特許第6831365号(P6831365)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6831365-再生コラーゲン繊維の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831365
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】再生コラーゲン繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 4/00 20060101AFI20210208BHJP
【FI】
   D01F4/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-505897(P2018-505897)
(86)(22)【出願日】2017年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2017009729
(87)【国際公開番号】WO2017159565
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2020年1月30日
(31)【優先権主張番号】201610142696.0
(32)【優先日】2016年3月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知也
(72)【発明者】
【氏名】劉 天豹
(72)【発明者】
【氏名】万 杰
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/032272(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/000920(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/031620(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/132889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 4/00 − 4/06
A41G 3/00
A61L 15/00 − 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生コラーゲン繊維の製造方法であって、
コラーゲン原液調製工程、紡糸工程、耐水化工程、及び乾燥工程を含み、そのうち、前記コラーゲン原液調製工程で、可溶化コラーゲンに、金属酸化物を配合して、可溶化コラーゲンと、金属酸化物を含む水溶液を調製することで、次の紡糸工程で使用するコラーゲン原液を得、
前記可溶化コラーゲンは、家畜動物の床皮を石灰漬けにして不溶性コラーゲン繊維中の脂肪分を加水分解し、コラーゲン繊維を解きほぐした後、酸・アルカリ処理、酵素処理、溶剤処理のうち少なくとも1つの処理を施し、その後、アルカリ可溶化法及び/又は酵素可溶化法で可溶化処理を施して得られたものであり、
前記コラーゲン原液調製工程で、前記コラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量が0.05〜3.00重量%であり、
前記コラーゲン原液中の固形分濃度は1〜15重量%であり、
前記コラーゲン原液の固形分中のコラーゲンの割合が50重量%以上であり、
前記コラーゲン原液のpHは2〜4.5であることを特徴とする再生コラーゲン繊維の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、5酸化アンチモン、及び、酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも一種の酸化物である請求項に記載の再生コラーゲン繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生コラーゲン繊維の製造方法に関する。更に詳しくは、頭髪用や人工毛皮用等に好適に使用できる光沢および熱変色が抑制された再生コラーゲン繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生コラーゲン繊維は、コラーゲン由来の特徴的な分子構造を保持した蛋白繊維であることから、天然の蛋白繊維であり極めて複雑な微細構造を有している人毛と風合い、光沢及び触感が近似している。そのため、頭髪用繊維や人工毛皮用などの獣毛調繊維として用いる試みがなされている。
【0003】
再生コラーゲン繊維は、一般に動物の皮や骨を原料としており、これをアルカリ処理又は酵素処理して水に可溶なコラーゲンとした後、水に可溶なコラーゲンを無機塩水溶液などに押し出し紡糸して製造されている。ただし、こうして得られる再生コラーゲン繊維はそのままでは水に溶解したり、それゆえに耐熱性が低くなったりするため、耐水性及び耐熱性を付与するために耐水性処理(水不溶化処理)が施される。
【0004】
繊維としては光沢が弱いものが求められる場合があり、頭髪用繊維としては特に当該性能が強く求められている。しかしながら、再生コラーゲン繊維は人毛繊維に比べ光沢(艶)が強く、頭髪用繊維として使用した場合に外観上の違和感を生じさせやすいという問題点がある。この課題を解決するために繊維の断面形状を異型断面化(Y字形、S字形、C字形など)することで光沢を抑制する試みがなされている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−24586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の方法で作成された繊維は、断面形状の影響により触感、櫛通りなどの品質が損なわれる問題があった。これに対して、本願の発明者は、再生コラーゲン繊維の製造工程の一工程であるコラーゲン原液調製工程で、可溶化コラーゲンを含む水溶液に添加剤を加えることで、触感、櫛通りなどの品質を損なうことなく、繊維の光沢を抑制する方法を試みた。しかしながら、この方法を検討する過程で、添加剤を加えることで繊維の光沢を抑制できても、加える添加剤の種類によっては、製造される繊維が白くなり死毛調(不透明で、白っぽく、くすんだ色:白ボケ:彩度が低い)になったり、あるいは人毛と比較して過度に透明度が高くなるという新たな課題、および/または、高温のヘアアイロンを用いたスタイリング時に繊維が熱変色(アイロン変色)するという新たな課題が発生し得ることが判明した。前記の死毛調の繊維は、人毛に見られる適度な透明度を有しておらず、外観上最も嫌われるものである。また、前記のアイロン変色という現象はこれまで知られておらず、本発明者が初めて見出した課題である。これらの課題はいずれも、特に、製造する繊維が淡色のものである時に、製品品質上大きな問題となり得る。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、人毛に近似する光沢及び透明度を有し、且つヘアアイロンで処理をされた後も光沢及び透明度を維持する(即ち上記アイロン変色の問題を抑制する)再生コラーゲン繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、コラーゲン原液調製工程、紡糸工程、耐水化工程、乾燥工程を有する再生コラーゲン繊維の製造方法において、そのうちのコラーゲン原液調製工程で、コラーゲン原液として、可溶化コラーゲンと、金属酸化物を含む水溶液を調製し、この原液を紡糸工程に付すことで、人毛に近い光沢及び透明度を有し、高温のヘアアイロンを用いたスタイリング時にも熱変色を受けにくい再生コラーゲン繊維が得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は再生コラーゲン繊維の製造方法であって、コラーゲン原液調製工程、紡糸工程、耐水化工程、及び乾燥工程を含み、そのうち、前記コラーゲン原液調製工程で、コラーゲン原液として、可溶化コラーゲンと、金属酸化物を含む水溶液を調製することを特徴とする再生コラーゲン繊維の製造方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、人毛に近似する光沢及び透明度を有し、且つヘアアイロンで処理をされた後も光沢及び透明度を維持する再生コラーゲン繊維を得ることができる。
【0011】
上記発明において、前記コラーゲン原液調製工程で、コラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量が0.05〜3.00重量%であることが好ましい。
【0012】
上記発明において、前記金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、5酸化アンチモン、及び、酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも一種の酸化物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、人毛に近い光沢及び透明度を有し、高温のヘアアイロンを用いたスタイリング時にも熱変色を受けにくい再生コラーゲン繊維を得ることができる。特に淡色の再生コラーゲン繊維を製造するときに、上記した効果が得られる意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例及び比較例における再生コラーゲン繊維の性能評価方法を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下は、下記の実施形態により本発明をさらに説明し、下記の実施形態は本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
【0016】
以下、一例として、本発明の再生コラーゲン繊維の製造方法を説明する。
【0017】
本発明の再生コラーゲン繊維の製造方法は、少なくともコラーゲン原液調製工程、紡糸工程、耐水化工程、及び乾燥工程を含み、これらの工程をこの順で実施する。
【0018】
(コラーゲン原液調製工程)
本発明で用いるコラーゲンの原料は、床皮の部分を用いるのが好ましい。床皮は、例えば牛などの家畜動物を屠殺して得られるフレッシュな床皮や塩漬けした生皮より得られる。これら床皮などは、大部分が不溶性コラーゲン繊維からなるが、通常網状に付着している肉質部分を除去し、腐敗・変質防止のために用いた塩分を除去したのちに用いられる。
【0019】
この不溶性コラーゲン繊維には、グリセライド、リン脂質、遊離脂肪酸などの脂質、糖タンパク質、アルブミンなどのコラーゲン以外のタンパク質などの、不純物が存在している。これらの不純物は、繊維化するにあたって紡糸安定性、光沢や強伸度などの品質、臭気などに多大な影響を及ぼす。したがって、例えば石灰漬けにして不溶性コラーゲン繊維中の脂肪分を加水分解し、コラーゲン繊維を解きほぐした後、酸・アルカリ処理、酵素処理、溶剤処理などのような従来から一般に行われている皮革処理を施し、予めこれらの不純物を除去しておくことが好ましい。
【0020】
前記のような処理の施された不溶性コラーゲンは、架橋しているペプチド部を切断するために、可溶化処理が施される。これにより、可溶化コラーゲンを得る。かかる可溶化処理の方法としては、一般に採用されている公知のアルカリ可溶化法や酵素可溶化法などを適用することができる。さらに、前記アルカリ可溶化法及び酵素可溶化法を併用しても良い。
【0021】
前記アルカリ可溶化法を適用する場合には、例えば塩酸などの酸で中和することが好ましい。なお、従来から知られているアルカリ可溶化法の改善された方法として、特公昭46−15033号公報に記載された方法を用いても良い。
【0022】
前記酵素可溶化法は、分子量が均一な可溶化コラーゲンを得ることができるという利点を有するものであり、本発明において好適に採用しうる方法である。かかる酵素可溶化法としては、例えば特公昭43−25829号公報や特公昭43−27513号公報などに記載された方法を採用することができる。
【0023】
このように可溶化処理を施したコラーゲンにpHの調整、塩析、水洗や溶剤処理などの操作をさらに施した場合には、品質などに優れた再生コラーゲン繊維を得ることが可能なため、これらの処理を施すことが好ましい。
【0024】
得られた可溶化コラーゲンに、金属酸化物を配合して、可溶化コラーゲンと、金属酸化物を含む水溶液を調製することで、次の紡糸工程で使用するコラーゲン原液を得る。コラーゲン原液の主原料はコラーゲンであり、コラーゲン原液の原料中(水を除く固形分)のコラーゲンの割合が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上であることが好ましい。
【0025】
前記水溶液には、例えば、塩酸、酢酸、乳酸などの酸及び/又は水を添加して、次の紡糸工程に適したpH及び濃度とすることが好ましい。コラーゲン原液のpHは好ましくは2〜4.5であり、コラーゲン原液中の原料濃度(水を除く固形分)は好ましくは1〜15重量%である。コラーゲン原液中の原料濃度(水を除く固形分)の下限は好ましくは2重量%以上であり、上限は好ましくは10重量%以下である。
【0026】
上記金属酸化物は、粒子状のものを配合することが好ましい。粒子状の金属酸化物の平均粒子径は特に限定されないが、0.15μm以上であることが好ましい。前記平均粒子径が0.15μm以上であると、より容易に、人毛に近い光沢及び透明度を有し、ヘアアイロンを用いたスタイリング時に熱変色を受けにくい再生コラーゲン繊維を製造することができる。また、前記平均粒子径の上限値は特に限定されないが、後述するコラーゲン原液の濾過を行う際に使用するフィルターの孔径(例えば45μm)以下であることが好ましい。これにより、コラーゲン原液の濾過時にフィルターが詰まることを防ぐことができる。
【0027】
金属酸化物の添加量は、コラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量が0.05〜3.00重量%であることが好ましい。金属酸化物の含有量が0.05重量%以上、または0.20重量%以上、または0.50%重量以上であると光沢の抑制効果が高く、透明度も人毛のような適度な透明度に調整ができるため好ましい。また金属酸化物の含有量が3.00重量%以下、または2.80重量%以下、または2.50重量%以下であると、不透明で白っぽくくすんだ死毛調とはならず、人毛のような適度な透明度に調整ができるため好ましい。
【0028】
本発明で言う金属酸化物とは、例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、5酸化アンチモン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化銀、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、または四酸化三鉄などであるがこれらに限定はされず、さらに、いわゆる半金属酸化物も含む概念である。好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、5酸化アンチモン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化銀よりなる群から選択される少なくとも一種の酸化物である。さらに好ましくは酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、5酸化アンチモン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化カルシウムよりなる群から選択される少なくとも一種の酸化物である。最も好ましくは、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、5酸化アンチモン、酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも一種の酸化物である。
【0029】
前記コラーゲン水溶液は、必要に応じて減圧攪拌下で脱泡を施したり、水不溶分である細かいゴミを除去したりするために濾過を行ってもよい。また、前記コラーゲン水溶液には、さらに必要に応じて、例えば機械的強度の向上、耐水性及び耐熱性の向上、紡糸性の改良、着色の防止、防腐などを目的として、安定剤、水溶性高分子化合物などの添加剤を適量配合してもよい。
【0030】
(紡糸工程)
次いで、前記コラーゲン原液を、例えば紡糸ノズルやスリットを通して吐出した後、無機塩水溶液に浸漬することにより、再生コラーゲン繊維を形成する。無機塩水溶液としては、例えば硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの水溶性無機塩の水溶液が用いられる。通常、これらの無機塩水溶液中の無機塩の濃度は10〜40重量%に調整する。
【0031】
無機塩水溶液のpHは、例えばホウ酸ナトリウムや酢酸ナトリウムなどの金属塩、塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウムなどを用いて、pH2〜13となるように調整することが好ましい。無機塩水溶液のpHの下限は、より好ましくは4以上である。無機塩水溶液のpHの上限は、より好ましくは12以下である。無機塩水溶液のpHが2〜13の範囲であると、コラーゲンのペプチド結合が加水分解を受けにくく、目的とする繊維が得られやすくなる。
【0032】
また、無機塩水溶液の温度は特に限定されないが、通常35℃以下であることが望ましい。無機塩水溶液の温度が35℃以下であると、可溶性コラーゲンが変性することもなく、紡糸した繊維の強度が低下せず、安定した糸の製造が容易となる。なお、無機塩水溶液の温度の下限は特に限定されないが、通常無機塩の溶解度に応じて適宜調整することができる。
【0033】
(耐水化工程)
以上のようにして得られた再生コラーゲン繊維に対して、耐水化処理を行う。これにより、水不溶性の再生コラーゲン繊維を得ることができる。本発明では、耐水化処理の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、前記再生コラーゲン繊維をエポキシ化合物あるいはその溶液に浸漬して再生コラーゲン繊維を耐水化処理(架橋処理)してもよい。
【0034】
エポキシ化合物としては、特に限定されないが、単官能エポキシ化合物を好適に用いることができる。具体例としては、特に限定されないが、例えば、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、酸化イソブチレン、酸化オクテン、酸化スチレン、酸化メチルスチレン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、グリシドールなどのオレフィン酸化物類;グリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、ノニルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、ペンタデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、ポリエチレンオキシドグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類;蟻酸グリシジル、酢酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、安息香酸グリシジルなどのグリシジルエステル類;グリシジルアミド類などが挙げられる。
【0035】
エポキシ化合物の使用量は、再生コラーゲン繊維中のエポキシ化合物と反応可能なアミノ基の量に対し、0.1〜500当量であることが好ましい。下限値として、より好ましくは0.5当量以上であり、さらに好ましくは1当量以上である。上限値として、より好ましくは100当量以下であり、さらに好ましくは50当量以下である。エポキシ化合物の使用量が0.1〜500当量であることにより、再生コラーゲン繊維に水に対する不溶化効果を充分付与し得る上、工業的な取扱い性や環境面でも好ましい。なお、エポキシ化合物による架橋処理は、後述するジルコニウム塩で処理した後で行ってもよい。
【0036】
エポキシ化合物はそのままあるいは各種溶剤に溶解して用いる。溶剤としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系有機溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの中性有機溶媒などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてよい。溶剤として水を用いる場合、必要に応じて硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウムなどの無機塩の水溶液を用いてもよい。通常、無機塩の水溶液中の無機塩の濃度は10〜40重量%に調整される。また、水溶液のpHを、例えば、ホウ酸ナトリウムや酢酸ナトリウムなどの金属塩や塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウムなどにより、調整してもよい。この場合、好ましいpHは6以上、さらに好ましくはpH8以上である。pHが6以上であると、エポキシ化合物のエポキシ基とコラーゲンのアミノ基との反応が遅くならず、水に対する不溶化が充分となる。また、無機塩の水溶液のpHは時間とともに低下していく傾向にあるため、必要により緩衝剤を使用してもよい。
【0037】
前記エポキシ化合物による再生コラーゲン繊維の処理温度は、50℃以下であることが好ましい。処理温度が50℃以下であると、再生コラーゲン繊維が変性することがなく、得られる繊維の強度が低下せず、安定的な糸の製造が容易となる。
【0038】
次いで、前記再生コラーゲン繊維をジルコニウム塩で処理することで、前記再生コラーゲン繊維にジルコニウム塩を含有させてもよい。再生コラーゲン繊維は、ジルコニウム塩を含むことにより、水不溶性を高めることができる。なお、再生コラーゲン繊維は、エポキシ化合物による架橋処理を行わずに、ジルコニウム塩で処理することによっても、ジルコニウムで架橋され、水不溶性になる。再生コラーゲン繊維中の酸化ジルコニウム(ZrO)に換算したジルコニウム塩の含有量が、好ましくは12重量%以上、より好ましくは17重量%以上、さらに好ましくは19重量%以上になるように処理する。酸化ジルコニウム換算のジルコニウム塩の含有量が12重量%以上では耐熱性が比較的に十分である。ジルコニウム塩の含有量の上限は、繊維としての特性を保持できる範囲で設定すればよい。前記再生コラーゲン繊維中のジルコニウム塩の含有量の上限は、好ましくは酸化ジルコニウム換算で30重量%以下、より好ましくは27重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。
【0039】
前記再生コラーゲン繊維をジルコニウム塩で処理する工程は、再生コラーゲン繊維にジルコニウム塩を含有させることができる処理であればよく、特に限定されない。例えば、前記再生コラーゲン繊維をジルコニウム塩の水溶液に浸漬することで処理を行うことができる。この処理により、最終的に得られる再生コラーゲン繊維のヘアアイロン耐熱温度が125℃以上となると共に、湿潤時の再生コラーゲン繊維にコシが加わり、湿触感が改良され、カールセットなどの形状付与が良好になる。前記ジルコニウム塩については、特に制限はなく、例えば、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム及び酸塩化ジルコニウムなどが挙げられる。これらのジルコニウム塩は単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0040】
本発明において、酸化ジルコニウムに換算するとは、ジルコニウム化合物の重量を、同じジルコニウム原子数の酸化ジルコニウムの重量に換算することをいう。例えば、1gの酸化ジルコニウムは2.3gの硫酸ジルコニウムに相当するし、2.7gの酢酸ジルコニウムに相当するし、1.4gの酸塩化ジルコニウムに相当する。すなわち、2.3gの硫酸ジルコニウムを含有する再生コラーゲン繊維100gは、酸化ジルコニウムに換算して1重量%のジルコニウム塩を含有する再生コラーゲン繊維となる。
【0041】
また、前記ジルコニウム塩の水溶液の液温は特に限定されないが、50℃以下が好ましい。ジルコニウム塩の水溶液の液温が50℃以下であると、再生コラーゲン繊維が変性しない。なお、ジルコニウム塩が再生コラーゲン繊維中に急激に吸収されて濃度むらを生じないようにするため、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウムなどの無機塩を適宜前記ジルコニウム塩の水溶液に1〜20重量%の濃度となるように添加しても良い。さらに、ジルコニウム塩の水中での安定性を良好にするため、乳酸などの有機酸やクエン酸ナトリウムなどの有機酸塩を適宜前記ジルコニウム塩の水溶液に添加しても良い。
【0042】
次いで、ジルコニウム塩を含有させた再生コラーゲン繊維をリン系化合物で処理することで、前記再生コラーゲン繊維にリン系化合物を含有させてもよい。この時、再生コラーゲン繊維中のリンに換算したリン系化合物の含有量が、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上、さらに好ましくは4重量%以上になるように処理を行なう。再生コラーゲン繊維がリン換算で2重量%以上のリン系化合物を含むことにより、耐湿熱性が向上する。そのため、ジルコニウム塩を含む再生コラーゲン繊維を頭飾製品に加工する際に一般的に行われる湿熱処理時の収縮を抑制し、加工性が改善される。さらに、再生コラーゲン繊維を含む頭飾製品にトリートメントを付けてスタイリングする際の収縮を抑制し、ヘアスタイルが変わってしまうという問題を解消できる。すなわち、本発明において、リン系化合物は、湿熱処理時の再生コラーゲン繊維の収縮を抑制する効果を発揮し、湿熱処理収縮抑制物質として機能する。リンに換算したリン系化合物の含有量が2重量%以上では、耐湿熱性がよく、湿熱処理による加工時の収縮率(湿熱処理収縮率)が10%より低く、収縮の抑制が比較的に十分である。再生コラーゲン繊維中のリン系化合物の含有量の上限は、繊維としての特性を保持できる範囲で設定すればよい。再生コラーゲン繊維中のリン系化合物の含有量の上限は、好ましくはリン換算で10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。
【0043】
再生コラーゲン繊維をリン系化合物で処理する工程は、再生コラーゲン繊維にリン系化合物を含有させることができる処理であればよく、特に限定されない。例えば、ジルコニウム塩処理をした再生コラーゲン繊維を、リン系化合物を含む水溶液に浸漬することで行うことができる。
【0044】
リン系化合物として、特に制限はないが、例えば、リン酸、リン酸塩、リン酸誘導体、リン酸塩誘導体、二リン酸、二リン酸塩、二リン酸誘導体、二リン酸塩誘導体、メタリン酸、メタリン酸塩、メタリン酸誘導体、メタリン酸塩誘導体、ポリリン酸、ポリリン酸塩、ポリリン酸誘導体、ポリリン酸塩誘導体、ホスホン酸(亜リン酸)、ホスホン酸塩、ホスホン酸誘導体及びホスホン酸塩誘導体が挙げられる。例えば、リン酸塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸水素二アンモニウムなどを挙げることができる。ホスホン酸誘導体としてはフェニルホスホン酸などを挙げることができる。これらの中でも、比較的安価で入手がしやすく、粉体であり保管等を含めハンドリングが良い観点から、リン系化合物として、リン酸水素二ナトリウム、ホスホン酸、リン酸水素二アンモニウムなどを好適に用いることができる。これらのリン系化合物は単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0045】
本発明において、リンに換算するとは、リン系化合物の重量を、同じリン原子数のリンの重量に換算することをいう。例えば、1gのリンは3.2gのリン酸に相当するし、3.9gのリン酸二水素ナトリウムに相当するし、4.6gのリン酸水素二ナトリウムに相当するし、4.3gのリン酸水素二アンモニウムに相当するし、2.6gのホスホン酸に相当するし、5.1gのフェニルホスホン酸に相当する。すなわち、3.2gのリン酸を含有する再生コラーゲン繊維100gは、リンに換算して1重量%のリン系化合物を含有する再生コラーゲン繊維となる。
【0046】
また、前記リン系化合物の水溶液の液温は特に限定されないが、70℃以下が好ましい。前記リン系化合物の水溶液の液温が70℃以下であると、再生コラーゲン繊維が変性せず物性が低下しない。
【0047】
本発明において、再生コラーゲン繊維は、さらにアルミニウム塩で処理することでアルミニウム塩を含ませてもよい。アルミニウム塩を含むことにより、ヘアアイロンで熱処理した後の毛切れが低減する。再生コラーゲン繊維中のアルミニウム塩の含有量は、酸化アルミニウム(Al)に換算して、0.5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1重量%以上であり、さらに好ましくは3重量%以上である。前記再生コラーゲン繊維中のアルミニウム塩の含有量の上限は特に限定されないが、毛切れを抑制しつつ高い耐熱性を保持するという観点から、酸化アルミニウムに換算して、17重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは8重量%以下である。
【0048】
アルミニウム塩による処理は、特に限定されないが、例えば、ジルコニウム塩の水溶液にアルミニウム塩を添加した処理液を用いることにより、ジルコニウム塩による処理と同時に行うことができる。ジルコニウム塩の水溶液にアルミニウム塩を添加すること以外は、ジルコニウム塩の水溶液を用いた場合と同じ条件で処理を行うことができる。アルミニウム塩として、特に限定されないが、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ミョウバンなどが挙げられる。これらのアルミニウム塩は、単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0049】
(乾燥工程)
このようにして得られた水不溶性の再生コラーゲン繊維は、次いで、必要に応じて水洗、及び/又はオイリングを行った後、乾燥を行なう。水洗は、例えば、10分間〜4時間流水で水洗することにより行なうことができる。オイリングに用いる油剤としては、例えば、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンなどのエマルジョン及びプルロニック型ポリエーテル系静電防止剤からなる油剤などを用いることができる。乾燥時の温度は、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは75℃以下である。
【0050】
以上は、紡糸して得た再生コラーゲン繊維に対して行う更なる処理を例として説明しているものの、本発明において、このような処理は特に限定されず、本発明の目的を影響しないものであればよい。
【0051】
本発明において、再生コラーゲン繊維中の酸化ジルコニウムに換算したジルコニウム塩の含有量及び酸化アルミニウムに換算したアルミニウム塩の含有量は、下記のように、繊維中のジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)の濃度を測定した後、酸化物換算に基づいて算出することができる。また、本発明において、再生コラーゲン繊維中のリンに換算したリン系化合物の含有量は、下記のように、繊維中のリン(P)の濃度を測定することで確認することができる。
【0052】
[繊維中のZr、Al及びPの濃度の測定方法]
<前処理>
再生コラーゲン繊維を105℃で2時間乾燥させて試料として用いる。試料約0.1gをTFM(テフロン(登録商標))製分解容器に精秤し、硫酸(関東化学製、超高純度硫酸)、硝酸(関東化学製、超高純度硝酸)、及びフッ酸(関東化学製、超高純度フッ化水素酸)を加えてマイクロウェーブ分解装置で加圧酸分解を行い、分解液を純水(電気抵抗率3.0Ω・cm以上)で50mLに定容したのち、純水(電気抵抗率3.0Ω・cm以上)で適宜希釈して測定液とする。
【0053】
<測定方法>
ICP発光分光分析法(島津製作所製のICP発光分光分析装置「ICPS−8100」)を用い、試料中の各元素の濃度を、内部標準物質にY(測定波長:371.029nm)を用いる絶対検量線法で測定した。同時にブランク試験を実施した。各元素の測定波長は、Zr:343.823nm、Al:396.153nm、P:213.620nmを使用した。
【0054】
<計算方法>
繊維中の各元素の濃度は、以下の式を用いて算出した。繊維中の各元素の濃度(重量%)=[試料のICP測定値(mg/L)−ブランクのICP測定値(mg/L)]×50(mL)×希釈倍率/[試料重量(g)×10000]。
【0055】
<酸化物換算>
(1)酸化ジルコニウムの含有量は下記の式を用いて算出した。酸化ジルコニウム含有量(重量%)=繊維中のZrの濃度(重量%)/Zrモル質量(91.2g/mol)×ZrOモル質量(123.2g/mol)
(2)酸化アルミニウムの含有量は下記の式を用いて算出した。酸化アルミニウム含有量(重量%)=繊維中のAlの濃度(重量%)/Alモル質量(27.0g/mol)×[Alモル質量(102.0g/mol)/2]。
【0056】
前記再生コラーゲン繊維は、耐熱性の観点から、ヘアアイロン耐熱温度が125℃以上であることが好ましい。耐熱性により優れるという観点から、ヘアアイロン耐熱温度は、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは140℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上であり、特に好ましくは160℃以上である。
【0057】
前記再生コラーゲン繊維は、耐湿熱性に優れるという観点から、湿熱処理収縮率が10%以下であることが好ましい。耐湿熱性により優れるという観点から、湿熱処理収縮率は、好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。
【0058】
前記再生コラーゲン繊維は、耐水性にも優れるという観点から、吸水率が250%以下であることが好ましい。より耐水性に優れるという観点から、前記再生コラーゲン繊維の吸水率は220%以下であることがより好ましく、150%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
前記再生コラーゲン繊維は、繊維としての強度を保つという観点から、引っ張り強度が1.0CN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは1.1CN/dtex以上であり、さらに好ましくは1.2CN/dtex以上である。
【0060】
本発明の再生コラーゲン繊維は、淡色で耐熱性と耐湿熱性に優れている場合には特に、頭髪用繊維や毛布用繊維に好適に用いることができる。また、手術糸、ガット、不織布、紙などに用いられる繊維としても好適に使用できる。
【0061】
本発明は、再生コラーゲン繊維の製造工程の一工程であるコラーゲン原液調製工程で金属酸化物を含むコラーゲン原液を調製し、これを紡糸工程に付すことで、人毛に近似する光沢及び透明度を有し、且つヘアアイロンで処理をされた後も光沢及び透明度を維持する再生コラーゲン繊維を製造することができる。このような再生コラーゲン繊維は頭髪用繊維として好適に用いることができる。
【0062】
なお、再生コラーゲン繊維の製造工程の一工程である原液工程で、上記金属酸化物に代えて有機添加剤を配合することによっても、人毛に近似する光沢を有する再生コラーゲン繊維を製造することができる場合があるものの、アイロン変色を抑制することができない。ただし、本発明の金属酸化物を添加した上で、さらに本願の効果を損なわない程度に有機添加剤を適宜添加してもよい。前記有機添加剤は、例えばオレイン酸、エポキシ化大豆油、ポリ酢酸ビニル樹脂(PVAc)などであってもよい。
【実施例】
【0063】
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。以下のすべての実施例及び比較例において、再生コラーゲン繊維の作製は、以下のようにして行った。
【0064】
(製造例1)コラーゲン原液の作製(原液調製工程)
牛の床皮を原料とし、アルカリでコラーゲンを可溶化した。得られた可溶化コラーゲン1200g(コラーゲン分180g)に各実施例又は比較例に記載の添加剤を加え、乳酸水溶液で溶解し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5重量%のコラーゲン水溶液になるように調整した。
【0065】
(製造例2)再生コラーゲン繊維の作製(紡糸工程)
製造例1で得られたコラーゲン水溶液を減圧下で攪拌脱泡処理し、ピストン式紡糸原液タンクに移送し、さらに減圧下で静置し、脱泡を行った。次いで、脱泡後のコラーゲン水溶液をピストンで押し出した後、ギアポンプで定量送液し、孔径45μmの焼結フィルターで濾過した。次いで、濾過後の可溶化コラーゲン水溶液を孔径0.212mm、孔数275の紡糸ノズルに通し、炭酸水素ナトリウム及び水酸化ナトリウムでpH11に調整した硫酸ナトリウム17重量%を含有する凝固浴(25℃)へ紡出速度5m/分で吐出することで再生コラーゲン繊維を得た。
【0066】
(製造例3)耐水化処理(耐水化工程)
製造例2で得られた再生コラーゲン繊維を、硫酸ナトリウム17重量%、水酸化ナトリウム0.02重量%、エピクロロヒドリン0.83重量%を含有した水溶液に25℃で5時間浸漬し、その後さらに43℃で3.5時間浸漬し、エポキシ化合物による処理を行った。次いで得られた再生コラーゲン繊維を水洗した後、水酸化ナトリウムでpH4.0に調整した硫酸ジルコニウムをZrO換算で2.00重量%、硫酸アルミニウムをAl換算で0.40重量%、クエン酸1水和物0.56重量%を含有した処理浴に6時間浸漬した。次いで、ジルコニウム塩及びアルミニウム塩で処理した再生コラーゲン繊維を水洗した後、リン酸水素二ナトリウム5.0重量%を含有した処理浴(pH11.0)に6時間浸漬することで水不溶化再生コラーゲン繊維を得た。
【0067】
(製造例4)油剤・乾燥処理(乾燥工程)
製造例3で得た水不溶化再生コラーゲン繊維をアミノ変性シリコーンのエマルジョン及びポリエーテル系静電防止剤からなる油剤を満たした浴槽に浸漬して油剤を付着した後、70℃の均熱風乾燥機を用いて緊張下で乾燥させた。
【0068】
[金属酸化物の平均粒子径の測定方法]
金属酸化物の平均粒子径は、レーザー回折法を用いて金属酸化物の粒度分布を測定し、この粒度分布からメジアン径で表わした平均粒子径を求めた。レーザー回折法による粒度分布の測定は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950(株式会社堀場製作所製)を用いた。
【0069】
[再生コラーゲン繊維の性能評価]
再生コラーゲン繊維の光沢、アイロン変色、及び透明度について評価を行った。その際の具体的な評価方法および尺度は以下のようである。
【0070】
<評価環境>
光沢、アイロン変色、透明度の判定は、図1に示されるように、D65蛍光ランプ(東芝製 色比較・検査用D65蛍光ランプ,D−EDL−D65)光源からサンプルを15cm離し、反射光が45°となる位置でサンプルを目視し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0071】
なお、アイロン処理は、繊維をよく開繊した後、総繊度約10000dtexの束にする。この繊維束の末端を180℃に調整したヘアアイロンで5秒間はさみ、変色度合いを後述の評価基準で評価した。
【0072】
<評価基準>
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
(実施例1)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にLightstar LA−S263(日産化学製、酸化ケイ素(SiO)粒子、固形分濃度26.0%、平均粒子径0.30μm)を5.20g(酸化ケイ素は1.352g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0077】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=1.352/(180.00+1.352)×100=0.75%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0078】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0079】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は1級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0080】
(実施例2)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にMP−4540M(日産化学製、酸化ケイ素(SiO)粒子、固形分濃度40.5%、平均粒子径0.41μm)を2.25g(酸化ケイ素は0.911g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0081】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=0.911/(180.00+0.911)×100=0.50%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0082】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0083】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は2級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0084】
(実施例3)
可溶化コラーゲン1200.00(コラーゲン分180.00)にPC−7T1082(住化カラー製、酸化ケイ素(SiO)粒子、固形分濃度23.2%、平均粒子径0.69μm)を5.90g(酸化ケイ素は1.369g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0085】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=1.369/(180.00+1.369)×100=0.75%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0086】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0087】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は1級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0088】
(実施例4)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にLightstar LA−S26(日産化学製、酸化ケイ素(SiO)粒子、固形分濃度26.0%、平均粒子径0.70μm)を5.20g(酸化ケイ素は1.352g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0089】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=1.352/(180.00+1.352)×100=0.75%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0090】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0091】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は2級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0092】
(実施例5)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にTITONE SA−1(堺化学製、酸化チタン(TiO)粒子、固形分濃度7.50%、平均粒子径0.15μm)を1.20g(酸化チタンは0.090g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0093】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=0.090/(180.00+0.090)×100=0.05%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0094】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0095】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は1級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0096】
(実施例6)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にTITONE GTR−100(堺化学製、酸化チタン(TiO)粒子、固形分濃度7.50%、平均粒子径0.26μm)を4.90g(酸化チタンは0.368g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0097】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=0.368/(180.00+0.368)×100=0.20%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0098】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0099】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は0級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0100】
(実施例7)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にAl1.5μm(和光純薬製、酸化アルミニウム(Al)粒子、固形分濃度7.50%、平均粒子径1.50μm)を18.20g(酸化アルミニウムは1.365g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0101】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=1.365/(180.00+1.365)×100=0.75%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0102】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0103】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は0級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0104】
(実施例8)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にY−10(日産化学製、5酸化アンチモン(Sb)粒子、固形分濃度44.0%、平均粒子径0.20μm)を12.65g(5酸化アンチモンは5.566g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0105】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=5.566/(180.00+5.566)×100=3.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0106】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0107】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は1級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0108】
(実施例9)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にMT−10(扶桑化学製、酸化ケイ素(SiO)粒子、固形分濃度28.0%、平均粒子径0.20μm)を3.20g(酸化ケイ素は0.896g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0109】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=0.896/(180.00+0.896)×100=0.50%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0110】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0111】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は2級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0112】
(実施例10)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にMT−10(扶桑化学製、酸化ケイ素(SiO)粒子、固形分濃度28.0%、平均粒子径0.20μm)を4.85g(酸化ケイ素は1.358g)を混合した。添加剤(金属酸化物)の添加量はコラーゲン原液中のコラーゲンと金属酸化物の合計に対する金属酸化物の含有量で表し、次の式で求める。
【0113】
金属酸化物の含有量=添加剤(金属酸化物)/(コラーゲン+添加剤(金属酸化物))×100(%)=1.358/(180.00+1.358)×100=0.75%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0114】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0115】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は2級であり、光沢、透明度、アイロン変色すべてで良好な結果が得られた。
【0116】
(比較例1)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)に乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲン)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0117】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0118】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は5級、透明度は透明と評価された。アイロン変色は1級であり、アイロン変色は良好であるが光沢が非常に強く、透明度も高いという結果が得られた。
【0119】
(比較例2)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にオレイン酸(日油製)9.470gを混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0120】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=9.470/(180.00+9.470)×100=5.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0121】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0122】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は4級であり、光沢および透明度は良好であるがアイロン変色が顕著に観察される結果が得られた。
【0123】
(比較例3)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にエポキシ化大豆油9.470gを混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0124】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=9.470/(180.00+9.470)×100=5.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0125】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0126】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は3級であり、光沢および透明度は良好であるがアイロン変色が観察される結果が得られた。
【0127】
(比較例4)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にポリ酢酸ビニル(PVAc)エマルジョン(昭和電工製、固形分濃度25.0%)を80.00g(ポリ酢酸ビニル樹脂は20.000g)を混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0128】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=20.000/(180.00+20.000)×100=10.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0129】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0130】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は不透明と評価された。アイロン変色は4級であり、光沢は良好であるが透明度が低く、アイロン変色が顕著に観察される結果が得られた。
【0131】
(比較例5)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にポリ酢酸ビニル(PVAc)エマルジョン(昭和電工製、固形分濃度25.0%)を37.90g(ポリ酢酸ビニル樹脂は9.475g)を混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0132】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=9.475/(180.00+9.475)×100=5.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0133】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0134】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は4級、透明度は標準であった。アイロン変色は4級であり、透明度は良好であるが、光沢が強く、アイロン変色が顕著に観察される結果が得られた。
【0135】
(比較例6)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にポリストロン117(荒川化学工業製、固形分濃度15.0%)を133.40g(ポリアクリルアミド樹脂は20.010g)を混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0136】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=20.010/(180.00+20.010)×100=10.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0137】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0138】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は5級、透明度は透明と評価された。アイロン変色は1級であり、アイロン変色は良好であるが光沢が非常に強く、透明度も高いという結果が得られた。
【0139】
(比較例7)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にアラフィックス 255(荒川化学工業製、固形分濃度25.0%)を80.00g(ポリアミドポリアミン樹脂は20.000g)を混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0140】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=20.000/(180.00+20.000)×100=10.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0141】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0142】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は5級、透明度は透明と評価された。アイロン変色は1級であり、アイロン変色は良好であるが光沢が非常に強く、透明度も高いという結果が得られた。
【0143】
(比較例8)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にBARIFINE BF−20(堺化学製、硫酸バリウム粒子、固形分濃度7.50%、平均粒子径0.03μm)を18.20g(硫酸バリウムは1.365g)を混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0144】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=1.365/(180.00+1.365)×100=0.75%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0145】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0146】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は5級、透明度は透明と評価された。アイロン変色は1級であり、アイロン変色は良好であるが光沢が非常に強く、透明度も高いという結果が得られた。
【0147】
(比較例9)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にBARIFINE BF−20(堺化学製、硫酸バリウム粒子、固形分濃度7.50%、平均粒子径0.03μm)を74.20g(硫酸バリウムは5.565g)を混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0148】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=5.565/(180.00+5.565)×100=3.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0149】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0150】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は5級、透明度は透明と評価された。アイロン変色は1級であり、アイロン変色は良好であるが光沢が非常に強く、透明度も高いという結果が得られた。また、再生コラーゲン繊維表面に白点が観察された。
【0151】
(比較例10)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にBARIFINE BF−20(堺化学製、硫酸バリウム粒子、固形分濃度7.50%、平均粒子径0.03μm)を126.30g(硫酸バリウムは9.473g)を混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0152】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=9.473/(180.00+9.473)×100=5.00%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0153】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0154】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は5級、透明度は透明と評価された。アイロン変色は0級であり、アイロン変色は良好であるが光沢が非常に強く、透明度も高いという結果が得られた。また、再生コラーゲン繊維表面に白点が観察された。
【0155】
(比較例11)
可溶化コラーゲン1200.00g(コラーゲン分180.00g)にバリエース B−35(堺化学製、硫酸バリウム粒子、固形分濃度72.20%、平均粒子径0.30μm)を1.88g(硫酸バリウムは1.357g)を混合した。添加剤の添加量はコラーゲン原液中の固形分全体(コラーゲンと添加剤の合計)に対する割合で表し、次の式で求める。
【0156】
添加量=添加剤/(コラーゲン+添加剤)×100(%)=1.357/(180.00+1.357)×100=0.75%
さらに、乳酸水溶液と水を一定量添加してニーダーで攪拌し、pH3.5、固形分濃度(コラーゲンと添加剤からなる)が7.5%になるようにコラーゲン原液を調製した。
【0157】
得られたコラーゲン原液を製造例2〜4に記載の方法で処理し再生コラーゲン繊維を得た。
【0158】
最終的に得られた再生コラーゲン繊維の光沢は3級、透明度は標準であった。アイロン変色は4級であり、光沢、透明度は良好であるがアイロン変色が顕著に観察される結果が得られた。
【0159】
実施例1〜10、比較例1〜11の結果は下記の表4に示される。なお、表4における「凝集体」の項目は、上記評価環境で再生コラーゲン繊維に対する観察により、顆粒状物質、例えば黒点又は白点が含まれているか否かを示す。
【0160】
表4における「金属酸化物量」は、実施例では金属酸化物の重量%であるが、比較例については金属酸化物ではないが各添加剤の添加重量%として示す。
【0161】
【表4】
【0162】
表4から分かるように、コラーゲン原液に金属酸化物を加えると、光沢と透明度がいずれも人毛に近似し、且つ高温のヘアアイロンを用いたスタイリング時にも熱変色を受けにくい再生コラーゲン繊維が得られる。コラーゲン原液に有機添加剤、例えばオレイン酸、エポキシ化大豆油、PVAcを加えると、光沢は抑制される(例えば比較例2〜4)ものの、アイロン変色を抑制することができない。また、コラーゲン原液に金属酸化物以外の無機系添加剤、例えば硫酸バリウムを加える時も、光沢、透明度、アイロン変色のすべてで良好な結果を得ることができず、再生コラーゲン繊維に白点が生じることもある。
図1