特許第6831329号(P6831329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831329動力車両における車線変更を実施するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831329
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】動力車両における車線変更を実施するための方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20210208BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20210208BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20210208BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20210208BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60W30/10
   B60W30/08
   B60W40/04
   B60R21/00 992
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-543993(P2017-543993)
(86)(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公表番号】特表2018-522295(P2018-522295A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】DE2016200140
(87)【国際公開番号】WO2016173591
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年3月8日
(31)【優先権主張番号】102015208007.2
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503355292
【氏名又は名称】コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】フェント・ギュンター・アントン
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−025868(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013021337(DE,A1)
【文献】 国際公開第2015/000547(WO,A1)
【文献】 特開2012−226392(JP,A)
【文献】 特開2012−073925(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102005023185(DE,A1)
【文献】 国際公開第2014/204381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 〜 1/16
B60W 30/08 〜 30/12
B60W 40/02 〜 40/04
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御手段から車線(2,3)を変更するべきと言う提案が出力された時に、その時点において自車両(4)が走行している車線(2)から隣接する車線(3)への変更が、自律的に実施される自車両(4)における車線の変更を実施するための方法であって、
以下の条件が満たされた場合に、
制御手段から、高速車線(2)から低速車線(3)への変更に関する提案が出力される
ことを特徴とする車線の変更を実施するための方法:
− 自車両(4)、及び/或いは、低速車線を走行中の動力車両(5,6)に危険を及ぼすことなく車線変更が可能であること、
− 自車両(4)が、その時点に走行している車線(2)上において、他の前方を走行している動力車両(8)によって、自車両(4)が設定されている速度における走行を阻害されないこと、並びに、
車両(4)の後方のある特定の間隔内に自車両(4)の速度よりも高速で走行している動力車両が低速車線(3)上において認識されないこと。
【請求項2】
車両(4)の前方に、その速度が、自車両(4)の速度よりも一定速度分低速である他の車両が低速車線(3)上において一台も認識されない場合に、車線変更の提案が制御手段から出力されるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車両(4)の前方に、その速度が、自車両(4)の速度よりも少なくとも20km/h分低速である他の車両が低速車線(3)上において一台も認識されない場合に、車線変更の提案が制御手段から出力されるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
車両(4)の前方に、その速度が、自車両(4)の速度よりも少なくとも10km/h分低速である他の車両が低速車線(3)上において一台も認識されない場合に、車線変更の提案が制御手段から出力されるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
車両(4)の前方に、その速度が、自車両(4)の速度よりも少なくとも5km/h分低速である他の車両が低速車線(3)上において一台も認識されない場合に、車線変更の提案が制御手段から出力されるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
自車両(4)が、その時点で走行している車線(2)おいて有効な制限速度に達していない場合に、車線変更の提案が制御手段から出力される様に設定されていることを特徴とする請求項1から5のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
自車両(4)、低速車線(3)上を走行中の他の動力車両(5)を追越し、且つ、追越された他の動力車両(5)の前方にある一定の距離内に更なる動力車両が、認識されない場合に、
制御手段から車線変更の提案が出力されることを特徴とする請求項1から6のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
該十分な間隔が、自車両(4)の速度において、少なくとも5秒かかる距離に相当する間隔であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該コンピュータープログラムがコンピューター上で実施された際に、請求項1から8のうち何れか一項に記載の方法を実施するためのプログラム手段を包含するコンピュータープログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータープログラムを実施するために構成されている制御手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力車両における車線の変更を実施するための方法に関するが、ここでは、該自車両がその時点において走行している車線から、隣接する車線への変更は、請求項1のプレアンブルに詳しく定義されている如く、自律的に実施される。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、例えば、ドイツ公開特許公報DE 10 2013 021 337 A1より既知である。ここでは、その時点において走行している車線から、隣接する車線への車線変更は、該車両が、その時点において走行している車線上において、前方を走行中の車両により、予め設定されている走行速度での走行を阻害され、且つ、隣接する車線において、より速い走行が可能な場合に自律的に実施される。
【0003】
しかし、この方法の短所は、より低速の走行車線から、より高速な走行車線への変更のみが記述されていることである。
【0004】
これに類似した従来の技術を、ドイツ特許出願公開公報DE 10 2013 005 248 A1も示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ公開特許公報DE 10 2013 021 337 A1
【特許文献2】ドイツ特許出願公開公報DE 10 2013 005 248 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明の課題は、高速車線から低速車線への変更ための解決方法を与える動力車両において車線の変更を実施するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、該課題は、請求項1に記載されている特徴によって解決される。
【0008】
ここに記述されている方法によれば、高速車線から低速車線への車線変更は、自車両への危険、乃至、他の交通参加者への危険がない場合、現在走行している高速車線上においてより速い走行が望まれない場合、且つ、低速車線上に、より速い速度で走行している車両が、接近して来ていない、即ち、低速車線上の動力車両によって、自車両が追い越される危険性がない場合に実施される。
【0009】
本発明に係る解決策は、定められた判断基準を守って自律的な車線変更を実施し、少なくともドイツ道路交通法(Strassenverkehrsordnung)が効力を有する領域内における、右側通行原則(Rechtsfahrgebot)に基づいて、高速車線をフリーにすることができるため、交通安全の向上に貢献する。
【0010】
例えば、ドイツやUSAなどをはじめとする多くの右側通行の国々では、高速車線は、左側の車線のことであり、低速車線は、右側の車線のことである。また、ある道路に一方向に向かって二本以上の車線がある場合、高速車線は、二本の隣接する車線のうち左側の車線のことである。言うまでもなく、本発明に係る方法は、複数の車線をまたぐ車線変更も可能にするが、一回一回の車線変更が、本発明に係る方法によって、個々に実施される。左側通行の国々では、高速車線は、それぞれ、右側、低速車線は、それぞれ、左側の車線である。
【0011】
本発明に係る方法は、主に、高速道路(Autobahn/アウトバーン)や高速道路に相当する国道(Bundesstrasse/連邦道路)など複数車線道路において実施されるが、該方法は、市街地内の複数車線道路においても実施可能である。該方法のアプリケーションは、必要に応じて、ナビゲーション・データに基づいて制御されることも可能である。
【0012】
本発明に係る方法の判断基準に従い、自車両は、一台も車両が走っていない全くフリーな道路においても、高速車線から低速車線へ車線変更する。
【0013】
本発明の有利な発展形態では、低速車線上において、自車両の前方に、その速度が、自車両の速度よりも一定速度分低速である他の車両が一台も認識されない場合に、車線変更の提案が制御手段から出力されるように設定されている。この様にすることで、低速車線に他の動力車両があり、その直後に、再び、低速車線から高速車線に車線変更が必要になるような高速車線から低速車線への車線変更が、実施されることを回避している。これにより、継続性のある運転態度が、得られる。
【0014】
本発明のある他の実施形態においては、自車両が、その時点で走行している車線において有効な制限速度に達していない場合に、車線変更の提案が制御手段から出力される様に設定されている。この場合、例えば、アウトバーンの工事現場の様に、全ての車線が、同じ速度に制限されている領域では、有効な最高速度に達している場合、車線変更は必要ないと言うことを前提としている。この様にすることで、頻繁な車線変更を回避できる。
【0015】
本発明に係る方法の実施に対する更なる制限は、自車両が、低速車線上を走行中の動力車両を追越し、且つ、追越された車両の前方にある一定の距離内に更なる動力車両が、認識されない場合に、制御手段から車線変更の提案が出力されることよっても得られる。この判断条件は、低速車線上でその時点において如何なる追越マヌーバも行われていないこと、そして、自車両の低速車線への車線変更が可能であることの間接的証拠である。
【0016】
請求項9には、該コンピュータープログラムが、コンピューター上で実施される際に、本発明に係る方法を実施するプログラム手段を有するコンピュータープログラムが、開示されている。
【0017】
請求項9に係るコンピュータープログラムを実施するために構成されている制御手段は、請求項10に記載されている。
【0018】
本発明の更なる好ましい実施形態および発展型は、従属請求項に記載されている。以下、本発明の実施例を、図面を用いて原理的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る方法が実施される第一シチュエーションを示す。
図2】本発明に係る方法が実施される第二シチュエーションを示す。
図3】本発明に係る方法が実施されない第三シチュエーションを示す。
図4】本発明に係る方法が実施されない第四シチュエーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、このケースでは、アウトバーンである、各走行方向にそれぞれ二本の車線を有する道路1を示している。以下に記述した方法では、動力車両が符号「X」が付けられた方向に走行している道路の右側半分みが対象である。道路1は、二本の車線、即ち、左側の高速車線2と右側の低速車線3を有している。図1に示されているシチュエーションでは、自車両4は、ある一定の速度で、高速車線2を走行している。他の二台の動力車両、即ち、自車両4の後方を走っている動力車両5と自車両4の前方を走っている動力車両6は、低速車線3上を走行している。
【0021】
ここに記述されている全てのシチュエーションにおいては、自律的走行中、アクセルペダルやこれに類似する手段による自車両4の速度の変更は、実施されない、或いは、稀にしか実施されず、どちらかと言えば、クルーズコントロールや他の適した手段によって、自車両4のドライバーが望む特定の速度において一定に走る様に設定されることが、前提とされている。即ち、これが、自車両4に設定されている速度である。
【0022】
図1に示されているシチュエーションでは、好ましくは、クルーズコントロール或いはこれに類似する手段によって設定された自車両4の速度が、双方の車両5と6の速度と略同じであると言う想定である。図示はされていない自車両4の制御手段から、それに基づいて自車両4が自律的に高速車線2から低速車線3への車線変更を実施する、高速車線2から低速車線3へ車線変更せよと言う提案が出力されるための条件は、自車両4、及び/或いは、双方の低速車線3を走行中の動力車両5と6に危険を及ぼすことなく車線変更が可能であること、自車両4が、その時点に走行している車線2上において、他の前方を走行している動力車両によって、自車両4が設定されている速度における走行を阻害されないこと、並びに、自車両4の後方のある特定の間隔内に自車両4の速度よりも高速で走行している動力車両が低速車線3上において認識されないことである。ここで基準とされる間隔は、他のあらゆる間隔同様、自車両4に装備されてはいるが、図示はされてはいない、適した周辺把握センサーによって、計測されることができる。これら全ての判断基準が、図1に示されているシチュエーションでは満たされているため、高速車線2から低速車線3への車線変更が開始される。これは、符号7がふられている矢印によって示唆されている。
【0023】
図2は、本発明に係る方法が実施される第二シチュエーションを示している。ここでも、自車両4は、ある特定の速度で高速車線2を走行している。低速車線3上は、双方の他の動力車両5と6が走行している。この際、自車両4の速度は、自車両4の後方において低速車線3上を走行している動力車両5の速度よりは早いが、自車両4の前方において低速車線3上を走行している動力車両6の速度とは、略同じ、乃至、僅かに早いだけである。低速車線3上に、その速度が自車両4の速度よりも有意に遅い更なる動力車両は、認識されていないため、自車両4の制御手段からは、車線変更の提案が出力され、これに伴い、自車両4は、矢印7に従って、高速車線2から低速車線3に移動する。その後の状況において、例えば、自車両4の前方を走行している動力車両6を追い越すために、低速車線3から高速車線2への車線変更が必要になった場合、必要な車線変更は、既知の方法で実施できる。
【0024】
自車両4の速度が、自車両4の前方の低速車線3上を走行している動力車両6の速度よりも、僅かだけ早いと言う場合ではなくても、高速車線2から低速車線3への車線変更は、他の車両6と自車両4との間隔が、十分に大きければ可能である。
【0025】
本発明に係る方法が実施されないシチュエーションが、図3に描かれている。このケースでも、高速車線2上を走行している自車両4の速度は、自車両4の後方において低速車線3上を走行している動力車両5の速度よりも早いが、このケースでは更に、自車両4の前方において低速車線3上を走行している動力車両6の速度よりも早い。よって、自車両4の前方において低速車線3上を走行している動力車両6との間隔が小さすぎる。即ち、このケースでは、高速車線2から低速車線3への車線変更後直ちに、他の動力車両6を追い越すために、再び高速車線2への車線変更が必要となり得るため、このケースでは、制御手段は、車線変更の提案を出力しない。原則的に、制御手段から、車線変更の提案が、自車両4の前方の低速車線3上に、その速度が、自車両4の速度よりも少なくとも20km/h、他の実施形態では、10km/h、更なる実施形態では5km/h遅い動力車両が認識されない場合に出力されるように設定することも可能である。
【0026】
図4にも、本発明に係る方法が実施されないシチュエーションが示されている。ここでも、自車両4は、高速車線2上を、好ましくは、クルーズコントロールやこれに類似する手段によって入力された一定の速度で走行している。ここでも、双方の動力車両5と6は、低速車線3上を走行しているが、これらの速度は、このケースでは、重要ではない。自車両4の前方の高速車線2上を、その速度が自車両4の速度と同じ、乃至、より低速な更なる動力車両8が、走行している。該更なる動力車両8によって、自車両4は、より高速に走行できないため、低速車線3への車線変更は、必要なく、そのため、制御手段からは、高速車線2から低速車線3への車線変更の提案は、出力されず、自車両4は、高速車線2上に留まる。自車両4の前方を走行している動力車両8が、自車両4よりもわずかでも早い速度で走行すれば、自車両4から遠ざかるため、障害物ではなくなる。このケースでは、高速車線2から低速車線3への車線変更は、全ての必要な判断基準が満たされた場合、上記の条件に従って実施可能である。
【0027】
本発明に係る方法が実施される図示されていない一つのシチュエーションは、自車両4が、低速車線上を走行中の動力車両を追越し、且つ、追越された車両の前方にある一定の十分な距離内に更なる動力車両が、認識されない場合に、制御手段から車線変更の提案が出力されると言うものであることができる。これは、例えば、図2のシチュエーションにおいて、自車両4が、低速車線3上を走行している動力車両5を追い抜き、動力車両6が存在していないケースであると考えることができる。ここで言う十分な間隔とは、自車両4の速度において、少なくとも5秒かかる距離に相当する間隔である。
【0028】
本質的には、自車両が、その時点で走行している車線、即ち、高速車線2において有効な制限速度に達していない場合に、車線変更の提案が制御手段から出力される様にすることも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 道路
2 高速車線
3 低速車線
4 自車両
5 他の動力車両
6 他の動力車両
7 矢印
8 他の動力車両
図1
図2
図3
図4