(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1領域と前記第2領域の境界部では、前記第2領域から前記第1領域に向かって、前記チューブ体の内表面から前記線状体の突出する長さが減少していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバルーンカテーテル。
前記第2領域と前記第3領域の境界部では、前記第2領域から前記第3領域に向かって、前記チューブ体の内表面から前記線状体の突出する長さが減少していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
前記線状体は、金属からなる芯材と、前記芯材の外周面を被覆する前記第2樹脂とから構成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
前記第1樹脂よりも融点が高い樹脂で構成され、前記チューブ体の外表面に配置された外層を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のバルーンカテーテル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、各図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
<第1実施形態>
図1を参照して、本実施形態に係るバルーンカテーテル1は、長尺のシャフト10を生体器官に挿通させ、シャフト10の先端側に配置されたバルーン5を狭窄部(病変部)において拡張させることにより狭窄部を押し広げて治療する医療装置である。
【0020】
本実施形態においては、バルーンカテーテル1は、冠動脈の狭窄部を広げるために使用されるPTCA拡張用バルーンカテーテルとして構成しているが、例えば、他の血管、胆管、気管、食道、その他消化管、尿道、耳鼻内腔、その他の臓器等の生体器官内に形成された狭窄部の治療および改善を目的として使用されるものとして構成することも可能であるし、ステント等の医療器具を生体内で搬送する目的に使用されるデリバリー用のバルーンカテーテルとして構成することも可能である。
【0021】
図1に示すように、バルーンカテーテル1は、シャフト10と、シャフト10の先端部側に配置され、加圧媒体の流入および排出に伴い拡張変形および収縮変形可能なバルーン5と、シャフト10の基端部側に配置されたハブ160と、を備えている。
【0022】
本明細書では、バルーンカテーテル1において先端チップ150が配置される側を先端側と称し、バルーンカテーテル1においてハブ160が配置される側を基端側と称し、シャフト10が延伸する方向を軸方向と称する。
【0023】
図2(A)は、
図1に示す破線部2A部分の拡大断面図であり、
図2(B)は、
図1に示す破線部2B部分の拡大断面図である。
【0024】
バルーンカテーテル1は、シャフト10の先端部側寄りにガイドワイヤWが導出される基端開口部104aが設けられた、いわゆるラピッドエクスチェンジタイプと呼ばれるものである。
【0025】
図2(A)、
図2(B)に示すように、シャフト10は、ガイドワイヤWが挿通されるガイドワイヤルーメン101が形成された内管100と、内管100との間に加圧媒体が流通可能な加圧媒体ルーメン141を形成する外管140とにより構成している。
【0026】
シャフト10は、内管100が外管140に内挿されて、内管100および外管140が同心状に位置合わせてして配置された二重管構造を有している。
【0027】
図2(B)に示すように、内管100は、先端に形成された先端開口部103aと、基端に形成された基端開口部104aの二つの開口部を備えている。内管100の内部には、各開口部103a、104aに連通するガイドワイヤルーメン101が延在している。
【0028】
内管100は、基端側が径方向外側へ湾曲した中空のチューブ材によって構成している。
【0029】
内管100の先端近傍には溶着等の公知の方法によりバルーン5の先端部を液密・気密に接合している。また、内管100の基端近傍は、外管140の所定の位置に形成された接続用開口部144と液密・気密に接合している。ガイドワイヤWは、内管100の先端に設けられた先端開口部103aを入口とし、内管100の基端に設けられた基端開口部104aを出口として、ガイドワイヤルーメン101に挿通される。
【0030】
内管100にはバルーン5の軸方向の中心位置を示すX線造影マーカー170が設けられている。X線造影マーカー170は、例えば、白金、金、銀、チタン、タングステン等の金属、またはこれらの合金等のX線不透過材料で構成される細径の金属細線を使用することができる。なお、X線造影マーカー170は、X線不透過材料の粉末が入った樹脂材料を使用してもよい。
【0031】
内管100の先端には、先端チップ150を取り付けている。先端チップ150は、先端側に向けて外径が小さくなるテーパー形状を備えている。先端チップ150の内部には、先端チップ150を軸方向に貫通する貫通孔151を形成している。貫通孔151は、内管100のガイドワイヤルーメン101に挿通されたガイドワイヤWを内管100の外部へ導出することを可能にする。
【0032】
先端チップ150は、例えば、熱収縮性を備える柔軟な樹脂製の部材で構成することが可能である。ただし、先端チップ150の材質は、内管100に対して固定することが可能であれば特に限定されない。なお、先端チップ150を樹脂製の部材で構成する場合、先端チップ150は内管100に対して融着により固定することが可能である。
図2(A)に示すように、先端チップ150は、基端面を内管100の先端面に突き当てた状態で、かつ、当該先端チップ150の基端の外周をバルーン5の先端により覆った状態で固定している。ただし、先端チップ150の固定はこのような形態に限定されず、例えば、先端チップ150は、内管100の先端の外周を覆った状態で固定してもよいし、内管100の先端に入り込んだ状態で固定してもよい。
【0033】
外管140は、バルーン5の基端部付近からハブ160まで延在する内腔を備える管状の部材により構成している。外管140の先端近傍にはバルーン5の基端部を溶着等の公知の方法により液密・気密に接合している。
【0034】
外管140の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、軟質ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等の各種ゴム類、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー、ポリアミド、結晶性ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン等の結晶性プラスチックを使用することができる。これらの材料中に、例えば、ヘパリン、プロスタグランジン、ウロキナーゼ、アルギニン誘導体等の抗血栓性物質を配合し、抗血栓性を有する材料とすることも可能である。
【0035】
図1に示すように、ハブ160は、加圧媒体を供給するためのインデフレーター等の供給装置(図示省略)と液密・気密に接続可能なポート161を備えている。ハブ160のポート161は、例えば、流体チューブ等が接続・分離可能に構成された公知のルアーテーパー等によって構成することができる。
【0036】
バルーン5の拡張に使用される加圧媒体(例えば、生理食塩水、造影剤等)は、ハブ160のポート161を介してシャフト10内へ流入させることができる。加圧媒体は、加圧媒体ルーメン141を経由してバルーン5へ供給される。
【0037】
図2(A)に示すように、バルーン5は、生体管腔内に形成された狭窄部を拡張変形に伴って押し広げるストレート状の拡張有効部(加圧部)と、拡張有効部の先端側および基端側のそれぞれに設けられたテーパー部と、を備えている。バルーン5の先端部は、内管100の先端側の外表面に固定されている。バルーン5の基端部は、外管140の基端側の外表面に固定されている。
【0038】
バルーン5の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、架橋型エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、シリコーンゴム、ラテックスゴム等を用いることができる。
【0039】
次に、内管100の構造について詳細に説明する。
【0040】
図2(A)、
図2(B)に示すように、内管100は、所定のチューブ体110と、チューブ体110の内側に配置された補強体120と、チューブ体110の外表面に配置された外層130と、を備えている。
【0041】
図2(A)に示すように、内管100は、先端開口部103aが形成された先端部を含む第1領域103と、第1領域103よりも基端側に配置される第2領域105と、を有している。また、
図2(B)に示すように、内管100は、第2領域105よりも基端側に配置される第3領域104を有している。
【0042】
先端チップ150は第1領域103に配置されている。内管100の基端開口部104aは第3領域104に配置されている。
【0043】
チューブ体110は、内管100の軸方向に延伸した中空の管形状を備えている。外層130はチューブ体110と同様に内管100の軸方向に延伸した中空の管形状を備えている。
【0044】
チューブ体110は、所定の第1樹脂により構成している。また、補強体120を構成する線状体121は、第1樹脂よりも融点が高い所定の第2樹脂で構成している。
【0045】
図4(A)等に示すように、チューブ体110は、当該チューブ体110の内表面111に形成された凸部113を有している。この凸部113は、補強体120に形成された隙間部123に入り込むように内表面111から径方向内側(放射方向内側)へ向けて突出している。なお、図示例では、チューブ体110、補強体120、および外層130の軸直交断面の形状は円形に形成しているが、円形に限定されず、例えば、楕円形や矩形等であってもよい。
【0046】
凸部113は、チューブ体110を構成する第1樹脂の一部が融解し、隙間部123内に流動して形成される。図示した凸部113の断面形状は例示であり、凸部113の形状は適宜変更し得る。
【0047】
図4(A)に示すように、補強体120は、編み込まれた複数の線状体121で形成している。補強体120は、編み込まれた複数の線状体121の間に形成された隙間部123を有している。また、補強体120は、内管100の軸方向に延伸した管形状を備えている。
【0048】
補強体120は、内管100の耐キンク性や引っ張り強度を高める機能とともに、内管100のガイドワイヤルーメン101に挿通されるガイドワイヤWの摺動抵抗を低減させる機能を備えている。補強体120を構成する線状体121がチューブ体110の内表面111から突出した部分では、チューブ体110の内表面111とガイドワイヤWが接触する面積が小さくなるため、摺動抵抗が小さくなる。
【0049】
補強体120の編組の構造は、例えば、線状体121同士が交互に交差する1オーバー1アンダーの構造を採用することができる。ただし、このような構造に限定されることはない。
【0050】
線状体121は、例えば、断面形状が丸形の線材で形成することができる。丸形の線材を利用することにより、内管100のガイドワイヤルーメン101に挿通されるガイドワイヤWと補強体120との接触面積を小さくすることができるため、摺動抵抗をより好適に低減することが可能になる。また、線状体121は、例えば、断面形状が楕円形の線材で形成することもできる。楕円形の線材を利用すると線材同士が重なり合う部分の面積が増加するため、補強体120の剛性を高めることができる。なお、補強体120は、例えば、断面形状が矩形の線材で形成することも可能であるし、丸形、楕円形、矩形等を組み合わせて形成してもよく、例示した断面形状以外の形状を持つ線材で構成することも可能である。使用する線材の外径等も特に制限されることはない。
【0051】
補強体120は、チューブ体110を構成する第1樹脂よりも融点が高い第2樹脂で形成している。補強体120とチューブ体110を熱融着させる際、チューブ体110の一部が融解する一方で、補強体120の融解は抑制される。このため、補強体120は線状体121の形状を維持する。例えば、第2領域105などのように、線状体121の形状が維持された部分では、チューブ体110の内表面111とガイドワイヤWとの接触面積が減るため、摺動抵抗が大幅に低下する。なお、第2領域105においても、チューブ体110の外周から加熱により、補強体120とチューブ体110を熱融着させる際、補強体120は、補強体120のチューブ体110側の一部が融解してもよい。
【0052】
チューブ体110を構成する第1樹脂としては、例えば、変性ポリエチレン(融点約128℃)を用いることができる。
【0053】
線状体121を構成する第2樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(融点約168℃)、ナイロン12(融点約179℃)、ナイロン6(融点約225℃)、もしくはナイロン66(融点約265℃)を用いることができる。ただし、チューブ体110を構成する第1樹脂よりも融点が高い樹脂であればよく、チューブ体110の材質との関係に応じて任意のものを選択することができる。
【0054】
本実施形態では、補強体120を構成する線状体121を第2樹脂のみで形成している。このため、ガイドワイヤルーメン101にガイドワイヤWを挿通させる際に補強体120とガイドワイヤWが擦過するのを防止でき、ガイドワイヤWに傷や破損が生じるのを好適に防止することができる。また、内管100は、金型等を使用した成形加工を行う際、チューブ体110及び線状体121が樹脂のみで形成されているため、樹脂の流動を利用して外径、肉厚、硬度等を調整することが可能である。そのため、内管100は、加工性にも優れたものとなる。
【0055】
外層130は、線状体121と同様にチューブ体110を構成する第1樹脂よりも融点が高い樹脂で構成している。外層130を構成する樹脂としては、例えば、線状体121を構成する樹脂として例示した上記各樹脂を用いることができる。ただし、チューブ体110を構成する第1樹脂よりも融点が高い樹脂であればよく、線状体121を構成する第2樹脂と同様に、チューブ体110の材質に応じて任意のものを選択することができる。
【0056】
内管100の第2領域105においては、チューブ体110の内表面111とガイドワイヤWの接触面積を減らすために、線状体121の厚みに応じて凸部113の形状等を調整することが好ましい。例えば、隙間部123に入り込んだ部分の凸部113の長さd3(
図4(A)を参照)は、内管100の軸方向に対して垂直な断面において、線状体121の厚みの2倍未満とすることができる。これは次のような理由による。
【0057】
図6(A)に示すように、二つの線状体121a、121bが重なる部分では、補強体120の厚みは、線状体121aの厚み(外径)d1と線状体121aの厚み(外径)d2とを足し合わせた寸法となる。したがって、隙間部123に入り込んだ部分の凸部113の長さd3が各線状体121a、121bを足し合わせた寸法未満(線状体121の厚みの2倍未満)であれば、隙間部123よりも径方向内側まで凸部113が突出するのを防止でき、ガイドワイヤWの摺動抵抗を好適に低減させることができる。なお、線状体121の断面形状が丸形以外であっても、同様に編み込まれた部分の厚み寸法の合計よりも隙間部123に入り込んだ部分の凸部113の長さd3を小さくすることにより、摺動抵抗を好適に低減させることが可能である。
【0058】
図6(B)は、隣接する線状体121a、121bが交差する部分の断面を示す図である(
図6(A)の6B−6B線に沿う断面図)。複数の線状体121a、121b同士が互いに交差する部分においては、少なくとも一方の線状体121bが凹んだ形状となる。線状体121a、121b同士を編み込んだ状態で、チューブ体110と補強体120とを融着させるために熱を付加すると、接触した部分に応力が集中し、熱の影響を受けて凹部122が形成される。凹部122が形成されると、線状体121a、121b同士の引っ掛かりが強固になるため、補強体120の管形状をより一層良好に保つことが可能になり、補強機能を高めることができる。なお、
図6(B)には、隣接する一方の線状体121bのみに凹部122が形成された例を図示しているが、凹部122は、熱の掛かり具合や応力の掛かり具合等によって両方の線状体121a、121bに形成されることもあるし、内管100の外表面側に配置された線状体121aのみに形成されることもある。また、凹部122の深さや形状等は融着時の条件等に応じて適宜変更し得るものであるため図示した形状等に限定されることはない。また、各線状体121a、121b同士は互いに直交するように配置しているが、このような配置に限定されることはなく、線状体121同士の重なり部分(交差部)の角度は適宜変更することが可能である。
【0059】
次に、内管100の各部における線状体121の状態を説明する。
【0060】
図3(A)は、第1領域103における内管100の軸直交断面を示している。
図3(B)、
図4(A)、
図4(B)、
図5(A)は、第2領域105における内管100の軸直交断面を示している。
図5(B)は、第3領域104における内管100の軸直交断面を示している。なお、各図においては一部の構成を拡大して図示している(各図中の破線部で囲った部分)。
【0061】
上記各図に示されているように、線状体121は、第2領域105において、チューブ体110の内表面111から突出している。また、線状体121は、第1領域103において、第2領域105よりもチューブ体110の内表面111から突出していない。また、線状体121は、第3領域104において、第2領域105よりもチューブ体110の内表面111から突出していない。このように、内管100の各部において線状体121の突出する長さを調整する理由について説明する。
【0062】
前述したように、補強体120を構成する線状体121がチューブ体110の内表面111から突出した部分では、チューブ体110の内表面111とガイドワイヤWとが接触する面積が小さくなるため、摺動抵抗が小さくなる。つまり、第2領域105ではガイドワイヤWの摺動抵抗が小さくなっている。
【0063】
一方で、第1領域103及び第3領域104では、第2領域105と比較して線状体121の突出長さを小さくしている。
【0064】
内管100の先端開口部103a付近に線状体121により形成される凹凸形状が配置されていると、ガイドワイヤWをガイドワイヤルーメン101内に挿入する際に、ガイドワイヤWが線状体121に引っ掛かってしまい、円滑な挿入が妨げられたり、ガイドワイヤWに折れや曲げが生じたりする可能性がある。したがって、先端開口部103a付近においては、線状体121が内表面111から突出する長さを小さくしている。換言すると、第1領域103では、第2領域105よりも、チューブ体110の第1樹脂と線状体121の第2樹脂とが溶融固化した状態となっている。ここで、溶融固化とは、第1樹脂の少なくとも一部と第2樹脂の少なくとも一部とが互いに溶融し、第1樹脂と第2樹脂とが混ざり合った状態で固化することをいう。したがって、第1領域103におけるチューブ体110と補強体120との接合強度は、第2領域105におけるチューブ体110と補強体120との接合強度よりも大きくなっている。
【0065】
また、内管100の基端開口部104a付近に線状体121により形成される凹凸形状が配置されていると、ガイドワイヤWをガイドワイヤルーメン101から外部へ引き出す際に、ガイドワイヤWが線状体121に引っ掛かってしまい、引き出す作業が妨げられたり、ガイドワイヤWに折れや曲げが生じたりする可能性がある。したがって、基端開口部104a付近においても、線状体121が内表面111から突出する長さを小さくしている。換言すると、第3領域104では、第2領域105よりも、チューブ体110の第1樹脂と線状体121の第2樹脂とが溶融固化した状態となっている。このため、第3領域104におけるチューブ体110と補強体120との接合強度は、第2領域105におけるチューブ体110と補強体120との接合強度よりも大きくなっている。
【0066】
図2(A)、
図2(B)、
図3(A)、および
図5(B)に示すように、本実形態に係る内管100においては、第1領域103および第3領域104に配置された線状体121を融解することによって融解部125を形成している。融解部125では、線状体121の元々の形状が残存していない。また、融解部125は、チューブ体110に融着されている。このため、第1領域103および第3領域104には、線状体121により形成される凹凸形状及び隙間部123がほとんど設けられていない。したがって、内管100の内表面111は、第1領域103および第3領域104において、第2領域105よりも周方向に沿って凹凸の少ない平滑な面をなしている。
【0067】
このように、第1領域103および第3領域104に配置された線状体121を元々の形状が残らない程度まで融解することにより、先端開口部103a及び基端開口部104a付近でガイドワイヤWが引っ掛かるといった問題が発生するのをより好適に防止することができる。ただし、第1領域103および第3領域104において線状体121が突出する長さは、第2領域105よりも小さく、かつ、ガイドワイヤWが引っ掛かる等の問題が発生するのを防止し得る限りにおいて特に制限はない。
【0068】
図2(A)および
図3(B)に示すように、第1領域103と第2領域105の境界部A1では、第2領域105から第1領域103に向かって、チューブ体110の内表面111から線状体121の突出する長さが減少している。このように線状体121の突出する長さを漸減させることにより、第1領域103と第2領域105との間に補強体120の補強に伴う極端な物性の差が生じるのを抑制して、境界部A1付近で内管100に折れやキンクが発生するのを防止している。
【0069】
図2(B)および
図5(A)に示すように、第2領域105と第3領域104の境界部A2では、第2領域105から第3領域104に向かって、チューブ体110の内表面111から線状体121の突出する長さが減少している。第1領域103と第2領域105の間の境界部A1と同様に、線状体121の突出する長さを漸減させることにより、第2領域105と第3領域104との間に補強体120の補強に伴う極端な物性の差が生じるのを抑制して、境界部A2付近で内管100に折れやキンクが発生するのを防止している。
【0070】
次に、本実施形態に係るバルーンカテーテル1の作用を説明する。
【0071】
バルーンカテーテル1は、内腔を備える外管140と、外管140の内腔に配置され、かつ、ガイドワイヤWが挿通可能なガイドワイヤルーメン101を備える内管100と、内管100の先端側と外管140の先端側とに固定されたバルーン5と、を備えている。内管100の基端部は、外管140の途中にガイドワイヤルーメン101に連通する基端開口部104aを形成するように設けられている。内管100は、第1樹脂からなるチューブ体110と、チューブ体110の内側に配置された補強体120と、を備えている。補強体120は、第2樹脂を有する線状体121から構成されている。内管100は、先端開口部103aが形成された先端部を含む第1領域103と、第1領域103よりも基端側に配置される第2領域105と、を有している。そして、線状体121は、第2領域105において、チューブ体110の内表面111から突出しており、かつ、第1領域103において、第2領域105よりもチューブ体110の内表面111から突出していない。
【0072】
また、バルーンカテーテル1は、内腔を備える外管140と、外管140の内腔に配置され、かつ、ガイドワイヤWが挿通可能なガイドワイヤルーメン101を備える内管100と、内管100の先端側と外管140の先端側とに固定されたバルーン5と、を備えている。内管100の基端部は、外管140の途中にガイドワイヤルーメン101に連通する基端開口部104aを形成するように設けられている。内管100は、第1樹脂からなるチューブ体110と、チューブ体110の内側に配置された補強体120と、を備えている。補強体120は、第2樹脂を有する線状体121から構成されている。内管100は、先端開口部103aが形成された先端部を含む第1領域103と、第1領域103よりも基端側に配置される第2領域105と、を有している。そして、第1領域103は、第2領域105よりも、チューブ体110の第1樹脂と線状体121の第2樹脂が溶融固化している。
【0073】
上記のように構成したバルーンカテーテル1によれば、内管100が備えるチューブ体110の内側に設けた補強体120によって耐キンク性や引っ張り強度が向上したものとなる。また、バルーンカテーテル1の内管100は、先端開口部103a付近の第1領域103では第1樹脂と第2樹脂が溶融固化しているため、内管100の内周面に補強体120による凹凸が少なく、先端開口部103a付近でガイドワイヤWが補強体120に引っ掛かるのを防止することができる。一方で、先端開口部103a付近よりも基端側の第2領域105では補強体120による凹凸でガイドワイヤWの摺動抵抗が低減される。
【0074】
チューブ体110および補強体120が共に樹脂を含むため、補強体120が金属で形成されている場合と比較して、チューブ体110と補強体120が互いに融着し易い。そのため、内管100の端部を切断して先端チップ150を取り付ける際、補強体120の端部がばらけることのないように端部処理を施す必要がなく、製造作業が容易なものとなる。さらに、内管100の基端近傍を外管140の所定の位置に形成された接続用開口部144に取り付ける際も、補強体120の端部がばらけることのないように端部処理を施す必要がなく、製造作業が容易なものとなる。
【0075】
また、第1領域103には、先端チップ150が配置されている。このため、バルーンカテーテル1の先端が生体器官(血管の内壁等)に接触した際に、生体器官に損傷等が生じるのを好適に防止することができる。
【0076】
また、第1領域103と第2領域105の境界部A1では、第2領域105から第1領域103に向かって、チューブ体110の内表面111から線状体121の突出する長さが減少している。このため、第1領域103と第2領域105との間に補強体120の補強に伴う極端な物性の差が生じるのを抑制して、境界部A1付近で内管100に折れやキンクが発生するのを防止できる。
【0077】
また、内管100は、第2領域105よりも基端側に配置される第3領域104を有しており、線状体121は、第3領域104において、第2領域105よりもチューブ体110の内表面111から突出していない。このため、内管100の基端開口部104aを介してガイドワイヤWをガイドワイヤルーメン101から外部へ引き出す際に、ガイドワイヤWが線状体121に引っ掛かるのを防止でき、ガイドワイヤWを円滑に引き出すことができる。
【0078】
また、第2領域105と第3領域104の境界部A2では、第2領域105から第3領域104に向かって、チューブ体110の内表面111から線状体112の突出する長さが減少している。このため、第2領域105と第3領域104との間に補強体120の補強に伴う極端な物性の差が生じるのを抑制して、境界部A2付近で内管100に折れやキンクが発生するのを防止できる。
【0079】
また、補強体120は、編み込まれた複数の線状体121で形成している。このため、補強体120により、内管100の耐キンク性および引っ張り強度が良好なものとなる。
【0080】
また、線状体121は、断面形状が丸形の線材により構成している。これにより、ガイドワイヤルーメン101に挿通されるガイドワイヤWと補強体120との接触面積を小さくすることができ、摺動抵抗をより好適に低減することが可能になる。
【0081】
また、線状体121は、第2樹脂のみで構成している。これにより、ガイドワイヤWをガイドワイヤルーメン101に挿通させる際に、補強体120とガイドワイヤWが擦過するのを防止でき、ガイドワイヤWに傷や破損が生じるのを好適に防止することができる。さらに、内管100は、金型等を使用した成形加工を行う際、チューブ体110及び線状体121が樹脂のみで形成されているため、樹脂の流動を利用して外径、肉厚、硬度等を調整することが可能である。そのため、内管100は、加工性にも優れたものとなる。
【0082】
また、第1樹脂よりも融点が高い樹脂で構成され、チューブ体110の外表面に配置された外層130を有している。これにより、外層130側から熱を付与した際に、補強体120に熱の影響が及ぶのを好適に防止できる。さらに、補強体120の外層に位置するチューブ体110を融解させて補強体120と外層130とを融着させることができるため、外層130と補強体120の融点が近い場合においても、補強体120の形状が損なわれるのを好適に防止しつつ、補強体120を外層130に対して接合させることができる。
【0083】
<変形例1>
次に、
図7(A)、
図7(B)を参照して、第1実施形態の変形例1に係る内管200を説明する。本変形例の説明においては、既に説明した部材と同一の機能を持つ部材等についてはその説明を省略する。
【0084】
図7(A)、
図7(B)に示すように、内管100は、外層130を備えていなくてもよい。つまり、内管100は、第1樹脂からなるチューブ体110と、補強体120とにより構成することが可能である。このように構成する場合においても、チューブ体110と補強体120を融着させることで、ガイドワイヤWの摺動抵抗を低減させることが可能になる。また、外層130を使用しない分だけ、部材点数を削減することができるため、製造コストの削減を図ることが可能となる。
【0085】
<変形例2>
次に、
図8を参照して、第1実施形態の変形例2に係る補強体320を説明する。本変形例の説明においては、既に説明した部材と同一の機能を持つ部材等についてはその説明を省略する。
【0086】
図8に示すように、補強体320を構成する線状体321は、例えば、金属からなる芯材322と、芯材322の外周面を被覆する第2樹脂324とにより構成することが可能である。
【0087】
芯材322を構成する金属としては、例えば、ステンレス、タングステン、銅、ニッケル、チタン、ピアノ線、コバルト−クロム系合金、ニッケル−チタン系合金(超弾性合金)、銅−亜鉛系合金、アモルファス合金等の各種金属素線を使用することができる。
【0088】
第2樹脂324としては、例えば、前述した実施形態において第2樹脂として用いることができるものとして例示したものを使用することができる。
【0089】
金属からなる芯材322を備える線状体321を使用することで、内管300の引っ張り強度をより一層向上させることが可能になる。また、
図8に示すように、第2樹脂324の一部を融解させて、チューブ体110の内表面111と溶着した部分325を形成することにより、線状体321とチューブ体110の間の接合強度が高められる。これにより、芯材322がチューブ体110に強固に固定されるため、芯材322がばらつくなどの問題が発生するのを好適に防止することができる。
【0090】
断面が丸形の線状体321を例示したが、断面が楕円形や矩形、その他の形状で形成されている線状体についても同様に芯材322を備えさせることが可能である。
【0091】
以上、実施形態および複数の変形例を通じて本発明に係るバルーンカテーテルを説明したが、本発明は実施形態および各変形例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0092】
例えば、補強体は、コイル状の線状体により構成することも可能である。コイル状の線状体で補強体を構成することにより、内管に屈曲性を持たせることが可能になる。
【0093】
例えば、バルーンカテーテルは、ガイドワイヤルーメンがシャフトの先端から基端に亘って延在するように形成された、いわゆるオーバーザワイヤタイプと呼ばれるバルーンカテーテルとして構成してもよい。オーバーザワイヤタイプのバルーンカテーテルとして構成する場合、先端開口部付近における線状体の突出長さを、基端側に位置する第2領域よりも小さくなるように調整することで、ガイドワイヤルーメンにガイドワイヤを挿入する際に引っ掛かり等が生じてしまうのを好適に防止することが可能になる。
【0094】
また、バルーンカテーテルは、少なくとも、線状体が、第2領域において、チューブ体の内表面から突出しており、かつ、第1領域において、第2領域よりもチューブ体の内表面から突出していない構成を備えていればよく、実施形態において説明したその他の構成等は適宜変更することが可能である。例えば、線状体は、第3領域においては溶解した状態でなくてもよく、また第1領域や第2領域との関係に基づいて突出長さを調整しなくてもよい。
【0095】
<第2実施形態>
以下、各図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0096】
図9〜
図11は、実施形態に係る医療用長尺体の各部の構成を示す図であり、
図11は、実施形態に係る補強体が備える線状体の構成例を示す図である。
図11(A)においては、一部の構成を拡大して図示している(
図11(A)中の破線部で囲った部分)。
【0097】
図9を参照して、実施形態に係る医療用長尺体10は、血管、胆管、気管、食道、尿道、またはその他の生体管腔内や体腔内に挿入されて治療や診断等を行うためのカテーテルとして構成している。
【0098】
医療用長尺体10は、
図9に示すように、生体内に導入可能な長尺状のカテーテル本体100と、カテーテル本体100の先端部103に取り付けられた先端チップ150と、カテーテル本体100の基端部104に連結されたハブ160と、を備えている。また、医療用長尺体10は、カテーテル本体100とハブ160の連結部付近に、耐キンクプロテクタ(ストレインリリーフ)170を備えている。
【0099】
本明細書では、カテーテル本体100において先端チップ150が配置される側を先端側と称し、カテーテル本体100においてハブ160が配置される側を基端側と称し、カテーテル本体100が延伸する方向を軸方向と称する。
【0100】
図10(A)は、医療用長尺体10の先端部103付近の拡大断面図であり、
図10(B)は、医療用長尺体10の基端部104付近の拡大断面図である。
【0101】
図10(A)、
図10(B)に示すように、カテーテル本体100は、軸方向に延在する内腔101と、内腔101に連通する先端開口部103aと、内腔101に連通する基端開口部104aとが形成された可撓性を有する管状の部材として構成している。
【0102】
カテーテル本体100は、チューブ体110と、カテーテル本体100の内腔101を形成するチューブ体110の内表面111に配置された補強体120と(
図11(A)を参照)、チューブ体110の外表面に配置された外層130と、を備えている。
【0103】
チューブ体110は、カテーテル本体100の軸方向に延伸した中空の管形状を備えている。外層130はチューブ体110と同様にカテーテル本体100の軸方向に延伸した中空の管形状を備えている。
【0104】
図11(A)、
図12(A)に示すように、補強体120は、編み込まれた複数の線状体121で形成している。補強体120は、編み込まれた複数の線状体121の間に形成された隙間部123を有している。補強体120は、カテーテル本体100の軸方向に延伸した管形状を備えている。
【0105】
カテーテル本体100に取り付けた先端チップ150は、先端側に向けて外径が小さくなるテーパー形状を備えている。先端チップ150の内部には、先端チップ150を軸方向に貫通する貫通孔151を形成している。貫通孔151は、カテーテル本体100の内腔101に挿通されたガイドワイヤ等の医療デバイスをカテーテル本体100の外部へ導出することを可能にする。
【0106】
先端チップ150は、例えば、熱収縮性を備える柔軟な樹脂製の部材で構成することが可能である。ただし、先端チップ150の材質は、カテーテル本体100に対して固定することが可能であれば特に限定されない。なお、先端チップ150を樹脂製の部材で構成する場合、先端チップ150はカテーテル本体100に対して融着により固定することが可能である。
図10(A)に示すように、先端チップ150は、基端面をカテーテル本体100の先端面に突き当てた状態で固定している。ただし、先端チップ150の固定はこのような形態に限定されず、例えば、先端チップ150は、カテーテル本体100の先端の外周を覆った状態で固定してもよいし、カテーテル本体100の先端の内側に入り込んだ状態で固定してもよい。
【0107】
ハブ160は、カテーテル本体100の内腔101へガイドワイヤ等の医療デバイスを挿入する挿入口としての機能を持つポート161と、医療用長尺体10を操作する際に向き等の確認に使用される翼部163と、を備えている。ハブ160は、接着剤や固定具(図示せず)等を使用してカテーテル本体100の基端部104の外周を覆うように取り付けることができる。ハブ160の構成材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0108】
次に、カテーテル本体100の構造について説明する。
【0109】
図11(A)に示すように、チューブ体110は、当該チューブ体110の内表面111に形成された凸部113を有している。この凸部113は、補強体120に形成された隙間部123に入り込むように内表面111から径方向内側(放射方向内側)へ向けて突出している。なお、図示例では、チューブ体110、補強体120、および外層130の軸直交断面の形状は円形に形成しているが、円形に限定されず、例えば、楕円形や矩形等であってもよい。
【0110】
チューブ体110は、所定の第1樹脂により構成している。また、線状体121は、所定の第2樹脂で構成している。第1樹脂の融点は、第2樹脂の融点よりも低い。そして、チューブ体110を構成する第1樹脂は、
図11(A)に示すように、補強体120が備える隙間部(網目)123に凸部113が入り込んだ状態で第2樹脂と融着されている。
【0111】
凸部113は、チューブ体110を構成する第1樹脂の一部が融解し、隙間部123内に流動して形成される。図示した凸部113の断面形状は例示であり、凸部113の形状は適宜変更し得る。
【0112】
補強体120は、カテーテル本体100の耐キンク性や引っ張り強度を高める機能とともに、カテーテル本体100の内腔101に挿通される各種の医療デバイスの摺動抵抗を低減させる機能を備えている。また、本実施形態では、摺動抵抗を低減させる機能を好適に発揮させるために、補強体120はチューブ体110を構成する第1樹脂よりも融点が高い樹脂で形成している。補強体120とチューブ体110を熱融着させる際、チューブ体110の一部が融解する一方で、補強体120の融解は抑制される。このため、補強体120は、線状体121の形状を維持する。線状体121の形状が維持された部分では、チューブ体110の内表面111と医療用デバイスとの接触面積が減るため、摺動抵抗が低下する。なお、チューブ体110の外周から加熱により、補強体120とチューブ体110を熱融着させる際、補強体120は、補強体120のチューブ体110側の一部が融解してもよい。
【0113】
補強体120の編組の構造は、例えば、線状体121同士が交互に交差する1オーバー1アンダーの構造を採用することができる。ただし、このような構造に限定されることはない。
【0114】
線状体121は、例えば、断面形状が丸形の線材で形成することができる。丸形の線材を利用することにより、カテーテル本体100の内腔101に挿通される医療デバイスと補強体120との接触面積を小さくすることができるため、摺動抵抗をより好適に低減することが可能になる。また、線状体121は、例えば、断面形状が楕円形の線材で形成することもできる。楕円形の線材を利用すると線材同士が重なり合う部分の面積が増加するため、補強体120の剛性を高めることができる。なお、補強体120は、例えば、断面形状が矩形の線材で形成することも可能であるし、丸形、楕円形、矩形等を組み合わせて形成してもよく、例示した断面形状以外の形状を持つ線材で構成することも可能である。使用する線材の外径等も特に制限されることはない。
【0115】
チューブ体110を構成する第1樹脂としては、例えば、変性ポリエチレン(融点約128℃)を用いることができる。
【0116】
線状体121を構成する第2樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(融点約168℃)、ナイロン12(融点約179℃)、ナイロン6(融点約225℃)、もしくはナイロン66(融点約265℃)を用いることができる。ただし、チューブ体110を構成する第1樹脂よりも融点が高い樹脂であればよく、チューブ体110の材質に応じて任意のものを選択することができる。
【0117】
本実施形態では、補強体120を構成する線状体121を第2樹脂のみで形成しているため、カテーテル本体100の内腔101にガイドワイヤのような金属製の医療デバイスを挿通させる際に、補強体120とガイドワイヤが擦過して、ガイドワイヤに傷や破損が生じるのを好適に防止することができる。また、カテーテル本体100は、金型等を使用した成形加工を行う際、チューブ体110及び線状体121が樹脂のみで形成されているため、樹脂の流動を利用して外径、肉厚、硬度等を調整することが可能である。そのため、加工性にも優れたものとなる。
【0118】
外層130は、線状体121と同様にチューブ体110を構成する第1樹脂よりも融点が高い樹脂で構成している。外層130を構成する樹脂としては、例えば、線状体121を構成する樹脂として例示した上記各樹脂を用いることができる。ただし、チューブ体110を構成する第1樹脂よりも融点が高い樹脂であればよく、線状体121を構成する第2樹脂と同様に、チューブ体110の材質に応じて任意のものを選択することができる。
【0119】
チューブ体110の内表面111と医療用デバイスとの接触面積を減らすために、線状体121の厚みに応じて凸部113の形状等を調整することが好ましい。例えば、隙間部123に入り込んだ部分の凸部113の長さd3(
図11(A)を参照)は、カテーテル本体100の軸方向に対して垂直な断面において、線状体121の厚みの2倍未満とすることができる。これは次のような理由による。
【0120】
図12(A)に示すように、二つの線状体121a、121bが重なる部分では、補強体120の厚みは、線状体121aの厚み(外径)d1と線状体121aの厚み(外径)d2とを足し合わせた寸法となる。したがって、隙間部123に入り込んだ部分の凸部113の長さd3が各線状体121a、121bを足し合わせた寸法未満(線状体121の厚みの2倍未満)であれば、隙間部123よりも径方向内側まで凸部113が突出するのを防止でき、チューブ体110の内表面111と医療用デバイスとの間に作用する摺動抵抗を好適に低減させることができる。なお、線状体121の断面形状が丸形以外であっても、同様に編み込まれた部分の厚み寸法の合計よりも隙間部123に入り込んだ部分の凸部113の長さd3を小さくすることにより、摺動抵抗を好適に低減させることが可能である。
【0121】
図12(B)は、隣接する線状体121a、121bが交差する部分の断面を示す図である(
図12(A)の12B−12B線に沿う断面図)。複数の線状体121a、121b同士が互いに交差する部分においては、少なくとも一方の線状体121bが凹んだ形状となる。線状体121a、121b同士を編み込んだ状態で、チューブ体110と補強体120とを融着させるために熱を付加すると、接触した部分に応力が集中し、熱の影響を受けて凹部122が形成される。凹部122が形成されると、線状体121a、121b同士の引っ掛かりが強固になるため、補強体120の管形状をより一層良好に保つことが可能になり、補強機能を高めることができる。なお、
図12(B)には、隣接する一方の線状体121bのみに凹部122が形成された例を図示しているが、凹部122は、熱の掛かり具合や応力の掛かり具合等によって両方の線状体121a、121bに形成されることもあるし、カテーテル本体100の外表面側に配置された線状体121aのみに形成されることもある。また、凹部122の深さや形状等は融着時の条件等に応じて適宜変更し得るものであるため図示した形状等に限定されることはない。また、各線状体121a、121b同士は互いに直交するように配置しているが、このような配置に限定されることはなく、線状体121同士の重なり部分(交差部)の角度は適宜変更することが可能である。
【0122】
図10(A)、
図10(B)に示すように、カテーテル本体100は、先端チップ150が設けられた先端部103とハブ160が設けられた基端部104との間に延在する中間部105を有している。また、
図11(A)に示すように、線状体121は、中間部105においては、チューブ体110の内表面111から突出している。一方で、線状体121は、
図11(B)に示すように、基端部104においては、中間部105よりもチューブ体110の内表面111から突出していない。カテーテル本体100の各部において線状体121の突出する長さを調整する理由は、次のような点にある。
【0123】
カテーテル本体100の基端部104には、カテーテル本体100の内腔101へ医療デバイスを挿入する際の入口となる基端開口部104aが形成されている。例えば、基端開口部104a付近に線状体121により形成される凹凸形状が配置されていると、医療デバイスを内腔101内に挿入する際に、医療デバイスが線状体121に引っ掛かってしまい、円滑な挿入が妨げられたり、医療デバイスに傷が付いたりするといった問題が発生し得る。したがって、基端部104付近においては、線状体121が内表面111から突出する長さを小さくしている。一方で、カテーテル本体100の中間部105においては、内腔101内での医療デバイスの円滑な移動を可能にするために、摺動抵抗を可能な限り低減させることが好ましい。したがって、中間部105に配置された線状体121は、摺動抵抗を低減させることが可能となるように、チューブ体110の内表面111から径方向内側へ突出させている。
【0124】
カテーテル本体100においては、基端部104に配置された線状体121が融解した融解部125が形成されている。融解部125は、線状体121の元々の形状が残存していない。融解部125は、チューブ体110に融着されている。このように、基端部104に配置された線状体121は、元々の形状が残らない程度まで融解しているため、基端開口部104aから挿入される医療デバイスが引っ掛かるといった問題が発生するのをより好適に防止することができる。なお、基端部104における線状体121の突出する長さは、医療デバイスが引っ掛かる等の問題が発生するのを防止し得る限りにおいて特に制限はない。
【0125】
カテーテル本体100の先端部103についても基端部104と同様に、線状体121の突出する長さを中間部105よりも小さくしてもよい。このように構成する場合においても、先端開口部103aを介して医療デバイスを内腔101に挿入する際に、線状体121と医療デバイスとが引っ掛かるのを好適に防止することが可能となる。また、先端部103にも、基端部104と同様に、線状体121が融解した融解部125を形成してもよい。例えば、先端チップ150を融着によりカテーテル本体100に取り付ける場合には、先端チップ150を取り付ける際に融解部125を形成することができる。
【0126】
以上のように、本実施形態に係る医療用長尺体10は、長尺状のカテーテル本体100を有している。カテーテル本体100は、第1樹脂からなるチューブ体110と、カテーテル本体100の内腔101を形成するチューブ体110の内表面111に配置された補強体120と、を備えている。補強体120は、編み込まれた複数の線状体121で形成されるとともに編み込まれた複数の線状体121の間に隙間部123を有している。チューブ体110は、当該チューブ体110の内表面111に、隙間部123に入り込む凸部113を有している。線状体121は、当該線状体121の少なくとも外周面が第2樹脂で形成されている。第1樹脂は、隙間部123に凸部113が入り込んだ状態で第2樹脂と融着されている。そして、第1樹脂の融点は第2樹脂の融点よりも低い。
【0127】
上記のように構成した医療用長尺体10によれば、チューブ体110の内表面111に設けた補強体120によって耐キンク性や引っ張り強度が向上したものとなる。また、カテーテル本体100の内腔101に医療用デバイスを挿入する際、チューブ体110の内表面111に配置された補強体(編み込こまれた線状体121)120によってチューブ体110の内表面111と医療用デバイスとの接触面積が減る。このため、カテーテル本体100の内腔101に挿入される医療用デバイスは、チューブ体110の内表面111との摺動抵抗が低減される。
【0128】
チューブ体110および補強体120が共に樹脂を含むため、補強体120が金属で形成されている場合と比較して、チューブ体110と補強体120が互いに融着し易い。さらに、第1樹脂からなる凸部113は、補強体120を構成する第2樹脂の隙間部123に入り込んで融着されるため、第1樹脂と第2樹脂の接触面積が大きくなり、チューブ体110および補強体120の融着を強固にすることができる。
【0129】
チューブ体110を構成する第1樹脂の融点は、補強体120に含まれる第2樹脂の融点よりも低い。このため、チューブ体110に補強体120を配置する際、補強体120は、第1樹脂と第2樹脂を融着する熱で融解することがなく、補強体120の形状を維持することができる。これにより、医療デバイスの摺動抵抗を低減させる機能をより好適に発揮することができる。
【0130】
補強体120に第2樹脂が含まれているため、補強体120とチューブ体110が良好に融着される。そのため、カテーテル本体100の端部を切断して先端チップ150やハブ160を取り付ける際、補強体120の端部がばらつくことのないように端部処理を施す必要がなく、製造作業が容易なものとなる。
【0131】
また、隙間部123に入り込んだ部分の凸部113の長さは、カテーテル本体100の軸方向に対して垂直な断面において、線状体121の厚みの2倍未満にしている。これにより、隙間部123よりも径方向内側まで凸部113が突出するのを防止でき、チューブ体110の内表面111と医療用デバイスとの間に作用する摺動抵抗を好適に低減させることができる。
【0132】
また、線状体121は、断面形状が丸形の線材により構成している。これにより、カテーテル本体100の内腔101に挿通される医療デバイスと補強体120との接触面積を小さくすることができ、摺動抵抗をより好適に低減することが可能になる。
【0133】
また、線状体121は、第2樹脂のみで構成している。これにより、カテーテル本体100の内腔101にガイドワイヤのような金属製の医療デバイスを挿通させる際に、補強体120とガイドワイヤが擦過して、ガイドワイヤに傷や破損が生じるのを好適に防止することができる。さらに、カテーテル本体100は、金型等を使用した成形加工を行う際、チューブ体110及び線状体121が樹脂のみで形成されているため、樹脂の流動を利用して外径、肉厚、硬度等を調整することが可能である。そのため、加工性にも優れたものとなる。
【0134】
また、第1樹脂よりも融点が高い樹脂で構成され、チューブ体110の外表面に配置された外層130を有している。これにより、外層130側から熱を付与した際に、補強体120に熱の影響が及ぶのを好適に防止できる。さらに、補強体120の外層に位置するチューブ体110を融解させて補強体120と外層130とを融着させることができるため、外層130と補強体120の融点が近い場合においても、補強体120の形状が損なわれるのを好適に防止しつつ、補強体120を外層130に対して接合させることができる。
【0135】
また、補強体120は、複数の線状体121a、121b同士が互いに交差する部分において、少なくとも一方の線状体が凹んでいる。これにより、線状体121a、121b同士の引っ掛かりが強固になるため、補強体120の管形状をより一層良好に保つことが可能になる。
【0136】
また、カテーテル本体100は、当該カテーテル本体100の基端を保持するハブ160を有し、さらに先端チップ150が設けられた先端部103と、ハブ160に固定された基端部104と、先端部103と基端部104との間に延在する中間部105と、を有している。線状体121は、中間部105において、チューブ体110の内表面111から突出しており、かつ、基端部104において、中間部105よりもチューブ体110の内表面111から突出していない。このため、カテーテル本体100の中間部105においては医療デバイスの円滑な移動を可能にし、基端部104付近においては医療デバイスが線状体121に引っ掛るのを好適に防止することが可能となっている。
【0137】
<変形例1>
次に、
図13(A)、
図13(B)を参照して、第2実施形態の変形例1に係るカテーテル本体200を説明する。本変形例の説明においては、既に説明した部材と同一の機能を持つ部材等についてはその説明を省略する。
【0138】
図13(A)、(B)に示すように、カテーテル本体200は、外層130を備えていなくてもよい。つまり、カテーテル本体200は、第1樹脂からなるチューブ体110と、補強体120とにより構成することが可能である。このように構成する場合においても、チューブ体110の一部を融解させて、チューブ体110と補強体120を融着させることで、医療デバイスとの間で作用する摺動抵抗を低減させることが可能な医療用長尺体10を提供することが可能となる。また、外層130を使用しない分だけ、部材点数を削減することができるため、製造コストの削減を図ることが可能となる。
【0139】
<変形例2>
次に、
図14を参照して、第2実施形態の変形例2に係る補強体320を説明する。本変形例の説明においては、既に説明した部材と同一の機能を持つ部材等についてはその説明を省略する。
【0140】
図14に示すように、補強体320を構成する線状体321は、例えば、金属からなる芯材322と、芯材322の外周面を被覆する第2樹脂324とにより構成することが可能である。
【0141】
芯材322を構成する金属としては、例えば、ステンレス、タングステン、銅、ニッケル、チタン、ピアノ線、コバルト−クロム系合金、ニッケル−チタン系合金(超弾性合金)、銅−亜鉛系合金、アモルファス合金等の各種金属素線を使用することができる。
【0142】
第2樹脂としては、例えば、前述した実施形態において第2樹脂として用いることができるものとして例示したものを用いることができる。
【0143】
金属からなる芯材322を備える線状体321を使用することで、カテーテル本体300の引っ張り強度をより一層向上させることが可能になる。また、
図14に示すように、第2樹脂324の一部を融解させて、チューブ体110の内表面111と溶着した部分325を形成することにより、線状体321とチューブ体110の間の接合強度が高められる。これにより、芯材322がチューブ体110に強固に固定されるため、芯材322がばらつくなどの問題が発生するのを好適に防止することができる。
【0144】
断面が丸形の線状体321を例示したが、断面が楕円形や矩形、その他の形状で形成されている線状体についても同様に芯材322を備えさせることが可能である。
【0145】
以上、実施形態および複数の変形例を通じて本発明に係る医療用長尺体を説明したが、本発明は実施形態および各変形例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0146】
例えば、医療用長尺体には、先端チップや耐キンクプロテクタを備えさせなくてもよい。また、医療用長尺体は、生体内への医療デバイス(ガイドワイヤや治療用の各種医療器具等)の導入を一つの目的として使用され得る限りにおいて、その具他的な用途は特に限定されることはない。
【0147】
また、医療用長尺体は、少なくとも、第1樹脂の融点が第2樹脂の融点よりも低く、かつ、補強体の隙間部にチューブ体の凸部が入り込んだ状態で、第1樹脂と第2樹脂とが融着された構成を備えていればよく、実施形態において説明したその他の構成等は適宜変更することが可能である。
【0148】
また、第2実施形態において説明したチューブ体および補強体を有するカテーテル本体は、例えば、第1実施形態において説明したようなバルーンカテーテルの内管(内管シャフト)として用いることも可能である。
【0149】
本出願は、2015年12月21日に出願された日本国特許出願第2015−249050号、および2015年12月21日に出願された日本国特許出願第2015−249048号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。