(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831369
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】内視鏡手術装置および他の手術装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20210208BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
A61B17/94
A61B1/00 T
【請求項の数】41
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-510405(P2018-510405)
(86)(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公表番号】特表2018-528816(P2018-528816A)
(43)【公表日】2018年10月4日
(86)【国際出願番号】US2016048622
(87)【国際公開番号】WO2017040192
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年8月2日
(31)【優先権主張番号】14/843,417
(32)【優先日】2015年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513217850
【氏名又は名称】マイクロエア サージカル インスツルメンツ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】ケラー ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン シャノン
【審査官】
宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−520146(JP,A)
【文献】
米国特許第05448990(US,A)
【文献】
米国特許第05620446(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 − 17/94
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードと、
黒色または暗色の樹脂固体形状を有するブレードケースと、
を備え、
前記ブレードケースは、前記ブレードを格納可能で、
前記ブレードは、前記ブレードケースの長手方向と異なる方向に進退可能で、
前記ブレードケースの内面は、光を吸収し、
光を吸収する前記内面は、黒色材料または暗色材料から形成された部品と一体である、
ことを特徴とする手術装置。
【請求項2】
前記内面の色は、黒色または暗色である、
請求項1記載の手術装置。
【請求項3】
前記色は、暗色である、
請求項2記載の手術装置。
【請求項4】
前記色は、黒色である、
請求項2記載の手術装置。
【請求項5】
前記内面は、黒色樹脂を含む、
請求項1記載の手術装置。
【請求項6】
最大強度に設定された内視鏡により400ナノメートル−700ナノメートルの範囲の可視光が前記内面に当てられたときの反射光の測定値は、20%未満である、
請求項1記載の手術装置。
【請求項7】
前記内面は、手術中に光が当てられる、
請求項1記載の手術装置。
【請求項8】
前記手術装置は、内視鏡装置である、
請求項7記載の手術装置。
【請求項9】
前記ブレードケースは、透明な中実部分により規定される少なくとも1つの窓を備える、窓付きブレードケースであり、
前記窓付きブレードケースの大きさは、内視鏡の経路を収容する大きさである、
請求項1記載の手術装置。
【請求項10】
前記窓付きブレードケースは、不透明である、
請求項9記載の手術装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの窓は、前記内視鏡の先端部に配置される、
請求項9記載の手術装置。
【請求項12】
前記内視鏡は、回転可能である、
請求項11記載の手術装置。
【請求項13】
前記窓の数は、1である、
請求項9記載の手術装置。
【請求項14】
前記窓の数は、2である、
請求項9記載の手術装置。
【請求項15】
前記窓の数は、3である、
請求項9記載の手術装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの窓は、第1窓と第2窓とを備え、
前記第1窓と前記第2窓とは、大きさおよび形状のうちの一方または両方が異なる、
請求項9記載の手術装置。
【請求項17】
前記手術装置は、内視鏡装置である、
請求項9記載の手術装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの窓は、
前記窓付きブレードケースの第1側面に配置された第1窓と、
前記窓付きブレードケースの第2側面に配置された第2窓と、
前記窓付きブレードケースの底面に配置された第3窓と、
を備える、
請求項9記載の手術装置。
【請求項19】
前記ブレードケースは、透明な第1部分と、光を吸収する第2部分と、を含む、
請求項1記載の手術装置。
【請求項20】
前記第1部分は、前記ブレードケースの頂部であり、
前記第2部分は、前記ブレードケースの底部である、
請求項19記載の手術装置。
【請求項21】
前記手術装置は、内視鏡装置である、
請求項19記載の手術装置。
【請求項22】
前記第1部分は、
約2.0インチ−約3.5インチの範囲の長さ寸法と、
約0.15インチ−約0.25インチの範囲の幅寸法と、
約0.010インチ−約0.025インチの範囲の厚さ寸法と、
を有する、
請求項19記載の手術装置。
【請求項23】
前記ブレードケースは、縁付き先端部で終端し、
前記縁付き先端部は、前記ブレードケースの縦軸に沿って延びる掻取部を備え、
前記掻取部は、前記ブレードケースの一部と一体部品である、
請求項1記載の手術装置。
【請求項24】
前記掻取部は、広がり形状と、突出形状と、湾曲突起形状と、からなる群から選択される形状により規定される、
請求項23記載の手術装置。
【請求項25】
前記手術装置は、内視鏡装置である、
請求項23記載の手術装置。
【請求項26】
前記縁付き先端部には、前記ブレードが含まれない、
請求項23記載の手術装置。
【請求項27】
前記縁付き先端部は、丸みを帯びている、
請求項23記載の手術装置。
【請求項28】
前記縁付き先端部は、カニューレの遠位先端部周囲で90°−180°の総可動域を形成し、縁取りを施して丸みを帯びた縁形状により規定され、縁取り範囲は、0.001インチ−0.010インチである、
請求項27記載の手術装置。
【請求項29】
前記ブレードケースは、未使用状態では第1ハンドピースに取り付け可能で、
2つの位置間を移動する開放可能な遮断タブ、
を備える、
請求項1記載の手術装置。
【請求項30】
前記遮断タブは、前記ブレードケースの上に位置する、
請求項29記載の手術装置。
【請求項31】
前記遮断タブは、前記第1ハンドピースから前記ブレードケースを取り出すことにより開放され、
開放された前記遮断タブは、前記ブレードケースが前記第1ハンドピースに再度取り付けられ、または第2ハンドピースに取り付けられることを防止する大きさの物理的遮断部を形成する、
請求項29記載の手術装置。
【請求項32】
前記ブレードケースは、
(1)4cm3未満の容積を占め、および/または0.36cm2以下の断面積を有し、および/または0.54cm以下の高さを有するブレードケースと、
(2)4cm3未満の容積を占めるブレードケースと、
(3)0.36cm2以下の断面積を有するブレードケースと、
(4)0.54cm以下の高さを有するブレードケースと、
(5)0.055平方インチ未満の単位長さ当たりの最大外部容積を占め、80%未満の高さ対幅比率を有するブレードケースと、
からなる群から選択される、
請求項29記載の手術装置。
【請求項33】
前記ブレードケースは、3.41cm3以下の容積を占める、
請求項32記載の手術装置。
【請求項34】
前記ブレードケースは、0.54cm以下の高さを有する、
請求項32記載の手術装置。
【請求項35】
フランジを備える、
請求項32記載の手術装置。
【請求項36】
前記ブレードケースは、少なくとも3.75インチの長さを有する、
請求項32記載の手術装置。
【請求項37】
請求項1記載の手術装置を製造する方法であって、
手術中に光が当てられる前記手術装置の表面を光吸収面として形成する工程を有し、
前記光吸収面は、黒色材料または暗色材料から形成された部品と一体であり、
前記光吸収面を形成する工程は、出発材料を冷却および硬化されたとき、黒色の塑性固体に形成する工程を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項38】
前記光吸収面は、金属を粗研磨加工またはグリットブラスト加工する工程を行うことなく形成される、
請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記光吸収面を形成する工程は、黒色材料または暗色材料から一体的な非積層部品を形成する工程を含み、
前記光吸収面は、前記黒色材料または前記暗色材料の上面である、
請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記手術装置は、内視鏡装置である、
請求項37記載の方法。
【請求項41】
前記光吸収面は、ブレードケースの表面を含む、
請求項37記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね手術器具、特に内視鏡手術器具に関し、具体的には手根横靱帯の開放および他の用途に用いることができる手術器具および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内の組織の検査および処置(例えば、手根横靱帯の切開)に有用な手術器具の例は、Ageeに付与された米国特許第4,962,770号、Ageeに付与された米国特許第4,963,147号、Ageeに付与された米国特許第5,089,000号、Ageeに付与された米国特許第5,306,284号、およびWellborn(Microaire Surgical Instruments, Inc.)に付与された米国特許第7,918,784号などで説明されている。内視鏡は、確立されている外科手技、例えば、手根横靱帯の開放に用いられる。内視鏡手術装置は、手根横靱帯の切開用の切断組立品と、視覚化カメラシステムを有する内視鏡と、を含む。
【0003】
しかし、現在の商業分野における内視鏡の使用に全く欠点がないわけではなく、一見すると、一定の不利な側面が内視鏡の使用に内在している。例えば、患者が手根管や肘部管の開放術を受ける理由は、これらの部位の組織が正中神経および尺骨神経を圧迫して痛みや痺れ、機能喪失を引き起こすからである。内視鏡手術装置は、靱帯や組織を切開してそのような圧迫感を軽減するために用いられる。しかし、内視鏡手術装置を挿入して手術を行うことで、内視鏡手術装置は、処置を行うのに必要なわずか5分の間に、神経に対する圧迫感を強め、これによりさらなる潜在的な痛みや他の一時的合併症を引き起こす可能性がある。
【0004】
現在普及している内視鏡の別の側面は、視覚化の機能に限界があることである。この限界は、避けがたい、もしくは、実際にはなかなか対処できないようである。例えば、体腔内で内視鏡からの光および内視鏡レンズを用いて作業するときに、金属表面の湿気および光の反射は、必然的に視覚を悪くするようである。当業界には、好ましくない光の反射の低減を試み、金属表面が鏡のようにならないように金属表面に粗いブラスト加工を行って内視鏡の金属表面のつやを落す者もいる。しかし、再利用のために滅菌される医療器具の表面が粗いことは、滑らかな表面と比べると、滑らかでない表面が完全に清潔であると確認することが不確実であるという点であまり歓迎されない可能性もある。
【0005】
既存の内視鏡を用いた視覚化の別の側面は、内視鏡レンズを配向し所望の画像を得るために患者の体内でのブレードケースの移動(特に回転移動)が必要とされてきたことである。ユーザは理論的には患者の体内でブレードケースを移動せずに現行の器具を用いて、患者の体内でブレードケースを回転も移動もさせずに所望の視覚画像を取得できることを希望するが、使用可能な視覚画像は撮られない。
【0006】
また、現行の内視鏡のブレードケースは、患者の体内で一定のスペースを占領する。このスペースで他の医療器具を使用して、各器具の機能を実行するためにこのスペースが必要とされるとき、ブレードケースは、取り除かれ再度挿入されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、既存の内視鏡手術器具の前述の欠点に対処することである。
【0008】
さらに、本発明の目的は、まぶしい反射光に伴う難点に比較的影響を受けない内視鏡手術器具を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、視覚化を実現するために、患者の体内で回転する必要性を最小限にした内視鏡手術器具を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、別の手術器具の場所を確保するために、最初の内視鏡手術器具は取り除かれる必要があり、その別の手術器具の除去によりスペースが再び利用可能となった場合に、最初の内視鏡手術器具が再挿入される必要がある状況で、患者の体内に残したままにすることが可能である内視鏡手術器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、好ましい実施形態では、内面が光を吸収するブレードケースを備える手術装置を提供する。例えば、本発明の手術装置では、ブレードケースの内面は黒色または暗色である。本発明の手術装置では、ブレードケースは黒色の塑性固体を含む。本発明の手術装置では、ブレードケースは、黒色樹脂から成る。本発明は、他の手術装置も提供する。
【0012】
別の好ましい実施形態では、本発明は、手術中に光が当てられる内面を備える手術装置を提供する。内面は、カニューレとブレードケースとからなる群から選択される部品に属し、光を吸収する(例えば、光吸収性材料を備える内面)。
【0013】
本発明は、別の好ましい実施形態では、手術中に光が当てられる内面を備える手術装置(例えば、内視鏡装置)を提供する。内面は、カニューレとブレードケースとからなる群から選択される部品に属し、光を反射しない。
【0014】
別の好ましい実施形態について言及すると、本発明は、手術中に光が当てられる手術装置の表面が光吸収面として構成される工程を有する、手術装置(例えば、内視鏡手術装置)を製造する方法を提供する。例えば、本発明の方法では、光吸収面は、金属を粗研磨加工またはグリットブラスト加工する工程を行うことなく形成される。本発明の方法では、光吸収面は、黒色または暗色材料から形成された部分と一体化され、黒色材料または暗色材料の上面である。本発明の方法では、表面を構成する工程は、黒色または暗色の表面層を用いる工程と、薄い層として黒色または暗色の材料を光非吸収性材料に用いる工程と、黒色材料または暗色材料から一体的な非積層部分を形成する工程と、出発材料を冷却および硬化されたとき、黒い塑性固体に形成する工程と、を有する。本発明の方法では、光吸収面は、ブレードケースの表面を構成している。
【0015】
本発明は、別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの窓を備え、内視鏡の経路を収容する大きさを有する窓付きブレードケースを備える手術装置(例えば、内視鏡手術装置)を提供する。例えば、本発明の手術装置では、ブレードケースは、不透明である。本発明の手術装置では、少なくとも1つの窓は、内視鏡の先端に位置する。本発明の手術装置では、内視鏡は、回転可能である。本発明の手術装置では、少なくとも1つの窓は、1つの窓のみを備える。本発明の手術装置では、少なくとも1つの窓は、2つの窓を備える。本発明の手術装置では、少なくとも1つの窓は、3つの窓を備える。本発明の手術装置では、少なくとも1つの窓は、大きさおよび形状のうちの一方または両方で異なる第1窓と第2窓と、を有する。本発明の手術装置では、少なくとも1つの窓は、透明な固体部分により規定される。本発明の手術装置は、ブレードケースの第1側面に配置された第1窓と、ブレードケースの第2側面に配置された第2窓と、ブレードケースの底面に配置された第3窓と、を備える。本発明は、他の手術装置も提供する。
【0016】
別の好ましい発明では、本発明は、内視鏡を操作する方法であって、患者に手術をする際中に、窓付きブレードケースを患者の体内に配置する工程を有する方法を提供する。窓付きブレードケースは、少なくとも第1窓(例えば、空間を有する第1窓、透明樹脂から成る第1窓)を備え、この第1窓を介して特定の工程が行われる。
【0017】
本発明は、別の好ましい実施形態では、透明な第1部分(例えば、約2.0インチ−約3.5インチの範囲の長さ寸法と、約0.15インチ−約0.25インチの範囲の幅寸法と、約0.010インチ−約0.025インチの範囲の厚さ寸法と、を有する透明な第1部分)と、光を吸収する第2部分と、を含むブレードケースを備える手術装置(例えば、内視鏡装置)を提供する。例えば、本発明の手術装置では、透明な第1部分はブレードケースの上面部分であり、光を吸収する第2部分はブレードケースの底面部分である。
【0018】
本発明は、別の好ましい実施形態では、手術中(例えば、手根管開放術、肘部管開放術、内視鏡手術、関節鏡手術、最小侵襲手術(例えば、皮膚の切開が約3cmを超えない最小侵襲手術、皮膚の切開が約1cm−約1.5cmの範囲内の最小侵襲手術など)にブレードケースまたはカニューレの窓を介して切開すべき組織をプレビューする工程を有する方法を提供する。例えば、本発明の方法では、上部に窓を有する不透明なブレードケースまたは上部に窓を有する不透明なカニューレを複数回挿入や除去することなくプレビューする工程が行われる。本発明の方法は、さらに、プレビューする工程が行われる時、切開されるべき組織の長さに沿って内視鏡を上下に移動する工程を有する。本発明は、他の方法も提供する。
【0019】
本発明は、別の好ましい実施形態では、外面上に少なくとも1つの凹部を有するブレードケースを備えた手術装置(例えば、内視鏡装置)を提供する。例えば、本発明の手術装置では、少なくとも1つの凹部は、ブレードケースの外面に沿って長手方向に延びる。本発明の手術装置では、ブレードケースは、フランジ付きブレードケースであり、少なくとも1つの凹外壁を備える。本発明の手術装置は、1組の凹外壁と、凹外部側壁と、少なくとも2つの外部側壁を備える。本発明の手術装置では、ちょうど2つの凹外部側壁が含まれる(例えば、本発明の手術装置は、非凹上面壁と、非凹底面壁と、を備える)。本発明の手術装置は、凹外部底面壁を備える(例えば、本発明の手術装置では、非凹上面壁は、平面を有する)。
【0020】
別の好ましい実施形態では、本発明は、縁付き先端部で終端するブレードケースを備え、縁付き先端部は、ブレードケースの縦軸に沿って延びる掻取部を備え、掻取部は、ブレードケースの一体化部品である手術装置(例えば、内視鏡装置)を提供する。例えば、本発明の手術装置では、掻取部は、フランジ形状と、突出形状と、湾曲突起形状と、からなる群から選択された形状により規定される。本発明の手術装置では、ブレードは、縁付き先端部に含まれない。本発明の手術装置では、縁付き先端部は、丸みを帯びている。
【0021】
本発明は、別の好ましい実施形態では、内視鏡手根管手術中に滑膜を掻き取る工程を有する手術装置を用いる方法を提供する。この掻取工程は手術装置により行われる。手術装置は、内視鏡肘部管手術中に存在する筋膜付近の筋肉を分離することにも用いることができる。例えば、本発明の方法は、内視鏡肘部管手術中に存在する筋膜付近の筋肉を分離する工程をさらに有する。筋肉を分離する工程は、滑膜を掻き取る工程を行う同一の手術装置により行われる。
【0022】
別の好ましい実施形態では、本発明は、ブレードケースの縁付き先端部を滑膜に接触させることにより滑膜を掻き取り、掻き取り工程中に内視鏡を配置して滑膜に光を当てる工程および/またはブレードケースの縁付き先端部を筋肉に接触させることにより肘部管手術のために筋肉を分離する工程を有する内視鏡手根管手術で組織を取り除く方法を提供する。
【0023】
別の好ましい実施形態について言及すると、本発明は、ブレードと、未使用状態では第1ハンドピースに取り付け可能なブレードケースと、2つの位置間を移動する開放可能な遮断タブ(例えば、ブレードケースの上に位置する開放可能な遮断タブ、ハンドピースからブレードケースを取り出すことにより開放される遮断タブ。開放されたタブは、ブレードケースが第1ハンドピースに再度取り付けられ、または第2ハンドピースに取り付けられることを防止する大きさの物理的遮断部を形成する)と、を備える内視鏡手術装置を提供する。
【0024】
本発明は、別の好ましい実施形態では、ブレードと、利用インジケータと、を備えた内視鏡手術装置を提供する。ブレードを初めて用いるときには、利用インジケータは、手術装置を見ている者には見えない内部位置を占める。ブレードを初めて用いると、利用インジケータは、手術装置を見ている者から見える外部位置に移動する。
【0025】
別の好ましい実施形態では、本発明は、ブレードケースを備える内視鏡手術装置を提供する。ブレードケースは、(1)4cm
3未満の容積を占め、および/または0.36cm
2以下の断面積を有し、および/または0.54cm以下の高さを有するブレードケースと、(2)4cm
3未満の容積を占めるブレードケースと、(3)0.36cm
2以下の断面積を有するブレードケースと、(4)0.54cm以下の高さを有するブレードケースと、(5)0.055平方インチ未満の単位長さ当たりの最大外部容積を占め、80%未満の高さ対幅比率を有するブレードケースと、からなる群から選択される。例えば、本発明の内視鏡手術装置では、ブレードケースは、3.41cm
3以下の容積を占める。本発明の内視鏡手術装置では、ブレードケースは、0.54cm以下の高さを有する。本発明の手術装置はフランジを備える。本発明の手術装置は、少なくとも約9cmの長さを有するブレードケースを備える。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は図面を参照することにより理解できるものである。図面は必ずしも縮尺通りに描かれてはいない。
【
図1】本発明にかかる格納位置にあるブレード100を有する例示的な手術装置1の斜視図である。
【
図1A】本発明にかかる直立位置にあるブレード100を有する例示的な手術装置1の斜視図である。
【
図2】
図1の手術装置1に用いることができる本発明にかかるブレードケース2の断面図であり、ブレードケース2の内面3により規定される内部の中空円形部分を示す。
【
図2A】
図1の手術装置1に用いることができる本発明にかかるブレードケース2の断面図であり、ブレードケース2の内面3により規定される内部の中空円形部分を示す。
【
図3】
図1の手術装置1に用いることができる本発明にかかるブレードケース12の長手方向断面図である。ブレードケース12は全長12Lを有する。
【
図3A】長手方向の12Lを軸として90°回転させた
図3のブレードケース12の長手方向断面図であり、窓11を示す。
【
図3B】平面視のブレードケース12の窓7、9、11(
図3−
図3A)の近接斜視図である。光円錐10は、直立の標準位置で内視鏡から発せられる。
【
図3C】
図3Bに対応する側面視の近接斜視図である。側面組織を見るために、光円錐10’は一方の側に45°回転した内視鏡から発せられる。
【
図3D】
図3B−
図3Cに対応する底面視の近接斜視図である。ブレードケース12の下の組織を見るために、光円錐10”は、180°回転された内視鏡から発せられる。
【
図4】手術装置1(
図1)に用いることができ、全長22Lを有する本発明にかかる透明な上面付きブレードケース22の断面図である。
【
図4A】
図4のブレードケース22の幅方向断面図である。
【
図5】手術装置1(
図1)に用いることができ、全長23Lを有する本発明にかかる透明な底面付きブレードケース23の長手方向断面図である。
【
図5A】
図5のブレードケース23の幅方向断面図である。
【
図6】手術装置1(
図1)に用いることができ、全長32Lを有するフランジ付きブレードケース32の長手方向断面図である。
【
図6A】フランジ付きブレードケース32(
図6)の幅方向拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施形態のブレードケースの外面上の凹部に形成された突起部21の断面図である。
【
図8】本発明の実施形態のブレードケースの外面上の凹部に形成されたフック形状の縁部24の断面図である。
【
図9】手術装置1(
図1)に用いることができ、全長42Lを有し、先端部が尖った掻取部付きブレードケース42の平面図である。
【
図10】本発明にかかる掻取部先端40を備えたブレードケース42(
図9)の側面図である。
【
図11】ブレードケース本体50と、窓7、9、11(
図3−3A)と、ブレードケースの透明な上面4と、ブレードケースの透明な底面4Aと、ブレードケースの凹外面16と、および掻取部先端40と、を構成する部品の本発明の実施形態における分解斜視図である。
【
図11A】
図11に対応する組立斜視図であり、本発明の実施形態にかかる手術装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、手術器具、手術装置、ならびに手術器具および手術装置の使用方法に一定の進歩および改良を提供する。本発明では、手術装置の好ましい例は、内視鏡装置を備える手術装置(例えば、
図1の手術装置1)であり、「内視鏡手術装置」とも称されている。本発明は、特に、ブレードケース(例えば、
図2のブレードケース2)を備える手術装置、例えば、ブレードケースを備える内視鏡装置を改良する。本明細書で提供されている革新技術を組み合わせて用いることが好ましいが、必須ではない。
【0028】
ブレードケース2の内面3には、光を吸収する内面が特に好ましい。「光吸収」面の例は、例えば、低い反射率を有する表面、低い反射性を有する表面、低いアルベドを有する表面、非反射性表面、可視光を当てたときに測定した光の反射率の値が20%未満になる表面、などである。可視光を当てたときに測定した光の反射率とは、最大強度に設定された内視鏡により400nm−700nmの範囲で可視光を当てたときに測定した光の反射率を指す。本発明で用いる光吸収面の最も好ましい例は、黒色面または暗色面である。
【0029】
ブレードケース2には、窓付きブレードケース(例えば、
図3−
図3Dの窓7、9、11を備える窓付きブレードケース12)が特に好ましく、3つで1組の窓が最も好ましい構成である。
【0030】
この3つ1組の窓7、9、11において、第1窓11の寸法の好ましい例は長さが約0.1インチ−約0.3インチで、幅が約0.05インチ−約0.1インチであり、第2窓7および第3窓9の寸法の好ましい例はそれぞれ長さが約0.2インチ−約0.5インチで、高さが約0.05インチ−約0.1インチである。別の例では、第1窓は約7mmの長さ寸法と、約1.5mm−約2mmの範囲の幅寸法と、を有し、第2窓および第3窓は約7mmの長さ寸法と、約1.5mm−約2mmの範囲の幅寸法と、を有する。
【0031】
図3A−
図3Dに示すように、光円錐10、10’、10”は、窓11および窓7、9を背景にして示される。光円錐10、10’、10”は、3つの異なる位置の内視鏡の視覚的円錐を示す。
【0032】
窓7、9、11は、例えば、ブレードケース12の側面および底面に孔を切削することにより容易に形成される。
【0033】
窓7、9、11から(回転する内視鏡を用いて)、軟組織の生体構造を手術中に見ることができる。
【0034】
ブレードケース2には、透明な上面付きブレードケース、例えば、ブレードケース22(
図4−
図4A)が好ましい。ブレードケース22の透明な上面4は、ブレードケース22の全長22Lに沿って内視鏡を介した視覚化を可能にする。
【0035】
ブレードケース2には、透明な底面付きブレードケース、例えば、ブレードケース23(
図5−
図5A)が好ましい。透明な底面4Aは、ブレードケース23の全長23Lに沿って内視鏡を介した視覚化を可能にする。
【0036】
好ましくは、ブレードケース2は、透明な底面および透明な上面の両方を有する。
【0037】
ブレードケース22の本体5と、ブレードケース23の本体5Aと、を形成するために、好ましくは比較的強靱な不透明材料が用いられる。上面4および底面4Aは、ブレードケース22の全長22Lおよびブレードケース23の全長23Lに沿って内視鏡が動かされるときに内視鏡を介した視覚化を可能にする透明材料から構成される。上面4および本体5(ならびに底面4Aおよび本体5A)に用いられる材料の組み合わせは、不透明設計の剛性を保持しつつ、上面4(および底面4A)が透明でない場合よりも明瞭な視覚化を可能にするために選ばれている。透明な上面4または底面4Aの厚さの例示的な範囲は、約0.020インチ−約0.040インチである。
【0038】
ブレードケース2には、フランジ付きブレードケース、例えば、ブレードケース32(
図6−
図6B)が好ましい。
図6Aでは、現在販売されている内視鏡のブレードケースの線形の輪郭6が点線で示されている。本発明は、線形輪郭6を回避し、これに代えて凹面16(
図6A)を形成するために提供される。凹面16を形成することにより、本発明の断面輪郭は、砂時計の形状に近くなる。凹面16は、ブレードケース32の外部に沿って軸方向に延びる。凹部は、非凹面部分17と非凹面部分18との間の凹面16により規定される。凹部は、軟組織を収めるポケットと、ブレードケース32の上面19上を当該軟組織が滑ることを克服するための障害物と、を作り出す。
【0039】
図6−
図6Bは、ブレードケースの両側面に入り込む凹部の構造を示し、他の実施形態では、凹部はブレードケースの一方の側面のみに入り込む構造となっている。
【0040】
凹部の深さ16D(
図6B)は、非凹面部分17により規定される線17’と、凹面16の最も凹んだ地点20を含み、線17’と平行に引かれた線20’と、の間の距離である。約3.75インチ−約3.8インチの全長32Lを有するブレードケースでは、凹部の深さ16Dの好ましい範囲は、約0.025インチ−約0.050インチである。
【0041】
凹部の長さの例は、例えば、ブレードケースの全長に等しい長さ、ブレードケースの全長より短い長さである。凹部がブレードケースの全長より短い長さで延びている場合、凹部の長さがブレードケース32の先端部33(
図6)から始まり、先端部33の後方に延びるようにするためには、少なくともブレードケース32の全長の約半分に等しい長さが好ましい。
【0042】
図6−
図6Bは、ブレードケースの側面に入り込む凹部の構造を示し、他の実施形態では、凹部はブレードケースの底面に入り込む構造となっている。例えば、ブレードケースの凹底面は、肘部管開放術で尺骨神経を扱う際に特に有用であると考えられている。
【0043】
図6Aでは、凹面16は、滑らかなものとして示されている。なお、当然のことではあるが、凹面は、全ての実施形態において滑らかである必要はない。例えば、いくつかの実施形態では複数の突起21(
図7)は、凹面16’の一部として形成される。別の例としては、他の実施形態において表面16”は、完全に対称ではないが、ほぼ凹状であり、例えば、フック形状の縁部24(
図8)により規定される凹部である。
【0044】
凹面16を設けた結果、フランジ25(
図6A)が形成される。
【0045】
ブレードケースの先端部形状の例は、丸みを帯びた縁取り先端部であり、例えば、カニューレの遠位先端部周囲で90°−180°の総可動域を形成し、丸みを帯びた縁形状をしており、縁取り範囲は0.001インチ−0.010インチである。
【0046】
好ましくは、掻取部先端、例えば、掻取部先端40(
図10−
図10A)は、ブレードケースに含まれる。好ましくは、掻取部先端40は、手根管手術中にブレードケース42の上部平面に沿って存在する滑膜や他の組織を掻き取る鋭利な刃と共に遠位方向に広げられる。掻取部先端40の鋭利さの程度については、好ましくは、掻取部先端40は、滑膜や他の生物組織を切るほどには鋭利でないが、横断する靱帯から生物組織を掻き取るほどに鋭利であることである。
【0047】
有利なことに、フランジ形状の掻取部先端、例えば、掻取部先端40は、肘部管の手術中に筋肉を切らずに筋肉を分離することにも用いることができる。
【0048】
遠位に広がった掻取部先端、例えば、掻取部先端40を備える内視鏡器具は、所定の掻き取りが必要な場合に用いられる別の掻取部の場所を確保するために引っ込める必要なしに、患者の体内に残したままにすることが可能である。
【0049】
本発明は、以下の実施例を参照すればさらに理解できるものであるが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1
この実施例では、本明細書の図面における本発明の内視鏡手術装置は、0.055平方インチ未満の単位長さ当たりの最大外部容積(V/L)を占め、高さと幅の比率(H/W)が80%未満のブレードケースを備える。当然のことながら、V/L(単位長さ当たりの最大外部容積)は、本質的に断面積を反映する。本明細書では「最大値」を参照する。射出成形樹脂部品では、中心部から先端部に向かう部分の大きさが小さくなることに対応して、側壁に沿っていくらかの量の抜き勾配が常に期待されるからである。
【表1】
*市販されている内視鏡手術装置
【0051】
80%以下のH/Wを有する(すなわち、高さよりも幅が大きい)本発明の実施例とは対照的に、現在販売されている内視鏡手術装置のブレードケースは、112%のH/Wを有する(すなわち、幅よりも高さが大きい)。本発明の実施例は、100%未満のH/Wを有するため、ブレードケースの剛性および強度は、112%のH/Wを有するケースと比べて小さくなる。ブレードケースの剛性および強度を必要な水準にするために、本明細書の図面に説明するさらなる機能を用いることが、大変好ましい。
【0052】
市販の内視鏡手術装置の最大V/Lを10%低減することは、当業者にとって大幅な改良であると考えられるであろう。当業者がV/Lを検討する背景は、以下の通りである。すなわち、患者が手根管・肘部管の開放術を受ける理由は、これらの領域の組織が正中神経および尺骨神経を圧迫し、痛みや痺れ、機能喪失を生じさせるからである。内視鏡手術装置は、靱帯や組織を切開してそのような圧迫感を軽減するために用いられる。しかし、内視鏡手術装置を挿入して手術を行うことで、処置を行うのに必要なわずか5分の間に内視鏡手術装置は、神経に対する圧迫感を強め、これによりさらなる潜在的な痛みや他の一時的合併症を引き起こす可能性がある。本発明による内視鏡手術装置のV/Lの低減は、手術中に内視鏡手術装置が神経に与える圧迫感を、V/Lの低減により速やかに、かつ、直接的に小さくするという点で極めて有利である。
【0053】
実施例2
本実施例では、ブレードケース本体50は、一体形成された掻取部先端40と、窓7、9と、凹壁部16と、を備える。本実施例のケース本体50は、不透明な黒色であり、透明な部分4、4Aに用いたものより比較的強固な材料から形成されている。
【0054】
ケース本体50、透明な上部面部分4、透明な底面部分4A(窓11を備える透明な底面部分4A)は、
図11Aの手術装置の中に組み立てられる。
【0055】
本発明の好ましい実施形態について説明したが、当業者は、本発明が添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内で変更を加えて実施できることを理解するであろう。