(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2つの容器を更に含み、少なくとも2つの前記電極の第1の電極が、少なくとも2つの前記容器の第1の容器と物理的に接続し、少なくとも2つの前記電極の第2の電極が、少なくとも2つの前記容器の第2の容器と物理的に接続していることを特徴とする、請求項1に記載の電気的静脈刺激装置。
少なくとも2つの前記容器のそれぞれが、被術者の指をその中に差し入れるための大きさおよび配置とし、液状の電解質溶液を保持するよう構成されている1つ以上の陥凹部を含むことを特徴とする、請求項2に記載の電気的静脈刺激装置。
少なくとも2つの前記容器のそれぞれが、少なくとも2つの前記電極のそれぞれと電気的に接続している液状の電解質溶液を更に含み、前記液状電解質溶液を通じて前記電気出力信号を被術者に伝えることを特徴とする、請求項3に記載の電気的静脈刺激装置。
被術者の片方の手の掌側面に付けた前記電極パッドに正の出力信号を供給し、被術者の腕に付けた前記電極パッドに負の出力信号を供給することを特徴とする、請求項6に記載の電気的静脈刺激装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、医療者がより容易に静脈に到達できるよう、患者の手、腕、足、または脚の静脈へ到達するための、より迅速で信頼性が高く、痛みが少なく、より効率的、安全で、繰り返し可能な方法が求められている。更に、高齢者、小児、新生児、外傷患者など、幅広い患者に対して、医療者が静脈に到達するのを助ける、患者の手、腕、足、または脚の静脈を、より迅速に、信頼性高く、繰り返し怒張または膨張させることのできる医療器具が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般論として、本件に開示されている内容は、電気的静脈刺激に関する。考えられる形態の1つ、および非制限的な例において、この電気的静脈刺激を用いると、駆血帯や、締め付けまたは圧迫を行う他の手段を用いる必要なく、静脈への到達が改善する。この開示内容には様々な態様が述べられており、これには以下の態様が含まれる(但し、これらに限定しない)。
【0008】
態様の1つは、被術者の標的静脈を、被術者の皮膚表面下で怒張させるための電気的静脈刺激装置であって、この装置は、電源装置と、電源装置から電力を供給されている信号発生器であって、この信号発生器が、特定の電気出力信号を発生するよう構成されている信号発生器と、信号発生器と電気通信し、被術者と電気通信して置かれるよう構成されている複数の電極と、を含み、電気出力信号は、予めプログラムされた繰り返しサイクルで時間と共に変化する、出力電圧、電流、および波形を含み、出力電圧、電流、および波形は、被術者の複数の末梢神経を刺激し、被術者の1つ以上の肢の静脈筋ポンプ機構を活性化し、また、標的静脈の生理機能を非侵襲的に変えるような生理学的反応を誘発するよう構成されていて、これにより標的静脈を被術者の皮膚表面下で怒張させる。
【0009】
もう1つの態様は、末梢標的静脈を刺激し、被術者の皮膚表面下で静脈を怒張させて静脈穿刺を行い易くする方法であって、この方法は、電気的静脈刺激装置を用いて、調節可能な電気出力信号を発生する工程であって、この信号が、被術者の標的静脈を、被術者の皮膚表面下から隆起させる、被術者の生理的静脈反応を誘発するよう構成されている、調節可能な出力電圧と、調節可能な電流と、調節可能な出力電圧波形とを含み、この電気的刺激装置が、調節可能な電気信号を発生するよう構成されている、電源付き信号発生器と、信号発生器と電気通信し、被術者と電気通信して置かれるよう構成されている複数の電極とを含む工程と、複数の電極を経て出力信号を被術者に伝える工程と、を含む。
【0010】
更に別の態様は、被術者の静脈針刺部での痛み信号を抑制する方法であって、この方法は、電気的静脈刺激装置を用いて、調節可能な電気出力信号を発生する工程であって、この信号が、被術者の標的静脈を、被術者の皮膚表面下で怒張させる、被術者の生理的静脈反応を誘発するよう構成されている、調節可能な出力電圧と、調節可能な電流と、調節可能な出力電圧波形とを含み、この電気的刺激装置が、調節可能な電気信号を発生するよう構成されている、電源付き信号発生器と、信号発生器と電気通信し、被術者と電気通信して置かれるよう構成されている複数の電極とを含む工程と、複数の電極を経て出力信号を被術者に伝え、これにより末梢神経を刺激し、また、被術者の少なくとも1つの肢の静脈ポンプ機構を活性化する工程と、を含む。
【0011】
更に別の態様は、被術者の静脈に到達する方法であって、この方法は、被術者の肢の一部を容器に差し入れる工程と、容器に液状の電解質溶液を供給する工程であって、液状電解質溶液が肢の一部に接している工程と、電気信号発生器で発生させた少なくとも1つの信号で肢の一部を電気的に刺激する工程であって、電気信号が、液状電解質溶液に接触している少なくとも1つの電極によって電解質溶液に与えられる工程と、被術者の肢の少なくとも1つの静脈を電気刺激に応じて隆起させる工程と、静脈が隆起している間に静脈に針先を挿入し、静脈に到達させる工程と、を含む。
【0012】
別の態様は、患者の肢の末梢静脈を一時的に拡張および怒張させて、採血の際に、または、カテーテルなどの静脈内カニューレを静脈に挿入する際に、駆血帯や、締め付けまたは圧迫を行う他の手段を必要とせずに、医療者が静脈に到達し易くなる、静脈電気的刺激装置である。この静脈電気的刺激装置は、静脈の解剖学的部位を構成している1つ以上の筋肉を刺激して静脈の内腔の周囲を拡大させ、これにより、標的静脈が皮膚を押すようにし、また同時に、標的静脈内の圧を下げて、これが静脈内の血液の総量を増やす助けとなり、これもまた静脈穿刺をより容易に、より安全に行い易くするよう構成されている。
【0013】
更に別の態様は、1対の電気出力端子を備えた信号発生器と、信号発生器と電気通信している電源装置と、信号発生器の出力端子と近位端で電気通信している少なくとも1対の導線と、導線の近位端と電気通信し、電気信号を患者(または被術者)に伝えるよう構成されている少なくとも1対の電極と、を含む装置である。患者または被術者は、哺乳動物、より具体的には、人間であって良い。
【0014】
更に別の態様において、この装置は、患者の肢の静脈穿刺の標的である末梢静脈の生理機能を、従来から使用されている受動的手段を使わずに、あるいは、駆血帯や、締め付けまたは圧迫を行う他の手段を使う必要なく、能動的電気信号を用いて非侵襲的に変えるよう構成されている。本件に開示されているひとつの態様において、この装置で患者の皮膚に与えられた能動的信号は、標的静脈の生理学的反応と状態/挙動の変化とを誘発し、静脈を血液で満たして怒張/拡張させ、より硬くし、これにより静脈の視認性を高める。このように、この装置および方法を用いると、医療者は、良好かつ適切な静脈穿刺を行い易くなる。標的静脈内とその周囲の組織の生理機能を非侵襲的に変えて、標的静脈の位置を探し易くし、また、何度も試みる必要なく、良好かつ適切な静脈穿刺を行い易くする他の能動的装置は、今のところ存在しない。
【0015】
更に別の態様において、電気信号発生器は、出力電圧を調節するための、複数のコンデンサおよび抵抗器と、少なくとも1つの電位差計とを含んでいる。電気信号発生器は、出力信号を調節するよう構成されているプログラミングを更に含み、出力信号は、時間と共に患者に与えられる、出力電圧、出力電流、出力電圧波形、および/または信号周波数の1つ以上を含み、患者の肢の運動筋内の静脈ポンプ作用を刺激して、患者の末梢静脈を怒張させることができる。ある実施形態において、電気信号発生器は、出力電圧と、出力電圧波形の形状を変えるよう構成されている。出力電圧は、どれだけ多くの筋繊維を活性化(recruited)および刺激(fired)するか(即ち、波形の筋肉刺激部分)、更に、どれだけ多くのエネルギーを用いて、シナプス結合を通して神経インパルスを送り出すかを決定する。出力電圧波形の形は、どのような情報を脳へ伝えるかを決める。
【0016】
別の態様において、発生する電気信号は、1ミリアンペア未満のAC信号であり、電位差計からの出力電圧は、0から90ボルトの範囲である。
【0017】
別の態様において、電気信号発生器は、特定の予め決められた出力電圧波形を発生し、これは患者の肢を覆っている皮膚に伝えられる。発生した電気波形の一部は、標的静脈の周囲の小さな不随意筋と近傍の随意筋が身体的反応を示して筋肉の伸縮が起こるような、周波数、デューティーサイクル、パルス幅、および電圧に特に調節される。この予め決められた波形とこれから生じた静脈の反応により、静脈は硬く、その外周は大きくなる。予め決められた波形の他の部分は、皮膚内の周辺の神経を刺激して、針刺によって生じる身体の痛み信号を打ち消す。この神経刺激は、静脈穿刺に通常伴う痛みと不安を低減する。電気信号の更に別の部分は脳を刺激して身体にエンドルフィンを放出させ、これにより患者の不安を低減する。
【発明の効果】
【0018】
別の態様において、本件では、末梢神経を刺激することで静脈の針刺部での痛み信号を抑制し、また、外部の電気的刺激装置を用いて患者の肢の静脈ポンプ機構を活性化することで末梢神経を拡張させる、医療者が、患者の末梢静脈へ到達する方法を開示する。
【0019】
別の態様において、緊急でない患者にとって、本件に開示している一部の実施形態を使用する利点は、医療者が静脈へ到達するまでに費やす時間を短縮し、これまで医療者が静脈へ到達するのが困難であった患者群において静脈へ到達しようとする際の失敗の回数が減ることである。更に、緊急の場合および急患では、素早く静脈に到達できると、生命維持に必要な液体および/または薬剤を投与するスピードが上がり、これにより救命処置にかかる時間を短縮し、患者の生命を救う可能性がある。
【0020】
図面は、説明のみを目的としており、必ずしも縮尺通りには描かれていない。しかし、本件に開示されている内容は、添付図を併用しつつ、以下に述べる詳細な記述を参照することで最も良く理解できよう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面を参照しながら、様々な実施形態について詳細に述べることとする。いくつかの図面中において、類似の参照番号は、同様の部品および組立品を表している。様々な実施形態への言及は、本件に添付されている請求項の範囲を限定するものではない。更に、本明細書中に示されている実施例はいずれも、限定することを意図しておらず、添付請求項の多くの可能な実施形態の一部を示しているだけである。
【0023】
本件に開示されているものは様々な形に具体化できるが、本件に開示のものは本発明の例示とみなされるべきであり、また、本発明を文中に述べられている特定の実施形態に限定するものではないという了解の下で、1つ以上の現時点で望ましい実施形態を図面に示し、また、これ以降で述べるものとする。標題は便宜上示されているのであって、どのような方法であれ本発明を限定すると解釈すべきではない。いずれかの標題の下に示されている実施形態を、いずれか別の標題の下に示されている実施形態と組み合わせても良い。
【0024】
図1〜5を参照するならば、一般に、ここに開示されているものは、患者の腕または他の肢を通って、1つの肢から、肢を通って上方へ、脊椎を越えて、また、他の肢を下って電気信号を伝え、患者の手、腕、脚、または足の静脈を怒張または膨張させるよう構成されている電気的刺激装置1のひとつの実施形態である。このようにして、刺激装置は、患者の腕、手、脚、または足の末梢静脈を見え易くし、これにより医療者は、採血または末梢静脈カニューレの挿入を行うために静脈に到達することができる。この装置は、一般に、1対の電極で、または、この装置を患者の腕または足に接続する別の手段で、患者の手および/または腕(または他の肢)と電気通信するように設置され、電気的に接続した患者の肢を通して予め決められた電気信号を伝える。
【0025】
こうして、電気刺激が行われている間に静脈が血液で満たされ、駆血帯や、締め付けまたは圧迫を行う他の手段を必要とせずに、静脈の内圧が高まる。静脈内の圧力が高まると静脈が硬くなり、針または他の静脈内カニューレをその中に挿入するために必要な物理的抵抗または力が高まる。標的静脈の物理的抵抗が高まると、静脈に針を差し込む際の医療者の物理的感覚が改善し、静脈の中心内腔内に針先が正確に挿入されている場合と、針が静脈を突き抜けている場合(重大な医療的問題を生じかねない)とを、より判別し易くなる。
【0026】
一般に、電気的刺激装置1は、電気信号発生器10と、信号発生器と電気通信し、それに電力を供給するよう構成されている電源装置12と、電気信号発生器の複数の電気出力端子16と近位端で接続している少なくとも1対の導線14と、それぞれの導線14の遠位端に接続している少なくとも1対の電極18とを含んでいる。
【0027】
電源装置12は、例えば、9ボルトのバッテリ、他の電圧のバッテリ、充電式バッテリなど、携帯型電源装置であっても良い。あるいは、電源装置は、壁の一般的なコンセントに差し込む、標準的な電源コードを用いるものでも良い。
【0028】
電気信号発生器10の一例を
図6に示し、電気信号発生器10のもうひとつの例を
図14に示す。
図6の電気信号発生器10は、電源装置12、導線14、容器28、および電解質溶液30を含む。一部の実施形態は、1つ以上の導線14、電極18、および容器28に繋がった、2つ以上の電気信号発生器10を含んでいる。
【0029】
電気信号発生器10は、
図7を参照しながら説明および記述している波形、または、
図8、9、13、15、16に示す波形などの他の適当な波形を持つ電気出力信号を発生するよう操作可能な電気回路20を含んでいる。一部の実施形態において、電気回路20は、互いに電気通信している、抵抗、コンデンサ、変圧器、マイクロプロセッサなどの1つ以上の電子部品を含んでいる。
図6に示す例では、電気信号発生器10の電気回路20は、電源スイッチ50、発振器52、可変制御54、および出力回路56を含んでいる。この例で、発振器52は、マイクロコントローラ62などの集積回路を含んでいる。出力回路56は、演算増幅器64および66、コンデンサ68などを含む第1ステージ58と、変圧器70を含む第2ステージ60とを含んでいる。第2ステージ60の出口は出力端子16となっており、ここに導線14および電極18を電気的に接続して、出力信号を患者に伝えることができる。
【0030】
発振器52が作動すると、初期振動信号が発生する。この例では、発振器は方形波発生器を含んでいる。方形波発生器の一例は、8ピン、フラッシュベースの8ビットCMOSマイクロコントローラ、部品番号 PIC12F675、米国アリゾナ州チャンドラー、Microchip Technology Inc.製などのマイクロコントローラである。方形波発生器のもうひとつの例は、555タイマーである。方形波発生器は、低電圧と高電圧の間、例えば、0から5ボルトの間で振動する方形波信号を発生する。この例で、方形波は、4Hzから12Hzの範囲の周波数を持つ。一例として、周波数は7.83Hzである。この範囲内の周波数は、刺激後、次の刺激の前に、患者の神経が再分極する時間を与えるため、これより速い周波数よりも望ましいことが分かっている。この周波数は、神経がより速く再分極する健康人ではもっと高くても良いが、神経の再分極に時間のかかる不健康な人では、振動数を一般に低くする必要がある。
【0031】
一部の実施形態において、信号発生器10は、信号発生器10の電気回路と電気通信している、1つ以上の電位差計22、24などの可変制御54を含んでいる。1つ以上の可変制御54により、医療者、患者、その他の人などのオペレータは、信号発生器10で発生する信号の強度を上げる、または下げるなど、信号強度を調節するための入力を行うことができる。この例では、信号発生器内にあるそれぞれの電位差計22、24が、それ自体の導線14と電極18とを備えた、個別の出力電圧チャンネル(それぞれが、それ自体の信号発生器10を備えている)に相当し、その電圧を、可変制御54に繋がっている、それ自体の強度調節ノブで調節して、信号発生器10から導線14と電極18を経て患者へ送られる、そのチャンネルの出力電圧を調節/設定する。患者の受ける出力電圧が調節可能であると、快適なレベルまでに調節して下げた電圧を患者が受けることができ、その結果、装置を使用する際の患者の不安が減って、標的静脈内の血液量を減少させるおそれのある、不安またはストレスによる血管収縮が起きにくくなる。
【0032】
ある実施形態において、信号発生器10は2つの可変制御(例えば、電位差計22、24)を含み、このため、それぞれがそれ自体の信号発生器10を備えた2つの個別の出力電圧チャンネルを持つことができる。それぞれの強度ノブおよび可変制御54で、2組の電極に沿って患者へ送られる出力電圧を個別に調節することで、これらは2つの出力電圧チャンネルのそれぞれに相当する。2つの電位差計の一方22とその個別の出力電圧チャンネルは、標的静脈を膨張または怒張させるよう構成された出力電圧を患者に伝える。2つの電位差計のもう一方24とその個別の出力電圧チャンネルは、痛みに関する神経信号を遮断することで、針刺部での痛みを止めるよう構成された出力電圧を患者に伝える。この実施形態では、2つの出力電圧チャンネルは同一であるが、別の実施形態では、それぞれの電位差計が、異なる範囲で出力電圧を調節するよう構成されていても良い。それぞれが出力電圧を調節する機能を備えた2つの個別のチャンネルを持つことで、刺激装置1を、足、首、肘の標的静脈、または他の同様の標的静脈部位に合わせて構成することができる。
【0033】
この例では、信号発生器10の電子回路20は、出力回路56を更に含んでいる。出力回路は、発振器52で発生させた方形波信号を、
図7〜9、13、15、または16に示す波形などを持つ、所望の出力信号に変換する働きをする。
【0034】
出力回路の第1ステージ58は、演算増幅器64および66、コンデンサ68などの電子部品を含んでいる。第1ステージ58は、ユーザーからの入力を受けて、信号発生器10で発生させる信号の強さを調節するための可変制御54に繋がっている。この例では、可変制御54は可変抵抗を生じる電位差計である。可変制御54は演算増幅器64の入力と電気的に接続している。可変制御を調節するにつれて、可変制御54から与えられる信号の電圧が変化する。この例では、演算増幅器64はユニティゲイン緩衝増幅器として構成されている。
【0035】
発振器52は、方形波出力(例えば、ピン7)を発生し、これは次にコンデンサ68に供給される。コンデンサ68は、方形波信号を、電圧変化の急激な前縁と、それに続く、電圧が次第に減衰する後縁を備えた、一連のパルスに変換する。
【0036】
次に、信号は第2ステージ60に送られ、ここで、更にフィルタにかけられ、また、増幅器、例えば、非反転構造に配置された演算増幅器66を用いるなどして増幅される。
【0037】
増幅された信号は、次に、変圧器70を含む第2ステージ60に送られる。変圧器70は信号を増幅および整流する働きをする。
【0038】
一部の実施形態において、変圧器70は巻き線比が異なっている。一例として、変圧器は10:1変圧器であり、これは電圧を上げる構造に配置されていて、出力の電圧が高くなる。考えられる別の実施形態では、変圧器を、電圧を下げる構造に配置することができる。別の実施形態は、別の巻き線比を持つ。更に別の実施形態では、変圧器を使用せずに第2ステージで出力を発生させることも可能である。
【0039】
この例では、変圧器70は中心タップ変圧器である。第1ステージ58で発生した振動信号は一次巻線および中心タップへ送られ、1対のダイオードと連動して作動して出力信号を整流する。出力信号は二次巻線で発生し、出力端子16へ供給される。一次巻線と二次巻線の比が、変圧器70で得られる増幅を決める。
【0040】
一部の実施形態において、回路20は、出力信号を自動的に変えるように構成された電子的構成要素および/またはプログラミングを更に含み、これには、可変制御(例えば、電位差計22、24)を調節せずに、時間と共に、出力電圧、出力電流、出力電圧波形の形状、および/または、出力信号の周波数の1つ以上を変えることが含まれると考えられる。ある実施形態において、出力信号は、マイクロプロセッサで特定のコンピュータコードまたはソフトウェアプログラムを実行することで、時間と共に変えることができる。別の実施形態において、出力信号は、信号発生器10の回路内に一般的な点滅発光ダイオード(LED)63を加えることで、費用をかけず、不規則に変化させることができる。点滅LEDは通電すると自動的に点滅し、“オン”状態と“オフ”状態の間で交互に変わる。この2つの状態間での点滅頻度は入力電圧に応じて変化する。ある実施形態では、電極で患者に付けた出力導線に接続している電気回路内の、マイクロプロセッサの下流、増幅回路の上流に、点滅LEDを設置する。“オン状態”と“オフ状態”との間で交互に切り替わる点滅LEDが、出力電流を一定速度でオンとオフに切り替えると、信号発生器10は、点滅LEDの点滅頻度に従って時間と共に電気出力信号および電圧を変化させる。このように、LEDは信号発生器からの出力信号の反復タイマーとして働く。また、LEDの周波数は、その入力電圧に応じて変わるため、無限に変えられる出力信号を患者に与えるように、電位差計からの電圧を調節して点滅LEDの周波数を変えようと考える。
【0041】
更に、安価な点滅LEDのように、点滅LEDの製造に使用する部品の品質が低いと、加えられた電圧に対する点滅頻度の一貫性または安定性に変動または不揃いがより発生すると考えられる。従って、低品質の点滅LEDは、高品質の点滅LEDよりも不揃いな点滅パターンを生じる。その結果、ある実施形態では、信号発生器10から患者に送られる電気信号の周波数をより不揃いにするために、本件に開示の回路内に低品質の点滅LEDを使用することが有益なこともある。
【0042】
更に別の実施形態では、本件に開示されている範囲から外れることなく、出力信号および電圧を時間と共に変化させる、更に別の方法が示されている。文中に開示されている方法で出力信号を変化させると、患者の身体は変化する出力信号に対して絶えず反応する。むしろ、一定した出力信号には慣れてしまい、それに短時間曝露された後、静脈系がもはやそれに反応しなくなると考えられる。
【0043】
信号発生器10は更に、電気的刺激装置1を使用している医療者に、装置の電源が“オン”になった時を示すため、LEDや、その他の光る表示装置などの表示装置32を、少なくとも1つ含んでいても良い。電気信号が患者へ送られている時を示す、追加の表示装置を加えても良い。ある実施形態では、表示装置が両方の機能を果たすこともあるが、別の実施形態では、2つの機能のそれぞれを知らせるため、別々の表示装置を用いることもある。
【0044】
装置1は、更に、リアルタイムの出力電圧および信号、初期設定の出力電圧および信号、故障状態、刺激装置の故障診断情報、その他、必要と考えられる何らかの設定、出力、またはフィードバック情報を医療者に伝え、表示するよう構成されている、プログラミングおよび/またはディスプレー画面を含んでいても良い。別の実施形態において、装置1は、患者へ送られるリアルタイムの電気的情報(例えば、時間に対する電気信号および/または電圧)を図示するよう構成されているディスプレーを含むことがある。更に別の実施形態において、刺激装置1は、本装置が、ここに開示されている情報のいずれか/全てを表示するための、別個の、スタンドアロンの外部ディスプレーに接続するよう構成されている、データ出力プログラミングおよび関連する出力コネクタを含んでいても良い。
【0045】
一部の実施形態において、電子回路20は、1つ以上の回路基板上に配置されている。回路基板は少なくとも1つの基板層を含み、一般にその上には、電子的構成要素の間を電気的に繋ぐための、少なくとも1層の電気配線が形成されている。一部の実施形態において、電子信号発生器10は回路基板上に作られる。
【0046】
出力信号は、近位端が信号発生器10に接続し、遠位端が1対の電極18に接続している2本の導線14によって、信号発生器10から患者の身体へ送られる。本件に開示されているひとつの実施形態において、電極18は、1対のカップまたは容器28、例えば、1対のマニキュア用ネイルソーキングボウル、または、液状の電解質溶液30を溜め、その中に患者の指および親指の先端を浸すように作られた同様の容器として構成されていても良い。一部の実施形態において、容器には、少なくとも手の指先、または足のつま先をその中に差し入れるような大きさおよび形状とした、1つ以上の陥凹部がある。電解質溶液を使用する目的は、患者が指をそこに入れ、それを通じて電気信号が患者に伝わるような、導電性の液状媒質を準備することである。ある実施形態において、電解質溶液は、ミネラルと水の混合物であっても良い。しかし、別の実施形態において、電解質溶液は、導線と患者の皮膚との間の導電性を高めるために使用する、別の種類の溶液であっても良い。
【0047】
本件に開示されている別の実施形態において、電極は、電極パッドが患者の皮膚に付着し易く、導電性パッドと患者の皮膚との間の電気的接触が良くなるように、片側に導電性ゲルまたは接着剤の層を設けた、1対の導電性電極パッドとして構成されることがある。このような電極パッドは、経皮電気的神経刺激(TENS)装置または携帯用徐細動器に使われているものと同じであっても良い。更に、電極パッドは使い捨てであっても良い。実施形態の一例では、
図10に示すように、少なくとも1対の電極180、182が、1対の電極の第1電極180を患者の片方の手の掌側面に付け、1対の電極の第2電極182を患者の腕、望ましくは二頭筋に付けるよう、片側に接着性の裏張りの付いた導電性電極パッドとなっている。
図10の実施形態では、第2電極182を付けた腕は、第1電極180を手に付けた腕と同じである。あるいは、第2電極182を、患者の他方の腕に付けても良い。しかし、この場合、効果的に静脈を拡張させるには、より強度の大きい出力信号を患者に与えることが必要と考える。
図10に示すように、一対の電極180、182は、導線140の遠位端にそれぞれ繋がっており、導線の近位端はそれぞれ、刺激装置の信号発生器(図示せず)に繋がっている。実施形態の一例では、患者の片方の手の掌側面に付けた電極180から正の出力信号を患者に与え、一方、患者の腕に付けた別の電極182から負の出力信号を患者に与える。あるいは、負の出力信号を電極180に供給し、一方、正の出力信号を電極182に供給することもできる。
【0048】
一対の電極180、182を患者に付けた後、信号発生器のスイッチを入れて出力信号を患者に与え、電気的刺激を開始することができる。身体的反応、例えば、筋肉の痙攣および/または静脈の怒張が見られない場合、出力信号の強度を高めても良い。あるいは、患者が不快に感じた場合は、我慢できる程度であるが、先に述べたような身体的反応がまだ起こる程度まで出力信号の強度を下げても良い。近位端が信号発生器(図示せず)に、遠位端が一対の電極180、182に繋がっている2本の導線140で、出力信号を信号発生器から患者の身体へ送るにつれ、患者の腕にある静脈の怒張が始まり、これは通常、少なくとも約10分間は続くと考えられ、また、実に約15分以上も続くことがある。実施形態の一例において、電気的刺激は、少なくとも2分間続けるが、10分を超えることはない。特に、標的静脈が見える、および/または、触診できるようになったら電気的刺激を中止しても良い。標的静脈が怒張したら信号発生器のスイッチを切り、静脈穿刺や、静脈の怒張が必要なその他の医療的処置を行うことができる。
【0049】
ある実施形態において、
図11に示すように、本件に開示の電気的刺激装置は、医療者が使うためのキットを構成していることがある。このキットは、望ましくはバッテリで動く信号発生器100と、電解質溶液を入れるための1対の容器28と、エプソム塩の入ったラベル付きの瓶110と、脱イオン水の瓶115と、一対の電極と、これを信号発生器100に接続するための1対の導線とを含む使い捨ての電極集合体112と、を含むことができる。このキットは、前述の実施形態のひとつに述べたように、電極を取り付けて電解質溶液を加えた容器28を用いて、あるいは、前述の別の実施形態に述べたように、電極を患者に直接接続して、患者を電気的に刺激するために使用することができる。
【0050】
電解質溶液を加えた容器28を用いて患者の電気的刺激を行う場合、電解質溶液は、エプソム塩の入った瓶110に、用意された脱イオン水115を加えることで調製可能である。ある実施形態において、エプソム塩濃度は少なくとも約30g/Lである。その後、電極を容器28に取り付け、次に、患者の手を容器28に差し入れた後、調製した電解質溶液を容器28に加える。次に、用意された導線を経由して電極を信号発生器100に繋ぎ、信号発生器100のスイッチを入れると、出力信号を一対の電極に送ることができる。電極の1つに負の出力信号を送り、他の電極に正の出力信号を送ることができる。先に論じたように、標的静脈が怒張したら信号発生器のスイッチを切り、静脈穿刺や、静脈の怒張が必要なその他の医療処置を行っても良い。しかし、血液の化学分析の結果に影響を及ぼすおそれのある塩溶液を除くため、静脈穿刺を行う前に患者の手を水で洗うことが望ましいと考えられる。
【0051】
これまでの実施形態では、電解質溶液に指先を入れられるような小さな容器、または導電性電極パッドとして作られた電極を示してきたが、電極は、このような実施形態に限定されるべきではなく、別の実施形態では別の構造が望ましいこともある。例えば、別の実施形態において、電極は、患者の手、足の全体、または、患者の身体のどこか一部、例えば、腕および/または脚(但し、これに限定しない)を、信号発生器と電気通信している電解質溶液に浸せるような、別の大きさの容器であっても良い。更に別の実施形態において、電極は、接触型の電極である、1つ以上の金属ピン形プローブまたは金属板であっても良い。更に別の実施形態において、電極は、パルス酸素濃度計で使われるものと同じ機械構造の、指を挟むタイプのプローブであっても良い。更に別の実施形態において、電極は、導電性の覆い、または、本件に開示されている範囲から外れることなく、別の物理的構造を持つ同様の接触型電極であっても良い。更に別の実施形態において、電極は、磁界を発生し、その磁界の中に患者の手、足、または肢を入れる、1つ以上の電磁石として構成されていても良い。電磁界は、磁界を変化させることで、患者の体内で補足的な電気信号を発生するよう構成されている。このような実施形態では、患者は信号発生器に直接繋がっていない。
【0052】
ある実施形態において、信号発生器10から電極を通って患者の肢へ送られる電気信号出力は、交流信号(AC)である電気信号を含んでいる。ある実施形態において、患者へ送られるAC信号は、7.83Hz(または、7.83完全交流サイクル/秒)の周波数を持つ。これは、出力回路が毎秒7.83回中断することを意味する。この7.83Hzの周波数は、ある実施形態において、連続する出力信号の間に患者の神経が再分極する時間を与えて、次に続く出力信号に対して準備する時間を設けるために選択した。神経が再分極できるように適当な時間を置くことで、信号発生器10で発生した信号は、一定した効果を電極周辺の皮膚、神経、および筋肉に与える。
【0053】
別の実施形態の例では、
図12に示すように、患者へ送られるAC信号は、非対称電荷バランスの二相性波形(assymetrical charged balanced biphasic waveform)で、7.9Hzの周波数を持つ。1200オーム、1600オーム、950オームでのパルス持続時間はそれぞれ、68.8μs、60.0μs、77.0μsである。更に、1200オーム、1600オーム、950オームでの最大振幅はそれぞれ、80.4V
peak、94.4V
peak、70.5V
peakである。
図12は、最大強度設定における純粋な負荷抵抗についての理論的標準測定値のひとつの実施形態を示しているが、出力はパラメータ設定に応じて変わることがある。
【0054】
上記の実施形態では、それぞれ7.83Hzおよび7.9Hzの周波数で作動しているが、出力信号の周波数は、このような特定の周波数だけに限られるとすべきではなく、別の実施形態において、ACまたはDC信号は、本件に開示されている範囲から外れることなく、異なる周波数であっても良い。別の実施形態において、出力信号の周波数は、信号発生器の特定の電気回路設計に応じて、どのような異なる周波数であっても良い。例えば、別の実施形態において、異なるデューティーサイクルまたは出力サイクル、あるいは、後に展開する異なる波形であっても、異なる周波数を使用することがある。更に、別の実施形態において、信号発生器10は、年齢の異なる患者間の生理学的な違い、患者の循環器系開通性、患者の身体の他の生物医学的および/または生体電気的状態に関して検知されたフィードバックに基づいて、出力信号の周波数または波形を調節するよう構成されていても良い。ある実施形態において、信号発生器10のマイクロプロセッサは、高齢患者によく見られる変化、例えば、薄い皮膚、敏感な皮膚、出血し易い皮膚などに対して出力信号を調節するプログラミングを更に含んでいても良い。
【0055】
ある実施形態では、電位差計22、24の少なくとも1つによって設定される信号発生器10からの出力電圧を、初めに、0ボルトから90ボルトの範囲内になるよう設定する。別の実施形態では、2つの出力電圧チャンネルのそれぞれを、0ボルトから90ボルトの間の範囲内になるよう設定することもある。しかし、別の実施形態では、電位差計22、24が、文中に示されている範囲よりも大きいまたは小さい出力電圧範囲を持つこともあり、また、それぞれを選択的に、初期出力電圧値に設定し、あるいは、本件に開示されている内容から外れることなく、前述のより大きいまたは小さい電圧範囲内の新たな出力電圧値に調節しても良い。
【0057】
信号発生器10は、出力信号の連続する各サイクルの間の時間、患者の身体の抵抗および電気容量を測定するよう構成されている、組み込まれたフィードバックシステムを更に含んでいても良い。ある実施形態において、患者へ送る出力信号を調節するために、フィードバックシステムは、患者の身体の電気および容量抵抗(即ち、電気的背圧)、更に、それらの何らかの変化に反応する、10対1(10:1)の可聴周波変圧器を利用する。それぞれの人体は電気抵抗を示す。この抵抗は、体重、水分量(hydration)などで変わることがある。この電気抵抗は処置の間にも変わることがある。信号発生器10は、可聴周波変圧器を用いて患者の身体の電気抵抗を測定し、それに応じて、信号の一部として患者に伝えられる出力電圧および/または電流を適切に変更する。そうすることで、フィードバックシステムからのフィードバックに基づいて信号が変わり、処置に対して患者の身体の反応が変化する場合でも(即ち、患者の電気的背圧、または身体的抵抗および/または電気容量の変化)、信号発生器10は、患者の身体内に同じ臨床または生理学的反応を必ず誘発すると考えられる。
【0058】
単純な変圧器は、患者の身体の電気的背圧を単純かつ安価に監視する働きをする。患者と電気通信している変圧器を経て、マイクロプロセッサが患者の身体内で非常に高い電気抵抗を検知すると、信号発生器から患者へ与えられている一定出力電圧のため、信号発生器から患者へ、ごく微量の電流が流れると考えられる。信号発生器からの入力電流が非常に低い(小型電池で電力を供給する場合など)、また、出力電圧導線にあまり抵抗がないと、電池出力が低下して、電流が著しく下がる。人体で測定される電気抵抗はかなり一定しているが、人体の電気容量は大きく変わることがある。人体のコンデンサ的な部分から電気エネルギーまたは電荷が突然放出されると、痛みを伴った電気衝撃が身体に走ることがあり、これは、患者の神経または心臓系を傷つけ、また、処置によって生じる患者の身体の好ましい臨床反応を妨害するおそれがあるため、これは懸念される。
【0059】
フィードバックシステムの変圧器は、信号発生器の出力電圧(この電圧は、予めプログラムされた電圧波形に従って時間と共に変動する)をフィルタして、所望の静脈拡張反応の誘発に最も効果的な、電圧波形の特定の部分を患者へ伝えることができる。患者の電気的背圧は患者の身体内で反応を引き起こし、結果として患者の身体から電気信号を発生し、この信号は信号発生器で捕捉および読み取ることができる。次にこれを入力として使用し、信号発生器からの次のサイクルの出力信号の出力電圧を調節することができる。
【0060】
別の実施形態において、フィードバック機構は、患者の電気抵抗および電気容量のフィードバックを監視し、更に、監視したフィードバックに基づいて、患者へ送る出力信号を調節するよう構成されている、信号発生器のマイクロプロセッサ内の特定のプログラミングであっても良い。更に別の実施形態において、フィードバックシステムは、患者の抵抗および電気容量を測定するよう構成されている複数のセンサ、あるいは、本件に開示されている範囲から外れることなく、フィードバックの抵抗および電気容量を測定するよう構成されている、他の電気部品またはコンピュータコードなどを利用しても良い。
【0061】
ある実施形態において、装置1は、信号発生器10からの全ての出力信号を止め、患者の身体が最後の出力信号に反応するのを待つように構成することができる。患者の身体が最後の信号に反応すると、患者の身体は、その結果として電気信号を発生し、この信号を信号発生器10で捕捉し、分析し、また使用して、信号発生器10から患者へ送られる次の出力信号を変えることができる。これは、適切なマイクロプロセッサおよびソフトウェアを用いて、リアルタイムで行うことができる。別の実施形態において、信号発生器のフィードバック機構が、出力信号の連続するサイクルの間で10%を超える患者の生体電気抵抗または電気容量の変動を測定した場合、10%を超える変動は、患者の身体がストレス反応を起こし、もはや出力信号に反応しないことを示すと考えられるため、信号発生器のスイッチが切れ、または、故障モードとなるよう構成されている。ある実施形態では、信号発生器が、個別の患者の特定の生理機能および関連する生体電気的特性に基づいて、出力信号波形、電圧、電流を自動的に調節することがある。
【0062】
更に別の実施形態において、信号発生器は、患者から、患者の生理学的反応データを含む生理学的データを、刺激装置を用いて収集するためのソフトウェアを含んでいる。次に、出力信号を最適化し、特定の患者について最良の静脈反応を得るために、このデータを信号発生器で蓄積および分析し、これを用いて出力信号をリアルタイムで変化させることができる。
【0063】
信号発生器には、電極を経て患者へ送られる電流量および電圧、更に、患者へ送られる出力電圧波形の形状を制御し、患者から受信する電気的フィードバック(即ち、患者の体内の抵抗および電気容量)を監視し、患者へ送られる電圧出力、電流出力、または電圧波形の形状のどれもリアルタイムで自動的に調節するよう構成されているプログラミングを備えた、マイクロプロセッサが含まれていても良い。マイクロプロセッサは、本件に開示されている範囲から外れることなく、任意の速度または内部記憶容量を備えた、どのようなプログラマブルマイクロプロセッサであっても良い。ある実施形態において、マイクロプロセッサは、信号発生器から患者へ送られた元々の出力信号と、患者から戻った信号とを比較するよう構成されているコンパレータ回路を含んでいても良い。次に、比較の結果をマイクロプロセッサで使用して、患者へ送られる次の出力信号が釣り合うように、出力信号を釣り合わせて変化させる。このような実施形態では、マイクロプロセッサは、第1信号と共に患者へ送るベースライン波形を、そのメモリー内に保存していることがある。次に、フィードバックシステムを通って、患者からマイクロプロセッサへ応答/反射信号が送り返される。この応答/反射信号も、マイクロプロセッサ内に保存される。その後、マイクロプロセッサは、患者の神経を穏やかに誘導するために、先に保存してある入力した応答/反射信号に基づいて、次に出力する信号を適応させて、静脈を最も良く見えるようにするために必要な、最良の波形、電圧、電流を運ぶ。この比較過程により、毎回患者へ送られる出力信号は、患者の末梢静脈で望ましい生理学的および臨床的反応を誘発し続けるようになり、患者の身体が送られる信号に慣れてしまうのを防ぐと考えられる。
【0064】
更に、プロセッサは、所定の信号周波数を保つよう構成されたプログラミングを含んでいる。例えば、ある実施形態において、マイクロプロセッサは、7.83Hzの、予めプログラムされた信号周波数を保つようプログラムされている。しかし、別の実施形態では、本件に開示されている範囲から外れることなく、別の周波数を選んでも良い。例えば、一部の患者群または小集団、例えば、肥満患者、高齢患者、新生児患者などでは、静脈が最も良く見えるようにするために、信号周波数を変える必要があることもある。更に、ある実施形態では、例えば、電源装置が、時間と共にゆっくりと出力の低下する電池で、これを使い続ける場合など、常に電圧が低下する際にも適切に作動し続けるよう、マイクロプロセッサをプログラムし、また構成することができる。
【0066】
図7に、1サイクルの信号の能動的部分を表している実施形態のグラフの一例を示す。このグラフは、ミリ秒で表した時間(X軸)に対する出力信号の出力電圧(Y軸)を表しており、これは、患者に、望ましい静脈の怒張と痛みの抑制を誘発することができる。その中に様々なピークと谷の位置および振幅を含む信号の形状は、標的末梢静脈の能動的な信号による拡張を誘発することのできる、例えば、医療者が静脈穿刺を行う際の助けとなる、波形の一例である。
図8、9、13、15、16は、1サイクルの信号の能動的部分を表している、波形グラフのその他の例を示している。
【0067】
図7を更に見ると、出力信号の出力電圧と時間との対比を描いた波形上に、複数のポイント1〜9が認められる。グラフ上のポイント1は、反復出力信号の新しいサイクルの開始に相当し、これは、患者の感覚神経に(皮膚表面のその樹状突起を経て)状態の変化を警告し、または刺激するよう選定した、信号発生器からの初期出力電圧を示している。この初期出力電圧は、患者の体内で特徴的な電圧、電流、波形を持つ微小な電気信号を発生し、これが中枢神経系へ送られて、脳は四肢を監視することができる。それに応じて、脳は、脳への信号の発生源である特定の感覚樹状突起へ回復信号を送り返す。
【0068】
グラフ上のポイント2は、神経刺激信号の主要な有効部分に相当する。このポイントは出力信号の神経刺激部分の主要出力電圧であり、これは患者の肢の末梢神経を過剰反応させ、同時に、標的末梢静脈周囲の隣接する筋肉にテタニーまたは痙攣を起こす。これは、信号発生器の電位差計22、24の一方のノブで調節される、波形の部分である。太り過ぎの患者では、皮膚内の脂肪層によって、ポイント2での電圧レベルが自然に抑えられる。従って、太り過ぎの患者では、信号を患者の神経に到達させ、脂肪層の抵抗を越えるために、より高い出力電圧を患者へ送る必要があると考えられる。信号発生器内で10対1(10:1)の可聴周波変圧器、または、他の同様の変圧器を使用し、患者へ送る出力電圧信号を増幅することでこれを行うことができる。あるいは、マイクロプロセッサに含まれるプログラミングを実行することで、脂肪層の抵抗を越えて信号が神経に届くまで電圧を上げても良い。
【0069】
電圧波形グラフのポイント3は、患者の感覚神経を“オフ”にする出力電圧に相当する。この場合、ポイント3は、神経を休ませ、その待機電圧にリセットさせて、次に続く出力信号サイクルで再び使用され、または“オン”となるのを待つようにする電圧である。電圧波形グラフのポイント4は、信号の正の部分を打ち消し、刺激装置の神経信号を釣り合わせて、神経に、それ自体をリセットする、または再分極する時間を与える出力電圧である。
【0070】
波形グラフのポイント5は、出力信号の筋刺激部分に相当し、これは、運動筋に静脈筋ポンプを刺激させ、更に、静脈を怒張させて血液で満たす出力電圧である。
図7に示す波形では、信号のこの部分が作用する時間の長さは短いが、一部の患者では、出力信号中の出力電圧のこの部分が作用する時間の長さを調節して、静脈筋ポンプを活性化する適度の自発的筋肉刺激を起こすと良い。信号のこの部分が作用する時間が長いと、筋肉がより刺激される。更に、静脈周囲の小さな不随意平滑筋は、静脈筋ポンプ作用を活性化するために、大きな筋肉とは異なる長さの能動的刺激時間が必要である。更に、波形のこの部分は、それぞれの患者で最適な静脈筋ポンプ作用が得られるよう、患者毎に調節しても良い。
【0071】
波形グラフのポイント6は、運動筋刺激を止めて、これをリセットし、次の信号サイクルに備えさせるためのポイントである。波形グラフのポイント7は、患者の末梢神経系からの反射信号背圧に相当し、これは、神経系が、神経と筋肉の制御を取り戻して、患者の筋肉と神経の活動を安定させようとしていることを示している。波形グラフのポイント8は、患者への出力電圧がゼロである期間に当たり、患者のベースライン電位をその元々の休止電位または内部電圧に穏やかに戻すために末梢神経系が使用する、組み込まれたフィードバックループの一部である。安静にリラックスしている患者では、その休止電位または測定電圧は、20ミリボルト程度となることがある。しかし、不安を感じている一部の患者では、その測定した休止電位が0ボルト、または正の測定電圧となることがあり、これは典型的なリラックスした患者よりも高い電位または電圧である。この初期休止電位の測定値を用いて、信号発生器からの、第1の、および、続くそれぞれの処置の出力信号の基本パラメータを設定する。
【0072】
波形グラフのポイント9は、患者の身体へ何も能動的出力信号または電圧が送られず、患者が刺激装置からの出力信号の影響を何も受けていない、患者のベースライン状態に相当する。更にこれは、信号発生器が患者の内部電位を測定し、新たな信号サイクルを始める準備をして、患者から測定したフィードバックに基づいて出力信号の能動的部分を調節する期間に相当する。
【0074】
作動中、刺激装置は次のように機能する。電極は、患者の指、手、および/または肢と電気的に接触するよう配置する。ある実施形態において、これには、患者が、それぞれの手の指先を、電解質溶液を入れた別々の容器に入れることが含まれる。一方の端が電解質溶液に、もう一方の端が信号発生器の出力接点に繋がっている別々の導線によって、各容器中の電解質溶液は信号発生器と電気通信するよう配置されている。別の実施形態において、電極は、患者の皮膚に直接貼り付ける、接着性の裏張りの付いたパッドであっても良い。
【0075】
電源は、信号発生器に電力を供給する。医療者は、少なくとも1つの電位差計の調節ノブを回して、患者への出力電圧を調節する。信号発生器のスイッチを“オン”にして、予めプログラムされた電気出力信号を、導線および電極を通して、患者の指先、手、および/または腕に伝える。予めプログラムされた出力信号は、サイクル毎に様々な特定の時点で変動する、予めプログラムされた出力電圧の繰り返しサイクルを含んでいる。ある実施形態において、初期出力電圧は、0から90ボルトの間に設定することができ、送り出される信号は、1ミリアンペア未満である。しかし、別の実施形態において、出力電圧範囲は、本実施形態に開示されているものより大きく、または小さく、あるいは、異なる電圧範囲であっても良く、出力信号は、本件に開示されている範囲から外れることなく、1ミリアンペアより大きくても良い。
【0076】
出力電気信号のそれぞれのサイクルには、能動的出力電圧の期間と、休止(患者の肢に何も出力電圧が送られない)の期間が含まれる。予めプログラムされた出力電圧は、患者の感覚神経に出力電圧の存在を警告する開始相;末梢神経に末梢標的静脈周囲の運動筋を収縮させる、主要神経刺激相;感覚神経を“オフ”にする、神経刺激相の終端;神経に送られた刺激信号を打ち消して神経をリセットさせる、バランス相;静脈筋ポンプを活性化する筋刺激相;運動筋の活性化を終える停止相;電気的背圧相;電気的フィードバック相;および、能動的電圧出力がなく、次のサイクルが始まる前に患者の系にリセットする時間を与える休止相の1つ以上を含む、いくつもの相を含むことができる。この実施形態の波形の、この循環する部分は、その他の可能な波形を除外するものではない。本願に述べられている全ての作用を生じる波形が想定されており、この波形は、患者の生理機能、電子回路の構造および制限、および/または、信号を患者へ送るために使用する方法に応じて変えても良い。
【0077】
患者へ送られる出力信号の繰り返される電気的サイクルにより、患者に次のような生理学的反応が起こる。発生させた電気信号の一部は電極付近の不随意平滑筋を刺激して、収縮および弛緩させる。これらの筋肉は、本来、円形で、収縮すると管を形成する。この管は通常より大きく、圧の低い部分ができて、これは、毛細血管および周辺の動脈から集められる全ての血液を引き寄せる効果を持つと考えられる。更に、波形の一部は、隣接する筋肉を刺激し、この筋肉は静脈筋ポンプとして働いて静脈内の局所血圧を上げ、既にはっきりと見える怒張した静脈に更に血液を加える。この静脈筋ポンプは、血液を動脈および毛細血管から心臓へ戻すための身体の仕組みである。静脈内にある多数の弁は血液の逆流を防ぎ、このため標的静脈の内部体積が大きくなって、より静脈穿刺を行い易くなる。高齢患者など、一部の患者群では、標的静脈と心臓の間に巻いた駆血帯を使用することで、この静脈筋ポンプの働きが、本件に開示されている電気的静脈刺激装置と連動して、更に助長されると考えられる。しかし、本件に開示の電気的静脈刺激装置は、駆血帯や、締め付けまたは圧迫を行う他の手段を必要とせずに、静脈筋ポンプの働きを活性化することができる。
【0078】
電気的静脈刺激装置は、手の甲、足の甲、および前腕の静脈を見易くする際に最も良く働く。ある実施形態において、電気的静脈刺激装置は更に、電極付近(従って、標的静脈部位)から前腕の内側部全体の組織を麻痺させるよう構成されている出力電圧波形の部分がその中にある、TENS装置としても働く。これに含まれている機能は、電気的静脈刺激装置を使用している間、標的静脈内に針を挿入する工程で、針刺を実際に行う際の患者の痛みを小さくする。2つの電位差計を持つ実施形態では、第2電位差計が、TENS装置の機能を果たす出力電圧チャンネルを制御する。第2出力チャンネルは、盛り上がった針刺部に近い患者の皮膚に直接取り付けて、特に局部への麻痺効果を集中させるよう構成することができる。第2チャンネルは、この神経を麻痺させる機能を特異的に果たすように構成することができる。このように、ある実施形態では、拡張、充血した静脈を見えるようにするために一方の出力電圧チャンネルを使用し、針を刺す部位を麻痺させるために他方の出力電圧チャンネルを使用する。
【0079】
本件に開示されている装置は、患者の肢に静脈穿刺を行う際の標的となる末梢静脈の生理機能を、従来から用いられている受動的な手段を用いずに、あるいは、駆血帯や、締め付けまたは圧迫を行う他の手段を用いる必要なく、能動的電気信号を用いて非侵襲的に変えるよう構成されている。
図5に示すように、本件に開示されているある態様では、本装置によって患者の皮膚に与えられた能動的信号は、生理学的反応を誘発し、標的静脈の状態/挙動を変えて、静脈を血液で満たし、また、怒張/拡張させて、より硬くすることで、静脈の視認性を高める。このように、ここに開示されているような装置および方法を用いると、医療者は、標的静脈の位置を探し、良好かつ適切な静脈穿刺を行い易くなる。標的静脈内とその周囲の組織の生理機能を非侵襲的に変えて、標的静脈の位置を探し易くし、また、何度も試みる必要なく、良好かつ適切な静脈穿刺を行い易くする他の能動的装置は、今のところ存在しない。
【0080】
文中で論じているように、実施形態の1つは、被術者の静脈に到達する方法であって、この方法は、被術者の肢の一部を容器に差し入れる工程と、液状の電解質溶液を容器に供給する工程であって、液状電解質溶液が肢の一部に接している工程と、電気信号発生器で発生させた少なくとも1つの信号で肢の一部を電気的に刺激する工程であって、この電気信号が、液状電解質溶液に接触している少なくとも1つの電極によって電解質溶液に与えられる工程と、被術者の肢の少なくとも1つの静脈を電気的刺激に応じて隆起させる工程と、静脈が隆起している間に針先を静脈に挿入し、静脈に到達させる工程と、を含む。
【0081】
上記の様々な実施形態は、単に説明のために示されているのであって、添付の請求項を限定すると解釈すべきではない。当業者ならば、本件に説明および記載されている例示的な実施形態および応用に従うことなく、また、添付請求項の真の精神および範囲から外れることなく、様々な変形および変更を行えることは容易に理解できよう。