(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源とグランドとの間を絶縁する絶縁抵抗の抵抗値に基づいて前記電源からの漏電を検出するための漏電検出回路と、前記漏電検出回路と前記電源との間に並列接続され、前記電源から前記漏電検出回路へ印加される電圧を所定電圧に保持する複数の直列接続された定電圧素子とを備える漏電検出装置の診断方法であって、
前記漏電検出装置の診断部が、
前記定電圧素子に並列接続されて前記定電圧素子をバイパス接続する複数のスイッチのうち、診断対象外の前記定電圧素子に並列接続された前記スイッチをオンにし、診断対象の前記定電圧素子に並列接続された前記スイッチをオフにする工程と、
前記診断対象の定電圧素子により保持される電圧に基づいて前記定電圧素子のショート故障診断を行う工程と
を含むことを特徴とする診断方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、漏電検出装置、漏電検出システム、および診断方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
以下では、電気自動車の電源の一例である高圧バッテリ(以下、単にバッテリと記載する)から車両のグランドへの漏電を検出する漏電検出システムを例に挙げて説明する。なお、実施形態に係る漏電検出システムは、電気自動車のバッテリに限らず、任意のバッテリからの漏電検出に適用することが可能である。
【0011】
図1は、実施形態に係る漏電検出システム100の構成の一例を示す説明図である。
図1に示すように、漏電検出システム100は、バッテリBTと、第1絶縁抵抗Raと、第2絶縁抵抗Rbと、漏電検出装置1とを備える。
【0012】
バッテリBTは、例えば、リチウムイオンバッテリ等の充放電可能な二次電池である。バッテリBTは、例えば、急速充電装置や車両の回生エネルギーによって充電され、車両を走行させるモータ等の負荷へ電力を供給する。ここでは、バッテリBTの定格電圧が240V〜400Vであり、車両のグランド(以下、車両グランドと記載する)が360Vである場合について説明する。
【0013】
第1絶縁抵抗Raと第2絶縁抵抗Rbは、直列に接続され、バッテリBTと漏電検出装置1との間に並列に接続される。具体的には、第1絶縁抵抗Raは、一端がバッテリBTの正極に接続され、他端が第2絶縁抵抗Rbの一端および車両グランドに接続される。第2絶縁抵抗Rbの他端は、バッテリBTの負極に接続される。
【0014】
かかる第1絶縁抵抗Raおよび第2絶縁抵抗Rbは、抵抗値が数メガΩのものが使用されているが、何等かの原因で抵抗値が低下した場合、バッテリBTから車両グランドへの漏電が発生し、例えば、急速充電を行う際に感電の危険性がある。
【0015】
そこで、漏電検出装置1は、感電を防止するため、例えば、バッテリBTの充電中にバッテリBTからの漏電を検出する。かかる漏電検出装置1は、第1絶縁抵抗Raおよび第2絶縁抵抗Rbの抵抗値に基づいてバッテリBTからの漏電を検出するための漏電検出回路10と、マイクロコンピュータ(以下、マイコン3と記載する)とを備える。
【0016】
漏電検出回路10は、フライングキャパシタCと、差動増幅器2とを備える。フライングキャパシタCは、バッテリBTと差動増幅器2との間に並列に接続される。フライングキャパシタCが備える一対の電極のうち、一方の電極は、第1スイッチSw1、第1保護抵抗R1、および高圧側接続端子Bを介してバッテリBTの正極に接続される。
【0017】
また、フライングキャパシタCの他方の電極は、第2スイッチSw2、第2保護抵抗R2、および低圧側接続端子Gを介してバッテリBTの負極に接続される。これにより、フライングキャパシタCは、第1スイッチSw1および第2スイッチSw2が共にオフになることで、バッテリBTから切断される。
【0018】
また、フライングキャパシタCが備える一対の電極のうち、一方の電極は、第3スイッチSw3を介して差動増幅器2の2つの入力端子のうちの一方の入力端子に接続される。また、フライングキャパシタCの他方の電極は、第4スイッチSw4を介して差動増幅器2の他方の入力端子に接続される。
【0019】
また、第3スイッチSw3と差動増幅器2とを接続する配線は、第3保護抵抗R3を介して車両グランドに接続される。第4スイッチSw4と差動増幅器2とを接続する配線は、第4保護抵抗R4を介して車両グランドに接続される。
【0020】
また、フライングキャパシタCの一方の電極は、第5スイッチSw5および第5保護抵抗R5を介して、第2スイッチSw2と第4スイッチSw4とを接続する配線に接続される。
【0021】
差動増幅器2は、フライングキャパシタCの充電電圧を検出する。具体的には、差動増幅器2は、フライングキャパシタCの一対の電極間の電位差(電圧)を増幅してマイコン3へ出力する。
【0022】
マイコン3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。なお、マイコン3は、一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0023】
マイコン3は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行し、第1〜第4スイッチSw1〜Sw4の動作制御を行い、差動増幅器2から入力される電圧に基づいて漏電が発生したか否かを判定する判定部として機能する。
【0024】
なお、漏電検出装置1が行う漏電検出動作の一例については、
図2〜
図4を参照して後述する。また、マイコン3は、第5スイッチSw5および第2スイッチSw2をオンにすることで、フライングキャパシタCを放電させてリセットする制御も行う。
【0025】
さらに、漏電検出装置1は、電源電圧の定格電圧を超えるサージ電圧等の突発的な高電圧から漏電検出回路10の回路素子を保護する直列接続された複数(ここでは、4個)の定電圧素子D1〜D4を備える。
【0026】
定電圧素子D1〜D4は、例えば、ツェナーダイオードである。なお、定電圧素子D1〜D4は、所定電圧以上の電圧が印加された場合に、出力電圧を所定電圧に保持(固定)できる回路素子であれば、例えば、出力電圧固定型の3端子レギュレータ等、任意の定電圧素子であってもよい。
【0027】
以下では、定電圧素子D1〜D4を区別するために、定電圧素子D1を第1ダイオードD1、定電圧素子D2を第2ダイオードD2、定電圧素子D3を第3ダイオードD3、定電圧素子D4を第4ダイオードD4と称して説明する。また、ここでは、第1〜第4ダイオードD1〜D4の各ツェナー電圧が110Vである場合について説明する。
【0028】
直列接続された第1〜第4ダイオードD1〜D4は、バッテリBTと漏電検出回路10との間に並列に接続される。具体的には、第1ダイオードD1は、カソードが第1保護抵抗R1および高圧側接続端子Bを介してバッテリBTの正極に接続され、アノードが第2ダイオードD2のカソードに接続される。
【0029】
また、第2ダイオードD2のアノードは、第3ダイオードD3のカソードに接続される。第3ダイオードD3のアノードは、第4ダイオードD4のカソードに接続される。第4ダイオードD4のアノードは、第2保護抵抗R2および低圧側接続端子Gを介してバッテリBTの負極に接続される。
【0030】
これにより、漏電検出装置1では、バッテリBTから漏電検出回路10へ印加される電圧が440V以上になった場合に、第1〜第4ダイオードD1〜D4のカソードからアノードへ電流が流れて、漏電検出回路10へ印加される電圧が440Vに保持される。したがって、漏電検出装置1は、電源電圧の定格電圧を超えるサージ電圧等の突発的な高電圧が印加される場合に、第1〜第4ダイオードD1〜D4によって、漏電検出回路10の回路素子を高電圧から保護することができる。
【0031】
ただし、漏電検出装置1は、第1〜第4ダイオードD1〜D4のうち、いずれかの定電圧素子がショート故障を起こした場合、漏電の発生を正確に検出することができなくなることがある。
【0032】
そこで、漏電検出装置1は、定電圧素子のショート故障を診断するため、第1〜第4ダイオードD1〜D4に並列接続されて第1〜第4ダイオードD1〜D4をバイパス接続する第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7を備える。
【0033】
具体的には、第1診断スイッチSw6は、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2をバイパスする電流の経路を接続する。また、第2診断スイッチSw7は、第3ダイオードD3および第4ダイオードD4をバイパスする電流の経路を接続する。
【0034】
そして、マイコン3は、第1スイッチSw1および第2スイッチSw2を接続させた状態で第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7の動作制御を行い、そのときのフライングキャパシタCの充電電圧に基づいて定電圧素子のショート故障を診断する。
【0035】
このとき、マイコン3は、定電圧素子のショート故障を診断する診断部として機能する。このように、漏電検出装置1は、第1〜第4ダイオードD1〜D4に並列接続されて第1〜第4ダイオードD1〜D4をバイパス接続する第1,第2診断スイッチSw6,Sw7を備えるという簡易な構成で定電圧素子のショート故障を診断することができる。なお、漏電検出装置1が定電圧素子のショート故障を診断する場合の動作の一例については、
図5を参照して後述する。
【0036】
次に、
図2〜
図8を参照し、漏電検出装置1の動作について説明する。以下では、定電圧素子が正常な状態での漏電検出動作、定電圧素子がショート故障した状態での漏電検出動作、定電圧素子のショート故障診断動作、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7のオープン故障診断動作の順に説明する。
【0037】
まず、
図2〜
図4を参照し、定電圧素子が正常な状態での漏電検出動作について説明する。
図2〜
図4は、実施形態に係る漏電検出装置1が行う漏電検出動作の説明図である。漏電検出装置1は、例えば、バッテリBTの急速充電中に、バッテリBTからの漏電の有無を判定する。
【0038】
図2に示すように、漏電検出装置1は、第1絶縁抵抗Raの抵抗値の低下による漏電の検出を行う場合、マイコン3によって、所定時間の間、第2スイッチSw2および第3スイッチSw3をオンにし、第1スイッチSw1および第4スイッチSw4をオフにする。
【0039】
そして、漏電検出装置1は、所定時間が経過した後に、第2スイッチSw2および第3スイッチSw3をオフにする。この間、マイコン3は、第5スイッチSw5をオフにしておく。これにより、電流は、第2スイッチSw2および第3スイッチSw3がオンの期間に、
図2に太線矢印で示す経路を流れる。
【0040】
具体的には、電流は、バッテリBTの正極、第1絶縁抵抗Ra、車両グランド、第3保護抵抗R3、第3スイッチSw3、フライングキャパシタC、第2スイッチSw2、第2保護抵抗R2、低圧側接続端子G、バッテリBTの負極の順に流れる。
【0041】
このとき、フライングキャパシタCは、第1絶縁抵抗Raの抵抗値が正常であれば、360Vから第3保護抵抗R3および第2保護抵抗R2による電圧降下分を差し引いた正常時の充電電圧で充電される。しかし、フライングキャパシタCは、第1絶縁抵抗Raの抵抗値が低下して漏電している場合、正常時の充電電圧より高い電圧で充電される。
【0042】
そこで、
図3に示すように、マイコン3は、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオンにし、差動増幅器2から入力されるフライングキャパシタCの充電電圧に応じた電圧を参照する。
【0043】
そして、マイコン3は、差動増幅器2から入力される電圧が所定の閾値以上であった場合に、第1絶縁抵抗Raの抵抗値の低下による漏電が発生していると判定する。その後、マイコン3は、第5スイッチSw5をオンにして、フライングキャパシタCをリセットする。
【0044】
また、
図4に示すように、漏電検出装置1は、第2絶縁抵抗Rbの抵抗値の低下による漏電の検出を行う場合、マイコン3によって、所定時間の間、第1スイッチSw1および第4スイッチSw4をオンにし、第3スイッチSw3および第2スイッチSw2をオフにする。
【0045】
そして、漏電検出装置1は、所定時間が経過した後に、第1スイッチSw1および第4スイッチSw4をオフにする。この間、マイコン3は、第5スイッチSw5をオフにしておく。これにより、電流は、第1スイッチSw1および第4スイッチSw4がオンの期間に、
図4に太線矢印で示す経路を流れる。
【0046】
具体的には、電流は、バッテリBTの正極、高圧側接続端子B、第1保護抵抗R1、第1スイッチSw1、フライングキャパシタC、第4スイッチSw4、第4保護抵抗R4、車両グランド、第2絶縁抵抗Rb、バッテリBTの負極の順に流れる。
【0047】
このとき、フライングキャパシタCは、第2絶縁抵抗Rbの抵抗値が正常であれば、40Vから第1保護抵抗R1および第4保護抵抗R4による電圧降下分を差し引いた正常時の充電電圧で充電される。しかし、フライングキャパシタCは、第2絶縁抵抗Rbの抵抗値が低下して漏電している場合、正常時の充電電圧より高い電圧で充電される。
【0048】
そこで、
図3に示すように、マイコン3は、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオンにし、差動増幅器2から入力されるフライングキャパシタCの充電電圧に応じた電圧を参照する。
【0049】
そして、マイコン3は、差動増幅器2から入力される電圧が所定の閾値以上であった場合に、第2絶縁抵抗Rbの抵抗値の低下による漏電が発生していると判定する。その後、マイコン3は、第5スイッチSw5をオンにして、フライングキャパシタCをリセットする。
【0050】
次に、
図5を参照し、定電圧素子がショート故障した状態での漏電検出動作について説明する。
図5は、実施形態に係る第1ダイオードD1がショート故障した状態を示す説明図である。
【0051】
漏電検出装置1は、例えば、第1ダイオードD1がショート故障している状態で、第2絶縁抵抗Rbの抵抗値の低下による漏電を検出する動作を行うと、
図5に太線矢印および太点線矢印で示す経路に電流が流れる。
【0052】
具体的には、前述したように、マイコン3は、第2絶縁抵抗Rbの抵抗値の低下による漏電検出する場合、第1スイッチSw1および第4スイッチSw4をオンにする。これにより、電流は、第1ダイオードD1がショート故障していなければ、
図4に太線矢印で示す経路を流れ、フライングキャパシタCは、
図4に示す上側の電極が正、下側の電極が負に帯電する。
【0053】
しかしながら、第1ダイオードD1がショート故障している場合、電流は、
図5に太線矢印および太点線矢印で示す経路を電流が流れる。具体的には、第1ダイオードD1がショート故障した場合、直列接続された第2〜第4ダイオードD2〜D4は、両端の電位差が330Vを超えると、カソードからアノードへ電流を流し、両端の電圧を330Vに保持する。これにより、第1ダイオードD1のカソード側の電位が330Vになる。
【0054】
このため、例えば、バッテリBTの電圧が400Vの場合、
図5に太点線矢印で示すように、電流は、バッテリBTの正極から、高圧側接続端子B、第1保護抵抗R1、第1〜第4ダイオードD1〜D4、第2保護抵抗R2、低圧側接続端子G、バッテリBTの負極の順に流れる。
【0055】
さらに、このとき、第1ダイオードD1のカソードの電位は、330Vで車両グランドの電位である360Vよりも低いため、車両グランドから第1ダイオードD1のカソードへ向かう電流の流れが形成される。
【0056】
したがって、電流は、
図5に太線矢印で示すように、バッテリBTの正極から、第1絶縁抵抗Ra、車両グランド、第4保護抵抗R4、第4スイッチSw4、フライングキャパシタC、第1スイッチSw1、第1〜第4ダイオードD1〜D4、第2保護抵抗R2、低圧側接続端子G、バッテリBTの負極の順に流れる。
【0057】
その結果、フライングキャパシタCは、
図5に示す上側の電極が負、下側の電極が正に帯電し、
図4に示す第1ダイオードD1がショート故障していない場合と電極の正負が逆になる。
【0058】
マイコン3は、この状態で第1スイッチSw1および第4スイッチSw4をオフにし、その後、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオンにした場合、フライングキャパシタCから本来とは極性が逆の電圧が入力される差動増幅器2の出力を参照する。このため、マイコン3は、漏電の有無を正常に判定することができない。
【0059】
そこで、漏電検出装置1は、漏電を検出する前に、第1〜第4ダイオードD1〜D4のショート故障の診断を行い、ショート故障がなければ漏電検出を行って、漏電がない場合に、バッテリBTの急速充電を許可する。また、漏電検出装置1は、第1〜第4ダイオードD1〜D4のいずれかがショート故障している場合、または漏電がある場合に、バッテリBTの急速充電を禁止する。
【0060】
次に、
図6および
図7を参照し、実施形態に係る漏電検出装置1が行う定電圧素子の診断動作について説明する。
図6および
図7は、実施形態に係る漏電検出装置1が行う定電圧素子の診断動作の説明図である。
【0061】
マイコン3は、定電圧素子のショート故障診断を行う場合、診断対象外の定電圧素子に並列接続されたスイッチをオンにし、診断対象の定電圧素子に並列接続されたスイッチをオフにする。そして、マイコン3は、診断対象の定電圧素子によって保持される電圧に基づいて診断対象の定電圧素子のショート故障診断を行う。
【0062】
例えば、マイコン3は、
図6に示すように、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2のショート故障診断を行う場合、第2診断スイッチSw7をオンにし、第1診断スイッチSw6をオフにする。このとき、電流は、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2のどちらもショート故障していなければ、
図6に太線矢印で示す経路を流れる。
【0063】
具体的には、電流は、バッテリBTの正極から高圧側接続端子B、第1保護抵抗R1、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第2診断スイッチSw7、第2保護抵抗R2、低圧側接続端子G、バッテリBTの負極へ流れる。
【0064】
その後、マイコン3は、第1スイッチSw1および第2スイッチSw2をオンにする。これにより、電流は、
図6に太点線矢印で示す経路にも流れる。具体的には、電流は、第1ダイオードD1のカソードから分岐して、第1スイッチSw1、フライングキャパシタC、第2スイッチSw2を通り、第2保護抵抗R2へ流れる。
【0065】
このとき、フライングキャパシタCの充電電圧は、例えば、バッテリBTの電圧が400Vの場合、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2が故障していなければ、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2のツェナー電圧(220V)に保持される。
【0066】
そこで、マイコン3は、第1スイッチSw1および第2スイッチSw2をオフにした後、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオフにして、フライングキャパシタCの充電電圧に応じた電圧を差動増幅器2から取得する。
【0067】
このとき、マイコン3は、フライングキャパシタCの充電電圧が220Vのときに、差動増幅器2から出力される電圧を取得した場合に、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2のどちらもショート故障していないと診断する。
【0068】
これに対して、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2のうち、例えば、第1ダイオードD1がショート故障していた場合、電流は、
図7に太線矢印で示す経路と、太点線矢印で示す経路とに流れる。
【0069】
かかる場合、フライングキャパシタCの充電電圧は、第2ダイオードD2のツェナー電圧(110V)に保持される。このため、マイコン3は、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオンにすると、フライングキャパシタCの充電電圧が110Vのときに、差動増幅器2から出力される電圧を取得することになる。
【0070】
また、マイコン3は、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2のうち、第2ダイオードD2がショート故障していた場合にも、第1ダイオードD1がショート故障していた場合と同様の電圧を差動増幅器2から取得する。
【0071】
また、マイコン3は、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2の両方がショート故障していた場合、フライングキャパシタCの充電電圧が0Vになるので、0Vの電圧を差動増幅器2から取得する。
【0072】
このため、マイコン3は、フライングキャパシタCの充電電圧が110Vよりも高いときに差動増幅器2から出力される電圧を取得した場合に、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2がショート故障していないと診断する。
【0073】
なお、マイコン3は、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオンにして差動増幅器2から0Vの電圧を取得する場合には、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2がショート故障していると診断する。
【0074】
また、マイコン3は、第3ダイオードD3および第4ダイオードD4のショート故障診断を行う場合、第1診断スイッチSw6をオンにて、第1スイッチSw1および第2スイッチSw2をオンにする。その後、マイコン3は、第1スイッチSw1および第2スイッチSw2をオフにして、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオンにする。
【0075】
そして、マイコン3は、フライングキャパシタCの充電電圧が220Vのときに、差動増幅器2から出力される電圧を取得した場合に、第3ダイオードD3および第4ダイオードD4のどちらもショート故障していないと診断する。
【0076】
また、マイコン3は、フライングキャパシタCの充電電圧が110Vよりも高いときに差動増幅器2から出力される電圧を取得した場合に、第3ダイオードD3および第4ダイオードD4がショート故障していないと診断する。
【0077】
また、マイコン3は、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオンにして差動増幅器2から0Vの電圧を取得する場合には、第3ダイオードD3および第4ダイオードD4がショート故障していると診断する。
【0078】
このように、漏電検出装置1は、漏電検出のための基本構成に加えて、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7を備えるという簡易な構成で第1〜第4ダイオードD1〜D4のショート故障診断を行うことができる。
【0079】
また、漏電検出装置1が備える直列接続された複数の定電圧素子は、ツェナーダイオードであり、バッテリBTの正極と漏電検出回路10とを接続する配線にカソードが接続され、バッテリBTの負極と漏電検出回路10とを接続する配線にアノードが接続される。
【0080】
これにより、漏電検出装置1は、ツェナーダイオードをバイパス接続する第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7のオンとオフとを切替えて、フライングキャパシタCの充電電圧を参照するという簡易な処理によって第1〜第4ダイオードD1〜D4のショート故障診断を行うことができる。
【0081】
また、漏電検出装置1は、ツェナーダイオードによって保持される電圧がツェナー電圧未満であった場合に、ツェナーダイオードがショート故障していると診断する。このように、漏電検出装置1は、ツェナーダイオードによって保持される電圧がツェナー電圧未満か否かを判定するという簡易な処理によって、第1〜第4ダイオードD1〜D4のショート故障診断を行うことができる。
【0082】
また、漏電検出回路10は、バッテリBTから第1絶縁抵抗Raまたは第2絶縁抵抗Rbを介して印加される電圧によって充電されるフライングキャパシタCを備え、フライングキャパシタCの充電電圧に基づいて漏電を検出する。
【0083】
また、マイコン3は、第1〜第4ダイオードD1〜D4のうち、診断対象の定電圧素子により保持される電圧によって充電されたフライングキャパシタCの充電電圧が定電圧素子のツェナー電圧未満である場合に、診断対象の定電圧素子がショート故障していると診断する。
【0084】
このように、漏電検出装置1は、フライングキャパシタCを漏電検出用と、定電圧素子の診断用とに兼用することで回路素子数の増大を抑制することにより、製品のコストを低減することができる。
【0085】
なお、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7を備えていない漏電検出装置でもバッテリBTの電圧が十分に高ければ定電圧素子のショート故障を診断することは可能であるが、バッテリBTの電圧が低い場合に診断不可能となる場合がある。
【0086】
ここで、
図1を参照し、
図1に示す漏電検出装置1が仮に第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7を備えていなかった場合について説明する。かかる場合、漏電検出装置1では、バッテリBTの電圧が400Vであり、第1〜第4ダイオードD1〜D4が全てショート故障していなければ、フライングキャパシタCの充電電圧が400Vになる。
【0087】
このとき、例えば、第1〜第4ダイオードD1〜D4のうち、いずれか一つがショート故障していた場合、フライングキャパシタCの充電電圧は、330Vになる。このため、マイコン3は、フライングキャパシタCの充電電圧が330Vよりも高ければ、第1〜第4ダイオードD1〜D4が全てショート故障していないと正確に診断することができる。
【0088】
しかしながら、例えば、バッテリBTの電圧が240Vであった場合、フライングキャパシタCの充電電圧は、第1〜第4ダイオードD1〜D4が全てショート故障していなくても、いずれか一つがショート故障していても240Vとなる。このため、マイコン3は、第1〜第4ダイオードD1〜D4のうち、いずれかがショート故障しているという診断を行うことができない。
【0089】
これに対して、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7を備える漏電検出装置1は、バッテリBTの電圧が240Vまで低下しても、正確なショート故障診断を行うことができる。
【0090】
例えば、
図7に示すように、マイコン3は、第1ダイオードD1がショート故障しているときにバッテリBTの電圧が240Vまで低下していた場合、第1診断スイッチSw6をオフ、第2診断スイッチSw7をオンにする。
【0091】
このとき、フライングキャパシタCの充電電圧は、第1ダイオードD1がショート故障していなければ220Vとなるが、第1ダイオードD1がショート故障しているため、第2ダイオードD2のツェナー電圧である110Vに保持される。
【0092】
このため、マイコン3は、フライングキャパシタCの充電電圧が110Vより高ければ第1ダイオードD1および第2ダイオードD2がショート故障していない、充電電圧が110Vより高くなければ、ショート故障していると正確に診断することができる。
【0093】
このように、漏電検出装置1によれば、例えば、バッテリBTの定格電圧が240V〜400Vの場合、定格電圧の範囲内であれば、バッテリBTの電圧がいかなる電圧であっても第1〜第4ダイオードD1〜D4のショート故障を正確に診断することができる。
【0094】
また、漏電検出装置1は、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7のオープン故障を診断することもできる。次に、
図8を参照し、漏電検出装置1が行う第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7のオープン故障診断動作について説明する。
【0095】
図8に示すように、マイコン3は、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7のオープン故障診断を行う場合、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7を共にオンにする。
【0096】
これにより、電流は、
図8に太線矢印で示すように、バッテリBTの正極から、高圧側接続端子B、第1保護抵抗R1、第1診断スイッチSw6、第2診断スイッチSw7、第2保護抵抗R2、低圧側接続端子G、バッテリBTの負極の順に流れる。
【0097】
このとき、電流は、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7がオープン故障していなければ、フライングキャパシタCに流れることがない。このため、マイコン3は、その後、第1スイッチSw1および第2スイッチSw2をオフにし、第3スイッチSw3および第4スイッチSw4をオンにする。
【0098】
そして、マイコン3は、フライングキャパシタCが充電されていなければ、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7がオープン故障していないと診断する。また、マイコン3は、フライングキャパシタCが充電されていれば、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7の少なくともいずれか一方がオープン故障していると診断する。
【0099】
このように、漏電検出装置1は、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7を共にオンにして、フライングキャパシタCの充電電圧を参照するだけで、第1診断スイッチSw6および第2診断スイッチSw7のオープン故障を診断することができる。
【0100】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。