【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、エラストマー膜に2軸方向の180N/mより大きい表面張力を加えることを含む調整可能な流体充填レンズ組立体の組立方法が提供され、膜の弛緩を促進させるために張力が加えられた膜を熱調整し、膜の張力を維持しながら膜を周辺支持構造に取り付け、1つの壁が調整膜からなる包囲体を形成するために、膜を1つ以上の他の構成要素に組み付け、その後、包囲体に流体を充填する。
【0011】
膜は、少なくとも450N/mか、或いは、少なくとも500N/mの初期表面張力を有するように2軸方向に張力をかけられてもよい。いくらかの実施形態において、膜は、少なくとも1000N/mの初期表面張力になるまで2軸方向に張力をかけられてもよい。例えば、膜は、約1200N/mの初期表面張力になるまで2軸方向に張力をかけられてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、膜は、少なくとも70℃又は少なくとも80℃の温度で調整されてもよい。膜は、少なくとも30分間、或いは、少なくとも60分間調整されてもよい。熱調整工程は、膜を支持構造に取り付ける前に適切に行われる。
【0013】
膜の熱調整は、膜の弛緩を促進させるのに役立つ。熱調整の後、膜は、膜の初期表面張力、膜材料の特性及び熱調整工程の特定の条件に依存して、約180〜550N/mの範囲の残留表面張力を有し得る。
【0014】
膜は、流体の通過を防止又は遅延させるのに役立ち得るバリア層を形成するために、バリア材料で少なくとも1つの面にコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、バリア材料は、完成した組立体内の流体と接触する膜の内面にコーティングされてもよい。この構成においては、バリア層は、膜の中への流体の通過を防止又は遅延させる働きをすることができる。
【0015】
或いは、バリア材料は、包囲体内の流体に直接接触するのではなく、完成した組立体内の包囲体の外側に配置される膜の外面上に保護層としてコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、膜の外面は空気に曝されてもよい。膜は、流体が膜材料内に浸透するように、その内面にバリア材料をコーティングしないままにしてもよい。膜の外面に保護層を設けることにより、例えば、外面に液滴が形成されることによってレンズの光学的品質を損なう可能性がある望ましくない状態である、包囲体から膜に浸透する流体が膜の外面を介して膜から漏出することが防止される。
【0016】
バリア材料は、熱調整工程後において、上述したように、膜の内面又は外面に塗布することができる。好都合には、その材料は、膜が包囲体を形成するために他の構成要素に組み付けられる前に膜上にコーティングされてもよい。所望であれば、この段階において、例えば反射防止コーティングなどの他のコーティングを膜の外面に適用することができる。このような他のコーティングは、当技術分野で知られているように、単層または多層コーティングであってもよい。
【0017】
バリア材料は、流体の通過を防止又は遅延させるための任意の適切な材料を含むことができる。バリア材料の選択は、使用される特定の流体に依存し得る。バリア材料の屈折率は、例えば、その膜に屈折率が整合された自己平滑化コーティングとして使用されるように、膜の表面品質を改善するのに十分な反射防止及び/又は厚さでなければ重要ではない。それは膜によく接着できなければならず、無黄変でなければならない。バリア層は、可能な限り薄くすることが望ましい。いくつかの実施形態では、バリア層は、20nm未満の厚さ、例えば、約10nmである。いくつかの実施形態では、バリア材料は、フッ素化ポリマー又は疎水性(疎油性)ポリマーを含むことができる。好ましくは、バリア材料は、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、酸化ケイ素(SiOx)、ポリアクリレート、無機系コーティング(例えば、MgF2)及びドープポリマー(例えばC−doped PTFE)から選択し得る。例えば、OF210のようなPTFEのフッ素系ポリマーホモログは、キャノンオプトロン社から市販されているものが好ましい。
【0018】
以下により詳細に記載されるような本発明の特定の態様において、バリア材料は、例えばアクリレート末端ポリウレタンのような官能化ポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、バリア材料は、ナノ粒子シリカなどの充填剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、バリア材料は、アクリル変性ポリウレタンシリカハイブリッドコーティングを含むことができる。
【0019】
バリア材料は、当技術分野で知られている様々な異なる技術によって膜の内面又は外面に塗布することができるが、いくつかの実施形態では、真空下において物理蒸着(PVD)が使用され得る。アクリル変性ポリウレタンバリア材料のコーティングは、0.5μm〜1.5μmの範囲の厚さを達成するために、超音波噴霧によって膜の面に適用され得る。
【0020】
流体が膜材料に浸透することができる実施形態、例えば膜の内面にバリア層がない実施形態では、流体の膜材料への通過によって、膜が徐々に膨張して約5%以下の歪み除去と同程度に弛ませることができる。膜は、それ自体の体重の約20%まで吸収することができる。そのような実施形態では、膜の初期表面張力は、熱調整後に残留表面張力が約350〜550N/mに低下するように選択され得る。流体が膜材料に浸透すると、膜の表面張力がさらに低下することがある。これは、表面張力が約180N/mを超えなければ許容される。いくつかの実施形態では、膜の表面張力は、膜材料への流体の進入後において約180〜300N/m、好ましくは200〜300N/mの範囲の最終表面張力で安定化させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、膜による流体の吸収を促進させるために、完成した組立体を少なくとも約40℃の温度でインキュベートすることができる。いくつかの実施形態では、完成した組立体を約50〜51℃温度でインキュベートすることができる。適切には、完成した組立体は、少なくとも約12時間、好ましくは24時間インキュベートすることができる。
【0022】
有利なことに、本発明の方法に従って2軸方向に張力をかけて熱条件を調整したときの膜は、流体と連続的に接触して配置され、且つ、約50℃の動作温度の変動を受けた場合であっても、少なくとも約12ヶ月間、一般的には少なくとも2年間、少なくとも約180N/mの十分な一定の張力を維持することができる。本明細書において「十分に一定」とは、膜の張力が、その期間にわたって約25%以上変化しない、好ましくは20%以上変化しないことを意味する。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、調整可能な流体充填レンズ組立体は、張力が加えられるとともに周辺支持構造に組み付けられたエラストマー膜によって1つの壁が形成され、且つ、流体が充填された包囲体を備え、流体が浸透する膜は、その外面に流体に対するバリア層がコーティングされており、膜は少なくとも180N/mの実質的に一定の表面張力を有する。
【0024】
上述したように、上記膜は、膜の約20重量%までの液体を吸収することができる。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、調整可能な流体充填レンズ組立体は、張力が加えられるとともに周辺支持構造に組み付けられたエラストマー膜によって1つの壁が形成され、且つ、流体が充填された包囲体を備え、膜は、その内面に流体に対するバリア層が形成され、180N/mの実質的に一定な表面張力を有する。
【0026】
一般的には、第3の態様の調整可能な流体充填レンズ組立体の膜は、流体を含まない。
【0027】
いくつかの実施形態において、膜は、少なくとも12ヶ月の期間において、少なくとも180N/mの実質的に一定な表面張力で維持され得る。上述したように、これは、膜の表面張力がこの期間に亘って約20%以上変化しないことを意味する。
【0028】
好ましくは、膜材料は、レンズの通常の動作範囲よりも低いガラス転移温度、好ましくは約−5℃より低いガラス転移温度と10〜200MPaの範囲の弾性率とを有するべきである。膜は光学的に透明で非毒性でなければならない。いくつかの実施形態では、膜は約1.5の屈折率を有し得る。架橋ウレタンおよびシリコーンエラストマー、例えばポリ(ジメチルシロキサン)を含む、種々の適切なポリマー材料が当業者に利用可能である。熱可塑性芳香族ポリウレタン(TPU)が特に好ましい。
【0029】
熱可塑性ポリウレタンは、結晶質及び非晶質領域にそれぞれ対応する、硬質及び軟質領域を二等分したブロックコポリマー分子からなる。それは、一方では高い伸張性と低いガラス転移温度を有する非晶質セグメントで、他方では高い融点を有する高剛性の結晶性セグメントである柔軟な組み合わせであり、その材料にエラストマー性を付与する。結晶相の比率を変更することにより、硬度、強度、剛性、伸張性及び低温の柔軟性などの特性を広い範囲にわたって変化させることが可能である。好ましくは、膜は、良好な微生物抵抗性を有する芳香族ポリウレタンのシートから形成されてもよい。いくつかの実施形態では、ポリウレタンシートは、好ましくはポリエーテル又はポリエステル芳香族ポリウレタンから成り立つようにすればよい。
【0030】
熱可塑性ポリウレタンは、特許文献19に開示されているように、(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対する反応性を有し、500〜10000の分子量を有する適切な化合物、(c)50〜499の分子量を有する適切な連鎖延長剤の存在下において(d)触媒及び/又は(e)通例の助剤を反応させることにより作成され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
有機イソシアネート(a)としては、一般的に知られている芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族脂肪族イソシアネート、好ましくはジイソシアネートを使用することが可能である。例えば、2,2'-,2,4'-及び/又は4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0032】
イソシアネートに対する反応性を有する化合物(b)としては、イソシアネートに対する反応性を有するジオール及びジアミンのような一般に知られている化合物を使用することが可能である。例えば分子量が500〜12000g/mol、好ましくは600〜6000g/mol、特に800〜4000g/molであり、好ましくは「ポリオール」と呼ばれるポリエーテルオール、好ましくはポリオール1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に2の平均官能価を有する。好ましいポリオールは、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)である。
【0033】
連鎖延長剤(c)としては、50〜499の分子量を有する一般に知られている脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物、好ましくは2官能性化合物を使用することが可能である。例えば、アルキレン基に2〜10個の炭素原子を有するアルカンジオール、特に1,4'-ブタンジオールである。
【0034】
TPUsの硬度を設定するために、形成成分(b)及び(c)のモル比は比較的広い範囲内で変えることができる。使用されるべき連鎖延長剤(c)に対する成分(b)のモル比は、10:1〜1:10、特に1:1〜1:4で有用であることが判明しており、(c)の含有量が増加するにつれてTPUsの硬度が上昇する。
【0035】
好ましいTPUsは、(a)イソシアネート、(b)約150℃未満の融点及び501〜8000g/molの分子量を有する適切なポリエーテルジオール(c)60g/mol〜500g/molの分子量を有する。特に好ましいのは、成分(b)に対する62g/mol〜500g/molの分子量を有するジオール(c)のモル比が0.2未満である熱可塑性ポリウレタンであり、特に好ましくは0.1〜0.01のモル比である。
【0036】
本発明のレンズ組立体の膜に使用するのに特に好ましいポリエーテルポリウレタンは、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリテトラメチレングリコール、及び、約86のショアA硬度、約1.12g/cm
3の密度、約33MPaの引張強さ、及び、約105N/mmの引裂強さを有する1,4'-ブタンジオールから形成される。この材料はBASFからElastollan(登録商標)1185として市販されている。
【0037】
一般的に、流体は実質的に非圧縮性でなければならない。それは、透明無色で、少なくとも約1.5の屈折率を有するべきである。好ましくは、膜と流体との間の界面が使用者に実質的に感知できないように、膜と流体との屈折率を一致させる必要がある。液体は、毒性が低く、揮発性が低いものでなければならない。それは、不活性で、且つ、約−10℃以上又は約100℃未満の相変化を示さなければならない。流体は、高温で安定し、且つ、微生物の増殖が低いものでなければならない。いくつかの実施形態では、流体は、約1g/cm
3の密度を有し得る。
【0038】
例えばフェニル化シロキサンのようなシリコーン油及びシロキサンを含む、種々の適切な流体が、当業者に利用可能である。好ましい流体はペンタフェニルトリメチルトリシロキサンである。
【0039】
いくつかの実施形態では、膜は、好ましくは、例えば上述の如きElastollan(登録商標)1185として入手可能な材料であるポリエーテルポリウレタンを含み、流体は、シリコーン油又はフェニル化シロキサン、例えばペンタフェニルトリメチルトリシロキサンを含んでいてもよい。膜材料及び流体の屈折率は、同一又は実質的に同じであることが好ましく、少なくとも1.5である。
【0040】
膜に加えて、包囲体は、流体を受け入れるための受け部を備えることができる。受け部は、筐体の1つの壁を形成する膜によって閉じられてもよい。受け部は、光学的に透明無色であり、少なくとも約1.5の屈折率を有する材料から作られるのが好ましい。受け部の屈折率は、膜流体の屈折率に適切に整合されているので、受け部と流体との間の境界は、使用者にとって実質的に知覚できない。いくつかの実施形態では、例えば、本発明の流体充填レンズ組立体が「流体注入」型である場合、受け部は剛性を有してもよい。一方、特に、本発明のレンズ組立体が「圧縮」型である場合、受け部は圧縮可能であってもよい。後者の場合、受け部は、受け部が圧縮されるように蛇腹の態様で座屈可能な可撓性の周壁を含み得る。適切な可撓性材料は、例えばTuftane(登録商標)のような透明な熱可塑性ポリウレタンである。
【0041】
いくつかの実施形態では、膜の周辺支持構造は、膜の周縁部分を保持するように配置された1つ以上のリングを含むことができる。1つ又は複数のリングは、実質的に剛性があってもよく、又は曲げ可能であってもよい。いくつかの実施形態では、膜は非円形であってもよく、膜が球状に膨張、又は、収縮、又は、光学的或いは眼科的適用において典型的に使用される他のゼルニケ多項式に従うように或いは許容するために、膜を支持するための1つ又は複数のリングは、組立体が動くときに膜の縁部を平面からずらすことができるよう曲げ可能であってもよい。
【0042】
膜の周辺支持構造の一部として1つ以上の曲げ可能なリングを含むいくつかの実施形態において生じ得る問題は、前項で述べたような必要とされる面外の曲げとは対照的に、膜の表面張力が1つ以上のリングにおける面内において望まない曲がりを引き起こす傾向があることであり、組立体が動くときに膜が球状に膨張又は収縮したり或いは許容する、或いは、1つ又は複数の他のゼルニケ多項式にしたがって膜の縁部を平面からずらしたり或いは許容することである。特許文献18は、膜の張力による負荷に応答して支持部材の面内の湾曲を制御するために湾曲可能な膜支持部材に作用する1つ以上の曲げコントローラを備える変形可能な膜組立体を開示している。特許文献18の曲げコントローラは満足できるものではあるが、それらは組立体に追加の部品を必要とし、複雑になるとともに製造コストが増す。それらはまた、組立体内でかなりの体積と重量とを占める。
【0043】
したがって、本発明の別の目的は、製造がより簡単であり、最終組立体がより少ない体積及び/又は重量を占めるようになり、周辺支持構造の曲げ可能な1つ又は複数のリングの平面内の曲げを制御できる改良された方法を提供することである。
【0044】
したがって、本発明の第4の態様によれば、調整可能な流体充填レンズ組立体は、張力が加えられたエラストマー膜の周縁部分を保持するように配置された1つ以上の曲げ可能なリングを含む周辺支持構造に組み付けられた膜によって1つの壁が形成され、且つ、流体が充填された包囲体を備え、膜の内面及び外面の少なくとも一方に、膜よりも高い弾性率を有し、且つ、膜の張力に対抗するために圧縮状態で配置され、それにより膜によって1つ以上のリングに加えられる面内の力を少なくとも部分的に緩和する材料がコーティングされている。いくつかの実施形態では、1つ以上のリングは非円形であってもよい。
【0045】
上述したように、膜は、10〜100MPaの範囲の弾性率を有することが好ましい。
【0046】
膜は、完成された流体充填レンズ組立体において100〜300μmの範囲の厚さであってもよい。いくつかの実施形態では、膜は、150〜250μm、好ましくは約200〜220μmの範囲の厚さを有し得る。上述したように、膜は、最終組立体において180〜300N/m、好ましくは200〜300N/mの範囲で張力を加えられてもよい。
【0047】
コーティング層は、膜の弾性率より1〜2桁大きい弾性率を有し得る。例えば、コーティング層は、少なくとも0.1GPa、好ましくは少なくとも0.5GPa、より好ましくは少なくとも0.75GPa又は1GPaの弾性率を有し得る。いくつかの実施形態では、コーティング層は、約1GPaの弾性率を有し得る。
【0048】
コーティング層の厚さは、曲げ可能なリングに適用される張力の実質的な弛緩(減少)をもたらすよう計算し得る。ほとんどの実施形態において、膜の表面張力を完全に打ち消すように計算された厚さを有するコーティング層は、望ましくないほど厚くなるが、厚さ0.5〜1.5μm、例えば1μmのコーティング層は、膜の力学に大きな影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、コーティング層は、1〜1.5μm、好ましくは1.2〜1.5μmの範囲の厚さを有し得る。
【0049】
好ましくは、コーティング層は、膜の表面とコーティングとの間に強い界面力を提供するために、膜材料に適合する材料から形成されてもよい。上述のように、熱可塑性芳香族ポリウレタン(TPUs)はエラストマー膜に好ましい材料である。TPUsは疎水性であり、例えば、PVDによって適用されたフッ素化ポリマーのような別の疎水性コーティング材料を使用する際の問題は、界面結合がなく、結果としてPVDコーティングが脆弱であることである。
【0050】
本発明によれば、コーティング層は、膜と強い界面結合を形成することができるポリウレタン材料を含むこともできる。有利には、ポリウレタンコーティング材料は、架橋性アクリレート基を含み、膜に塗布した後にコーティング層を硬化させることができる。コーティング材料は、例えばポリエーテル又はポリエステルポリウレタンアクリレートのようなアクリル変性ポリウレタンを含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング材料は、アクリル変性脂肪族又は芳香族ポリウレタンを含み得る。ポリウレタンコーティングは、例えばシロキサン膜を含む上記の種類の他の膜材料と共に使用することもできる。
【0051】
好適なポリエステルウレタンアクリレートの例には、ヒドロキシル官能性ポリエステルアクリレートとイソシアネート官能性材料との反応によって形成される生成物が含まれる。ポリエステルアクリレートは、ポリエステルポリオールとアクリル酸との反応生成物を含み得る。
【0052】
好適なイソシアネート官能性成分には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、イソシアネート官能性アクリルポリマー及びポリウレタン、ヒドロキシル官能性成分(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びジ−、トリ−及びより高級のヒドロキシ官能性脂肪族アルコール(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びトルエンジイソシアネート(TDI))との反応生成物(例えば、グリセロール及びトリメチロールプロパン)及びそれらのエトキシル化、プロポキシル化及びポリカプロラクトン類似体)を含み得る。
【0053】
好適なポリウレタンアクリレートコーティング材料の具体例は、RAYCRON(登録商標)CeranoShield UV Clearcoat及びG−NT200であり、オハイオ州バーベルトンのバーベルトン特殊化学工場であるPPGインダストリース社とカルフォルニア州ラミラダのレンズテクノロジーズインターナショナルとからそれぞれ市販されている。
【0054】
有利には、コーティング材料は、追加の剛性を付与するためにナノ粒子シリカを含むことができる。シリカ充填剤は、耐引掻性も提供し得る。有利には、コーティング材料は、50〜60重量%のシリカ、例えば、約52重量%を含むことができ、いくつかの実施形態では、約25重量%のシリカ濃度で十分である。いくつかの実施形態では、膜上のコーティング層が例えば0.4〜0.5μmの範囲になるようにコーティング材料を適切な溶媒で希釈し得る。溶媒の選択は、選択されたコーティング材料によって異なるが、典型的には酢酸塩又はアルコールを使用し得る。そのような場合、シリカの濃度は、7〜10重量%に希釈することによって減少させ得る。
【0055】
ポリウレタンアクリレートコーティング材料は、例えばフリーラジカル光開始剤のような適切な光開始剤をさらに含んでもよい。
【0056】
ポリウレタンコーティング材料は、超音波噴霧により膜の表面に適用することができ、所望であれば1μm以下の厚みが達成されることが分かっている。超音波噴霧では、小さな液滴を形成するために液体の塊が噴霧され、次いでこれが薄膜の形態で基材上に噴霧される。
【0057】
それ故に、本発明の第5の態様によれば、エラストマー膜に2軸方向に張力を加えることを含む調整可能な流体充填レンズアセンブリの組立方法が提供され、膜の弛緩を促進させるために引っ張った膜を熱的に調整する工程と、該膜を当該膜の張力を維持しながら周辺支持構造に取り付ける工程と、膜の面を架橋可能なポリウレタンアクリレートコーティング材料でコーティングする工程と、コーティング材料を硬化させる工程と、膜を1つ以上の他の構成要素に組み付けて、1つの壁が膜からなる包囲体を形成する工程と、その後、包囲体に流体を充填する工程とを順に行う。
【0058】
膜は、架橋されたウレタン及び例えばポリ(ジメチルシロキサン)のようなシロキサンエラストマーを含む、上述の如き任意の適切なエラストマー材料から形成してもよい。熱可塑性芳香族ポリウレタン(TPU)が特に好ましい。
【0059】
上記のように、膜は、約1200N/mの初期表面張力になるよう引っ張られてもよい。熱調整後、膜は約180〜550N/mの範囲の残留表面張力を有し得る。
【0060】
有利には、コーティング材料は、上記のナノ粒子状シリカ充填剤を含むことができ、硬化する際、少なくとも0.5GPaの弾性率を有し得る。コーティングは、膜の表面に0.5〜1.5μmの厚さに塗布され得る。適切には、コーティングは、膜の外面に塗布されて、組立体に耐引掻性及び清浄性を与えることができる。
【0061】
有利には、膜の表面は、コーティング材料のより良好な接着を可能にするためのその表面との接触角が減るようコーティング材料の塗布前に活性化され得る。適切には、膜面は、プラズマ処理、例えば空気プラズマによって活性化され得る。熱可塑性ポリウレタンは性質上疎水性であり、典型的な接触角は95〜105°の範囲にある。プラズマ処理によって熱可塑性ポリウレタン膜面を活性化すると、接触角が約78〜83°に低下する。
【0062】
コーティング材料を膜の表面に塗布した後、コーティング材料は硬化させ得る。適切には、UV露光をこの目的のために使用することができる。例えば、365nmの長波域のスパイクを伴う220〜320nmの範囲のUV光を出力する水銀蒸気H−バルブを用いて硬化させることができる。硬化は、コーティング内の光開始剤の活性化によって進行し、これは、ポリウレタンアクリレート材料内のアクリレート部分の架橋を引き起こし、その結果、膜の表面に硬質コーティング層が生じる。
【0063】
コーティングを施した後、膜を1つ以上の他の構成要素に組み付けて包囲体を形成し、包囲体に流体を充填した後、上述のように完成した組立体を少なくとも約40℃の温度でインキュベートして、膜を僅かに弛緩させ、それによってコーティングが上記のように圧縮され得る。コーティングの圧縮は、膜のさらなる弛緩に抵抗するように作用し、それにより、膜によって周辺膜支持構造に加えられる面内の力を低減する。
【0064】
好適には、本発明の調整可能な流体充填レンズ組立体は、一対の眼鏡に使用することができる。したがって、本発明は、第6の態様において、本発明による少なくとも1つの調整可能な流体充填レンズ組立体を含む一対の眼鏡を提供する。
【0065】
以下は、本発明の実施形態のみの例としての説明である。