(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
i.少なくとも1種の乳化剤および少なくとも1種の水溶性開始剤を使用して水中で乳化重合することによって、オレフィン性不飽和モノマー混合物Aを重合する工程であり、
前記モノマー混合物Aから製造されたポリマーが10〜55℃のガラス転移温度を有する、工程と、
ii.iで得られたポリマーの存在下、少なくとも1種の乳化剤および少なくとも1種の水溶性開始剤を使用して水中で乳化重合することによって、オレフィン性不飽和モノマー混合物Bを重合する工程であり、
反応溶液中のモノマー濃度が、反応時間の全体にわたって6.0質量%を超えることがなく、
前記オレフィン性不飽和モノマー混合物Bが、少なくとも1種のポリオレフィン性不飽和モノマーを含む、工程と、
iii.iiで得られたポリマーの存在下、少なくとも1種の乳化剤および少なくとも1種の水溶性開始剤を使用して水中で乳化重合することによって、オレフィン性不飽和モノマー混合物Cを重合する工程であり、
反応溶液中のモノマー濃度が、反応時間の全体にわたって6.0質量%を超えることがない、工程と、
iv.前記反応溶液のpHを6.5〜9.0のpHに調整する工程と
によって製造可能な、少なくとも1種のポリマーを含む水性分散体であって、
a.前記オレフィン性不飽和モノマー混合物Aが、25℃で<0.5g/lの水中溶解度を有する1種以上のモノマーを0質量%〜50.0質量%未満含み、
段階iからの反応溶液中におけるモノマー混合物Aの濃度が、6.0質量%を超えることがなく、
段階iの後に得られたポリマーが、20〜110nmの粒径を有し、
b.前記モノマー混合物Bから製造されたポリマーが、−35〜12℃のガラス転移温度を有し、
段階iiの後に得られたポリマーが、130〜200nmの粒径を有し、
c.前記モノマー混合物Cから製造されたポリマーが、−50〜15℃のガラス転移温度を有し、
段階iiiの後に得られたポリマーが、150〜280nmの粒径を有し、且つ
前記モノマー混合物Aの質量が、前記モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して1〜10%であり、前記モノマー混合物Bの質量が、前記モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して60〜80%であり、前記モノマー混合物Cの質量が、前記モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して10〜30%である、
水性分散体。
i、iiおよびiiiに使用された乳化剤が、それぞれの場合に互いに独立して、10〜40個の炭素原子を有するエトキシル化アルカノールおよびプロポキシル化アルカノールからなる群から選択される、請求項1に記載の水性分散体。
前記モノマー混合物Aが、少なくとも1種の、非置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステル、および/または、少なくとも1種の、ビニル基に芳香族基を有するビニルモノ不飽和モノマーを含む、請求項1又は2に記載の水性分散体。
前記モノマー混合物Bが、少なくとも1種のポリオレフィン性不飽和モノマー、および、少なくとも1種の、非置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性分散体。
前記モノマー混合物Cが、少なくとも1種のアルファ−ベータ不飽和カルボン酸、少なくとも1種の、1個以上のヒドロキシル基で置換されているアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステル、および、少なくとも1種の、非置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性分散体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
少なくとも1種のポリマーを含む新たな水性分散体は、下記において本発明の水性分散体とも呼ばれる。本発明の水性分散体の好ましい実施形態は、以下の説明および従属クレームから明白である。
【0019】
上記のポリマーは、いわゆるシード−コア−シェルポリマーであり、本出願においてシード−コア−シェルアクリレートとも呼ばれる。
【0020】
同様に、バインダーとして本発明の水性分散体を含む着色水性ベースコート材料、および接着力を改善するために水性ベースコート材料において本発明の水性分散体を使用する方法も、本発明により提供される。本発明は、とりわけ、基材へのマルチコート塗装系を生成する方法に関し、また記述した方法により生成されるマルチコート塗装系にも関する。また本発明は、本発明のベースコート材料を使用して、マルチコート塗装系における欠陥部位を修復する方法にも関する。
【0021】
用語「含む」は、本発明の意味において、本発明の水性分散体に関連して、1つの好ましい実施形態において「からなる」の意味を有する。用語「含む」は、本発明の意味において、水性ベースコート材料に関連して、1つの好ましい実施形態において「からなる」の意味を有する。この好ましい実施形態における本発明の水性ベースコート材料に関して、後に下記において特定され、本発明の水性ベースコート材料に任意に存在する1種以上の構成成分が、水性ベースコート材料に存在してもよい。全ての構成成分が、下述する好ましい実施形態において、本発明の水性ベースコート材料にそれぞれ存在してもよい。
【0022】
水性分散体に関して、分散体は、有意な割合の水を含むときに水性と呼ばれる。この文脈において、本発明の範囲内で「水性」は、分散体が、それぞれの場合に存在する溶媒(すなわち、水および有機溶媒)の総量に対して、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも50質量%、非常に好ましくは少なくとも60質量%の水の割合を有することを意味することが、好ましくは理解されるべきである。特に好ましくは、水の割合は、それぞれの場合に存在する溶媒の総量に対して、40〜99質量%、より特定的には50〜98質量%、非常に好ましくは60〜95質量%である。
【0023】
用語「(メタ)アクリレート」は、下記において、アクリレートとメタクリレートの両方を示すことが意図される。
【0024】
例えばDIN規格のような規格について、版または発行年が明示的に記述されていない場合、有効な版は、出願日に有効であったものであり、出願日に有効な版が存在しない場合には、規格の最終有効版である。
【0025】
水性分散体
本発明の水性分散体(aqueous dispersion)は、水中でのオレフィン性不飽和モノマーの多段階ラジカル乳化重合によって製造される。
【0026】
ラジカル乳化重合は、少なくとも1種の重合開始剤を必要とする。使用される重合開始剤は、水溶性開始剤でなければならない。ペルオキソ二硫酸カリウム、ナトリウムもしくはアンモニウム、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−アミドイソプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾ−ビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、または前述の開始剤の混合物(例えば過酸化水素と過硫酸ナトリウム)のリストから選択される開始剤の使用、およびレドックス開始剤系が好ましい。
【0027】
乳化重合の全ての段階i)、ii)、およびiii)では、少なくとも1種の重合開始剤が、それぞれの場合に必要である。乳化重合の段階i)、ii)、およびiii)のそれぞれにおける少なくとも1種の重合開始剤は、他の段階の重合開始剤と無関係に選択される。好ましくは、同じ重合開始剤が、乳化重合の段階i)、ii)、およびiii)のそれぞれに使用される。
【0028】
レドックス開始剤系は、少なくとも1種の過酸化物含有化合物を、レドックス共開始剤(coinitiator)、例としては還元活性を有する硫黄化合物、例えば、アルカリ金属の重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩もしくは四チオン酸塩、ならびにアンモニウム化合物、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物(sodium hydroxymethanesulfinate dihydrate)および/またはチオ尿素と、組み合わせて含む開始剤である。したがって、ペルオキソ二硫酸塩とアルカリ金属または亜硫酸水素アンモニウムとの組合せ、例えばペルオキソ二硫酸アンモニウムおよび二亜硫酸アンモニウムとの組合せを使用することができる。過酸化物含有化合物とレドックス共開始剤との質量比は、好ましくは50:1〜0.05:1である。開始剤またはレドックス開始剤系と組み合わせて、例えば、硫酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸ニッケル(II)、塩化銅(I)、酢酸マンガン(II)、酢酸バナジウム(III)および塩化マンガン(II)など、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、バナジウム、またはクロムの塩などの遷移金属触媒を追加的に用いることが可能である。モノマーに対して、これらの遷移金属塩は、0.1〜1000ppmの量で慣用的に使用される。したがって、過酸化水素と鉄(II)塩との組合せ、例えば、0.5〜30%の過酸化水素および0.1〜500ppmのモール塩などを、使用することができる。
【0029】
開始剤は、対応する段階で使用されるモノマーの総質量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の量で使用される。
【0030】
重合は、0〜160℃、好ましくは60〜95℃の温度で有用に実施される。
【0031】
酸素の不在下で、好ましくは不活性ガス雰囲気下で操作することが、ここでは好ましい。一般的に重合は大気圧下で実施されるが、より低い圧力または高い圧力の使用も、とりわけモノマーおよび/または溶媒の沸点を超える重合温度が用いられる場合には可能である。
【0032】
本発明の水性分散体を生成する多段階乳化重合の各段階を、いわゆる「スターブフィード」重合(「スターブフィードする(starve feed)」または「スターブフィードされた(starve fed)」重合としても知られている)として実施しなければならない。
【0033】
本発明の意味におけるスターブフィード重合は、反応溶液中の残留モノマーの量が反応時間の全体にわたって最小限である、すなわち、オレフィン性不飽和モノマーの計量添加が、反応溶液中で6.0質量%、好ましくは5.0質量%、より好ましくは4.0質量%、極めて有利には3.5質量%の濃度を反応時間の全体にわたって超えないように実施される乳化重合と考慮される。0.01〜6.0質量%、好ましくは0.02〜5.0質量%、より好ましくは0.03〜4.0質量%、より特定的には0.05〜3.5質量%のオレフィン性不飽和モノマーの濃度範囲が、なお一層好ましい。例えば、反応の際に検出され得る最高の率(または濃度)は、0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%、2.5質量%または3.0質量%であってもよい一方で、他の検出値は全てここに特定された値を下回ってもよい。
【0034】
反応溶液中のモノマー濃度は、ここでは例えばガスクロマトグラフィーによって決定してもよく、
試料採取した後、直ぐに試料を液体窒素で冷却し、阻害剤の4−メトキシフェノールと混合する。次のステップでは、試料をテトラヒドロフランに溶解し、n−ペンタンを加える。透明な上澄みを、モノマーを決定するために極性カラムおよび無極性カラムならびに水素炎イオン化検出器を使用するガスクロマトグラフィーによって分析する。ガスクロマトグラフィー決定における典型的なパラメーターは、以下である。5%フェニル−および1%ビニル−メチルポリシロキサン相を有する25mのシリカ毛管カラム、または50%フェニル−および50%メチル−ポリシロキサン相を有する30mのシリカ毛管カラム、水素キャリヤガス、150℃のスプリットインジェクタ、オーブン温度50〜180℃、水素炎イオン化検出器、検出温度275℃、内部基準のアクリル酸イソブチル。
【0035】
本発明の目的において、モノマー濃度は、好ましくはガスクロマトグラフィーによって、より特定的には上に記述したパラメーターに従って決定される。
【0036】
反応溶液中のモノマー濃度は、下記において遊離モノマーと呼ばれ、様々な方法で制御され得る。
【0037】
遊離モノマーの濃度を最小限にする1つの可能性は、オレフィン性不飽和モノマーの混合物に非常に低い計量供給速度を選択することである。計量供給速度が、全てのモノマーが反応溶液に入ると直ぐに非常に素早く反応できるほど低い場合、遊離モノマーの濃度が最小限であると確証することができる。
【0038】
計量供給速度に加えて、反応溶液は、計量供給されたモノマーが非常に素早く反応し、それによって更なる連鎖成長を保証し、遊離モノマーの濃度を最小限にできるように、十分なラジカルを常に含有することが重要である。
【0039】
この目的のため、反応条件は、開始剤の供給が、オレフィン性不飽和モノマーの計量供給を始める前であっても開始されるように好ましく選択されるべきである。
【0040】
計量添加は、好ましくは少なくとも5分前、より好ましくは少なくとも10分前に開始される。それぞれの場合に開始剤の総量に対して、好ましくは少なくとも10質量%の開始剤、より好ましくは少なくとも20質量%、非常に好ましくは少なくとも30質量%の開始剤が、オレフィン性不飽和モノマーの計量供給を始める前に添加される。
【0041】
選択される温度は、開始剤の一定した分解を可能にするものであるべきである。
【0042】
開始剤の量は、反応溶液中におけるラジカルの十分な存在のために重要な要素である。開始剤の量は、十分なラジカルがいつでも利用可能であり、計量供給されたモノマーが反応できるように選択されるべきである。開始剤の量が増加すると、大量のモノマーが同時に反応することも可能である。
反応速度を決定する他の要素は、モノマーの反応性である。
【0043】
したがって遊離モノマーの濃度を制御することは、開始剤の量、開始剤の添加速度、モノマーの添加速度、およびモノマーの選択の相互作用によって達成され得る。計量供給を遅くすることばかりでなく、開始剤の量を上げることも、および開始剤添加を早く開始することも、遊離モノマーの濃度を上述した範囲内に保つ目的に役立つ。
【0044】
反応における任意の時点で、遊離モノマーの濃度は、上記のガスクロマトグラフィーによって決定することができる。
【0045】
この分析が、例えば、非常に低い反応性を有するオレフィン性不飽和モノマーが原因で、スターブフィード重合の制限値に近い遊離モノマーの濃度を見出した場合には、上述のパラメーターを反応の制御に利用してもよい。このような場合では、例えば、モノマー計量供給速度を低減することができる、または開始剤の量を増加することができる。
【0046】
スターブフィード重合の制御条件下では、粒径が達成されたときにモノマーの計量添加を停止することによって、得られたポリマーの形態および粒径に対して正確な制御が可能である。
【0047】
この文脈において、反応溶液の試料をいつでも取り出すことができ、粒径を、DIN ISO 13321に準じた動的光散乱によって決定することができる。
【0048】
乳化重合の全ての段階i)、ii)、およびiii)は、それぞれの場合に少なくとも1種の乳化剤を必要とする。乳化重合の段階i)、ii)、およびiii)のそれぞれにおける少なくとも1種の乳化剤は、他の段階の乳化剤と無関係に選択される。好ましくは、同じ乳化剤が、乳化重合の段階i)、ii)、およびiii)のそれぞれに使用される。
【0049】
乳化剤は、それぞれの場合に対応する段階におけるモノマーの総質量に対して、好ましくは0.1〜10.0質量%、より好ましくは0.1〜5.0質量%、非常に好ましくは0.1〜3.0質量%の量で使用される。
【0050】
非イオン性またはイオン性乳化剤、および双性イオン性乳化剤も、また任意に前述の乳化剤の混合物も使用することができる。
【0051】
好ましい乳化剤は、10〜40個の炭素原子を有し、かつ異なるエトキシル化および/もしくはプロポキシル化の程度を有する任意にエトキシル化もしくはプロポキシル化されたアルカノール(例えば、0〜50molのアルキレンオキシドを有する付加物)、ならびに/またはこれらの中和、硫酸化、スルホン化もしくはリン酸化された誘導体である。
【0052】
特に好ましい乳化剤は、Cytecから例えばEF−800として市販されている、中性ジアルキルスルホコハク酸エステルまたはアルキルジフェニルオキシドジスルホネートである。
【0053】
本発明の目的において、ガラス転移温度Tgは、DIN 51005「Thermal analysis(TA)−terms」およびDIN 53765「Thermal analysis−differential scanning calorimetry(DSC)」に基づいて、実験的に決定される。これには、試料を10mgだけ計り分けて試料ボート(sample boat)に入れ、それをDSC機器に導入することを伴う。この機器を開始温度に冷却し、その後、第1回目および第2回目の測定工程を、50ml/分の不活性ガスフラッシング(N2)下、10K/分の加熱速度により、測定工程の間に再び開始温度まで冷却することによって実施する。測定は、予測されるガラス移転温度の約50℃未満から、ガラス移転温度を約50℃超えるまでの温度範囲で慣用的に実施される。本発明の目的におけるガラス移転温度は、DIN 5376、セクション8.1に準じて、特定の比熱容量の変化の半分(0.5デルタcp)が達成される、第2回目の測定工程における温度である。この温度は、DSCダイアグラム(温度に対する熱流のプロット)から決定され、ガラス転移の前後の推定基線の間の中央線と、測定プロットとの公差点での温度である。
【0054】
ガラス移転温度Tgについて以下に報告される全ての値は、対応するモノマー混合物が個別に重合されたときに形成される特定のポリマーに関する。したがって、例えば第3段階で得られる値は、第3段階のモノマー混合物が、第1および第2段階の不在下で重合されるときに得られる値である。
【0055】
予想されるガラス移転温度の有意推定のために、Fox方程式として知られている方程式を使用することができる。
Fox方程式:
【数1】
T
g:得られたコポリマーのガラス移転温度(ケルビン)
x
1、x
2、..、x
n:モノマー構成成分1、2、...、nの質量割合
T
g1、T
g2、..、T
gn:モノマー構成成分1、2、...、nのホモポリマーのガラス移転温度(ケルビン)
【0056】
Fox方程式は、ホモポリマーの分子量を含むことなくガラス移転温度および質量割合に基づいた推定値のみを表すので、これは、合成の当業者にとって単にツールまたは有意な指標として使用され得る。
本発明の説明に関連するガラス移転温度値のみが、上記のように測定されるものである。
【0057】
下記に報告されている全ての酸価およびヒドロキシル価は、モノマー組成物に基づいて計算された値である。
【0058】
適切なオレフィン性不飽和モノマーは、モノまたはポリオレフィン性不飽和であり得る。
【0059】
適切なモノオレフィン性不飽和モノマーの例には、(メタ)アクリレートに基づいたモノオレフィン性不飽和モノマー、ビニルモノオレフィン性不飽和モノマー、アルファ−ベータ不飽和カルボン酸、およびアリル化合物が含まれる。
【0060】
(メタ)アクリレートに基づいたモノオレフィン性不飽和モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、および(メタ)アクリル酸のエステル、ニトリルまたはアミドであり得る。
【0061】
オレフィン性不飽和ではない基Rを有する(メタ)アクリル酸のエステルが、好ましい。
【0063】
基Rは、脂肪族であっても、芳香族であってもよい。基Rは、好ましくは脂肪族である。基Rは、例えばアルキル基であり得る、またはヘテロ原子を含有し得る。ヘテロ原子を含有する基Rの例は、エーテルである。少なくとも、基Rがアルキル基であるモノマーを使用することが好ましいが、必ずしも限定的ではない。
【0064】
Rがアルキル基である場合、直鎖、分枝または環状アルキル基であり得る。3つ全ての場合において、当該基は非置換であってもよく、または官能基で置換されていてもよい。アルキル基は、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個の炭素原子を有する。
【0065】
特に好適である、非置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレートであり、n−およびtert−ブチル(メタ)アクリレートおよびメチルメタクリレートが、とりわけ好ましい。
【0066】
置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸の適切なモノ不飽和エステルは、好ましくは1個以上ヒドロキシル基により、またはリン酸エステル基により置換されていてもよい。
【0067】
特に好適である、1個以上のヒドロキシル基で置換されているアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、および4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートであり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが、とりわけ好ましい。
【0068】
特に好適である、リン酸エステル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルは、例えばRhodiaから市販されているSipomer PAM 200などの、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステルである。
【0069】
ビニルモノ不飽和モノマーは、ビニル基にオレフィン性不飽和ではない基R‘を有するモノマーであり得る。
【0071】
基R‘は、脂肪族であっても、芳香族であってもよく、芳香族基が好ましい。
【0072】
基R‘は、炭化水素ラジカルであり得る、またはヘテロ原子を含有し得る。ヘテロ原子を含有する基R‘の例は、エーテル、エステル、アミド、ニトリル、および複素環である。基R‘は、好ましくは炭化水素基である。R‘が炭化水素基である場合、非置換であっても、ヘテロ原子で置換されていてもよく、非置換基が好ましい。基R‘は、好ましくは芳香族炭化水素基である。
【0073】
特に好ましいビニルオレフィン性不飽和モノマーは、ビニル芳香族炭化水素、とりわけ、ビニルトルエン、アルファ−メチルスチレン、とりわけスチレンである。
【0074】
ヘテロ原子が含まれる場合、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール、およびN−ビニル−2−メチルイミダゾリンなどのオレフィン性不飽和モノマーが好ましい。
【0075】
基R‘は、好ましくは以下の構造を有し得る。
【0077】
この構造において、基R1およびR2は、合計で7個の炭素原子を有するアルキル基である。この種類のモノマーは、Momentiveから名称VEOVA 10で市販されている。
【0078】
適切なポリオレフィン性不飽和モノマーの例には、オレフィン性不飽和基R“を有する(メタ)アクリル酸のエステル、および一価または多価アルコールのアリルエーテルを包含する。基R“は、アリル基または(メタ)アクリロイル基であり得る。
【0080】
好ましいポリオレフィン性不飽和モノマーには、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタン−1,4−ジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、およびアリル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0081】
好ましいポリオレフィン性不飽和化合物には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートまたはグリセロールトリ(メタ)アクリレートなどであるが、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートモノアリルエーテル、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレートジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートジアリルエーテル、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレートトリアリルエーテル、トリアリルスクロース、およびペンタアリルスクロースなどの、2個を超えるOH基を有するアルコールのアクリルおよびメタクリル酸エステルが追加的に含まれる。
【0082】
特に好ましくはヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよび/またはアリルメタクリレート、非常に好ましくはヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートとアリルメタクリレートとの組合せを使用することである。
【0083】
水中の有機モノマーの溶解度は、水相の上方にあるガス空間と平衡を確立することによって(参考文献X.−S.Chai、Q.X.Hou、F.J.Schork、Journal of Applied Polymer Science、99巻、1296〜1301頁(2006年)と同様にして)決定され得る。
【0084】
この目的のために、20mlのガス空間試料管中において、規定量の水、好ましくは、決定されるモノマーの溶解度に関して過剰量である2mLの水に、さらに10ppmの乳化剤を添加した。平衡濃度を得るために、混合物を連続して振とうする。上澄みガス相を不活性ガスに置き換え、それによって平衡を再確立する。除去されたガス層において、検出すべき物質の割合を(好ましくは、ガスクロマトグラフィーにより)測定する。水中の平衡濃度は、ガス相におけるモノマーの割合をグラフにプロットすることによって、決定することができる。曲線の勾配は、過剰なモノマーの割合が混合物から除去されると直ぐに、実質的に一定値(S1)から有意な負勾配(S2)に変化する。ここで平衡濃度は、直線と勾配S1、および直線と勾配S2の交差点に達する。
【0085】
記載した決定は、好ましくは25℃で実施される。
【0086】
本発明の水性分散体を製造する段階iは、少なくとも1種の乳化剤および少なくとも1種の水溶性開始剤を使用した、水中での乳化重合によるオレフィン性不飽和モノマー混合物Aの反応であり、オレフィン性不飽和モノマー混合物Aは、反応溶液中のモノマー濃度が、反応時間の全体にわたって6.0質量%、好ましくは5.0質量%、より好ましくは4.0質量%を超えないように、換言すると、反応条件がスターブフィード重合であるように観察しながら、計量供給される。
【0087】
段階iから得たポリマーは、下記においてシードと呼ばれる。
【0088】
ここでモノマー混合物Aの総質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して、好ましくは1.0〜10.0%、より好ましくは2.0〜6.0%の割合を有する。
【0089】
ここでオレフィン性不飽和モノマー混合物Aは、得られたポリマーが10〜55℃、好ましくは30〜50℃のガラス転移温度Tgを有するように選択される。
【0090】
オレフィン性不飽和モノマー混合物Aは、25℃の温度で<0.5g/lの水中溶解度を有する1種以上のモノマーを、オレフィン性不飽和モノマー混合物Aの総質量に対して、0質量%、好ましくは10質量%、より好ましくは25質量%、非常に好ましくは35質量%から、50.0質量%未満、好ましくは49.0質量%未満、より好ましくは48.0質量%未満、非常に好ましくは45.0質量%未満まで含む。
25℃の温度で<0.5g/lの水中溶解度を有するモノマーは、好ましくはスチレンを含む。
【0091】
重合の反応条件は、段階iの後で得たポリマーが、20〜110nmの粒径を有するように選択される。
【0092】
モノマー混合物Aは、好ましくはヒドロキシ官能モノマーを含有しない。
【0093】
モノマー混合物Aは、好ましくは酸官能モノマーを含有しない。
【0094】
モノマー混合物Aは、より好ましくは、少なくとも1種の、非置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステル、および/または、少なくとも1種の、ビニル基に芳香族基を有するビニルモノ不飽和モノマーを含む。非置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルは、好ましくはアクリル酸n−ブチルまたはアクリル酸エチルである。ビニル基に芳香族基を有するビニルモノ不飽和モノマーは、好ましくはスチレンである。
【0095】
本発明の水性分散体を製造する段階iiは、iで得たポリマーであるシードの存在下で、少なくとも1種の乳化剤および少なくとも1種の水溶性開始剤を使用した、水中での乳化重合によるオレフィン性不飽和モノマー混合物Bの反応であり、オレフィン性不飽和モノマーB混合物は、反応溶液中のモノマー濃度が、反応時間の全体にわたって6.0質量%、好ましくは5.0質量%、より好ましくは4.0質量%を超えないように、それによって反応条件がスターブフィード重合であるように観察しながら、計量供給される。
【0096】
オレフィン性不飽和モノマー混合物Bからもたらされるポリマーは、下記においてコアと呼ばれる。全体的な成果、換言すると、段階(ii)の後で得たポリマーは、したがってシードとコアの組合せである。
【0097】
ここでモノマー混合物Bの総質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して、好ましくは60〜80%、より好ましくは70〜80%、非常に好ましくは71〜77%の割合を有する。
【0098】
ここでオレフィン性不飽和モノマー混合物Bは、モノマーBから製造されたポリマーが−35〜+12℃、好ましくは−25〜+7℃のガラス転移温度Tgを有するように選択される。
重合の反応条件は、段階iiの後で得たポリマー、すなわちシードおよびコアが、130〜200nmの粒径を有するように選択される。
【0099】
モノマー混合物Bは、少なくとも1種のポリオレフィン性不飽和モノマーを含む。
【0100】
モノマー混合物Bは、好ましくは酸官能モノマーを含有しない。
【0101】
モノマー混合物Bは、好ましくはヒドロキシ官能モノマーを含有しない。
【0102】
モノマー混合物Bは、好ましくは、少なくとも1種のポリオレフィン性不飽和モノマーおよび、少なくとも1種の、非置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルを含む。1つのとりわけ好ましい実施形態において、モノマー混合物Bは、少なくとも1種の、ビニル基に芳香族基を有するビニルモノ不飽和モノマーを追加的に含む。
【0103】
本発明の水性分散体を製造する段階iiiは、シードおよびコアからなる、iiで得たポリマーの存在下で、少なくとも1種の乳化剤および少なくとも1種の水溶性開始剤を使用した、水中での乳化重合によるオレフィン性不飽和モノマー混合物Cの反応であり、オレフィン性不飽和モノマーC混合物は、反応溶液中のモノマー濃度が、反応時間の全体にわたって6.0質量%、好ましくは5.0質量%、より好ましくは4.0質量%を超えないように、それによって反応条件がスターブフィード重合であるように観察しながら、計量供給される。
【0104】
オレフィン性不飽和モノマー混合物Cからもたらされるポリマーは、下記においてシェルと呼ばれる。全体的な成果、換言すると、段階(iii)の後で得たポリマーは、したがってシード、コアおよびシェルの組合せである。全体的な多段階ポリマーも、シード−コア−シェルポリマーと特定される。
【0105】
ここでモノマー混合物Cの総質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して、好ましくは10〜30%、より好ましくは18〜24%の割合を有する。
【0106】
オレフィン性不飽和モノマー混合物Cは、モノマーCから製造されたポリマーが−50〜15℃、好ましくは−20〜+12℃のガラス転移温度Tgを有するように選択される。
【0107】
ここでオレフィン性不飽和モノマー混合物Cは、シード、コアおよびシェルからなる得られたポリマーが10〜25の酸価を有するように、好ましく選択される。
【0108】
好ましくは、ここでオレフィン性不飽和モノマー混合物Cにおけるモノマーは、シード、コアおよびシェルからなる得られたポリマーが、0〜30、より好ましくは10〜25のOH価を有するように選択される。
【0109】
重合の反応条件は、段階iiiの後で得たポリマーが、150〜280nmの粒径を有するように選択される。
【0110】
モノマー混合物Cは、好ましくは、少なくとも1種のアルファ−ベータ不飽和カルボン酸を含む。
【0111】
1つの特に好ましい実施形態において、モノマー混合物Cは、少なくとも1種のアルファ−ベータ不飽和カルボン酸、および、少なくとも1種の、1個以上のヒドロキシル基で置換されているアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルを含む。
【0112】
1つの特に好ましい実施形態において、モノマー混合物Cは、少なくとも1種のアルファ−ベータ不飽和カルボン酸、少なくとも1種の、1個以上のヒドロキシル基で置換されているアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステル、および、少なくとも1種の、非置換アルキル基を有する(メタ)アクリル酸のモノ不飽和エステルを含む。
【0113】
1つの好ましい実施形態において、モノマー混合物Aの質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して1〜10%であり、モノマー混合物Bの質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して60〜80%であり、モノマー混合物Cの質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して10〜30%である。
【0114】
1つの特に好ましい実施形態において、モノマー混合物Aの質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して2〜6%であり、モノマー混合物Bの質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して71〜77%であり、モノマー混合物Cの質量は、モノマー混合物A、BおよびCの総質量に対して18〜24%である。
【0115】
本発明の水性ポリマー分散体を製造する段階ivは、反応溶液の中和である。中和とは、塩基の添加により、好ましくはアミンの添加により、6.5〜9.0のpHに調整することを意味する。N,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)が、中和のために特に好ましく用いられる。
【0116】
ここでpHの測定は、組合せpH電極(例えば、Mettler−Toledo InLab(登録商標)Routine)を有するpHメーター(例えば、Mettler−Toledo S20 SevenEasy pH Meter)を使用して、好ましく実施される。
【0117】
中和された後のポリマーは、好ましくは100〜400、より好ましくは220〜330nmの粒径(z平均)を有する。
【0118】
ポリマーのOH価は、好ましくは0と200mg/g KOHの間である。
【0119】
固形分含有量または固形分は、特定の条件下での蒸発による残留物として残った質量割合を指す。本発明の水性分散体の固形分含有量は、DIN EN ISO 3151(DIN EN ISO 3251の表A.2.、方法C)に準じて、125℃、60分間、初期質量1.0gで決定される。
【0120】
本発明の水性分散体のゲルの割合は、それぞれの場合において、分散体の固形分含有量に対して、好ましくは少なくとも70質量%、より好ましくは少なくとも80質量%である。
【0121】
ゲルの割合は、分散体を遠心分離することによって、重力測定的に決定することができる。これは、分散体をテトラヒドロフランで希釈し、超遠心分離を使用して、不溶画分を除去することによって行われる。続いて、乾燥した不溶性画分を計量し、分散体の総固形分含有量との比を形成する。得られた値は、ゲルの割合に相当する。
【0122】
着色水性ベースコート材料
本発明は、少なくとも1種の本発明の水性分散体を含む、着色水性ベースコート材料に更に関する。
【0123】
ベースコート材料は、自動車仕上げおよび一般的な工業用コーティングに使用される、中間的な色付与コーティング材料である。一般に、サーフェサー(surfacer)またはプライマー−サーフェサーにより前処理されているメタリックまたはプラスチック基材に塗布され、または、時にはプラスチック基材に直接塗布される。基材として機能を果たすものは、概存の塗装系であってもよいが、任意に前処理(例えば研磨によって)もされていなければならない。ベースコートフィルムを特に環境の影響から保護するため、少なくとも追加のクリアコートフィルムがその上に塗布される。
【0124】
水性ベースコート材料の総質量に対する少なくとも1種の本発明の水性分散体の質量百分率の割合は、好ましくは5.0〜60.0質量%、より好ましくは10.0〜50.0質量%、非常に好ましくは20.0〜45.0質量%である。
【0125】
水性ベースコート材料の総質量に対する本発明の水性分散体由来のポリマーの質量百分率の割合は、好ましくは1.0〜24.0質量%、好ましくは2.5〜20.0質量%、より好ましくは3.0〜18.0質量%である。
【0126】
好ましい構成成分を特定の割合範囲で含むベースコート材料に対して可能な詳述の場合、以下のことが当てはまる。すなわち、好ましい群の範囲内に入らない構成成分も当然のことながらベースコート材料に依然として存在し得る、ということである。特定の割合範囲は、構成成分の好ましい群にのみ適用される。しかし、好ましい群の構成成分および好ましい群の範囲内に入らない構成成分からなる構成成分の割合の合計にも、同様に特定の割合範囲が好ましく適用される。
【0127】
したがって、1.5〜15質量%の割合範囲および好ましい群の構成成分に限定される場合、この割合範囲は、初めは好ましい群の構成成分にのみ適用されることが明かである。しかしこの場合では、好ましい群の構成成分および好ましい群の範囲内に入らない構成成分からなる元々包含されている全ての構成成分の全体に対して1.5〜15質量%が存在することも、同様に好ましい。したがって、好ましい群の5質量%の構成成分が用いられる場合、好ましくない群の10質量%未満の構成成分を使用することができる。
【0128】
本発明の文脈において、記述した原則は、ベースコート材料の全ての記述した構成成分およびこれらの割合範囲、例えば、本発明の水性分散体、顔料、バインダーとしてのポリウレタン樹脂、またはメラミン樹脂などの架橋剤に適用される。
【0129】
水性ベースコート材料は、一般に着色顔料および/または光学効果顔料を含む。
【0130】
そのような色顔料および効果顔料は、当業者に公知であり、例えば、Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York、1998年、176および451頁に記載されている。
【0131】
効果顔料は、例えば、アルミニウム顔料、ゴールドブロンズ(gold bronze)、酸化ブロンズ、および/もしくは酸化鉄−アルミニウム顔料などのメタリック効果顔料、例えばパールエッセンスなどの真珠光沢顔料、塩基性炭酸鉛、塩化酸化ビスマス、および/もしくは金属酸化物−雲母顔料、ならびに/または微粉化二酸化チタン、層状グラファイト、層状酸化鉄、PVDフィルムから形成された多層効果顔料、および/もしくは液晶ポリマー顔料などの他の効果顔料である。
【0132】
顔料の割合は、例えば、着色水性ベースコート材料の総質量に対して、1〜40質量%、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%の範囲であり得る。
【0133】
本発明のベースコート材料は、物理的硬化、熱硬化、または熱と化学線の両方によって硬化可能なバインダーを含んでもよい。
【0134】
本発明の文脈において、用語「物理的硬化」は、ポリマー溶液またはポリマー分散体から溶媒を失うことによってフィルムを形成することを意味する。典型的には、この硬化に架橋剤は必要ない。
【0135】
本発明の文脈において、用語「熱硬化」は、別個の架橋剤または自己架橋バインダーを親コーティング材料に用いた、コーティングフィルムの熱開始架橋を意味する。架橋剤は、バインダーに存在する反応性官能基と相補的な反応性官能基を含有する。これは、当業者によって一般的に外部架橋と呼ばれる。相補的反応性官能基または自己反応性官能基(すなわち同じ種類の基と反応する基)が、バインダー分子に既に存在する場合、存在するバインダーは自己架橋性である。適切な相補的反応性官能基および自己反応性官能基の例は、ドイツ特許出願第19930665A1号、7頁28行〜9頁24行によって公知である。
【0136】
本発明の目的において、化学線とは、近赤外線(NIR)、UV線などの電磁放射線、より特定的には、UV線、および電子放射線などの微粒子放射線を意味する。UV線による硬化は、一般的にラジカルまたはカチオン性光開始剤により開始される。
【0137】
熱硬化および化学光線による硬化が協調して用いられる場合、用語「二重硬化」も使用される。
【0138】
本発明において、熱硬化可能な、または熱と化学線の両方によって、すなわち「二重硬化」によって硬化可能なベースコート材料が好ましい。
【0139】
とりわけ好ましいベースコート材料は、バインダーとしてポリアクリレート樹脂、および架橋剤として、アミノプラスト樹脂またはブロックトもしくは非ブロックトポリイソシアネート、好ましくはアミノプラスト樹脂を含むものである。アミノプラスト樹脂のうち、メラミン樹脂がとりわけ好ましい。
【0140】
本発明の水性分散体のみならず、本発明のベースコート材料も、好ましくは更なるバインダー、好ましくはポリウレタン樹脂を含む。
【0141】
ポリウレタン樹脂は、好ましくは、イオン的におよび/または非イオン的に親水安定化されていてもよい。本発明の好ましい実施形態において、ポリウレタン樹脂は、イオン的に親水安定化されている。好ましいポリウレタン樹脂は、直鎖であり、または分枝の場合を含む。ポリウレタン樹脂は、より好ましくは、その存在下でオレフィン性不飽和モノマーが重合されたものである。このポリウレタン樹脂は、オレフィン性不飽和モノマーの重合由来のポリマーと共に存在してもよく、これらのポリマーは互いに共有結合しない。しかし同様に、ポリウレタン樹脂は、オレフィン性不飽和モノマーの重合由来のポリマーに共有結合することもある。オレフィン性不飽和モノマーは、好ましくはアクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するモノマーである。アクリレートまたはメタクリレート基を含有しない他のオレフィン性不飽和化合物と組み合わせて使用される、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するモノマーも同様に好ましい。ポリウレタン樹脂に結合されたオレフィン性不飽和モノマーは、より好ましくは、アクリレート基またはメタクリレート基を含有し、それによってポリウレタン(メタ)アクリレートを生成するモノマーである。非常に好ましくは、ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン(メタ)アクリレートである。好ましく存在するポリウレタン樹脂は、物理的硬化、熱硬化、または熱と化学線の両方によって硬化可能である。より特定的には、熱硬化または熱と化学線の両方のいずれかによって硬化可能である。特に好ましくは、ポリウレタン樹脂は、外部架橋が可能になる反応性官能基を含む。
【0142】
適切な飽和または不飽和ポリウレタン樹脂は、例えば、
− ドイツ特許出願第19914896A1号、第1欄29行〜49行および第4欄23行〜第11欄5行、
− ドイツ特許出願第19948004A1号、4頁19行〜13頁48行、
− ヨーロッパ特許出願第0228003A1号、3頁24行〜5頁40行、
− ヨーロッパ特許出願第0634431A1号、3頁38行〜8頁9行、または
− 国際特許出願第92/15405号、2頁35行〜10頁32行、
− ドイツ特許出願第4437535A1号、7頁55行〜8頁23行、
− 国際特許出願第91/15528号、23頁29行〜24頁24行
に記載されている。
【0143】
ポリウレタン樹脂は、好ましくは、当業者に公知の脂肪族、脂環式、脂肪族−脂環式、芳香族、脂肪族−芳香族、および/または脂環式−芳香族ポリイソシアネートを使用して製造される。
【0144】
ポリウレタン樹脂を製造するアルコール構成成分として、当業者に公知の比較的高い分子質量および低い分子質量の飽和および不飽和ポリオール、および任意に少量のモノアルコールを使用することが好ましい。使用される低分子質量ポリオールは、より特定的にはジオールであり、分枝を導入する場合は、少量のトリオールである。比較的高分子質量の適切なポリオールの例は、飽和またはオレフィン性不飽和のポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールである。使用される比較的高分子質量ポリオールは、より特定的にはポリエステルポリオールであり、とりわけ、400〜5000g/molの数平均分子質量を有するものである。
【0145】
水性媒体中において親水安定化させる、および/または分散性を増加させるために、ポリウレタン樹脂は、好ましくは特定のイオン性基および/またはイオン性基に変換され得る基(潜在的イオン性基)を含有してもよい。この種類のポリウレタン樹脂は、本発明の文脈において、イオン性親水性安定化ポリウレタン樹脂と呼ばれる。同様に非イオン性親水性修飾基が存在してもよい。しかし、イオン性親水性安定化ポリウレタンが好ましい。より正確な言い方として、修飾基は、
− 中和剤および/もしくは四級化剤によりカチオンに変換され得る官能基、ならびに/またはカチオン性基(カチオン性修飾)、
または
− 中和剤によりアニオンに変換され得る官能基、および/もしくはアニオン性基(アニオン性修飾)、
ならびに/または
− 非イオン性親水性基(非イオン性修飾)
のいずれかである。
【0146】
当業者に認識されているように、カチオン性修飾の官能基は、例えば、第一級、第二級および/もしくは第三級アミノ基、第二級スルフィド基、ならびに/または第三級ホスフィン基、より特定的には第三級アミノ基および第二級スルフィド基(中和剤および/または四級化剤によりカチオン性基に変換され得る官能基)である。第一級、第二級、第三級および/もしく第四級アンモニウム基、第三級スルホニウム基、ならびに/または第四級ホスホニウム基、より特定的には第四級アンモニウム基および第三級スルホニウム基など、当業者に公知の中和剤および/または四級化剤を使用して前述の官能基から製造される基である、カチオン性基を挙げることもできる。
【0147】
良く知られていることであるが、アニオン性修飾の官能基は、例えば、カルボン酸、スルホン酸、および/またはホスホン酸基、より特定的には、カルボン酸基(中和剤によりアニオン性基に変換され得る官能基)、ならびにカルボキシレート、スルホネートおよび/またはホスホネート基などの、当業者に公知の中和剤の使用により前述の官能基から製造される基である、アニオン性基である。
【0148】
非イオン性親水性修飾の官能基は、好ましくはポリ(オキシアルキレン)基、より好ましくはポリ(オキシエチレン)基である。
【0149】
イオン性親水性修飾は、(潜在的)イオン性基を含有するモノマーを介してポリウレタン樹脂に導入することができる。非イオン性修飾は、例えば、ポリ(オキシエチレン)オキシドポリマーをポリウレタン分子の側基または末端基として組み込むことによって導入される。親水性修飾は、例えば、イソシアネート基に対して反応性を有する少なくとも1個の基、好ましくは少なくとも1個のヒドロキシル基を含有する化合物を介して導入される。イオン性修飾は、少なくとも1個のヒドロキシル基を修飾基と共に含有するモノマーを使用して導入され得る。非イオン性修飾を導入するためには、当業者に公知のポリエーテルジオールおよび/またはアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールを使用することが好ましい。
【0150】
ポリウレタン樹脂は、好ましくはグラフトポリマーであり得る。より特定的には、オレフィン性不飽和化合物、好ましくはオレフィン性不飽和モノマーでグラフトされているポリウレタン樹脂である。この場合、ポリウレタンは、例えば、オレフィン性不飽和モノマーに基づいた側基および/または側鎖でグラフトされている。これらは、より特定的には、ポリ(メタ)アクリレートに基づいた側鎖である。本発明の目的のポリ(メタ)アクリレートは、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するモノマーを含む、好ましくはアクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するモノマーからなる、ポリマーまたはポリマーラジカルである。ポリ(メタ)アクリレートに基づいた側鎖とは、(メタ)アクリレート基を含有するモノマーを使用したグラフト重合の際に構築される側鎖を意味することが理解される。グラフト重合において、グラフト重合に使用されるモノマーの総量に対して、50mol%を超える、より特定的には75mol%を超える、とりわけ100mol%の、(メタ)アクリレート基を含有するモノマーを使用することが、ここでは好ましい。
【0151】
記載した側鎖は、好ましくは一次ポリウレタン樹脂分散体の製造後に、ポリマーに導入される。この場合、一次分散体に存在するポリウレタン樹脂は、オレフィン性不飽和側基および/または末端基を含有してもよく、それを介して、オレフィン性不飽和化合物のグラフト重合が進行する。したがってグラフトにおけるポリウレタン樹脂は、不飽和ポリウレタン樹脂(A)であり得る。この場合のグラフト重合は、オレフィン性不飽和反応体のラジカル重合である。例えば、グラフト重合に使用されるオレフィン性不飽和化合物が、少なくとも1個のヒドロキシル基を含有することも可能である。この場合、ポリウレタン樹脂の遊離イソシアネート基との反応によって、これらのヒドロキシル基を介してオレフィン性不飽和化合物を結合することも、最初に可能である。この結合は、オレフィン性不飽和化合物と、ポリウレタン樹脂に任意に存在するオレフィン性不飽和側基および/または末端基とのラジカル反応に代わってまたは加えて実施される。ここでも前述したラジカル重合を介したグラフト重合が、この後に続く。いずれの場合においても、結果は、オレフィン性不飽和化合物、好ましくはオレフィン性不飽和モノマーがグラフトされたポリウレタン樹脂である。
【0152】
ポリウレタン樹脂(A)に好ましくグラフトされるオレフィン性不飽和化合物として、当業者にとってこの目的のために利用可能な実質的に全てのラジカル重合性のオレフィン性不飽和および有機モノマーを使用することが可能である。多数の好ましいモノマークラスが例として特定され得る。
【0153】
− (メタ)アクリル酸または他のアルファ、ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、
− アルキル基に20個までの炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルおよび/またはシクロアルキルエステル、
− 少なくとも1個の酸基、より特定的にはただ1個の、例えば(メタ)アクリル酸などのカルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマー、
− アルファ位置で分枝されており、5〜18個の炭素原子を有するモノカルボン酸のビニルエステル、
− (メタ)アクリル酸と、アルファ位置で分枝されており、5〜18個の炭素原子を有するモノカルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物、
− オレフィン(例えば、エチレン)、(メタ)アクリルアミド、ビニル芳香族炭化水素(例えば、スチレン)、塩化ビニルなどのビニル化合物、および/またはエチルビニルエーテルなどのビニルエーテルなど、更なるエチレン性不飽和モノマー。
【0154】
(メタ)アクリレート基を含有し、したがってグラフトにより結合している側鎖がポリ(メタ)アクリレートに基づいた側鎖であるモノマーが、好ましく使用される。
【0155】
ポリウレタン樹脂におけるオレフィン性不飽和側基および/または末端基は、それによりオレフィン性不飽和化合物によるグラフト重合を進行させることができ、好ましくは特定のモノマーによってポリウレタン樹脂に導入される。これらの特定のモノマーは、オレフィン性不飽和基に加えて、例えば、少なくとも1個の、イソシアネート基に対して反応性である基も含む。ヒドロキシル基、また第一級および第二級アミノ基も好ましい。ヒドロキシル基が、とりわけ好ましい。
【0156】
オレフィン性不飽和側基および/または末端基をポリウレタン樹脂に導入することができる記載したモノマーを、ポリウレタン樹脂をオレフィン性不飽和化合物によって後に追加的にグラフトすることなく用いることも、当然のことながらできる。しかし、ポリウレタン樹脂はオレフィン性不飽和化合物でグラフトされることが好ましい。
【0157】
好ましく存在するポリウレタン樹脂は、自己架橋性および/または外部架橋性バインダーであり得る。ポリウレタン樹脂は、好ましくは反応性官能基を含み、それを介して外部架橋が可能になる。この場合、着色水性ベースコート材料に少なくとも1種の架橋剤が存在することが好ましい。外部架橋が可能になる反応性官能基は、より特定的にはヒドロキシル基である。特に有利には、本発明の方法の目的にとって、多価官能性ポリウレタン樹脂を使用することが可能である。このことは、ポリウレタン樹脂が分子1個あたり平均して1個を超えるヒドロキシル基を含有することを意味する。
【0158】
ポリウレタン樹脂は、ポリマー化学の慣用的な方法によって製造される。このことは、例えば、ポリウレタンへのポリイソシアネートおよびポリオールの重付加、好ましくは後に続くオレフィン性不飽和化合物によるグラフト重合を意味する。これらの方法は、当業者に公知であり、個別に適合され得る。例示的な製造方法および反応条件は、ヨーロッパ特許第052928B1号、2頁57行〜8頁16行に見出すことができる。
【0159】
好ましく存在するポリウレタン樹脂は、好ましくは200〜30000g/mol、より好ましくは2000〜20000g/molの数平均分子質量を有する。例えば0〜250mgKOH/g、より特定的には20〜150mgKOH/gのヒドロキシル価を更に有する。ポリウレタン樹脂の酸価は、好ましくは5〜200mgKOH/g、より好ましくは10〜40mgKOH/gである。本発明の目的において、ヒドロキシル価は、DIN 53240よって、酸価はDIN 53402によって決定される。
【0160】
本発明の水性ベースコート材料は、少なくとも1種のポリエステル、より特定的には400〜5000g/molの数平均分子質量を有するポリエステルをバインダーとして更に含むことができる。そのようなポリエステルは、例えば、ドイツ特許第4009858号、第6欄、53行〜第7欄61行、および第10欄24行〜第13欄3行に記載されている。
【0161】
好ましくは少なくとも1種の増粘剤も存在する。適切な増粘剤は、層状ケイ酸塩の群からの無機増粘剤である。ケイ酸リチウムアルミニウムマグネシウムが特に適している。
【0162】
しかし、無機増粘剤のみならず、1種以上の有機増粘剤を使用することも可能である。好ましくは、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤からなる群から選択されるもの、例えば、市販製品Rheovis(登録商標)AS1130(BASF SE)、およびポリウレタン増粘剤からなる群から選択されるもの、例えば、BASF SEによる市販製品のRheovis(登録商標)PU1250である。(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤は、アクリル酸および/またはメタクリル酸のみならず、1種以上のアクリル酸エスエル(すなわち、アクリレート)および/または1種以上のメタクリル酸エステル(すなわち、メタクリルレート)も共重合形態で含有するものである。(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤に共通した特徴は、アルカリ性媒体において、換言すると、pHレベル>7、より特定的には>7.5では、アクリル酸および/またはメタクリル酸の塩の形成によって、換言すると、カルボキシレート基の形成によって、強い粘度増加を示すことである。(メタ)アクリル酸およびC
1〜C
6アルカノールから形成される(メタ)アクリル酸エスエルが使用される場合、生成物は、例えば上述したRheovis AS1130などの、本質的に非会合性の(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤である。本質的に非会合性の(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤は、文献においてASE増粘剤(「アルカリ可溶性/膨潤性エマルション」または分散体)とも呼ばれる。しかし、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤として使用することも可能なものは、HASE増粘剤(「疎水性修飾アニオン性可溶性エマルション」または分散体)として知られているものである。これらは、C
1〜C
6アルカノールに代わってまたは加えて、多数の炭素原子、例えば7〜30個または8〜20個の炭素原子を有するアルカノールとして使用することによって得られる。HASE増粘剤は、本質的に会合性増粘剤効果を有する。これらの増粘特性のために、使用することができる(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤は、バインダー樹脂として適しておらず、したがって、バインダーとして特定される物理的硬化、熱硬化、または熱と化学線の両方で硬化可能なバインダーのクラスに入らず、したがって、本発明のベースコート材料組成物に用いることができるポリ(メタ)アクリレートに基づいたバインダーと明確に異なっている。ポリウレタン増粘剤は、文献においてHEUR(「疎水性修飾酸化エチレンウレタンレオロジー改質剤」)として特定されている会合性増粘剤である。化学的には、これらは、ウレタン結合により互いに連結し、かつ8〜30個の炭素原子を有する末端長鎖アルキルまたはアルキレン基を有するポリエチレンオキシド鎖から(時折、ポリプロピレンオキシド鎖からも)構成される非イオン性で分枝または非分枝のブロックコポリマーである。典型的なアルキル基は、例えば、ドデシルまたはステアリル基であり、典型的なアルケニル基は、例えばオレイル基であり、典型的なアリール基は、フェニル基であり、典型的なアルキル化アリール基は、例えばノニルフェニル基である。これらの増粘特性および構造のため、ポリウレタン増粘剤は、物理的硬化、熱硬化、または熱硬化と物理的硬化の両方で硬化可能なバインダー樹脂として適していない。したがって、本発明のベースコート材料組成物にバインダーとして使用され得るポリウレタンと明確に異なっている。
【0163】
更に、水性ベースコート材料は、少なくとも1種の補助剤を更に含むことができる。そのような補助剤の例は、残留物を残すことなく、または残留物を実質的に残すことなく熱的に分解され得る塩、物理的硬化、熱硬化および/または化学線により硬化可能であり、かつポリウレタン樹脂と異なる、バインダーとしての樹脂、更なる架橋剤、有機溶媒、反応性希釈剤、透明顔料、充填剤、分子分散性可溶性色素、ナノ粒子、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、滑剤(slip additive)、重合抑制剤、ラジカル重合開始剤、接着促進剤、流れ調整剤、皮膜形成助剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食抑制剤、ワックス、乾燥剤、殺生剤、ならびにつや消し剤である。
【0164】
前述の種類の適切な補助剤は、例えば、
− ドイツ特許出願第19948004A1号、14頁4行〜17頁5行、
− ドイツ特許第10043405C1号、第5欄、段落番号[0031]〜[0033]によって公知である。これらは慣用的に公知の量で使用される。
【0165】
本発明のベースコート材料の固形分含有量は、取り組む事例の要求に従って変わり得る。固形分含有量は、塗布、より特定的には噴霧塗布に必要な粘度によって主に導き出され、したがって、任意にいくつかの予備検査の助けを借りて、当業者の技術的な一般知識に基づいて調整され得る。
【0166】
ベースコート材料の固形分含有量は、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜65質量%、とりわけ好ましくは15〜60質量%である。
【0167】
本発明のベースコート材料は、水性である。表現「水性」は、この文脈において当業者に公知である。この語句は、原則として、有機溶媒のみに基づいていない、すなわち、溶媒として有機系溶媒のみを含有せず、むしろ対照的に溶媒として有意な割合の水を含むベースコート材料を指す。本発明の目的において、「水性」は、コーティング組成物に関して、当該のコーティング組成物、より特定的にはベースコート材料が、それぞれの場合に存在する溶媒(すなわち、水および有機溶媒)の総量に対して、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも50質量%、非常に好ましくは少なくとも60質量%の水の割合を有することを意味することが、好ましくは理解されるべきである。更に、好ましくは、水の割合は、それぞれの場合に存在する溶媒の総量に対して、40〜90質量%、より特定的には50〜80質量%、非常に好ましくは60〜75質量%である。
【0168】
本発明に従って用いられるベースコート材料は、ベースコート材料を生成する慣用で公知の混合機器および混合技術を使用して生成され得る。
【0169】
本発明の方法および本発明のマルチコート塗装系
本発明の更なる態様は、マルチコート塗装系を生成する方法であって、
(1)着色水性ベースコート材料を基材に塗布し、
(2)ポリマーフィルムを、段階(1)において塗布されたコーティング材料から形成し、
(3)クリアコート材料を、得られたベースコートフィルムに塗布し、次に、
(4)ベースコートフィルムを、クリアコートフィルムと一緒に硬化し、
少なくとも1種の本発明の水性分散体を含む着色水性ベースコート材料を、段階(1)において使用することを含む。本発明の分散体および着色水性ベースコート材料に関する上記の全ての所見は、本発明の方法に関しても有効である。より特定的には、全ての好ましい、非常に好ましい、とりわけ好ましい特徴にも同じことが言える。
【0170】
この方法は、マルチコートカラー塗装系、効果塗装系、ならびにカラー効果塗装系を生成するために好ましく使用される。
【0171】
本発明の着色水性ベースコート材料は、一般的に、サーフェサーまたはプライマー−サーフェサーで前処理されたメタリックまたはプラスチック基材に塗布される。このベースコート材料は、任意にプラスチック基材に直接塗布されることもある。
【0172】
メタリック基材がコーティングされる場合、サーフェサーまたはプライマー−サーフェサーが塗布される前に、電気塗装系で更にコーティングされることが好ましい。
【0173】
プラスチック基材がコーティングされる場合、サーフェサーまたはプライマー−サーフェサーが塗布される前に、前処理されることも好ましい。そのような前処理に最も頻繁に用いられる技術は、火炎吹付、プラズマ処理、およびコロナ放電である。火炎吹付が好ましく使用される。
【0174】
メタリック基材への本発明の着色水性ベースコート材料の塗布は、自動車産業内で慣用的なフィルム厚、例えば、5〜100マイクロメートル、好ましくは5〜60マイクロメートルの範囲で実施され得る。これは、噴霧塗布方法、例えば、圧縮空気噴霧、無気噴霧、高速回転、静電噴霧塗布(ESTA)を単独で、または高温噴霧塗布、例えば熱風噴霧と組み合わせて使用して実施される。
【0175】
着色水性ベースコート材料を塗布した後、公知の方法により乾燥することができる。例えば、(1成分)ベースコート材料(これが好ましい)を室温で1〜60分間フラッシュし、続いて、好ましくは、任意にわずかに高温の、30〜90℃で乾燥することができる。フラッシングおよび乾燥は、本発明の文脈において、有機溶媒および/または水が蒸発し、その結果として、塗の乾燥が進むが、まだ硬化していない、または完全に架橋されたコーティングフィルムをまだ形成していないことを意味する。
【0176】
次に市販のクリアコート材料が、同様に一般的な方法で塗布され、フィルム厚は、ここでも例えば5〜100マイクロメートルの慣用的な範囲内である。
【0177】
クリアコート材料が塗布された後、室温で例えば1〜60分間フラッシュし、任意に乾燥することができる。次にクリアコート材料を、塗布された着色ベースコート材料と一緒に硬化する。これらの手順の過程において、架橋反応が発生して、例えば、本発明のマルチコートカラーおよび/または効果塗装系を基材上に生成する。硬化は、好ましくは60〜200℃の温度で熱的に実施される。熱硬化ベースコート材料は、好ましくは、架橋剤としてアミノプラスト樹脂またはブロックトもしくは非ブロックトポリイソシアネート、好ましくはアミノプラスト樹脂を含むものである。アミノプラスト樹脂のうち、メラミン樹脂が好ましい。
【0178】
プラスチック基材は、メタリック基材と基本的に同じ方法でコーティングされる。しかしここでは、一般に硬化は有意に低い温度の30〜90℃で実施される。したがって、2成分クリアコート材料の使用が好ましい。
【0179】
本発明の方法を使用して、メタリック基材および非メタリック基材、より特定的にはプラスチック基材、好ましくは自動車の車体または部品を塗装することができる。
【0180】
本発明の方法は、OEM仕上げの二重仕上げのために更に使用することができる。このことは、本発明の方法によりコーティングされた基材が、本発明の方法によって2回目に同様に塗装されることを意味する。
【0181】
本発明は、上記の方法によって生成可能なマルチコート塗装系に更に関する。マルチコート塗装系は、下記において本発明のマルチコート塗装系と呼ばれる。
【0182】
本発明のポリマー、着色水性ベースコート材料、および本発明の方法に関する上記の全ての所見は、このマルチコート塗装系に関しても有効である。とりわけ、全ての好ましい、より好ましい、最も好ましい特徴にも同じことが言える。
【0183】
本発明のマルチコート塗装系は、好ましくは、マルチコートカラー塗装系、効果塗装系、ならびにカラー効果塗装系である。
【0184】
本発明の更なる態様は、段階(1)の基材が欠陥部位を有するマルチコート塗装系である本発明の方法に関する。この基材/マルチコート塗装系は、欠陥部位を有し、したがって最初の仕上げであり、修復または完全に再コーティングされるべきものである。
【0185】
したがって本発明の方法は、マルチコート塗装系の欠陥を修復するために適している。フィルム欠陥は、一般にコーティング上または中における不良であり、通常は形状または外観によって名付けられる。当業者は、そのような多数の起こり得るフィルム欠陥の種類を認識している。例えば、Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York、1998年、235頁、「Film defects」に記載されている。
【0186】
本発明の方法の1つの好ましい実施形態において、段階(1)の基材は、欠陥部位を有するマルチコート塗装系である。
【0187】
マルチコート塗装系は、自動車OEM仕上げの文脈において、上記に特定した本発明の方法によって、自動車の車体または部品において好ましく生成される。そのような欠陥がOEM仕上げの実施の直後に発生する場合、これらは直ぐに修復される。したがって、「OEM自動車再仕上げ」という用語も使用される。小さな欠陥のみの修復が必要な場合、「スポット」のみが修復され、車体全体は、完全に再コーティング(二重コーティング)されない。この方法は、「スポット修復」と呼ばれる。したがって、OEM自動車再仕上げにおける、本発明のマルチコート塗装系(最初の仕上げ)の欠陥を改善する本発明の方法の使用は、特に好ましい。
【0188】
本発明の文脈において、自動車再仕上げ部門が参照される場合、換言すると、欠陥の修復が話題になり、特定される基材が欠陥を有するマルチコート塗装系である場合、このことは、この欠陥を有する基材/マルチコート塗装系(最初の仕上げ)が上記のプラスチック基材またはメタリック基材に一般に位置することを、当然のことながら意味する。
【0189】
修復部位は最初の仕上げの残りの部分と色が異なっていないので、欠陥を修復する本発明の方法の段階(1)に使用される水性ベースコート材料は、欠陥を有する基材/マルチコート塗装系(最初の仕上げ)を生成するのに使用されたものと同じであることが好ましい。
【0190】
したがって本発明のポリマーおよび着色水性ベースコート材料に関する上記の所見は、考察されているマルチコート塗装系の欠陥を修復する本発明の方法の使用にも有効である。特に、記述した全ての好ましい、非常に好ましい、とりわけ好ましい特徴にも同じことが言える。修復される本発明のマルチコート塗装系に追加的に好ましいものは、マルチコートカラー塗装系、効果塗装系、ならびにカラー効果塗装系である。
【0191】
本発明のマルチコート塗装系における上記の欠陥部位は、上記の本発明の方法によって修復され得る。この目的のため、マルチコート塗装系において修復される表面は、最初に研磨され得る。研磨は、好ましくは、最初の仕上げからベースコートおよびクリアコートのみを部分的にヤスリ掛けするまたはヤスリ掛けで落とすが、一般にそれらの下にあるプライマー層およびサーフェサー層をヤスリ掛けで落とすことなく実施される。この方法によって、再仕上げの際に、特に特別なプライマーおよびプライマー−サーフェサーを新たに塗布する必要がなくなる。作業場における再仕上げと対照的に、ここでは、一般的に言えば欠陥がベースコートおよび/またはクリアコートの領域のみに生じ、下にあるサーフェサーおよびプライマー塗装の領域には特に生じていないので、とりわけOEM自動車再仕上げ部門において、この研磨形態が確立されている。この塗装における欠陥は、作業場の再仕上げ部門において遭遇する可能性がより高いものである。例には傷などの塗装損傷が含まれ、これは例えば機械の作用によって生じ、多くの場合に基材(メタリックまたはプラスチック基材)の表面まで延びている。
【0192】
研磨処理の後、着色水性ベースコート材料を一般に空気霧化によって最初の仕上げの欠陥部位に塗布する。着色水性ベースコート材料が塗布された後、公知の方法によって乾燥することができる。例えば、ベースコート材料を室温で1〜60分間乾燥し、続いて、任意にわずかに高温の30〜80℃で乾燥することができる。本発明の目的におけるフラッシングおよび乾燥は、有機溶媒および/または水の蒸発を意味し、それによってコーティング材料は、まだ完全には硬化されていない。本発明の目的において、ベースコート材料は、架橋剤としてのアミノプラスト樹脂、好ましくはメラミン樹脂、およびこの架橋剤に反応性のバインダーを含むことが好ましい。
【0193】
続いて市販のクリアコート材料を、同様に一般的な技術によって塗布する。クリアコート材料を塗布した後、例えば室温で1〜60分間フラッシュし、任意に乾燥することができる。次にクリアコート材料を、塗布された着色ベースコート材料と一緒に硬化する。
【0194】
いわゆる低温ベーキングの場合、硬化は、好ましくは20〜90℃の温度で実施される。2成分クリアコート材料を使用することが、ここでは好ましい。上記のアミノプラスト樹脂が架橋剤として使用される場合、これらの温度では、ベースコートフィルム中におけるアミノプラスト樹脂によってわずかな架橋しか生じない。ここで、硬化剤としての機能に加えて、アミノプラスト樹脂は、可塑化のためにも役立ち、顔料浸潤を助けることができる。アミノプラスト樹脂の他に、非ブロックトイソシアネートを使用することもできる。これらは、使用されるイソシアネートの性質に応じて、20℃の低い温度で架橋する。
【0195】
いわゆる高温ベーキングの場合、硬化は、好ましくは130〜150℃の温度で達成される。ここで、1成分と2成分の両方のクリアコート材料が使用される。上記のアミノプラスト樹脂が架橋剤として使用される場合、これらの温度では、ベースコートフィルム中におけるアミノプラスト樹脂によって架橋が生じる。
【0196】
マルチコート塗装系における欠陥を修復するため、換言すると、基材が、欠陥を有する最初の仕上げ、好ましくは、欠陥を示す本発明のマルチコート塗装系である場合、低温ベーキングが好ましく用いられる。
【0197】
本発明の更なる態様は、接着力を改善するために着色水性ベースコート材料において本発明の水性分散体を使用する方法である。
【0198】
本発明の水性分散体を、メタリックおよびプラスチック基材の仕上げにおいて接着力を改善するために使用することができる。これらを自動車再仕上げに用いることもできる。自動車再仕上げとは、例えば、OEM自動車再仕上げ、および作業場で実施される自動車再仕上げの両方を意味する。
【0199】
この着色水性ベースコート材料がメタリックおよびプラスチック基材の仕上げに使用される場合、本発明の水性分散体の使用は、特に、ベースコートフィルムと、それに直接隣接しているクリアコートフィルムとの接着力に改善をもたらす。したがって本発明の分散体は、メタリック基材およびプラスチック基材の仕上げにおいて、ベースコートフィルムとクリアコートフィルムとの接着力を改善するために好ましく使用される。
【0200】
この着色水性ベースコート材料が自動車再仕上げに使用される場合、本発明の水性分散体の使用は、特に、ベースコートと最初の仕上げとの接着力に改善をもたらす。したがって本発明の水性分散体は、同様に、自動車再仕上げ、より好ましくはOEM自動車再仕上げにおいて、ベースコートフィルムと最初の仕上げとの接着力を改善するために好ましく使用される。
【0201】
従来技術の系に影響を与えた接着力の難題は、コーティング基材が風化に曝露されたときに、とりわけ際立つ。相当する風化条件を凝縮水貯蔵(condensing water storage)によって模擬することができる。用語「凝縮水貯蔵」は、コーティング基材を、DIN EN ISO 6270−2:2005−09に準じたCH試験条件に従って気候チャンバに貯蔵することを示す。
【0202】
したがって本発明の水性分散体は、特に凝縮水貯蔵後における接着力を改善するためにも使用される。接着力は、DIN 55662:2009−12の試験方法Aに従って、蒸気噴射試験により好ましく調査される。
【0203】
コーティング基材が風化に曝露されると、膨れおよび膨潤が一般的に発生する。したがって本発明の水性分散体は、マルチコート塗装系において膨れおよび膨潤の発生を低減または防止するためにも特に使用される。膨れおよび膨潤の存在は、目視によって評価することができる。
【0204】
本発明を実施例の形態で下記において説明する。
【0205】
以下の本発明の実施例および比較例は、本発明を説明するために役立つが、あらゆる限定を課すものとして解釈されるべきではない。
【0206】
本発明の実施例および比較例
特に指示のない限り、部による量は質量部であり、パーセントによる量は、それぞれの場合において質量の百分率である。
【0207】
1.用いられる構成成分
下記において特定され、本発明の分散体の製造に使用される構成成分、ならびにバインダーとして本発明の分散体を含む本発明の水性ベースコート材料、および対応する比較例の定義は、以下のとおりである。
【0208】
Aerosol(登録商標)EF−800は、Cytecから市販されている乳化剤である。
【0209】
APSは、化合物のペルオキソ二硫酸アンモニウムの略語として使用される。
【0210】
1,6−HDDAは、化合物の1,6−ヘキサンジオールジアクリレートの略語として使用される。
【0211】
VEOVA(商標)10は、Momentiveから市販されているモノマーである。このモノマーは、Versatic(商標)Acid 10のビニルエステルである。
【0212】
2−HEAは、化合物の2−ヒドロキシエチルアクリレートの略語として使用される。
【0213】
MMAは、化合物のメタクリル酸メチルの略語として使用される。
【0214】
Sipomer PAM−200は、Solvayから市販されているポリプロピレングリコールモノメチルアクリレートのリン酸エステルである。
【0215】
DMEAは、化合物のジメチルエタノールアミンの略語として使用される。
【0216】
Rhodapex(登録商標)CO436は、Solvay,Rhodiaから市販されている乳化剤である。
【0217】
Cymel(登録商標)303は、Allnexから市販されているメラミン−ホルムアルデヒド樹脂である。
【0218】
Rheovis(登録商標)AS1130は、BASF SEから市販されている、水性コーティング材料のレオロジー添加剤である。
【0219】
Pluriol(登録商標)E300は、BASF SEから市販されているポリエチレングリコールである。
【0220】
2.少なくとも1種の多段階ポリマーを含む水性分散体の合成例
2.1 シード−コア−シェルアクリレートSCS1、SCS2およびSCS3(本発明)を含む、水性分散体BM1、BM2およびBM3の製造
80質量%の表2.1の項目1および2を、還流冷却器を備えたスチール反応器(容量5L)に入れ、80℃に加熱する。表2.1の「初期投入」に提示されている構成成分の残りの部分を別個の容器において予め混合する。この混合物および開始剤溶液を反応器に20分間かけて滴加し、反応溶液におけるモノマー濃度の6.0質量%が反応時間の全体にわたって超えないようにする。この後に30分間撹拌する。(段階i)に相当する。)
【0221】
表2.1の「mono1」に示されている構成成分を別個の容器において予め混合する。この混合物を反応器に2時間かけて滴加し、反応溶液におけるモノマー濃度の6.0質量%が反応時間の全体にわたって超えないようにする。この後に1時間撹拌する(段階ii)に相当する。)
【0222】
表2.1の「mono2」に示されている構成成分を別個の容器において予め混合する。この混合物を反応器に1時間かけて滴加し、反応溶液におけるモノマー濃度の6.0質量%が反応時間の全体にわたって超えないようにする。この後に2時間撹拌する。(段階iii)に相当する。)
【0223】
その後に反応混合物を60℃に冷却し、中和した混合物を別個の容器において予め混合する。中和混合物を反応器に40分間かけて滴加し、反応溶液のpHを6.5〜9.0のpHに調整する。続いて反応生成物を30分以上かけて撹拌し、25℃に冷却し、濾過する。(段階iv)に相当する。)
【0225】
固形分含有量を反応モニタリングの目的のために決定した。結果を表2.2に報告する。
【0227】
それぞれの段階i)〜iv)の後、ポリマーの粒径をDIN ISO 13321に準じた動的光散乱によって決定した。結果を表2.3に再現する。
【0229】
記述したモノマー混合物をそれぞれ個別に重合し、その後、ガラス移転温度を、DIN規格53765に準じたDSCによって決定した。DIN規格53765に準じたDSCにより、中和した後のポリマー全体のガラス移転温度も決定した。
結果を表2.4に報告する。
【0231】
2.2 三段階アクリレートSCS5を含む水性分散体BM5の製造(Korea Polym.J.、7巻、4号、213〜222頁に準拠、本発明ではない)
表2.5の構成成分1〜4を、還流冷却器を備えたスチール反応器(容量5L)に入れ、80℃に加熱する。開始剤溶液(表2.5の項目5および6)を反応器に5分間かけて滴加する。この後に30分間撹拌する。
【0232】
表2.5の「mono1」に示されている構成成分を別個の容器において予め混合する。この混合物を反応器に2時間かけて滴加する。この後に1時間撹拌する。
【0233】
表2.5の「mono2」に示されている構成成分を別個の容器において予め混合する。この混合物を反応器に1時間かけて滴加する。この後に1時間撹拌する。
【0234】
その後に反応混合物を60℃に冷却し、中和した混合物(表2.5の項目20〜22)を別個の容器において予め混合する。中和混合物を反応器に40分間かけて滴加する。続いて反応生成物を30分以上かけて撹拌し、25℃に冷却する。
【0236】
固形分含有量は約23.4%であった。
【0237】
それぞれの段階i)〜iv)の後、ポリマーの粒径をDIN ISO 13321に準じた動的光散乱によって決定した。結果を表2.6に再現する。
【0239】
記述したモノマー混合物をそれぞれ個別に重合し、その後、ガラス移転温度を、DIN規格53765に準じたDSCによって決定した。DIN規格53765に準じたDSCにより、中和した後のポリマー全体のガラス移転温度も決定した。
結果を表2.7に報告する。
【0241】
3.塗装配合物の例
3.1 水性分散体BM5に基づいた、本発明ではない水性ベースコート材料A1およびA2の製造(Korea Polym.J.7巻、4号、213〜222頁に準拠)
表3.1の「水相」に提示した構成成分を記述した順番に一緒に撹拌して、水性混合物を形成する。次のステップでは、有機混合物を「有機相」に提示した構成成分から製造する。有機混合物を水性混合物に加える。この後に10分間撹拌し、次に、pH8、および1000s
−1の剪断荷重下での噴霧粘度90〜95mPa.sが、脱イオン水およびジメチルエタノールアミンの使用によって設定され、噴霧粘度は回転粘度計(C−LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC機器、Anton Paar)を23℃で使用して測定する。
【0243】
3.2 水性分散体BM1に基づいた本発明の水性ベースコート材料A3およびA4の製造
表3.2の「水相」に提示した構成成分を記述した順番に一緒に撹拌して、水性混合物を形成する。次のステップでは、有機混合物を「有機相」に提示した構成成分から製造する。有機混合物を水性混合物に加える。この後に10分間撹拌し、pH8、ならびに1000s
−1の剪断荷重下での噴霧粘度100±5mPa.s(A3)または140±5mPa.s(A4)が、脱イオン水およびジメチルエタノールアミンの使用によって設定され、噴霧粘度は回転粘度計(C−LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC機器、Anton Paar)を23℃で使用して測定する。
【0245】
3.3 本発明の水性分散体BM2およびBM3に基づいた本発明の水性ベースコート材料A6およびA7の製造
表3.3の「水相」に提示した構成成分を記述した順番に一緒に撹拌して、水性混合物を形成する。次のステップでは、有機混合物を「有機相」に提示した構成成分から製造する。有機混合物を水性混合物に加える。この後に10分間撹拌し、次に、pH8、および1000s
−1の剪断荷重下での噴霧粘度120±5mPa.s(A6およびA7)が、脱イオン水およびジメチルエタノールアミンの使用によって設定され、噴霧粘度は回転粘度計(C−LTD80/QC加熱システムを備えたRheolab QC機器、Anton Paar)を23℃で使用して測定する。
【0247】
結果
4.1 方法の説明
4.1.1 明度およびフロップインデックスの決定
明度またはフロップインデックスを決定するため、本発明のコーティング組成物(または比較例のコーティング組成物)を、プライマー−サーフェサーコーティングがコーティングされかつ32×60cmの寸法を有するスチールパネルへの水性ベースコート材料として、二重塗布によって塗布し、第1段階では、塗布を乾燥フィルム厚8〜9μmで静電気的に実施し、第2段階では、塗布を、室温(18〜23℃)での2分間のフラッシング時間の後に乾燥フィルム厚4〜5μmで空圧的に実施する。得られた水性ベースコートフィルムを、室温で5分間の更なるフラッシング時間の後に、続いて、強制空気オーブンにより80℃で5分間乾燥する。市販の2成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbHからのProGloss(登録商標))を、乾燥フィルム厚40〜45μmで乾燥水性ベースコートフィルムに塗布する。得られたクリアコートフィルムを室温(18〜23℃)で10分間フラッシュし、続いて強制空気オーブンにより140℃で20分間以上にわたって硬化する。このようにコーティングされた基材を、X−Rite分光光度計(X−Rite MA68マルチアングル分光光度計)を使用した測定に供する。この場合、光源を使用して表面に照射する。可視範囲のスペクトル検出を異なる角度で実施する。得られたスペクトル測定から、標準スペクトル値および使用した光源の反射スペクトルの組み込みを伴って、CIEL
*a
*b
*色空間における色値を計算することが可能であり、ここで、L
*は、明度を表し、a
*は、赤緑値を表し、b
*は、黄青値を表す。この方法は、例えば、特に少なくとも1種の効果顔料を顔料として含むコーティングについて、AS(商標) E2194−12に記載されている。導き出された値は、多くの場合にメタリック効果を定量化するために用いられ、いわゆる、フロップインデックスと呼ばれ、明度と観察角度の関係を記載している(A.B.J.Rodriguez、JOCCA、1992年(4巻)、150〜153頁を参照すること)。フロップインデックス(FL)は、視野角の15°、45°および110°で見出される明度値から、下記式:
FL=2.69(L
*15°−L
*110°)
1.11/(L
*45°)
0.86
に従って計算することができ、式中、L
*は、対応する測定角度(15°、45°および110°)で測定された明度値である。
【0248】
4.1.2 凝縮曝露の前後での外観の評価
コーティング基材の水平度またはうねりを、Byk/GardnerのWaveスキャン機器を使用して評価する。セクション4.1.1(明度およびフロップインデックスの決定)に記載されている二重塗布によって、コーティング基材を生成する。
【0249】
この目的のため、調査する表面に対してレーザービームを60°の角度で向け、機器は、短波領域(0.3〜1.2mm)および長波領域(1.2〜12mm)において10cmの距離で反射光のゆらぎを記録する(長波=LW、短波=SW、値が低いほど、外観が良好である)。更に、多層系の表面に反射された像の鮮鋭度の測度として、機器は、「像の明瞭度」(DOI)のパラメーターを決定する(値が高いほど、外観が良好である)。
【0250】
これらの測定を凝縮曝露の前後に実施する。この目的のため、コーティング基材を、DIN EN ISO 6270−2:2005−09(日付:2005年9月)に準じたCH試験条件下で気候チャンバに10日間にわたって貯蔵する。続いてコーティング基材を気候チャンバから取り出した24時間後に膨潤および膨れについて検査し、輪郭およびうねりを評価する。
【0251】
この場合の膨れの発生は、2つの値の組合せによって以下のように評価される。
【0252】
− 膨れの数は1〜5の量数値によって評価され、m1は非常にわずかな膨れを示し、m5は非常に多い膨れを示す。
− 膨れのサイズは、同様に1〜5のサイズ報告よって評価され、g1は非常に小さな膨れを示し、g5は非常に大きな膨れを示す。
【0253】
したがってm0g0という表示は、凝縮水貯蔵後に膨れのない仕上げを意味し、膨れに関して満足のゆく結果を表す。
【0254】
4.1.3 接着力特性の決定
本発明のコーティング組成物(または、比較例組成物)の接着力特性を決定するため、マルチコート塗装系を以下の一般プロトコールに従って生成する。
【0255】
最初の仕上げ
10×20cmの寸法を有する硬化電気塗装系(BASF Coatings GmbHからのCathoGuard(登録商標)500)でコーティングされたメタリック基材の上に、水性ベースコート材料を二重塗布によって塗布し、第1段階では、塗布を標的フィルム厚8〜9μmで静電的に実施し、第2段階では、室温での2分間のフラッシング時間の後に標的フィルム厚4〜5μmで空圧的に実施する。得られた水性ベースコートフィルムを、室温で5分間の更なるフラッシング時間の後に、続いて、強制空気オーブンにより80℃で5分間乾燥する。市販の2成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbHからのProGloss)を、乾燥水性ベースコートフィルムに標的フィルム厚40〜45μmで塗布する。得られたクリアコートフィルムを室温で10分間フラッシュし、続いて強制空気オーブンにより140℃で20分間以上にわたって硬化する。この方法で得た系を、下記において最初の仕上げ(系a)と呼ぶ。
【0256】
あるいは、ベースコートフィルムおよびクリアコートフィルムの硬化を60分/140℃で実施する(本明細書において、以下、オーバーベークした最初の仕上げ、系cと呼ぶ)。
【0257】
再仕上げ
最初の仕上げ、あるいはオーバーベークした最初の仕上げの上に、再び水性ベースコート材料を二重塗布によって塗布し、第1の段階の塗布を製電気的に(標的フィルム厚8〜9μmで)実施し、第2段階では、室温での2分間のフラッシング時間の後に空圧的に(標的フィルム厚4〜5μmで)実施する。得られた水性ベースコートフィルムを、室温で5分間の更なるフラッシング時間の後に、続いて、強制空気オーブンにより80℃で10分間乾燥する。この乾燥水性ベースコートフィルムに、市販の2成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbHからのProGloss)を、標的フィルム厚40〜45μmで塗布する。得られたクリアコートフィルムを室温で10分間フラッシュし、この後に続いて強制空気オーブンにより140℃で20分間以上にわたって硬化する。このようにして得た系を下記において再仕上げと呼び、最初の仕上げの乾燥条件に応じて、2種の異なるマルチコート系がもたらされ、系Aは、系aの再仕上げであり、系Cは系cの再仕上げである。
【0258】
マルチコート系の技術的特性を、DIN EN ISO 2409に準じてクロスカットを実施することによって評価した(評価GT0〜GT5、0=最良のスコア、5=最悪のスコア)。対応する調査を、非曝露試料に対して実施し、凝縮水に曝露した後にも実施した。膨潤および膨れについての曝露試料の後評価を含む凝縮曝露を、セクション4.1.2(凝縮曝露の前後での外観の評価)に記載されているとおりに実施する。
【0259】
4.1.4 初期粘度の決定
ベースコート材料構成成分を下記の製造プロトコールに従って計量した後であるが、当該材料を、ジメタノールアミンの使用によってpH8に調整し、かつ回転粘度計(C−LTD80/QC温度制御システムを備えたRheolab QC機器、Anton Paar)により剪断荷重1000s
−1下、23℃で粘度を測定することによって特定の噴霧粘度に調整する前に、初期粘度を決定する。
【0260】
4.1.6 固形分含有量の決定
ベースコート材料の固形分含有量を、DIN EN ISO 3251、表A.1(日付:2008年6月1日)に準じて決定する。ここで、1gの試料を計量して、前もって乾燥したアルミニウム皿に入れ、試料を乾燥キャビネットにより130℃で60分間乾燥し、乾燥器で冷却し、再び計量する。使用した試料の総量に基づいた残留物は、固形分含有量に相当する。
【0261】
4.2 本発明の水性ベースコート材料A3および本発明ではない水性ベースコート材料A2の色相および接着力に関する比較
水性ベースコート材料A2およびA3の調査を、上記の方法に従って実施する。表4.1および4.2に結果をまとめる。
【0262】
4.2.1 本発明の水性ベースコート材料A3および本発明ではない水性ベースコート材料A2の色相に関する比較
【0264】
水性ベースコート材料A3にシード−コア−シェルアクリレートSCS1を含む本発明の水性分散体BM1の使用は、基準である、水性ベースコート材料A2に多段階アクリレートSCS5を含む本発明ではない分散体BM5と比較して、フロップインデックスの増加もたらし、換言すると、アルミニウムフレーク配向に改善をもたらす。
【0265】
4.2.2 本発明の水性ベースコート材料A3および本発明ではない水性ベースコート材料A2の凝縮曝露の前後での接着力に関する比較
【0267】
シード−コア−シェルアクリレートSCS1を含む水性分散体BM1に基づいた本発明の水性ベースコート材料A3は、いずれのマルチコート系においても接着力の問題を示さない。逆に、多段階アクリレートSCS5を含む本発明ではない水性分散体BM5に基づいた本発明ではない水性ベースコート材料A2は、最初の仕上げのクリアコートが140℃で60分間オーバーベークされたとき、とりわけ凝縮曝露の前に不十分な接着力を示す(系C)(分離した面:最初の系における再仕上げ系)。
【0268】
4.3 本発明の水性ベースコート材料A4、A6およびA7と本発明ではない水性ベースコート材料A1との比較
4.3.1 本発明の水性ベースコート材料A4、A6およびA7と、本発明ではない水性ベースコート材料A1との色相に関する比較
【0270】
本発明の水性ベースコート材料A4、A6およびA7における本発明の水性分散体BM1、BM2およびBM3の使用は、本発明ではない水性分散体BM5を含有する本発明ではない水性ベースコート材料A1と比較して、フロップインデックスに、全ての場合において改善をもたらし、いくつかの場合では有意な改善をもたらす。
【0271】
4.3.2 本発明の水性ベースコート材料A4、A6およびA7と、本発明ではない水性ベースコート材料A1との凝縮曝露の後の外観に関する比較
【0273】
OK=満足
cOK=暫定的な満足
m=膨れの数
g=膨れのサイズ
【0274】
凝縮曝露の後の膨潤および膨れに関して、本発明ではない分散体BM5を含有する本発明ではない水性ベースコート材料A1は弱点を示し、一方、本発明の水性分散体を含む水性ベースコート材料は、全て満足のゆくものとして分類される。
【0275】
基準(BM5に基づいた水性ベースコート材料A1)に対して、BM1、BM2およびBM3に基づいた水性ベースコート材料A4、A6およびA7は、凝縮曝露の後に短波(SW)およびDOIに関しても利点を示す。