特許第6831322号(P6831322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831322
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】被覆の平坦化
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/42 20060101AFI20210208BHJP
   C03C 17/38 20060101ALI20210208BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   C03C17/42
   C03C17/38
   B32B17/06
【請求項の数】25
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-520020(P2017-520020)
(86)(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公表番号】特表2017-521352(P2017-521352A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】GB2015051919
(87)【国際公開番号】WO2016001661
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2018年6月28日
(31)【優先権主張番号】1411822.8
(32)【優先日】2014年7月2日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】サイモン ジェイムス ハースト
(72)【発明者】
【氏名】キャリカス スクマー ヴァーマ
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−119307(JP,A)
【文献】 特開2013−022799(JP,A)
【文献】 特開平04−269714(JP,A)
【文献】 特開2003−308741(JP,A)
【文献】 特表2014−508091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重ガラスユニットの表面1または表面4として使用されるガラス板の露出表面に適した平坦化された被覆を提供するために、ガラス板上の被覆の表面を平坦化する方法であって、
ガラス板の主表面上に下層で直接または間接的に被覆されたガラス板を提供することと、
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、前記下層上に堆積させることと、を含み、
前記1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換することと、
前記下層が、透明導電被覆(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含むことと、
前記TCCに基づく少なくとも1つの層の各層が、少なくとも20nmであるが、最大600nmの厚さを有することと、
前記1つ以上のシラザンに基づく層を堆積させた後、並びに/或いは、前記1つ以上のシラザンに基づく層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換した後に、前記板が、ASTM D 1003−61標準に従って測定された0.2%〜1.0%のヘイズ値を呈することと、を更に含む、方法。
【請求項2】
前記シラザンが、ペルヒドロポリシラザンなどのポリシラザン、ならびに/またはポリメチルシラザン及び/もしくはポリジメチルシラザンなどのオルガノポリシラザンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリシラザンが、1000〜200,000g/molの数平均分子量を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層が、スピン被覆、スロットダイ被覆、噴霧、ローラー被覆、浸漬、及び/または印刷によって堆積される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記変換が、前記1つ以上のシラザンに基づく層を堆積させた後に、前記板を熱、UV照射、及び/またはIR照射で処理することを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記熱処理が、前記板を少なくとも100℃であるが、最高700℃で加熱することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理が、前記板を前記温度で少なくとも30分であるが、最長4時間にわたって加熱することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理が、前記板を前記温度に少なくとも20分の期間にわたって加熱することをさらに含む、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記UV及び/またはIR照射処理が、前記1つ以上のシラザンに基づく層を、UV及び/またはIR照射に少なくとも3分であるが、最長1時間にわたって露出することを含む、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも10nmであるが、最大400nmの厚さを有する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも100nmの厚さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層の表面が、最大2nmの算術平均表面高さ値Saを有する請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記1つ以上のシラザンに基づく層を堆積させた後、及び/または前記1つ以上のシラザンに基づく層を、シリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換した後に、前記板が、最大0.6%のヘイズを呈する、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記TCCが、透明導電酸化物(TCO)であり、前記TCOが、フッ素をドープした酸化スズ(SnO:F)、アルミニウム、ガリウム、もしくはホウ素をドープした酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、スズ酸カドミウム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In、In−ZnO(IZO)、In:Ti、In:Mo、In:Ga、In:W、In:Zr、In:Nb、In2−2xSn(MはZnもしくはCuである)、ZnO:F、Zn0.9Mg0.1O:Ga、(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、SnO:Co、In:Ni、In:(Sn,Ni)、ZnO:Mn、及び/またはZnO:Coのうちの1つ以上である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記TCCに基づく少なくとも1つの層の各層が、少なくとも100nmの厚さを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記下層が、少なくとも1つのさらなる層をさらに含み、前記少なくとも1つのさらなる層が、金属またはメタロイドの酸化物、例えばSiO、SnO、TiO、酸窒化ケイ素、及び/または酸化アルミニウムに基づく、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つのさらなる層の各層が、少なくとも10nmであるが、最大50nmの厚さを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記下層が、前記ガラス板から順に、
下部反射防止層と、
銀系機能層と、
少なくとも1つのさらなる反射防止層と、を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、少なくとも1つの上層を、前記1つ以上のシラザンに基づくならびに/またはシリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層上に堆積させることをさらに含む、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに従って被覆されたガラス板が生成される、被覆されたガラス板の製造方法
【請求項21】
ガラス板上の被覆の表面を平坦化して、二重ガラスユニットの表面1または表面4として使用されるガラス板の露出表面に適した平坦化された被覆を提供するためのシラザンの使用であって、
ガラス板の主表面上に下層で直接または間接的に被覆されたガラス板を提供することと、
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、前記下層上に堆積させることと、を含み、
前記1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換することと、
前記下層が、透明導電被覆(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含むことと、
前記TCCに基づく少なくとも1つの層の各層が、少なくとも20nmであるが、最大600nmの厚さを有することと、
前記1つ以上のシラザンに基づく層を堆積させた後、並びに/或いは、前記1つ以上のシラザンに基づく層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換した後に、前記板が、ASTM D 1003−61標準に従って測定された0.2%〜1.0%のヘイズ値を呈することと、を更に含む、シラザンの使用。
【請求項22】
被覆されたガラス板によって呈されるヘイズを低減するためのシラザンの使用であって、
ガラス板の主表面上に下層で直接または間接的に被覆されたガラス板を提供することと、
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、前記下層上に堆積させることと、
前記1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換することと、を含み、
前記下層が、前記ガラス板から順に、
少なくとも15nmであるが最大35nmの厚さを有する、SnOに基づく少なくとも1つの層と、
少なくとも15nmであるが最大35nmの厚さを有する、SiOに基づく少なくとも1つの層と、
少なくとも300nmであるが最大600nmの厚さを有する、SnO:Fに基づく少なくとも1つの層と、を含む、シラザンの使用。
【請求項23】
二重ガラスユニットの表面1または表面4として使用されるガラス板の露出表面に適した平坦化された被覆を含み、
少なくとも以下の層、すなわち
ガラス板と、
下層と、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層と、を順に含む、被覆されたガラス板であって、
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の表面が、最大2nmの算術平均表面高さ値Saを有し、
前記下層が、透明導電被覆(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含み、
前記TCCに基づく少なくとも1つの層の各層が、少なくとも20nmであるが最大600nmの厚さを有し、
前記板が、ASTM D 1003−61標準に従って測定された0.2%〜1.0%のヘイズ値を呈する、被覆されたガラス板。
【請求項24】
二重ガラスユニットの表面1または表面4として使用されるガラス板の露出表面に適した平坦化された被覆を含み、
少なくとも以下の層、すなわち
ガラス板と、
下層と、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層と、を順に含む、被覆されたガラス板であって、
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも100nmの厚さを有し、
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を部分的にまたは完全に変換することによって得られ、
前記下層が、透明導電被覆(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含み、
前記TCCに基づく少なくとも1つの層の各層が、少なくとも20nmであるが最大600nmの厚さを有し、
前記板が、ASTM D 1003−61標準に従って測定された0.2%〜1.0%のヘイズ値を呈する、被覆されたガラス板。
【請求項25】
二重ガラスユニットの表面1または表面4として使用されるガラス板の露出表面に適した平坦化された被覆を含み、
少なくとも以下の層、すなわち
ガラス板と、
下層と、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層と、を順に含む、被覆されたガラス板であって、
前記下層が、透明導電被覆(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含み、前記TCCが、透明導電酸化物(TCO)であり、前記TCOが、フッ素をドープした酸化スズ(SnO:F)、アルミニウム、ガリウム、もしくはホウ素をドープした酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、スズ酸カドミウム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In、In−ZnO(IZO)、In:Ti、In:Mo、In:Ga、In:W、In:Zr、In:Nb、In2−2xSn(MはZnもしくはCuである)、ZnO:F、Zn0.9Mg0.1O:Ga、(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、SnO:Co、In:Ni、In:(Sn,Ni)、ZnO:Mn、及び/またはZnO:Coのうちの1つ以上であり、
前記TCCに基づく少なくとも1つの層の各層が、少なくとも20nmであるが、最大600nmの厚さを有し、
前記下層が、少なくとも1つのさらなる層をさらに含み、前記少なくとも1つのさらなる層が、金属またはメタロイドの酸化物、例えばSiO、SnO、TiO、酸窒化ケイ素、及び/または酸化アルミニウムに基づき、
前記金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つのさらなる層の各層が、少なくとも10nmであるが、最大50nmの厚さを有し、
前記シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも100nmの厚さを有し、
前記板が、ASTM D 1003−61標準に従って測定された0.2%〜1.0%のヘイズ値を呈する、被覆されたガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板上の被覆の表面を平坦化する方法、そのような方法によって得られる生成物、及びガラス板上の被覆の表面を平坦化するためのシラザンの使用に関する。
【0002】
本発明の文脈において、「平坦化する」という用語は、「平滑化する、または平らにする」ことを意味する。
【0003】
例えば、シリカでオーバーコートすることによって、及び/または研磨することによって、ガラス上の粗被覆を平坦化する試みが以前に行われた。シリカでオーバーコートすることは、ある程度の平坦化をもたらすが、さらに平滑な表面をもたらすことが有益である。研磨は、より平らな表面を生じるが、時間がかかる。
【0004】
欧州公開第0781815 A1号は、固体製品の表面上に低温でセラミック膜を平滑に形成するのに有用なセラミック材料を形成するためのシラザン系ポリマーを含む組成物を開示する。
【0005】
被覆されたガラス板の表面を平坦化するための強化されたアプローチを提供することが望ましい。
【0006】
本発明の第1の態様に従い、ガラス板上の被覆の表面を平坦化する方法が提供され、この方法は、
ガラス板の主表面上に下層で直接または間接的に被覆されたガラス板を提供することと、
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、該下層上に堆積させることと、を含む。
【0007】
発明者らは、驚くべきことに、シラザンに基づく少なくとも1つの層を、ガラス板を被覆する下層上に堆積させることによって、該下層の表面が高度に平坦化されることを見出した。結果として得られる被覆された板は、低減された粗さ、より低いヘイズ、及びより高い可視光透過を呈した。粗下層の平坦化は、二重ガラスユニットの表面1または表面4上(または実際にあらゆるガラスシートの露出表面上)の被覆の使用を可能にする。結果として得られる平滑表面は、マーキング及びかき傷によるダメージを受けにくく、強化された表面エネルギー(向上した疎水性)をもたらす。当該技術分野において従来のとおり、二重ガラスユニットが設置される構造の外部環境に面するように構成された二重ガラスユニットの表面は、表面1と称される。表面1の反対側の表面は、表面2と称される。二重ガラスユニットが設置される構造の内部に面する二重ガラスユニットの表面は、表面4と称される。表面4の反対側の表面は、表面3である。
【0008】
本発明の以下の考察において、別段の記載がない限り、パラメータの許容される範囲の上限または下限についての代替値の開示は、該値のうちの1つが、その他よりも非常に好ましいという指示と併せて、該代替値のより好ましいものとあまり好ましくないものとの間にある該パラメータの各中間値は、それ自体が、該あまり好ましくない値よりも好ましく、また該あまり好ましくない値と該中間値との間にある各値よりも好ましいという含意的陳述として解釈される。
【0009】
層が特定の1つまたは複数の材料「に基づく」と言われる本発明の文脈において、これは、その層が主に対応する該1つまたは複数の材料からなることを意味し、典型的に、それが少なくとも約50at.%の該1つまたは複数の材料を含むことを意味する。
【0010】
該シラザンは、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ジエチルテトラメチルジシラザン、トリメチルトリビニルシクロトリシラザン、テトラメチルジフェニルジシランザン、及び/またはジメチルテトラフェニルジシラザンのうちの1つ以上であり得る。好ましくは、該シラザンは、ポリシラザン及び/またはオリゴマーシラザンである。該ポリシラザンは、ペルヒドロポリシラザン及び/またはオルガノポリシラザン、例えば、ポリメチルシラザン及び/またはポリジメチルシラザンであり得る。ポリシラザンは、ケイ素原子及び窒素原子が交互に骨格を形成するポリマーである。骨格内で、各ケイ素原子は、2つの別個の窒素原子に結合され、各窒素原子は、2つのケイ素原子に結合され、したがって、式[R1R2Si−NR3]の鎖及び環の両方が起こり得る。R1〜R3は、水素原子または有機置換基であり得る。全てのR置換基がH原子である場合、ポリマーは、ペルヒドロポリシラザンとして指定される(ポリペルヒドリドシラザンまたは無機ポリシラザンとしても知られる、[HSi−NH])。炭化水素置換基がケイ素原子に結合される場合、ポリマーは、オルガノポリシラザンとして指定される。分子的に、ポリシラザン[R1R2Si−NH]は、ポリシロキサン[R1R2Si−O]n(シリコーン)と等電子的であり、それと近親である。好ましくは、該ポリシラザンは、ペルヒドロポリシラザン及び/またはポリジメチルシラザンである。いくつかの実施形態において、ポリシラザンは、ポリ−メタロ−シラザン及び/またはシラザンコポリマーであり得る。
【0011】
好ましくは、ポリシラザンは、200〜500,000g/mol、より好ましくは、1000〜200,000g/mol、さらにより好ましくは、2000〜100,000g/molの数平均分子量を有する。ポリシラザンは、0.5〜1.5g/cm、好ましくは、0.7〜1.3g/cm、より好ましくは、0.8〜1.2g/cm、さらにより好ましくは、0.5〜1.5g/cmの密度を有し得る。
【0012】
好ましくは、該1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層は、スピン被覆、スロットダイ被覆、フレームスプレー被覆などの噴霧、ローラー被覆、浸漬、及び/または印刷によって堆積される。最も好ましくは、シラザンに基づく層は、噴霧によって堆積される。好ましくは、堆積前に、シラザンを溶媒和するか、または液体中に懸濁する。好ましくは、該液体は、1つ以上の炭化水素溶媒を含む。該炭化水素溶媒は、脂肪族及び/または芳香族部分を含み得る。該炭化水素溶媒は、ハロゲン化されてもよい。該溶媒は、ジブチルエーテル、キシレン、トルエン、ベンゼン、クロロホルム、及びジクロロメタンのうちの1つ以上を含み得る。
【0013】
好ましくは、該1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層は、少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも50nm、さらにより好ましくは少なくとも80nm、最も好ましくは少なくとも100nmであるが、好ましくは最大800nm、より好ましくは最大400nm、さらにより好ましくは最大200nm、最も好ましくは最大150nmの厚さを有する。費用の理由で、より薄い層が有利である。好ましくは、厚さは、向上した反射防止及び光透過のために4分の1波長である。
【0014】
この方法は、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換することをさらに含み得る。該シリカ及び/またはオルガノシリカは、ポリマーであり得る。該オルガノシリカは、式{−SiO(R)−O−}を有してもよく、式中、Rが、アルキル及び/またはフェニル部分を含む。代替として、該オルガノシリカは、式{−Si(R)(R)−O−}を有してもよく、式中、RまたはRの各々が、アルキル及び/またはフェニル部分を含む。該アルキル及び/またはフェニル部分は、1〜10個の炭素原子、好ましくは、1〜5個の炭素原子を含み得る。該アルキル部分は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及び/もしくはヘキシル基、及び/またはアルケンなどの重合性基(例えば、ビニル基)、及び/またはカルボニル基を含み得る。好ましくは、該オルガノシリカは、式{−Si(CH−O−}を有し得る。
【0015】
該変換は、1つ以上のシラザンに基づく層を堆積させた後に、板を熱、UV照射、及び/またはIR照射で処理することを含み得る。
【0016】
該熱処理は、板を少なくとも100℃、好ましくは少なくとも200℃、さらにより好ましくは少なくとも300℃、さらにより好ましくは少なくとも350℃、最も好ましくは少なくとも450℃であるが、好ましくは最高1000℃、より好ましくは最高800℃、さらにより好ましくは最高700℃、さらにより好ましくは最高600℃、最も好ましくは最高550℃で加熱することを含み得る。これらの好ましい温度は、液体として堆積されていてもよい1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層が、硬化して十分に接着された固体被覆を形成することを確実にするのを助ける。少なくとも300℃の温度は、シラザンの、シリカ及び/またはオルガノシリカへの完全な転換を確実にするのを助ける。
【0017】
好ましくは、該熱処理は、板を該温度で少なくとも30分、より好ましくは少なくとも45分、さらにより好ましくは少なくとも1時間、最も好ましくは少なくとも90分であるが、好ましくは最長5時間、より好ましくは最長4時間、さらにより好ましくは最長3時間加熱することを含む。そのような期間は、シリカ及び/またはオルガノシリカへの完全な転換を確実にするのを助ける。
【0018】
好ましくは、該熱処理は、板を該温度に少なくとも20分、より好ましくは少なくとも40分、さらにより好ましくは少なくとも50分、最も好ましくは少なくとも1時間の期間にわたって加熱することをさらに含む。板を、そのような好ましい最小期間にわたって所望の温度へと段階的に加熱することは、急速な溶媒損失及び欠陥の形成を回避するのを助ける。
【0019】
該UV及び/またはIR照射処理は、1つ以上のシラザンに基づく層を、UV及び/またはIR照射に露光することを含み得る。該UV及び/またはIR処理は、該層を、UV及び/またはIR照射に少なくとも3分間、より好ましくは少なくとも5分間、さらにより好ましくは少なくとも7分間、最も好ましくは少なくとも9分間であるが、好ましくは最長1時間、より好ましくは最長30分間、さらにより好ましくは最長20分間、最も好ましくは最長15分間露光することを含み得る。そのような期間は、シリカ及び/またはオルガノシリカへの完全な転換を確実にするのを助ける。UV照射は、UVA、UVB、及び/またはUVC照射であってもよい。好ましくは、UV照射は、UVC照射である。
【0020】
好ましくは、該シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層は、少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも50nm、さらにより好ましくは少なくとも80nm、さらにより好ましくは少なくとも90nm、最も好ましくは少なくとも100nmであるが、好ましくは最大800nm、より好ましくは最大400nm、さらにより好ましくは最大200nm、最も好ましくは最大150nmの厚さを有する。
【0021】
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層の表面は、少なくとも0.3nmであるが、好ましくは最大3nm、より好ましくは最大2nm、さらにより好ましくは、2nm未満、さらにより好ましくは最大1.9nm、さらにより好ましくは最大1.5nm、さらにより好ましくは最大1nm、最も好ましくは最大0.85nmの算術平均表面高さ値Saを有し得る。Saは、表面の粗さの表示を付与する。
【0022】
好ましくは、1つ以上のシラザンに基づく層を堆積させた後、及び/または1つ以上のシラザンに基づく層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換した後に、該板は少なくとも0.2%であるが、好ましくは最大1.0%、より好ましくは最大0.8%、さらにより好ましくは最大0.6%、最も好ましくは最大0.45%のヘイズを呈する。ヘイズ値は、ASTM D 1003−61標準に従って測定されるものとする。本発明に従って加工された板によって呈されるより低いヘイズは、それが、当然のことながら消費者にとって望ましくない、目に見える欠陥をほとんど表さないため有利である。
【0023】
下層は、好ましくは、透明導電被覆(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含む。好ましくは、TCCは、透明導電酸化物(TCO)である。好ましくは、TCOは、フッ素をドープした酸化スズ(SnO:F)、アルミニウム、ガリウム、もしくはホウ素をドープした酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、スズ酸カドミウム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In、In−ZnO(IZO)、In:Ti、In:Mo、In:Ga、In:W、In:Zr、In:Nb、In2−2xSn(MはZnもしくはCuである)、ZnO:F、Zn0.9Mg0.1O:Ga、(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、SnO:Co、In:Ni、In:(Sn,Ni)、ZnO:Mn、及び/またはZnO:Coのうちの1つ以上である。
【0024】
好ましくは、TCCに基づく少なくとも1つの層の各層は、少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも100nm、さらにより好ましくは少なくとも200nm、さらにより好ましくは少なくとも250nm、最も好ましくは少なくとも300nmであるが、好ましくは最大600nm、より好ましくは最大450nm、さらにより好ましくは最大370nm、最も好ましくは最大350nmの厚さを有する。これらの厚さは、1)導電性、2)吸収(層が厚いほど、吸収はより多く、透過はより低い)、及び3)色抑制(ある特定の厚さが、中間色を得るためにより良い)という特徴間の均衡をとるために好ましい。
【0025】
好ましくは、下層は少なくとも1つのさらなる層をさらに含み、該少なくとも1つのさらなる層が、金属またはメタロイドの酸化物、例えばSiO、SnO、TiO、酸窒化ケイ素及び/または酸化アルミニウムに基づく。該金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つの層のうちの1つの層は、好ましくは、該ガラス板の該主表面と直接接触して位置する。追加として、または代替として、該金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つの層のうちの1つの層は、好ましくは、TCCに基づく層と直接接触して位置する。金属またはメタロイドの酸化物に基づくそのような層は、腐食の原因であり得る、ナトリウムイオンの、表面への拡散を防止するために遮断層として作用し得るか、または層の厚さの変化から生じる虹色反射色を抑制する色抑制層として作用し得る。
【0026】
好ましくは、金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つのさらなる層の各層は、少なくとも5nm、より好ましくは少なくとも10nm、さらにより好ましくは少なくとも15nm、最も好ましくは少なくとも20nmであるが、好ましくは最大100nm、より好ましくは最大50nm、さらにより好ましくは最大40nm、最も好ましくは最大30nmの厚さを有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、下層は、好ましくは、ガラス基板から順に、
SnOに基づく少なくとも1つの層と、
SiOに基づく少なくとも1つの層と、
SnO:Fに基づく少なくとも1つの層と、を含み、
SnOに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも15nmであるが、最大35nmの厚さを有し、
SiOに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも15nmであるが、最大35nmの厚さを有し、
SnO:Fに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも300nmであるが、最大600nmの厚さを有する。
【0028】
好ましくは、SnOに基づく少なくとも1つの層は、少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも23nm、さらにより好ましくは少なくとも24nmであるが、好ましくは最大30nm、より好ましくは最大27nm、さらにより好ましくは最大26nmの厚さを有する。
【0029】
好ましくは、SiOに基づく少なくとも1つの層は、少なくとも20nm、より好ましくは少なくとも23nm、さらにより好ましくは少なくとも24nmであるが、好ましくは最大30nm、より好ましくは最大27nm、さらにより好ましくは最大26nmの厚さを有する。
【0030】
好ましくは、SnO:Fに基づく少なくとも1つの層は、少なくとも320nm、より好ましくは少なくとも330nm、さらにより好ましくは少なくとも335nmであるが、好ましくは最大400nm、より好ましくは最大360nm、さらにより好ましくは最大350nm、さらにより好ましくは最大345nmの厚さを有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、下層は、好ましくは、ガラス板から順に、
下部反射防止層と、
銀系機能層と、
少なくとも1つのさらなる反射防止層と、を含む。
【0032】
下部及び/またはさらなる反射防止層は、Siの(オキシ)窒化物及び/もしくはAlの(オキシ)窒化物、及び/もしくはそれらの合金に基づく、ならびに/またはTi、Zr、Zn、Sn、In、及び/もしくはNbのうちの1つ以上の酸化物、例えば、Zn及びSnの酸化物などの酸化金属に基づく、少なくとも1つの誘電層を含み得る。該誘電層は、好ましくは少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nm、さらにより好ましくは少なくとも5nm、最も好ましくは少なくとも10nmであるが、好ましくは最大70nm、より好ましくは最大50nm、さらにより好ましくは最大40nm、最も好ましくは最大30nmの厚さを有し得る。
【0033】
少なくとも1つのさらなる反射防止層は、好ましくは少なくとも1つの障壁層をさらに含む。好ましくは、該障壁層は、銀系機能層と直接接触して位置する。好ましくは、該障壁層は、NiCr、Nb、Ti、Zr、Zn、Sn、In、及び/もしくはCr、ならびに/またはそれらの酸化物及び/もしくは窒化物に基づく。少なくとも1つの障壁層は、好ましくは少なくとも0.5nm、より好ましくは少なくとも1nm、さらにより好ましくは少なくとも3nm、最も好ましくは少なくとも5nmであるが、好ましくは最大12nm、より好ましくは最大10nm、さらにより好ましくは最大8nm、最も好ましくは最大7nmの全厚を有し得る。これらの好ましい厚さは、機械的耐久性を維持しながら、さらに容易な堆積、及びヘイズなどの光学特徴の向上を可能にする。
【0034】
いくつかの実施形態において、下層は、複数の銀系機能層を含む。例えば、下層は、2つ、3つ、またはそれ以上の銀系機能層を含んでもよい。下層が複数の銀系機能層を含む場合、各銀系機能層は、中心反射防止層によって隣接した銀系機能層から間隔を空けて置かれ得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも1つの上層を、1つ以上のシラザンに基づく、ならびに/またはシリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層上に堆積させることをさらに含み得る。該少なくとも1つの上層は、下層、金属もしくはメタロイドの酸化物に基づく層、下部反射防止層、銀系機能層、さらなる反射防止層、ならびに/または1つ以上のシラザンに基づく、及び/もしくはシリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく層について上に列挙される材料のうちの1つ以上に基づき得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも1つの反対側の層を、ガラス板の反対側の主表面(すなわち、下層で被覆された主表面ではない)上に堆積させることをさらに含んでもよい。該少なくとも1つの反対側の層は、下層、金属もしくはメタロイドの酸化物に基づく層、下部反射防止層、銀系機能層、さらなる反射防止層、ならびに/または1つ以上のシラザンに基づく、及び/もしくはシリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく層について上に列挙される材料のうちの1つ以上に基づき得る。該少なくとも1つの反対側の層は、該下層及び/または該1つ以上のシラザンに基づく層の前または後に堆積され得る。
【0037】
好ましくは、1つ以上のシラザンに基づく、ならびに/またはシリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく該少なくとも1つの層は、1つ以上の領域において不在である。好ましくは、該少なくとも1つの層が不在である領域は、繰り返しパターンで配置される。好ましくは、該領域の少なくとも一部分は、少なくとも1つのサインを形成する。好ましくは、少なくとも該下層、ならびに1つ以上のシラザンに基づく、及び/またはシリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層で被覆された該ガラス板を透過した及び/または反射した光は、1つ以上のシラザンに基づく、及び/またはシリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく該少なくとも1つの層が不在である領域内で少なくとも該下層で被覆された該ガラス板を透過した及び/または反射した光とは異なる。そのような配置は、1つ以上のシラザンに基づく、ならびに/またはシリカ及び/もしくはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が存在する領域と、該少なくとも1つの層が不在である領域との間の視覚的に認識できる区別を観察者に提供する。この目に見える区別は、日光及び/または人工光源などの通常の光条件下で明らかであり得る。該領域間の区別は、目立たず、かつ容易に明白である透かし模様の外観を有し得る。このサインは、例えば、部屋番号を示すための付番またはレタリングを含み得る。代替として、または追加として、このサインは、板またはその板が組み込まれるドアが、火災避難装置/火災出口、及び/または建物にアクセスするための緊急サービス用経路として、例えば、火災避難装置/出口を示す記号、例えば、走っている人もしくはエクスクラメーションマークの記号を組み込むこと、緊急サービス用のアクセスポイントを描くこと、及び/または「火災避難装置」、「火災出口」、もしくは「緊急アクセス」という言葉を組み込むことによって使用され得ることを示し得る。
【0038】
1つ以上の領域内の1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層の不在は、該1つ以上のシラザンに基づく層を、マスクを通して堆積させることによって、及び/または堆積後に該1つ以上のシラザンに基づく層を部分的に除去することによって達成され得る。1つ以上のシラザンに基づく層の部分的除去は、化学的、レーザー、及び/またはサンドブラスト手段を使用して行われてもよい。化学的手段は、フッ化水素酸の濃縮溶液による除去を含み得る。
ガラス板は、透明酸化金属系ガラス板であり得る。好ましくは、このガラス板は、透明フロートガラス板、好ましくは低鉄フロートガラス板である。透明フロートガラスとは、BS EN 572−1及びBS EN 572−2(2004)において定義される組成物を有するガラスを意味する。透明フロートガラスの場合、Feレベルは、典型的に0.11重量%である。約0.05重量%未満のFe含有量を有するフロートガラスは、典型的に低鉄フロートガラスと称される。そのようなガラスは、通常、他の成分酸化物の同じ塩基性組成物を有し、すなわち、低鉄フロートガラスは、透明フロートガラスと同様に、ソーダライム−ケイ酸塩ガラスでもある。典型的に、低鉄フロートガラスは、0.02重量%未満のFeを有する。代替として、ガラス板は、ホウケイ酸塩系ガラス板、アルカリ−アルミノケイ酸塩系ガラス板、または酸化アルミニウム系結晶ガラス板である。このガラス板は、熱的及び/または化学的強靭化プロセスなどの任意の好適な手段によって、ある程度強靭化され得る。
【0039】
本発明の第2の態様に従い、第1の態様の方法に従って生成される被覆されたガラス板が提供される。
【0040】
本発明の第3の態様に従い、ガラス板上の被覆の表面を平坦化するためのシラザンの使用が提供され、この方法は、
ガラス板の主表面上に下層で直接または間接的に被覆されたガラス板を提供することと、
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、該下層上に堆積させることと、を含む。
【0041】
好ましくは、該使用は、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換することをさらに含む。
【0042】
本発明の第4の態様に従い、被覆されたガラス板によって呈されるヘイズを低減するためのシラザンの使用が提供され、この使用は、
ガラス板の主表面上に下層で直接または間接的に被覆されたガラス板を提供することと、
1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、該下層上に堆積させることと、を含む。
【0043】
好ましくは、該使用は、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を、シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層へと部分的にまたは完全に変換することをさらに含む。
【0044】
本発明の第5の態様に従い、少なくとも以下の層、すなわち
ガラス板と、
下層と、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層と、を順に含む被覆されたガラス板が提供され、該シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく層の表面が、最大2nmの算術平均表面高さ値Saを有する。
【0045】
本発明の第6の態様に従い、少なくとも以下の層、すなわち
ガラス板と、
下層と、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層と、を順に含む被覆されたガラス板が提供され、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも100nmの厚さを有し、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、1つ以上のシラザンに基づく少なくとも1つの層を部分的にまたは完全に変換することによって得られる。
【0046】
本発明の第7の態様に従い、少なくとも以下の層、すなわち
ガラス板と、
下層と、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層と、を順に含む被覆されたガラス板が提供され、
下層が、透明導電被覆(TCC)に基づく少なくとも1つの層を含み、TCCが、透明導電酸化物(TCO)であり、TCOが、フッ素をドープした酸化スズ(SnO:F)、アルミニウム、ガリウム、もしくはホウ素をドープした酸化亜鉛(ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、スズ酸カドミウム、ITO:ZnO、ITO:Ti、In、In−ZnO(IZO)、In:Ti、In:Mo、In:Ga、In:W、In:Zr、In:Nb、In2−2xSn(MはZnもしくはCuである)、ZnO:F、Zn0.9Mg0.1O:Ga、(Zn,Mg)O:P、ITO:Fe、SnO:Co、In:Ni、In:(Sn,Ni)、ZnO:Mn、及び/またはZnO:Coのうちの1つ以上であり、
TCCに基づく少なくとも1つの層の各層が、少なくとも20nmであるが、最大600nmの厚さを有し、
下層が、少なくとも1つのさらなる層をさらに含み、該少なくとも1つのさらなる層が、金属またはメタロイドの酸化物、例えばSiO、SnO、TiO、酸窒化ケイ素及び/または酸化アルミニウムに基づき、
金属またはメタロイドの酸化物に基づく少なくとも1つのさらなる層の各層が、少なくとも10nmであるが、最大50nmの厚さを有し、
シリカ及び/またはオルガノシリカに基づく少なくとも1つの層が、少なくとも100nmの厚さを有する。
【0047】
本発明の1つの態様に適用可能な随意の特徴は、任意の組み合わせで、及び任意の数で使用され得ることが理解されるであろう。さらに、それらは、本発明の他の態様のうちのいずれかと、任意の組み合わせで、及び任意の数で使用することもできる。これは、本出願の特許請求の範囲内の任意の他の請求項に対して従属項として使用される、任意の請求項からの従属項が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時に、またはその前に提出され、本明細書と共に縦覧のために公開されている全ての論文及び文書に向けられ、そのような論文及び文書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
本明細書(あらゆる付随する特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)において開示される特徴の全て、及び/またはそのように開示されるあらゆる方法またはプロセスの工程の全ては、そのような特徴及び/または工程のうちの少なくともいくつかが、互いに排他的である組み合わせを除いて、いずれの組み合わせで組み合わされてもよい。
【0050】
本明細書(あらゆる付随する特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)において開示される各特徴は、別途明示されない限り、同じ、同等、または類似の目的を果たす代替特徴によって置き換えられてもよい。したがって、別途明示されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の単なる一例である。
【0051】
本発明はここで、以下の付随する図面を参照して、限定ではなく、例証によって付与される、以下の特定の実施形態によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】いくつかの比較の被覆されたガラス板、及び前駆体PHPSを使用して調製された本発明に従う多くの被覆されたガラス板について、算術平均表面高さ値Sa対シリカ層の厚さを示すグラフである。
図2】比較参照の被覆されたガラス板、及び前駆体PDMSを使用して調製された本発明に従う多くの被覆されたガラス板について、算術平均表面高さ値Sa対オルガノシリカ層の厚さを示すグラフである。
図3】比較参照の被覆されたガラス板、及び前駆体PHPSを使用して調製された本発明に従う多くの被覆されたガラス板について、ヘイズ値のパーセント対シリカ層の厚さを示すグラフである。
【実施例】
【0053】
NSG TEC(RTM)15(ガラス(厚さ=3.2mm)/酸化スズ(25nm)/二酸化ケイ素(25nm)/フッ素をドープした酸化スズ(340nm))ガラス(試料サイズ=75mm×75mm)の試料を、全ての実施例において使用した。
【0054】
本発明に従う実施例は、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)またはポリジメチルシラザン(PDMS)を用いるスピン被覆試料によって調製した。
【0055】
PHPSまたはPDMS溶液を、下の表1に示される希釈の範囲を使用して、ジブチルエーテル(DBE)と混合した。
【表1】
【0056】
スピン被覆プロセスパラメータは、以下のとおりであった。
被覆溶液分注量 約2mL
スピン速度 2000rpm
加速 1000rpm/秒。
【0057】
次に試料を500℃で1時間硬化させて(所望の温度まで約1時間の加熱、該温度で1時間の保持、及び室温への約8時間の冷却を必要とする)、シリカ(PHPS前駆体から)またはオルガノシリカ(PDMS前駆体から)の外層をもたらした。
【0058】
比較例は、化学的蒸着(CVD)を介して、20〜150nm厚のSiO層を多くのTEC(RTM)15の試料上に堆積させることによって調製した。
【0059】
粗さデータ(算術平均表面高さ値Sa)は、原子力顕微鏡を使用し、ISO25178に従って得た。ヘイズ値のパーセントは、ASTM D 1003−61標準に従って測定した。
【0060】
図1及び2は、下層をペルヒドロポリシラザン(PHPS)またはポリジメチルシラザン(PDMS、MQ70(RTM))でそれぞれ被覆することに続いて、外側被覆を硬化させて、シリカ層またはオルガノシリカ層をそれぞれ形成する平坦化効果を示す。
【0061】
図1において、いくつかのデータ点は、グラフのy軸上にあり、これらは比較参照例、すなわち、さらなる被覆のないTEC(RTM)15の試料である。データシリーズBによって表されるものとは異なる他の試料の全ては比較例であり、気圧CVDを使用してシリカで被覆されたTEC(RTM)15の試料である。
【0062】
比較データシリーズAは、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン(DBDAS)をシリカ前駆体として使用し、6インチ(15cm)気圧熱CVDコーター上でシリカにより被覆されたTEC(RTM)15の試料を表す(y軸上に示される参照試料とは異なる)。シリカ被覆を、典型的に0.4%のDBDASガス相濃度、0.223mol/分の酸素、及び最大11L/分の窒素担体流を使用して、NSG TEC(RTM)15の上に650℃で堆積させた。
【0063】
データシリーズBは、PHPSをシリカ前駆体層として使用し、上に詳述されるように調製された本発明に従う試料を表す(y軸上に示される参照試料とは異なる)。曲線Eは、データシリーズBを通して最良適合である。
【0064】
比較データシリーズCは、EtOAc中のSiClを使用して気圧熱CVDコーター上でシリカにより被覆されたTEC(RTM)15の試料を表す。シリカ被覆を、典型的にSiCl噴出装置を通る0.5〜2L/分の窒素流、2L/分のO、3〜7L/分のN担体ガス、100〜300L/分のEtOAcを使用して、580℃〜650℃で保持されたNSG TEC(RTM)15基材の上に堆積させた。堆積時間は、15〜120秒の範囲であった。
【0065】
比較データシリーズDは、SiHを使用して、気圧熱CVDコーター上でシリカにより被覆されたTEC(RTM)15の試料を表す(y軸上に示される参照試料とは異なる)。その後、これらの試料を、研磨ブラシ(Botechにより供給される標準品、V3106、V3107、またはV3109)及びアルミナの研粒懸濁液を含有する液体研磨媒体(10体積%に希釈された、Aachener Chemische Werkeによる「Acepol AL」アルミナスラリー)を使用し、異なる程度に研磨した(故に、各厚さのシリカにおいて複数のデータ点が存在する)。ブラシを炭化ケイ素または酸化アルミニウム研粒剤に含浸させることによって最良の結果が達成された。研磨中に、露出した被覆層とちょうど接触するまでブラシを下げ、ブラシの剛毛の先端がブラシと被覆との間の接触の大半をもたらすようにした。
【0066】
図2において、データシリーズAは、PDMSをオルガノシリカ前駆体層として使用し、上に詳述されるように調製された本発明に従う試料を表す。
比較参照データ点Bは、さらなる被覆のないTEC(RTM)15の試料を表す。
【0067】
図1及び2は、それぞれPHPS及びPDMS被覆から誘導されたシリカ及びオルガノシリカ被覆が、比較例に対して評価された場合、実質的な平坦化効果を呈することを示す。さらに、図1から、PHPS被覆から誘導された100nm以上の厚さのシリカ被覆を担持する試料が、極めて高い平坦性を呈することが分かる。図2は、対応する高いレベルの平坦性が、PDMS被覆から誘導されるオルガノシリカ被覆(250nmまたは750nmの厚さ)を担持する4つの試料の全てによって呈されることを示す。
【0068】
図3において、データ点Aは、さらなる被覆のないTEC(RTM)15の参照試料を表す。データシリーズB及びCは、それぞれ生成1年後、及び生成直後のヘイズレベルについて分析した試料を表す。シリーズB及びCの試料は、PHPSをシリカ前駆体層として使用し、上に詳述されるように調製した。図3は、前駆体層としてのPHPSの使用が、参照試料と比較して非常に低いヘイズを呈する、シリカ被覆されたガラス板の提供を可能にすることを示す。さらに、これらの低レベルのヘイズは、長期間にわたって維持される。
【0069】
本発明は、前述の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(あらゆる付随する特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)において開示される特徴のうちのいずれの新規の1つもしくはいずれの新規の組み合わせ、またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスの工程のいずれの新規の1つもしくはいずれの新規の組み合わせにも及ぶ。
図1
図2
図3