(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
タバコの喫煙は、広範にわたって有害な人間の習慣であり、深刻な、かつ、しばしば回復不能な健康被害を引き起こすことが知られている。現在、喫煙は、肺がんおよび慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症となる病因因子の1つあることがもっとも広く認識されている。喫煙による健康被害は、世界中の深刻な社会的、財政的問題を引き起こしている。例えば、EU加盟国においては、喫煙の有害な影響により、500,000人を超える早期死亡が発生している。
【0003】
約50年前、米国公衆衛生局長官は、喫煙と健康に関する最初の報告を発表した(米国保健教育福祉省、1964年)。この報告書では、平均的な喫煙者は、非喫煙者と比較して肺がんを発症する確率が9〜10倍であり、重度の喫煙者は約20倍に増加するリスクがあると推定した。さらに、喫煙は慢性気管支炎の主な原因であり、喫煙と肺気腫、ならびに心血管疾患との関連が指摘されている。慢性気管支炎および肺気腫は現在、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の2つの側面とみなされていることに留意すべきである。過去50年間に、米国公衆衛生局長官は、喫煙の中止、妊娠中の喫煙、環境に与えるタバコの煙などの専門的な話題を扱った、喫煙と健康についての多数の報告書を発行している。最新の報告書は、最初の報告書からちょうど50年後の2014年に発行されている(米国保健福祉省、2014年)。過去50年間に、喫煙に関連する病気のリストは、大きく拡大している。がんにのみ焦点を当てると、上気道がん(中咽頭、咽頭、気管、気管支)を含む肺がんに加えて、胃がん、肝臓がん、腎臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、および急性骨髄性白血病など、喫煙に関連する多くの種類のがんが挙げられている。さらに、米国公衆衛生局長官は、喫煙の影響により、おそらく過去50年間で2000万人ものアメリカ人が早期に死亡したと指摘している。明らかに有害な喫煙の影響を考慮すると、これらの影響の緩和は、大きな健康上の問題であり、問題を低減するために取り得る対策を検討することは、明らかに価値があることである。疑いなく、最善の措置は、禁煙することである。禁煙の利点は、よく知られている(例えば、ファーガストローム、2002を参照)。しかし、禁煙することを選択しない、または禁煙することがとても難しい喫煙者がたくさんいる。禁煙することが最も効果的な措置であるが、有害な煙成分を効果的に除去する新しいフィルターのような新技術の使用は、タバコ関連疾患を大幅に低減させることができる。結果として、喫煙による健康への影響を低減するために取ることができるいかなる措置も、大きな利益をもたらすであろう。疑いなく、タバコの改良を通して喫煙による健康への影響を軽減する最も明白な試みは、タバコフィルターを追加することである。しかし、フィルターの使用は、特に成功しているとはいえない。
【0004】
タバコにフィルターを追加する最も初期の一つの提案は、間違いなく、タバコの喫煙と肺がんとの関連を示す最初の科学者の一人あった疫学者のErnst Wynderによってなされた。1988年に出版されたWynderによって共同研究がなされた初期の研究では、フィルター付きタバコの喫煙者とフィルターなしのタバコの喫煙者との間の肺がんリスクの差が評価されている(WynderおよびKabat、1988)。この研究では、クレイバーグ(Kreyberg)I型(KI)がん、およびクレイバーグ(Kreyberg)II型(KII)がんに関する、これらの2種のタバコの喫煙者の差異について検討がなされた。(クレイバーグ命名法は、当時、KI肺がんは、扁平上皮細胞肺がん、大細胞肺がん、および小細胞肺がんを含み、KII肺がんは肺腺がんのみを含むものであった。)統計的に有意なものではないが、KI腫瘍に関しては、男性と女性の両方で約45〜50%の減少が見られたが、KII腫瘍に関しては、男性ではわずかに差が見られ、女性では差は認められなかった。タバコフィルターは、20世紀後半に非常に人気が高くなってきた。米国では、1950年におけるフィルター付きタバコが約0.5%であったものが、1976年には88.5%に増加している(国立薬物乱用研究所、1977)。現在、世界中で販売されているタバコのほぼ100%がフィルター付きタバコである。米国のフィルター使用率が急上昇していた期間(1950−1976)と同じ期間に、機械で測定した販売されたタバコのタール発生量は、37mgから16mgに減少していた(Hoffmann D他、1996)。この期間にわたるタール発生量の減少は、2つの傾向の結果であった。1つは、上述したように、フィルター付きタバコの使用が急増したためであった。しかし、2つ目は、時間の経過とともに、フィルターの効率が向上した結果であった。タバコフィルターは、概念的には、極めて単純であり、タバコのタールと気相の両方を吸収することができる所定の材料の多孔質プラグからなっている。いくつかの初期のフィルターは、紙繊維を吸収材料として使用していたが、現在の大部分のフィルターは、酢酸セルロース繊維を使用している。したがって、フィルターは、外装紙を使用してタバコに取り付けられた酢酸セルロースで満たされた単なる紙管である。フィルターの酢酸セルロースの量を増やすことによって、かつフィラメントの径を小さくすることによって、効率を上げることができる。しかし、タバコの吸引抵抗が大きくなり過ぎ、製品が消費者に受け入れられなくなるため、これまでのところ、これらの両方の取り組みは、ある程度しか行なわれていない。事実上、すべてのタバコ会社がこの問題を解決するために採用した取り組みは、フィルターの外装に孔を設けることであった。したがって、喫煙者は、空気および煙の混合物を吸引することになる。通気孔は、吸引抵抗を低減させ、煙と共に空気を取り込むことによって、煙が希釈され、煙成分の吸引量が低減する。通気の程度が大きいほど、喫煙者が吸引する空気量が多くなり、煙の吸引量が減少する。ほとんどの専門家は、フィルター付きタバコは、フィルターなしのタバコと比較して、少なくともある程度は喫煙のリスクを低減しているということを認めるけれども、通常のフィルター付きタバコによって達成することができるよりもタールの吸引量を低減することができる、彼らが呼んでいるような低タールタバコは、健康上の利益をもたらすようには見えなかった。この結論は、母集団データと疫学研究の両方に基づいていた。「低タールタバコ」を喫煙する場合、ニコチンレベルまたは味のレベルを維持するために、喫煙者が大幅に補償する、すなわち機械の測定量より多くの煙を実際に吸引するという事実を文書化した多くのデータが提示されていた。さらに、多くの科学者は、喫煙者が意図的にまたは間違って通気孔を塞ぐことがあり、煙の吸引を大幅に増加させることもあるとの懸念を表明していた(米国保健福祉省、2001年)。これらの懸念の具体的な結果の1つは、タバコの包みに、少なくとも米国および欧州連合において、機械測定されたタールおよびニコチン量を示すことが、もはや許されないということである。これらの問題にもかかわらず、喫煙による健康への影響を低減することができる新規のフィルターを開発することは可能であり、特にフィルターの通気を必要としないフィルターを開発することができる可能性がある。このようなフィルターは、懸念される特定の気相および半揮発性煙成分を選択的に除去するように設計することができる。煙は、気相、半揮発相、および微粒子相からなることに留意することが重要である。健康への影響に関する証拠が存在する成分は、3つの相すべてに見出すことができる。微粒子相成分を選択的にろ過することができる技術は、現在、存在しない。しかし、気相および半揮発相成分の両方を選択的にろ過することができる。現在、市販されているこのようなフィルターの優れた例は、カーボンフィルターである。事実上日本の市場全体は、カーボンフィルター付きタバコで構成されており、韓国の喫煙者の約50%は、これらの製品を使用している。フィルターの開発において、他の多くの技術的進歩がなされているが、現在のところ、これらは、いずれも商業的に重要ではない。現在、フィルターは、口の端でタバコに直接組み込まれたセグメントであるため、タバコの煙は、気道および肺に入る前にフィルターを通過しなければならない。現在、世界中において、3%のタバコだけが、フィルターなしで販売されている。喫煙者に届く有害物質の量は、タバコフィルターによって減少させることができるけれども、これは一般に、タバコの口端に到達する煙の量を単に減少させることによって達成している。ほとんどの場合、選択的ろ過は、ほとんどまたは全く採用されていない。したがって、研究者らは、喫煙の健康への影響を減少させるために、特定の有害な煙成分を選択的に除去することができるタバコフィルターを作り出すことに非常に関心を持っている。
【0005】
タバコの煙は、低分子量のカルボニル化合物、フリーラジカル、キノン、シアン化水素、窒素酸化物、および芳香族アミンなどの多くの反応性粒子を含んでおり、これらは高毒性、突然変異誘発性および発がん性である。したがって、タバコの煙中のこれらの物質の量を選択的に減少させることは、喫煙によって引き起こされる健康上のリスクを低減させることができる。
【0006】
ますます、政府の規制は、喫煙者に吸引されるタバコの煙の量を減少させるために、より高いろ過効率を求めるようになっている。現在利用可能な酢酸セルロースフィルターを使用して、活性炭または他の天然由来物質のような粒子の濃度を増加させてフィルターにドーピングすることによって、いくらかの選択性を達成することができる。しかし、粒子濃度を増加させることは、喫煙者の吸引特性を変化させることになる。まして、フィルター内の活性炭粒子は、タバコの煙中の有害な揮発性物質の量を減少させことに寄与するけれども、不対電子がないため、フリーラジカルの不対電子を補うために必要なプラス電子を供給することができない。したがって、炭素は、タバコの煙によって引き起こされる身体内の炎症および他の有害な案件を助長する様々な組織へのフリーラジカルの影響に対抗するのには適していない。
【0007】
タバコの重要な特性の1つは、封入圧力降下である。「封入圧力降下」または「EPD」という用語は、定常状態下で気流が通過する際の、タバコの2つの端部間の静圧差を指している。EPD値が高い場合は、喫煙者は、より大きな力で喫煙装置を吸引しなければならない。
【0008】
従来のフィルターの効率を高めるとフィルターのEPDが増加するため、公衆、結果として製造業者は、これらの製品を採用したがらない。したがって、タバコの吸引特性を最小限に抑え、上記の成分および一酸化炭素、フェノールのようなタバコの煙の主成分中の特定の成分をより高いレベルで除去しながら、改善されたより効率的なフィルターの開発に関心を持っている。
【0009】
タバコフィルターの製造に使用される最も一般的な充填剤は、無水グルコース単位当たり約2.5個のアセテート基の置換度を有する酢酸セルロースである。製造中、アセテートポリマーを、典型的には、繊維トウとして押し出し、1つ以上の可塑剤(例えば、トリアセチン、ポリエチレングリコール、グリセリン)と混合する。酢酸セルローストウのプロセスは、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。様々な流体を、タバコの煙フィルターの製造に使用するマルチフィラメント繊維トウに注入することができる。トウ単独で、または、液体もしくは気体担体と組み合わせて使用することができるこれらの流体は、フレーバー剤、トウブルーミング剤、潤滑剤、サイジング溶液、仕上げ組成物、可塑剤などであってもよい。そのような流体は、流体処理されたトウを介してタバコの煙に所望の物理的またはフレーバー特性を付与するようになっている。流体注入プロセスは、例えば、特許文献3に開示されている。
【0010】
フィルター要素を形成する酢酸セルロース繊維は、典型的には、繊維仕上げ組成物で被覆されている。このような組成物は、一般に、複数の成分からなる水性エマルジョンである。各成分は、繊維の加工中、またはその後の繊維から形成されたフィルターの使用中に特定の機能を果たすことができる。
【0011】
繊維仕上げ組成物の典型的な成分としては、繊維を破損することなく加工することができるように、摩擦を減少させるための潤滑油、繊維の静電気蓄積を減少させるための帯電防止剤、および加工中に繊維配合物の相分離を阻害するための乳化剤が含まれる。他の補助成分としては、抗菌剤、親水性剤、または他の反応性化合物を含むことができる。繊維状トウをフィルター用材料に組み立てた後、可塑剤を適用して繊維を軟化させ、繊維間結合を形成してフィルターを所望の硬度/粘稠度に硬化させることができる。酢酸セルロースおよび可塑剤の表面化学は、喫煙者によって広く望まれ、受け入れられている喫味を提供することができる。特定の他のフィルターの設計/配合物は、異なる喫味を提供することができる。今日まで、非酢酸セルローストウフィルターは、一般に受け入れられておらず、商業的成功も収めていない。
【0012】
技術水準には、タバコフィルターに関する様々な刊行物およびそれに適用される様々な改良が含まれている。
【0013】
特許文献4は、セルロースエステルステープルファイバー、パルプ、および水溶性アニオンポリマーのアルカリ金属塩を含有するフィルタープラグを備えるタバコフィルターを開示している。フィルタープラグは、フィルタープラグ1グラム当たり2〜100μmolのアルカリ金属を含量している。水溶性アニオンポリマーは、ポリアクリル酸およびカルボキシル基を有する多糖類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0014】
特許文献5は、紙構造を有するシート状のタバコフィルター材料を開示しており、非捲縮状セルロースエステル短繊維と叩解パルプとを含み、叩解パルプは、ショッパー−リーグラー濾水度20〜90°SRの叩解度を有し、非捲縮状セルロースエステル短繊維は、平均繊維長が1〜10mm、繊度が1〜10デニールのステープルファイバーである。この文献は、シート材料の調製において、健康に悪影響を及ぼさず、タバコの喫味および嗜好性を低下させず、フィルター材料の崩壊を招く恐れがないバインダー(例えば、水溶性接着剤)を開示している。一般に、バインダーの量は、できるだけ少ないこと(例えば、材料の総重量の10重量%以下)が好ましい。この文献の例には、湿潤紙製造プロセスによる非捲縮状酢酸セルロース短繊維および叩解パルプから形成され、これにカルボキシメチルセルロース水溶液(乾燥重量基準で3重量%)を噴霧したシート材料が開示されている。
【0015】
特許文献6には、セルロースエステル繊維のトウと、トウに含まれて繊維を結合する水溶性ポリマーとを含むタバコフィルターが開示されており、トウは、トウ100重量部に対して25重量部以下の水を用いてフィルターロッドに加工されている。この文献の例では、開繊した酢酸セルロース捲縮繊維トウに水溶性ポリマーとして、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を5重量%加え、次に開繊したトウを包装機に供給して、開繊したトウをフィルタラップで包むことによって、タバコフィルターチップが得られることが含まれている。
【0016】
特許文献7には、セルロースエステル組成物と、水分散性の良好なバインダーとからなり、ロッド状に巻かれた不織布を備えるタバコフィルターが開示されている。この文献の例には、積層または成膜のために、空気流によって酢酸セルロース短繊維をスクリーンワイヤーに吹き付け、カルボキシメチルセルロースの5%水溶液を10重量%の割合でこのスクリーンワイヤー上に積層物として噴霧し、湿った積層をプレスし、乾燥させ、得られた不織布にクレープロール処理を施した後、布帛をラッピングすることによって製造されたフィルタープラグが含まれている。
【0017】
特許文献8は、煙流中の一酸化炭素およびフェノールの濃度を低下させる煙フィルターに関する。当該フィルターは、複数の活性粒子、複数のバインダー粒子、およびこの活性粒子とバインダー粒子との少なくとも一部に配置された活性コーティングからなる多孔質の質量部を含み、この活性粒子とバインダー粒子とは、複数の接触点で共に結合しており、フィルター部を構成している。いくつかの例では、フィルターは、複数の活性粒子と複数のバインダー粒子とからなる多孔質の質量部を含み、この活性粒子とバインダー粒子とは、接着剤なしで複数の接触点で共に結合しており、活性ドーパントを含むフィルター部を構成している。この煙フィルターは、改善された結果をもたらすかもしれないが、その調製はかなり複雑であり、所望のろ過効果を達成するために使用される材料は高価である。
【0018】
非常に効率的なタバコフィルターが、特許文献9に開示されている。このタバコフィルターは、タバコフィルターの共通成分に加えて、擬ベーマイト(AlOOH・H
2O)、ブドウ成分、抗酸化物質としてのアスタキサンチンおよびクランベリーを含んでいる。このタバコフィルターの有利な効果は、ブドウの種および皮からなるブドウ成分の使用によるものである。特許文献9は、その全文を参照として、本明細書に取り込まれるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、公知のタバコフィルターと比較してタバコの煙の有害成分をさらに低減するタバコフィルターに関する。これらの有利な特性は、タバコフィルターにおけるアルギニットの使用によるものである。アルギニットは、単独で、またはタバコフィルターで既に使用されている他の物質と組み合わせて使用することができる。
【0026】
アルギニットは、藻類のバイオマスと火山灰が粘土に分解されたトゥファとからなる堆積岩である。カルパチア盆地の湖沼では、集中的な火山活動が鮮新世の3〜500万年前に発生した。この活動により、よく知られている玄武岩の山岳が形成され、同時に、特別なトゥファ環も形成された火山活動が静まった後、トゥファ環に水が浸水し、爆発湖(マール)が形成された。爆発湖の水は、温泉によって加熱され、そこに含まれる熱い溶液は、微量元素、ミネラル塩類、および他の栄養素で豊かな水になった。火山性トゥファのガラス材料の分解に起因する鉱物コロイド中の成分は、爆発湖の栄養分をさらに富化した。爆発湖の穏やかな水域では、大量の藻類(特に緑藻類のボトリオコッカス ブラウニ(Botriococcus braunii))、および他の浮遊動物や植物が蓄積していた。死滅し、葉および花粉の残渣と混ざり合あわされることで累積された植物および動物は、密集した岸植生から洗い流され、爆発湖の底に堆積した。分解したトゥファおよび他の死滅した動植物と共に、無酸素環境では、それらは有機堆積泥(sapropel)として蓄積した。爆発湖の堆泥段階では、より大きな動物の体は、暖かい泥に取り込まれ、その結果、泥はリン物質を豊富に含むようになった。この枯渇し硬化したバイオマスは、数百万年の間に、特定の物理的および化学的変化を受け、現在の形態である岩石アルギニットが形成された。
【0027】
アルギニットは、時折、葉のような剥離薄板からなる粘土構造を有する泥岩である。アルギニットは、毒性作用が認められない(Solti Gabor博士のAz Alginit、Ismerteto tanulmany、Az Alginit a Mezogazdasagert es Kornyezetvedelemert Alapitvany tevekenysege(1993−2013)2014)を参照のこと)。その色は、モクセイソウの色(緑色)または灰色であり、黄土色になることがある。その薄板構造は、乾燥の際によりよく見ることができ、薄板間には植物の痕跡または植物の残渣をしばしば見ることができる。
【0028】
その最も重要な物理的性質は、アルギニット1キログラムあたり0.5〜1.0リットルの水で結合できることである。アルギニットは、80〜90%は粘土で、残りは沈泥からなり、堆積物は、岸近くのより粗い粒子を含んでいる。堆泥クレーター(ラグーン)の最後の相では、有機材料含有量が減少し、ベントナイト含有量が増加していた。アルギニットの組成は、同じ場所から採取したサンプルでも、その偏差が高いことである。腐植の平均含有量は、30%であり、時には45%に達する。平均石灰含有量(CaCO3の形態で)は、33%であり、時には40%に達する。化石バイオマスは、64成分を含むことが証明されている。これは、アルギナイトは、特に多量成分および微小成分に富んでいることを意味し、最も重要な成分は、窒素(N):0.5%、リン(P
2O
5の形態):0.6%、カリウム(K
2Oの形態):0.9%、マグネシウム(Mg):1.0%である。典型的な鉱物成分は、モンモリロナイト、イライト、ドロマイト、方解石、アラゴナイト、石英石膏、斜長石、菱鉄鉱、マグネサイト、黄鉄鉱および正長石である。上記に加えて、より重要な微小成分は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、チタン(Ti)、クロム(Cr)およびカドミウム(Cd)である。腐植成分の特徴の1つは、その生化学的植物成長増強効果である。アルギニットが農業で使用される場合、フミン酸は、酵素のような、またホルモンのような増強効果を発揮し、また根の吸水能力の調節を通じて、植物成長に間接的な増強効果を発揮する。
【0029】
アルギニットは、様々な目的のために広く使用されている。植物および果物の栽培では、アルギニットを土壌改良のために使用することができる。それを1回使用すると、初年度に、土壌の肥沃度を20〜30%増加させる。その粘土鉱物のために、より高いレベルで人工肥料を使用しなければならず、そのため、リン、窒素およびカリウムの土壌から地下水、川および湖への移動が増加する。その効果は4〜6年続く。アルギニットは、天然素材であり、いつまでも品質を保持し、過度に使用することは必要なく、大量に使用したとしても、なにも悪影響はない。アルギニットは、混合物の形で庭の土壌として使用することもできる。ゼオライト、パーライト、泥炭、または玄武岩のような他の天然材料と混合し、無薬剤、高効率の土壌混合物を調製することができる。アルギニットの使用は、収穫時において、庭または温室における菜園および観葉植物の栽培における収量の量および質の増加をもたらしている。アルギニットは、森林樹種の植栽穴を使用する際の第一歩として使用することもできる。アルギニットの使用は、成長を6〜13%および20%早めるという定量的増加をもたらしている。秋にアルギニットの噴霧を中断することは、植物を保護する効果があり、樹木の冬眠を助けることになり、一方、春の噴霧により、害虫から保護できるようにしている。アルギニットの噴霧の結果として、植物のマンガン、鉄亜鉛および銅含有量が増加し、一方、果実中のカルシウム含有量の増加は、より多くの味とより長い貯蔵寿命をもたらしている。
動物飼育では、液体肥料と組み合わせたアルギナイトは、有機肥料を補うものとして、または有機肥料の代替として、非常に有効な製品を提供している。アルギナイトは、肥料の分解期間を短縮し、他の栄養素と組み合わせることができる。アルギナイトを残物と混ぜることにより、より多くの有用な肥料となり、家畜および家禽の成長を促進する。アルギニットは、環境保護効果も発揮する。その高い吸着親和性のために、効果的に動物の小屋の臭いと結合し、空気中のSO
2およびNH
3濃度を減少させる(例えば、ハンガリー国特許第189.383号「有機材料を溶解し、有機肥料を高効率で製造することによって生じる不快な臭いを有するガスとの結合プロセス」を参照のこと)。
【0030】
ヒトのアルギニットの使用には、関節、リウマチおよびスポーツの問題に対してスラッジとして使用することが含まれ、またリウマチに対して軟膏にして使用する利点もある。アルギニットは、静脈瘤および乾癬に対しても有用であり、皮膚再生および一般的な皮膚状態の改善に使用することもできる。さらに、アルギニットは、医療用清涼剤の基剤として使用することもできる。
【0031】
アルギニットは、ハンガリーで産出することができ、ハンガリーの多くの企業、例えば、ハンガリー、ゲレスのGerce−Alginit Kftから市販されている。
【0032】
驚くべきことに、アルギニットは、今や新しい技術分野において有効であることが見出されている。本発明者らの研究では、アルギニットは、タバコフィルターに単独で、または以下に述べるように、他の既知の成分と組み合わせて使用する場合に、特に有効であることが証明されている。意外にも、タバコフィルターにアルギニットを使用すると、唾液中の活性酸素種(ROS)が有意に減少し、血清中のROS形成が有意に減少し、内皮損傷が減少し、肺上皮損傷が減少し、グルタチオンレベルが有意に増加し、肺組織の損傷が減少し、肺組織の炎症が減少することが見出された。これらの有利な特性については、以下に詳細に開示されている。
【0033】
アルギニットの使用は、唾液中の活性酸素種(ROS)を有意に減少させる。唾液自体には、ある程度のフリーラジカルが含まれているが、タバコの煙はフリーラジカルのレベルを増加させてしまう。タバコの煙を一回吸うと、その中に、1014以上のフリーラジカルが存在していると推定される(Church and Pryor、1985;Church DF、Pryor WA、「タバコの煙のフリーラジカル化学およびその毒性学的関係」、Environ Health Perspect、1985,64:111−26)。フリーラジカルが多数の有機基質と相互作用してROSを産生することを考えると、たばこの煙が唾液中のROSのレベルを増加させることは驚くべきことではない。しかし、タバコの煙に含まれるラジカルに加えて、著しいラジカル形成ならびにROSの直接産生は、たばこの煙によって引き起こされる炎症性応答から、好中球およびマクロファージのレベルの増加をもたらし得る(Messner and Bernhard、2014; Messner B、Bernhard D、「喫煙および心血管疾患。内皮機能不全および早期アテローム形成のメカニズム」Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2014, 34:509−15)。本発明者らは、ボランティアの喫煙前の唾液の抗酸化能を測定した。次に、ボランティアが、タバコを一本喫煙した後、再び唾液を採取した。本発明者らは、対照タバコの煙を使用して、唾液中の抗酸化能レベルの変化を測定した。本発明者らは、単一のアルギニットのみと、アルギニット−ブドウの皮および種(GSS)、アルギニット−特殊Al酸化物、アルギニット−ゼオライト、アルギニット−炭素を50%:50%の割合で混合した4つの異なる組み合わせとの両方を含む異なるフィルターで同じ操作を繰り返した。アルギニットを含む全ての組み合わせたフィルターは、対照フィルターと比較した場合、唾液中の抗酸化能の低下が有意に少なかった。アルギニット単独のフィルターでは、対照フィルターと比較して抗酸化能が有意に異なるが、全ての組み合わせたフィルターの方がアルギニット単独のフィルターよりも有意に良好であり、アルギニットと組合せた相手方とは、相乗的に作用することが明らかである。
【0034】
アルギニットフィルターの使用は、血清中のROS形成を有意に減少させた。これを実証する実験は、唾液実験と同様であったが、実験は、血清で行われた。血清そのものは、ある濃度のフリーラジカルを有している。血清そのものは、ある濃度のフリーラジカルを有しているが、タバコの煙は、フリーラジカルのレベルを増加させている。タバコの煙を一回吸うごとに、1014以上のフリーラジカルが存在していると推定される(Church and Pryor、1985)。フリーラジカルが多数の有機基質と相互作用してROSを産生することを考えると、タバコの煙が血清の抗酸化能を低下させることは驚くべきことではない。しかし、タバコの煙に含まれるラジカルに加えて、著しいラジカル形成ならびにROSの直接産生は、タバコの煙によって引き起こされる炎症性応答から、好中球およびマクロファージのレベルの上昇をもたらす恐れがある。(Messner and Bernhard、2013)。本発明者らは、未処理血清の抗酸化能を測定した。その後、本発明者らは、喫煙機を使用して、全てのタバコの煙を血清用のチューブを通して流した。本発明者らは、対照タバコの煙を用いて、血清中の抗酸化能の変化を測定した。本発明者らは、単一のアルギニットのみと、アルギニットおよび4種類の異なる濾材、すなわち、アルギニット−ブドウの皮および種(GSS)、アルギニット−特殊Al酸化物、アルギニット−ゼオライト、アルギニット−炭素を同じ割合で混合した濾材を組み合わせたものとの両方を含む異なるフィルターで、同じ操作を繰り返した。アルギナイトを含有する全てのフィルターにおいて、対照フィルターと比較した場合、血清中の抗酸化能の低下は、有意に少なかった。
【0035】
アルギニットの使用により、内皮損傷を減少させる煙が発生した。血管の内面を覆う細胞は、内皮細胞と呼ばれる。これらの細胞は、これらの血管を保護する上で重要な役割を果たしている。一旦、内皮が損傷すると、しばしば内皮機能不全と呼ばれ、心血管疾患のリスクが増大する。肺胞を通って肺から出た煙は、血流に入るので、煙に内皮が曝露され、最初は、喫煙に関連する心血管疾患の進行の重要な第一歩であることがよく知られている内皮機能不全に至る(Ambrose and Barua、2004; Ambrose JA、Barua RS、「タバコおよび心血管疾患の病態生理、更新版」J Am Coll Cardiol、2004,43:1731−7; Messner and Bernhard、2014)。本発明者らは、全煙に曝された内皮細胞が、未処理細胞と比較した場合に生じる内皮細胞の損傷を測定した。同じ細胞株がアルギニットでろ過された煙、またはアルギニットを含有する組み合わせでろ過された煙に曝された場合、細胞の損傷は、有意に少なかった。
【0036】
アルギニットの使用により、肺上皮損傷を減少させる煙も発生することができた。 肺上皮は、吸引毒性物質に対する防御の第一線となっている。肺の肺胞上皮細胞は、細胞死に至る喫煙曝露によって、損傷されることが知られている(Kosmider et al.、2011; Kosmider B、Messier EM、Chu HW、Mason RJ、「タバコの煙によって誘発されるヒト肺胞上皮細胞損傷」PLoS One、2011,6:e26059)、これは、未処理細胞と比較して健康な細胞数の減少によって証明される。アルギニットにより煙をろ過することで、対照タバコと比較して、健康な細胞数が減少することを有意に低下させた。壊死性上皮細胞は、最終的に肺がんまたはCOPDにつながる恐れがある炎症を誘発するタンパク質を肺に分泌するので、アルギニットを含有するフィルター、および4種類の異なる濾材とからなる、すなわち、アルギニット−ブドウの皮および種(GSS)、アルギニット−特殊Al酸化物、アルギニット−ゼオライト、アルギニット−炭素を同じ割合で組み合わせたフィルターによる上皮の保護は、明らかに喫煙者の健康上の利益となっている。
【0037】
グルタチオンレベルも、対照タバコと比較して、アルギニットによりろ過したタバコ煙では、有意に高かった。上皮細胞株および内皮細胞株の両方を、対照タバコの煙、アルギニットを含むフィルターによりろ過したタバコ煙、およびアルギニット−ブドウの皮および種(GSS)、アルギニット−特殊Al酸化物、アルギニット−炭素を同じ割合で組み合わせたフィルターによりろ過したタバコの煙で暴露した。グルタチオンレベルの測定結果は、対照タバコと比較して、アルギナイトフィルター付きタバコからの煙に曝露された細胞中のグルタチオンレベルが、有意に高いことを示していた。グルタチオンが酸化的ストレスを防ぐことはよく知られていることを考えると(Rahman and MacNee、2000; Rahman I、MacNee W、「肺炎症における酸化ストレスおよびグルタチオンの調節」、Eur Respir J、2000,16:534−54)、アルギニット含有フィルターが、対照タバコよりも肺の酸化ストレス誘発組織損傷に対して肺の固有の防御機構をよりよく保護することを意味している。
【0038】
アルギニットでろ過された煙は、肺組織の損傷を減少させ、対照タバコの煙と比較して炎症を減少させた。スフェロイドと呼ばれる3次元肺組織は、既知のプロフィール、すなわち肺上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞およびマクロファージを有するヒト細胞から構築されている。3次元構造は、細胞がそれらの生体内対応物に見られるのと同様の機能的組織を発達させることを可能にする。3Dモデルは、従来の単培養単層(2D)システムよりも生体内環境をシミュレートするために、はるかに優れた実験モデルを提供している。3D組織培養の生化学的プロフィールは、生物のそれと著しく類似している。3Dスフェロイドは、生存末梢肺組織と同様に、外部刺激に反応する。それらの炎症性応答は、ほぼ同一であり、界面活性剤も生成する。これらの3Dスフェロイドが、新規なアルギニットタバコフィルターを通してろ過されたタバコの煙に曝露された場合、既知の炎症仲介因子であるサイトカインIL−8およびIL−6のレベルは、対照タバコと比較して有意に少ない程度で発現した。
【0039】
上述したように、アルギニットは、本発明のフィルターにおいて、単独で、または本発明の出願日前にタバコフィルターとして使用された他の物質と組み合わせて使用することができる。そのような材料ならびにそれらの製造および使用は当業者にとって公知である。
【0040】
例えば、タバコフィルターに関して、「炭素」または「ブドウ」または「ブドウ成分」と記載されている場合、それらは活性炭並びにブドウの種および皮を意味するが、先行技術からは、ぶどう成分は、他の形態としても存在し得ることは当業者にとって明らかである。これらの成分、ならびにそれらの入手可能性も、当業者にとって周知である。
【0041】
本発明は、以下の実施例を通して、より詳細に開示される。これらの実施例は、例示的な目的にしかすぎないものである。これらの実施例から、当業者は、アルギニット単独でさえ、既知の濾材よりも有意に改善されたろ過特性を有することを容易に理解するであろう。さらに、アルギニットおよび先行技術に属する特定の濾材を含む組み合わせに関するデータを含む実施例は、アルギニットが他の濾材と相乗的に作用することを当業者に明らかにするであろう。当該材料に関して、例えば、本発明者らは、上述の、参照により本明細書に組み込まれる特許文献9に開示されているフリーラジカルスカベンジャーも参照している。従って、アルギニットを含有する全ての組み合わせが実施例に列挙されているわけではないが、当業者ならば、アルギニットを組み合わせる対象が、他の適切な濾材と任意に入れ替えることができ、そのような組合せのすべてが本発明に包含されることを理解している。
【0042】
実施例1.:アルギニットの使用は、唾液および血清中の抗酸化状態の悪化を有意に抑える−ブダペスト工科大学(BUT)の実験
この研究の目的は、タバコの煙がサンプル(血清および唾液)の抗酸化状態を変える能力について、種々のフィルターが及ぼす効果を調べることであった。血清試料の測定は、RANDOX(登録商標)TAS試験法を用いた。凍結乾燥血清を再生することによって血清サンプルを調製し、測定は、再生した血清のまま(ブランク)で、またはろ過したタバコの煙で血清を泡立てた後で行った。唾液の抗酸化状態は、本発明によるフィルターを備えた従来のまたは実験的なタバコの喫煙の前後で測定した。本発明者らの測定によって得られたデータは、フィルターのフリーラジカルおよびROSの結合能力を反映することができた。
【0043】
材料および方法
ベンジジン試験およびRandox(登録商標)トータル抗酸化状態キット(Total Antioxidant Status(TAS)kit)による抗酸化状態の測定
抗酸化状態の測定を、広く受け入れられているベンジジン試験および市販のRandox(登録商標)トータル抗酸化状態(TAS)キットにより実施した。ベンジジン試験は、過酸化物生成系(過酸化水素およびペルオキシダーゼ)および過酸化物感受性色素原(ベンジジン)を利用する。その場で発生した過酸化物は、色素原と反応して、分光光度計で検出可能な620nmのピーク吸光度を有する中間化合物を与える。サンプル中に存在する抗酸化物は、過酸化物との反応において色素原と競合し、検出可能なシグナルの生成を妨げている。サンプルの検出可能な色素原形成を、抗酸化物が存在しない陰性対照と、および既知の抗酸化物濃度を有する陽性対照と比較することにより、サンプルの抗酸化物の状態を推定することができる。
【0044】
使用した試薬および器具
試薬A(タイプII精製水に溶解)
155mM塩化ナトリウム(Reanal、カタログ番号24640−1−08−38)
25mU/mLホースラディツシュペルオキシダーゼ(Sigma(登録商標)、カタログ番号77332)
233μMのベンジジン二塩酸塩(Sigma(登録商標)、カタログ番号B3383)
試薬B(タイプII精製水に溶解)
250μMの尿素−過酸化水素(Sigma(登録商標)、カタログ番号289132)
【0045】
サンプル
タバコ喫煙前後の17名の被験者から唾液サンプルを採取した。ボランティアは、ブダペスト工科経済大学のOF試験所によって募集された。各ボランティアは、唾液採取、タバコ喫煙、および唾液再採取を、午前8時から9時の間に行った。毎朝、1種類の試験用タバコを喫煙し、唾液を採取した。2015年12月4日〜7日、および2016年1月5日〜8日の二回の期間、各ボランティアは、4種類のタバコ(フィルターで区別)を喫煙した。喫煙者は、午前中は如何なる食べ物および飲み物を摂らず、かつ歯磨きを行わずに喫煙し、唾液採取をすることを要請された。唾液を凍らし、施設内のBUT試験所に評価用として搬送した。
【0046】
血清サンプルを、凍結乾燥した血清(Analyticon Contronorm(登録商標)PLUS)から、メーカーの指示に従って、タイプIIの精製水で再生した。血清サンプルを、そのまま(ブランク)で、または、OptiFilterによって、ろ過したタバコの煙を血清に通して泡立てた後で測定を行った。タバコを、Filtrona SM302 8−portの線形喫煙機を使用して喫煙した。フィルター通気孔を100%閉塞した状態で、タバコをISO 3308に従って喫煙した。煙をケンブリッジフィルター(ガラス繊維フィルター44mm、技術番号:80202851、Borgwaldt KC)に通し、得られた気相を、シリコーンチューブを通じて流し込み、1.5mLの血清溶液を含有する容器(インピンジャー)で泡立てた。各タバコの喫煙後、ケンブリッジフィルターパッドを、新しいものに交換し、各タバコの喫煙後、シリコーンチューブを、新しいものに交換した。フィルターは、1〜3と表示された。
【0047】
対照および測定器具
陰性対照(negative control)(タイプIIの精製水)
陽性対照(positive control)(Randox(登録商標)トータル抗酸化状態(TAS)キット、カタログ番号NX 2332のキャリブレーター標準液)
Randox(登録商標)トータル抗酸化状態(TAS)キット
分光光度計(Thermo ScientificTM MultiskanTM GOマイクロプレート(Microplate)分光光度計)
【0048】
ベンジジン試験法
測定を、上述のマイクロプレート分光光度計を用いて行い、細胞を96ウェルプレート(96−well plate)上で、37℃で温置した。マイクロプレート上の反応混合物を以下のように調製した。5μLのサンプルまたは対照と250μLの試薬Aとをウェルにピペットで入れた。次ぎに、混合物を均質化し、マイクロプレートリーダーで読み取った。過酸化物生成を開始させるために、50μLの試薬Bを添加する前に、λ=620nmでの初期吸光度を測定し、続いて、λ=620nmで0〜3分間、吸光度を測定した。吸光度の測定結果は、2.5分で測定した吸光度として考慮された。 全ての試料および対照を氷上に保存し、各試料を統計的分析のために3つの平行なウェルで測定した。
【0049】
Randox(登録商標)トータル抗酸化状態(TAS)キット法
測定を、上述のマイクロプレート分光光度計を用いて、付属のマニュアルに従って実施した。キュベットの代わりにマイクロプレートを使用することにより、必要な試薬容量は、全て1/4に減少した。5μLの試料または対照、250μLの試薬Aおよび50μLの試薬Bを、マニュアルに記載されているように添加した結果、305μLの最終反応容積となった。
【0050】
タバコの材料
実験に使用されたタバコは、OptiFilter Zrtによって供給された。タバコの仕様と製作は、以下の通りであった。ケンタッキー参照タバコ3R4Fは、米国、ケンタッキー州のケンタッキー大学によって製造され、組み立てられた。参照タバコは、米国、バージニア州ナローズのCelanese Corporationによって、ハンガリーのOptiFilter Zrtに供給された。OptiFilter Zrtによって、タバコフィルターが組み立てられ、試験タバコが製造された。Celanese Corporationによって、CellFxフィルターロッドが調製され、供給された。これらには、様々な濾材が、時には混ぜ合わされた濾材が含まれていた。様々な織物特性を有する、それにより異なる圧力降下値を生じさせる追加のアセテート濾材が、Celanese Corporationによって製造され、供給された。ケンタッキー参照タバコ(KRC)3R4Fフィルターの27mmアセテート部分(2.9/41,000)を取り出し、廃棄した。CelaneseのCellFx技術で製造されたフィルターロッドは、異なった充填材料を含んでいた。1つの選択されたフィルターロッドをタバコの燃焼面に向けて差し込み、追加のアセテート部分を選択してフィルターに差し込み、タバコの圧力降下(全吸引抵抗)値が、KRCの圧力降下値(吸引抵抗170mmH
2O±2%)と同じであることを確認した(フィルター通気孔を閉塞した状態)。Celaneseのロッド長さは、12mmであった。アセテート部分の長さは、15mmであった。フィルターの全長は、27mmであった。
【0052】
結論
唾液および血清について実施した試験の間、以下の試験結果が得られた。
【0054】
抗酸化状態の変化を
図1に示す。
測定を5回繰り返し行った。結果は、フィルター3が対照タバコ(フィルター1)よりも優れていることを示している。
【0055】
ベンジジン試験による唾液サンプル測定結果
測定を17名の被験者で行った。被験者から採取した各サンプルを3回測定した。
【0057】
唾液実験の統計分析
タバコの喫煙前後の抗酸化状態の変化の統計的有意性の評価を、ウィルコクソン適合対試験(Wilcoxon Matched pair Test)(StatSoft−STATISTICA10)を用いて行った。その結果は、p<0.05で有意であると考えられた。
【0059】
フィルター1による喫煙前後の抗酸化状態の変化は、有意である。試験から得られた結果は、強い統計的差異を示している。
【0061】
フィルター2による喫煙前後の抗酸化状態の変化は、有意である。試験から得られた結果は、強い統計的差異を示している。
【0063】
フィルター3の喫煙前後の抗酸化状態に、統計的に有意な変化はない。観察可能な差異(p=0.065)があるものの、統計的有意性のための閾値に達していない。
【0064】
ウィルコクソン適合対試験Wilcoxon Matched pair Test(StatSoft−STATISTICA10)を使用して、異なるタバコの喫煙によって引き起こされた抗酸化状態の変化の統計的有意性の評価を行った。結果は、p<0.05で有意であると考えられた。
【0066】
フィルター1とフィルター2との間の抗酸化状態の変化は、有意ではない。
【0068】
フィルター1とフィルター3との間の抗酸化状態の変化は、有意である。
【0069】
箱ひげ図を用いた抗酸化状態の減少結果の表記
複数の変数の関連する箱ひげ図を
図2に示す。外向きのデータポイントは、別々に示されている(StatSoft−STATISTICA10)。
【0070】
結論
本発明者らの結果は、フィルター1または2のいずれかを通過したタバコの煙が、血清抗酸化状態を15−20%低下させることを示している。フィルター3は、対照と比較して抗酸化能の減少が、有意に少なかった。
【0071】
唾液サンプルの吸光度を、陽性対照および陰性対照と比較して、抗酸化状態を評価した。本発明者らの結果は、フィルター1およびフィルター2を通過したタバコの煙は、唾液の抗酸化状態を約30%減少させ、統計的に有意であることが分かり、フィルター3は、12%の減少を示し、対照タバコと比較して統計的に有意であることを示した。これらの結果は、血清測定の結果と一致する。本発明者らの結果は、本発明のフィルターの成分が、記載された試験条件下で、サンプルの抗酸化状態を変化させるタバコの煙の能力に対して有意な効果を有することを示している。
【0072】
実施例2.:アルギニットの使用は、唾液および血清中の抗酸化状態の悪化を有意に抑える−Tibor Szarvas教授による実験
本発明のフィルターによってろ過されたタバコの煙の唾液および血清に対する効果について、以下のようにさらなる実験も行われた。
【0073】
材料および方法
実験に使用されたたばこは、米国、ケンタッキー州のケンタッキー大学によって製造および組み立てられた、ケンタッキー参照タバコ3R4Fであった。参照タバコは、米国、バージニア州ナローズのCelanese CorporationによってハンガリーのOptiFilter Zrtに供給された。OptiFilter Zrtによって、タバコフィルターが組み立てられ、試験タバコが製造された。Celanese Corporationによって、CellFxフィルターロッドが調製され、供給された。これらには、様々な濾材が、時には混ぜ合わされた濾材が含まれていた。様々な織物特性を有する、それにより異なる圧力降下値を生じさせる追加のアセテート濾材が、Celanese Corporationによって製造され、供給された。ケンタッキー参照タバコ3R4Fフィルターの27mmアセテート部分(2.9/41,000)を取り出し、廃棄した。CelaneseのCellFx技術で製造されたフィルターロッドは、異なる充填材料を含んでいた。1つの選択されたフィルターロッドをタバコの燃焼面に向けて差し込み、追加のアセテート部分を選択してフィルターに差し込み、タバコの圧力降下(全吸引抵抗)値が、KRCの圧力降下値(吸引抵抗170mmH
2O±2%)と同じであることを確認した(フィルター通気孔を閉塞した状態)。Celaneseのロッドの長さは、10mmまたは12mmまたは15mmであった。アセテート部分の長さは、17mmまたは15mmまたは12mmであった。フィルターの全長は、27mmであった。異なる充填材料を含んでいるCellFxフィルターロッドを備えたタバコを測定し、生物学的評価において、対照と比べてみた。
【0074】
以下のフィルターを、実験に使用した。
【0075】
実験準備
タバコを、ブダペスト工科経済大学のOF試験所で、ISO 3308プロトコルに従ったFiltrona SM302 8−portの線形喫煙機を用いて喫煙した。タバコを、フィルター通気孔を塞いで喫煙した。タバコの煙をケンブリッジフィルター(ガラス繊維フィルター44mm、技術番号:80202851、Borgwaldt KC)に通し、得られた気相を、シリコーンチューブを通して流し込み、1.5mLの血清溶液を含有するガラス容器(インピンジャー)で泡立てた。各タバコの喫煙後、ケンブリッジフィルターパッドを、新しいものに交換し、各タバコの喫煙後、シリコーンチューブを、新しいものに交換した。
【0076】
血清抗酸化能の測定
新しい実験用タバコフィルターのフリーラジカルの結合能力の評価のために、2つの方法が採用された。
1.)Randox−トータル抗酸化キット(英国、クラムリンのRandox Lab.Ltd.,から購入)
2.)HRP−過酸化物−ベンジジン試験
【0077】
Contronorm Plus対照血清は、ドイツのAnalyticon Biotechnologies AGから供給された。タバコの喫煙および血清による煙の処理は、ブダペスト工科経済大学のOF試験所で行われ、読み出された情報の分析は、ブダペストのハンガリー科学アカデミーのエネルギーセンターの中央研究所物理学キャンパスのSzarvas博士が行った。新たに調製した試薬を使用した。対照血清を5mLの再蒸留水に溶解させた。タバコの煙(タバコ1本分)をケンブリッジフィルターに通した後、フィルター通気孔を閉め、得られた気相をISO 3308プロトコルに従って、1.5mLの溶解した血清中で泡立てた。その後、20μLの処理した血清を1mLの試薬1(組成を以下に示す)と混合し、均質化し、200μLの試薬2(組成を以下に示す)で反応を開始させた。3分後に吸光度の変化を測定した。泡立った血清の吸光度を、未反応の対照血清の吸光度と比較した。20μLの再蒸留水を用いて対照血清なしでブランク値を決定した。測定は、プレートリーダー(パラメーター:血清を5μL、試薬1を250μL、試薬2を50μL)でも行った。
【0078】
血清中の総抗酸化状態を決定するためのランドックス試験(Randox assay)
試験原理:ABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート)をペルオキシダーゼ(メトミオグロビン)およびH
2O
2と共に温置してラジカルカチオンABTS+を生成する。ABTS+は、比較的安定な青緑色を有し、600nmで測定される。添加されたサンプル中の抗酸化剤は、その濃度に比例してこの色の抑制を引き起こす。
サンプル:Contronorm対照血清。
【0079】
手順
波長:600nm
キュベット:1cm光路
温度:+37℃
測定:空気に対して
【0080】
再蒸留水を1mLのR2試薬と混合する。標準物質を1mLのR2試薬と混合する。サンプルを1mLのR2試薬と混合する。各溶液をよく混合し、必要な温度になるまで温置し、初期吸光度(A1)を読み取る。各溶液に、200μLのR3試薬を加える。混合と時間測定を同時に開始する。吸光度(A2)を正確に3分後に読み取る。%で表されるトータル抗酸化状態を試薬−血清の値を比較して確立する。
【0081】
HRP過酸化物−ベンジジン試験
試薬1:HRP(ホースラディツシュペルオキシダーゼ)9000U/L、ベンジジン塩酸塩233μmol/L、塩化ナトリウム155mmol/L
試薬2:過酸化カルバミド0.36mmol/L
溶媒:再蒸留水
器具:UV−VIS分光光度計、温度25℃
【0082】
新たに調製した試薬を使用した。対照血清を5mLの再蒸留水に溶解させた。タバコの煙(タバコ1本分)をケンブリッジフィルターに通してろ過した後、得られた気相をISO 3308プロトコルに従って、1.5mLの量の血清溶液中で泡立てた。フィルター通気孔を閉塞させた。その後、20μLの処理した血清溶液を1mLの試薬1と混合し、均質化し、200μLの試薬2で反応を開始させた。
3分後直ちに、620nmにおける吸光度の変化を測定した。泡立った血清の吸光度を未反応の対照血清の吸光度と比較した。20μLの再蒸留水を用いて、対照血清なしでブランクの結果を得た。実験の結果を表に要約する。測定は、プレートリーダー(パラメーター:血清を5μL、試薬1を250μL、試薬2を50μL)でも行った。
【0084】
1.HRP過酸化物−ベンジジン試験
【表8】
【0085】
抗酸化能、および対照と比較して改善された抗酸化能を、それぞれ
図3および
図4に示す。
【0086】
2.血清中の本発明のcavityフィルターとCelFxフィルターとの比較
【0087】
HRP過酸化物−ベンジジン試験
【表9】
【0088】
抗酸化能、および対照と比較して改善された抗酸化能を、それぞれ
図5および
図6に示す。
【0089】
3.Randox試験
Randox抗酸化キット法を用いて血清実験を繰り返した。結果を以下に示す。
【0091】
抗酸化能、対照血清に対する抗酸化能の変化、およびケンタッキータバコに対する抗酸化能の変化を、それぞれ
図7、
図8および
図9に示す。
【0092】
Randox法を用いた血清実験の結果は、CellFx構造およびcavityの両方の本発明のフィルターが、タバコの煙によって引き起こされる抗酸化状態を有意に改善することを確認した。吸引後すぐにタバコの煙が血流に入ることを考慮すると、本発明のフィルターの使用は、喫煙者に、より健康な内皮状態をもたらすことができる。
【0093】
唾液の抗酸化能の測定
喫煙後の唾液のフリーラジカル状態の変化を評価し、異なるフィルター付きタバコを比較するために、喫煙者の唾液の喫煙による変化を測定し、比較した。
【0094】
材料および方法
実験に使用されたたばこは、米国、ケンタッキー州のケンタッキー大学によって製造および組み立てられた、ケンタッキー参照タバコ3R4Fであった。参照タバコは、米国、バージニア州ナローズのCelanese CorporationによってハンガリーのOptiFilter Zrtに供給された。OptiFilter Zrtによって、タバコフィルターが組み立てられ、試験タバコが製造された。Celanese Corporationによって、CellFxフィルターロッドが調製され、供給された。これらには、様々な濾材が、時には混ぜ合わされた濾材が含まれていた。様々な織物特性を有する、それにより異なる圧力降下値を生じさせる追加のアセテート濾材が、Celanese Corporationによって製造され、供給された。ケンタッキー参照タバコ3R4Fフィルターの27mmアセテート部分(2.9/41,000)を取り出し、廃棄した。CelaneseのCellFx技術で製造されたフィルターロッドは、異なる充填材料を含んでいた。1つの選択されたフィルターロッドをタバコの燃焼面に向けて差し込み、追加のアセテート部分を選択してフィルターに差し込み、タバコの圧力降下(全吸引抵抗)値が、KRCの圧力降下値(吸引抵抗170mmH
2O±2%)と同じであることを確認した(フィルター通気孔を閉塞した状態)。Celaneseのロッドの長さは、10mmまたは12mmまたは15mmのいずれかであった。アセテート部分の長さは、17mmまたは15mmまたは12mmのいずれかであった。フィルターの全長は、27mmであった。異なる充填材料を含んでいるCellFxフィルターロッドを備えたタバコを測定し、生物学的評価において、対照と比べてみた。
【0095】
実験準備
タバコ喫煙前後の38名の被験者から唾液サンプルを採取した。ボランティアは、ブダペスト工科経済大学のOF試験所によって募集された。各ボランティアは、唾液採取、タバコ喫煙、および唾液再採取を、午前8時から9時の間に行った。 毎朝、1種類の試験用タバコを喫煙し、唾液を採取した。2015年10月19日〜11月20日の期間、各ボランティアは、6種類のタバコ(異なるフィルター)を喫煙した。喫煙者は、午前中は如何なる食べ物および飲み物を摂らず、かつ歯磨きを行わずに喫煙し、唾液を採取することを要請された。唾液を凍らし、KFKI試験所に評価用として搬送した。
【0096】
HRP過酸化物−ベンジジン試験
試薬1:HRP(ホースラディツシュペルオキシダーゼ)9000U/L、ベンジジン塩酸塩233μmol/L、塩化ナトリウム155mmol/L
試薬2:過酸化カルバミド0.36mmol/L
溶媒:再蒸留水
器具:UV−VIS分光光度計、温度25℃
【0097】
新たに調製した試薬を使用した。対照を5mLの再蒸留水に溶解した。ボランティアから採取した唾液が集められた。その後、20μLの処理した唾液を1mLの試薬1と混合し、均質化し、200μLの試薬2で反応を開始させた。3分後直ちに、620nmにおける吸光度の変化を測定した。喫煙後に収集した唾液の吸光度を、未反応対照唾液の吸光度と比較した。20μLの再蒸留水を用いて対照唾液なしでブランクの結果を得た。実験の結果を表にまとめる。
【0098】
この研究には、以下のように38名のボランティアが参加した。
結果
試験の結果を
図10および
図11に示す。
図11において、タバコ1=ケンタッキー参照、タバコ2=カーボンロッド、タバコ3=Alg−Grape Rodおよびタバコ4=Alg−Grape Cavityである。
【0099】
実験で使用したフィルターの概要
【表11】
【0101】
結論
本発明者らの血清実験は、CellFx構造およびcavityの両方における本発明のフィルターが、タバコの煙によって誘発された抗酸化能を有意に改善することを確認した。吸引後すぐにタバコの煙が血流に入ることを考慮すると、本発明者らは、これらのデータは、本発明のフィルターが喫煙者のより健康な内皮状態に寄与することができることを示唆していると考える。本発明者らの唾液実験は、本発明のフィルターがCellFx構造およびcavityの両方において、口内の抗酸化能を有意に改善することを確認した。本発明者らは、これが喫煙者の健康な粘膜に寄与することができると考える。
【0102】
実施例3.:内皮細胞および上皮細胞の煙誘発性死に対するタバコフィルター組成の影響
タバコの煙は、高濃度の酸化剤によって特徴付けられる化学物質の複雑な組み合わせである。タバコの煙が内皮バリア機能の喪失に関連する、肺血管内皮細胞の活性化を誘発することを示す論文が増加している。この喪失は、内皮機能障害の特徴である。このプロセスでは、たばこの煙に誘発される酸化ストレスが、内皮細胞の損傷をもたらし、これが単核球および活性化マクロファージの侵入を可能にする。内皮バリアの損傷は、タバコの煙の曝露によって肺傷害の早期要因を構成することさえある。
【0103】
タバコの煙は、上皮細胞のアポトーシスを介して肺胞組織のアポトーシスを誘発することも示されており、肺気腫などの慢性肺疾患の発症を助長している。肺内のすべての細胞型は、酸化的損傷によって損傷する恐れがあるが、上皮細胞は、肺における防御の第一線を構成するという点で酸化体傷害の主な標的である。したがって、タバコの煙による上皮傷害が、喫煙に関連する肺疾患の病因における重要なプロセスであることは驚くべきことではない。
【0104】
数多くの研究は、タバコの煙およびタバコの煙で損傷した細胞に由来する反応性の高い煙成分、揮発性カルシノゲンおよび活性酸素種(ROS)が、活性化された上皮細胞における細胞死およびさらなるROS産生を介した上皮傷害を含む肺傷害を助長していることを示している。従って、タバコの煙による傷害からの上皮の保護は、タバコの喫煙に関連する多数の肺疾患の取り扱いにとって重要であると考えられる。本発明者らの調査によると、タバコのフィルターの組成は、タバコの煙との最初の細胞系の遭遇を表す上皮細胞の誘発死および内皮細胞の損傷に対するタバコの煙の影響を改変する際に、重要であり得ることを示した。内皮細胞だけでなく上皮細胞に対して、最も有害となり得るタバコの煙成分を、より効果的に除去することができるフィルターは、タバコの煙誘発性肺損傷を減少させることができるにちがいない。
【0105】
材料、主題および方法
実験に使用されたたばこは、米国、ケンタッキー州のケンタッキー大学によって製造および組み立てられた、ケンタッキー参照タバコ3R4Fであった。このタバコは、米国、バージニア州ナローズのCelanese CorporationによってハンガリーのOptiFilter Zrtに供給された。OptiFilter Zrtによって、タバコフィルターが組み立てられ、試験タバコが製造された。Celanese Corporationによって、CellFxフィルターロッドが調製され、供給された。これらには、様々な濾材が、時には混ぜ合わされた濾材が含まれていた。様々な織物特性を有する、それにより異なる圧力降下値を生じさせる追加のアセテート濾材が、Celanese Corporationによって製造され、供給された。ケンタッキー参照タバコ3R4Fフィルターの27mmアセテート部分(2.9/41,000)を取り出し、廃棄した。CelaneseのCellFx技術で製造されたフィルターロッドは、異なる充填材料を含んでいた。1つの選択されたフィルターロッドをタバコの燃焼端面に向けて差し込み、追加のアセテート部分を選択してフィルターに差し込み、タバコ(フィルター通気孔を閉塞した状態)の圧力降下(全吸引抵抗)が、KRCの圧力降下値(吸引抵抗170mmH
2O±2%)と同じであることを確認した。Celaneseのロッドの長さは、10mmまたは12mmまたは15mmのいずれかであった。アセテート部分の長さは、17mmまたは15mmまたは12mmのいずれかであった。フィルターの全長は、27mmであった。異なる充填材料を含んでいるCellFxフィルターロッドを備えたタバコを測定し、この生物学的評価において、対照と比べてみた。
【0106】
内皮細胞のバリア機能は、健康な肺機能にとって不可欠であるため、内皮細胞は、COPDの発症において重要な役割を果たしている。したがって、内皮バリア機能の喪失は、COPDを含む肺疾患の白血球浸潤特性の徴候を助長する恐れがある。内皮細胞における煙誘発性細胞死および炎症は、COPDの発症を助長している。ここでは、本発明者らは、様々なタバコフィルター組成物を用いて、煙の組成を変更することができ、有害な生物学的影響を減らすことができることを示している。
図2は、アルギニット/ゼオライト/炭素/ブドウ混合成分を含有するフィルターを通した煙が、内皮細胞に害を与えることが少ないことを示している。
【0107】
上皮細胞は、肺組織の重要な成分であり、肺がんおよびCOPDの発症に重要な役割を果たしている。A549肺上皮細胞株を用いて、本発明者らは、アルギニット/ゼオライト/炭素/ブドウ混合成分を含有するフィルターが上皮細胞死を有意に減少させ、ひいてはCOPDリスクの低下をもたらすことができることを示した。その結果は、アルギニット/ゼオライト/炭素/ブドウ混合成分を含有する本発明のフィルターが、煙のいくつかの成分を減じ、したがって肺の上皮細胞および内皮細胞における損傷をより少なくすることを示した。上皮細胞および内皮細胞を保護することは、タバコの煙誘発性COPDおよび他の呼吸器疾患の発症を減弱することに寄与することができる。
【0108】
タバコの煙抽出物の調製
タバコの煙抽出物の調製を以前に記載されたように行った(Chen et al.;Chen ZH、Lam HC、Jin Y、Kim HP、Cao J、Lee SJ、Ifedigbo E、Parameswaran H、Ryter SW、Choi AM.「オートファジータンパク質微小管関連タンパク質1軽鎖−3B(LC3B)は、タバコの煙誘発性肺気腫の間に外因性アポトーシスを活性化する」Proc Natl Acad Sci USA.2010 Nov 2;107(44):18880−5)。タバコの煙抽出物の調製のために、Kentucky 3R4F researchの参照フィルター付きタバコ(ケンタッキー州、レキシントンの、ケンタッキー大学のタバコ研究所)を、異なる種類のフィルターを使用する蠕動ポンプ(VWR International)を用いて喫煙した。全ての煙が捕集された。各タバコを15mmの吸い残しが残っている状態で4分間喫煙し、シリコーンチューブを介して7.5mLの細胞成長培地を通して泡立てた。この溶液を100%強度のタバコの煙抽出物と見なし、ピーエイチ(pH)を7.45に調整し、調製後15分以内に使用した。各タバコを喫煙した後、シリコーンチューブを新しいものに交換した。
【0109】
HUVECおよびA549細胞の培養並びに処理
HUVEC細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞)を、米国、カルフォルニア州アナハイムのLonza カタログ番号:C2519Aから取得し、内皮成長培地(米国、カルフォルニア州アナハイムのLonza)で、5%CO
2を含む加湿雰囲気下で培養した。細胞死分析のために、5×103/wellのHUVECを、成長因子および2%血清を含有する内皮成長培地中の96ウェルプレートに播種した。各実験の前に、培地を、成長因子を含まず、1%血清を含有する新鮮な培地と交換し、10%煙抽出物で24時間温置した。
【0110】
A549−ヒト腺がんの肺胞基底上皮細胞は、欧州認証細胞培養コレクション(ECACC)(細胞株:A549カタログ番号:86012804)から得られたものである。A549細胞を、5%CO
2を含む加湿雰囲気下で、10%FCSを含有するDMEM培地で培養した。細胞死分析のために、5×103/wellのA549細胞を、10%FCSを含有するDMEM培地中の96ウェルプレートに播種し、10%CS抽出物で24時間処理した。
【0111】
細胞生存率試験
MTT試験
細胞を、図に示すような開始密度で96ウェルプレートに播種し、煙で処理する前に一晩培養した。潜伏期間後、培地を除去し、適切な量のMTT溶液(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)(Chemicon Inc.,El Segundo,CA)(14)を含むRPMIに4時間入れ替えを行った。MTT反応を、10mMの最終濃度で培地にHClを添加することによって終了させた。MTTから形成された水不溶性青色ホルマザン色素の量は、生存細胞の数に比例し、10%SDS中に青色ホルマザン沈殿物を溶解させた後、波長550nmで、Anthos Labtech 200酵素結合免疫吸着検定リーダーにより測定した。すべての実験は、少なくとも6回の複製を行い、3回繰り返した。
【0112】
スルホローダミンB(SRB)試験
細胞を上述のように、96ウェルプレート中で24時間温置した。次いで、培養培地を捨て、100μLの冷たい10%(w/v)トリクロロ酢酸を添加することにより、その場で細胞を固定し、4℃で30分間温置した。上清を捨て、プレートを水道水で5回洗浄し、24時間空気乾燥を行った。1%酢酸に0.4%(w/v)のSRB溶液(100μL)を加え、プレートを室温で20分間温置した。染色後、未結合の色素を1%酢酸で5回洗浄することにより除去し、プレートを空気乾燥した。その後、固着した染色を10mMトリス(pH10.5)(200μL)で可溶化し、Promega Glomaxマルチモード検出システムを用いて600nmでバックグラウンド測定値を差し引いて、560nmで96ウェルプレートリーダーにより吸光度を読み取った。
【0113】
結果:肺上皮細胞およびヒト内皮細胞に対する煙の影響
上記のように、肺上皮細胞は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症において重要な役割を果たしている。タバコのフィルター組成の変更は、従来のタバコからの煙と比較して、上皮細胞死を減少させる煙を潜在的に発生させる可能性がある。したがって、本発明者らは、煙誘発性上皮細胞死に対する異なるフィルター組成の役割を分析した。
図1は、異なるフィルター組成物がA549細胞における細胞死に及ぼす効果を示す。
図1に示す結果は、細胞培養に適用された10%煙抽出物を用いて得られた。 しかし、煙濃度の増加がタバコの煙の増殖影響を示したため、10%の煙濃度を用いた結果は、より合理的であると考えられる。
図12のデータは、アルギニット/ゼオライト/ブドウの皮および種に含まれる成分(GSSG)、アルギニット/GSSG、およびアルギニット/カーボンフィルターを含む本発明の3つのフィルターが、A549上皮細胞の煙誘発性死を有意に減少させることを示している。
【0114】
図13は、初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の煙誘発性細胞死に対する異なるフィルター組成の効果を示している。ここでは、本発明者らは、各フィルターについて測定ごとに4本のタバコを使用し、6回繰り返した。これらのデータは、フィルター中に様々なフィルター材料を含む本発明のフィルターが、煙誘発性内皮細胞死を有意に減少させることを示している。
【0115】
これらの実験は、本発明のタバコフィルターが、タバコの煙に曝された上皮組織および内皮組織の両方の生存パターンを有意に変化させることを示した。このことは、タバコの煙に誘発される呼吸器疾患および心血管疾患に対抗するのに有用となり得るものである。
【0116】
実施例4.:ヒト3D肺組織モデルにおけるタバコの煙曝露による炎症性サイトカインの産生
タバコの喫煙は、肺の多くの複雑な疾患に関連する主要な要因である。煙の曝露は、炎症性サイトカインの放出を通じて炎症性応答を誘発する恐れがある。マクロファージは、炎症性応答において重要な役割を果たしており、インターロイキン−8(IL−8)およびインターロイキン−6(IL−6)の特定の供給源である。IL−8は、多機能サイトカインであり、主に好中球化学誘引物質として作用するが、IL−6は、COPD患者において代謝障害を伴っている。両方のサイトカインは、COPD、肺線維症または喘息などの多くの肺疾患において重要な役割を果たすので、本発明者らが最近開発した複雑な肺モデルシステムにおいて、これらのサイトカインのレベルに対する新規のタバコフィルターの効果を調べることは合理的であると思われた。肺における炎症過程は、いくつかのサイトカインの産生および好中球の気道への動員に関連している。IL−6およびIL−8は、炎症反応の開始および広がりにおいて重要な役割を果たしている。タバコの煙の曝露は、炎症誘発性サイトカインの分泌を促進することを介して炎症を活性化し、慢性炎症を引き起こす恐れがある。タバコの煙は、気道の破壊やガス交換面の喪失などの臓器レベルでの変化も引き起こし、肺機能の障害につながる恐れがある。これらのすべての負の影響は、COPDまたはがんを含む重篤な疾患発生を助長する恐れがある。試験方法として3D組織培養を用いることにより、機能的な組織単位として作用する細胞の組み合わせを単細胞と比較して評価することができる。肺組織は、特有の細胞構成を有する上皮細胞を含んでいる。これらの細胞は、特殊な細胞−細胞接触、偏極した形態を有しており、底にある基底膜に付着している。これらの特徴を維持することは、増殖、分化、生存および分泌を含む組織の正常な機能にとって不可欠である。細胞は、3D環境において自然に増殖する。この環境内の細胞の空間的配置は、それらが互いに、かつ、それらの微小環境とどのように相互作用するかに影響を与える。次に、これらの細胞内シグナルは、形態および一連の細胞機能に影響を及ぼす。したがって、薬物候補または毒性物質について細胞系分析法を用いて試験をする場合、用いる培養方法は、可能な限り最も自然な生体内の代表形態を模倣すべきである。創薬のために、最も自然に細胞成長について組織を模倣する方法は、おそらく3Dである。生体外でのタバコの煙の試験は複雑である。多数の細胞株が評価されているが、すべてに独自の制約を有している。IL−8およびIL−6は、いくつかの炎症細胞と肺細胞によって産生される恐れがある。しかし、一つの特定の細胞型の調査では、煙曝露の全体的な影響を誤って伝える恐れがある。2次元細胞培養で増殖する細胞は、いくつかの種類の製薬上の試験で日常的に用いられるが、これらの生体外の状況は、3次元モデルシステムの場合に比べて生体内の状況にあまり関連していない。3次元肺細胞培養は、ヒト肺と密接に一致する構造および発現パターンを有している生体内で起こるものをより代表している。細胞配列が特定の刺激の所与の応答に影響を及ぼすことができるとすれば、肺は複雑な器官であるため、複雑なモデルシステムにおける生物学的プロセスを調べる必要がある。Humeltisの3D肺組織は、気道路の主要な細胞を表す複数の細胞型を組み合わせている。
【0117】
方法
正常な初代ヒト小気道上皮細胞(SAEC)および正常ヒト肺線維芽細胞(NHLF)は、Lonzaから購入した。これらの細胞は、異なる性別および年齢の匿名のドナーから分離されたものである。ヒト末梢単球を、CD14陽性マイクロビーズ(MicroBead)分離キット(Miltenyi Biotec)によって分離した。3D培養のために、SAECおよびNHLF細胞を1:1の比(SNスフェロイド)で混合し、ヒト単球もこれらのヒト初代細胞(SNMスフェロイド)と混合した。細胞を低吸着96ウェルU底プレート上に播種した。スフェロイドは、測定前にタバコ煙抽出物(CSE)で48時間処理した。実験に使用されたタバコは、米国、ケンタッキー州のケンタッキー大学によって製造および組み立てられた、ケンタッキー参照タバコ3R4Fであった。このタバコは、米国、バージニア州ナローズのCelanese CorporationによってハンガリーのOptiFilter Zrtに供給された。OptiFilter Zrtによって、タバコフィルターが組み立てられ、試験タバコが製造された。Celanese Corporationによって、CellFxフィルターロッドが調製され、供給された。様々な織物特性を有する、それにより異なる圧力降下値を生じさせる追加のアセテート濾材が、Celanese Corporationによって製造され、供給された。ケンタッキー参照タバコ(KRC)3R4Fフィルターの27mmアセテート部分(2.9/41,000)を取り出し、廃棄した。CelaneseのCellFx技術によって製造され、異なる充填材料を含むフィルターロッドが、タバコの燃焼面に向けて差し込まれた。追加のアセテート部分を選択してフィルターに差し込み、タバコ(フィルター通気孔を閉塞した状態)の圧力降下(全吸引抵抗)値が、KRCの圧力降下値(吸引抵抗170mmH
2O±2%)と同じであることを確認した。Celaneseのロッドの長さは、12mmであった。アセテート部分の長さは、15mmであった。フィルターの全長は、27mmであった。合計2つの異なるフィルターが製造され、KRCにそれらのフィルターが装着された。本発明のフィルター、すなわち、異なる充填材料を含むCellFxフィルターを備えたタバコからの煙を測定し、生物学的評価における対照と比較した。タバコの分類は以下の通りであった。
タバコ1:ケンタッキー参照シガレット(KRC)
タバコ2:フィルターカーボンモノロッド(CelRod−12−C)
タバコ3:フィルターアルギニット/グレープロッド(CelRod−12−AG)
【0118】
CSEは、ハイドロテックバキュームポンプ(BioRad)により供給された一定の気流で、2本のタバコからの煙を、合計2分間、10mLの細胞培養培地に通して泡立てることによって調製した。暴露した培地を、0.22μmのシリンジフィルターを用いて無菌状態下でろ過した。溶解した微粒子の光散乱は、320〜350nmの範囲内で有意な差異を示さなかった。この溶液を100%Eとみなした。CSEは、各実験について30分以内に調製した。CSE(0.5%)を48時間、3次元組織培養に適用した。48時間後、3Dミクロ組織によって産生された炎症性サイトカインを、BD Cytometric Bead Array Human Inflammatory Cytokine Kit(BD Biosciences)によって上澄み培地で測定した。このキットは、組織培養上澄み中のIL−8およびIL−6タンパク質レベルの定量的測定値を提供する。この方法は、既知のサイズの蛍光抱合型マイクロビーズおよび結合サイトカインの量に比例するシグナルを提供する検出試薬に基づいている。3時間の温置の間、捕捉マイクロビーズは、検出試薬と共に上澄みからのサイトカインとの複合体を形成する。蛍光強度を、BD FACS DIVA software V6を用いたFACS Canto IIフローサイトメーター(ベルギー、エーレムボーデゲムのBD Immunocytometry Systems)で分析し、データを、FCS Express V3ソフトウェアを用いて分析した。結果は、IL−6とIL−8との結合後の抱合型マイクロビーズの平均蛍光強度を表している。
【0119】
結論
炎症性サイトカインの産生をフィルターの種類の関数として調べるために、スフェロイドを、標準的なタバコおよび2つの異なるフィルターを含むタバコから抽出したCSEを用いて、48時間、処理を行った。データは、3番目のフィルター付きタバコから抽出したCSEで処理後のマクロファージ含有集合体においてIL−8およびIL−6の両方が減少し、炎症反応を開始する能力が低下したことを示している。その差は、両方のサイトカインについて統計的に有意であることが判明した。
【0120】
図14は、3つの細胞型の集合体(SAEC、線維芽細胞およびマクロファージ)において、48時間後に肺スフェロイドを含有するマクロファージの上澄み中のヒトIL−8タンパク質を示している。
【0121】
図15は、48時間後に肺スフェロイドを含有するマクロファージの上澄み中のヒトIL−6タンパク質を示している。
【0122】
サイトカインレベルの減少は、マクロファージを含む集合体においてのみ、かつ48時間後にのみ、統計的に有意であった。 線維芽細胞および初代上皮細胞のみ(マクロファージを含まない)によって形成された集合体では、サイトカインレベルの減少は、24時間または48時間後でも有意ではなかった。3番目のタバコは、両方のサイトカインのレベルを、対照培地で測定されたレベルまで低下させていた。
【0123】
結論
IL−6およびIL−8は、炎症反応の開始および広がりにおいて重要な役割を果たしている。タバコの煙の曝露は、組織の損傷を引き起こすことで炎症を活性化し、炎症誘発性サイトカインの分泌を促進し、慢性的炎症を引き起こす恐れがある。3Dヒト組織培養は、生体内でのヒト組織の生化学的および病理学的プロセスと非常に類似していることは、ほぼ間違いないことである。この点に関して、煙を3番目のフィルターでろ過した場合に、免疫学的に活性な集合体(マクロファージを含む)において、調査されたサイトカインの統計的に有意な減少が、生体内での場面においても有益であると仮定することは合理的であり得る。データは以下のように要約される(SNは、初代上皮細胞および線維芽細胞を含む集合体を表し、一方、SNMは、上皮細胞、線維芽細胞およびマクロファージを含む集合体を表す)。
【0125】
まとめ
上記の実施例は、アルギニットが、タバコフィルターに単独で、または上述のような他の既知の成分と組み合わせて使用される場合に、特に有効であることを明確に示している。本発明の予期せぬ、かつ新規な特徴として、タバコフィルターにおけるアルギニットの使用は、唾液中の活性酸素種(ROS)を有意に少なくすること、血清中のROS形成を有意に少なくすること、内皮損傷をより少なくすること、肺上皮損傷をより少なくすること、グルタチオンレベルを有意に高くすること、肺組織損傷をより少なくすること、および、肺組織における炎症をより少なくすることをもたらした。
【0126】
選択された生体外の生物学的試験は、主要な喫煙関連疾患の原因について文書化されている生体内の生物学的経路との明確かつ十分に確立された関係を有する点で申し分のないものである。さらに、いずれの試験においても、本発明のフィルターは、ケンタッキー参照フィルターから生成された煙よりも生体外試験において、はるかに損傷の少ない煙を生成することを示した。したがって、これらの結果は、これらのフィルターを備えたタバコが、タバコの喫煙の現在の健康影響を十分に減少させる可能性があるという説得力のある証拠を提供している。
【0127】
さらに、実施例は、アルギニット単独でさえ、既知の濾材よりも有意に改善された濾過特性を有し、アルギニットおよび先行技術に属する濾材が相乗的に作用することを示した。したがって、実施例に記載された組み合わせを含んでいない場合であっても、当業者にとっては、特定の技術分野におけるアルギニットと公知の濾材との任意の組み合わせが、同じ特性を有することは明らかである。したがって、本出願は、そのような組み合わせのすべてを明白に包含している。