特許第6831399号(P6831399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831399複合圧延押し出し方法およびそれを実行するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831399
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】複合圧延押し出し方法およびそれを実行するための装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/12 20060101AFI20210208BHJP
   B21B 1/46 20060101ALI20210208BHJP
   B21B 3/00 20060101ALI20210208BHJP
   B22D 11/06 20060101ALI20210208BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20210208BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20210208BHJP
   B22D 11/22 20060101ALI20210208BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20210208BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20210208BHJP
   C22F 1/04 20060101ALN20210208BHJP
【FI】
   B22D11/12 A
   B21B1/46 C
   B21B3/00 J
   B22D11/06 330A
   B22D11/12 D
   B22D11/124 F
   B22D11/16 104V
   B22D11/22 B
   !C22C21/00 A
   !C22C21/00 E
   !C22F1/00 661A
   !C22F1/04 E
   !C22F1/04 G
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-562656(P2018-562656)
(86)(22)【出願日】2017年4月17日
(65)【公表番号】特表2019-523710(P2019-523710A)
(43)【公表日】2019年8月29日
(86)【国際出願番号】RU2017000239
(87)【国際公開番号】WO2017209647
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2020年1月21日
(31)【優先権主張番号】2016121617
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】518108140
【氏名又は名称】オプシチェストボ エス オグラニチェンノイ オトヴェストヴェンノストユ “オベディネンナヤ カンパニア ルサール インゼネルノ−テクノロギケスキー チェントル”
【氏名又は名称原語表記】OBSHCHESTVO S OGRANICHENNOY OTVETSTVENNOST’YU ‘OBEDINENNAYA KOMPANIYA RUSAL INZHENERNO−TEKHNOLOGICHESKIY TSENTR’
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マン,ヴィクター クリストヤノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】フロロフ,ヴィクター フェドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】サルニコフ,アレクサンドル ヴラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ペレーヴィン,アレクサンドル ゲンナデヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ガリエフ,ロマン イルスロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】シドロフ,アレクサンドル ユレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】シデルニコフ,セルゲイ ボリソヴィチ
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−169450(JP,A)
【文献】 特開昭54−056066(JP,A)
【文献】 特開昭63−313635(JP,A)
【文献】 特開昭55−139113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00〜11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または合金の複合圧延押し出し方法であって、
鋳造鋼片を結晶化する工程と、
2つのロールによって形成されたワークゲージ内に、予め設定した温度の前記鋳造鋼片を送る工程であって、前記鋳造鋼片の圧延を実行し、その後ダイへ移動し、それを通じて鋳造押し出しが実行される、ところの工程と、
を備え、
前記ワークゲージ内に前記鋳造鋼片を送る前に、前記鋳造鋼片の温度が付加的な加熱または冷却によって調節されつつ、既製の押し出し製品が得られ、
前記ワークゲージ内への前記鋳造鋼片の送りが、押し出し軸に関してある角度でまたは平行に実行され、
前記鋳造鋼片が、前記ワークゲージ内に送られるとき、前記ロールの表面と前記ダイとの間に形成されるギャップを通じて、前記鋳造鋼片を押し出すことにより、金属または合金のクラッド層がロールの表面上に作成される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
得られる前記既製の押し出し製品は、5.2から16.8の相対伸張率を有する、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
金型内への金属の鋳込みが前記金型の水平軸線に平行に実行される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記鋳造鋼片の温度は、前記ロールの表面に送られる前に、380から420℃に維持される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記鋳造鋼片の温度は、前記ロールの表面に送られる前に、400から420℃の範囲に維持される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
その温度が設定温度より低ければ、前記鋳造鋼片は誘導加熱される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
その温度が所望の温度より高ければ、前記鋳造鋼片はその表面に冷媒を供給することにより冷却される、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記鋳造鋼片は、押し出し軸線に対して、0から20度の角度で、前記ロールの表面に送られる、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記鋳造鋼片は、前記押し出し軸線に対して、10から20度の角度で、前記ロールの表面に送られる、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
使用される金属はアルミニウムであり、使用される合金はアルミニウム合金である、ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、金属変形処理の分野に関し、圧延および押し出しを組み合わせた方法によって、主に、アルミニウムおよびアルミニウム合金である押し出し材、ワイヤロッド、および、扇形状導体を製造するのに使用される。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造法の既知の装置は、2015年4月10日に発行されたロシア国特許第2547775号、B22D11/22に記載されている。金属製品用の連続鋳造マシンは、金型、金型から出てくる金属鋳造製品を案内するためのローラを有する多くの制限ガイド部を有し、それは、混合タイプのひとつ以上の制限ガイド部を具備し、その各々は金属鋳造製品のひとつの側面に配置されたひとつ以上のガイドローラ、および、金属鋳造製品の反対側に配置された絶縁および/または反射および/または加熱パネルを有し、混合タイプの制限ガイド部は、ローラを有するひとつ以上の連続する制限ガイド部内に配置されるか、ローラを有する制限ガイド部の間に配置された状態にある。ロシア国特許第2547775号に記載のマシンを使った金属製品の連続鋳造方法は、ローラを有する制限ガイド部および混合タイプの制限ガイド部によって、連続鋳造マシンの金型から出てくる金属鋳造製品を案内する工程を有し、そこで、6〜7m/分以上から4〜5m/分以下の鋳造速度の減少を伴って、金属鋳造製品は、少なくともひとつの制限ガイド部をローラに置換することによって混合タイプの制限ガイド部を使って案内される。この発明により、鋳造速度が変化する場合の、金型出口において製造製品の熱状態調節および温度損失の削減が可能となる。
【0003】
この発明の欠点は、付加的なサポートロールの使用を伴う鋳造バーを製造する方法が、変形処理のプロセスを与えず、バーおよび押し出し物の形状の最終製品を得ることができない点にある。
【0004】
圧延ストリップ金属および対応する圧延ミルの周知の方法は、2015年11月20に発行されたロシア国特許第2568550号、B21B1/46に記載されている。それに従えば、ストリップ製造ユニットは、
ほぼ3.5m/分から6m/分の範囲の低速で、薄い平板の連続鋳造を与える、金型を取り付けた鋳造マシンと、
急速加熱ユニットと、
リバースタイプの2つの組みあわされたスタンドに取り付けられたステッケル圧延ミルと、
新しく凝固した薄い平板の厚みを減少させることができる、少なくともひとつの圧延スタンドであって、鋳造マシンのすぐ下流でかつ急速加熱ユニットの上流の製造ラインに設置されたスタンドとを有する。急速加熱ユニットは、粗いスタンドを通過するとき、薄い平板の温度損失を少なくとも補償する誘導加熱炉の形式で作成され、また、誘導加熱炉の下流側の製造ラインにおいて、少なくとも2つのコアを取り付けた巻き取りおよび巻き戻しデバイスが存在し、それは、鋳造マシンから出てくるストリップを巻き取る機能、または、ステッケル圧延ミルへ送り出すために巻き戻す機能を交互に実行ことを可能にする。
【0005】
ストリップの製造方法は、25mmから50mmの範囲の厚さを有する金型内の薄い平板を、3.5m/分から6m/分の範囲の速度で、連続鋳造する工程と、
巻き取りを可能にしつつ、10mmから40mmの値まで厚さを減少させるよう、少なくともひとつの粗いスタンド内で薄い平板を圧延処理する工程と、
圧延操作工程と、
冷却操作工程と、
ストリップの形状で、最終製品の巻き取り操作を行う工程と、
鋳造操作に続く製造ライン部で、および、粗い圧延操作中に、少なくともひとつの熱損失を補償するよう電磁誘導によって急速加熱操作工程と、
上述した急速加熱操作の後に実行される、2つのコアを具備する巻き取りおよび巻き戻しデバイスによって実行される巻き取りおよび巻き戻し工程と、
を有し、
同時に、上述した巻き取りおよび巻き戻しデバイスにより巻き戻されたストリップの圧延の上記操作は、3つ以下のダブルパス内の2つのリバーシブルスタンドが与えられたステッケル圧延ミルで実行され、1.2mmから16mmの厚さを有するストリップ形式の最終製品を得ることができる。2つのスタンドステッケル圧延ミルの第1のスタンド内の圧延パスの各々内の厚さ損失割合は、25%から50%であり、一方第2スタンド内のストリップの厚さ損失割合は、30%以下である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロシア国特許第2568550号に記載の発明の欠点は、提案された鋳造ミルの設計および方法は、バーまたは小さい断面形状の鋳造製品を製造することができないという点である。
【0007】
周知の金属押し出し方法は、ロールの表面上での溶解金属結晶化、ロールでの金属圧延、および、ダイ内への押し出しがひとつのプロセス操作で組み合わされたものである(ロシア国特許第2519078号)。押し出しステージにおいて、直接押し出し、角度押し出し、および、反復直接押し出しが、最終製品の形成と組み合わされたシーケンスで実行される。こうして、高いレベルで累積した変形が達成され、半最終製品特性の要求された均一性が与えられる。
【0008】
周知の方法の欠点は、均等チャネル押し出し処理において、ツールに生じる大きいパッシブ摩擦力を克服することの要求による性能の劣化である。この場合、変形ゾーン内のアクティブ摩擦力のパワーは、ロールの設計によって制限される。付加的に、鋳造、圧延、および、均等チャネル角度押し出しの処理を組み合わせたとき、変形加熱の結果として生成される大量の熱を除去することが困難となり、それはツールの摩耗耐性を減少させ、かつ、使用可能なアルミニウム合金の範囲を制限する。
【0009】
技術的本質による提案された方法のプロトタイプ、および達成された結果は、非鉄金属の連続鋳造および押し出しの複合処理である(ロシア国特許第2100136号)。それは、回転金型内の溶解金属結晶化、ロール内の金属圧延、ダイ押し出し、冷却、および、押し出された半最終製品の巻き取りを含む。
【0010】
この方法の欠点は、ロールの上流の鋳造バーの温度安定エレメントの欠如による押し出された半最終製品の特性の不安定性である。これらのダイ上のくさび形状のキャビティは、ダイ製造プロセスをより困難にし、かつ、ツールの製品寿命を短くする(低い摩耗抵抗)。
【0011】
ワイヤロッドの連続鋳造、圧延、および押し出し用の類似のデバイスも周知である(ロシア国特許第2559615号)。そのデバイスは、金属および合金から固体および中空の押し出し製品を製造するのに使用される。
【0012】
この類似のデバイスの欠点は、液体金属がワークゲージ内に供給されたとき、酸化物、非金属含有物、およびガス空孔の発生が可能になるということである。これは、半最終製品の品質を劣化させ、最終製品の特性を不均質にし、例えば最大抗張力および相対伸張率などの機械的特性に悪影響を及ぼす。ロール上での金属結晶化中に、低効率の冷却プロセスは、高い性能を達成しえない。
【0013】
技術的意味で提案されたデバイスに最も近いものは、長尺製品の圧延および押し出しを連続的に組み合わせたデバイスである(ロシア国実用新案第122315号)。このデバイスは、圧延および押し出しを連続的に組み合わせた方法によって、主に非鉄金属および合金のワイヤロッド、バー、および比較的小さい断面積の形状で長尺製品を製造するのに使用される。圧延および押し出しを連続的に組み合わせたデバイスは、ワークゲージを形成する溝が形成されたロールおよびフィン付きロールを有し、その出口において、クランプデバイスを有するダイフォルダが設置されている。ダイフォルダの溝内で、冷却チャネルを有する直線台形プリズム形式のダイが設置されており、ダイは、いくつかの成分から成り、キャリブレーションおよびガイドパーツを有する。
【0014】
プロトタイプの設計の欠点は、ダイフォルダの設計が、押し出し軸の回りの回転によってダイの置換可能部品の固定を与えないということである。これは、移動可能ロールの接触面上に均一なギャップを与えるのを不可能にし、固定ダイおよびスチール同士の接触が、これらの部品の集中的な摩耗を生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明の技術的結果は、得られた長尺製品の品質を改善し、その機械的特性の均一性を増加させ、かつ、消費エネルギーを減少させ、内部欠陥を除去し、ロールおよびダイの製品寿命を増加させ、かつ、押し出し処理での金属のリターンロスを削減することにより、鋳造鋼片の圧延および押し出しプロセスの効率を増加させることを含む。
【0016】
この技術的結果は、提案する鋳造鋼片の複合圧延押し出し装置によって達成され、当該装置は、
ワークゲージを形成する無限長の溝形成ロールおよびフィン付きロールを形成する回転金型であって、その出口において、ダイがダイフォルダの溝内に設置され、鋳造鋼片の温度制御デバイスがロールの上流に設置され、一方ガイドエレメントがワークゲージの上流に配置され、押し出し軸に対してある角度でまたは平行に鋳造鋼片を固定できるように設置され、フィン付きロールフィンの上部は、T字形状の表面を有し、溝が形成されたロールはいくつかのフィンを有し、フィン付きロールは、フィンおよび溝が互いに関してロールのラビリンス結合を形成するように、互いに対して配置されたいくつかの溝を有し、ダイは、ダイおよびダイフォルダ内に作成された溝およびフィンを嵌合することにより、ダイフォルダに関してその位置を固定することが可能であるように形成され、ロールの表面とワークゲージ内のダイとの間にギャップが存在する。
【0017】
提案されるデバイスは、特別の設計バージョンと相補的である。
【0018】
提案されたオプションに従い、ワークゲージ内の鋳造鋼片の変形ゾーンと接触するダイのワーク部は、T字形状断面を有する。
【0019】
ダイフォルダ内に固定されたダイのパーツは、円筒形状を有する。
【0020】
提案されたオプションのひとつに従い、ロール溝の側面とダイの接触面との間にギャップが形成され、その幅は、0.2から0.5mmである。
【0021】
提案されたオプションのひとつに従い、ギャップはロール溝の側面とダイの非接触面との間に形成され、その幅は、0.2から3.0mmである。
【0022】
提案されたオプションのひとつに従い、ダイは、ワークゲージ内に設置され、ダイの表面とロールフィンの頂面との間にギャップを有し、ダイの表面とロール溝の底面との間にギャップを有し、これらのギャップの幅は1.0から2.0mmである。
【0023】
いくつかの内部冷却チャネルは、ロールの全周囲に作成され、冷媒を供給および除去するためのいくつかのチャネルは、ダイフォルダ内のダイの出口にも作成される。
【0024】
提案されたオプションのひとつに従い、鋳造鋼片の温度を制御するためのデバイスは、複合アセンブリであり、それは、加熱デバイスおよび冷却デバイスを有する。加熱デバイスは、特定の値以下の温度で鋳造鋼片の加熱を誘導するように設計されたインダクタである。冷却デバイスは、クーラーであってよく、鋳造鋼片の温度が特定の温度を超えた場合、冷媒が注入される。
【0025】
フィン付きロールのフィンは、フィンの幅に対するベルトの高さの比率が、0.07から0.08となるように構成される。
【0026】
提案されたオプションのひとつに従い、T字形状断面を有するダイのワーク部は、ダイの幅に対するベルトの高さの比率が0.08から0.09と等しい。
【0027】
押し出し軸に関する鋳造鋼片の送り角度は、0から20度であり、好適には5から20度であり、さらに好適には10から20度である。
【0028】
提案されたオプションのひとつに従い、ロールのT字形状フィンの接触面と、ロールの溝の側面との間のギャップは、幅が0.2から0.5mmで形成される。同時に、ロールのT字形状のフィンの非接触面と、ロール溝の側面との間のギャップは、幅が2.0から3.0mmで形成される。
【0029】
提案されたオプションのひとつに従い、クレームされたデバイスは、付加的に、押し出された長尺製品を冷却するためのデバイスを含む。
【0030】
この技術的結果は、金属または合金の複合圧延押し出し方法を通じても達成可能である。当該方法は、
鋳造鋼片を結晶化する工程と、
鋳造鋼片が予め設定した温度で、2つのロールによって形成されたワークケージ内に送られる工程であって、そこで鋼片圧延が実行され、その後ダイへ送られ、それを通じて鋳造押し出しが実行される、ところの工程と、
ワークゲージ内に鋳造鋼片を送る前に、鋳造鋼片の温度が、付加的加熱または冷却によって調節され、既製の押し出し製品が得られる工程と、
ワークゲージ内への鋳造鋼片の送りが、押し出し軸線に対してある角度で、またはそれと平行に実行される工程と、
を有し、
鋳造鋼片がワークゲージ内に送られたたとき、金属または合金のクラッド層が、ロールとダイとの間に形成されたギャップを通じて、鋳造鋼片を押し出すことによって、ロールの表面に作成される。
【0031】
提案する方法は、5.2から16.8の相対伸張率を有する既製品の長い押し出し製品を得ることを可能にする。
【0032】
提案する方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を圧延するために使用される。
【0033】
提案するオプションのひとつに従い、金属の金型内へ鋳込みは、金型の水平軸に平行に実行される。
【0034】
ロールの表面上への送り前の鋳造鋼片の温度は、380℃から420℃の範囲、好適には、400から420℃の範囲に維持される。
【0035】
提案されるオプションのひとつに従い、その温度が設定された温度より低ければ、鋳造鋼片は誘導加熱され、または、その温度が所望の値より高ければ、その表面に冷媒をスプレーすることにより冷却される。
【0036】
提案されたオプションに従い、ロールの表面への鋳造鋼片の送りは押し出し軸に対して、0から20度の範囲、好適には5から20度の範囲、さらに好適には10から20度の範囲の角度で実行される。
【0037】
本願発明のエッセンスは、図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、装置の略示図である。
図2図2は、ロールの断面の溝−フィン結合の略示図である。
図3図3は、ダイ−溝結合のロール断面の略示図である。
図4図4は、フォルダ−ダイ結合断面の略示図である。
図5図5は、フィン寸法の比率を示す図である。
図6図6は、ダイ寸法の比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
複合圧延押し出しデバイス(図1)は、
液体アルミニウムまたはアルミニウム合金2を有する均熱炉1、無限長の鋳造鋼片4を形成する回転金型3、鋳造鋼片用の温度制御デバイス5、ガイドエレメントのローラ6、溝つきロール7およびフィン付きロール8、および半最終製品10を押し出すための閉止したワークゲージ(図2)を形成するダイ9、および半最終製品冷却デバイス11を有する。
【0040】
溝付きロール7の円筒面は、フィン付きロール8の円筒面上に形成される溝13に結合されるフィン12を具備する。ロール7および8の表面上の当該フィンおよび溝は、そのロールと互いにラビリンス結合を形成する。ユニットの動作中、アクティブ摩擦力によってワークゲージ内部に変形ゾーンが形成される。ロール8のフィン14は変形ゾーン(図2の影部分)と嵌合する場所でT字形状のワーク面を有する。ロール8のT字形状フィンは、ロール7の溝の側面と、ロール8のフィンのコンタクト面との間にギャップKを形成可能であるように、ロール7の溝に関して配置されている(図2)。ギャップKの幅は、0.2から0.5mmである。ロール7の溝のコンタクト面と、ロール8のフィンの非コンタクト面との間に、2.0から3.0mmに等しいギャップLが与えられる。ロール8のT字形状フィン(図5)は、フィンの幅bに対するベルトの高さcの比率が0.07から0.08に等しい。
【0041】
ダイ9(図3)は、変形ゾーンおよびロール7の側面に結合されたT字形状ワーク面14を有する。同時に、ロール7の側面とダイ9のコンタクト面との間には、幅が0.2〜0.5mmのギャップMが設けられている。ロール7の溝のコンタクト面とダイ9の非コンタクト面との間には、2.0〜3.0mmのギャップNが設けられている。
【0042】
ダイのワーク部分(図6)は、ダイの幅eに対するベルトの高さdの比率が0.08から0.09である。
【0043】
ダイ9(図4)およびダイフォルダ15は、ダイフォルダ15に関してダイ9の円筒部分の回転を防止するように設計された嵌合矩形フィンおよび溝を有する。
【0044】
ダイフォルダは、ロールのフィンの頂面と、ダイと、ロールの溝の底面との間のギャップGによって、ワークゲージ内へのダイのインストールを与え、ギャップは1から2mmである。
【0045】
ロールのワーク面と、ロールおよびマトリクスのワーク面との間のギャップの存在により、スチール表面間の接触が防止される。それは、製品寿命の増加をもたらす。押し出しプロセスにおいて、金属または合金(例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金)のクラッド層は、ロールのコンタクト面上に形成され、それによって、金属−金属摩擦係数によるアクティブ摩擦力のパワーを増加させる。特定の場合、これはアルミニウム−アルミニウムのクラッド層であってよい。同時に、ダイは、そのワーク面によって、ロール上に金属のクラッド層を形成する。
【0046】
ロール7および8の溝およびフィンのワーク面上の金属または合金クラッド層の厚さは、0.2から2.0mmに等しい。
【0047】
上述したように、ダイ9のワーク部14のT字形状により、溝の側面とダイの接触面との間にギャップGを形成することができる。溝の側面とダイおよびダイフォルダのコンタクト面との間のギャップMの存在、および、ダイフォルダ15およびロール7、8に関するダイ9の位置固定により、スチール−スチール接触が防止され、ダイの摩耗が削減される。
【0048】
上述したように、T字形状のダイは、溝の側面とダイおよびダイフォルダの非接触面との間でギャップNの存在も保証する。ギャップMおよびNの存在は、押し出し中のダイ−溝嵌合のワークゲージから、リッジの形成および金属の損失を除去する。
【0049】
内部冷却チャネルが、ロール7、8の全周囲に作成されている。
【0050】
冷媒の供給および除去チャネルが、ダイ9の給水口に配置される。
【0051】
鋳造鋼片の温度制御デバイス5は、鋼片に380〜420℃の最適な温度を与え、金型の出口での鋳込み条件および鋳造鋼片温度に無関係に、安定した押し出し処理および押し出された長尺の半最終製品の安定した特性を保証する。温度安定デバイスは、インダクタ(公称以下の温度において鋳造鋼片を加熱するための)およびクーラー(公称以上の温度において鋳造鋼片を冷却するための)からなる複合アセンブリである。鋳造鋼片の加熱は、誘導加熱によって実行され、鋳造鋼片の冷却は注水によって実行される。鋳造鋼片の設定温度の制御は、例えば、高温計を使って、非接触の方法で実行される。380〜420℃の設定温度は、ガイドデバイス6によるロール7、8のワークゲージ内の正確な位置決めのために、高温状態の鋳造鋼片の十分な強度を与える。
【0052】
均熱炉1から、金属または合金(例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金)2が、回転金型3へ水平方向に供給され、そこで連続鋳造鋼片4が形成される。温度安定デバイス5およびガイドエレメントのローラ6を通過した後、鋳造鋼片4はローラ7、8によって形成されたワークゲージ内に進入する。ガイドエレメント6は、押し出し軸線に対して0から20度の角度αでロール内に供給される鋳造鋼片を与える。同時に、鋳造鋼片4の最適な温度を維持し、かつ、押し出し軸線に関する鋳造鋼片の最適な角度αを選択することにより、ロールゲージ内へ鋳造鋼片を送るプロセスの安定性が保証される。鋳造鋼片4は、ワークゲージ内のアクティブ摩擦力により、ロール7、8によって捕捉され、ダイ9の較正された開口部を通じて押し出され、生成された押し出し半最終製品10は冷却デバイス11内で冷却される。ロール8のT字形状のフィン14は、ロールの側面とロール8のフィンのコンタクト面との間にギャップKを与え、ロール7の溝の側面とロール8のフィンの非接触面との間にギャップLを与える。このおかげで、溝とフィン嵌合内でのスチール−スチール接触が除去され、ロールの摩耗が削減される。押し出しプロセス中に、ダイ9によってロックされたロール7および8により形成されたゲージから出てくる金属または合金はギャップLを満たし、同時に、ロール7のフィン12およびロール8の溝13によって形成されたラビリンスの円筒面上に存在することにより、ゲージから出てくるさらなる金属が防止される。したがって、ギャップL内に形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金の層による溝−フィン嵌合のセルフシールのため、リッジの形成およびワークゲージからの金属の損失が防止される。
【0053】
本願発明によれば、複合圧延押し出しプロセスを実行するとき、金属のリターンロスが減少し、プロセスの消費エネルギーが減少し、押し出された半最終製品の品質および均一性が増加し、パフォーマンスが向上する。
【0054】
方法および装置の特定の実施形態の例
デバイスの実際の使用例として、実験的な製造ラインLPA6上での連続鋳造鋼片の変形の例が与えられる。断面が40mm×37mmの連続鋳造鋼片を得るための鋳造が、直径1510mmの回転金型内で実行された。連続の複合圧延押し出しが、3から12rpmのロールの回転速度の直径428mmの冷却ロールによって、CREPユニット上で実行された。融解温度は750℃であり、回転金型の出口での鋳造鋼片の温度は520℃であり、ゲージへの入口での温度安定デバイス後の鋳造鋼片の温度は、380〜420℃に維持された。以下の重量%濃度(0.1のシリコン、0.25の鉄、0.28のジルコニウム、残りはアルミニウム)を含む耐熱AlZr合金が使用された。押し出しは、5.2から16.8の押し出し速度μを有するダイによって実行され、続いて押し出されたバーの冷却および巻き取りが実行された。体積6tの9.5mmのAlZr合金のワイヤロッドのパイロットバッチが得られた。最大抗張力および電気伝導度テスト用のサンプルが、押し出されたバーから切断された。その最大抗張力σ、相対伸張率、特定の電気伝導度がテスト結果に基づいて推定された。得られたコイルは、熱アニールにさらされた。熱アニールの後、最大抗張力および電気伝導度テスト用にサンプルが取られた。押し出しバーおよびワイヤのサンプルのテスト結果が表1に与えられる。
【表1】
【0055】
押し出しバーの熱処理コイルは直径3.5mmのワイヤにさらに引き伸ばされた。ワイヤの引っ張りは、すべりのない伸線機により実行された。直径3.5mmの引っ張り速度は、7.21m/秒であった。潤滑および冷却流体は、引き伸ばしダイを潤滑にするのに使用された。引き伸ばしシーケンスは、以下のとおりである。9.5,8.0、6.92、5.93、5.04、4.32、3.71、3.50(mm)。
【0056】
直径3.50mmのワイヤのテスト結果は表2に示されている。
【表2】
【0057】
引き伸ばし後、直径3.50mmのワイヤの15個のサンプルが熱安定性テスト用に選択された。ワイヤサンプルの熱処理は、1時間の間、230℃、280℃、および400℃の温度で実験室の加熱炉内で実行された。
【0058】
熱処理済みのワイヤの機械的特性および電気的導電性のテスト結果は表3に示されている。
【表3】
【0059】
試験結果は、提案された複合圧延押し出し方法によって得られたAlZr合金ワイヤロッドから作成されたワイヤが、国際標準IEC62004のタイプAT1。AT3、AT4を満たしていることを示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】ロシア国特許第2547775号公報
【特許文献2】ロシア国特許第2568550号公報
【特許文献3】ロシア国特許第2519078号公報
【特許文献4】ロシア国特許第2100136号公報
【特許文献5】ロシア国特許第2559615号公報
図1
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図5
図6