(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車載用バッテリーに連結された流動用ダクトと前記流動用ダクトに連結された排出用ダクトとを備えると共に車体のフロアーパネルに形成された挿通孔に挿通され前記車載用バッテリーから流動される流体を車両の外部に排出するダクト構造であって、
前記フロアーパネルより車室側の空間が内側空間として形成され、
前記流動用ダクトには前記排出用ダクトが連結される連結部と前記内側空間において前記挿通孔の周囲に密着されるシール部とが設けられ、
前記排出用ダクトには前記挿通孔の開口縁に係合されることにより前記フロアーパネルに取り付けられる被取付部と前記連結部に連結される結合部とが設けられ、
前記流動用ダクトは全体が前記内側空間に位置され、
前記排出用ダクトは前記挿通孔に挿通された状態で前記結合部が前記内側空間において前記連結部に連結される
ダクト構造。
【背景技術】
【0003】
自動車等の各種の車両にはモーターや各種の電装部品に電力を供給するための車載用バッテリーが搭載されている。
【0004】
近年、特に、EV(Electric Vehicle:電気自動車)やHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド電気自動車)等の車両が普及されつつあり、これらの電気を動力とした車両においては高い蓄電機能を有する車載用バッテリーが搭載される。
【0005】
車載用バッテリーには収納ケースと収納ケースに収納された電池モジュールとが設けられ、電池モジュールは、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の複数の電池セル(2次電池)が配列されて構成されている。
【0006】
また、電気自動車等に搭載される車載用バッテリーにあっては、高い蓄電機能を保持するために、複数の電池モジュールが収納ケースに配置されているものもある。
【0007】
このような車載用バッテリーにあっては、収納ケースの内部に配置された電池モジュールにおいて、万が一、短絡等の異常が発生すると、電池モジュールの駆動には不必要なガスが噴出される可能性がある。また、車載用バッテリーにあっては、電池モジュール等を冷却し温度が上昇した冷却風を排出する必要もある。
【0008】
そこで、車載用バッテリーが搭載される車両には、万が一のガスの噴出に備えてガスを車外に排出するためのダクト構造や電池モジュール等を冷却し温度が上昇した冷却風を車外に排出するためにダクト構造が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のようなダクト構造は、ガスや冷却風を車外に排出する構造であるため、フロアーパネルに形成された挿通孔に挿通され一部がフロアーパネルより車体の外側(下側)に配置されることも多い。
【0010】
従って、ダクト構造には車両の走行中に飛び跳ねる水分や泥や小石等の飛散物(異物)が衝突する可能性があるが、このような飛散物の衝突によってもダクト構造がフロアーパネルから脱落しないようにする必要がある。また、このような衝突以外にも、洗車時の高圧洗浄水等の圧力がダクト構造に付与される場合もあり、この場合にもダクト構造がフロアーパネルから脱落しないようにする必要がある。
【0011】
また、車載用バッテリーが搭載された車両にあっては、特許文献1に記載されたダクト構造のように、ダクトの内部にメッシュ部材が設けられていたり、ダクトを覆うアンダーカバーが設けられているものもあるが、このような構造においては部品点数が多く構造の簡素化に支障を来すと言う不具合もある。
【0012】
そこで、本発明は、上記した問題点を克服し、フロアーパネルに対する安定した取付状態及び構造の簡素化を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1に、本発明に係るダクト構造は、車載用バッテリーに連結された流動用ダクトと前記流動用ダクトに連結された排出用ダクトとを備えると共に車体のフロアーパネルに形成された挿通孔に挿通され前記車載用バッテリーから流動される流体を車両の外部に排出するダクト構造であって、前記フロアーパネルより車室側の空間が内側空間として形成され、前記流動用ダクトには前記排出用ダクトが連結される連結部と前記内側空間において前記挿通孔の周囲に密着されるシール部とが設けられ、前記排出用ダクトには前記挿通孔の開口縁に係合されることにより前記フロアーパネルに取り付けられる被取付部と前記連結部に連結される結合部とが設けられ、前記流動用ダクトは全体が前記内側空間に位置され、前記排出用ダクトは前記挿通孔に挿通された状態で前記結合部が前記内側空間において前記連結部に連結されるものである。
【0014】
これにより、排出用ダクトの結合部が内側空間において流動用ダクトの連結部に連結された状態で流動用ダクトのシール部が内側空間においてフロアーパネルに密着されると共に排出用ダクトの被取付部が挿通孔の開口縁に係合されてフロアーパネルに取り付けられる。
【0015】
第2に、上記した本発明に係るダクト構造においては、前記排出用ダクトに複数の排出孔を有する排出部と開口形状を有さない侵入防止部とが設けられることが望ましい。
【0016】
これにより、排出用ダクトは排出孔が形成された排出部と開口形状を有さない侵入防止部とを有する構成にされる。
【0017】
第3に、上記した本発明に係るダクト構造においては、前記侵入防止部の内面の少なくとも一部が下方へ行くに従って前記排出部に近付く傾斜面として形成されることが望ましい。
【0018】
これにより、排出用ダクトの内部に侵入した異物が傾斜面に沿って排出部へ向けて流動され易くなる。
【0019】
第4に、上記した本発明に係るダクト構造においては、前記複数の排出孔のうちの最も下方に位置された排出孔の下縁が前記傾斜面の下端に一致されることが望ましい。
【0020】
これにより、傾斜面と最も下方に位置された排出孔との間に、流動される異物を堰き止める部分が存在しない。
【0021】
第5に、上記した本発明に係るダクト構造においては、前記侵入防止部の厚みが前記排出部の厚みより厚くされることが望ましい。
【0022】
これにより、侵入防止部の強度が排出部の強度より高くなる。
【0023】
第6に、上記した本発明に係るダクト構造においては、前記挿通孔が非円形状に形成され、前記排出用ダクトにおける前記挿通孔に挿通される部分の外形状が前記挿通孔と略同じ形状に形成されることが望ましい。
【0024】
これにより、挿通孔によって排出用ダクトのフロアーパネルに対する向きが定められる。
【0025】
第7に、上記した本発明に係るダクト構造においては、前記被取付部が弾性変形可能にされ、前記被取付部が弾性変形された状態で前記挿通孔の開口縁に前記挿通孔の中心側から押し付けられることが望ましい。
【0026】
これにより、排出用ダクトがフロアーパネルに取り付けられた状態において被取付部が弾性変形された状態で挿通孔の開口縁に押し付けられる。
【0027】
第8に、上記した本発明に係るダクト構造においては、前記排出用ダクトが前記流動用ダクトに連結された状態で前記挿通孔に挿通され、前記排出用ダクトの前記挿通孔への挿通時に前記被取付部が弾性変形されることが望ましい。
【0028】
これにより、排出用ダクトが流動用ダクトに連結された状態で挿通孔に挿通されることによりフロアーパネルに取り付けられるため、流動用ダクトと排出用ダクトを各別にフロアーパネルに取り付ける必要がない。
【0029】
第9に、上記した本発明に係るダクト構造においては、前記シール部が弾性変形可能にされ、前記シール部が弾性変形された状態で前記フロアーパネルに押し付けられることが望ましい。
【0030】
これにより、排出用ダクトがフロアーパネルに取り付けられた状態においてシール部がフロアーパネルに弾性変形された状態で押し付けられる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、排出用ダクトの結合部が内側空間において流動用ダクトの連結部に連結された状態で流動用ダクトのシール部が内側空間においてフロアーパネルに密着されると共に排出用ダクトの被取付部が挿通孔の開口縁に係合されてフロアーパネルに取り付けられるため、フロアーパネルに対する安定した取付状態及び構造の簡素化を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明ダクト構造を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。以下には、万が一、電池モジュール等に異常が発生したときに発生するガスを車載用バッテリーから車外に排出するダクト構造の例を説明する。但し、本発明ダクト構造は車載用バッテリーから流動される流体を排出する各種のダクト構造に適用することが可能であり、例えば、車載用バッテリーの内部に配置された電池モジュール等を冷却し温度が上昇した冷却風を車外に排出するダクト構造に適用することも可能である。
【0034】
車載用バッテリー100は内部空間が収納空間として形成された収納ケース101と収納ケース101の内部に配置された図示しない電池モジュールや高電圧機器等を有している(
図1参照)。車載用バッテリー100は、車両の荷室においてフロアーパネル50上に配置されている。
【0035】
フロアーパネル50には、例えば、車載用バッテリー100の左方にダクト構造1が挿通される挿通孔51が形成されている(
図2参照)。挿通孔51は上下に貫通され、開口縁52は左側に位置する部分が左方に凸の曲線部52aとして形成され曲線部52a以外の部分が円弧状に形成された円弧部52bとして形成されている。曲線部52aは円弧部52bより曲率が小さくされている。
【0036】
フロアーパネル50より上側の空間は車載用バッテリー100が配置された室内側の内側空間60とされ、フロアーパネル50より下側の空間は室外側の外側空間61とされている。
【0037】
挿通孔51の下方には一方の後輪200、例えば、左側の後輪200が位置されている(
図3参照)。
【0038】
ダクト構造1は流動用ダクト2と排出用ダクト3を有し、一端部が車載用バッテリー1に連結され、一部が挿通孔51に挿通されている(
図4乃至
図7参照)。
【0039】
流動用ダクト2は、例えば、ゴム材料によって形成され、一端部が車載用バッテリー1に連結されている。流動用ダクト2の他端部には連結部4が設けられている。
【0040】
連結部4は外方に張り出されたフランジ状に形成され、外形状と内形状が円形状に形成されている(
図8参照)。連結部4は弾性変形可能にされている。連結部4の内部には内方に開口された円環状の連結溝4aが形成されている。連結部4には連結溝4aにおける奥側の位置に位置決め突部4b、4b、4bが周方向において等間隔に離隔して設けられている。尚、位置決め突部4bは少なくとも一つが設けられていればよい。
【0041】
流動用ダクト2には連結部4の端面(下面)から突出されたシール部5a、5bが設けられている。シール部5a、5bは下方へ行くに従って連結部4の外周面に近付く方向へ突出され、弾性変形可能にされている。シール部5a、5bは環状に形成され、径方向に離隔して設けられている。尚、シール部5の数は二つに限られることはなく、一つでもよく、三つ以上であってもよい。
【0042】
排出用ダクト3は結合部6と流動部7と被取付部8、8、8を有し、例えば、射出成形による樹脂材料によって形成されている(
図4乃至
図7参照)。
【0043】
結合部6は厚み方向が上下方向にされた略円環状に形成されている(
図4、
図9及び
図10参照)。結合部6の内周縁9は左側に位置する部分が左方に凸の曲線状部9aとして形成され曲線状部9a以外の部分が円弧状に形成された円弧状部9bとして形成されている。曲線状部9aは円弧状部9bより曲率が小さくされている。
【0044】
結合部6の外周部には外方に開口された位置決め凹部6a、6a、6aが周方向において等間隔に離隔して形成されている。尚、位置決め凹部6aは連結部4の位置決め突部4bの数と同じ数が形成されていればよく、少なくとも一つが形成されていればよい。結合部6には位置決め凹部6a、6a、6aの内側にそれぞれ成形用孔6b、6b、6bが形成されている。成形用孔6b、6b、6bは被取付部8、8、8を射出成形によって成形するために形成された孔である。
【0045】
結合部6の外周縁10は位置決め凹部6a、6a、6aが形成された部分を除き円弧状に形成されている。従って、結合部6は内周縁9の左側に位置する部分が円弧状部9bより曲率が小さい曲線状部9aとして形成されているため、曲線状部9aを含む左側の部分の径方向における幅が円弧状部9bを含む部分の径方向における幅より大きくされている。
【0046】
流動部7は結合部6の内周部から下方に突出されて設けられている(
図4乃至
図6参照)。流動部7は上方に開口された縦長の袋状に形成され、排出部11と侵入防止部12によって構成されている。流動部7は外形状が挿通孔51と略同じ形状に形成され、略上半部の形状が挿通孔51より一回り小さくされている。
【0047】
排出部11は結合部6における曲線状部9aを含む内周部から下方に突出された部分であり、外方(左方)に凸の曲面状に形成されている。排出部11には上下方向及び周方向に離隔して複数の排出孔13、13、・・・が形成されている。排出孔13、13、・・・は最も下方に位置された排出孔13Aを除いて、例えば、円形状に形成され、最も下方に位置された排出孔13Aは非円形状に形成されている。排出孔13Aは下縁13aが略前後に延びる直線状に形成され、侵入防止部12の内面における下端に連続されている。
【0048】
侵入防止部12は結合部6における円弧状部9bを含む内周部から下方に突出された部分であり、円弧面状に形成されている。侵入防止部12には開口形状が形成されていない。侵入防止部12は上側の略半部が水平方向を向く非傾斜部14として設けられ下側の略半部が下方へ行くに従って排出部11に近付く傾斜部15として設けられ、傾斜部15の下端部が排出部12の下端部に連続されている。傾斜部15の内面は傾斜面15aとして形成され、傾斜面15aの下端が排出孔13Aの下縁に連続されている。
【0049】
流動部7は侵入防止部12の厚みが排出部11の厚みより厚くされている(
図6及び
図11参照)。侵入防止部12の厚みは、例えば、2mm乃至3mmにされ、排出部11の厚みは、例えば、1mm乃至2mmにされている。従って、侵入防止部12は強度が高くされている。
【0050】
被取付部8、8、8は流動部7の上端寄りの位置からそれぞれ結合部6の成形孔6b、6b、6bに向かう方向へ突出されている(
図4及び
図6参照)。被取付部8、8、8は流動部7の周方向において等間隔に離隔して設けられている。
【0051】
被取付部8は弾性変形可能にされている。被取付部8の上端部には上方に突出された係合爪8aが設けられ、係合爪8aは被取付部8の厚み方向において流動部7側の略半部から上方に突出されている。
【0052】
排出用ダクト3は流動用ダクト2に連結され、排出用ダクト3が流動用ダクト2に連結されることによりダクト構造1が構成される(
図6、
図7及び
図10参照)。排出用ダクト3の流動用ダクト2への連結は排出用ダクト3の結合部6が流動用ダクト2の連結溝4aに挿入され、結合部6が連結部4に外嵌されることにより行われる。結合部6が連結部4に連結されるときには、結合部6の位置決め凹部6a、6a、6aにそれぞれ連結部4の位置決め突部4b、4b、4bが嵌合され、排出用ダクト3の流動用ダクト2に対する周方向における位置決めが行われる。
【0053】
排出用ダクト3が流動用ダクト2に連結されてダクト構造1が構成された状態において、排出用ダクト3はフロアーパネル50の挿通孔51に上方から挿通される(
図12参照)。このとき排出用ダクト3は流動部7の排出部11と侵入防止部12がそれぞれ曲線部52aと円弧部52bに対応した向きで挿通孔51に挿通される。
【0054】
排出用ダクト3が挿通孔51に挿通され下方へ移動されていくと、被取付部8、8、8がそれぞれ挿通孔51の開口縁52に摺動されて流動部7に近付く方向へ弾性変形される。排出用ダクト3が挿通孔51に対してさらに下方へ移動されると、被取付部8、8、8の係合爪8a、8a、8aが挿通孔51と同じ高さになり、被取付部8、8、8が弾性復帰されて係合爪8a、8a、8aが開口縁52に係合される(
図6及び
図10参照)。
【0055】
このとき被取付部8、8、8は排出用ダクト3が挿通孔51に挿通される前の元の状態に対して弾性変形されており、開口縁52に挿通孔51の中心側から押し付けられてフロアーパネル50に取り付けられる。
【0056】
従って、排出用ダクト3がフロアーパネル50に取り付けられた状態において被取付部8、8、8が弾性変形された状態で挿通孔51の開口縁52に押し付けられるため、排出用ダクト3のフロアーパネル50に対する安定した取付状態を確保することができる。
【0057】
上記のように、ダクト構造1は排出用ダクト3の被取付部8、8、8が挿通孔51の開口縁52に係合されることによりフロアーパネル50に取り付けられ、流動用ダクト2は全体が内側空間60に位置され排出用ダクト3は結合部6を含む上端部が内側空間60に位置される。
【0058】
上記したように、排出用ダクト3は流動部7の外形状が、曲線部52aと円弧部52bを有し非円形状に形成された挿通孔51と略同じ形状に形成されている。
【0059】
従って、排出用ダクト3は挿通孔51と略同じ形状の非円形状に形成された流動部7が非円形状の挿通孔51に挿通されるため、挿通孔51によって排出用ダクト3のフロアーパネル50に対する向きが定められ、排出部11が左側に位置され侵入防止部12が右側に位置された向きでフロアーパネル50に取り付けられる。
【0060】
このようにダクト構造1は挿通孔51への流動部7の挿通により、挿通孔51によって排出用ダクト3のフロアーパネル50に対する向きが定められるため、排出用ダクト3の挿通孔51に対する挿通時に排出用ダクト3をフロアーパネル50に容易かつ確実に所定の向きで取り付けることができる。
【0061】
ダクト構造1がフロアーパネル50に取り付けられた状態においては、流動用ダクト2のシール部5a、5bがフロアーパネル50における挿通孔51の周囲の部分50aに上方から押し付けられる。このときシール部5a、5bは弾性変形され、部分50aに密着された状態にされている(
図10参照)。
【0062】
従って、排出用ダクト3がフロアーパネル50に取り付けられた状態においてシール部5a、5bがフロアーパネル50における挿通孔51の周囲の部分50aに弾性変形された状態で押し付けられるため、シール部5a、5bのフロアーパネル50に対する高い密着性が確保され、挿通孔51からの内側空間60への水分や泥や雪等の異物の侵入を確実に防止することができる。
【0063】
特に、異物は排出用ダクト3の流動部7と挿通孔51の開口縁52との間に下方から侵入してシール部5a、5b側へ向きを変える進路(
図10の矢印参照)を通らなければ内側空間60に入り込むことができないため、異物の内側空間60への侵入路が迷路状である。従って、ダクト構造1においては、所謂ラビリンス効果によっても異物の内側空間60への侵入を確実に防止することができる。
【0064】
また、ダクト構造1にあっては、上記したように、流動用ダクト2と排出用ダクト3が連結された状態で排出用ダクト3が挿通孔51に挿通され、排出用ダクト3の挿通孔51への挿通時に被取付部8、8、8が弾性変形される。
【0065】
従って、排出用ダクト3が流動用ダクト2に連結された状態で挿通孔51に挿通されることによりフロアーパネル50に取り付けられるため、流動用ダクト2と排出用ダクト3を各別にフロアーパネル50に取り付ける必要がなく、ダクト構造1のフロアーパネル50への取付作業における作業性の向上を図ることができる。
【0066】
上記のようにダクト構造1がフロアーパネル50に取り付けられた状態において、車載用バッテリー1において、万が一、短絡等の異常が発生するとガスが発生する可能性があるが、発生したガスは流動用ダクト2から排出用ダクト3へ流動されて排出用ダクト3の排出孔13、13、・・・から車両の外部に排出される。
【0067】
一方、車両の走行中には、飛び跳ねる水分や泥や小石等の飛散物(異物)が排出用ダクト3に衝突したり、車両の洗浄中には、水分等の異物が排出用ダクト3に衝突し、これらの異物が排出孔13、13、・・・から排出用ダクト3の内部に侵入する可能性がある。
【0068】
このように車両の走行中や洗浄中には異物が排出孔13、13、・・・から排出用ダクト3の内部に侵入する可能性があるが、排出用ダクト3は侵入防止部12の内面の少なくとも一部が下方へ行くに従って排出部11に近付く傾斜面15aとして形成されている。
【0069】
従って、排出用ダクト3の内部に侵入した異物が傾斜面15aに沿って排出部12へ向けて流動され易くなり、異物を円滑かつ迅速に排出孔13、13、・・・から排出することができ、ガスの排出経路の閉塞を防止することができる。
【0070】
また、排出用ダクト3は排出孔13、13、・・・のうちの最も下方に位置された排出孔13Aの下縁13aが傾斜面15aの下端に一致されている。
【0071】
従って、傾斜面15aと排出孔13Aの間には流動される異物を堰き止める部分が存在しないため、傾斜面15aに沿って流動される異物が排出孔13Aから確実に排出される。
【0072】
また。排出用ダクト3に傾斜部15aが形成されることにより、車載用バッテリー1において発生する可能性のあるガスが傾斜部15aに案内されて排出部11側へ流動されるため、簡素な構造によってガスを所望の方向へ流動させて排出することができる。
【0073】
尚、排出孔13、13、・・・は所定の大きさに形成され、万が一、フロアーパネル50下方に小動物が入り込んでしまった場合においても、小動物が排出用ダクト3の内部に侵入できない大きさにされている。また、排出孔13、13、・・・の開口面積の合計は、車載用バッテリー1において発生する可能性のあるガスの発生量を考慮した大きさにされ、ガスが十分に車外に排出できる大きさにされている。
【0074】
また、車両の走行中には後輪200によって小石等が跳ね上げられ、跳ね上げられた小石等が排出用ダクト3に衝突する可能性があるが、小石等は後輪の内側から跳ね上げられ(
図3の矢印参照)排出用ダクト3に衝突する場合が多い。
【0075】
従って、上記したように、排出用ダクト3に排出孔13、13、・・・を有する排出部11と開口形状を有さない侵入防止部12とが設けられることにより、排出部11に小石等が衝突し難く侵入防止部12に小石等が衝突し易い向きで排出用ダクト3をフロアーパネル50に取り付けることにより、排出用ダクト3の内部に小石等を侵入し難くすることができる。
【0076】
また、排出用ダクト3に排出部11と侵入防止部12が設けられることにより、排出用ダクト3は排出孔13、13、・・・が形成された排出部11と開口形状を有さない侵入防止部12とを有する構成にされるため、排出用ダクト3の向きにより車載用バッテリー1から流動されるガスや排出用ダクト3の内部に侵入した異物を所望の方向へ排出することができる。
【0077】
特に、車載用バッテリー1において発生するガスは高温であるため、排出用ダクト3の向きによりガスの排出方向を所望の方向に設定することにより、フロアーパネル50の下側に位置された構造物の溶融や機能の低下を防止することができる。
【0078】
さらに、排出用ダクト3においては、排出部11に排出孔13、13、・・・が形成され侵入防止部12は開口形状を有さないため、侵入防止部12からは異物の侵入が行われず、排出用ダクト3の内部への異物の侵入を低減することができる。
【0079】
さらにまた、排出用ダクト3は侵入防止部12の厚みが排出部11の厚みより厚くされているため、侵入防止部12の強度が排出部11の強度より高く、小石や泥や水等の飛散物が侵入防止部12に衝突したときに侵入防止部12の損傷や破損の発生を低減することができる。
【0080】
以上に記載した通り、ダクト構造1にあっては、流動用ダクト2の全体が内側空間60に位置され、排出用ダクト3の一部が挿通孔51に挿通された状態で被取付部8、8、8がフロアーパネル50に取り付けられると共に結合部6が内側空間60において連結部4に連結される。
【0081】
従って、排出用ダクト3の結合部6が内側空間60において流動用ダクト2の連結部4に連結された状態で流動用ダクト2のシール部5a、5bが内側空間60においてフロアーパネル50に密着されると共に排出用ダクト3の被取付部8、8、8が挿通孔51の開口縁52に係合されてフロアーパネル50に取り付けられるため、フロアーパネル50に対する安定した取付状態及び構造の簡素化を確保することができる。
【0082】
特に、排出用ダクト3の周囲に、排出用ダクト3の内部への異物の侵入を防止するためのメッシュ部材やアンダーカバーを設ける必要がなく、構造の簡素化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0083】
また、流動用ダクト2は全体が内側空間60に位置され、連結部4に連結された排出用ダクト3の結合部6が内側空間60に位置され、シール部5a、5bがフロアーパネル50に密着されているため、高圧洗浄水による圧力や小石等の異物による衝撃が直接的に連結部4と結合部6に付与されることがなく、排出用ダクト3の流動用ダクト2からの脱落の発生を防止することができる。
【0084】
さらに、排出用ダクト3の流動用ダクト2からの脱落の発生を防止することができるため、排出用ダクト3のフロアーパネル50に対するズレが生じ難く、排出用ダクト3のフロアーパネル50に対する安定した取付状態が確保され、排出用ダクト3のフロアーパネル50からの脱落を防止することもできる。
【0085】
尚、上記には、ダクト構造1が車両における左後側に配置され、排出用ダクト3は排出部11が侵入防止部12の左側に位置された向きに設定された例を示したが、ダクト構造1の配置位置や排出用ダクト3の向きは、例えば、車種や車載用バッテリー1の車体に対する配置位置や車両の構造等に応じて任意の配置位置及び向きに設定することが可能である。