(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判断部は、前記アンロックセンサ、前記ロックセンサ、及び前記補助センサのうちのいずれか1つが、ユーザの接近又は接触を検出した場合に、前記判断の結果の履歴を参照して前記判断を実行する、請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置。
前記補助センサと前記ロックセンサは、前記アンロックセンサを前記外壁側から覆うように、前記把持部の長手方向に並んで配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置。
前記回路基板は前記把持部の前記内壁と対向する内側部と、前記把持部の前記外壁に対向する外側部とを有し、前記アンテナに対して前記把持部の長手方向に並べて配置されており、
前記第1駆動電極と前記第1検出電極は、前記アンテナの前記内側部に固定された主固定部と、前記アンテナから前記把持部の長手方向に突出して前記回路基板に固定された副固定部とをそれぞれ有し、
前記補助検出電極は、前記アンテナの前記外側部に固定された主固定部と、前記アンテナから前記把持部の長手方向に突出して前記回路基板に固定された副固定部とを有する、請求項2又は3に記載の車両用ドアハンドル装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
以下の説明では、車長方向をX方向、車幅方向をY方向、車高方向をZ方向という。また、X軸の矢印の向き(車両前方に向かう向き)を+X方向といい、それとは反対の向きを−X方向という場合がある。また、Y軸の矢印の向き(車外に向かう向き)を+Y方向といい、それとは反対の向き(車内に向かう向き)を−Y方向という場合がある。また、Z軸の矢印の向き(高さ方向の上方に向かう向き)を+Z方向といい、それとは反対の向きを−Z方向という場合がある。
【0013】
図1A及び
図1Bは、本発明の実施形態に係る車両用ドアハンドル装置(以下「ハンドル装置」という。)10を示す。このハンドル装置10は、車両ドアのアウターパネル(ドアパネル)1に取り付けられたハンドル20と、ハンドル20に内蔵されたアンテナユニット30とを備える。
【0014】
(システムの概要)
図5に示すように、ハンドル装置10は、ドアロック装置2と互いに協働する1つのシステムを構成する。このシステムは、制御装置4を備える。制御装置4は、単一又は複数のECU(Electronic Control Unit)、及びその他の電子デバイスにより構成されている。制御装置4は、アンテナ制御部5、認証処理部6、判断部7、及びドアロック装置制御部8を備える。
【0015】
アンテナ制御部5は、アンテナ40を駆動して電子キー(携帯機)9との通信を実行させる。
【0016】
認証処理部6は、アンテナ制御部5から受け取ったアンテナ40による電子キー9との通信結果に基づいて、電子キー9の認証を行う。
【0017】
判断部7は、後述するセンサ制御部81を駆動して3種類のセンサ、すなわちアンロックセンサ50、ロックセンサ60、及び補助センサ70を制御させる。また、判断部7は、センサ制御部81から受け取った判断結果に基づく判断を実行する。判断部7は、判断結果を記憶する記憶部7aを有する。センサ制御部81の駆動は、エンジンの停止を示す信号を判断部7が受け取ることで実行される。センサ制御部81の駆動は、エンジンの作動中に変速機がパーキングに設定された場合にさらに行われてもよい。
【0018】
ドアロック装置制御部8は、認証処理部6から受け取った認証結果と、判断部7から受け取った判断結果とに基づいた制御信号を出力し、ドアロック装置2の動作を制御する。
【0019】
(ハンドルの概要)
図1A及び
図1Bに示すように、ハンドル20は全体としてX方向に長い筒状である。ハンドル20は、いずれも合成樹脂製のハンドル本体22と、ハンドル本体22に固定されたハンドルカバー25とを備える。ハンドル本体22は、+X方向の端部にアーム23を備え、−X方向の端部に作動部24を備える。作動部24は、車両ドアの内部に配置されたドアロック装置2と、ロッド3によって接続されている。
【0020】
ハンドル本体22のX方向に長い板状部分は、アウターパネル1と対向するハンドル20の内壁22aである。ハンドルカバー25は、内壁22aに対してアウターパネル1とは反対側(+Y方向)に位置する外壁25aを備える。外壁25aのZ方向の上端には、内壁22aに向けて−Y方向に突出し、外壁25aの上端と内壁22aの上端とを塞ぐ上壁25bが設けられている。外壁25aのZ方向の下端には、内壁22aに向けて−Y方向に突出し、外壁25aの下端と内壁22aの下端とを塞ぐ下壁25cが設けられている。外壁25aのX方向の両端には、アウターパネル1の外面に向けて−Y方向に突出する側壁25d,25dが設けられている。内壁22a、外壁25a、上壁25b、及び下壁25cは、ユーザが握る中空状の把持部26を構成し、この把持部26内の空間21にアンテナユニット30が配置されている。
【0021】
ドアを開くためにユーザがハンドル20を握って+Y方向に引っ張ると、ハンドル20は、アウターパネル1に対してアーム23の先端を中心として回転する。この回転により作動部24が+Y方向に移動することで、ロッド3の受部3aが+Y方向に移動し、ドアロック装置2がアンロック状態の場合にドアが開かれる。ユーザが手を放すとハンドル20は、図示しないスプリングの付勢力によって
図1Bに示す状態に戻る。
【0022】
(アンテナユニットの概要)
図3Aから
図4に示すように、アンテナユニット30は、アンテナ40、アンロックセンサ(第1センサ)50、ロックセンサ(第3センサ)60、補助センサ(第2センサ)70、及び回路基板80を備える。
【0023】
図5を併せて参照すると、アンテナ40は、電線41によって制御装置4と電気的に接続されている。このアンテナ40は、制御装置4のアンテナ制御部5によって駆動され、ユーザが所有する電子キー9に対して認証コードの要求信号を送信するとともに、電子キー9から受信した認証コードをアンテナ制御部5に送信する。アンテナ40の駆動は、ハンドル20にユーザが接近又は触れることで行われる。アンテナ40の駆動は、設定された時間が経過する度に行われるようにしてもよい。
【0024】
図3Aから
図4を参照すると、アンロックセンサ50は、ユーザによるドアロック装置2の解錠操作を検出するためのものであり、第1駆動電極51とアンロック電極(第1検出電極)55により構成されている。ロックセンサ60は、ユーザによるドアロック装置2の施錠操作を検出するためのものであり、第2駆動電極61とロック電極(第2検出電極)65により構成されている。補助センサ70は、アンロックセンサ50の検出結果とロックセンサ60の検出結果を、有効にするか無効にするかを判断するためのものであり、アンロックセンサ50と共通の第1駆動電極51と表面電極(補助検出電極)71により構成されている。つまり、アンロックセンサ50の第1駆動電極51は、補助センサ70の補助駆動電極としても機能する。補助センサ70とアンロックセンサ50は、共通の第1駆動電極51を有することで、アンテナユニット20の構造の簡素化と小型化を図ることができる。補助センサ70は、後述する遮蔽機能を有している。
【0025】
センサ50,60,70はいずれも相互容量式の近接センサである。アンロックセンサ50の一対の電極51,55は1個のコンデンサを構成する。ロックセンサ60の一対の電極61,65は1個のコンデンサを構成する。補助センサ70の一対の電極51,71は1個のコンデンサを構成する。センサ制御部81によって各センサ50,60,70の電極対の一方にパルス電圧が印加され、それによって電極対間に電界が生じ、電極対の他方に電圧が誘起(誘起電圧)される。アンロックセンサ50と補助センサ70では、第1駆動電極51にパルス電圧が印加される。ロックセンサ60では第2駆動電極61にパルス電圧が印加される。把持部26にユーザの手が接近又は接触すると、各センサ50,60,70では、電極対間の電界の電気力線数が減少し、電極対の他方に生じる誘起電圧が低下する。具体的には、アンロックセンサ50では、アンロック電極55に生じる誘起電圧が低下する。また、ロックセンサ60では、ロック電極65に生じる誘起電圧が低下する。さらに、補助センサ70では、表面電極71に生じる誘起電圧が低下する。
【0026】
図4及び
図5に示すように、回路基板80には、個々のセンサ50,60,70の電極対間に電界を生じさせるとともに、個々のセンサ50,60,70の電極対間の電界変化に基づいてユーザの接近の有無を判断するためのセンサ制御部81が設けられている。センサ制御部81は、センサ50,60,70の駆動と、センサ50,60,70の誘起電圧を検出と、その検出電圧(検出結果)に基づく判断(どのセンサ50,60,70に接触したか)とを実行する。具体的には、センサ制御部81は、各センサ50,60,70の検出電圧が予め定められた閾値以下であれば、ハンドル20へのユーザの手の接近又は接触であると判断し、閾値を上回るとユーザの手を非検出であると判断する。回路基板80には、制御装置4の判断部7に通信可能に接続するための電線82が電気的に接続されている。センサ制御部81による判断結果は、制御装置4の判断部7に送られる。
【0027】
図5を参照すると、制御装置4の判断部7は、センサ制御部81から受け取った判断結果と、記憶部7aに記憶された判断結果の履歴とを参照することで、ドアロック装置2をアンロック状態、ロック状態、及び状態維持(現在のアンロック状態又はロック状態を維持)のいずれに設定するかを判断する。この判断結果はドアロック装置制御部8に送られる。
【0028】
ドアロック装置制御部8は、判断部7から受け取った判断結果、つまりドアロック装置2をアンロック状態、ロック状態、及び状態維持のいずれに設定すべきかの判断結果に基づいて、ドアロック装置2を動作させる。ドアロック装置制御部8は、判断部7の判断結果が解錠操作であれば、車両ドアを開放可能なアンロック状態にドアロック装置2を設定する。また、ドアロック装置制御部8は、判断部7の判断結果が施錠操作であれば、車両ドアを開放不能なロック状態にドアロック装置2を設定する。さらに、制御装置4は、判断部7の判断結果が状態維持であれば、ドアロック装置2の現在のアンロック又はロック状態を維持させる。
【0029】
図2に示すように、アンテナユニット30の構成部品、つまりアンテナ40、第1駆動電極51、アンロック電極55、第2駆動電極61、ロック電極65、表面電極71、及び回路基板80は、モールド成形により形成された樹脂部31によって一体化されている。
図3Aから
図4を参照すると、個々の電極51,55,61,65,71は、金属プレートをプレス加工することで形成されている。電極51,55,61,65,71の形状の詳細は後述する。
【0030】
(アンテナユニットの構成要素の配置)
図1Bを参照すると、アンテナ40は、X方向、つまり把持部26の長手方向に細長い棒状であり、把持部26内の空間21のX方向の概ね中央に配置されている。
図3Aから
図4を参照すると、アンテナ40は、把持部26の内壁22aと対向する内側部45(内側面を含む)と、把持部26の外壁25aと対向する外側部46(外側面を含む)とを備える。
【0031】
図1Bを参照すると、回路基板80は、アンテナ40の−X方向に所定間隔をあけて位置するように、アンテナ40に対して把持部26の長手方向に並べて配置されている。
図3Aから
図4を参照すると、回路基板80は、把持部26の内壁22aと対向する内側部83(内側面を含む)と、把持部26の外壁25aと対向する外側部84(外側面を含む)とを備える。
【0032】
図1Bに示すように、アンロックセンサ50は、ドア開放操作の一部がドアロックドアロック装置2の解錠操作となるように配置されている。つまり、ドア開放操作時にユーザは把持部26を握るので、把持部26内の内壁22a側にアンロックセンサ50が配置されている。
【0033】
図3Aから
図4を併せて参照すると、アンロックセンサ50を構成する第1駆動電極51とアンロック電極55はいずれも、全体として、X方向、つまり把持部26の長手方向に細長い形状を有し、把持部26の中央から−X方向の端部近傍にかけて延びるように、把持部26内の内壁22a側に配置されている。アンロック電極55は、第1駆動電極51に対して+Z方向に所定間隔をあけて対向するように配置されている。第1駆動電極51は、X方向の一端側、つまり後述する主固定部52でアンテナ40の内側部45に固定され、X方向の他端側、つまり後述する副固定部53で回路基板80の内側部83に固定されている。同様に、アンロック電極55は、一端側、つまり後述する主固定部56でアンテナ40に固定され、他端側、つまり後述する副固定部53で回路基板80の内側部83に固定されている。
【0034】
図1Bに示すように、ロックセンサ60は、ドア閉鎖操作の際に把持部26の外面に触れたことを検出できるように、把持部26内の外壁25a側に配置されている。
図3Aから
図4を併せて参照すると、ロックセンサ60を構成する第2駆動電極61とロック電極65はいずれも、X方向、つまり把持部26の長手方向に細長い形状を有し、回路基板80の外側部84とに実装されている。
【0035】
補助センサ70は、前述のように、アンロックセンサ50と共通の第1駆動電極51と、表面電極71とにより構成されている。表面電極71は全体として、第1駆動電極51、アンロック電極55、第2駆動電極61、及びロック電極65と比較してZ方向に幅広である。
図1Bを参照すると、表面電極71は、把持部26のX方向の概ね中央に位置するように、把持部26内の外壁25a側に配置されている。表面電極71は、第1駆動電極51とアンロック電極55に対して+Y方向に間隔をあけて対向するように配置されている。また、表面電極71は、第2駆動電極61とロック電極65に対して把持部26の長手方向、具体的には+X方向に間隔をあけて配置されている。表面電極71は、X方向の一端側、つまり後述する第1センシング部72(主固定部としても機能する)でアンテナ40の外側部46に固定され、X方向の他端側、つまり後述する副固定部73で回路基板80の内側部83に固定されている。
【0036】
アンテナ40の内側部45に第1駆動電極51の主固定部52とアンロック電極55の主固定部56とが固定され、アンテナ40の外側部46に表面電極71の第1センシング部72が固定されている。第1駆動電極51、アンロック電極55、及び表面電極71は、アンテナ40を挟み込んでいる。また、回路基板80には、第1駆動電極51の副固定部53と、アンロック電極55の副固定部57と、表面電極71の副固定部73とが固定されている。つまり、回路基板80は、アンテナ40を挟み込むようにアンテナ40に対して固定された3個の電極51,55,71に固定されている。よって、1枚の電極だけでアンテナ40と回路基板80とを連結する場合と比べて、アンテナ40に対する回路基板80の機械的な連結強度を向上できる。
【0037】
図3Aを参照すると、電線82の端部は回路基板80に固定されている。
図3Bを参照すると、電線82は回路基板80から+X方向に延びており、アンテナ40に沿って配索されている。
【0038】
(アンテナ)
図3Aから
図4を参照すると、アンテナ40は、外周部にコイル42が巻回されたボビン43と、ボビン43の内部に収容された細長い棒状のフェライトバー44とを備える。このアンテナ40は、把持部26の内壁22aに対向する内側部45と、把持部26の外壁25aに対向する外側部46とを備える。
【0039】
ボビン43は絶縁性を有する材料からなる。ボビン43の内側部45側と外側部46側には、内部のフェライトバー44に達する開口部43aがそれぞれ形成されている。ボビン43の両側部43bには、アンロックセンサ50と補助センサ70を固定するための固定穴43c,43d,43eがそれぞれ設けられている。
図4に最も明瞭に示すように、第1固定穴43cは、ボビン43の−X方向の端部に設けられている。この第1固定穴43cは、アンロックセンサ50と補助センサ70の両方を固定するものであり(
図8C参照)、Y方向に貫通されている。第2固定穴43dは、第1固定穴43cに対して+X方向に所定間隔をあけて設けられている。この第2固定穴43dは、アンロックセンサ50のみを固定するものであり、−Y方向の端部が開口され、+Y方向の端部が閉鎖されている。第3固定穴43eは、第2固定穴43dに対して+X方向に所定間隔をあけて設けられており、ボビン43の全長の概ね半分の部分に位置している。この第3固定穴43eは、補助センサ70のみを固定するものであり、+Y方向の端部が開口され、−Y方向の端部が閉鎖されている。
図4には、−Z方向に位置する側部43bのみ示しているが、+Z方向に位置する側部43bにも同様に固定穴43c,43d,43eが設けられている。
【0040】
(回路基板)
図3Aから
図4を参照すると、回路基板80には、多数の素子85によって発振回路部88と増幅回路部89が形成され、センサ制御部81が実装されている。前述のように、センサ制御部81は、アンロックセンサ50、ロックセンサ60、及び補助センサ70を駆動するものであり、マイクロコンピュータにより構成されている。具体的には、センサ制御部81は、制御装置4の判断部7によって駆動され、アンロックセンサ50と補助センサ70で共通している第1駆動電極51と、ロックセンサ60の第2駆動電極61とに対して、発振回路部88によって駆動電圧を印加させる。また、センサ制御部81は、増幅回路部89によって増幅されたアンロックセンサ50、ロックセンサ60、及び補助センサ70の誘起電圧(増幅電圧)を検出し、その検出電圧に基づいて個々のセンサ50,60,70へのユーザの接近の有無を判断する。さらに、センサ制御部81は、個々のセンサ50,60,70による判断結果を制御装置4の判断部7に出力する。
【0041】
図4に最も明瞭に示すように、回路基板80には、発振回路部88と増幅回路部89の一部を構成するスルーホール部86a〜86iとパッド87a,87bが設けられている。回路基板80の+X方向の端部、すなわちアンテナ40に近い端部には、3個のスルーホール部86a,86b,86cと、2個のパッド87a,87b設けられている。また、回路基板80の−X方向の端部、すなわちアンテナ40に対して遠い端部には、4個のスルーホール部86d,86e,86f,86gが設けられている。さらに、3個のスルーホール部86a〜86cに隣接して2個のスルーホール部86h,86iが設けられている。各スルーホール部86a〜86c,86d〜86iは、回路基板80を貫通している。パッド87a,87bは、回路基板80の外側部84に設けられている。
【0042】
後述するように、スルーホール部86a〜86iは、アンロックセンサ50、ロックセンサ60、及び補助センサ70を構成する電極51,55,61,65,71の発振回路部88と増幅回路部89に対する電気的接続と、これらの電極51,55,61,65,71の回路基板80に対する機械的固定のために使用される。パッド87a,87bには、2本の電線82,82の素線が半田付けされ、それによってセンサ制御部81と制御装置4の判断部7との電気的な接続が確立される。
【0043】
(アンロックセンサの電極)
前述のように、アンロックセンサ50は、第1駆動電極50とアンロック電極55により構成されている。
【0044】
図3B及び
図4を参照すると、第1駆動電極51は、アンテナ40の内側部45に固定される主固定部52と、回路基板80の内側部83に固定される副固定部53とを備える。
【0045】
主固定部52は、把持部26の内壁22aとアンテナ40の内側部45に沿って配置される基部(第1基部)52aと、基部52aからアンテナ40に向けて+Y方向に突出する2個の固定片52b,52cとを備える。固定片52bがアンテナ40の+Z方向に位置する固定穴43cに圧入され、固定片52cがアンテナ40の+Z方向に位置する固定穴43dに圧入されることで、主固定部52がアンテナ40の内側部45に固定される。
【0046】
副固定部53は、主固定部52に連設され、アンテナ40から把持部26の長手方向に沿って−X方向に突出している。副固定部53は、把持部26の内壁22aと回路基板80の内側部83に沿って配置される基部(第2基部)53aと、基部53aから回路基板80に向けて+Y方向に突設された2個の端子53b,53cとを備える。端子53bが回路基板80のスルーホール部86bに挿入されて半田付けされ、端子53cが回路基板80のスルーホール部86dに挿入されて半田付けされることで、第1駆動電極51が発振回路部88に電気的に接続されるとともに、副固定部53が回路基板80の内側部83に固定される。本実施形態では、端子53bと端子53cをともに半田付けしているが、いずれか一方のみ半田付けしてもよい。また、電気的に接続されるのは端子53bと端子53cのうちのいずれか一方のみでもよい。
【0047】
主固定部52の+Z方向の端部には、把持部26の内壁22aに向けて−Y方向に突出するセンシング部52dが設けられている。また、副固定部53の+Z方向の端部には、把持部26の内壁22aに向けて−Y方向に突出するセンシング部53dが設けられている。センシング部52dとセンシング部53dは、同一のXY平面に配置されている。
図2を参照すると、センシング部52d,53dは、アンテナユニット30の樹脂部31から突出している。
図1Bを併せて参照すると、センシング部52d,53dの先端(−Y方向端縁)52e,53eは、把持部26の内壁22aの内面に沿う形状を有する。
【0048】
アンロック電極55は、第1駆動電極51と概ね鏡面対称な形状であり、アンテナ40に固定される主固定部56と、回路基板80に固定される副固定部57とを備える。
【0049】
主固定部56は、第1駆動電極51の主固定部52と同様に、把持部26の内壁22aとアンテナ40の内側部45に沿って配置される基部(第1基部)56aと、基部56aからアンテナ40に向けて+Y方向に突出する2個の固定片56b,56cとを備える。固定片56bがアンテナ40の固定穴43cに圧入され、固定片56cがアンテナ40の−Z方向に位置する固定穴43dに圧入されることで、主固定部56がアンテナ40の−Z方向に位置する内側部45に固定される。
【0050】
副固定部57は、第1駆動電極51の副固定部53と同様に、把持部26の内壁22aと回路基板80の内側部83に沿って配置される基部(第2基部)57aと、基部57aから回路基板80に向けて+Y方向に突設された2個の端子57b,57cとを備える。端子57bが回路基板80のスルーホール部86cに挿入されて半田付けされ、端子57cが回路基板80のスルーホール部86gに挿入されて半田付けされる。そして、端子57bと端子57cのいずれかが電気的に接続されることで、アンロック電極55が増幅回路部89に電気的に接続されるとともに、副固定部57が回路基板80の内側部83に固定される。
【0051】
主固定部56と副固定部57には、センシング部56d,57dが設けられている。センシング部56d,57dは、第1駆動電極51のセンシング部52d,53dとZ方向に対向している。
図1Bを参照すると、センシング部56d,57dの先端56e,57eは、把持部26の内壁22aの内面に沿う形状を有する。
【0052】
(ロックセンサの電極)
前述のように、ロックセンサ60は、第2駆動電極61とロック電極65により構成されている。
【0053】
図1Bに示すように、第2駆動電極61は、回路基板80側の外側部84に実装され、把持部26内の外壁25a側に配置されている。第2駆動電極61の把持部26の長手方向の配置位置は把持部26の−X方向の端部であり、この配置位置にはハンドル20の作動部24が−Y方向に突出している。つまり、第2駆動電極61は、ドア開放操作時にユーザが把持部26を握った際に、作動部24があるためにユーザの手が接近し難い位置に配置されている。
図3A及び
図4を併せて参照すると、第2駆動電極61は、把持部26内の外壁25aに沿って配置されるセンシング部61aを備える。
図2を参照すると、センシング部61aは、アンテナユニット30の樹脂部31の開口31aから露出されている。
【0054】
センシング部61aのX方向の両端には、回路基板80に向けて−Y方向に突出する2個の固定部62a,62bが設けられている。個々の固定部62a,62bには端子63a,63bがそれぞれ突設されている。端子63aが回路基板80のスルーホール部86hに挿入により固定され、端子63bが回路基板80のスルーホール部86eに挿入されて半田付けされることで、端子63bによって第2駆動電極61が発振回路部88に電気的に接続される。このように固定部62a,62bが回路基板80の外側部84に固定される。また、センシング部61aの−Z方向の端縁には、成形時にアンテナユニット30を金型に固定するための位置決め孔61bが形成されている。アンテナユニット30をハンドル20に固定するための位置決め孔61bが形成されている。
【0055】
ロック電極65は、回路基板80の外側部84側に実装され、把持部26内の外壁25a側に配置されている。ロック電極65は、第2駆動電極61に対してZ方向に間隔をあけて配置されている。ロック電極65は、概ね第2駆動電極61と鏡面対称な形状であるが、具体的には把持部26内の空間21にあわせて形状が第2駆動電極61とは異なる形状に変更されている。ロック電極65は、センシング部65a、固定部66a,66b、端子67a,67b、及び成形時の位置決め孔65bを備える。
【0056】
端子67aが回路基板80のスルーホール部86iに挿入により固定され、端子67bが回路基板80のスルーホール部86fに挿入されて半田付けされることで、端子67bによってロック電極65が増幅回路部89に電気的に接続される。これにより固定部66a,66bが回路基板80の外側部84に固定される。
図2を参照すると、センシング部65aは、アンテナユニット30の樹脂部31の開口31aから露出されている。
【0057】
(補助センサの電極)
前述のように、補助センサ70は、アンロックセンサ50と共通の第1駆動電極50と、表面電極71とにより構成されている。
【0058】
図1Bに示すように、表面電極71は、把持部26のX方向の概ね中央に位置するように、把持部26内の外壁25a側に配置されている。
図3A及び
図4を併せて参照すると、表面電極71は、第1センシング部72(主固定部)、副固定部73、及び2個の第2センシング部74を備える。
【0059】
図3A、
図4及び
図7を参照すると、第1センシング部72は、アンテナ40の外側部46の概ね半分の領域を覆うXZ平面に広がる矩形板状の基部である。第1センシング部72は、第1駆動電極51とアンロック電極55の一部とY方向に対向している。具体的には、第1センシング部72は、アンロックセンサ50が備える第1駆動電極51の主固定部52(センシング部52dが設けられている)とY方向に対向している。また、第1センシング部72は、アンロックセンサ50が備えるアンロック電極55の主固定部56(センシング部56dが設けられている)もY方向に対向している。
図7を参照すると、第1センシング部72のX方向(把持部26の長手方向)の寸法、すなわち長さLと、Z方向(上下方向)の寸法、すなわち幅Wとは、第1駆動電極51の主固定部52及びアンロック電極55の主固定部56のいずれに対しても対向が得られるように設定されている。第1駆動電極51の主固定部52と把持部26の外壁25aとの間には、アンテナ40に加え、第1センシング部72が介在している。また、アンロック電極55の主固定部56と把持部26の外壁25aとの間にも、アンテナ40に加え、第1センシング部72が介在している。
図2を参照すると、第1センシング部72は、アンテナユニット30の樹脂部31の開口31bから露出されている。
【0060】
図7を参照すると、第1センシング部72には、−X方向の端部付近に−Y方向に突出する一対の固定片72a,72aが設けられ、X方向の端部に−Y方向に突出する一対の固定片72b,72bが設けられている。
図8Cに示すように、固定片72aがアンテナ40の固定穴43cに圧入され、固定片72bがアンテナ40の固定穴43eに圧入されることで、第1センシング部72がアンテナ40の外側部46に固定される。
【0061】
図3A、
図4及び
図7に示すように、副固定部73は、第1センシング部72の−X方向の端部に設けられている。副固定部73には、回路基板80の内側部83へ延びる突出部73aが設けられている。
図4に最も明瞭に示すように、突出部73aは、−Y方向に突出する第1部分73bと、第1部分73bの先端から−X方向に突出する第2部分73cとを備える。第2部分73cの先端には、+Y方向に突出する端子73dが形成されている。端子73dが回路基板80のスルーホール部86aに挿入されて半田付けされることで、表面電極71が増幅回路部89に電気的に接続されるとともに、副固定部73が回路基板80の内側部83に固定される。
【0062】
図3B及び
図7に示すように、第2センシング部74は、第1センシング部72の+Z方向の端部である上縁から、把持部26の内壁22aに向けて−Y方向に突出している。第2センシング部74は、アンテナ40の+Z方向に位置する側部43bに位置し、把持部26内の上壁25bに沿って配置されている。個々の第2センシング部74の先端は、アンロック電極55の主固定部56(センシング部56dが設けられている)に対してY方向に間隔をあけて対向している。
【0063】
図1B、
図3A、
図3B、及び
図4を参照すると、前述のように、2本の電線82,82は回路基板80の外側部84に設けられたパッド87a,87bに半田付けされている。電線82,82は、回路基板80の外側部84から、アンテナ40の+Z方向の側部43bと、アンテナ40の内側部45とを通って、アンテナユニット30の+X方向の端部からさらに+X方向に延びている。このような配索経路であるので、電線82,82はアンロックセンサ50を構成する第1駆動電極51とアンロック電極55の間や近傍を通過しない。アンテナユニット30の+X方向の端部から、アンテナ40の2本の電線41,41が電線82,82と共に+X方向に延びている。4本の電線41,41,82,82はハンドル26を出て車両ドア内に入る。
図1B参照を参照すると、4本の電線41,41,82,82の車両ドア内の端部には、制御装置4との電気的接続を確立するためのコネクタ90が設けられている。電線82,82を以上のように配索するために、表面電極71に電線82,82を保持するためのフック部(保持部)75a,75b,75cが設けられ、アンテナ40のボビン43に保持板部(保持部)43fと保持ブロック部(保持部)43hが設けられている。
【0064】
図3B及び
図7を参照すると、表面電極71の2個のフック部75a,75cは第2センシング部74,74に設けられている。表面電極71のフック部75bは第1センシング部72の+X方向の縁部、つまり上側の縁部に設けられている。電線82,82はこれらのフック部75a〜75cで保持されることで、変位が規制されている。具体的には、各フック部75a,75cは、第2センシング部74と協働して、2本の電線82の+Z方向、−Z方向、及び−Y方向の変位を規制している。各フック部75a,75cは電線82,82の配置を可能にするために−Y方向には開いている。一方、フック部75bは、第2センシング部74と協働して、2本の電線82の+Z方向、−Z方向、及び−Y方向の変位を規制している。フック部75bは電線82の配置を可能にするために+Y方向には開いている。
【0065】
図3B及び
図6を参照すると、アンテナ40の保持板部43fには−Y方向に開いた一対の切欠43g,43gが形成されている。各電線82,82は、切欠43gに配置されることで、+Z方向、−Z方向、及び−Y方向の変位が規制されている。アンテナ40の保持ブロック部43hには、X方向に延びて−Y方向に開いた一対の溝43i,43iが形成されている。各電線82,82は、溝43i,43iに収容されることで、保持ブロック43hに対して取り外し可能に固定されている。
【0066】
電線82,82は、一端が回路基板80のパッド87a,87bに半田付けで固定されると共に、アンテナ40の+X方向の端部付近で保持ブロック部43hに取り外し可能に固定されている。電線82,82は、パッド87a,87bと保持ブロック部43hの間の部分では、フック部75a〜75cと保持板部43eによって、保持されている。この保持により、樹脂部31を形成するためのモールド成形にアンテナユニット30を供する前であっても、前述した電線82,82の配索経路が確実に維持される。
【0067】
電線82,82のパッド87a,87bと保持ブロック部43hの間の部分では、パッド87a,87b側から、+Y方向に開いたフック部75a、−Y方向に開いたフック部75b、+Y方向に開いたフック部75c、及び−Y方向に開いた保持板部43eがこの順で配置されている。このように電線82,82を保持する要素が開いている向きが交互に入れ替わっているので、より確実に前述した電線82,82の配索経路が維持される。
【0068】
電線82,82は、表面電極71のフック部75a〜75c、アンテナ40の保持板部43f、及び保持ブロック43hによって保持されるので、電線82の配索経路を維持するための追加部品は不要である。よって、アンテナユニット30の構造を簡易化でき、製造コスト増加も防止できる。
【0069】
(動作)
前述のように、センサ制御部81は、アンロックセンサ50、ロックセンサ60、又は補助センサ70の誘起電圧を検出した後、検出電圧が予め定められた閾値以下であれば、ハンドル20へのユーザの手の接近又は接触であると判断し、閾値を上回るとユーザの手を非検出であると判断する。これらの判断結果は、センサ制御部81の記憶部(図示せず)に記憶されるとともに、制御装置4の判断部7に送られる。
【0070】
判断部7は、基本的には、表1に示すように、センサ制御部81による判断結果の現在の組み合わせに基づいて、ドアロック装置2をアンロック状態、ロック状態、状態維持のいずれに設定すべきかを判断する。表1中の「L」は、ユーザの手の接近の検出判断の成立を示し、「H」は、非検出の判断成立を示す。判断部7は、センサ制御部81による現在の判断結果の組み合わせが状態1〜7のいずれに該当するかに基づいて、ドアロック装置2をアンロック状態、ロック状態、状態維持のいずれに設定すべきかを判断し、判断結果をドアロック装置制御部8に送る。
【0072】
表1の状態1,状態2では、アンロックセンサ50による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「L」で、ロックセンサ60による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「H」である。この場合、判断部7は、補助センサ70による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果にかかわらず、ユーザが正規の解錠操作を実行したと判断し、ドアロック装置2をアンロック状態に設定する判断を下す。
【0073】
表1の状態3では、アンロックセンサ50による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「H」で、ロックセンサ60による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「L」で、補助センサ70による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「H」である。この場合、判断部7は、ユーザが正規の施錠操作を実行したと判断し、ドアロック装置2をロック状態に設定する判断を下す。
【0074】
表1の状態4では、アンロックセンサ50による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「H」で、ロックセンサ60による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「L」で、補助センサ70による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「L」である。この場合、判断部7は、ユーザによる施錠操作ミスであると判断し、ドアロック装置2を状態維持に設定する判断を下す。
【0075】
表1の状態5,状態6では、アンロックセンサ50とロックセンサ60による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果はいずれも「L」である。この場合、判断部7は、補助センサ70による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果にかかわらず、ユーザによる解錠操作ミスであると判断し、ドアロック装置2を状態維持に設定する判断を下す。
【0076】
表1の状態7では、補助センサ70による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果のみが「L」で、アンロックセンサ50とロックセンサ60による検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果はいずれも「H」である。この場合、判断部7は、ユーザによる施錠操作ミス、又はユーザが無意識にハンドルに触れたと判断し、ドアロック装置2を状態維持に設定する判断を下す。
【0077】
判断部7は、センサ制御部81による判断結果の現在の組み合わせと過去の組合せ(記憶部7aに記憶されている)とに基づいて、ドアロック装置2をアンロック状態、ロック状態、状態維持のいずれに設定すべきかを判断する場合もある。具体的には、以下の表2に示す条件1〜3のいずれかが成立する場合には、判断部7は、現在の判断結果を含む定められた参照回数(例えば10回)分の判断結果の履歴を参照して、ドアロック装置2をどの状態に設定するかの最終的な判断を下す。各センサ50,60,70は10msという短い時間単位で検出を繰り返しているため、所定期間の判断結果の履歴を参照することで、ユーザの操作意思を正確に判断することができる。
【0078】
表2の条件1〜3のいずれの場合でも、現在の判断結果の直前の判断結果の組み合わせは、アンロックセンサ50とロックセンサ60の検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果はいずれも「H」で、補助センサ70の検出結果に基づくセンサ制御部81による判断結果は「L」である。すなわち補助センサ70のみ、ユーザの手の接近の判断が成立している場合である。
【0080】
条件1では、現在の判断結果の組み合わせが表1の状態3(ロック状態)で、直前の判断結果の組み合わせが表1の状態7(状態維持)である。この場合、判断部7は、参照回数分の判断結果の履歴を参照して、ドアロック装置2をロック状態に設定するか、状態維持の設定を維持するかの判断を下す。詳しくは、参照回数分の判断結果のうち、定められた設定回数(例えば3回)以上の判断結果が状態3を示す場合には、状態3であることを確定させ、ドアロック装置2をロック状態に設定する判断を下す。一方、参照回数分の判断結果のうち、設定回数未満の判断結果しか状態3を示さない場合には、現在の判断結果の組み合わせは状態3であるにもかかわらず、判断部7は、ドアロック装置2を状態維持に設定する判断を下す。
【0081】
ユーザの手が意図せずに把持部26の外壁25a側に近づき、補助センサ70にユーザの手の接近の判断が成立した後、ロックセンサ60にユーザの手の接近の判断が成立する場合がある。つまり、ユーザに施錠意思はないが、ロックセンサ60にユーザの手の接近の判断が成立する場合がある。この場合、過去から現在までの判断結果の履歴を参照して、判断結果の変移からユーザが施錠意思を有しているか否かを判断し、状態3と状態7のいずれに決定するかの判断を行う。
【0082】
具体的には、補助センサ70の判断結果が「L」になった状態が一定時間継続した後、補助センサ70の判断結果が「H」に変化する一方、アンロックセンサ50の判断結果が「H」に維持されたまま、ロックセンサ60の判断結果が「H」から「L」に変化する。この場合、補助センサ70の判断結果が「H」に維持されていれば、ユーザに施錠意思があると判断できる。ユーザの手が意図せずに把持部26の外壁25a側に近づいた場合には、補助センサ70及びロックセンサ60の一方に接近の判断結果が断続的に生じる。つまり、条件1の成立が一時的なものとなり、状態7の判断結果が継続され、状態3を示す判断結果が状態7を示す判断結果に対して少なくなる。そのため、所定期間の判断結果の履歴を参照し、状態3の判断結果と状態7の判断結果の割合を確認することで、ユーザの操作意思を正確に判断することができる。
【0083】
条件2では、現在の判断結果の組み合わせが表1の状態2(アンロック状態)で、直前の判断結果の組み合わせが表1の状態7(状態維持)である。この場合、判断部7は、参照回数分の判断結果の履歴を参照し、定められた設定回数以上の判断結果が状態2を示す場合には、ドアロック装置2をアンロック状態に設定する判断を下し、設定回数未満の判断結果しか状態2を示さない場合には、ドアロック装置2を状態維持に設定する判断を下す。
【0084】
ユーザの手や体が意図せずに把持部26の外壁25a側に近づき、補助センサ70にユーザの手の接近の判断が成立する場合がある。また、この状態からアンロックセンサ50にもユーザの手や体が意図せずに近づき、補助センサ70とアンロックセンサ50にユーザの接近の判断が成立する場合がある。つまり、ユーザに解錠意思はないが、アンロックセンサ50にユーザの手の接近の判断が成立する場合がある。この場合、過去から現在までの判断結果の履歴を参照して、判断結果の変移からユーザが解錠意思を有しているか否かを判断し、状態2と状態7のいずれに決定するかの判断を行う。
【0085】
具体的には、補助センサ70の判断結果が「L」に維持された状態で、アンロックセンサ50の判断結果が「H」から「L」に変化する。この場合、補助センサ70に触れていたとしても、意識的に把持部26の内壁22a側に手を差し入れた可能性が高いため、ユーザには解錠意思があると判断できる。但し、この状態から状態7にすぐ変移した場合には、ノイズによる誤検出やユーザが意図せず把持部26の内壁22a側に手を差し入れた可能性もあるため、ユーザには解錠意思がないと判断できる。そのため、所定期間の判断結果の履歴を参照し、状態2の判断結果と状態7の判断結果の割合を確認することで、ユーザの操作意思を正確に判断することができる。
【0086】
条件3では、現在の判断結果の組み合わせが表1の状態1(アンロック状態)で、直前までの判断結果の組み合わせが表1の状態7(状態維持)である。この場合、判断部7は、参照回数分の判断結果の履歴を参照し、定められた設定回数以上の判断結果が状態1を示す場合には、ドアロック装置2をアンロック状態に設定する判断を下し、設定回数未満の判断結果しか状態1を示さない場合には、ドアロック装置2を状態維持に設定する判断を下す。
【0087】
ユーザの手が意図せずに把持部26の外壁25a側に近づき、補助センサ70にユーザの手の接近の判断が成立する場合がある。また、この状態からアンロックセンサ50にもユーザの手や体が意図せずに近づき、アンロックセンサ50のみにユーザの接近の判断が成立する場合がある。つまり、ユーザに解錠意思はないが、アンロックセンサ50にユーザの手の接近の判断が成立する場合がある。この場合、過去から現在までの判断結果の履歴を参照して、判断結果の変移からユーザが解錠意思を有しているか否かを判断し、状態1と状態7のいずれに決定するかの判断を行う。
【0088】
具体的には、補助センサ70の判断結果が「L」から「H」に変化し、ロックセンサ60の判断結果が維持されたまま、アンロックセンサ50の判断結果が「H」から「L」に変化する。この場合、条件2と同様に、意識的に把持部26の内壁22a側に手を差し入れた可能性が高い。但し、この状態から状態7にすぐ変移した場合には、ノイズによる誤検出の可能性もある。そのため、所定期間の判断結果の履歴を参照し、状態1の判断結果と状態7の判断結果の割合を確認することで、ユーザの操作意思を正確に判断できる。
【0089】
以上のように、判断部7は、アンロックセンサ50とロックセンサ60へのユーザの手や体の接近の有無の判断結果に加え、補助センサ70へのユーザの手の接近の有無の判断結果と、判断結果の履歴も考慮して、ドアロック装置2をどのような状態に設定すべきかを判断する。具体的には、判断部7は、補助センサ70による判断結果のみが一定時間以上「L」であったときに、記憶部7aに記憶されている判断結果の履歴を参照して、ドアロック装置2をどの状態に設定するかの最終的な判断を下す。そのため、判断部7は、想定される誤判断を防止し、解錠操作と施錠操作の判断精度を向上できる。
【0090】
アンロックセンサ50、ロックセンサ60、及び補助センサ70は、いずれも相互容量式の近接センサであるため、雨の付着などによる誤検出を防止し、高感度の検出が可能である。
【0091】
アンロックセンサ50を把持部26内の内壁22a側に配置し、ロックセンサ60のロック電極65と補助センサ70の表面電極71を把持部26内の外壁25a側に配置している。これらの配置により、ユーザの手の接近をセンサ50,60,70によって高精度で検出できる。
【0092】
アンロックセンサ50を構成する第1駆動電極51とアンロック電極55は、把持部26の内壁22aの内面に沿って配置されるセンシング部52d,53d,56d,57dを備える。そのため、アンロックセンサ50は、把持部26の内壁22aにユーザの手が接近又は接触したことをより高感度で検出できる。
【0093】
補助センサ70の第1駆動電極51と表面電極71の第1センシング部72との間に生じる電界は、アンロックセンサ50の電極51,55間に生じる電界の電気力線が、把持部26の外壁25a側へ向かうことを防ぐ遮蔽機能を有する。また、ロックセンサ60の電極61,65間に生じるZ方向の電界は、アンロックセンサ50の電極51,55間に生じる電界の電気力線が、把持部26の外壁25a側へ向かうことを防ぐ遮蔽機能を有する。さらに、アンロックセンサ50の外壁25a側は、ロックセンサ60の電極61,65と補助センサ70の表面電極71とで概ね覆われている。これらにより、ユーザの手が把持部26の外壁25aに接近又は接触したことを、アンロックセンサ50が誤検出するのを防止できる。
【0094】
補助センサ70の第1駆動電極51と、表面電極71の第2センシング部74及びフック部75a,75b,75cとの間に生じる電界は、アンロックセンサ50の電極51,55間に生じる電界の電気力線が、把持部26の上壁25b側へ向かうことを防ぐ遮蔽機能を有する。そのため、ユーザが把持部26の上壁25bに接近又は接触したことを、アンロックセンサ50が誤検出するのを防止できる。
【0095】
電線82を流れる電流によって発生する電磁界は、アンロックセンサ50の電極51,55間の電界に影響を及ぼす。しかし、電線82は、表面電極71を保持するためのフック部75a,75b,75cと、アンテナ40の保持板部43f及び保持ブロック部43hとによって、アンロック電極55の付近を通らないように配索されている。よって、電線82の影響によるアンロックセンサ50の検出精度低下を防止できる。
【0096】
(アンテナユニットの組立作業)
図8Aに示すように、まず、アンテナ40の内側部45に第1駆動電極51とアンロック電極55を配置し、固定片52b,52c,56b,56cを固定穴43c,43c,43d,43dに圧入する。これにより、第1駆動電極51の主固定部52とアンロック電極55の主固定部56とが、アンテナ40の内側部45に固定される。
【0097】
ついで、
図8Bに示すように、アンテナ40の外側部46に表面電極71を配置し、固定片72a,72a,72b,72bを固定穴43c,43c,43e,43eに圧入する。これにより、表面電極71の主固定部である第1センシング部72が、アンテナ40の外側部46に固定される。
【0098】
図8Cに示すように、アンテナ40の固定穴43c,43cのうち一方には、第1駆動電極51の固定片52bと表面電極71の固定片72aが配置され、他方には、アンロック電極55の固定片56bと表面電極71の固定片72aが配置される。また、アンテナ40の固定穴43d,43dの一方には第1駆動電極51の固定片52cが配置され、他方にはアンロック電極55の固定片56cが配置される。アンテナ40の第2固定穴43e,43eには、表面電極71の固定片72b,72bが配置される。
【0099】
次に、
図8Dに示すように、アンテナ40に固定した電極51,55,71の副固定部53,57,73上に回路基板80を配置する。そして、回路基板80のスルーホール部86a,86b,86c,86d,86gに、内側部83側から電極51,55,71の端子73d,53b,57b,53c,57cを挿入して半田付けする。これにより、第1駆動電極51が発振回路部88に電気的に接続されるとともに、第1駆動電極51の副固定部53が、回路基板80の内側部80に固定される。また、アンロック電極55と表面電極が、回路基板80の増幅回路部89に電気的に接続されるとともに、電極55,71の副固定部57,73が、回路基板80の内側部80に固定される。
【0100】
その後、
図8Eに示すように、回路基板80のパッド87a,87bに電線82,82の芯線を配置して半田付けする。ついで、
図8Fに示すように、回路基板80の外側部84上に第2駆動電極61とロック電極65を配置する。そして、回路基板80のスルーホール部86h,86e,86i,86fに電極61,65の端子63a,63b,67a,67bを挿入し、端子63b,67bを半田付けする。これにより、第2駆動電極61が発振回路部88に電気的に接続されるとともに、第2駆動電極61の固定部62a,62bが回路基板80の外側部84に固定される。また、ロック電極65が回路基板80の増幅回路部89に電気的に接続されるとともに、ロック電極65の固定部66a,66bが回路基板80の外側部84に固定される。端子63b,67bのみを半田付けしたが、端子63a,67aも半田付けしてもよい。
【0101】
次に、
図3Bに示すように、アンテナ40の+Z方向に位置する側部43bに電線82を配索し、表面電極71のフック部75a,75b,75cに電線82,82を保持させる。その後、アンテナ40の内側部45に電線82,82を配索し、アンテナ40の保持板部43fに電線82,82を保持させる。最後に、アンテナ40の保持ブロック部43hに電線82,82を固定する。
【0102】
ロックセンサ60を構成する電極61,65が回路基板80の外側部84に実装されており、アンテナユニット30の全構成部品を一体化して取り扱うことができる。よって、モールド成形時にアンテナユニット30を金型に配置する際の作業性を向上できる。
【0103】
本発明の車両用ドアハンドル装置10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0104】
補助センサ70は、アンロックセンサ50の第1駆動電極51とは別の補助駆動電極と、表面電極71とにより構成されてもよい。
【0105】
各センサ50,60,70は、駆動電極と検出電極を1枚の電極で構成した自己容量方式としてもよい。特にロックセンサ60を自己容量型とすることによって、構造を簡素化することができる。例えば、第2駆動電極61とロック電極65のうち、ロック電極65だけを把持部26内の外壁25a側に配置し、このロック電極65に
発振回路部88を電気的に接続する。これにより、把持部26内に配置する部品点数を削減できるため、ドアハンドル装置10の構造を簡素化できる。
【0106】
ロックセンサ60を配置することなく、アンロックセンサ50と補助センサ70だけでハンドル装置10を構成してもよい。アンテナ40と回路基板80に対するアンロックセンサ50の電極51,55の固定構造は、必要に応じて変更が可能である。また、アンテナ40と回路基板80に対する補助センサ70の電極71の固定構造も、必要に応じて変更が可能である。
【0107】
回路基板80の電線82を配索するフック部75a,75b,75cは、表面電極71の第1センシング部72の−Z方向の下縁に設けてもよい。このようにすれば、第1駆動電極51と表面電極71のフック部75a,75b,75cとの間に生じる電界が、把持部26の下壁25c側に位置する。よって、アンロックセンサ50を構成する電極51,55間に生じる電界の電気力線が、把持部26の下壁25c側に漏れることを防ぐことができる。
【0108】
電極51,55,61,65,71、及び電線82は、超音波溶接により回路基板80に接続してもよい。
【0109】
判断部7は、アンロックセンサ50又はロックセンサ60が、ユーザの接近又は接触を検出した場合に、参照回数分(一定時間)の判断結果の履歴を参照して、ドアロック装置2をどの状態に設定するかの最終的な判断を下してもよい。