特許第6831403号(P6831403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6831403金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を含有する配合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831403
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を含有する配合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20210208BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20210208BHJP
   C08L 83/14 20060101ALI20210208BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08L83/14
【請求項の数】11
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-567036(P2018-567036)
(86)(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公表番号】特表2019-518852(P2019-518852A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】US2017036276
(87)【国際公開番号】WO2018013262
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2018年12月21日
(31)【優先権主張番号】62/361,774
(32)【優先日】2016年7月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナングオ・リュー
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・ローズ
(72)【発明者】
【氏名】ニック・エバン・シェファード
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−513165(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/033979(WO,A1)
【文献】 特開2002−371185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成成分(A)、(B)、(C)、及び(D):
(A)金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物と、
(B)平均して1分子当たり、少なくとも2個のケイ素結合不飽和脂肪族基を有する重合性オルガノシリコン(有機ケイ素)化合物と、
(C)平均して1分子当たり、少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシリコン(有機水素化ケイ素)化合物と、
(D)少なくとも1つのケイ素原子、少なくとも3個のケイ素結合非プロトン性脱離基、及び少なくとも1個の脱離基以外のケイ素結合硬化性基を含有するオルガノシリコン(有機ケイ素)接着促進剤と、
を含む硬化性配合物であって、
前記(A)金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、
式(I):{R−Si(R)(R)−[O−Si(R)(R)]−O}−M(←L)(X (I)
[式中、Mは、形式的な正の酸化状態δを有する金属原子Al、Ce、Fe、Sn、Ti、V、又はZrであり(δは、Alについては+1〜+3、Ceについては+2〜+4、Feについては+1〜+6、Snについては+1〜+4、Tiについては+1〜+4、Vについては+1〜+5、Zrについては+1〜+4である。)、下付き文字nはδの整数であり、下付き文字oは0であり、各Lは独立して非プロトン性ルイス塩基であり、下付き文字p=0であり、各Xは独立してハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンであり、下付き文字mは3〜100の整数であり、R〜Rのそれぞれは独立して非プロトン性(C〜C20)アルキル基、非プロトン性(C〜C20)アルケニル基、又は非プロトン性(C〜C20)アルキニル基であり、かつ、R〜Rのうち少なくとも1つが独立して、非プロトン性(C〜C20)アルケニル基、又は非プロトン性(C〜C20)アルキニル基である。]
を有する、硬化性配合物。
【請求項2】
少なくとも1つのMが金属原子Al、Ce、Fe、Sn、Ti、又はV、Al、Ce、Fe、Sn、Ti、又はZr、Al、Ce、Fe、Sn、V、又はZr、Al、Ce、Fe、Ti、V、又はZr、Al、Ce、Sn、Ti、V、又はZr、Al、Fe、Sn、Ti、V、又はZr、あるいはCe、Fe、Sn、Ti、V、又はZrである、請求項1に記載の硬化性配合物。
【請求項3】
下付き文字mが3〜50の整数である、請求項1又は2に記載の硬化性配合物。
【請求項4】
前記硬化性配合物中の前記(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の濃度が0.01〜10重量%(wt%)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の硬化性配合物。
【請求項5】
前記(B)重合性オルガノシリコン(有機ケイ素)化合物が、平均して1分子当たり、1個のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するオルガノシラン、平均して1分子当たり、2〜4個のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するオリゴオルガノシロキサン、平均して1分子当たり、5個以上のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するポリオルガノシロキサン、並びにこれらのいずれか2つ以上の組み合わせから選択され、
前記(C)オルガノハイドロジェンシリコン(有機水素化ケイ素)化合物が平均して1分子当たり、1〜100個のケイ素原子及び/又は少なくとも2個、あるいは少なくとも2.2個のケイ素結合水素原子を有し、
前記(D)オルガノシリコン(有機ケイ素)接着促進剤のそれぞれのケイ素結合非プロトン性脱離基が独立して、ケイ素結合非プロトン性アルコキシ基、ケイ素結合非プロトン性脂肪族カルボキシ基、ケイ素結合非プロトン性ジアルキルアミノ基、ケイ素結合ハロゲン、又はケイ素結合非プロトン性オキシモ基(即ち−ONC(R:式中、Rは独立してH、アルキル基、又はシクロアルキル基である。)である、かつ/又は、脱離基以外の各ケイ素結合硬化性基が独立して、エポキシ官能性ヒドロカルビル基、オキソ(即ち=O)基を非含有の一価の不飽和脂肪族基、一価の不飽和脂肪族カルボン酸エステル基、一価のイソシアネート基、一価のアルデヒド基(即ち−C(=O)H)、若しくはこれらのいずれか2つ以上のハイブリッド基である、あるいは
これらのいずれか2つの組み合わせから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項6】
前記構成成分(A)〜(D)以外の、少なくとも1種の追加の構成成分を更に含み、それぞれの追加の構成成分は任意であり、独立して、構成成分(E)〜(J):(E)硬化剤、(F)ヒドロシリル化触媒の阻害剤、(G)フィラー、(H)前記(G)フィラーを処理するための処理剤、(I)ビヒクル、(J)着色剤、のいずれか1種以上であってよい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性配合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性配合物、及び前記硬化性配合物と接触した基材を含む、製造された物品。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性配合物を硬化した、硬化生成物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化生成物の作製方法であって、前記硬化性配合物を30℃〜250℃の硬化温度に通し、前記硬化生成物を得ることを含む、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化生成物を含む、製造された物品。
【請求項11】
前記硬化生成物と接触した基材を更に含む、請求項10に記載の製造された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属非プロトン性オルガノシランオキシド(organosilanoxide)化合物を含有する硬化性配合物、その硬化生成物、硬化性配合物又は硬化生成物を含有する、又はこれらから調製した、製造された物品、並びにこれらの作製方法及び使用方法。
【背景技術】
【0002】
既存の配合物は、不所望に空気、熱、湿度、及び/又は日光などの過酷な環境条件下で、特定の基材材料に弱く接着する、劣化若しくは分解する(例えば、脆化若しくは退色する)、又は、基材から剥離する場合がある。デラミネーション(例えば、気泡生成又は剥離)の頻度又は深刻度を低下させるために、基材の中には、接着前に前処理される(例えば、プライミングされる又は予乾燥される)ものがある場合がある。又は、接着促進剤を基材上へのプライマーとして、又は配合物中の添加剤として使用する場合がある。そのような場合であっても、需要のある用途、例えば、電子デバイス用接着剤及びポッタント、エアバッグ用コーティング、発光ダイオード(LED)又は光電池用のカプセル化用材料、並びに建造及び建築用シーラントで使用される際に、配合物が弱い接着性又は短い貯蔵寿命を示す場合がある。
【発明の概要】
【0003】
発明者らは、既存の配合物における問題を発見した。これらの配合物は、高すぎる凝集破壊温度(TCF)(例えば、TCF>120℃)、及び/又は短すぎる貯蔵寿命(例えば、数週間又は数ヶ月ではなく、数日又は数時間)を有する。凝集破壊温度が高くなるほど、配合物を硬化するのに必要な温度も高くなり、それ故、配合物を使用するための製造プロセスウィンドウが小さくなるほど、配合物と共に使用可能な、感熱性電子的構成部品の種類は少なくなる。貯蔵寿命が短すぎると、メーカが、新しい配合物を連続して作製し続ける、若しくは供給し続ける必要がある、又は、配合物を低温で貯蔵して、速やかに温めて使用する必要があるといういずれかの理由により、配合物は、製造設定において使用するには実用的ではない。本発明は、既存の配合物に関係する1つ以上の問題の技術的解決策を提供する。
【0004】
本発明は概して、金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物、重合性オルガノシリコン化合物、重合性オルガノシリコン化合物を架橋するためのオルガノシリコン架橋剤、及びシリコン系接着促進剤を含有する硬化性配合物に関する。硬化性配合物を硬化した硬化生成物、硬化性配合物又は硬化生成物を含有する、又はこれらから調製した、製造された物品、並びに前述の物品の作製方法及び使用方法もまた含まれる。硬化生成物は、独立して静置されていてよい、又は基材上に配置されていてよい。
【発明を実施するための形態】
【0005】
「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。複数の例示的な非限定的実施形態及び実施例を開示することにより、例示的な方法により、本発明は更に、本明細書に記載されている。いくつかの実施形態において、本発明は、以下の態様のいずれか1つである。
【0006】
態様1.構成成分(A)、(B)、及び(C):(A)金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物と、(B)平均して1分子当たり、少なくとも2個のケイ素結合不飽和脂肪族基を有する重合性オルガノシリコン化合物と、(C)平均して1分子当たり、少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンシリコン化合物と、(D)少なくとも1つのケイ素原子、少なくとも3個のケイ素結合非プロトン性脱離基、及び少なくとも1個の脱離基以外のケイ素結合硬化性基を含有するオルガノシリコン接着促進剤と、を含む硬化性配合物であって、(A)金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、式(I):R−Si(R)(R)−[O−Si(R)(R)]−O}−M(←L)(X (I)[式中、Mは、形式的な正の酸化状態δを有する金属原子Al、Ce、Fe、Sn、Ti、V、又はZrであり(Alについては+1〜+3、Ceについては+2〜+4、Feについては+1〜+6、Snについては+1〜+4、Tiについては+1〜+4、Vについては+1〜+5、又はZrについては+1〜+4)、下付き文字nは1〜δの整数であり、下付き文字oは0、1、又は2の整数であり、各Lは独立して非プロトン性ルイス塩基であり、下付き文字p=(δ−n)であり、各Xは独立してハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンであり、下付き文字mは3〜100の整数であり、R〜Rのそれぞれは独立して非プロトン性(C−C20)ヒドロカルビル基又は非プロトン性(C−C20)ヘテロヒドロカルビル基である。]を有する、硬化性配合物。(C−C20)ヘテロヒドロカルビル基は、2〜20個の炭素原子、並びに、N、O、S、及びP;あるいは、N、O、及びS;あるいはN及びO;あるいは、N;あるいはO、あるいはS;あるいはPから選択される少なくとも1個のへテロ原子を含有する。構成成分(A)〜(D)は非プロトン性である、即ちHO−C、H−N、H−S、及びH−Pを非含有であって(欠いていて)よい。構成成分(A)及び(B)、並びに場合により成分(D)は、H−Siもまた非含有であってよい。
【0007】
態様2.R〜Rのいずれもが、炭素−炭素二重又は三重結合を含有しない、態様1に記載の硬化性配合物。例えば、R〜Rのいずれもが、(C−C20)アルケニル基又は(C−C20)アルキニル基ではない、又はこれらを含有しない。いくつかの態様では、R〜Rのうち少なくとも1つ、あるいはそれぞれは独立して、非プロトン性(C−C20)アルキル基、非プロトン性(C−C20)アリール基、又は非プロトン性(C−C20)ヘテロヒドロカルビル基であり、これらはいずれも、炭素−炭素二重又は三重結合を含有しない。非プロトン性(C−C20)アルキル基としては、非プロトン性(C−C20)シクロアルキル基が挙げられる。
【0008】
態様3.R〜Rのうち少なくとも1つ、あるいは2つ以上、あるいは3〜10個が独立して、非プロトン性(C−C20)アルケニル基又は非プロトン性(C−C20)アルキニル基、あるいは非プロトン性(C−C20)アルケニル基、あるいは非プロトン性(C−C)アルケニル基である、態様1に記載の硬化性配合物。いくつかの態様では、任意の残りのR〜Rは独立して、非プロトン性(C−C20)アルキル基、非プロトン性(C−C20)アリール基、又は非プロトン性(C−C20)ヘテロヒドロカルビル基である。
【0009】
態様4.少なくとも1個、あるいはそれぞれのMは、金属原子Al、Ce、Fe、Sn、Ti、又はV、あるいはAl、Ce、Fe、Sn、Ti、又はZr、あるいはAl、Ce、Fe、Sn、V、又はZr、あるいはAl、Ce、Fe、Ti、V、又はZr、あるいはAl、Ce、Sn、Ti、V、又はZr、あるいはAl、Fe、Sn、Ti、V、又はZr、あるいはCe、Fe、Sn、Ti、V、又はZrである、態様1〜3のいずれか1つに記載の硬化性配合物。いくつかの態様では、少なくとも1個、あるいはそれぞれのMは、金属原子Al、Ce、Fe、又はV、あるいは、Al、Ce、又はFe、あるいはAl、Ce、又はV、あるいはAl、Fe、又はV、あるいはCe、Fe、又はVあるいはAl、あるいはCe、あるいはFe、あるいはVである。いくつかの態様では、少なくとも1個、あるいはそれぞれのMは、金属原子Sn又はTi、あるいはSn又はZr、あるいはTi又はZr、あるいはSn、あるいはTi、あるいはZrである。いくつかの態様では、MはAl、δは+3であり、あるいはMはCe、δは+3又は+4であり、あるいはMはFe、δは+2又は+3であり、あるいはMはSnであり、Snのδは+2又は+4であり、あるいはMはTiであり、Tiのδは+4であり、あるいはMはV、δは+5であり、あるいはMはZrであり、Zrのδは+4である。
【0010】
態様5.下付き文字nは2〜δ、あるいはδの整数である、態様1〜4のいずれか1つに記載の硬化性配合物。下付き文字p=(δ−n)。
【0011】
態様6.下付き文字oは0、あるいは1又は2、あるいは1、あるいは2の整数である、態様1〜5のいずれか1つに記載の硬化性配合物。oが0である場合、Lは存在しない。oが1である場合、Lは1つ存在し、Mに対して、供与結合とも呼ばれる、配位結合を形成する。oが2である場合、2つの独立して選択されるLが存在する、又は1つの二座配位Lが存在し、Mに対して合計で2個の配位結合を形成する。Lに対する非プロトン性ルイス塩基は、1モル当たり50〜500グラム(g/mol)の分子量を有する、中性の電子対供与化合物であり、独立して、アルケン、アルキン、式RNの第3級アミン、式RCORのカルボン酸エステル、式RORのエーテル、式RC(=O)Rのケトン、式RSRのチオエーテル、式(R)Pのトリヒドロカルビルホスフィン、又は、ジアミン、ジカルボン酸エステル、ジエーテル、ジケトン、ジチオエーテル、若しくはジホスフィンなどの、これらの対応する二官能性類似体から選択することができる。各Rは独立して、非置換アルキル又はアリールであってよい。
【0012】
態様7.下付き文字mが3〜50、あるいは51〜100、あるいは3〜30、あるいは3〜20、あるいは3〜10、あるいは3、あるいは4、あるいは5、あるいは6、あるいは7、あるいは8、あるいは9、あるいは10の整数である、あるいは、mが3〜100の1つを除く全てから選択される整数である、態様1〜6のいずれか1つに記載の硬化性配合物。mが1又は2又は>100である場合、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、弱い接着促進又は接着共促進効果を示し得、硬化性配合物に望ましくない物理的性質を付与し得る(例えば、mが1又は2である場合、動粘度をあまりに低下し過ぎる、又はあまりに揮発性となり、あるいは、m>100である場合、動粘度があまりに増加し過ぎる、又はMの好ましい効果が出なくなる場合がある)。
【0013】
態様8.各Xが独立してハロゲン化物、あるいは非プロトン性オルガノヘテリルアニオンである、態様1〜7のいずれか1つに記載の硬化性配合物。ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、又はヨウ化物、あるいはフッ化物、塩化物、又は臭化物、あるいはフッ化物又は塩化物、あるいはフッ化物、あるいは塩化物であってよい。非プロトン性オルガノヘテリルアニオンは、アルコキシド(即ちR)、カルボキシレート(即ちRC(=O)O)、オキシメート(即ち、RC=NO)、第2級アミノ(RN−)、又はトリヒドロカルビルシランオキシド(即ちRSiO)から選択されてよい。各Rは独立して、(C−C20)アルキル、(C−C20)アルケニル、又は(C−C20)アリール、あるいは(C−C)アルキル又は(C−C)アルケニル、あるいは(C−C)アルキル、あるいはメチル、エチル、又はフェニルから選択される非プロトン性(C−C20)ヒドロカルビルである。
【0014】
態様9.配合物中における式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の濃度が、硬化性配合物の総重量を基準として0.01〜10重量%(wt%)、あるいは0.1〜10wt%、あるいは0.10〜5wt%、あるいは0.9〜3wt%であることを特徴とする、態様1〜8のいずれか1つに記載の硬化性配合物。
【0015】
態様10.(B)重合性オルガノシリコン化合物が、平均して1分子当たり、1個のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するオルガノシラン、平均して1分子当たり、2〜4個のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するオリゴオルガノシロキサン、平均して1分子当たり、5個以上のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するポリオルガノシロキサン、並びにこれらのいずれか2つ以上の組み合わせから選択される、態様1〜9のいずれか1つに記載の硬化性配合物。構成成分(B)は非プロトン性であってよい。
【0016】
態様11.(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物は平均して1分子当たり、1〜100個のケイ素原子及び/又は少なくとも2個、あるいは少なくとも2.2個のケイ素結合水素原子を有する、態様1〜10のいずれか1つに記載の硬化性配合物。
【0017】
態様12.(D)オルガノシリコン接着促進剤において、それぞれのケイ素結合非プロトン性脱離基は独立して、ケイ素結合非プロトン性アルコキシ基、ケイ素結合非プロトン性脂肪族カルボキシ基、ケイ素結合非プロトン性ジアルキルアミノ基、ケイ素結合ハロゲン、又はケイ素結合非プロトン性オキシモ基である、かつ/又は、脱離基以外の各ケイ素結合硬化性基は独立して、エポキシ官能性ヒドロカルビル基、オキソ(即ち=O)基を非含有の一価の不飽和脂肪族基、一価の不飽和脂肪族カルボン酸エステル基、一価のイソシアネート基、一価のアルデヒド基(即ち−C(=O)H)、若しくはこれらのいずれか2つ以上のハイブリッド基である、態様1〜11のいずれか1つに記載の硬化性配合物。いくつかの態様では、(D)オルガノシリコン接着促進剤は、一価の(メタ)アクリレート基である、一価の不飽和脂肪族カルボン酸エステル基である。
【0018】
態様13.構成成分(A)〜(D)以外の、少なくとも1種の追加の構成成分を更に含む、態様1〜12のいずれか1つに記載の硬化性配合物。それぞれの追加の構成成分は任意であり、独立して、構成成分(E)〜(J):(E)硬化剤、(F)ヒドロシリル化触媒の阻害剤、(G)フィラー、(H)(G)フィラーを処理するための処理剤、(I)ビヒクル、(J)着色剤の、いずれか1種以上であってよい。構成成分(A)〜(D)、及び任意の構成成分(E)〜(J)のいずれか、及び後述のいずれかの他の任意の構成成分の合計濃度は、硬化性配合物の100wt%に等しい。構成成分(E)〜(K)は非プロトン性、あるいはプロトン性であってよい。
【0019】
態様14.態様1〜13のいずれか1つに記載の硬化性配合物の作製方法であって、構成成分(A)〜(D)、及び場合により、少なくとも1種の追加の構成成分(E)〜(K)を接触させて硬化性配合物を得ることを含む、方法。
【0020】
態様15.態様1〜13のいずれか1つに記載の硬化性配合物、及び該配合物と接触した基材を含む、製造された物品。
【0021】
態様16.態様1〜13のいずれか1つに記載の硬化性配合物を硬化した、硬化生成物。いくつかの態様では、態様1〜13のいずれか1つに記載の硬化性配合物は硬化して硬化生成物となることが可能であり、硬化生成物は、凝集破壊温度(TCF)≦120℃、あるいはTCF<120℃、あるいはTCF≦110℃、あるいはTCF<110℃、あるいはTCF<100℃、あるいは90℃〜<100℃のTCFを特徴とする。いくつかの態様では、態様1〜13のいずれか1つに記載の硬化性配合物は硬化して硬化生成物となることが可能であり、硬化生成物は発泡していないことを特徴とする。発泡は、後述の熱勾配接着試験法を用いて測定することができる。TCFは、後述の90°剥離接着性試験法を使用して測定することができる。
【0022】
態様17.態様16に記載の硬化生成物の作製方法であって、硬化性配合物を、30〜250℃の硬化温度に通して硬化生成物を得ることを含む、方法。いくつかの態様では、硬化温度は、50〜200℃、あるいは70〜180℃、あるいは80〜140℃、あるいは85〜120℃である。
【0023】
態様18.態様16に記載の硬化生成物を含む、製造された物品。
【0024】
態様19.硬化生成物と接触した基材を更に含む、態様18に記載の製造された物品。いくつかの態様では、硬化生成物は基材に接着している。
【0025】
金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の各分子は、少なくとも1種の金属原子、及び少なくとも1種の非プロトン性オルガノシランオキシド配位子で構成される。金属原子は、アルミニウム、セリウム、鉄、スズ、チタン、バナジウム、ジルコニウム、又はこれらのいずれか2種以上の組み合わせであってよい。非プロトン性オルガノシランオキシド配位子は、オルガノシラノールの共役塩基形態であり、平均して、非プロトン性オルガノシランオキシド配位子1個あたり、少なくとも1個のアニオン性官能基(Si−O)を含有するアニオンであってよい。非プロトン性オルガノシランオキシド配位子は、−OH、−NH、−SH、−PH、及び場合により、SiH基を非含有である。重合性オルガノシリコン化合物は、少なくとも1個、あるいは2個以上の硬化性基を有してよく、オルガノシリコンモノマー、オルガノシリコンプレポリマー、又は硬化性オルガノシリコンポリマーであってよい。オルガノシリコン架橋剤は、平均して1分子当たり、重合性オルガノシリコン化合物の硬化性基と反応性である少なくとも2個の官能基を有する化合物であってよい。シリコン系接着促進剤は、1分子当たり、少なくとも1個のケイ素結合非プロトン性脱離基、及び、該ケイ素結合非プロトン性脱離基とは構造が異なる、少なくとも1個のケイ素結合非プロトン性硬化性基を有する化合物であってよい。金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物、重合性オルガノシリコン化合物、オルガノシリコン架橋剤、及びシリコン系接着促進剤のそれぞれは、他の物質の構造とは異なる構造を有する固有の化合物である。基材は、任意の形状で構成される任意のホスト材料であってよい。例えば、ホスト材料は、炭素、セラミック、金属若しくは金属合金、有機若しくは無機ポリマー、又はシリケートガラスであってよい。構成は、規則的又は不規則的な形状、対称又は非対称、固体コア又は中空コア、(半)多孔質又は無孔質、円筒、ロッド、粒子状固体、中空球体、又はシート若しくはボードであってよい。硬化性配合物及び硬化生成物は、接着剤、コーティング、エラストマー、カプセル化用材料、ポッタント、又はシーラントなどを含む、様々な用途を有する。硬化性配合物及び硬化生成物を、建造、建築、消費者製品、エレクトロニクス、エネルギー、インフラ、照明、パッケージング、遠隔通信、及び輸送などの業界における多様な用途で使用してよい。
【0026】
構成成分(A):式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物
【0027】
(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は1つの分子、又は複数の分子の集合体であってよい。式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の各金属原子は独立して、上述した、当該金属原子の既知の正の酸化状態を反映する、形式的な正の酸化状態δを有する。非プロトン性オルガノシランオキシド配位子の各アニオン性官能基Si−Oは、−1に等しい、形式的な負の酸化状態δを有し、非プロトン性オルガノシランオキシド配位子は、−yに等しい合計の形式的な負の酸化状態δを有し、ここでyは、非プロトン性オルガノシランオキシド配位子1個当たりの、アニオン性官能基Si−Oの総数に等しい整数である。いくつかの態様では、非プロトン性オルガノシランオキシド配位子1個当たり、即ち分子アニオン1個当たり、1個のアニオン性官能基Si−Oが存在し、δ=−y=−1である。いくつかの実施形態において、(−y−1)=金属原子のδであり、式中、は乗算記号であり、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は他のアニオン性配位子を非含有である。別の実施形態において、(−y−1)<金属原子のδであり、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、ハロゲン化物及び非プロトン性オルガノヘテリルアニオンから独立して選択されるp個の追加のアニオン性配位子を更に含有し、ここで、p+(−y−1)=δである。
【0028】
(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、その溶媒和物を含む。溶媒和物は、非プロトン性有機溶媒分子を更に含むことを除いて、記載した式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物であるとして定義することができる。溶媒分子は、N、O及びSから独立して選択される少なくとも1個のへテロ原子を含有してよい。好適な有機溶媒の例は、例えば、カルボン酸エステル、エーテル、及びケトンである。
【0029】
(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、その中の、ある濃度の金属、及び/又は非プロトン性(C−C20)アルケニル基、及び/又は非プロトン性(C−C20)アルキニル基を特徴とすることができる。いくつかの実施形態(例えば、態様2)では、構成成分(A)内の、非プロトン性(C−C20)アルケニル基、及び非プロトン性(C−C20)アルキニル基の合計濃度は、構成成分(A)1グラムあたり0ミリモル、即ち0wt%である。別の実施形態(例えば、態様3)では、構成成分(A)内の、非プロトン性(C−C20)アルケニル基、及び非プロトン性(C−C20)アルキニル基の合計濃度は、>0〜10mmol/g、あるいは>0〜5mmol/g、あるいは0.5〜5mmol/g、あるいは1.0〜4.0mmol/gである。あるいは、又は更に、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物中における金属の濃度は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の0.01〜100mmol/g、あるいは、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の0.01〜50mmol/g、あるいは0.020〜20mmol/g、あるいは0.050〜10mmol/g、あるいは0.10〜5mmol/g、あるいは0.15〜5mmol/gであってよい。mmol/g金属濃度は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を調製するために添加した構成成分の量を追跡することによって測定することができる。あるいは、又は更に、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、非プロトン性(C−C20)アルケニル基及び/又は非プロトン性(C−C20)アルキニル基のモル数の、金属のモル数に対するモル比を特徴とすることができる。モル比は「Unsub/Met」と略すことができ、ここで、「Unsub」は非プロトン性(C−C20)アルケニル基、及び非プロトン性(C−C20)アルキニル基の合計のモル数であり、「Met」は金属原子のモル数である。いくつかの実施形態(例えば、態様2)では、Unsub/Metモル比は0である。別の実施形態(例えば、態様3)では、Unsub/Metは1〜2δ、あるいは1〜δ、あるいは1、あるいは2、あるいは3である。
【0030】
好適な非プロトン性(C−C20)アルケニル基の例は、非プロトン性(C−C10)アルケニル、非プロトン性(C−C)アルケニル、非置換(C−C)アルケニル、ビニル、アリル、1−ブテン−1−イル、1−ブテン−4−イル、及び1−ヘキセン−6−イルである。
【0031】
好適な非プロトン性(C−C20)アルキニル基の例は、非プロトン性(C−C10)アルキニル、非プロトン性(C−C)アルキニル、非置換(C−C)アルキニル、アセチレニル、プロパルギル、1−ブチン−1−イル、1−ブチン−4−イル、及び1−ヘキシン−6−イルである。
【0032】
好適な非プロトン性(C−C20)ヒドロカルビル基の例は、非プロトン性(C−C20)アルケニル、非プロトン性(C−C20)アルキニル、非プロトン性(C−C10)ヒドロカルビル、非プロトン性(C−C10)アルキル、非プロトン性(C−C10)シクロアルキル、非プロトン性(C−C10)アリール、非置換(C−C10)アルキル、非置換(C−C10)シクロアルキル、非置換(C−C10)アリール、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、及びフェニルである。
【0033】
好適な非プロトン性(C−C20)ヘテロヒドロカルビル基の例は、非プロトン性(C−C10)ヘテロヒドロカルビル、非プロトン性(C−C)ヘテロヒドロカルビル、非プロトン性(C−C)ヘテロアルキル、非プロトン性(C−C)ヘテロシクロアルキル、非プロトン性(C−C)ヘテロアリール、非置換(C−C)ヘテロアルキル、非置換(C−C)ヘテロシクロアルキル、非置換(C−C)ヘテロアリール、1−メトキシエチル、オキシラニル、ピペリジン−1−イル、チアゾリル、及びピリジニルである。
【0034】
前述のR〜R、及びR基(一括して「R」)のいずれかは非置換であってよい、あるいは、ハロ、非置換又はフルオロ置換(C−C)アルキル、非置換又はフルオロ置換(C−C)アルコキシ、非置換又はフルオロ置換(C−C)メルカプト、オキソ(アルキル基上の=O)、非置換又はフルオロ置換フェニル、非置換又はフルオロ置換(C−C)アシル、非置換又はフルオロ置換(C−C)カルボキシ、非置換又はフルオロ置換(C−C)アルキルOC(=O)−、非置換又はフルオロ置換(C−C)エポキシ、非置換ジ((C−C)アルキル)アミノ、及びニトリル(−CN)から独立して選択される1種以上の非プロトン性置換基で置換されてよい。置換基は炭素−炭素二重又は三重結合を非含有であってもよい(欠いていてもよい)。ハロは、F、Cl、Br、又はI、あるいは、F、Cl、又はBr、あるいは、F又はCl、あるいは、F、あるいは、Clである。特定の「R」基に2つ以上の置換基が存在する場合、置換基の数は2個〜過置換(per substitution)である。通常、過置換はハロ置換基、例えば、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、又はペンタクロロエチルに限られる。通常、特定の「R」基における非ハロ置換基の最大数は、その「R」基の対応する非置換版における炭素原子の数に等しい。例えば、置換(C)ヒドロカルビル基は、それぞれ独立して上述のとおりに選択される、最大で6個の置換基を含有してよい。
【0035】
〜R、及びR基の任意の1つ以上におけるフルオロ置換基は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の25℃における貯蔵寿命安定性を向上させることができる。あるいは、R〜R、及びR基の任意の1つ以上における非置換ジ((C−C)アルキル)アミノ置換基は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の25℃における貯蔵寿命安定性を低下させ得る。いくつかの実施形態では、非置換ジ((C−C)アルキル)アミノ置換基は、この置換基を含有する、置換された式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の分子の集まりのゲル化を可能にし得る。ゲル化は、ゲルを用いる可能性がある用途において、例えば、基材表面のプライミング、又は熱伝導性材料として使用するための熱性ゲルの形成において、望ましい場合がある。ゲル化が望ましくない用途、又は長期の貯蔵時間を可能にするための用途において、非置換ジ((C−C)アルキル)アミノ置換基を含有する式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を溶媒に希釈することにより、ゲル化を阻害又は防止することができる。
【0036】
(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、硬化性配合物の任意の他の構成成分と、構造、相、機能、存在する場合、金属含量、存在する場合、ケイ素含量、プロティシティー、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせにおいて異なっている。(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物と、これを含有する硬化性配合物は、任意の本発明のものではない化合物、混合物、又は、オルガノシロキサンと金属含有成分(例えば、金属含有触媒)の反応生成物とは、組成、金属原子濃度、構造、又は機能の点で異なっている。金属含有成分における金属がMと同じであることは非常に一様的である。例えば、硬化性配合物は、本発明のものではない混合物/生成物における金属の量よりも大きな金属M濃度を含有してよい。更に、又は代替的に、本発明の式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物、及び/又はその非プロトン性オルガノシランオキシド配位子成分は、本発明のものではない金属含有成分、又は、本発明のものではない混合物/生成物からin situで形成した成分の構造とは異なる構造を有してよい。更に、又は代替的に、本発明の式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、硬化性配合物内で接着促進剤及び/又は接着協同促進剤として機能し得るが、本発明のものではない金属含有成分は、本発明のものではない混合物/生成物の硬化触媒、又は関係ない構成成分として機能し得る。式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、構成成分(D)オルガノシリコン接着促進剤の接着促進効果を高めることにより、硬化により硬化性配合物から形成された硬化生成物の、基材への接着を相乗的に高めるための、接着協同促進剤として機能し得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、後述の調製1A、1AA、1B〜1G、2A〜2E、3A〜3E、及び4Aのいずれか1つ、又はいずれか2つの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態では、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、後述の調製物3A〜3Eのいずれか1つ、又はいずれか2つの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態では、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、後述の調製1A、1AA、1B〜1G、2A〜2E、及び4Aのいずれか1つ、又はいずれか2つの組み合わせであってよい。
【0038】
(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の使用には、硬化性配合物の硬化中における、接着促進剤として、又は構成成分(D)との接着協同促進剤としての使用が含まれる。(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、硬化性配合物中での代替の、又は追加の使用を有してよい。(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は通常、硬化性配合物中に0.01〜49.9重量%(wt%)の濃度で存在する。硬化性配合物の使用目的に応じて、特定の濃度が選択されてよい。いくつかの態様では、濃度は、硬化性配合物の総重量に対して31〜49wt%、あるいは11〜30wt%、あるいは0.01〜10wt%である。式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物が硬化性配合物中において、接着促進剤として、又は、構成成分(D)と共に接着協同促進剤として使用される場合、(A)の濃度は、0.01〜10wt%、あるいは0.02〜9wt%、あるいは0.1〜8wt%、あるいは0.1〜5wt%、あるいは0.1〜4wt%、あるいは0.01〜3wt%、あるいは0.1〜3wt%、あるいは0.5〜3wt%であってよい。有利には、(A)式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、(D)オルガノシリコン接着促進剤の接着促進効果を向上させることができる。
【0039】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は、nモル等量の、式(II):R−Si(R)(R)−[O−Si(R)(R)]−OH (II)[式中、下付き文字m及びn、並びに基R〜Rは、式(I)で定義したとおりである。]のオルガノシラノール化合物を、式(A):M(X(A)[式中、Mは、形式的な正の酸化状態δを有する金属原子Al、Ce、Fe、Sn、Ti、V、又はZrであり(Alについては+1〜+3、Ceについては+2〜+4、Feについては+1〜+6、Snについては+1〜+4、Tiについては+1〜+4、Vについては+1〜+5、又はZrについては+1〜+4)、式(A)のMの金属原子は、式(I)のMの金属原子と同じであり、式(A)におけるMの形式的な正の酸化状態δが、式(I)におけるMの形式的な正の酸化状態δと同一又は異なっており、場合により、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を得るための非プロトン性ルイス塩基であるLが存在し、下付き文字qは式(A)におけるM1の形式的な正の酸化状態δ+であり、各Xは独立してハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンであり、式(A)における各Xは独立して、式(I)におけるXと同一又は異なっている。]の金属塩反応物質、又はその溶媒和物と接触させることを含む方法により作製することができる。
【0040】
式(II)のオルガノシラノール化合物は、民間の供給元から入手することができる、又は、式(IV):H−[O−Si(R)(R)]−OH (IV)[式中、下付き文字m及び基R〜Rは、式(IV)で定義したとおりである。]のオルガノシラン−ジオール化合物を選択的にエンドキャップすることにより合成することができる。式(IV)のオルガノシラン−ジオール化合物は、平均して1分子当たり、各末端に1個のSiOH基を有し、この基を式R−Si(R)(R)−X[式中、R〜Rは、式(I)で定義したとおりであり、Xは独立してハロゲン化物又は非プロトン性オルガノヘテリルアニオンである。]のエンドキャッパ化合物の1モル等価物と接触させることにより、選択的にエンドキャップすることができる。非プロトン性オルガノヘテリルアニオンは上で定義したとおり、例えば、アルコキシド(即ちR)、カルボキシレート(即ちRC(=O)O)、オキシメート(即ち、RC=NO)、第2級アミノ(RN−)、又はトリヒドロカルビルシランオキシド(即ちRSiO)であることができる。各Rは独立して、(C−C20)アルキル、(C−C20)アルケニル、又は(C−C20)アリール、あるいは(C−C)アルキル又は(C−C)アルケニル、あるいは(C−C)アルキル、あるいはメチル、エチル、又はフェニルから選択される非プロトン性(C−C20)ヒドロカルビルである。エンドキャップ法は当該技術分野において周知である。
【0041】
式(IV):H−[O−Si(R)(R)]−OH (IV)のオルガノシラン−ジオール化合物は、民間の供給元から入手することができる、又は当該技術分野において周知の方法により作製することができる。例えば、縮合反応条件下において、水を式(B):(XSiR (B)[式中、基R及びRは、式(IV)で定義したとおりであり、基Xは独立して、ハロゲン化物又は上で定義したとおりの非プロトン性オルガノヘテリルアニオンである。]のジオルガノシランと接触させることにより作製することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、硬化性配合物は、式(VI):R−OM−[O−Si(R)(R)]−O−MO−R (VI)[式中、各Rは独立してR−Si(R)(R)−又はXであり、下付き文字m、金属M、並びに基R〜R、及びXは独立して、式(I)で定義したとおりである。]の二金属オルガノシラン−ジオキシドを含む。硬化性配合物は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の代わりに、あるいはこれに加えて、式(VI)の二金属オルガノシラン−ジオキシドを含んでよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明は、式(VII):c[−[O−Si(R)(R)]−O−M1*]O−R (VII)[式中、「c[...]は、OをM1*に結合させる環状基を示し、各Rは独立してR−Si(R)(R)−又はXであり、下付き文字m、金属M、並びに基R〜R、及びXは独立して、式(I)で定義したとおりである。]の金属オルガノシラン−ジオキシドを含む。硬化性配合物は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の代わりに、あるいはこれに加えて、式(VII)の二金属オルガノシラン−ジオキシドを含んでよい。
【0044】
式(A)におけるMの形式的な正の酸化状態δが、式(I)におけるMの形式的な正の酸化状態δと異なる場合、本方法は更に、場合に応じて、式(A)の金属塩反応物質における金属Mの、形式的な正の酸化状態δを、式(I)の金属オルガノシランオキシド化合物における金属Mの形式的な正の酸化状態δに転換する、還元又は酸化反応工程を含む。還元又は酸化反応工程は、還元又は酸化を行うための還元剤又は酸化剤をそれぞれ、更に含んでよい。式(A)におけるMのδが、式(I)におけるMのδより大きい場合に、還元剤を使用する。式(A)におけるMのδが、式(I)におけるMのδより小さい場合に、酸化剤を使用する。還元又は酸化反応工程は、接触工程の前、間、及び/又は後に行うことができる。還元又は酸化反応は、接触工程の反応容器と同一又は異なる反応容器で行ってよい。
【0045】
式(A)におけるMの形式的な正の酸化状態δが、式(I)におけるMの形式的な正の酸化状態δと同じ場合、本方法は、還元又は酸化工程を更に含まなくてよく、還元剤又は酸化剤を更に含まなくてよい。いくつかの実施形態では、式(A)における各Xは、式(I)におけるXと同じである。いくつかの実施形態では、式(A)におけるMのδは、式(I)におけるMのδと同じであり、本方法は、還元又は酸化工程を更に含まず、還元剤又は酸化剤を更に含まず、各Xは、式(A)と(I)で同じである。いくつかの実施形態では、各Xはハロゲン化物、あるいは非プロトン性オルガノヘテリルアニオン、あるいはアルコキシドである。
【0046】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の作製方法は、オルガノシラノール前駆体化合物(例えば、上述の式(II)のオルガノシラノール)を、ケイ素非含有の金属塩反応物質(例えば、上述の式(A)の金属塩反応物質)と接触させて、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物と、後述する副生成物とを含む生成反応混合物を得ることを含んでよい。金属塩反応物質(例えば、上述の式(A)の金属塩反応物質)は、民間の供給元から入手できる、又は任意の好適な方法によって合成することができ、それらの多くは当該技術分野において周知である。
【0047】
接触工程では、中間体の金属非プロトン性オルガノシランオキシド配位子錯体を経由することなく、オルガノシラノール前駆体化合物及び金属塩反応物質から直接、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を調製し、ここで金属は、式(I)におけるMと同一の金属ではない。式(A)におけるXが独立してハロゲン化物である場合、接触工程及び生成反応混合物は、オルガノヘテリル−金属錯体などの金属非求核性塩基を更に含み、ここで金属は、式(I)におけるMと同じ金属であり、生成反応混合物は、第2の副生成物を更に含む。副生成物は、オルガノヘテリル−金属錯体に対応するオルガノヘテリル−H、及び、ハロゲン化物に対応する金属ハロゲン化物塩である。オルガノヘテリルアニオンがアルコキシドであり、ハロゲン化物が塩素である場合、副生成物は、アルコキシドに対応するアルコール、及びハロゲン化物に対応する金属塩化物である。
【0048】
式(A)におけるXが独立して非プロトン性オルガノヘテリルアニオンである場合、オルガノヘテリルアニオン金属塩などの金属非求核性塩基(金属は、式(I)におけるMと同じ金属である)を接触工程から、そしてこのように得られた生成反応混合物から取り除くことができる。例えば、式(A)のXが独立してアルコキシドである場合、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の作製方法は、オルガノシラノール前駆体化合物(例えば、上述の式(II)のオルガノシラノール)を、ケイ素非含有の金属アルコキシド塩反応物質(例えば、各Xが独立してアルコキシドである、上述の式(A)の金属塩反応物質)と接触させて、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物と、アルコキシドに対応するアルコール副生成物とを含む生成反応混合物を得ることを含むことができる。
【0049】
式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物と副生成物とを含有する生成反応混合物は「そのままで」、即ち、更に処理することなく、例えば、重合性化合物、そして場合により、少なくとも1種の追加の構成成分と化合して硬化性配合物を得ることなく、使用することができる。あるいは、生成反応混合物を更に処理してよい。生成反応混合物を更に処理することは、副生成物を取り除くこと、任意の溶媒を取り除くこと、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を単離及び/若しくは生成すること、かつ/又は、生成反応混合物の溶媒を別の溶媒で、溶媒交換(置換)することを含んでよい。蒸発、蒸留、ストリッピング、ブロッティング、デカンテーション、粉砕、抽出、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせなどの、任意の好適な技術により、オルガノヘテリル−Hである副生成物(例えば、アルコール)、及び溶媒を生成反応混合物から取り除くことができる。濾過又は遠心分離/デカンテーションなどの任意の好適な技術により、金属ハロゲン化物である副生成物を、生成反応混合物から取り除くことができる。単離及び/又は精製は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を沈殿又は濾過すること、あるいは副生成物を沈殿又は濾過することを含んでよい。生成反応混合物を冷却することにより、かつ/又は、反応混合物に、予定の沈殿物が不溶性である有機液体などの不溶化添加剤を添加することにより、沈殿を行うことができる。空気及び湿気感受性材料用の従来技術、例えば、真空気体マニホールド装置(いわゆるシュレンク線技術))、カニューレ移動、不活性ガス雰囲気、無水溶媒などを使用して、接触工程、及び更なる処理工程を、実施することができる。これらの技術は既知である。
【0050】
代替の実施態様において、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の作製方法は、中間体の金属非プロトン性オルガノシランオキシド配位子錯体(金属はAl、Ce、Fe、Sn、Ti、V、又はZrではない)を経由することを含むことができる。このような実施形態では、本方法は、オルガノシラノール前駆体化合物(例えば、上述の式(II)のオルガノシラノール)を、有効量の第1族金属又は第2族半金属非求核性塩基、例えば、第1族金属又は第2族半金属アルコキシド(例えば、カリウム第3級ブトキシド)、第1族金属又は第2族半金属第2級アミド(例えば、リチウムジイソプロピルアミド)、第1族金属又は第2族半金属カルバニオン(例えば、第3級ブチルリチウム)、第1族金属又は第2族半金属水素化物(例えば、NaH又はCaH)、グリニャール試薬(例えば、エチル臭化マグネシウム)、あるいは第1族金属又は第2族半金属ディシラザン(例えば、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド)と予め接触させて、金属非プロトン性オルガノシランオキシド配位子中間体と中間体副生成物とを含む中間体反応混合物を得ることを含む。中間体副生成物は、アルコキシドに対応するアルコール、第2級アミドに対応する第2級アミン、カルバニオンに対応する炭化水素、分子水素、グリニャール試薬に対応する炭化水素(例えば、エタン)、又は、ディシラザンに対応するビス(トリアルキルシリル)アミンである。第1族金属は、Li、Na、K、又はCs、あるいはLi、Na又はK、あるいはLi、あるいはNa、あるいはKであってよい。第2族半金属は、半Be、半Mg、半Ca、又は半Ba、あるいは半Mg又は半Ca(即ち、0.5Mg又は0.5Ca)であってよい。予接触工程の後、オルガノシラノール前駆体化合物の代わりに金属非プロトン性オルガノシランオキシド配位子中間体を使用することを除いて、以前のパラグラフに記載した接触工程を実施する。
【0051】
金属非プロトン性オルガノシランオキシド配位子中間体と中間体副生成物とを含有する中間体反応混合物を「そのままで」、即ち更に処理をすることなく使用してよい、又は、更に処理してよい。中間体反応混合物を更に処理することは、金属非プロトン性オルガノシランオキシド配位子中間体を単離及び/若しくは精製すること、又は中間体反応混合物を濃縮若しくは溶媒交換することを含んでよく、これらは全て、次の接触工程の前に行う。単離及び/又は精製は、金属非プロトン性オルガノシランオキシド配位子中間体を沈殿させる又は濾過すること、あるいは副生成物を沈殿させる又は濾過することを含んでよい。中間体反応混合物を冷却することにより、かつ/又は、中間体反応混合物に、予定の沈殿物が不溶性である有機液体などの不溶化添加剤を添加することにより、沈殿を行うことができる。空気及び湿気感受性材料用の従来技術、例えば、真空気体マニホールド装置(いわゆるシュレンク線技術))、カニューレ移動、不活性ガス雰囲気、無水溶媒などを使用して、予接触工程、及び更なる処理工程を実施することができる。
【0052】
本明細書に記載する接触工程は一般に独立して、有機溶媒又はポリジメチルシロキサン流体などの溶媒中で実施されるため、反応混合物は通常、溶媒を更に含む。好適な非プロトン性有機溶媒の例は、炭化水素(例えば、イソアルカン、トルエン、及びキシレン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、アルコール(例えば、2−プロパノール及び1−ブタノール)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン)、並びにピリジンである。いくつかの態様では、溶媒は非プロトン性、あるいはプロトン性である。任意の好適な温度(例えば、−50〜150℃)で任意の好適な期間(例えば、1分〜1日)、接触工程を実施することができる。一般に、接触温度が高くなるほど、期間は短くなる。
【0053】
構成成分(B):重合性オルガノシリコン化合物
【0054】
(B)重合性オルガノシリコン化合物は付加硬化性であり、ヒドロシリル化硬化性又はラジカル硬化性を含む。ラジカル硬化性である(B)重合性オルガノシリコン化合物は、複数の異なる不飽和脂肪族基(例えば、アルキニル基及び/又はアルケニル基)の間で炭素−炭素結合を形成することにより、硬化する。ヒドロシリル化硬化性である(B)重合性オルガノシリコン化合物は、(B)重合性オルガノシリコン化合物の不飽和脂肪族基の1つと(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物との間で炭素−ケイ素結合を形成することにより、硬化する。(B)重合性オルガノシリコン化合物は、付加硬化性オルガノシリコンモノマー、付加硬化性オルガノシリコンプレポリマー、又は付加硬化性オルガノシリコンポリマーであってよい。したがって、(B)重合性オルガノシリコン化合物は、平均して1分子当たり、1個のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するオルガノシラン、あるいは、平均して1分子当たり、2〜4個のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するオリゴオルガノシロキサン、あるいは、平均して1分子当たり、5個以上のケイ素原子及び少なくとも2個の不飽和脂肪族基を有するポリオルガノシロキサン、あるいは、これらのいずれか2つ以上の組み合わせであってよい。それぞれのケイ素結合不飽和脂肪族基は、同じケイ素原子に結合した、最大で4個の不飽和脂肪族基の同一又は異なるケイ素原子に結合してよい。重合性オルガノシリコン化合物は、ケイ素原子1モル当たりの、ケイ素結合不飽和脂肪族基のモルのモル比(「SiUnsat/Si」)を特徴としてよい。いくつかの態様では、SiUnsat/Siモル比は0.05〜4、あるいは0.1〜4、あるいは0.2〜2である。重合性オルガノシリコン化合物は、組成、構造、硬化性、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせにおいて式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物と異なっている。例えば、式(I)における下付き文字mが少なくとも3であるため、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物はモノマーではない。重合性オルガノシリコン化合物は金属原子Mを非含有であってよい(即ち、欠いていてよい)。重合性オルガノシリコン化合物は、オルガノシランモノマー、オルガノシロキサンオリゴマー若しくはプレポリマー、又は硬化性ポリオルガノシロキサンポリマーであってよい。(B)重合性オルガノシリコン化合物は、当該技術分野において既知であるクラスタ化官能性ポリオルガノシロキサンであってよい。(B)重合性オルガノシリコン化合物は、ビス(ビニルジメチルシロキシ)末端ポリジメチルシロキサンであってよい。ビス(ビニルジメチルシロキシ)末端ポリジメチルシロキサンは、「D」単位(即ち[(CHSiO2/2])及び末端Mvi単位(即ち[(CH=CH)(CHSiO1/2])を有し、0.05〜2wt%、あるいは0.07〜1wt%のビニル(−CH=CH)基を有してよい。
【0055】
(B)重合性オルガノシリコン化合物の使用は、マトリックス前駆体としての使用を含み、マトリックスは、硬化性配合物の硬化中に前駆体から形成される。マトリックスは、硬化中に、構成成分(C)の(B)との反応により誘導される多価の架橋基を更に含んでよい。したがって、マトリックスはネットワークポリマーからなってよく、硬化生成物はマトリックスからなってよい。(B)重合性オルガノシリコン化合物は、硬化性配合物における更なる使用を有してよい。(B)重合性オルガノシリコン化合物は硬化性配合物中に、硬化性配合物の総重量を基準として、5〜98wt%、あるいは10〜95wt%、あるいは10〜75wt%の濃度で存在してよい。あらゆる(H)溶媒を含めずに、(B)重合性オルガノシリコン化合物は硬化性配合物中に、(I)溶媒を含めない硬化性配合物の総重量を基準にして、35〜99wt%、あるいは40〜95wt%、あるいは50〜90wt%の濃度で存在してよい。
【0056】
構成成分(C):オルガノハイドロジェンシリコン化合物。(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物は、1分子当たり1〜20、あるいは1〜10、あるいは1、あるいは2〜4、あるいは5〜20、あるいは11〜20の、ケイ素原子の平均数を特徴とすることができる。(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物は、平均して1分子当たり、少なくとも2.2個のケイ素結合水素原子、あるいは3〜10個のケイ素結合水素原子、あるいは3〜6個のケイ素結合水素原子を有してよい。(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物は、(C)におけるケイ素結合水素原子のモル数の、(B)におけるケイ素結合不飽和脂肪族基のモル数のモル比(「SiH/SiUnsat」)を特徴とすることができる。いくつかの実施形態では、SiH/SiUnsatモル比は0.5〜20、あるいは1〜20、あるいは1〜10、あるいは2〜5である。(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物は、「D」単位(即ち[(CHSiO2/2])、及びD単位(即ち[H(CH)SiO2/2])、及び末端Mvi単位(即ち[(CH=CH)(CHSiO1/2])を有する、ビス(トリメチルシロキシ)末端ポリ(ジメチル)(メチル、水素)シロキサンであってよい。
【0057】
(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物の使用には、硬化性配合物の硬化中に、(B)重合性オルガノシリコン化合物を架橋するための架橋剤としての使用を含む。(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物は、硬化性配合物中で更なる使用を有してよい。(B)重合性オルガノシリコン化合物がオルガノシランモノマー又はオルガノシロキサンオリゴマーである場合、(B)重合性オルガノシリコン化合物はまず、in situで反応して中間体の重合性反応生成物を形成することができ、次に、中間体の重合性反応生成物が硬化反応において(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物と反応して、その硬化生成物を得ることができる。(C)オルガノハイドロジェンシリコン化合物は硬化性配合物中に、硬化性配合物の総重量を基準として、0.1〜50wt%、あるいは1〜50wt%、あるいは5〜25wt%の濃度で存在することができる。
【0058】
構成成分(D):オルガノシリコン接着促進剤
【0059】
(D)オルガノシリコン接着促進剤は非プロトン性、あるいはプロトン性であってよい。(D)オルガノシリコン接着促進剤は、平均して1分子当たり1個のケイ素原子、あるいは2個のケイ素原子、あるいは3〜50個のケイ素原子、あるいは1〜5個のケイ素原子、あるいは、6〜20個のケイ素原子、あるいは、21〜50個のケイ素原子、あるいは51〜100個のケイ素原子を有してよい。いくつかの実施形態では、各ケイ素結合非プロトン性脱離基は独立して、非プロトン性アルコキシ基、非プロトン性脂肪族カルボキシ基、非プロトン性ジアルキルアミノ基、ハロゲン、又は非プロトン性オキシモ基、あるいは非プロトン性アルコキシ基、非プロトン性脂肪族カルボキシ基、非プロトン性ジアルキルアミノ基、ハロゲン、又は非プロトン性一価ウレタン基、あるいは非プロトン性アルコキシ基、非プロトン性脂肪族カルボキシ基、非プロトン性ジアルキルアミノ基、非プロトン性オキシモ基、又は非プロトン性一価ウレタン基、あるいは非プロトン性アルコキシ基、非プロトン性脂肪族カルボキシ基、ハロゲン、非プロトン性オキシモ基、又は非プロトン性一価ウレタン基、あるいは非プロトン性アルコキシ基、非プロトン性ジアルキルアミノ基、ハロゲン、非プロトン性オキシモ基、又は非プロトン性一価ウレタン基、あるいは非プロトン性脂肪族カルボキシ基、非プロトン性ジアルキルアミノ基、ハロゲン、非プロトン性オキシモ基、又は非プロトン性一価ウレタン基、あるいは非プロトン性アルコキシ基、あるいは非プロトン性脂肪族カルボキシ基、あるいは非プロトン性ジアルキルアミノ基、あるいは、ハロゲン、あるいは非プロトン性オキシモ基、あるいはプロトン性一価ウレタン基(例えば、NHC(=O)NH)である。
【0060】
(D)オルガノシリコン接着促進剤において、ケイ素結合非プロトン性脱離基は、式Si−LG[式中、Siは、非プロトン性脱離基を有するケイ素原子であり、LGは非プロトン性脱離基である。]の基である。縮合反応において、非プロトン性脱離基(LG基)は、水分子、又は、式HO−Si[式中、Siはケイ素結合ヒドロキシル基のケイ素原子であり、Si及びSiは異なるケイ素原子である。]のケイ素結合ヒドロキシル基により形式的に置換されることができる。置換により、形式的にそれぞれ、Si−OH+H−LG、又はSi−O−Si+HOが得られる。ケイ素結合非プロトン性アルコキシ基は、式Si−Oアルキルにより表すことができる。ケイ素結合非プロトン性脂肪族カルボキシ基は、式Si−OC(=O)R[式中、RはH又は脂肪族基であり、あるいはH又はアルキル基、あるいはアルキル基、あるいはシクロアルキル基、あるいは非環式アルキル基、あるいは直鎖アルキル基、あるいは分枝鎖アルキル基である。]により表すことができる。ケイ素結合非プロトン性ジアルキルアミノ基は、式Si−N(アルキル)[式中、各アルキル基は同一又は異なっている。]により表すことができる。ケイ素結合ハロゲンは、Si−ハロ[式中、ハロはF、Cl、Br、I、あるいは、F、Cl、又はBr、あるいは、Cl、又はBr、あるいは、Cl、あるいはBrである。]により表すことができる。ケイ素結合非プロトン性オキシモ基は、式Si−ONC(R[式中、各Rは独立して上で定義したとおりである。]により表すことができる。いくつかの実施形態では、各ケイ素結合非プロトン性脱離基は独立して、非プロトン性(C−C)アルコキシ基、非プロトン性(C−C)脂肪族カルボキシ基、非プロトン性ジ((C−C)アルキル)アミノ基、ハロゲン、又は非プロトン性(C−C)オキシモ基である。いくつかの態様では、各非プロトン性脱離基は、1〜6個の炭素原子、あるいは1〜4個の炭素原子、あるいは1〜3個の炭素原子、あるいは4〜6個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子;あるいは3〜4個の炭素原子;あるいは1個の炭素原子、あるいは2個の炭素原子を有する。いくつかの態様では、各非プロトン性脱離基は、非プロトン性(C−C)アルコキシ基、あるいは非プロトン性(C−C)アルコキシ基、あるいは非プロトン性(C−C)アルコキシ基、あるいは非プロトン性(C−C)アルコキシ基、あるいは非プロトン性(C−C)アルコキシ基、あるいはメトキシ、あるいはエトキシ、あるいは1−メチルエトキシ、あるいはプロポキシ、あるいは、1,1−ジメチルエトキシ、あるいは1−メチルプロポキシ、あるいは2−メチルプロポキシ、あるいはブトキシである。各ケイ素結合非プロトン性脱離基は、構造及び機能において、構成成分(D)のケイ素結合非プロトン性硬化性基とは異なる。
【0061】
(D)オルガノシリコン接着促進剤において、脱離基以外の各ケイ素結合非プロトン性硬化性基は独立して、エポキシ官能性ヒドロカルビル基、オキソ(即ち=O)基を非含有の一価の不飽和脂肪族基、一価の不飽和脂肪族カルボン酸エステル基、一価のイソシアネート基、又は一価のアルデヒド基であってよい。(D)の好適なエポキシ官能性接着促進剤は当技術分野において既知であり、市販されている。例えば、米国特許第4,087,585号、同第5,194,649号、同第5,248,715号、及び同第5,744,507号(第4〜5欄)を参照のこと。ケイ素結合非プロトン性硬化性基がエポキシ官能性ヒドロカルビルである(D)オルガノシリコン接着促進剤の例は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン、及びこれらの組み合わせである。ケイ素結合非プロトン性硬化性基が、オキソ(即ち=O)基を非含有の一価の不飽和脂肪族基である(D)オルガノシリコン接着促進剤の例は、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、及びウンデシルレニルトリメトキシシランである。ケイ素結合非プロトン性硬化性基が一価の不飽和脂肪族カルボン酸エステル基である(D)オルガノシリコン接着促進剤の例は、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピル3−アクリロイルオキシプロピル3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせである。ケイ素結合非プロトン性硬化性基が一価のイソシアネート基である(D)オルガノシリコン接着促進剤の例は、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン及び2−イソシアナトエチルトリメトキシシランである。ケイ素結合非プロトン性硬化性基が一価のアルデヒド基である(D)オルガノシリコン接着促進剤の例は、3−オキソプロピルトリエトキシシラン、3−オキソプロピルトリメトキシシラン、及び2−オキソエチルトリメトキシシランである。
【0062】
あるいは、(D)オルガノシリコン接着促進剤は、上述したとおりの、ヒドロキシル末端ポリオルガノシロキサンのエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物、又は、ヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンのエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンドであってよい。構成成分(D)は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンとの組み合わせを含んでよい。例えば、構成成分(D)は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物の混合物、又は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンとの混合物、又は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの混合物により例示される。反応生成物としてではなく物理的ブレンドとして使用される場合、これらの構成成分は、多液型(multiple−part)キットにおいて別々に貯蔵されてもよい。
【0063】
あるいは、(D)オルガノシリコン接着促進剤中の、脱離基以外の各ケイ素結合非プロトン性硬化性基は、メルカプト官能性ヒドロカルビル基であってよい。好適なメルカプト官能性ヒドロカルビル基としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。好適なメルカプト官能性D)オルガノシリコン接着促進剤は、米国特許第4,962,076号に記載されている。
【0064】
(D)オルガノシリコン接着促進剤の例としては、硬化生成物の、基材への接着を向上させるための接着促進剤が挙げられる。構成成分(D)は、硬化性配合物において更なる使用を有してよい。(Dオルガノシリコン接着促進剤は、硬化性配合物の総重量を基準にして、0.1〜10wt%、あるいは0.5〜8wt%、あるいは0.5〜5wt%の濃度で硬化性配合物中に存在してよい。
【0065】
構成成分(E)〜(J)は任意である。いくつかの実施形態では、硬化性配合物は、構成成分(E)〜(J)のうち少なくとも1つを更に含む。別の実施形態において、硬化性配合物は、構成成分(E)〜(J)のうち少なくとも1つ、あるいはそれぞれを非含有である(欠いている)。
【0066】
硬化性配合物の硬化開始、又は硬化速度の向上に有効な、構成成分(E)硬化剤
【0067】
(E)硬化剤は、(E1)ヒドロシリル化触媒、(E2)フリーラジカル硬化開始剤、又は(E1)と(E2)の(E3)組み合わせであってよい。(E1)ヒドロシリル化触媒は金属、金属を含有する化合物若しくは有機金属錯体、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。各金属は独立して、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、又はこれらの少なくとも2つのいずれかの組み合わせであってよい。通常はヒドロシリル化触媒は白金ヒドロシリル化触媒である。好適な白金ヒドロシリル化触媒の例は、塩化白金酸と、米国特許第3,419,593号における特定のビニル含有オルガノシロキサンとの錯体、例えば、塩化白金酸と1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの反応生成物の錯体である。ヒドロシリル化触媒は支持されていなくてもよく、あるいは、固体支持体(例えば、粒子状炭素、シリカ、又はアルミナ)上に支持(配置)されていてもよい。支持型ヒドロシリル化触媒は、粒子状炭素、シリカ、又はアルミナなどの粒子状固体を含む触媒金属非含有フィラーと、少なくとも1つの形質、構造、機能、反応性、又は性質が異なっている。
【0068】
構成成分(E1)のヒドロシリル化触媒の態様は、硬化性配合物の貯蔵中、即ち硬化前に安定性が増加するように構成されてよい。例えば、(E1)ヒドロシリル化触媒は、貯蔵安定性増加のために熱可塑性樹脂にマイクロカプセル化されてよい。マイクロカプセル化した(E1)ヒドロシリル化触媒は、熱可塑性樹脂のシェルにより囲まれ、密封して覆われた、(E1)ヒドロシリル化触媒のコアを含む。通常、マイクロカプセル化した(E1)ヒドロシリル化触媒を含有する硬化性配合物の貯蔵は、熱可塑性樹脂の融点又は軟化点を下回る温度にて行われる。硬化が所望される場合、マイクロカプセル化した(E1)(例えば、米国特許第4,766,176号及び同5,017,654号を参照のこと)を、熱可塑性樹脂の融点又は軟化点を上回る硬化性配合物中で加熱することにより、(E1)ヒドロシリル化触媒のコアを硬化性配合物の構成成分(A)〜(D)に曝露し、ヒドロシリル化硬化を触媒してよい。あるいは、硬化性配合物中の(E1)ヒドロシリル化触媒は、貯蔵安定性を増加させるための光活性触媒であってよい。(E1)に好適な光活性触媒の例は、白金(II)ビス(2,4−ペンタンジオネート)などの、白金(II)β−ジケトネート錯体である。通常、(E1)としての光活性触媒を含有する硬化性配合物の貯蔵は、光活性触媒を光活性化するために使用される波長の光が存在しない場所で行われる。例えば、(E1)としての光活性触媒を含有する硬化性配合物は、150〜800ナノメートル(nm)の1種以上の波長の光を遮る容器内で貯蔵してよい。硬化が所望される場合、光活性触媒を、硬化性配合物の中で150〜800nmの波長を有する紫外線に曝露することにより、構成成分(A)〜(D)の存在下において、(E1)としての光活性触媒を活性化させ、ヒドロシリル化硬化を触媒してよい。
【0069】
(E2)フリーラジカル硬化開始剤は、高温でフリーラジカルを生成する任意の化合物であってよい。(E2)ラジカル硬化開始剤は、有機ペルオキシド、例えば、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシケタール、ペルオキシ酸、アシルアルキルスルホニルペルオキシド、又はアルキルモノペルオキシジカーボネートであってよい。好適なペルオキシドの具体例としては、2,5−ジメチルー2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、過酸化ジクミル;t−ブチルペルオキシO−トルエート;環状ペルオキシケタール;t−ブチルヒドロペルオキシド;t−ブチルペルオキシピバレート、ラウロイルペルオキシド;t−アミルペルオキシ2−エチルヘキサノエート;ビニルトリス(t−ブチルペルオキシ)シラン;ジ−ブチルブチルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルパペルキシイソプロピル)ベンゼン、2,2,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロペルオキシド、及び2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキシン−3−(t−ブチル−ペルオキシ)−3,5,5−トリメチルヘキサノエートが挙げられる。「t−ブチル」とは、第3級ブチル、即ち1,1−ジメチルエチルを意味する。
【0070】
硬化性配合物中に存在する場合、(E)硬化剤は、硬化性配合物の総重量を基準として、1〜1,000ppmの濃度で存在してよい。好適な(E)硬化剤は多数の周知の方法により速やかに調製することができる、又は、ダウ・コーニング社若しくはAkzo Nobelなどの市販の業者から入手することができる。
【0071】
構成成分(F)である(E1)ヒドロシリル化触媒の阻害剤は、構成成分(E1)により触媒される硬化性配合物の硬化の阻害に関して、23℃で効果的である。(F)阻害剤は、白金ヒドロシリル化触媒の阻害剤であってよい。ヒドロシリル化触媒の阻害剤は既知である。例えば、(F)ヒドロシリル化触媒阻害剤は、米国特許出願第2016/0032060(A1)号の成分j)に関して記載された化合物のうちいずれか1つであってよい。化合物の例は、エチレン系不飽和又は芳香族系不飽和アミド、アセチレン系化合物、不飽和炭化水素ジカルボン酸エステル、共役エン−イン、オレフィン系シロキサン、ヒドロペルオキシド、ニトリル、ジアジリジン、カルボン酸及び不飽和アルコールから誘導されるカルボン酸エステル、アミン、ホスフィン、硫黄化合物、ヒドロペルオキシ化合物、及びこれらのいずれか2つ以上の組み合わせである。(E1)ヒドロシリル化触媒の(F)阻害剤は、3−メチルブチン−2−オール(HC≡C−C(CHOH)であってよい。硬化性配合物中に存在する場合、(F)阻害剤は、(E1)ヒドロシリル化触媒100部当たり、1部〜100部の濃度で存在してよい。好適な(F)阻害剤は、多数の既知の方法により速やかに調製することができる、又は、シグマ−アルドリッチ社(St.Louis(Missouri,USA))などの市販の業者から入手することができる。
【0072】
構成成分(G)フィラー。フィラーは、金属粒子、セラミック粒子、シリカ、粉末石英、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせであってよい。金属粒子の金属は、Ag、Au、Al、Co、Cu、Fe、Ni、Pd、Pt、Sn、Ti、Zn、若しくはZr、又はこれらのいずれか2つ以上の合金、又は、金属若しくは金属合金のシェルと、異なる金属、セラミック、炭素粒子、若しくはシリケートガラス球体のコアとを有するコアシェル粒子であってよい。セラミック粒子は、窒化アルミニウム若しくは窒化ホウ素などの窒化物、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化銀、酸化亜鉛、若しくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせなどの金属酸化物、アルミニウム三水和物若しくは水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、オニックス、即ち炭化ケイ素若しくはタングステンカーバイドなどの金属炭化物、又はチタン酸バリウムなどの金属チタン酸塩である、又はこれらから本質的になるセラミック材料で構成されてよい。シリカは沈殿シリカ、ヒュームドシリカであってよい。炭素粒子は、カーボンナノチューブ(例えば、単層若しくは複層)、粉末ダイヤモンド、粉末グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせであってよい。
【0073】
(G)フィラーを処理するための構成成分(H)処理剤。好適な(H)フィラー処理剤の例は、米国特許第6,169,142号の第4欄の42行目から第5欄の2行目まで、及び、米国特許第8,258,502(B2)号の「構成成分(VII)」に関する第7欄64行目〜第8欄50行目に開示されている。硬化性配合物中に存在する場合、構成成分(H)の量は、硬化性配合物の総重量を基準として、0.01〜5wt%、あるいは0.05〜2wt%、あるいは0.1〜1wt%の範囲であり得る。
【0074】
構成成分(I)ビヒクル。ビヒクルの種類は、溶媒、希釈剤、及び分散剤から選択してよい。(I)ビヒクルの例は、トルエン、キシレン、ヘプタン、メチルエチルケトン、及びテトラヒドロフランなどの有機溶媒、並びに、25℃にて1〜5センチポアズの動的度を有するポリジメチルシロキサンなどの、低動粘度シリコーン流体である。硬化性配合物中に存在する場合、構成成分(I)の量は、硬化性配合物の総重量を基準として、0.1〜50wt%、あるいは1〜30wt%、あるいは1〜20wt%の範囲であり得る。好適な(I)ビヒクルは、多数の既知の方法により速やかに調製することができる、又はダウケミカル社若しくはシグマ−アルドリッチ社などの市販の業者から入手することができる。
【0075】
構成成分(J)着色剤
【0076】
(J)着色剤は、目視できる色を金属−ポリオルガノシロキサン混合物/組成物に付与するのに効果的であり得る。着色剤は、蛍光染料又は吸収染料などの染料、蛍光体、顔料、光学拡散物質、フォトニック結晶、複数の量子ドット、ナノ粒子状二酸化チタン、カーボンナノチューブ、及びこれらのいずれか2つ以上の組み合わせであってよい。着色剤の例は当技術分野において既知であり、米国特許第4,962,076号、同第5,051,455号、及び同第5,053,442号に開示されている。構成成分(L)の量は、選択される光学的に活性な剤及び最終使用用途を含む様々な因子に左右される。金属−ポリオルガノシロキサン材料中に存在する場合、構成成分(L)の量は、金属−ポリオルガノシロキサン材料の総重量を基準として、0.01〜50wt%、あるいは0.1〜10wt%、あるいは0.5〜2wt%の範囲であり得る。好適な(L)着色剤は、多数の既知の方法により速やかに調製することができる、又は市販の業者から入手することができる。
【0077】
硬化性配合物は、以下の任意の構成成分:(K)酸受容体、(L)酸化防止剤、(M)鎖延長剤、(N)腐食防止剤、(O)反応性希釈剤、(P)安定剤(例えば、熱及び/若しくは光への曝露に対して、硬化性配合物及び/若しくはその硬化生成物を安定化させるため)、又は(Q)界面活性剤の任意の1つ以上を非含有であってよい、あるいは、更に含んでよい。先に述べたとおり、硬化性配合物は付加硬化性、例えば、ヒドロシリル化硬化性、フリーラジカル硬化性、又は二重硬化性である。二重硬化性配合物は、フリーラジカル及びヒドロシリル化硬化機構により硬化可能である。フリーラジカル硬化は、照射硬化、ペルオキシド硬化、又は両方を含むことができる。硬化速度は、熱、圧力、又は両方を硬化性配合物に加えることにより向上することができる。
【0078】
硬化性配合物は、1部配合物として、又は複数部配合物、例えば、2部配合物として配合することができる。
【0079】
硬化性配合物を硬化して硬化生成物を得ることができる。硬化は付加硬化、例えば、フリーラジカル硬化又はヒドロシリル化硬化であってよい。硬化は、70〜200℃、あるいは80〜150℃、あるいは90〜120℃の硬化温度で硬化性配合物を加熱することを含んでよい。有利には、硬化により気泡を非含有の(例えば、10倍で目視した際に気泡を非含有の)硬化生成物を生成することができる。
【0080】
硬化性配合物及び硬化生成物を、接着剤コーティング、エラストマー、カプセル化用材料、ポッタント、又はシーラントとして使用することができる。硬化性配合物及び硬化生成物は、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を欠くことを除いて同一の配合物、又は後者から調製した硬化生成物と比較して、向上した基材への接着性を有すると予想される。硬化性配合物又は硬化生成物を、接着、コーティング、エラストマー機能性、カプセル化、ポッティング、又は封止が必要な基材に適用することができる。適用した硬化性配合物を基材上で硬化して、基材上で硬化生成物を得ることができる。
【0081】
配合物により接着、コーティング、カプセル化、ポッティング、又は封止されるのに好適な基材物質としては、シリケートガラス、金属、有機ポリマー、ポリオルガノシロキサン、木材、紙、並びに半導体材料(例えば、ケイ素及び炭化ケイ素)が挙げられる。接着、コーティング、カプセル化、ポッティング、又は封止が必要な基材は、容器、布地、プラスチックフィルム、紙、プリント配線基板、機械の構造部材、自動車若しくは製造された物品、又は生地であってよい。
【0082】
硬化性配合物及び硬化生成物は、建造、建築、消費者製品、エレクトロニクス、エネルギー、インフラ、パッケージング、遠隔通信、及び輸送などの様々な業界において有用である。例えば、硬化性配合物及び硬化生成物は、光電池モジュールにおける結合層としての接着剤として、光電池を基板又はその上層基板(superstrate)に接着するのに使用することができる。硬化性配合物及び硬化生成物はコーティングとして、自動車用途などの車両用途におけるエアバッグを覆うために使用することができる。硬化性配合物及び硬化生成物は、電子デバイスの構成部品の振動を取り除くためのエラストマーとして使用することができる。硬化性配合物及び硬化生成物を、カプセル化用材料として、発光ダイオード(LED)などの半導体光、光起電力若しくは太陽パネル若しくは電池などの光起電力デバイス、又はプリント回路などの電子デバイスをカプセル化するために使用することができる。硬化性配合物及び硬化生成物をポッタントとして使用して、マイクロインバータなどの電力インバータ構成部品を収容するために使用することができる。硬化性配合物及び硬化生成物をシーラントとして、表示パネルをスマートフォン又は薄型テレビの枠に封止するために使用することができる。
【0083】
有利には、硬化性配合物を硬化することにより調製する硬化シリコーン生成物は、硬化生成物が基材に対して良好な接着性を達成するために、基材表面に存在する含水量に対して改善された耐性を有することができる。これは、本発明の硬化性配合物を適用する前に、特に、基材表面の含水量が>0〜≦1.8wt%である場合に、基材表面を予乾燥する必要がない場合があることを意味する。対照的に、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を欠いていることを除いて同一の比較(本発明のものではない)硬化性配合物の硬化生成物は、同じ含水量を有する基材表面に対して著しく低い接着性を有し得る。
【0084】
有利には、硬化性配合物を硬化することにより調製した硬化生成物の接着性は、硬化性配合物がヒドロシリル化硬化性又はフリーラジカル硬化性などの付加硬化性配合物である場合に、更に改善される可能性がある。ヒドロシリル化硬化性配合物をヒドロシリル化硬化したことにより調製するヒドロシリル化硬化生成物による、基材への接着性を成し遂げるためには、70〜120℃、あるいは80〜110℃、あるいは90〜100℃の、比較的低い接着形成温度(adhesion−producing temperature)にて加熱することで十分であり得る。対照的に、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を欠いていることを除いて同一の比較(本発明のものではない)ヒドロシリル化硬化性配合物では、≧140℃のより高い接着形成温度が必要となる場合がある。本発明のヒドロシリル化硬化性配合物が白金ヒドロシリル化触媒を含有している際、接着性の改善が更に向上し、耐熱安定性が有益に増加し得るが、本発明のものではないヒドロシリル化硬化性配合物は、テトラブチルチタネートなどのチタン触媒を含有し、不十分な熱安定性を示す場合がある。
【0085】
有利には、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物は液体であってよく、これにより、シリコーンプレポリマーなどの他のシリコーン材料、又は、ジメチルシリコーン若しくはメチル、フェニルシリコーンをベースにする、これらのプレポリマー及び硬化性ポリマーなどの硬化性シリコーンポリマーとの相溶性を高めることができる。この相溶性により有益に、硬化性配合物及び硬化生成物が光学的に透明となることができ、光学用途が可能となる。
【0086】
いくつかの実施形態では、硬化性配合物が硬化され、得られる硬化生成物が低温環境(例えば、<100℃)、湿気無し、又は低い相対湿度(<50%RH)環境、又は両方で使用される。いくつかの実施形態では、硬化性配合物を硬化する際、又は得られた硬化生成物を100℃を上回る温度で使用する場合、硬化生成物を使用する環境の相対湿度は<50%RH、あるいは<40%RH、あるいは<30%RHである。
【0087】
実施例のいずれか1つの記述した形質若しくは制限、いずれか1つの記述したマーカッシュ亜群若しくは種、又はいずれか1つの記述した範囲若しくは部分範囲の数が、特許請求の範囲に左右され、かつ特許請求の範囲を補正するのに十分な支持をもたらし得るように、この説明は意図的に記載されている。形質又は制限の一覧の後に続く「及びそれらの溶媒和物」及び「又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせ」などの包括的なフレーズは、形質又は制限のそれぞれ1つに独立して適用され、個別の形質又は制限としてもまた存在する。
【0088】
本明細書において別段に定義しない限りは、名称の付いた一般名は以下の意味を有する。「あるいは」は、異なる実施形態に先行する。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、1つ以上を指す。あらゆる比較実施例は説明のためだけに使用され、先行技術であってはならない。「〜を非含有」又は「〜を欠いている」とは、完全な不存在、あるいは、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、H−NMR、13C−NMR、若しくは29Si−NMR)、又はフーリエ変換赤外(FT−IR)分光法を使用して検出できないことを意味する。「本発明」及び「本発明の」は、発明全体ではなく、例示的な実施形態又は態様を意味しなければならない。「IUPAC」は国際純正・応用化学連合(IUPAC Secretariat,Research Triangle Park(North Carolina,USA))である。要素A及びBのマーカッシュ群は、「A及びBから選択される要素」、「A及びBからなる群から選択される要素」、あるいは「要素A又はB」として等価に表現することができる。各要素は独立して亜群又は群の種であってよい。「〜であってよい」は選択の余地を与えるものであって、命令するものではない。「動作可能な」とは、機能的に可能である又は有効であることを意味する。「任意の(に)」とは、不存在である(又は除外されている)、あるいは存在する(又は含まれている)ことを意味する。性質は、測定のための標準的な試験法及び条件(例えば、粘度については23℃及び101.3kPa)を使用して測定される。「範囲」には、整数の範囲が分数値を含まないことを除いて、端点、部分範囲、並びに範囲内の全ての値及び/又は部分合計される分数値が含まれる。成分の混合物からある成分を取り除くことには、その成分を選択的に誘導体化して/反応させて誘導体/生成物を形成することを、その誘導体/生成物を続いて、物理的に混合物の他の成分から分離しない限り、含まない。
【0089】
本明細書において別段に定義しない限りは、名称の付いた化学技術用語は、IUPACにより定義される意味、又は、非IUPAC用語については、Hawley’s CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY 11th edition,N.Irving Sax & Richard J.Lewis,Sr.,1987(Van Nostrand Reinhold)により定義される意味を有する。IUPAC用語のいくつかは、IUPAC.Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(the「Gold Book」)Compiled by A.D.McNaught and A.Wilkinson.Blackwell Scientific Publications,Oxford(1997).XML on−line corrected version:http://goldbook.iupac.org(2006−)created by M.Nic,J.Jirat,B.Kosata;updates compiled by A.Jenkins.ISBN 0−9678550−9−8.doi:10.1351/goldbook.に見出される。「非プロトン性」とは、−OH、−NH、−SH、及び−PH基を非含有であることを意味する。重量平均分子量(「M」)などの、ポリマーの平均分子量は、ポリスチレン基準でゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定する。化学元素、及び化学元素の族は、2013年5月1日付けの版の元素周期表の、IUPACにより出版されたものを意味しなければならない。「化合物」は、ある分子、又はこのような分子の集合を意味しなければならず、「組成物」は、2種類以上の異なる化合物の混合物(ここで、混合物は非硬化性であるように構成することができる、あるいは硬化性であるように構成することができる)を意味しなければならず、「配合物」は、特定の用途のために、特定の材料特性、例えば、音響的、化学的、電気的、磁気的、機械的、光学的、物理的、放射線的、若しくは熱的性質、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを有するように構成された組成物を意味しなければならない。硬化オルガノシロキサンなどの硬化生成物は、その硬化生成物を作製するために使用する特定の反応物質及び硬化条件に応じて変化し得る構造を有することができる。この変動性は限定されていないものの、反応物質の構造(例えば、主鎖及び/又は硬化性基の構造)、並びに硬化の化学的性質及び条件に従い制限される。「1部配合物」は、全ての構成成分を、硬化生成物を作製するのに必要な割合で含有する混合物を意味する。1部配合物は、硬化プロセスを開始、加速、又は完了するために、湿気(縮合硬化のため)、熱(付加硬化のため)、又は光(付加硬化のため)などの外部因子を使用してよい。「2部配合物」は、早すぎる硬化の開始を防止するために、異なる反応性を持つ構成成分を2つの個別の、そして補助的な配分に分離する系を意味する。例えば、触媒ではなくモノマー、プレポリマー、又は硬化性ポリマーを第1の部に含めることができ、モノマー、プレポリマー、又は硬化性ポリマーではなく硬化触媒を、第2の部に含めることができる。硬化開始は、第1の部と第2の部を一緒に化合して、1部配合物を形成することにより達成される。「置換された」とは、水素の代わりに、過置換を含む1つ以上の置換基を有することを意味する。各置換基は独立して、ハロゲン原子、−NH、−NHR、−NR、−NO、−OH、−OR、オキソ(=O)、−C≡N、−C(=O)−R、−OC(=O)R、−C(=O)OH、−C(=O)OR、−SH、−SR、−SSH、−SSR、−SC(=O)R、−SOR、−OSOR、−SiR、又は−Si(OR)[式中、各Rは独立して非置換(C−C30)ヒドロカルビル、あるいは(C)ヒドロカルビルである。]であってよい。ハロゲン原子は、F、Cl、Br、又はI、あるいは、F、Cl、又はBr、あるいは、F又はCl、あるいは、F、あるいは、Clである。各置換基、あるいは全ての置換基は非プロトン性、あるいはプロトン性であってよい。「ビヒクル」とは、担体、希釈剤、分散剤、キャリア、上清、又は別の材料のための溶媒として機能する液体を意味する。
【0090】
本明細書における任意の化合物は、自然に豊富な形態、及び/又は同位体豊富な形態を含むその全ての同位体形態を含む。同位体豊富な形態は、更なる使用、例えば、同位体豊富な形態の検出が治療又は調査に役立つ医学的又は対偽造用途を有してよい。
【0091】
いくつかの態様では、本明細書に記載する任意の組成物又は配合物は、元素周期表の第1族〜第18族の任意の1種以上の化学元素を含有してよい。別の態様において、少なくとも1種のこのような化学元素は特に、このような除外が組成物又は配合物を無効にする場合を除いて、組成物又は配合物から除外される。例えば、Si原子はケイ素化合物から除外されず、炭素原子はオルガノ基から除外されない。いくつかの態様では、除外されない元素はSi、O、H、C、N、F、Cl、Br、及びI、あるいはSi、O、H、C、F、及びClである。
【0092】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明され、本発明の実施形態は、この非限定的な実施例の特徴及び限定の任意の組み合わせを含んでもよい。周囲温度は別段の表示がない限り、約23℃である。
【実施例】
【0093】
29Si−NMR装置及び溶媒:Varian 400MHz Mercury分光計を使用した。Cを溶媒として使用した。調製及び実施例で使用する用語「−OH含有量」とは、生成物の総重量(又はモル)の割合としての、HO−基の重量(又はモル)を意味し、ケイ素原子に結合したHO−基のみが含まれる。
【0094】
熱勾配接着試験法:ポリカーボネート基材の代わりにポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)基材を、そしてAhnらの接着剤サンプルの代わりに後述の試験材料を使用したことを除いて、D.Ahn,N.E.Shephard,et al.,「Thermal Gradient Enabled XPS Analysis of PDMS Elastomer Adhesion to Polycarbonate」,Macromolecules,2007;40:3904〜3906、及びその補足情報により記載される試験法を使用した。各PBT基材は場合に応じて、そのままで、又は予乾燥して使用した。「XPS」はX線光電子分光法である。試験法では、上から下にかけて、上部アルミニウム試片、アルミホイル、試験材料の適用層、及び下部アルミニウム試片を連続的に含む試験装置を使用した。アルミホイルと上部アルミニウム試片との間に適用されるスプレー式固定接着剤により、アルミホイルを上部アルミニウム試片に接着させた。装置は、2つの銅ワイヤ(直径1mm)を更に含み、これらはPBT基材の各端に配置され、上部アルミニウム試片とPBT基材との間でスペーサとして機能し、かつ試験材料のボンド部の厚さを維持する。試験材料の適用層は厚さ0.38mmである。上部及び下部アルミニウム試片は同一であり、それぞれ、冷却端に近接して画定される冷却通路、及び、冷却端の遠位にある加熱端に近接して画定される加熱通路を有する。冷却通路は、通路を通して冷却液が各試片に流れ、試片の冷却端を冷却するために構成される。加熱通路は、通路を通して加熱液が各試片に流れ、試片の加熱端を加熱するために構成される。各試片の冷却及び加熱を共に行うことで、各試片の縦方向に沿って同一の熱勾配が形成され、試片に、互いに反対に配置される低温(Tlow)冷却端、及び互いに反対に配置される高温(Thigh)加熱端がもたらされる。Thigh>Tlowである。例えば、Thighは140〜200℃であってよく、Tlowは40℃であってよい。試片に沿った熱勾配は、℃/mm=Thigh−Tlow/L[式中、Lは試片の長さである。]で計算される。試験中に、試験装置を圧縮し、熱勾配が5分間、試験材料の適用層に適用される。次に熱勾配を取り除き、上部アルミニウム試片を、アルミホイルが上部アルミニウム試片から確実に剥離するように注意して試験装置から取り除き、アルミホイル、試験材料の適用層、及び下部アルミニウム試片(及びCuワイヤ)を連続的に含む3層積層体を得る。積層体の適用層に沿った第1の位置(「硬化前面」)において、試験材料は、硬化を始めるのに十分熱くなっている。(冷却端に近い未硬化材料は液状であり、拭き取ることができる。)試験材料が硬化を始める最低硬化温度(Tcure)は、下部アルミニウム試片の加熱端から第1の位置までの距離を測定し、熱勾配を計算に入れてTcureを得ることにより測定される。140°のThighで得られたTcure値は、熱勾配因子が適切に調整されているため、200℃のThighで得られたTcure値に相当する。アルミホイル/試験材料界面における発泡の有無を、試験材料の貯蔵寿命安定性を評価する方法として、裸眼で観察した。気泡が存在しないことは、満足のいく貯蔵寿命安定性を示した。アルミホイルと試験材料との間に大きな気泡(直径が>1mm)、溝、又は多数の小さな気泡(直径<1mm)が存在することは、満足のいかない貯蔵寿命を示した。
【0095】
90°剥離接着性試験法:熱勾配接着試験法で得た3層積層体を使用して、鋭利なかみそりの刃でアルミホイルの端を切断し、試験材料の中心に1.27cm幅の剥離ストリップを残した。試験材料の適用層の冷却端に近い第1の位置から、アルミホイルを5±1mm切断して、手動で剥離ストリップを数ミリメートル完全に剥がすことにより、界面の傷をつけた。積層体の面に対して90°(垂直)にて、切断したアルミホイルに引張力を適用した(剥離ストリップの「冷却」端に1,500グラム重が加わった)。試験材料のアルミホイルと適用層とを含む2層が、接着破壊により下部アルミニウム試片から剥離されると、界面の傷が拡大することができる。試験材料の適用層に沿ったどこかの第2の位置において凝集破壊が生じ、界面の傷の拡大が停止する。硬化した試験材料で発生する凝集破壊における硬化温度(TCF)は、下部アルミニウム試片の加熱端から第2の位置までの距離を測定し、熱勾配を計算に入れてTCFを得ることにより測定される。TCF≧Tcureである。TcureとTCFの値が近い場合、熱勾配接着試験法におけるThighに対してより低い値を使用してより良い分析を得ることを除いて、熱勾配接着試験法及び90°剥離接着性試験法を繰り返してよい。切断したアルミホイルに適用される最大の引張力を、重量ポンド毎平方インチ(lb−f/in)でピーク応力として記録し、本明細書ではキロパスカル(kPa)に変換する。1.00lb−f/inは6.89kPaに等しい。
【0096】
他の全てが等しく、接着剤のTCFの値が低ければ、接着性は良好になる。これは、接着剤が、自身に接着するより基材(PBT)により強力に接着しない限り、接着剤は必ず凝集するためであり、それ故、接着剤のTCF値が低ければ、基材に試験材料を強力に接着させるために必要な硬化温度も低くなる。基材に試験材料を強力に接着させるために必要な硬化温度が低いほど、強力な接着性を得るために適用する必要がある硬化温度も低くなる。強力な接着性を得るために適用する必要がある硬化温度が低いほど、接着剤を含有する物品及びデバイスを製造するためのプロセスウィンドウは広くなり、サイクル時間は早くなり、物品及びデバイス用の設計オプションが柔軟になり、エネルギーコストが低くなる。
【0097】
調製A:以下の構成成分の混合物:(B1)ビス(ビニルジメチルシロキシ)末端ポリジメチルシロキサン、(C1)ビス(トリメチルシロキシ)末端ポリ(ジメチル)(メチル、水素)シロキサン、(D1)3−グリシドキシプロピル−トリメチルシラン、(E1−1)白金ヒドロシリル化触媒、(F1)3−メチルブチン−3−オール、(G1)(H1)ビニルジメチルシリル化及び(H2)トリメチルシリル化により処理されている処理済みシリカ、(G2)石英(粉末、5μm、30wt%〜<50wt%)、並びに(J1)カーボンブラック(0.1wt%〜<1wt%)。(極微量のキシレン、エチルベンゼン、及び酸化アルミニウムを含有してよい。)
【0098】
調製1:式(II)のオルガノシラノール化合物の実施例の合成
【0099】
調製1:250mLの3つ口フラスコ内で、101.6グラム(g)のジ(OH−末端)PDMS流体(Gelest DMS−S12;「PDMS」はポリジメチルシロキサンを意味する)を、33.2gの1,2−ジビニル−1,1,2,2−テトラメチルジシラザンを混合した。0.1gのトリフルオロ酢酸(TFA)を添加し、反応を触媒した。混合物を室温で80分間攪拌し、ロータリエバポレータを1〜3mmHg真空で、約30℃で2時間使用して揮発物を取り除いた。所望の生成物を生成し、これは透明液体(114.2g)としての残留物(揮発物ではない)であった。29Si NMRに基づくと、生成物は3.2wt%の−OH含有量、及び5.5wt%のVi含量を有し、以下の式:Vi(Me)Si[OSi(Me)OH[式中、nは5又は6であり、Viはビニルであり、Meはメチルである。]のシリコーン流体を50wt%を上回って含んだ。
【0100】
調製A及び1では、金属M又は構成成分(A)を含有していなかった。
【0101】
調製1A、1AA、1B、1C、1D、1E、1F、及び1G:式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物の実施例の合成
【0102】
調製1A:金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A1)の合成。2.70gのアルミニウム第2級ブトキシド溶液(第2級ブタノール内に70%)を、8.0gのトルエン、及び調製1の生成シリコーン流体(15.70g)と混合した。混合物を室温で30分間撹拌し、ロータリエバポレータを1〜3mmHg真空で、約50℃で2時間使用して揮発物を取り除いた。計算すると、物質収支保存されたと考えられ、生成物1グラムあたり、0.54ミリモルのAlのAl含量(mmol/g、1.46wt%)及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有した、透明液体(14.2g)としての、残留物の(揮発物ではない)生成した生成物(A1)。
【0103】
調製1AA:金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A2)の合成。3.68gのアルミニウム第2級ブトキシド溶液(第2級ブタノール内に70%)を、13.0gのトルエン、及び調製物1の生成シリコーン流体(17.1g)と混合した。混合物を室温で30分間撹拌し、ロータリエバポレータを1〜3mmHg真空で、約50℃で2時間使用して揮発物を取り除いた。計算すると、物質収支保存されたと考えられ、0.67mmol/g(1.81wt%)のAl含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有した、透明液体(15.6g)としての、残留物の(揮発物ではない)生成した生成物(A2)。
【0104】
調製1B:金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A3)の合成。1.90gのチタンテトライソプロポキシド(TPT)を、8.0gのトルエン、及び調製1のシリコーン流体(16.35g)と混合した。混合物を室温で30分間撹拌し、ロータリエバポレータを1〜3mmHg真空で、約50℃で2時間使用して揮発物を取り除いた。計算すると、物質収支保存がされたと考えられ、0.44mmol/g(2.1wt%)のTi含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有した、透明液体(15.15g)としての、残留物の(揮発物ではない)生成した生成物(A3)。
【0105】
調製1C:金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A4)の合成。35gのジルコニウムn−プロポキシド(NPZ)溶液(n−プロパノール中に70%)を、8.0gのトルエン、及び調製物1のシリコーン流体(15.60g)と混合した。混合物を室温で30分間撹拌し、ロータリエバポレータを1〜3mmHg真空で、約50℃で2時間使用して揮発物を取り除いた。計算すると、物質収支保存がされたと考えられ、0.35mmol/g(3.2wt%)のZr含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有した、透明液体(14.4g)としての、残留物の(揮発物ではない)生成した生成物(A4)。
【0106】
調製1D(予想):金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A5)の合成。調製1Aの生成物(5g)を、調製1Bの生成物(5g)と混合し、計算すると、物質収支保存されたと考えられ、0.27mmol/g(0.73wt%)のAl含量、0.22mmol/g(1.05wt%)のTi含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有した、透明液体としての10gの生成物(A5)(残留物)を得た。
【0107】
調製1E(予想):金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A6)の合成。調製1Aの生成物(5g)を、調製1Cの生成物(5g)と混合し、計算すると、物質収支保存されたと考えられ、0.27mmol/g(0.73wt%)のAl含量、0.17mmol/g(1.6wt%)のZr含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有した、透明液体としての10gの生成物(A6)(残留物)を得た。
【0108】
調製1F(予想):金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A7)の合成。2.70gのアルミニウム第2級−ブトキシド溶液の代わりに、2.70gの鉄第2級−ブトキシド溶液(第2級−ブタノール内に70%)を使用したことを除いて、調製1Aの手順を繰り返した。計算すると、物質収支保存されたと考えられ、0.54mmol/g(3.1wt%)のFe含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有した、透明液体(14.2g)としての、残留物の(揮発物ではない)生成物(A7)を生成した。
【0109】
調製1G(予想):金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A8)の合成。2.70gのアルミニウム第2級−ブトキシド溶液の代わりに、2.70gのバナジウム第2級−ブトキシド溶液(第2級−ブタノール内に70%)を使用したことを除いて、調製1Aの手順を繰り返した。計算すると、物質収支保存されたと考えられ、0.54mmol/g(2.75wt%)のV含量、及び2.0mmol/g(5.4wt%)のVi含量を有した、透明液体(14.2g)としての、残留物の(揮発物ではない)生成物(A8)を生成した。
【0110】
実施例1〜5:硬化性配合物の調製。6つの別々の実験において、歯科用ミキサを使用して、98部の調製Aを、それぞれ、調製1A、1AA、1AA、1B、及び1Cの、金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物(A1)、(A2)、(A2)(再び)、(A3)、及び(A4)の異なる1つ(2部)と混合し、それぞれ実施例1〜5の硬化性配合物を得、下表1に、陰性対照(「陰性対照」、調製A)と共に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例A1〜A5:熱勾配接着。3つの異なる実施において、実施例1〜5の硬化性配合物のそれぞれを、熱勾配接着試験法に従い硬化に通して、Tcureを得た。実施のうちの1つの結果を、後の表2に示す。各PBT基材を、実施例5を除いて使用前に予乾燥した。
【0113】
実施例B1〜B5:90°剥離接着。実施例A1〜A5の実施のうちの1つにおける硬化配合物を90°剥離接着性試験法に通し、TCF及び最初の(時間の経っていない)ピーク応力を得た。結果を、後の表2に示す。
【0114】
硬化配合物中の発泡の有無を観察した。これらの観察結果もまた、以下の表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
表2のデータにより示されるとおり、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を含有しない陰性対照と比較して、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物を含有する本発明の硬化性配合物(場合に応じて、構成成分(A1)〜(A5)のうちの1つ)、及び、本発明の硬化性化合物を硬化することにより調製した本発明の硬化生成物は、以下の有利な技術的効果(i)〜(iv)のうち2つ以上を有する:(i)本発明の実施例1〜5より、次のように、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物が、低い硬化温度(Tcure)で硬化可能となる、(ii)本発明の実施例1〜5より、次のように、式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物が、大幅に低い凝集破壊温度(TCF)を有する硬化生成物を得る、(iii)本発明の実施例1〜5より、次のように式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物が、アルミホイルが自身に凝集するよりもPBT基材により強力に接着する、(iv)本発明の実施例1〜5より、次のように式(I)の金属非プロトン性オルガノシランオキシド化合物が、貯蔵寿命安定性(無気泡)を示した。
【0117】
したがって、本発明の配合物から、有益に低い、改善された凝集破壊温度(TCF)(例えば、TCF≦120℃、あるいはTCF<120℃、あるいはTCF≦110℃、あるいはTCF<110℃、あるいはTCF<100℃、あるいは90℃〜<100℃のTCF)を有する硬化生成物を得られる。本発明の配合物の凝集破壊温度が低いほど、本発明の配合物を硬化するのに必要な温度も低くなり、それ故、本発明の配合物を使用するための製造プロセスウィンドウが大きくなり、かつ、本発明の配合物と共に使用可能な、感熱性電子的構成部品の種類が多くなる。本発明の配合物はまた、満足のいく貯蔵寿命を有する。したがって、メーカが絶えず、新しい本発明の配合物を作製、又は供給する必要がなく、本発明の配合物を低温で貯蔵し、素早く温めて使用する必要がないため、本発明の配合物は、製造設定で使用するのに実用的である。
【0118】
以下の特許請求の範囲は、参照により本明細書に組み込まれ、用語「請求項」(単数及び複数)はそれぞれ用語「態様」(単数及び複数)に置き換えられる。本発明の実施形態は、これらの得られた番号付けされた態様も包含する。