特許第6831311号(P6831311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831311ガス供給装置、およびガス供給装置の運転開始方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831311
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ガス供給装置、およびガス供給装置の運転開始方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   F17C5/06
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-177595(P2017-177595)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-52712(P2019-52712A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176315
【弁理士】
【氏名又は名称】荒田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰利
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−67274(JP,A)
【文献】 特開2016−53456(JP,A)
【文献】 特開2014−104847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスステーションのディスペンサへガスを供給するガス供給装置であって、
前記ディスペンサへ供給するガスを貯留する蓄圧器と、
前記ディスペンサから吐出される前のガスを冷却するための不凍性のブライン液である冷媒が流れる冷媒流路と、
前記冷媒流路の前記冷媒を冷却可能な冷凍機と、
液化窒素、液化酸素、液化アルゴン又は液化水素である液化ガスの潜熱によって前記冷媒流路の前記冷媒を冷却可能な冷却装置と、
前記ガスステーションの起動に際して、前記冷却装置を起動する制御を行った後、前記ディスペンサから吐出されるガスが前記冷媒によって冷却されるように前記冷媒流路の冷媒が冷却されていることを判断するための条件として予め設定された条件を満たしたときに、前記冷却装置を停止しつつ前記冷凍機を起動する制御を行う制御部と、を備えるガス供給装置。
【請求項2】
ガスステーションのディスペンサへガスを供給するガス供給装置であって、
前記ディスペンサへ供給するガスを貯留する蓄圧器と、
前記ディスペンサから吐出される前のガスを冷却するための不凍性のブライン液である冷媒が流れる冷媒流路と、
前記冷媒流路の前記冷媒を冷却可能な冷凍機と、
液化窒素、液化酸素、液化アルゴン又は液化水素である液化ガスの潜熱によって前記冷媒流路の前記冷媒を冷却可能な冷却装置と、
前記ガスステーションの起動に際して、前記冷却装置および前記冷凍機を起動する制御を行った後、前記ディスペンサから吐出されるガスが前記冷媒によって冷却されるように前記冷媒流路の冷媒が冷却されていることを判断するための条件として予め設定された条件を満たしたときに、前記冷却装置を停止する制御を行う制御部と、を備えるガス供給装置。
【請求項3】
前記冷媒流路は、前記冷媒を貯留可能な冷媒タンクを有し、
前記冷却装置は、前記液化ガスが流れる液化ガス流路を有し、
前記液化ガス流路は、前記冷媒と前記液化ガスとの熱交換を行う熱交換部と、前記熱交換部において前記液化ガスが気化することにより発生したガスが前記冷媒タンクに流入するように前記熱交換部と前記冷媒タンクとを繋ぐタンク導入部と、を含む、請求項1または2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記冷媒流路に繋がるポンプをさらに備え、
前記冷媒流路は、前記冷媒を貯留可能な冷媒タンクを有し、
前記冷却装置は、前記液化ガスが流れる液化ガス流路を有し、
前記液化ガス流路は、前記冷媒と前記液化ガスとの熱交換を行う熱交換部と、前記熱交換部において前記液化ガスが気化することにより発生したガスが前記ポンプのケーシング内に流入するように前記熱交換部と前記ポンプとを繋ぐポンプ導入部と、を含む、請求項1または2に記載のガス供給装置。
【請求項5】
ガスステーションのディスペンサへ供給するガスを貯留する蓄圧器と、前記ディスペンサから吐出される前のガスを冷却するための不凍性のブライン液である冷媒が流れる冷媒流路と、前記冷媒流路の前記冷媒を冷却可能な冷凍機と、液化窒素、液化酸素、液化アルゴン又は液化水素である液化ガスの潜熱によって前記冷媒流路の前記冷媒を冷却可能な冷却装置と、を備えるガス供給装置の運転開始方法であって、
前記冷却装置を起動した後、前記ディスペンサから吐出されるガスが前記冷媒によって冷却されるように前記冷媒流路の冷媒が冷却されていることを判断するための条件である所定の条件を満たしたときに、前記冷却装置を停止しつつ前記冷凍機を起動する、ガス供給装置の運転開始方法。
【請求項6】
ガスステーションのディスペンサへ供給するガスを貯留する蓄圧器と、前記ディスペンサから吐出される前のガスを冷却するための不凍性のブライン液である冷媒が流れる冷媒流路と、前記冷媒流路の前記冷媒を冷却可能な冷凍機と、液化窒素、液化酸素、液化アルゴン又は液化水素である液化ガスの潜熱によって前記冷媒流路の前記冷媒を冷却可能な冷却装置と、を備えるガス供給装置の運転開始方法であって、
前記冷却装置および前記冷凍機を起動した後、前記ディスペンサから吐出されるガスが前記冷媒によって冷却されるように前記冷媒流路の冷媒が冷却されていることを判断するための条件である所定の条件を満たしたときに、前記冷却装置を停止する、ガス供給装置の運転開始方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスステーションのディスペンサへガスを供給するガス供給装置、および当該ガス供給装置の運転開始方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池自動車や水素自動車等の水素ガスを利用する車両の開発が行われており、これに伴って当該車両のタンクに水素ガスを充填するための水素ステーションが普及されつつある。このような水素ステーションの一例として、特許文献1には、水素ガスを供給するガス供給システムと、ガス供給システムから供給される水素ガスを所定のプロトコルに従って車両のタンクに供給するディスペンサと、を備えた水素ステーションが記載されている。このような水素ステーションでは、ディスペンサから吐出される水素ガスは、所定の温度まで冷却した状態で車両のタンクへ供給する必要がある。このため、特許文献1のガス供給システムは、ディスペンサにおける水素ガスを冷却するための冷媒が流れる冷媒流路と、当該冷媒流路を流れる冷媒を冷却するための冷凍機と、を有している。これにより、ディスペンサにおける水素ガスは、冷媒流路を流れる冷媒によって所定の温度まで冷却された状態で車両のタンクへ供給されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−158213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の水素ステーションが停止されると、冷凍機も停止されるため、外部入熱によって冷媒流路の冷媒の温度が上昇することになる。このため、当該水素ステーションを再び起動する際には、ディスペンサから車両へ水素ガスを供給する前に、冷媒流路を流れる冷媒を所定の温度まで冷却する必要がある。この場合、例えば、冷凍機を起動することにより冷媒流路を流れる冷媒を所定の温度まで冷却した後に、ディスペンサから車両へ水素ガスが供給可能となるように水素ステーションを起動することが考えられる。しかしながら、このような方法によって水素ステーションを起動する場合、冷凍機による冷媒の冷却に時間がかかり、当該起動までに要する時間が長くなる虞がある。
【0005】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガスステーションの起動に要する時間を抑えることができるガス供給装置、およびガス供給装置の運転開始方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガス供給装置は、ガスステーションのディスペンサへガスを供給するガス供給装置であって、前記ディスペンサへ供給するガスを貯留する蓄圧器と、前記ディスペンサから吐出される前のガスを冷却するための不凍性のブライン液である冷媒が流れる冷媒流路と、前記冷媒を冷却可能な冷凍機と、液化窒素、液化酸素、液化アルゴン又は液化水素である液化ガスの潜熱によって前記冷媒を冷却可能な冷却装置と、前記ガスステーションの起動に際して、前記冷却装置を起動する制御を行った後、前記ディスペンサから吐出されるガスが前記冷媒によって冷却されるように前記冷媒流路の冷媒が冷却されていることを判断するための条件として予め設定された条件を満たしたときに、前記冷却装置を停止しつつ前記冷凍機を起動する制御を行う制御部と、を備える。
【0007】
上記のガス供給装置では、ガスステーションの起動に際して、制御部は、まず冷却装置を起動する制御を行う。これによって、冷却装置は、冷媒流路の冷媒と液化ガスとの熱交換によって気化した液化ガスの潜熱により、冷媒の温度を素早く下げることができる。このため、上記のガス供給装置では、ディスペンサから吐出される前のガスを十分に冷却することができる程度まで冷媒の温度を下げるのに要する時間が短く、ガスステーションの起動に要する時間を抑えることができる。しかも、上記のガス供給装置は、冷却装置に加えて冷凍機を備えており、制御部は、冷却装置を起動する制御を行った後、予め設定された条件を満たしたときに冷却装置を停止しつつ冷凍機を起動する制御を行う。ここで、予め設定された条件とは、例えば、冷却装置を起動してからの経過時間や冷媒流路に設けられた温度センサT1の検知温度などによって判定される条件であり、当該条件を満たすまで冷媒流路を流れる冷媒が冷却装置によって冷却されることになる。すなわち、上記のガス供給装置では、前記予め設定された条件を満たすことにより、冷媒流路を流れる冷媒がディスペンサから吐出される前のガスを十分に冷却することができる程度まで冷却されたと判断される場合に、冷却装置を停止しつつ冷凍機を起動する。これにより、ガスステーションの起動後は、冷凍機のみによって冷媒流路を流れる冷媒が冷却されることになり、冷却装置への液化ガスの供給流量を抑えることができる。
【0008】
本発明に係るガス供給装置は、ガスステーションのディスペンサへガスを供給するガス供給装置であって、前記ディスペンサへ供給するガスを貯留する蓄圧器と、前記ディスペンサから吐出される前のガスを冷却するための不凍性のブライン液である冷媒が流れる冷媒流路と、前記冷媒を冷却可能な冷凍機と、液化窒素、液化酸素、液化アルゴン又は液化水素である液化ガスの潜熱によって前記冷媒を冷却可能な冷却装置と、前記ガスステーションの起動に際して、前記冷却装置および前記冷凍機を起動する制御を行った後、前記ディスペンサから吐出されるガスが前記冷媒によって冷却されるように前記冷媒流路の冷媒が冷却されていることを判断するための条件として予め設定された条件を満たしたときに、前記冷却装置を停止する制御を行う制御部と、を備える。
【0009】
上記のガス供給装置では、ガスステーションの起動に際して、制御部は、まず冷却装置および冷凍機を起動する制御を行う。これにより、冷媒流路を流れる冷媒は、冷凍機によって冷却されつつ、冷却装置における液化ガスの潜熱によってさらに冷却されることになる。このため、上記のガス供給装置では、ディスペンサから吐出される前のガスを十分に冷却することができる程度まで冷媒の温度を下げるのに要する時間が短く、ガスステーションの起動に要する時間を抑えることができる。しかも、制御部は、冷却装置および冷凍機を起動する制御を行った後、予め設定された条件を満たしたときに冷却装置を停止する制御を行う。すなわち、上記のガス供給装置では、前記予め設定された条件を満たすことにより、冷媒流路を流れる冷媒がディスペンサから吐出される前のガスを十分に冷却することができる程度まで冷却されたと判断される場合に、冷却装置を停止する。これにより、ガスステーションの起動後は、冷凍機のみによって冷媒流路を流れる冷媒が冷却されることになり、冷却装置への液化ガスの供給流量を抑えることができる。
【0010】
前記冷媒流路は、前記冷媒を貯留可能な冷媒タンクを有し、前記冷却装置は、前記液化ガスが流れる液化ガス流路を有し、前記液化ガス流路は、前記冷媒と前記液化ガスとの熱交換を行う熱交換部と、前記熱交換部において前記液化ガスが気化することにより発生したガスが前記冷媒タンクに流入するように前記熱交換部と前記冷媒タンクとを繋ぐタンク導入部と、を含むことが好ましい。
【0011】
上記のガス供給装置では、熱交換部において、冷媒と液化ガスとの熱交換によって当該液化ガスから発生したガスは、タンク導入部を通じて冷媒タンクに流入することになる。このため、上記のガス供給装置では、ガスステーションの起動の際に冷媒を冷却するための液化ガスを用いて、冷媒タンク内の冷媒が空気に触れる可能性を低減できる。これにより、冷媒の腐食を防止することができる。
【0012】
上記のガス供給装置は、前記冷媒流路に繋がるポンプをさらに備え、前記冷媒流路は、前記冷媒を貯留可能な冷媒タンクを有し、前記冷却装置は、前記液化ガスが流れる液化ガス流路を有し、前記液化ガス流路は、前記冷媒と前記液化ガスとの熱交換を行う熱交換部と、前記熱交換部において前記液化ガスが気化することにより発生したガスが前記ポンプのケーシング内に流入するように前記熱交換部と前記ポンプとを繋ぐポンプ導入部と、を含むことが好ましい。
【0013】
ポンプのケーシングは、当該ポンプの内部を通過する冷媒によって所定の温度に冷却されているため、当該ポンプのケーシング内に空気が入り込むと、結露が生じる虞がある。そこで、上記のガス供給装置では、液化ガス流路の熱交換部において冷媒と液化ガスとの熱交換によって発生したガスを当該液化ガス流路のポンプ導入部を通じてポンプに流入させ、これによりポンプのケーシング内に空気が入り込む可能性を低減している。これにより、ポンプのケーシングにおける結露の発生を防止することができる。
【0014】
本発明に係るガス供給装置の運転開始方法は、ガスステーションのディスペンサへ供給するガスを貯留する蓄圧器と、前記ディスペンサから吐出される前のガスを冷却するための不凍性のブライン液である冷媒が流れる冷媒流路と、前記冷媒を冷却可能な冷凍機と、液化窒素、液化酸素、液化アルゴン又は液化水素である液化ガスの潜熱によって前記冷媒を冷却可能な冷却装置と、を備えるガス供給装置の運転開始方法であって、前記冷却装置を起動した後、前記ディスペンサから吐出されるガスが前記冷媒によって冷却されるように前記冷媒流路の冷媒が冷却されていることを判断するための条件である所定の条件を満たしたときに、前記冷却装置を停止しつつ前記冷凍機を起動する。
【0015】
上記のガス供給装置の運転開始方法では、冷却装置を起動することによって、当該冷却装置における液化ガスの潜熱を用いて冷媒流路の冷媒の温度を素早く下げることができる。このため、上記のガス供給装置の運転開始方法では、ディスペンサから吐出される前のガスを十分に冷却することができる程度まで冷媒の温度を下げるのに要する時間が短く、ガスステーションの起動に要する時間を抑えることができる。しかも、上記のガス供給装置の運転開始方法では、冷却装置を起動した後、所定の条件を満たしたときに冷却装置を停止するともに冷凍機を起動する。ここで、所定の条件を満たすか否かは、例えば、冷却装置を起動してからの経過時間が所定時間経過したか否か、あるいは冷媒流路を流れる冷媒の温度が所定温度に達したか否かなどによって判断される。すなわち、上記のガス供給装置の運転開始方法では、冷却装置を起動した後所定の条件を満たすことにより、冷媒流路を流れる冷媒がディスペンサから吐出される前のガスを十分に冷却することができる程度まで冷却された状態で、冷却装置を停止しつつ冷凍機を起動し、これによりガスステーションの起動後における冷媒の冷却を冷凍機のみによって行うことができる。このため、上記のガス供給装置の運転開始方法では、冷却装置への液化ガスの供給流量を抑えることができる。
【0016】
本発明に係るガス供給装置の運転開始方法は、ガスステーションのディスペンサへ供給するガスを貯留する蓄圧器と、前記ディスペンサから吐出される前のガスを冷却するための不凍性のブライン液である冷媒が流れる冷媒流路と、前記冷媒を冷却可能な冷凍機と、液化窒素、液化酸素、液化アルゴン又は液化水素である液化ガスの潜熱によって前記冷媒を冷却可能な冷却装置と、を備えるガス供給装置の運転開始方法であって、前記冷却装置および前記冷凍機を起動した後、前記ディスペンサから吐出されるガスが前記冷媒によって冷却されるように前記冷媒流路の冷媒が冷却されていることを判断するための条件である所定の条件を満たしたときに、前記冷却装置を停止する。
【0017】
上記のガス供給装置の運転開始方法では、冷却装置および冷凍機を起動することによって、冷媒流路の冷媒を冷凍機によって冷却することができるとともに冷却装置における液化ガスの潜熱によっても冷却することができる。このため、上記のガス供給装置の運転開始方法では、ディスペンサから吐出される前のガスを十分に冷却することができる程度まで冷媒の温度を下げるのに要する時間が短く、ガスステーションの起動に要する時間を抑えることができる。しかも、上記のガス供給装置の運転開始方法では、冷却装置を起動した後、所定の条件を満たしたときに冷却装置を停止する。すなわち、上記のガス供給装置の運転開始方法では、冷却装置および冷凍機を起動した後所定の条件を満たすことにより、冷媒流路を流れる冷媒がディスペンサから吐出される前のガスを十分に冷却することができる程度まで冷却された状態で、冷却装置を停止し、これによりガスステーションの起動後における冷媒の冷却を冷凍機のみによって行うことができる。このため、上記のガス供給装置の運転開始方法では、冷却装置への液化ガスの供給流量を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、ガスステーションの起動に要する時間を抑えることができるガス供給装置、およびガス供給装置の運転開始方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係るガス供給装置の構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係るガス供給装置の冷媒タンクの構成を示す概略図である。
図3】第1の実施形態に係るガス供給装置の運転開始手順を示すフロー図である。
図4】第2の実施形態に係るガス供給装置の運転開始手順を示すフロー図である。
図5】第3の実施形態に係るガス供給装置の構成を示す概略図である。
図6】第3の実施形態に係るガス供給装置の冷媒タンクの構成を示す概略図である。
図7】第4の実施形態に係るガス供給装置の構成を示す概略図である。
図8】第5の実施形態に係るガス供給装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本実施形態に係る水素ステーション10の構成要素のうち主要な構成要素のみを簡略化して示したものである。したがって、本実施形態に係る水素ステーション10は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成要素を備え得る。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る水素ステーション10の構成の概略を示す図である。水素ステーション10は、ガス供給装置2と、充填設備であるディスペンサ11と、を備える。
【0022】
ガス供給装置2は、水素ガスを圧縮して圧縮ガスを生成し、当該圧縮ガスをディスペンサ11へ供給する。本実施形態では、図1に示すように、ガス供給装置2にはガス製造装置12において製造された水素ガスが供給され、当該水素ガスを圧縮して圧縮ガスを生成することになる。
【0023】
なお、ガス供給装置2に水素ガスを供給する供給源は、ガス製造装置12でなくともよく、例えば水素ガスを貯留したタンク部材からガス供給装置2に水素ガスを供給してもよい。
【0024】
また、本実施形態では、ガス供給装置2が水素ステーション10の構成要素である例を示すため、ガス製造装置12は水素ガスを製造しガス供給装置2へ供給するものであるが、これに限らない。ガス製造装置12は、水素ガス以外の液化ガスを製造する装置であってもよいし、液化ガス以外のガスを製造する装置であってもよい。
【0025】
また、本実施形態では、ガス製造装置12は、水素ステーション10とは独立した装置であるが、これに限らない。水素ステーション10がガス製造装置12を備えていてもよい。
【0026】
ディスペンサ11は、ガス供給装置2からに供給される水素ガスを受け入れる設備である。水素ステーション10に搬入された車両13のタンクには、ディスペンサ11を通じて水素ガスが充填される。車両(タンク搭載装置)13は、例えば燃料電池車である。
【0027】
ガス供給装置2は、流入側流路211と、流入側弁部材212と、圧縮機22と、流出側流路231と、流出側弁部材232a〜232cと、蓄圧器241〜243と、供給路251と、供給路弁部材252a〜252cと、冷却ユニット26と、制御部27と、を備えている。以下では、各構成部材について順に説明する。
【0028】
流入側流路211は、ガス製造装置12において製造された水素ガスが流入する流路である。流入側流路211は、ガス製造装置12と圧縮機22の吸込側とを繋いでいる。
【0029】
流入側弁部材212は、ガス製造装置12から圧縮機22への水素ガスの供給流量を調整する弁である。流入側弁部材212は、流入側流路211の中間部分に取り付けられている。本実施形態では、流入側弁部材212は、圧縮機22の吸込側の圧力を所定の圧力に保つための減圧弁である。
【0030】
圧縮機22は、吸込側から流入した水素ガスを圧縮して圧縮ガスを生成する。圧縮機22は、例えばモータと圧縮部とを有しており、モータの回転に応じて駆動される圧縮部が流入側流路211の水素ガスを吸い込む。なお、圧縮機22には、好ましくは往復動圧縮機(レシプロ圧縮機)が採用されるが、その他のタイプの圧縮機、例えばスクリュー圧縮機であってもよい。
【0031】
流出側流路231は、圧縮機22において生成された水素ガスの圧縮ガスを蓄圧器241〜243へ送る流路である。流出側流路231は、共通路231aと、個別路231b〜231dと、を有している。共通路231aは、圧縮機22の吐出側に繋がっている。個別路231b〜231dは、共通路231aと後述する蓄圧器241〜243とをそれぞれ繋いでいる。圧縮機22から共通路231aおよび個別路231b〜231dを通じて蓄圧器241〜243に吐出された水素ガスは、蓄圧器241〜243のそれぞれに一時的に貯留されることになる。
【0032】
流出側弁部材232a〜232cは、圧縮機22から吐出される水素ガスを蓄圧器241〜243のうちいずれの蓄圧器に供給するかを切り替えるための弁である。流出側弁部材232a〜232cは、個別路231b〜231dのそれぞれに取り付けられている。流出側弁部材232a〜232cは、個別路231b〜231dを開閉可能である。
【0033】
蓄圧器241〜243は、水素ガスを内部に貯留可能な容器である。蓄圧器241〜243は、それぞれ同じ設計圧力(例えば82MPa)に設計されている。なお、本実施形態では、ガス供給装置2は蓄圧器241〜243の3つの蓄圧器を有しているが、これに限らず、蓄圧器の数は任意である。
【0034】
供給路251は、蓄圧器241〜243に貯留された水素ガスをディスペンサ11へ送る流路である。供給路251は、個別路231b〜231dのうち流出側弁部材232a〜232cよりも蓄圧器241〜243側(下流側)の部位にそれぞれ繋がる複数の個別路251a〜251cと、当該各個別路251a〜251cが繋がるとともにディスペンサ11へ延びる供給路251と、を含む。
【0035】
供給路弁部材252a〜252cは、蓄圧器241〜243のうちいずれの蓄圧器からディスペンサ11へ水素ガスを供給するかを切り替えるための弁である。供給路弁部材252a〜252cは、供給路251の各個別路251a〜251cに取り付けられており、当該各個別路251a〜251cを開閉可能である。
【0036】
冷却ユニット26は、ディスペンサ11から吐出される前の水素ガスを冷却する役割を有する。ディスペンサ11から車両13のタンクへ水素ガスを供給する際には、ディスペンサ11は、所定のプロトコルに従って、冷却ユニット26により所定温度に冷却された水素ガスを吐出することになる。
【0037】
冷却ユニット26は、冷媒流路261と、ポンプ262と、冷凍機263と、冷却装置264と、を有している。
【0038】
冷媒流路261は、ディスペンサ11から吐出される前の水素ガスを冷却するための冷媒が流れる流路である。冷媒流路261を流れる冷媒は、例えば、不凍性のブライン液である。
【0039】
冷媒流路261は、循環路261aと、冷媒タンク261bと、を備えている。循環路261aは、冷媒が循環可能なように環状に形成された流路である。冷媒タンク261bは、循環路261aの途中に設けられており、当該循環路261aを循環する冷媒の一部が貯留される。
【0040】
ポンプ262は、冷媒流路261内の冷媒を圧送することにより、当該冷媒を循環させる。ポンプ262は、循環路261aに設けられている。
【0041】
ここで、冷媒流路261の循環路261aには、温度センサT1が取り付けられている。温度センサT1は、冷媒流路261を循環する冷媒の温度を検知するセンサである。なお、温度センサT1は、冷媒流路261の冷媒タンク261bに取り付けられていてもよい。
【0042】
また、ディスペンサ11には、熱交換器A1が内蔵されており、供給路251の共通路251dと、冷媒流路261の循環路261aとは、当該熱交換器に接続されている。すなわち、熱交換器A1では、供給路251の共通路251dを流れる水素ガスと、冷媒流路261の循環路261aを流れる冷媒とが互いに混合すること無く流れ、当該水素ガスと当該冷媒とが熱交換されるように構成されている。これにより、ディスペンサ11内において、供給路251を流れる水素ガスは、循環路261aを流れる冷媒と熱交換を行い、所定温度まで冷却されることになる。
【0043】
なお、本実施形態では、循環路261aの一部がディスペンサ11内に配置されることにより、当該ディスペンサ11内において水素ガスと冷媒との熱交換が行われるが、これに限らない。例えば、ディスペンサ11よりも上流側において、共通路251dを流れる水素ガスと循環路261aを流れる冷媒との間で熱交換が行われるように、当該循環路261aを配置してもよい。
【0044】
冷凍機263は、冷媒流路261を流れる冷媒を冷却することが可能である。本実施形態では、図1に示すように、ガス供給装置2に内蔵された熱交換器A2内に、冷凍機263の一部と冷媒流路261の循環路261aとが接続されている。すなわち、熱交換器A2では、冷凍機263を流れる冷却流体と、冷媒流路261の循環路261aを流れる冷媒とが互いに混合すること無く流れ、当該冷却流体と当該冷媒とが熱交換されるように構成されている。このため、冷凍機263は、熱交換器A1において水素ガスとの熱交換により温度が上昇した冷媒を、熱交換器A2において冷却することが可能である。
【0045】
冷却装置264は、冷媒流路261を流れる冷媒を液化ガスの潜熱によって冷却することが可能である。なお、ここでいう液化ガスとは、常温で気体である流体が、冷却されたり圧縮されたりすることにより液体となったものをいう。本実施形態では、冷却装置264は、窒素ガスの潜熱によって冷媒流路261を流れる冷媒を冷却可能に構成されている。なお、冷却装置264は、酸素ガスやアルゴンガス等の潜熱によって冷媒流路261を流れる冷媒を冷却可能に構成されてもよい。
【0046】
冷却装置264は、液化ガスタンク265と、液化ガス流路266と、流量調整弁267と、を有している。
【0047】
液化ガスタンク265は、液体窒素が貯留されるタンクである。
【0048】
液化ガス流路266は、液化ガスタンク265に貯留された液体窒素が流出する流路である。液化ガス流路266は、熱交換部266aと、タンク導入部266bと、タンク導出部266dと、ポンプ導入部266cと、ポンプ導出部266eと、排出部266fと、を含んでいる。
【0049】
熱交換部266aは、当該熱交換部266aを流れる液体窒素と冷媒流路261を流れる冷媒との間で熱交換を行う部位である。熱交換部266aは、液化ガスタンク265内の液体窒素が当該熱交換部266aに流入可能なように、液化ガスタンク265に繋がっている。また、本実施形態では、図1に示すように、ガス供給装置2に内蔵された熱交換器A3内に、熱交換部266aと冷媒流路261の循環路261aとが接続されている。すなわち、熱交換器A3では、熱交換部266aを流れる液化窒素と、冷媒流路261の循環路261aを流れる冷媒とが互いに混合すること無く流れ、当該液体窒素と当該冷媒とが熱交換されるように構成されている。このため、熱交換部266aは、液体窒素と冷媒との熱交換によって当該液体窒素が気化することによる潜熱を利用し、冷媒を冷却することが可能である。
【0050】
タンク導入部266bは、熱交換部266aにおいて液体窒素が気化することにより発生した窒素ガスを冷媒タンク261bに導入する部位である。タンク導入部266bは、一端が熱交換部266aに繋がるとともに、他端が冷媒タンク261bに繋がっている。本実施形態では、図2に示すように、冷媒タンク261bの内部に所定量の冷媒が貯留されており、当該貯留された冷媒よりも上方に形成されたガス流入口261cを通じて窒素ガスが冷媒タンク261bに導入されるように、タンク導入部266bの他端がガス流入口261cに繋がっている。
【0051】
タンク導出部266dは、冷媒タンク261b内に導入された窒素ガスを冷媒流路261の外部に導出する部位である。本実施形態では、タンク導出部266dは、図2に示すように、冷媒タンク261bに貯留された冷媒よりも上方に設けられたガス流出口261dを通じて窒素ガスが冷媒タンク261bの外部に導出されるように、ガス流出口261dに繋がっている。なお、冷媒タンク261bが密閉構造でない場合には、タンク導出部266dはなくともよく、冷媒タンク261bの内部と外気とが通じる部位から窒素ガスが漏れ出るように構成してもよい。
【0052】
ポンプ導入部266cは、熱交換部266aにおいて液体窒素が気化することにより発生した窒素ガスをポンプ262のケーシング内に導入する部位である。本実施形態では、ポンプ導入部266cの一端は、タンク導入部266bの中間部分に繋がっており、ポンプ導入部266cの他端は、ポンプ262のケーシングに繋がっている。これにより、熱交換部266aから流出した窒素ガスの一部は、タンク導入部266bを流れる途中においてポンプ導入部266cへ分岐し、ポンプ262のケーシング内へ流入することになる。
【0053】
なお、ポンプ導入部266cの一端は、タンク導入部266bの中間部分に繋がっていなくともよく、例えば、熱交換部266aに直接繋がっていてもよい。
【0054】
ポンプ導出部266eは、ポンプ262のケーシング内に導入された窒素ガスを冷媒流路261の外部に導出する部位である。ポンプ導出部266eは、ポンプ262のケーシング内の窒素ガスを当該ケーシングの外部に導出するように、当該ケーシングに繋がっている。なお、ポンプ262のケーシングが密閉構造でない場合には、ポンプ導出部266eはなくともよく、当該ケーシングの内部と外気とが通じる部位から窒素ガスが漏れ出るように構成してもよい。
【0055】
排出部266fは、熱交換部266aにおいて発生する窒素ガスのうち、冷媒タンク261bおよびポンプ262のケーシングに導入される分を除く窒素ガスをガス供給装置2の外部に排出する部位である。排出部266fは、熱交換部266aからタンク導入部266bへと流入した窒素ガスの一部を排出するように、当該タンク導入部266bに繋がっている。本実施形態では、排出部266fは、タンク導入部266bのうち、当該タンク導入部266bとポンプ導入部266cとの接続点よりも上流側の部位に繋がっている。
【0056】
流量調整弁267は、当該流量調整弁267の開度を調整することにより、液化ガス流路266における窒素ガスの流量を調整する弁部材である。本実施形態では、流量調整弁267は、タンク導入部266bのうち、ポンプ導入部266cとタンク導入部266bとの接続点および排出部266fとタンク導入部266bとの接続点よりも上流側の部位に取り付けられている。これにより、流量調整弁267が全閉状態のときには、液化ガスタンク265に溜まった液体窒素は、タンク導出部266d、ポンプ導出部266e、および排出部266fから排出されることがなく、熱交換部266aにおいて冷媒の冷却は行われないことになる。また、流量調整弁267が所定の開度にて開いた状態のときには、液化ガスタンク265に溜まった液体窒素は、熱交換部266aにおいて気化した後タンク導出部266d、ポンプ導出部266e、および排出部266fから排出されることになり、熱交換部266aにおいて窒素ガスの潜熱によって冷媒の冷却が行われることになる。
【0057】
なお、本実施形態では、流量調整弁267は、液化ガス流路266のうち熱交換部266aよりも下流側の部位に取り付けられているが、これに限らず、液化ガスタンク265と熱交換器A3との間の部位に取り付けられていてもよい。
【0058】
制御部27は、例えば図略のROM、RAM等からなる記憶装置と、CPU、MPU等からなる演算装置と、を備えており、ROM等に記憶されたプログラムをMPU等が実行することにより、以下の各種制御を行う。なお、図1では、説明の便宜上、制御部27を1つの矩形にて示すが、制御部27の機能を実現する手段は任意であって、1つの構成要素によって制御部27の全ての機能が実現されるものではない。
【0059】
制御部27は、流出側弁部材232a〜232cの開閉制御、供給路弁部材252a〜252cの開閉制御、ポンプ262の起動/停止制御、冷凍機263の起動/停止制御、および流量調整弁267の開度調整制御を行う。また、制御部27は、温度センサT1が検知した温度情報を受信し、当該温度情報が所定の条件を満たすか否かを判定する。
【0060】
ここで、図3を参照しながら、水素ステーション10の運転方法について説明する。
【0061】
図3に示すフロー図は、例えば、夜間に水素ステーション10が停止されることにより冷媒流路261内の冷媒が外部入熱によって外気と同程度の温度に昇温された状態で、水素ステーション10を再び起動させてディスペンサ11から車両13のタンクへ水素ガスを供給する際の運転方法である。このため、図3における開始時点においては、供給路弁部材252a〜252cおよび流量調整弁267が閉じられており、ポンプ262および冷凍機263が停止している。
【0062】
水素ステーション10における作業者は、例えば、水素ステーション10が備える起動スイッチの入力を行うことにより、水素ステーション10の起動を開始する。なお、本実施形態において、水素ステーション10が起動している状態とは、ディスペンサ11から車両13のタンクへの水素ガスの供給が可能な状態を指す。
【0063】
前記起動スイッチの入力が行われると、当該起動スイッチからガス供給装置2の制御部27へ起動開始信号が送信される(ステップST1)。これにより、制御部27は、ディスペンサ11から車両13のタンクへの水素ガスの供給が可能になるように、以下の手順で、ポンプ262および冷凍機263の起動制御と流量調整弁267の開度調整制御とを行う。
【0064】
ステップST1にて起動開始信号を受信した制御部27は、ポンプ262の起動制御を行うとともに、流量調整弁267を所定の開度にて開く制御を行う(ステップST2)。これにより、冷媒流路261内を冷媒が循環するとともに、液化ガスタンク265内の液体窒素が流量調整弁267の開度に応じた所定の流量にて液化ガス流路266の下流側へと流れることになる。このとき、熱交換器A3内において、循環路261aを流れる冷媒と熱交換部266aを流れる液体窒素との間で熱交換が行われ、当該液体窒素が気化することにより窒素ガスが発生する。熱交換器A3では、この窒素ガスの潜熱によって、循環路261aを流れる冷媒が冷却されることになる。
【0065】
なお、ステップST2にて流量調整弁267を開くことにより、熱交換部266aからタンク導入部266bへと流入した窒素ガスは、その一部が冷媒タンク261b内およびポンプ262のケーシング内に導入されるとともに、残りが排出部266fから排出される。これにより、流量調整弁267が開いている期間は、冷媒タンク261b内およびポンプ262のケーシング内に窒素ガスが充満することになる。
【0066】
ステップST2にて流量調整弁267を開き、熱交換部266aを流れる窒素ガスの潜熱によって冷媒流路261を流れる冷媒の冷却を開始した後、制御部27は、当該冷媒の温度が予め設定された所定温度以下であるか否かを判定する(ステップST3)。具体的には、例えば、制御部27は、冷媒流路261に取り付けられた温度センサT1が検知した温度情報を受信し、当該温度情報に基づいて、冷媒の温度が予め設定された所定温度以下であるか否かを判定する。なお、この所定温度は、熱交換器A1において、ディスペンサから吐出される前の水素ガスを十分に冷却することができる程度の温度に設定される。
【0067】
冷媒の温度が予め設定された所定温度を超えていると判定した制御部27は(ステップST3にてNO)、新たな制御を行うことなく、冷媒の温度が所定温度以下になるまで熱交換部266aにおける冷媒の冷却を継続する。
【0068】
一方、冷媒の温度が予め設定された所定温度以下であると判定した制御部27は(ステップST3にてYES)、流量調整弁267を閉じる制御を行う(ステップST4)。これによって、液化ガスタンク265から液化ガス流路266の下流側への液体窒素の流出が停止し、熱交換部266aにおける冷媒の冷却が終了することになる。
【0069】
次に、制御部27は、冷凍機263の起動制御を行う(ステップST5)。これにより、冷媒流路261の冷媒は、熱交換器A1における水素ガスとの熱交換によって昇温されたとしても、熱交換器A2において冷凍機263を流れる冷却流体により冷却され、所定温度を維持可能となる。そして、ステップST1〜ステップST5のステップを経て、ディスペンサ11から車両13のタンクへの水素ガスの供給が許容され、水素ステーション10が起動された状態となる。
【0070】
なお、本実施形態では、制御部27は、ステップST4において流量調整弁267を閉じる制御を行った後に、ステップST5において冷凍機263を起動する制御を行ったが、これに限らない。制御部27は、流量調整弁267の閉制御と冷凍機263の起動制御とを同時に行ってもよいし、冷凍機263の起動制御を行った後に流量調整弁267の閉じ制御を行ってもよい。すなわち、ステップST3にてYESの場合にステップST4が行われるならば、ステップST4とステップST5との順序は特に限定されない。
【0071】
ステップST1〜ステップST5のステップを経て水素ステーションが起動されると、作業者は、ディスペンサ11から車両13のタンクへの水素ガスの供給を開始する(ステップST6)。具体的に、作業者から水素ガスの供給信号を受けた制御部27は、供給路弁部材252a〜252cのいずれかを開く制御を行うことにより、蓄圧器241〜243のいずれかからディスペンサ11へと水素ガスを供給する。これにより、ディスペンサ11は、所定のプロトコルに基づいて水素ガスを吐出し、車両13のタンクに水素ガスが充填される。
【0072】
以上のように、本実施形態に係るガス供給装置2では、水素ステーション10の起動に際して、制御部27は、まず冷却装置264を起動するように流量調整弁267を開く制御を行う。これによって、冷却装置264は、冷媒流路261の冷媒と液化ガス流路266の液体窒素との熱交換によって発生した窒素ガスの潜熱により、冷媒の温度を素早く下げることができる。このため、ガス供給装置2では、ディスペンサ11から吐出される前の水素ガスを十分に冷却することができる程度まで冷媒の温度を下げるのに要する時間が短く、水素ステーション10の起動に要する時間を抑えることができる。しかも、ガス供給装置2は、冷却装置264に加えて冷凍機263を備えており、制御部27は、冷却装置264を起動するように流量調整弁267を開く制御を行った後、冷媒流路261を流れる冷媒がディスペンサ11から吐出される前の水素ガスを十分に冷却することができる程度の所定温度まで冷却された場合に、冷却装置264を停止しつつ冷凍機263を起動する。これにより、水素ステーション10の起動後は、冷凍機263のみによって冷媒流路261を流れる冷媒が冷却されることになり、冷却装置264の冷媒タンク261bへの液体窒素の供給流量を抑えることができる。
【0073】
さらに、本実施形態に係るガス供給装置2では、熱交換部266aにおいて、冷媒と液体窒素との熱交換によって当該液体窒素から発生した窒素ガスは、タンク導入部266bを通じて冷媒タンク261bに流入することになる。このため、ガス供給装置2では、水素ステーション10の起動の際に冷媒を冷却するための窒素ガスを用いて、冷媒タンク261bに貯留された冷媒が空気に触れる可能性を低減できる。これにより、冷媒の腐食を防止することができる。
【0074】
さらに、本実施形態に係るガス供給装置2では、ポンプ導入部266cを通じて、熱交換部266aにおける冷媒と液体窒素との熱交換によって発生した窒素ガスをポンプ262のケーシングに導入する。ここで、ポンプ262のケーシングは、当該ポンプ262の内部を通過する冷媒によって冷却されているため、当該ポンプ262のケーシング内に空気が入り込むと、結露が生じる虞がある。ガス供給装置2では、ポンプ262のケーシング内に窒素ガスを導入することによって、当該ケーシング内に空気が入り込む可能性を低減することができ、これにより当該ケーシングにおける結露の発生を防止することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、冷媒タンク261b内およびポンプ262のケーシング内の双方に窒素ガスが導入されるように、液化ガス流路266がタンク導入部266bおよびポンプ導入部266cを有しているがこれに限らない。冷媒タンク261b内およびポンプ262のケーシング内のいずれか一方にのみ窒素ガスが導入されるように、液化ガス流路266がタンク導入部266bおよびポンプ導入部266cのいずれか一方のみを有していてもよい。また、液化ガス流路266は、タンク導入部266bおよびポンプ導入部266cの双方を有していなくともよく、熱交換部266aにおいて発生した窒素ガスの全てが排出部266fから排出されてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、制御部27は、ステップST3にて冷媒の温度が予め設定された所定温度以下であるという条件を満たす場合に、ステップST4にて流量調整弁267を閉じる制御を行うが、ステップST3における判定条件は冷媒の温度に限定されない。制御部27は、冷媒の温度が予め設定された所定温度以下であるという条件を満たすか否かを判定するのではなく、例えば、流量調整弁267を開く制御を行ってから予め設定された所定時間が経過したという条件を満たすか否かを判定してもよい。この場合、所定時間は、ステップST2にて流量調整弁267を開くことによって冷却装置264による冷媒の冷却を開始した後、当該冷媒がディスペンサから吐出される前の水素ガスを十分に冷却することができる程度の温度に至るまでに要する時間として予め設定される時間である。ステップST3における判定条件として流量調整弁267を開いたからの経過時間を用いる場合、冷媒流路261に温度センサT1を取り付ける必要がなく、部品点数の削減につながる。
【0077】
また、本実施形態では、水素ステーション10の起動開始信号を受けた制御部27が、図3のフローにてガス供給装置2を起動するが、これに限らず、制御部27がなす図3のフローを作業者の手によって行ってもよい。
【0078】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るガス供給装置2について図4を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1の実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0079】
第2の実施形態では、水素ステーション10の構成は第1の実施形態と同様であるものの、当該水素ステーション10の運転方法が第1の実施形態とは異なっている。
【0080】
第2の実施形態では、図4に示すように、ステップST1にて送信された起動開始信号を受けた制御部27は、流量調整弁267を開きつつ(ステップST2)、冷凍機263を起動する制御を行う(ステップST5)。これにより、冷媒流路261を流れる冷媒は、冷凍機263によって冷却されるとともに、冷却装置264の熱交換部266aにおいて発生した窒素ガスの潜熱によっても冷却されることになる。
【0081】
なお、第2の実施形態では、制御部27は、ステップST2にて流量調整弁267を開く制御を行った後に、ステップST5にて冷凍機263を起動する制御を行うが、これに限らない。制御部27は、流量調整弁267を開く制御と冷凍機263の起動制御とを同時に行ってもよいし、冷凍機の起動制御を行った後に流量調整弁267を開く制御を行ってもよい。
【0082】
ステップST2およびステップST5を経て、冷媒流路261の冷媒の冷却を開始した後、制御部27は、当該冷媒の温度が予め設定された所定温度以下であるか否かを判定する(ステップST3)。その結果、制御部27は、冷媒の温度が所定温度を超えていると判定した場合に(ステップST3にてNO)、新たな制御を行うことなく、再びステップST3に戻る。これにより、冷媒の温度が所定温度以下になるまで、冷凍機263による冷媒の冷却と、熱交換部266aにおける冷媒の冷却と、の両方の冷却が継続される。一方、制御部27は、冷媒の温度が所定温度以下であると判定した場合に(ステップST3にてYES)、流量調整弁267を閉じる制御を行う(ステップST4)。これにより、冷却装置264の熱交換部266aにおける冷媒の冷却は停止されるものの、冷凍機263による冷媒の冷却は継続される。そして、これらのステップを経て、ディスペンサ11から車両13のタンクへの水素ガスの供給が許容され、水素ステーション10が起動された状態になった後に、ディスペンサ11から車両13のタンクへ水素ガスを供給開始する(ステップST6)。
【0083】
第2の実施形態に係るガス供給装置2では、水素ステーション10の起動に際して、制御部27は、まず冷却装置264および冷凍機263を起動する制御を行う。これにより、冷媒流路261を流れる冷媒は、冷凍機263によって冷却されつつ、冷却装置264における窒素ガスの潜熱によってさらに冷却されることになる。このため、ディスペンサ11から吐出される前の水素ガスを十分に冷却することができる程度まで冷媒の温度を下げるのに要する時間が短く、水素ステーション10の起動に要する時間を抑えることができる。しかも、制御部27は、冷却装置264および冷凍機263を起動する制御を行った後、ディスペンサ11から吐出される前の水素ガスを十分に冷却することができる程度まで冷媒が冷却されたと判断される場合に、冷却装置264の停止するように流量調整弁267を閉じる制御を行う。これにより、水素ステーション10の起動後は、冷凍機263のみによって冷媒流路261を流れる冷媒が冷却されることになり、冷却装置264への液体窒素の供給流量を抑えることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、水素ステーション10の起動開始信号を受けた制御部27が、図4のフローにてガス供給装置2を起動するが、これに限らず、制御部27がなす図4のフローを作業者の手によって行ってもよい。
【0085】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るガス供給装置2について図5および図6を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1の実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0086】
第3の実施形態では、冷却装置264の構造が第1の実施形態とは異なっている。
【0087】
第3の実施形態では、冷却装置264は、液化ガスタンク265と、液化ガス流路268と、流量調整弁267と、を備えており、液化ガス流路268は、液化ガスタンク265に貯留された液体窒素を冷媒タンク261bに導入することによって、当該冷媒タンク261b内の冷媒を冷却する。
【0088】
具体的に、液化ガス流路268は、図5および図6に示すように、導入側流路268aと、タンク内流路268bと、導出側流路268cと、を有している。
【0089】
導入側流路268aは、一端が液化ガスタンク265に繋がっており、他端が冷媒タンク261bの導入口に繋がっている。流量調整弁267は、同導入側流路268aに取り付けられている。
【0090】
タンク内流路268bは、一端が導入側流路268aに繋がっており、他端が冷媒タンク261bの導出口に繋がっている。これにより、タンク内流路268bは、冷媒タンク261bに貯留された冷媒に浸る位置において、例えばコイル形状をなすように配置される。
【0091】
導出側流路268cは、一端がタンク内流路268bの他端に繋がっており、他端が冷媒タンク261bの外部に位置している。
【0092】
第3の実施形態では、制御部27が流量調整弁267を開く制御を行うと、液化ガスタンク265に貯留された液体窒素は、導入側流路268aを通って冷媒タンク261b内のタンク内流路268bに流れ込み、当該タンク内流路268bにおいて冷媒との熱交換により気化して窒素ガスとなる。これにより、窒素ガスの潜熱によって冷媒が冷却されることになる。そして、タンク内流路268bの窒素ガスは、導出側流路268cを通って冷媒タンク261bの外部へ排出される。この場合、第1の実施形態における熱交換器A3は不要となる。
【0093】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るガス供給装置2について図7を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1の実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0094】
第1の実施形態は、液化ガスタンク265で貯留され、熱交換部266aで気化される液化ガス(窒素ガス)を、冷媒タンク261bとポンプ262を介して冷媒流路261の外部に導出する構成を備えている。これに対し、第4の実施形態は、液化ガスタンク265で貯留され、熱交換部266aで気化される液化ガスに液化水素ガスを採用し、熱交換部266aで気化された液化水素ガス(水素ガス)を冷媒タンク261bとポンプ262を介して流入側流路211に導入する構成を備えている。すなわち、第4の実施形態は、タンク導出部266dとポンプ導出部266eが合流し、その合流した部位と流入側流路211の流入側弁部材212より上流の部位とを接続する戻り流路266fを備えている。また、戻り流路266fの中間部分には、その戻り流路266fを流れる水素ガスを圧送するためのブロア266gが設けられている。
【0095】
また、第1の実施形態は排出部266fを備えているが、第4の実施形態はこれを備えていない。その一方、第4の実施形態には、液化ガスタンク265の上部から延び、その液化ガスタンク265の内部で、その外部からの自然入熱により気化した水素ガス(ボイルオフガス)を、戻り流路266fのブロア266gが設けられている部位より上流側の部位に導入するボイルオフガス流路268が設けられている。そして、そのボイルオフガス流路268には、そのボイルオフガス流路268を流れる水素ガス(ボイルオフガス)の一次側(上流側)の圧力を自律的に調整するための背圧弁269が設けられている。背圧弁269は、ボイルオフガス流路268を流れる水素ガス(ボイルオフガス)の一次側(上流側)の圧力が一定値に達するまでは閉じられ、その圧力が一定値を超えたら開けられるよう、構成されている。また、ボイルオフガス流路268のうち背圧弁269と液化ガスタンク265との間の部位と、タンク導入部266bのうち熱交換部266aと流量調整弁267との間の部位と、を接続する分岐流路270が設けられている。
【0096】
この第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、図3に示した水素ステーション10の運転方法を採用することができる。ただし、第4の実施形態では、制御部27は、流量調整弁267を開く場合には、それと同期して、ブロア266gを起動する。また、制御部27は、流量調整弁267を完全に閉じる場合には、それと同期して、ブロア266gを停止する。
【0097】
第4の実施形態は、上記したとおり、液化ガスタンク265で貯留され、熱交換部266aで気化された液化水素ガス(水素ガス)を、冷媒タンク261bとポンプ262を介して流入側流路211に導入する構成を備える。従って、第4の実施形態では、ポンプ262のケーシング内に導入した水素ガスによる冷媒の腐食の防止、ポンプ262のケーシング内に導入した水素ガスによる結露の防止などの第1の実施形態と同等の効果に加え、水素ガスを流入側流路211に導入することで、水素ガスを外気に放出や漏洩させることなく、その水素ガスを圧縮機22、ディスペンサ11を介して車両11に供給することができる。また、ボイルオフガス流路268、分岐流路270を通じて、液化ガスタンク265内でいわゆるボイルオフガスとして発生する水素ガスをも無駄なく活用できる。
【0098】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るガス供給装置2について図8を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、第3の実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第3の実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0099】
第5の実施形態は、液化ガスタンク265で貯留され、冷媒タンク261b内のタンク内流路268b(図8ではタンク内流路268bを図示しない。)において冷媒との熱交換により気化される液化ガスに液化水素ガスを採用している。また、第3の実施形態では、導出側流路268cは、一端がタンク内流路268bの他端に繋がっており、他端が冷媒タンク261bの外部に位置しているのに対し、第5の実施形態では、導出側流路268cは、一端がタンク内流路268bの他端に繋がっており、他端が流入側流路211の流入側弁部材212より下流の部位(圧縮機11より上流の部位)に位置している。そして、第5の実施形態には、液化ガスタンク265の上部から延び、その液化ガスタンク265の内部で、その外部からの自然入熱により気化した水素ガス(ボイルオフガス)を、導出側流路268cの中間部分に導入するボイルオフガス流路271が設けられている。そして、そのボイルオフガス流路271には、そのボイルオフガス流路271を流れる水素ガス(ボイルオフガス)の一次側(上流側)の圧力を自律的に調整するための背圧弁272が設けられている。背圧弁272は、ボイルオフガス流路271を流れる水素ガス(ボイルオフガス)の一次側(上流側)の圧力が一定値に達するまでは閉じられ、その圧力が一定値を超えたら開けられるよう、構成されている。
【0100】
第5の実施形態では、第1の実施形態と同等の効果に加え、水素ガスを流入側流路211に導入することで、水素ガスを外気に放出や漏洩させることなく、その水素ガスを圧縮機22、ディスペンサ11を介して車両11に供給することができる。また、ボイルオフガス流路271を通じて、液化ガスタンク265内でいわゆるボイルオフガスとして発生する水素ガスをも無駄なく活用できる。
【符号の説明】
【0101】
2 ガス供給装置
10 水素ステーション(ガスステーション)
11 ディスペンサ
27 制御部
241〜243 蓄圧器
261 冷媒流路
261b 冷媒タンク
263 冷凍機
264 冷却装置
266 液化ガス流路
266a 熱交換部
266b タンク導入部
266c ポンプ導入部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8