10
-1Ωを下回るような高導電性を有する表面層(C)を形成することは技術的に困難であるか、形成できたとしても、高コストとなってしまうことから現実的ではない。
【0040】
(表面層(C)の組成)
表面層(C)は、帯電防止剤0.1〜100質量%と高分子バインダー0〜99.9質量%と顔料粒子0〜70質量%を含むことが好ましく、帯電防止剤0.5〜70質量%と高分子バインダー30〜99.5質量%と顔料粒子0〜69.5質量%を含むことがより
好ましく、帯電防止剤1〜50質量%と高分子バインダー50〜99質量%と顔料粒子0〜49質量%を含むことが更に好ましい。
表面層(C)は、これら成分を含む塗工層として、樹脂フィルム層(B)上に直接塗工により設けるか、或いは予め別のフィルム上に表面層(C)を形成して、これを樹脂フィルム層(A)にラミネートすることで形成することが好ましい。
【0041】
(帯電防止ポリマー)
帯電防止剤は、表面層(C)に帯電防止性能を付与するために添加するものであり、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの分子鎖内のパイ電子により導電性を発揮するいわゆる電子導電性ポリマー、そしてポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン等の非イオン性ポリマー系の帯電防止剤、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物等の第四級アンモニウム塩型共重合体、アルキレンオキシド基および/または水酸基含有ポリマーへのアルカリ金属イオン添加物等のアルカリ金属塩含有ポリマーに代表される帯電防止機能を有するポリマーなどが挙げられる。電子導電性ポリマーは共役系に由来する着色により一般的には黒色、緑色、或いは青灰色の着色が有り、これを用いれば優れた帯電防止効果は得られるものの、くすんだ色のラベルとなり印刷用原紙としては適さないなどの欠点がある。帯電防止機能を有するポリマーは、インキの密着性、転移性への影響も小さく、着色も殆ど無いことから本発明で使用する帯電防止剤として好ましいものである。
【0042】
これらの中でも、アルキレンオキシド基および/または水酸基含有ポリマーへのアルカリ金属イオン添加物等のアルカリ金属塩含有ポリマーやポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物等の第四級アンモニウム塩型共重合体は帯電防止性能が良好であり、環境湿度の帯電防止性能への影響が小さいことから、本発明で使用する帯電防止剤としてより好ましいものである。
【0043】
(アルカリ金属塩含有ポリマー)
本発明の帯電防止剤として用い得る帯電防止機能を有するポリマーの別の一例として、アルカリ金属塩含有ポリマーが挙げられる。該アルカリ金属塩含有ポリマーは、下記一般式(化1)で表されるポリアルキレンオキシド化合物単量体構造単位(a)、下記一般式(化2)で表される疎水性単量体構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の質量割合を、(a):(b):(c)=1〜99:0〜99:0〜40(wt%)の範囲として、これらを共重合してなるアルカリ金属塩含有ポリマーである。
【0044】
各構造単位(a)、(b)及び(c)の質量割合は、好ましくは20〜70:30〜80:0 〜20(wt%)、特に好ましくは30〜60:40〜70:0〜10(wt%)である。次に、構造単位(a)、(b)、(c)について説明する。
(a)ポリアルキレンオキシド化合物単量体単位
構造単位(a)を形成するポリアルキレンオキシド化合物単量体は、下記一般式(化1)で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステルである。該単位は構造内のアニオン及びアルカリ金属イオンにより表面層(C)の帯電防止機能に寄与する成分である。表面層(C)中の同成分が1質量%より少ないと、十分な帯電防止効果を与えることが出来ない。また99質量%を超えると過度に水溶性となり、高湿度条件下でべたつきの原因となる。
【0046】
上記式中、R
10は水素原子またはメチル基、R
11は水素原子、塩素原子、またはメチル基、Aは下記の<1群>から選択される1種の連結基か、下記の<1群>から選択される1種以上の連結基と下記の<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基か、または単結合を表し、Mはアルカリ金属イオン、nは1〜100の整数を表す。
<1群>置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基、
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリーレン基、
<2群>−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHCOO−、
−NH−、−COO−、−OCO−、−O−、
<1群>の炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられ、これらは直鎖状であっても分枝状であってもよいが好ましいのは直鎖状である。置換基としては、ヒドロキシル基、アリール基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基などが挙げられる。置換基としては、ヒドロキシル基、アルキル基などが挙げられる。アルキル基が置換したアリーレン基としては、トリレン基、キリリレン基などが挙げられる。
【0047】
また、<2群>から選択される連結基としては、ウレタン基やエステル基を好ましく選択することができる。
<1群>から選択される1種以上の連結基と<2群>から選択される1種以上の連結基とが交互に結合した連結基としては、「(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)」で表される連結基や、「(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)−(1群から選択される連結基)−(2群から選択される連結基)」で表される連結基などが挙げられる。後者の場合は、2種類の(1群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、2種類の(2群から選択される連結基)は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
上記一般式(化1)において、nが2以上であるとき、n個のR
11は同一であっても異なっていてもよいが、好ましいのは同一である場合である。nは1〜100の整数を表すが、2〜50が好ましく、3〜50がより好ましい。例えば、R
11が水素原子の場合、nを10〜35、さらには15〜30、さらには20〜25の範囲内から選択したり、R
11がメチル基の場合、nを1〜20、さらには3〜16、さらには5〜14の範囲内から選択したりしてもよい。
【0049】
上記一般式(化1)において、Mはアルカリ金属であり、Li、Na、Kなどを挙げる
ことができ、イオン半径の小さいLiを用いることが導電性の観点で好ましい。
本発明において好適に用い得るポリアルキレンオキシド化合物単量体の例としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)クロロエチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの
(ポリ)アルキレンオキシド(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
また、これらの具体例において、さらに上記一般式(化1)のAに相当する箇所に単結合以外の連結基を有するアルキレンオキシドモノマーも挙げられる。例えば、Aにウレタン結合を有する化合物として、特開平09−113704号公報に記載される化合物を使用することができる。
Mに相当するアルカリ金属を導入する方法は、特に制限されないが、通常はアルキレンオキシドモノマーにアルカリ金属塩を反応させて水酸基末端をイオン化することによりアルカリ金属イオンによるイオン導電性を持たせることができる。本発明において好適に用い得るアルカリ金属塩の例としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの過塩素酸塩、またはこれらの塩化物、臭化物、ヨウ化物、チオシアン化物等の無機塩が挙げられる。これら無機塩を上記ポリアルキレンオキシド化合物単量体に添加してアルコキシド化することによりアルカリ金属イオンによるイオン導電性を得ることができる。又、特開平09−113704公報には、式1のAにウレタン結合を持ったアルキシド化合物が提案されている。
【0051】
本発明に用い得るアルカリ金属イオンとしては、前述のリチウム、ナトリウム、カリウム、を用いることが出来るが、中でもイオン半径の小さいリチウムが最適である。本発明の塗工層にはアルカリ金属イオン濃度として、好ましくは0.01〜1.00質量%、より好ましくは0.01〜0.70質量%、更に好ましく0.01〜0.50質量%となる様に帯電防止機能を有するポリマーを添加することが望ましく、アルカリ金属イオン濃度が0.01質量%未満では、十分な帯電防止効果が得られず、1.00質量%を超えると帯電防止効果は得られるものの金属イオンの増加から印刷インキとの密着性が低下してしまう。
【0052】
(b)疎水性単量体単位
構造単位(b)を形成する疎水性単量体は、下記一般式(化2)で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステルである。該単位は、該共重合体に親油性を付与するものであり、耐水性や印刷インキ転移性に寄与する成分である。印刷適性と帯電防止性の両立から、疎水性単量体との共重合が必要となる。ポリマー中の同成分が30質量%より少ないと、上記の効果が低下する。また70質量%を超えると相対的に帯電防止効果が低下する。
【0054】
上記式中、R
8は水素原子またはメチル基、R
9は炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数が7〜22のアラルキル基、または炭素数が5〜22のシクロアルキル基を表わす。
上記一般式(化2)で表される構造単位を形成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0055】
(c)共重合可能な他の単量体単位
また、必要に応じて共重合に使用される、上記単量体(a)成分及び単量体(b)成分と共重合可能な他の単量体単位としては、下記一般式(化3)〜(化7)で表されるスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等の疎水性単量体や、ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド等の親水性単量体を挙げることができる。これらの単量体は第四級アンモニウム塩型共重合体中に構造単位(c)として好適に組み込むことができる。該単位は該共重合体の共重合を容易とし、また塗工液調整時の溶媒への溶解性を調整するものである。
【0061】
(共重合)
本発明で用い得るアルカリ金属塩含有ポリマーは、上記一般式(化1)で表されるポリアルキレンオキシド化合物単量体構造単位(a)と、疎水性単量体構造単位(b)と、これらと共重合可能な単量体構造単位(c)とを共重合させることにより製造することができる。
このアルカリ金属塩含有ポリマーの製造方法は、特に制限されず、公知の重合手法を単
独乃至組み合わせて適宜用いることができるが、ラジカル開始剤を用いた、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することが好ましい。
【0062】
本発明で用い得るアルカリ金属塩含有ポリマーの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した質量平均分子量が1万〜100万の範囲内であることが好ましい。分子量が1万以上であれば、形成した塗工層から同ポリマーが染み出し難くなるため、十分な耐水性が得られやすい傾向がある。分子量が100万以下であれば、バインダー成分と混和しやすいため塗工欠陥が生じにくくなり均一な帯電防止効果が得られやすい傾向がある。
【0063】
(第四級アンモニウム塩型コポリマー)
本発明で用い得る帯電防止機能を有するポリマーの他の一例として、第四級アンモニウム塩型共重合体よりなるマルチカチオン型水溶性ポリマーが挙げられる。該共重合体は、下記一般式(化8)で表される第四級アンモニウム塩型単量体構造単位(d)、一般式2(化2)で表される疎水性単量体構造単位(b)、及びこれらと共重合可能な単量体からなる構造単位(c)を含有し、これら構造単位の質量割合を、(d):(b):(c)=30〜70:30〜70:0〜40(wt%)の範囲として、これらを共重合してなる第四級アンモニウム塩型共重合体である。
各構造単位(d)、(b)及び(c)の質量割合は、好ましくは35〜65:35〜65:0〜20(wt%)、特に好ましくは40〜60:40〜60:0〜10(wt%)である。
【0064】
(d)第四級アンモニウム塩型単量体単位
構造単位(d)を形成する第四級アンモニウム塩型単量体は、下記一般式(化8)で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステル乃至アミドである。該単位は構造内の2以上のカチオンにより該共重合体の帯電防止機能に寄与する成分である。該共重合体中の同成分が30質量%より少ないと、十分な帯電防止効果を与えることが出来ない。また70質量%を超えると過度に水溶性となり、高湿度条件下でべたつきの原因となる。
【0066】
上記式中、Aはオキソ基(−O−)または第2級アミン基(−NH−)、R
1は水素原
子またはメチル基、R
2は炭素数が2〜4のアルキレン基または下記一般式(化9)で表
される2−ヒドロキシプロピレン基であり、R
3,R
4,R
5及びR
6は炭素数が1〜3のアルキル基、R
7は炭素数が1〜10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基
、Xは塩素原子、臭素原子、または沃素原子、mは1〜3の整数を表わす。R
3,R
4,R
5及びR
6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
前記一般式(化8)で表される構造単位(d)を形成する第四級アンモニウム塩型単量体は、下記一般式(化10)で表されるジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミン含有単量体を、下記一般式(化12)で表される3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の変性剤で、重合前に若しくは重合後に変性することによって得ることができる。
【0070】
上記式中、Aはオキソ基(−O−)または第2級アミン基(−NH−)、R
1は水素原
子またはメチル基、R
2は炭素数が2〜4のアルキレン基または下記一般式(化11)で
表される2−ヒドロキシプロピレン基であり、R
3,R
4は炭素数が1〜3のアルキル基を表わす。R
3とR
4は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
上記式(化12)中、R
5及びR
6は炭素数が1〜3のアルキル基、R
7は炭素数が1〜
10のアルキル基または炭素数が7〜10のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子、または沃素原子、mは1〜3の整数を表わす。R
5とR
6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
(b)疎水性単量体単位
構造単位(b)を形成する疎水性単量体は、下記一般式(化2)で表されるアクリル酸乃至メタクリル酸のエステルである。該単位は、該共重合体に親油性を付与するものであり、耐水性や印刷インキ転移性に寄与する成分である。印刷適性と帯電防止性の両立から、疎水性単量体との共重合が必要となる。ポリマー中の同成分が30質量%より少ないと、上記の効果が低下する。また70質量%を超えると相対的に帯電防止効果が低下する。
【0075】
上記式中、R
8は水素原子またはメチル基、R
9は炭素数が1〜30のアルキル基、炭素数が7〜22のアラルキル基、または炭素数が5〜22のシクロアルキル基を表わす。
上記一般式(化2)で表される構造単位を形成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0076】
(c)共重合可能な他の単量体単位
また、必要に応じて共重合に使用される、上記単量体(d)成分及び単量体(b)成分と共重合可能な他の単量体単位としては、下記一般式(化3)〜(化7)で表されるスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル等の疎水性単量体や、ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド等の親水性単量体を挙げることができる。これらの単量体は第四級アンモニ
ウム塩型共重合体中に構造単位(c)として好適に組み込むことができる。該単位は該共重合体の共重合を容易とし、また塗工液調整時の溶媒への溶解性を調整するものである。
【0082】
[共重合]
上記共重合体を得るための共重合方法としては、ラジカル開始剤を用いた、塊状重合、溶液重合、乳化重合等の公知の重合方法を採用することができる。これらの中で好ましい重合方法は溶液重合法であり、該重合は、各単量体を溶媒に溶解し、これにラジカル重合開始剤を添加して、窒素気流下において加熱攪拌することにより実施される。溶媒は水、乃至はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、セロソロブ等のアルコール類が好ましく、またこれらの溶媒を混合して使用してもよい。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどのアゾ化合物が好適に用いられる。重合時の単量体固形分濃度は、通常10〜60質量%であり、重合開始剤の濃度は、単量体に対し通常0.1〜10質量%である。第四級アンモニウム塩型共重合体の分子量は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類及び量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。
本発明で用い得る第四級アンモニウム塩型共重合体の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した質量平均分子量が1千〜100万の範囲内であることが一般的であるが、1千〜50万の範囲が好ましい。
【0083】
(高分子バインダー)
本発明の表面層(C)は、必要に応じて高分子バインダーを含んでいても良い。該高分子バインダーは、表面層(C)を設ける樹脂フィルム層(B)との密着性を有し、かつ印刷インキとの密着性を向上させる目的から、適宜使用する。
高分子バインダーの具体例としては、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、およびオキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体等の(メタ)アクリル系重合体、ポリエチレンイミン、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)、ポリ(エチレンイミン−尿素)のエチレンイミン付加物、ポリアミンポリアミド、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等、加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂、水酸基変性ポリオレフィン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、 塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体樹脂、塩素化エチレン樹脂、塩素化プロピレン樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、ニトロセルロース樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体樹脂等が挙げられる。
【0084】
これらの高分子バインダーは、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。これらの高分子バインダーは有機溶剤または水に希釈または分
散した様態で用いることができる。これらの中でも、(メタ)アクリル系重合体、若しくはポリエチレンイミン系重合体が、前述のイオン性ポリマー系の帯電防止機能を有するポリマーとの相性(相溶性)がよく、混溶して塗料とした際に安定しており、塗工しやすく好ましい。
【0085】
(無機顔料)
本発明の表面層(C)は、必要に応じて顔料粒子を含んでいても良い。表面層(C)には0〜70質量%の範囲で顔料粒子を含むことが可能である。即ち70質量%以下の顔料粒子を含んでいても良く、含まなくても良い。顔料粒子の含有率は好ましくは0〜69.5質量%、より好ましくは0〜49質量%である。
顔料粒子は、その吸油性による印刷インキの定着性向上、体質顔料として表面の風合いや光沢感向上、白色顔料として白色度向上、表面凹凸付与によるブロッキング防止性能向上、紫外線反射材として耐光性や耐候性向上、等の性能付与を考慮し適宜選択して使用できる。
【0086】
顔料粒子として、有機、無機の粉末が使用され、具体的な例としては、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、焼成クレイ、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、珪藻土、アクリル粒子、スチレン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子等を使用することができる。顔料粒子の粒子径は、好ましくは20μm以下のものであり、より好ましくは15μm以下のものである。顔料粒子の粒子径が20μmを超えると形成した塗工層から顔料粒子が脱落しやすくなり粉吹き現象が発生する。表面層(C)中の顔料粒子含有量は、好ましくは0〜70質量%、より好ましくは0〜60質量%、更に好ましくは0〜45質量%の範囲である。顔料粒子の含有量が70質量%を超えると相対してバインダー樹脂が不足し、表面層(C)の凝集力不足が発生して、印刷インキが剥離しやすい傾向にある。
表面層(C)は上記成分を含む塗工液を調製し、樹脂フィルム層(B)等の上に塗工し、これを乾燥、固化させて塗工層として設けることが可能である。塗工には、従来公知の手法や装置を利用することができる。
【0087】
表面層(C)はラミネートにより樹脂フィルム層(B)に設けることも可能である。この場合は、あらかじめ表面層(C)を設けた別のフィルムを作成し、樹脂フィルム層(B)にこれをラミネート加工すればよい。ラミネート加工は、通常のドライラミネート、または溶融ラミネート等の手法により行うことができる。
本発明の表面層(C)は帯電防止性能を有するものである。表面層(C)表面の表面抵抗率は、1×10
-1〜9×10
12Ω、好ましくは1×10
3〜9×10
11Ω、更に好まし
くは1×10
6〜9×10
10Ωの範囲内に調整されている。
【0088】
また、表面層(C)の膜厚は、0.01〜50μmであることが好ましく、0.05〜30μmであることがより好ましく、0.1〜10μmであることが更に好ましく、0.3〜8μmであることが特に好ましい。膜厚が0.01μmに満たない場合は、表面層(C)の均一性を維持することが難しく、印刷インキの密着性が低下する可能性がある。一方50μmを超えてしまうと、表面層(C)が重くなり自己粘着層(A)の吸着力では、自重を支えることができず剥れ落ちやすくなってしまい、本発明の所期の性能を達成しづらい。
【0089】
[自己粘着性合成紙の物性]
本発明の自己粘着性合成紙は、その用途に関連して不透明度、摩擦係数、密着性、汚染度、厚み、カール、ブロッキング、印刷性等において、用途に応じてそれぞれ望ましい性質が要求される場合があり、それらについて説明する。
(ガーレ法による剛軟度)
【0090】
本発明の自己粘着性合成紙はポスター等の掲示物の使用にも適しており、その用途の場合は貼付時の扱いやすさの観点からある程度の剛性を有していることが好ましい。好ましい剛軟度は0.05〜10mNであり、より好ましくは0.1〜7mN、さらに好ましくは0.3〜4mNである。剛軟度が0.05mN以上であれば、自己粘着性合成紙自体に腰があり、取り扱いが容易となり、被貼付体に貼り付ける作業を手際よく行うことができ、また、貼るときにしわが入りにくい。一方、剛軟度が10mN以下であれば、貼付前に小さなカールが発生しても、被貼付体から剥がれにくく、きれいに貼り付けることができる。
なお、本発明での剛軟度はJIS L1096:2010による曲げ反発A法(ガーレ法)に基づくものである。
具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0091】
(不透明度)
本発明の自己粘着性合成紙をポスター等の掲示物に使用する場合、その表面層に印刷を施すことが好ましい場合もあり、下地の被貼付物の影響を避けるために自己粘着性合成紙自体が不透明であることが要求されることもある。また、被貼付物が透明なものである場合、被貼付物側から自己粘着性合成紙の自己粘着層及び樹脂フィルム層を通して表面印刷層裏面が見えることがあり、そのような事態を避けるために自己粘着性合成紙自体に不透明性が求められることがある。本発明の自己粘着性合成紙では不透明度50〜100%が好ましく、より好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%である。不透明度が50〜100%であれば、掲示物として使用した際に、被貼付対象物の着色、絵柄模様などが透けず装飾性に優れた自己粘着性合成紙が得られる。
なお、本発明での不透明度はJIS P8149:2000に基づくものである。
具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0092】
(摩擦係数)
本発明の自己粘着性合成紙の自己粘着層(A)面とガラス板との静摩擦係数は、0.7〜1.1、より好ましくは0.8〜1.0である。摩擦係数は自己粘着層(A)の算術平均粗さにも影響を受け、この算術平均粗さが大きくなると静止摩擦係数が低下し、ガラス板に対する密着力が低下する傾向がある。静摩擦係数は、0.7〜1.1の範囲であれば、ガラス板に対する良好な密着力を示す。
なお、本発明での静摩擦係数はJIS K7125:1999に基づくものである。
具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0093】
(密着力、汚染度)
本発明の自己粘着性合成紙は、貼付後は簡単にはがれることがなく、また、必要に応じて容易に剥離でき、かつ、糊残りがない特性を有するものであり、そのため適度の密着力とともに剥離特性も要求される。具体的には、アクリル板に対して70〜700gf/cm
2、より好ましくは140〜450gf/cm
2の密着力を有することが好ましい。また、汚染度については、アクリル板に対し剥離後視認できる糊の痕残りがないことが好ましい。
具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0094】
(厚み、カール性、ブロッキング性、印刷性)
本発明の自己粘着性合成紙は、少なくとも自己粘着層(A)、樹脂フィルム層(B)及び表面層(C)を含むものであり、その全体厚みは40〜200が好ましい。また、本発明の自己粘着性合成紙は互いに物性の異なる層を含む積層フィルムであることや延伸フィルム層を含むことから、自己粘着性合成紙がカールを発生することがある。このカールは小さいほど好ましいが1〜50mm程度であれば自己粘着性合成紙の通常の使用には支障とはならない。
本発明の自己粘着性合成紙は、ロール状に巻回して保管しておくため保管時にブロッキングを起こさないこと、また、ロールからの引出時にブロッキングを引き起こすことなくスムースな引き出しが可能であることが要求される。
【0095】
本発明の自己粘着性合成紙は、表面層(C)に印刷を施すことができ、そのことにより種々の分野に使用可能である。後述のように多様な用途として利用可能であり、印刷インキと表面層(C)とが十分に密着していることが要求され、インキの密着強度が1.4kg・cm以上であることが好ましい。
厚み、カール性、ブロッキング性、印刷性に関するそれぞれの具体的な測定方法は、実施例のところで説明する。
【0096】
[自己粘着性合成紙の用途]
本発明の自己粘着性合成紙は表面層(C)に印刷を施すことができ、その印刷物の用途としては、掲示物であるPOPカード(ポスター、ステッカー、ディスプレイ等)、店舗案内(パンフレット、会社案内、品書き、メニュー等)、下敷き(ランチマット、テーブルマット、文房具用品等)、マニュアル(職務、作業、操作等の各種マニュアル、工程表、時間割等)、チャート類(海図、天気図、図表、罫線表等)、カタログ、地図(海図、路線図、屋外用地図等)、店頭価格表、登山ガイド、名刺、迷子札、料理のレシピ、案内板(売り場案内、方向・行き先案内等)、スケジュール表、ロード・サイン(葬式・住宅展示場所等)、室名札、校内記録表、表示板(立ち入り禁止、林道作業等の)、区画杭、表札、カレンダー(画像入り)、簡易ホワイトボード、マウスパッド、包装資材(包装紙、箱、袋等)、コースター、等を例示することができ、何れも利用可能である。
【実施例】
【0097】
以下に試験方法、製造例、調製例、実施例および比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下に記載される質量部は固形分の質量基準であり、%は、特記しない限り質量%である。
【0098】
[試験方法]
(アイソタクチック結晶化度)
積層樹脂フィルムの自己粘着層(A)側表面のアイソタクチック結晶化度は、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、商品名:FT−IR/2R−410)を用い、減衰全反射法にて自己粘着層(A)側表面を測定して、998±1cm
-1、974±1cm
-1および920±1cm
-1の範囲における吸光度の最大値をそれぞれA
998、A
974、A
920とした。次に「赤外法による材料分析―基礎と応用―(講談社サイエンティフィック,
1986年8月,第214〜215頁)」に従って、以下の式を用いてアイソタクチック結晶化度X
PPを求めた。
X
PP(%)=109×(A
998−A
920)/(A
974−A
920)−31.4
【0099】
(ポリエチレン結晶化度)
積層樹脂フィルムの自己粘着層(A)側表面のポリエチレン結晶化度は、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、商品名:FT−IR/2R−410)を用い、減衰全反射法にて自己粘着層(A)側表面を測定して、731±1cm
-1および720±1cm
-1の範囲における吸光度の最大値をそれぞれA
731、A
720とした。次に以下の式を用いてポリエチレン結晶化度X
PEを求めた。
X
PE(%)=100×(A
731/A
720)
【0100】
(示差走査熱量測定法による吸熱ピーク)
示差走査熱量測定法による吸熱ピークは、以下の測定により求めた。
示差走査熱量計(Seiko Instruments Inc.社製、商品名:DSC6200)を使用して、試料(約5mg)を230℃で5分間融解後、10℃/分の速度で30℃まで降温し、30℃で3分保持した後に、10℃/分の速度で230℃まで昇温することにより熱量曲線を得た。測定温度範囲内に熱量曲線の谷が存在すれば吸熱ピークを有すると判定した。
(融点Tmの測定)
上記示差走査熱量測定法による吸熱ピークの測定と同様にして、熱量曲線を得た。
前記熱量曲線の吸熱ピークトップ温度を融点Tmとした。
(算術平均粗さRa)
積層樹脂フィルムの自己粘着層(A)側表面の算術平均粗さRa(μm)は、JIS B0601:2003に準拠し、三次元粗さ測定装置((株)小坂研究所製、商品名:SE−3AK)、および解析装置((株)小坂研究所製、商品名:SPA−11)を用いて測定した。
【0101】
(厚み)
積層樹脂フィルムの厚み(全厚)は、JIS K7130:1999に準拠し、定圧厚さ測定器((株)テクロック製、商品名:PG−01J)を用いて測定した。また、積層樹脂フィルムにおける各層の厚みは、測定対象試料を液体窒素にて−60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(シック・ジャパン(株)製、商品名:プロラインブレード)を直角に当て切断し断面観察用の試料を作成し、得られた試料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名:JSM−6490)を使用して断面観察を行い、組成外観から熱可塑性樹脂組成物ごとの境界線を判別して、積層樹脂フィルムの全厚に観察される各層厚み比率を乗算して求めた。
【0102】
(表面抵抗率)
積層樹脂フィルムの表面抵抗率は、23℃、相対湿度50%の条件下で、表面抵抗率が1×10
7Ω以上の場合は、JIS K6911:2006に準拠し2重リング法の電極
を用いて測定した。表面抵抗率が1×10
7Ω未満の場合は、JIS K7194:19
94に準拠し、4深針法で測定することによって求めた抵抗(R)に、補正係数Fを乗じてこれを表面抵抗率とした。
【0103】
(ガーレ剛軟度)
積層樹脂フィルムのガーレ剛軟度は、JIS L1096:2010に準拠し、温度23℃湿度50%RHの環境下で、MD方向とTD方向それぞれについて、ガーレ剛軟度試験機(大栄科学精器製作所(株)製、商品名:GAS−100)を用いて測定した。
(不透明度)
積層樹脂フィルムの不透明度は、JIS P8149:2000に準拠し、測定背面に、黒色および白色標準板を当て、光の反射率の比(黒色板/白色板)を百分率で示した値として求めた。
(静止摩擦係数および動摩擦係数)
積層樹脂フィルムのガラス板に対する静止摩擦係数および動摩擦係数は、JIS K7125:1999に準拠し、擦係数試験器(東洋精機(株)製、商品名:TR−2)を用いて、測定した。
【0104】
(密着力)
自己粘着性合成紙のアクリル板に対する密着力は、自己粘着性合成紙を700mm×250mmのサイズに断裁し、自己粘着性合成紙の自己粘着層(A)を水で湿らし、アクリル板に貼着して25℃で24時間保管後、相対湿度50%の雰囲気下で、
図1に概略図を示す密着力測定装置のガラス板上に、吸着面積が500mm×200mmとなり測定サンプルの下端20mm幅分がはみ出す様に貼り付け、測定サンプルの下端分にクリップを取り付け、糸を取り付けた10、50、200、500gの分銅を組み合わせてクリップに取り付け、測定サンプルが滑り落ちた時の分銅の重さから密着力を平米当りに換算して求めた。
【0105】
(汚染度)
自己粘着性合成紙の密着力試験において剥離した後のアクリル板を対象として以下の方法で汚染度を評価した。
○:視認できる痕残りがないこと
△:軽く布でから拭きしたとき痕残りがないこと
×:水や溶媒を用いないと痕残りが落ちないこと
(カール)
自己粘着性合成紙を温度50℃、相対湿度50%にて平らな台の上に放置し、1日後の
四隅のカールが上向きに持ち上がる方向に置き、自己粘着層(A)側に持ち上がった時をマイナス、表面層(C)側に持ち上がった時をプラスとし、4隅の高さの平均値を測定し、以下の方法でカールを判定した。
◎:4隅の高さの平均値が±3mm未満
〇:4隅の高さの平均値が±3mm以上、±5mm未満
△:4隅の高さの平均値が±5mm以上、±10mm未満
×:4隅の高さの平均値が±10mm以上
【0106】
(巻き取りブロッキング)
自己粘着性合成紙を、ロール状に巻回して、温度40℃,相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、ロールからの引出時にブロッキングを引き起こすことなくスムースな引き出しが可能であるか、以下の方法で巻き取りブロッキングを評価した。
○:剥離音がなくスムースに引き出せること
△:剥離音があるが、引き取り後の表面層(C)の外観を損ねていないこと
×:大きな剥離音があり、かつ引き取り後の表面層(C)の外観を損ねていること
【0107】
(印刷性)
自己粘着性合成紙を、温度23℃,相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、自己粘着性合成紙の表面層(C)面に、印刷試験機((株)明製作所社製、商品名:RI−III型印刷適性試験機)を用いて、印刷インキ((株)T&K TOKA社製、商品名:ベストキュアー161墨)を1.5g/m
2の厚さとなるよう均一に印刷し、メタルハライ
ド灯(アイグラフィック(株)製、出力:80W/cm)下でUV照射強度が0.04W/cm
2となるようにUV照射し、印刷インキを乾燥固化した。
再びこの自己粘着性合成紙を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した後、印刷面にセロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:CT−18)を貼り付け、JAPAN TAPPI No.18−2(内部結合強さ試験方法)に準じてインターナルボンドテスター(熊谷理機工業(株)社製、商品名)を用い、インキの剥離強度を測定し、2回の測定結果の平均値を密着強度とした。同結果より以下の基準で合否評価した。
○:合格 密着強度が1.4kg・cm以上
×:不合格 密着強度が1.4kg・cm未満
【0108】
[積層樹脂フィルムの製造例]
表1に熱可塑性樹脂組成物の配合比率(質量部)を示す。以下の手順に従って、製造例1〜19の積層樹脂フィルムを製造した。
表1中に記載した「MFR」とは、JIS K7210:1999(「プラスチック−熱
可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」)によって測定したメルトフローレートを指す。
【0109】
【表1-1】
【0110】
【表1-2】
【0111】
フィルム1の製造例
(製造例1)
表1に記載の熱可塑性樹脂組成物jを230℃に設定した押出機にて溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給しシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸シートを得た。この無延伸シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。次いで可塑性樹脂組成物aを250℃に設定した1台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記5倍延伸シートの第1面に積層すると同時に、可塑性樹脂組成物jを230℃に設定した1台の押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出して上記5倍延伸シートの第2面に積層して、3層積層シートを得た。次いで、この3層積層シートを60℃まで冷却した。次いで、テンターオーブンを用いて3層積層シートを約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、熱可塑性樹脂組成物aの1軸延伸層が自己粘着層(A)であり、肉厚が80μm、各層の樹脂組成物(a/j/j)、各層厚み(10μm/60μm/10μm)、各層延伸軸数(1軸/2軸/1軸
)の積層樹脂フィルムを得た。
【0112】
(製造例2、3、7、8、10〜13、20〜27)
積層樹脂フィルムの製造例1において、熱可塑性樹脂組成物aの代わりに表3
又は4に記載の自己粘着層(A)用の熱可塑性樹脂組成物(a、c、d
、k〜r)を使用した。また、樹脂フィルム層(B)の1軸延伸層の厚みを自己粘着層(A)の厚みと同じとして、肉厚が80μm、となるように樹脂フィルム層(B)の2軸延伸層の厚みを調整した。
(製造例4)
表1に記載の熱可塑性樹脂組成物e、熱可塑性樹脂組成物g、熱可塑性樹脂組成物fを230℃に設定した3台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシート状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却して無延伸の3層積層シートを得た。この3層積層シートを135℃に加熱し、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。次いで、この積層シートを60℃まで冷却した。次いで、テンターオーブンを用いて再び約150℃に加熱して横方向に8.5倍延伸した後、更に160℃まで加熱して熱処理を行った。
次いで60℃に冷却し、耳部をスリットして、熱可塑性樹脂組成物eの2軸延伸層が自己粘着層(A)であり、肉厚が30μm、各層の樹脂組成物(e/g/f)、各層厚み(2μm/26μm/2μm)、各層延伸軸数(2軸/2軸/2軸)の積層樹脂フィルムを得た。
【0113】
(製造例5)
積層樹脂フィルムの製造例4において、自己粘着層(A)の熱可塑性樹脂組成物eの代わりに熱可塑性樹脂組成物
iを用い、各層厚みを(3μm/24μm/3μm)としたこと以外は、製造例4と同様にして積層樹脂フィルムを得た。
【0114】
(製造例6)
積層樹脂フィルムの製造例1において、各層厚みを(3μm/14μm/3μm)としたこと以外は製造例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物aの1軸延伸層が自己粘着層(A)であり、肉厚が20μmの積層樹脂フィルムを得た。
(製造例9)
熱可塑性樹脂組成物aと熱可塑性樹脂組成物
jを230℃に設定した2台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定した押出ダイに供給し、ダイ内で積層してシー
ト状に押し出し、これを冷却装置により60℃まで冷却し、耳部をスリットして、熱可塑性樹脂組成物aの無延伸層が自己粘着層(A)であり、肉厚が80μm、各層の樹脂組成(a/j/j)、各層厚み(4μm/72μm/4μm)の無延伸積層樹脂フィルムを得た。
【0115】
(製造例14〜16)
積層樹脂フィルムの製造例1において、熱可塑性樹脂組成物aの代わりに表3記載の自己粘着層(A)の熱可塑性樹脂組成物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして積層樹脂フィルムを得た。熱可塑性樹脂組成物b、d、hまたはgの1軸延伸層が自己粘着層(A)に相当する。
(製造例17)
積層樹脂フィルムの製造例4において、自己粘着層(A)の熱可塑性樹脂組成物eの代わりに熱可塑性樹脂組成物gを用い、各層厚みを(5μm/24μm/6μm)としたこと以外は、製造例4と同様にして積層樹脂フィルムを得た。
【0116】
フィルム2の製造例
(製造例18)
積層樹脂フィルムの製造例1において、自己粘着層(A)の熱可塑性樹脂組成物aの代わりに熱可塑性樹脂組成物
jを用い、各層厚みを(5μm/50μm/5μm)としたこと以外は、製造例1と同様にして積層樹脂フィルムを得た。
【0117】
[帯電防止機能を有するポリマーの調製例]
(調整例P−1)
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、商品名:ブレンマーPE−350)100質量部、過塩素酸リチウム(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、ヒドロキノン(和光純薬工業(株)製、試薬)1質量部およびプロピレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)400質量部を、攪拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを装着した四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、60℃で40時間反応させた。これにステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5質量部、n−ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)5質量部、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1質量部を添加し、80℃で3時間重合反応した後、プロピレングリコールモノエチルエーテルを添加して固形分を20質量%に調整し、質量平均分子量約30万、固形分中のリチウム濃度0.6質量%のアルカリ金属塩含有ポリマーを含む溶液を得た。
【0118】
(調整例P−2)
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ガス化学(株)製)35質量部、エチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、シクロヘキシルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)20質量部、ステアリルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)25質量部、エチルアルコール150質量部と、アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬)1質量部を、攪拌装置、還流冷却管(コンデンサー)、温度計、及び滴下ロートを備えた四つ口フラスコに導入し、系内を窒素置換し、窒素気流下にて80℃の温度で6時間重合反応を行なった。次いで3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの50質量%水溶液85質量部(和光純薬工業(株)製、試薬)を加え、更に80℃の温度で15時間反応させた後、水を滴下しながらエチルアルコールを留去し、最終固形分として20質量%の第四級アンモニウム塩型共ポリマーの溶液を得た。
【0119】
[高分子バインダーの調整例]
(調整例P−3)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)15質量部、メチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)50質量部、エチルアクリレート(和光純薬工業(株)製、試薬)35質量部およびトルエン(和光純薬工業(株)製、試薬)100質量部を、攪拌機、環流冷却管、温度計、及び滴下ロートを装着した四つ口フラスコに仕込み、窒素置換後、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製、試薬)0.6質量部を開始剤として導入し80℃で4時間重合させた。得られた溶液は、水酸基価65の水酸基含有メタクリル酸エステル系重合体の50%トルエン溶液であった。次いで、この溶液100質量部に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(新第1塩ビ(株)製、商品名:ZESTC150ML)20%メチルエチルケトン溶液を30質量部加え、メチルエチルケトン(和光純薬工業(株)製、試薬)を添加して固形分を20質量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
【0120】
(調整例P−4)
攪拌機、環流冷却器、温度計および窒素ガス導入口を備えた四つ口フラスコに、ポリエチレンイミン(日本触媒(株)製、商品名:エポミンP−1000)25質量%水溶液100質量部、1−クロロブタン(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業(株)製、試薬)10質量部を導入して窒素気流下で攪拌し、80℃の温度で20時間変性反応を行い、次いでこの溶液に水を添加して固形分を20質量%に調整し、高分子バインダー溶液を得た。
[表面層(C)用塗料組成物の調整例]
表2に表面層(C)用塗料組成物の配合比率(質量部)を示す。
【0121】
【表2】
【0122】
(調整例1:表面層(C)用)
メチルエチルケトンをカウレスミキサーにて静かに攪拌しながら、これに表2に記載の
沈降性シリカ30質量部および表面処理硫酸バリウム15質量部を少しずつ加え、固形分濃度20質量%になるように調整した後、カウレスミキサーの回転数を上げて30分間攪拌し顔料分散液を作成した。次いでカウレスミキサーの回転数を落とし、この顔料分散液に、P−3の高分子バインダー溶液を42質量部、P−1の帯電防止機能を有するポリマー溶液を10質量部、および硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネートの溶液(酢酸エチルにて固形分20質量%に希釈したもの)3質量部をこの順に添加し、そのまま20分間攪拌して混合した。次いで、100メッシュのフィルターを通し粗粒径物の除去を行い、メチルエチルケトンで固形分濃度20質量%となる様に希釈し、表面層(C)用の塗料組成物(調製例1)を得た。
【0123】
(調整例2:表面層(C)用)
攪拌機を備えた容器中に、表2に記載のP−4の高分子バインダー溶液40質量部、P−2の帯電防止機能を有するポリマー溶液20質量部、P−5のポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂溶液40質量部をこの順に添加し、次いで水で固形分濃度20質量%となる様に希釈し、そのまま20分間攪拌し混合して表面層(C)用の塗料組成物(調製例2)を得た。
(調整例3:表面層(C)用)
表面層(C)用の塗料組成物(調製例1)において、P−1の帯電防止機能を有するポリマー溶液を使用せず、P−3を増量したこと以外は調整例と同様にして表面層(C)用の塗料組成物(調製例3)を得た。
【0124】
[実施例および比較例]
(実施例1)
製造例1で得た積層樹脂フィルム1の樹脂フィルム層(B)面(熱可塑性樹脂組成物
j側の面)にコロナ放電による表面処理を施し、次いでメイヤーバー#6を取り付けたバーコーターでコロナ放電処理面側に表面層(C)用の塗料組成物(調製例1)による塗工を施し、70℃のオーブンで30秒乾燥後、更に40℃で8時間硬化させて、実施例1の自己粘着性合成紙を得た。
(実施例10、19)
実施例1において、製造例1で得た積層樹脂フィルム1の代わりにそれぞれ製造例7、製造例16で得た積層樹脂フィルム1を使用した以外は実施例1と同様にして自己粘着性合成紙を得た。
【0125】
(実施例2、3、7〜9、11〜18、20〜24、比較例
3〜5)
実施例1において、製造例1で得た積層樹脂フィルム1の代わりに表3
又は4に記載の積層樹脂フィルム1を使用したことと、表面層(C)用の塗料組成物を調製例2の塗料組成物に変更した以外は実施例1と同様にして自己粘着性合成紙を得た。
(実施例4)
製造例18で得た積層樹脂フィルム2の両面に、コロナ放電による表面処理を施し、次いでメイヤーバー#6を取り付けたバーコーターで片面に、表面層(C)用の塗料組成物(調製例2)による塗工を施し、70℃のオーブンで30秒乾燥させた。一方、製造例
4で得た積層樹脂フィルム1の両面に、コロナ放電による表面処理を施し、次いで自己粘着層(A)と反対側の面(熱可塑性樹脂組成物(
f)側の面)に接着剤(東洋モートン(株)製、商品名:TM−329と商品名:CAT−18Bの等量混合液)を固形分量が3g/m
2となるように塗工し、40℃で1分間乾燥した後に、連続して積層樹脂フィルム2の
表面層(C)を設けていない側を貼り合わせ、更に40℃で8時間硬化させて、実施例4の自己粘着性合成紙を得た。
【0126】
(実施例5、比較例1)
実施例4において、製造例8で得た積層樹脂フィルム1の代わりに表3記載の積層樹脂
フィルム1を用いたこと以外は実施例4と同様にして自己粘着性合成紙を得た。
(実施例6)
実施例1において、製造例1で得た積層樹脂フィルム1の代わりに製造例3で得た積層樹脂フィルム1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして自己粘着性合成紙を得た。
【0127】
【表3-1】
【0128】
【表3-2】
【0129】
【表4-1】
【0130】
【表4-2】
【0131】
表3−1〜4−2から分かるように、自己粘着層(A)表面のアイソタクチック結晶化度が20〜65%である実施例1〜19で得られた自己粘着性合成紙、および自己粘着層(A)表面のポリエチレン結晶化度が60〜75%である実施例20〜24で得られた自己粘着性合成紙は、ガラス板に対する密着力を高めることができ、アクリル板に対する痕残りが認められないか、布で乾拭きすれば痕が拭き取れる程度であり、巻き取りにしたときのブロッキングが起きないかまたは軽微であるという、良好な性質を示した。
【0132】
一方、自己粘着層(A)表面のアイソタクチック結晶化度が65%より高い比較例1、および自己粘着層(A)表面のポリエチレン結晶化度が75%より高い比較例3、4では、ガラス板に対する密着力が20以下と低かった。また、自己粘着層(A)の代わりにアクリル板に対する痕残りが水や溶媒を用いないと痕残りが落ちない程度に不良であった。
実施例6と実施例3とを対比すると、表面層(C)が帯電防止性ポリマーとしてアルカリ金属塩含有ポリマーまたは第四級アンモニウム塩型共ポリマーを含むと帯電防止性が付与され、帯電に起因する巻き取りブロッキング性が抑制されることを示している。
【0133】
実施例7と実施例2とを対比すると、自己粘着性合成紙の厚みを調節することでガーレ法による剛軟度が0.05〜10mNの範囲内に制御できることを示している。また、実施例8および9と実施例4および5とを対比すると、積層樹脂フィルムを貼合することによって自己粘着性合成紙の厚みを調節し、剛軟度を上記範囲にすることができることを示している。剛軟度が上記範囲であれば、長尺の自己合成紙を巻回して巻き取りにすることが容易であり、自己粘着性合成紙を被貼付体に貼付する際に自己合成紙が自重で撓むことなく、取り扱いが容易である。
【0134】
実施例10〜12は、算術平均粗さが大きくなると静止摩擦係数が低下し、ガラス板に対する密着力が低下する傾向があることを示している。また、実施例13および14は、静止摩擦係数が高くなるとガラス板に対する密着力が増加する傾向があることを示している。
実施例13(14)は、自己粘着層(A)表面のアイソタクチック結晶化度が低くなるとガラス板に対する密着力が増し、アクリル板に対する汚染度が低下する傾向があることを示す。