特許第6831405号(P6831405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6831405
(24)【登録日】2021年2月1日
(45)【発行日】2021年2月17日
(54)【発明の名称】ゲームプログラムおよびゲーム装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 13/53 20140101AFI20210208BHJP
   A63F 13/525 20140101ALI20210208BHJP
   A63F 13/55 20140101ALI20210208BHJP
   A63F 13/837 20140101ALI20210208BHJP
   A63F 13/52 20140101ALI20210208BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20210208BHJP
   A63F 13/573 20140101ALI20210208BHJP
   A63F 13/5372 20140101ALI20210208BHJP
【FI】
   A63F13/53
   A63F13/525
   A63F13/55
   A63F13/837
   A63F13/52
   G06T19/00 300A
   A63F13/573
   A63F13/5372
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-4565(P2019-4565)
(22)【出願日】2019年1月15日
(65)【公開番号】特開2020-110430(P2020-110430A)
(43)【公開日】2020年7月27日
【審査請求日】2019年10月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 〔展示会名〕 東京ゲームショウ2018 〔開催日〕 平成30年9月20日〜9月23日 〔開催場所〕 幕張メッセ
(73)【特許権者】
【識別番号】000129149
【氏名又は名称】株式会社カプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大和 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中尾 颯生
【審査官】 目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−043246(JP,A)
【文献】 特開平11−306394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F9/24、13/00−13/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、
三次元の仮想空間を生成する仮想空間生成手段、
操作対象オブジェクトの位置に基づいて前記仮想空間に配置された仮想カメラにより撮像される二次元画像を表示画面として生成する表示画面生成手段、
前記仮想カメラの向きを制御するカメラ方向制御手段、
ユーザの前記操作対象オブジェクトに対する所定の操作に基づいて前記操作対象オブジェクトから離間した位置において所定の事象を生じさせる事象生成手段、
前記表示画面において前記所定の事象が生じる位置をマーカ位置として設定するマーカ位置設定手段、
前記操作対象オブジェクトにおける所定位置から前記マーカ位置までの間を結ぶ所定の予測軌道の少なくとも一部区間において前記予測軌道を表示する軌道表示手段、として機能させ、
前記操作対象オブジェクトは、プレイヤキャラクタまたは乗物であり、
前記軌道表示手段は、前記仮想空間における、前記予測軌道の向きを示す第1方向と前記操作対象オブジェクトの向きを示す第2方向とが異なる場合、かつ、前記第1方向と前記第2方向との間の角度が所定の基準角より大きい、および/または、前記予測軌道の長さが所定の基準長より短い場合に、前記予測軌道の表示を不明瞭にする、ゲームプログラム。
【請求項2】
前記軌道表示手段は、前記予測軌道の表示を不明瞭にする場合に、前記第1方向と前記第2方向との間の角度が大きくなるほど、および/または、前記予測軌道の長さが短くなるほど、前記予測軌道の表示をより不明瞭にする、請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記軌道表示手段は、前記角度が大きくなるほど、および/または、前記長さが短くなるほど、前記予測軌道を表示する際の明るさを低減させることにより、前記予測軌道の表示を不明瞭にする、請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記軌道表示手段は、前記角度が大きくなるほど、および/または、前記長さが短くなるほど、前記予測軌道のうちの前記操作対象オブジェクト側部分のより長い領域を表示しないことにより、前記予測軌道の表示を不明瞭にする、請求項2または3に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記事象生成手段は、前記操作対象オブジェクトから離間するように移動する移動体を射出し、前記移動体を前記操作対象オブジェクトから離間した位置に到達させる、請求項1から4の何れかに記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記コンピュータを、
前記操作対象オブジェクトの動作を制御するオブジェクト制御手段、として機能させ、
前記仮想空間生成手段は、前記操作対象オブジェクトにおいて少なくとも前記予測軌道の前記操作対象オブジェクト側端部と接する部分が前記表示画面に含まれるように前記仮想カメラを配置し、
前記オブジェクト制御手段は、前記仮想カメラの向きの変化に追従するように、かつ、前記仮想カメラの向きの変化より遅れて前記操作対象オブジェクトの向きを変更するように、前記操作対象オブジェクトの動作を制御する、請求項1から5の何れかに記載のゲームプログラム。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、
前記プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータと、を備えた、ゲーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲームプログラムおよびゲーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元の仮想空間内にて、プレイヤキャラクタ等の操作対象オブジェクトを操作してゲームを進行させるアクションゲームが市販されている。この種のアクションゲームにおいては、ユーザの操作に基づいて操作対象オブジェクトから離間した位置において所定の事象を生じさせるゲーム性を有する場合がある。例えば、ユーザの操作に基づいて、プレイヤキャラクタが装備した銃で銃弾を発射し、その銃弾を上記位置に到達させる。
【0003】
この場合、所定の事象を生じさせる位置(上記例における着弾位置)の方向を示す基準として表示画面(ゲーム画面)には、マーカ(照準、レティクル等と呼ばれる)が表示される。例えばプレイヤキャラクタが銃を装備している場合、表示画面には、当該銃から発射される銃弾が到達する位置を示すためのマーカが表示される(下記特許文献1参照)。
【0004】
また、所定の事象を生じさせる位置であるマーカ位置をよりユーザに分かりやすく示すために、ゲーム内の所定の武器またはアイテムの使用時等において、操作対象オブジェクトとマーカ位置との間を直線または曲線等の所定の軌道で結ぶ予測軌道表示を行う場合がある。例えば、プレイヤキャラクタがレーザサイト付きの銃を装備している場合、表示画面には、当該銃の銃口(またはレーザサイト部)からマーカ位置までの間にレーザ光を模した直線が予測軌道として表示される(下記非特許文献1参照)。
【0005】
また、このようなアクションゲームにおいては、仮想空間において操作対象オブジェクトに基づいた位置に配置された仮想カメラが撮像した画像が表示画面として表示される。この仮想カメラの向きは、操作対象オブジェクトの移動方向とは独立して変更することが可能である。マーカの位置は原則として表示画面の所定位置(例えば画面中央位置)に固定されており、仮想カメラの向きを変更操作することにより、上記所定の事象を生じさせる方向(例えば銃弾を発射する方向)を変更することができる。
【0006】
ここで、アクションゲームにおいては、操作対象オブジェクトと同じ目線位置に仮想カメラが配置される一人称(FPS)視点による表示画面、および、操作対象オブジェクトの周囲および/または上方(例えばプレイヤキャラクタの肩越し)に仮想カメラが配置され、操作対象オブジェクトおよびその周囲の仮想空間を撮像する三人称(TPS)視点による表示画面が採用され得る。これらの場合、操作対象オブジェクトの一部(例えば、一人称視点においては腕先、三人称視点においては後ろ姿の上半身または全身)が表示画面に表示される。
【0007】
したがって、これらの視点による表示画面においては、仮想カメラの向きを変更操作することにより、所定の事象を生じさせる方向を変更する場合、それに合わせて操作対象オブジェクトを所定の事象を生じさせる方向に向けさせる動作制御が行われる。
【0008】
このような操作対象オブジェクトの動作制御において、操作対象オブジェクトの向きを仮想カメラの向きに追従させる際に、仮想カメラの回転速度と同じ速度で操作対象オブジェクトを動作させると、仮想空間上では操作対象オブジェクトが動作しているにもかかわらず、表示画面上では操作対象オブジェクトに動きがなくなる。このため、操作対象オブジェクトが表示画面に貼り付けられた絵のように見えてしまい、操作対象オブジェクト自体が動いているという表現を行うことができない。
【0009】
このような問題に対しては、仮想カメラの向きが変更された場合に、仮想カメラの向きの変化に追従するように、かつ、仮想カメラの向きの変化より遅れて操作対象オブジェクトの向きを変更するように、操作対象オブジェクトの動作制御(遅延追従制御)を行うことが考えられる。これにより、仮想空間におけるマーカ位置の変更に伴って操作対象オブジェクト(の全部または一部)がマーカ位置の変更に追従した動作を行う様子が表示画面上に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−24636号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「今から始めるバイオハザード5 オルタナティブ エディション □2010/03/12 基本テクニック 其の一 □戦闘の基本」、[online]、2010年3月12日、株式会社カプコン、[平成30年11月2日検索]、インターネット[http://www.capcom.co.jp/blog/bio5/ae/guide01/blog_20100312_20075.html]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上述した予測軌道表示を行っている場合に、上記遅延追従制御を実行すると、操作対象オブジェクトの向きと予測軌道の向きが一致しなくなる。例えば、上記レーザサイト付き銃の例においては、銃口またはレーザサイト部から伸びるレーザ光が、銃身が延びる方向に交差する方向に延びることになり、リアリティが損なわれる。
【0013】
これに代えて、仮想カメラの向きの変更に対してマーカ位置が追従する速度を遅くする(操作対象オブジェクトの動きに一致させる)ことも考えられる。しかし、この場合、ユーザの操作に対して遅れてマーカ位置が移動することになり、アクション性(ユーザビリティ)が損なわれる。アクションゲームにおいては、ユーザが狙いたい場所に素早く移動する(仮想カメラを素早く回転させる)ことが重視されるため、アクション性が低下することは好ましくない。
【0014】
以上のような問題は、遅延追従制御を行う場合以外にも生じ得る。例えば、予測軌道上に壁等の障害物が存在する場合、予測軌道と交差する障害物の表面にマーカを表示するマーカ位置補正制御が行われる。この場合、表示画面におけるマーカ位置は、障害物がない場合の所定位置から変位する場合がある。一方、操作対象オブジェクト(銃口等)は、障害物がない場合の所定位置を向いたままであるため、操作対象オブジェクトの向きと予測軌道の向きが一致しなくなる。
【0015】
そこで本発明は、ユーザビリティを損なわずに予測軌道をより自然に表示することができるゲームプログラムおよびゲーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様に係るゲームプログラムは、コンピュータを、三次元の仮想空間を生成する仮想空間生成手段、操作対象オブジェクトの位置に基づいて前記仮想空間内に配置された仮想カメラにより撮像される二次元画像を表示画面として生成する表示画面生成手段、前記仮想カメラの向きを制御するカメラ方向制御手段、ユーザの前記操作対象オブジェクトに対する所定の操作に基づいて前記操作対象オブジェクトから離間した位置において所定の事象を生じさせる事象生成手段、前記表示画面において前記所定の事象が生じる位置をマーカ位置として設定するマーカ位置設定手段、前記操作対象オブジェクトにおける所定位置から前記マーカ位置までの間を結ぶ所定の予測軌道の少なくとも一部区間において前記予測軌道を表示する軌道表示手段、として機能させ、前記軌道表示手段は、前記仮想空間における、前記予測軌道の向きを示す第1方向と前記操作対象オブジェクトの向きを示す第2方向とが異なる場合、かつ、前記第1方向と前記第2方向との間の角度が所定の基準角より大きい、および/または、前記予測軌道の長さが所定の基準長より短い場合に、前記予測軌道の表示を不明瞭にする。
【0017】
前記軌道表示手段は、前記予測軌道の表示を不明瞭にする場合に、前記第1方向と前記第2方向との間の角度が大きくなるほど、および/または、前記予測軌道の長さが短くなるほど、前記予測軌道の表示をより不明瞭にしてもよい。
【0018】
前記軌道表示手段は、前記角度が大きくなるほど、および/または、前記長さが短くなるほど、前記予測軌道を表示する際の明るさを低減させることにより、不明瞭に表示してもよい。
【0019】
前記軌道表示手段は、前記角度が大きくなるほど、および/または、前記長さが短くなるほど、前記予測軌道のうちの前記操作対象オブジェクト側部分のより長い領域を表示しないことにより、不明瞭に表示してもよい。
【0020】
前記事象生成手段は、前記操作対象オブジェクトから離間するように移動する移動体を射出し、前記移動体を前記操作対象オブジェクトから離間した位置に到達させてもよい。
【0021】
前記ゲームプログラムは、前記コンピュータを、前記操作対象オブジェクトの動作を制御するオブジェクト制御手段、として機能させ、前記仮想空間生成手段は、前記操作対象オブジェクトにおいて少なくとも前記予測軌道の前記操作対象オブジェクト側端部と接する部分が前記表示画面に含まれるように前記仮想カメラを配置し、前記オブジェクト制御手段は、前記仮想カメラの向きの変化に追従するように、かつ、前記仮想カメラの向きの変化より遅れて前記操作対象オブジェクトの向きを変更するように、前記操作対象オブジェクトの動作を制御してもよい。
【0022】
また、本発明の他の態様に係るゲーム装置は、上記のゲームプログラムを記憶したプログラム記憶部と、前記プログラム記憶部に記憶されたプログラムを実行するコンピュータとを備えている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ユーザビリティを損なわずに予測軌道をより自然に表示することができるゲームプログラムおよびゲーム装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るゲーム装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示すゲーム装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3図3は、本実施の形態におけるゲーム画面を示す図である。
図4図4は、図3に示すゲーム画面に対応する仮想空間を示す平面図である。
図5図5は、本実施の形態における予測軌道を表示する場合の明るさの距離に対する変化を示すグラフである。
図6図6は、図5に示すグラフにおいて予測軌道の基端部から所定距離Lr1(<Lo)の位置での角度に対する明るさの変化を抽出したグラフである。
図7図7は、本実施の形態における予測軌道を表示する場合の明るさの距離に対する変化を示すグラフである。
図8図8は、図7に示すグラフにおいて予測軌道の基端部から所定距離Lr2(<Lmin)の位置での予測軌道の長さに対する明るさの変化を抽出したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<実施形態>
以下、本発明の実施の形態に係るゲームプログラムおよびゲーム装置について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、家庭用ゲーム装置において実行されるアクションゲームを例として説明する。本実施の形態においては、ユーザが操作可能な操作対象オブジェクトとして、プレイヤキャラクタを例示する。本実施の形態に係るアクションゲームは、仮想空間内で行動するプレイヤキャラクタを操作して、敵キャラクタを全滅させる、または仮想空間内の所定の位置に到達する等といった所定の目標を達成するために、敵キャラクタと戦うことにより進行する。
【0026】
[ハードウェア構成]
上述したゲームを実現するゲーム装置の構成について説明する。本実施の形態におけるゲームシステムは、下記ゲーム装置2と、当該ゲーム装置2に接続されるモニタ(表示部)19、スピーカ22およびコントローラ(操作部)24などの外部装置とで構成され、下記ディスク型記憶媒体30から読み込んだゲームプログラム30aおよびゲームデータ30bに基づいてゲームを行い得るものである。ただし、以下では、説明を簡単にするため、単にゲーム装置2と称する場合がある。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係るゲーム装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、ゲーム装置2は、他のゲーム装置2およびサーバ装置3との間で、インターネットまたはLANなどの通信ネットワークNWを介して互いに通信可能である。このゲーム装置2は、その動作を制御するコンピュータであるCPU10を備え、このCPU10にはバス11を介してディスクドライブ12、メモリカードスロット13、プログラム記憶部を成すHDD14、ROM15およびRAM16が接続されている。
【0028】
また、CPU10には、バス11を介してグラフィック処理部17、オーディオ合成部20、無線通信制御部23およびネットワークインタフェース25が接続されている。
【0029】
このうちグラフィック処理部17は、CPU10の指示にしたがってゲーム空間および各キャラクタなどを含むゲーム画像を描画する。また、グラフィック処理部17にはビデオ変換部18を介して外部のモニタ19が接続されており、グラフィック処理部17にて描画されたゲーム画像はビデオ変換部18において動画形式に変換され、モニタ19にて表示されるようになっている。
【0030】
オーディオ合成部20は、CPU10の指示に従ってデジタルのゲーム音声を再生および合成する。また、オーディオ合成部20にはオーディオ変換部21を介して外部のスピーカ22が接続されている。したがって、オーディオ合成部20にて再生および合成されたゲーム音声は、オーディオ変換部21にてアナログ形式にデコードされ、さらにスピーカ22から外部へ出力されるようになっている。
【0031】
さらに、オーディオ合成部20は、ゲーム装置2に接続されるヘッドセットやコントローラ24等に設けられたマイク26から入力されるユーザの音声等がオーディオ変換部21にてデジタル形式にコードされたデータを取得可能である。オーディオ合成部20は、取得したデータをCPU10に入力情報として伝えることができる。
【0032】
無線通信制御部23は、2.4GHz帯の無線通信モジュールを有し、ゲーム装置2に付属するコントローラ24との間で無線により接続され、データの送受信が可能となっている。ユーザは、このコントローラ24に設けられたボタン等の操作子を操作することにより、ゲーム装置2へ信号を入力することができ、モニタ19に表示されるプレイヤキャラクタの動作を制御可能になっている。
【0033】
また、ネットワークインタフェース25は、インターネットまたはLANなどの通信ネットワークNWに対してゲーム装置2を接続するものであり、他のゲーム装置2またはサーバ装置3との間で通信可能である。そして、ゲーム装置2を、通信ネットワークNWを介して他のゲーム装置2と接続し、互いにデータを送受信することにより、同一の仮想空間内で同期して複数のプレイヤキャラクタを表示させることができる。
【0034】
これにより、本ゲームにおいては、複数のユーザに対応する複数のプレイヤキャラクタが協同して敵キャラクタと戦う、または複数のユーザ同士が敵対して対戦する、マルチプレイが可能である。
【0035】
[ゲーム装置の機能的構成]
図2は、図1に示すゲーム装置2の機能的な構成を示すブロック図である。図1に示すようにゲーム装置2は、CPU10、HDD14、ROM15、RAM16、グラフィック処理部17、ビデオ変換部18、オーディオ合成部20、オーディオ変換部21、ネットワークインタフェース25などを含む制御部4を備えたコンピュータとして動作する。
【0036】
図2に示すように、ゲーム装置2の制御部4は、本発明のゲームプログラム30aを実行することで、仮想空間生成手段41、表示画面生成手段42、カメラ方向制御手段43、事象生成手段44、マーカ位置設定手段45、軌道表示手段46、オブジェクト制御手段47等の機能を発揮する。
【0037】
このうち、仮想空間生成手段41は、ユーザが操作するプレイヤキャラクタが行動する三次元の仮想空間(ゲーム空間)を生成する。例えば、仮想空間生成手段41は、プレイヤキャラクタの移動に伴って、ゲームデータ30bに含まれるオブジェクトおよびテクスチャなどのデータを読み出し、三次元の仮想ゲーム空間を生成する。また、仮想空間生成手段41は、プレイヤキャラクタの位置に基づいて、後述する仮想カメラを配置する。
【0038】
表示画面生成手段42は、プレイヤキャラクタが動作する仮想空間およびその仮想空間内で動作する各オブジェクトを生成し、モニタ19に表示画面(ゲーム画面)として表示させる。より詳しくは、表示画面生成手段42は、プレイヤキャラクタの位置に基づいて仮想空間に配置された仮想カメラにより撮像される二次元画像を生成し、モニタ19に表示画面として表示する。
【0039】
カメラ方向制御手段43は、ユーザの操作等に基づいて仮想カメラの向きを制御する。
【0040】
事象生成手段44は、ユーザのプレイヤキャラクタに対する所定の操作に基づいてプレイヤキャラクタから離間した位置において所定の事象を生じさせる。本実施の形態において、事象生成手段44は、所定の事象としてプレイヤキャラクタから離間するように移動する移動体を射出し、プレイヤキャラクタから離間した位置に到達させる。より具体的には、事象生成手段44は、ユーザの操作に基づいて銃を装備したプレイヤキャラクタが射撃動作を行った場合に、その銃から銃弾を発射する。
【0041】
マーカ位置設定手段45は、表示画面(後述するゲーム画面G)において所定の事象が生じる位置をマーカ位置として設定する。本実施の形態において、マーカ位置は、プレイヤキャラクタの装備した銃から発射された銃弾の着弾位置または通過位置を示す。
【0042】
軌道表示手段46は、プレイヤキャラクタの位置からマーカ位置までの間を結ぶ所定の予測軌道の少なくとも一部区間においてその予測軌道を表示する。本実施の形態においては、プレイヤキャラクタが装備した銃に取り付けられているレーザサイトによるレーザ光が、予測軌道として表示される。
【0043】
オブジェクト制御手段47は、プレイヤキャラクタの動作を、ユーザによるコントローラ24の操作入力またはゲームの進行状況に応じて制御する。さらに、オブジェクト制御手段47は、仮想空間にて行動する敵キャラクタ等のノンプレイヤキャラクタの動作を制御する。
【0044】
[軌道表示処理]
以下、本実施の形態における予測軌道を表示するための軌道表示処理について説明する。図3は、本実施の形態におけるゲーム画面を示す図である。また、図4は、図3に示すゲーム画面に対応する仮想空間を示す平面図である。図4に示すように、仮想空間Sには、ユーザがコントローラ24を介して操作可能なプレイヤキャラクタPが配置される。
【0045】
プレイヤキャラクタPは銃Wを装備している。また、仮想空間Sには、敵キャラクタEが配置されている。本ゲームは、ユーザがプレイヤキャラクタPを操作して、敵キャラクタEを、撃退するゲーム性を有している。
【0046】
仮想カメラCは、仮想空間SにおいてプレイヤキャラクタPの位置を基準に設定された位置に配置されている。仮想カメラCで撮像された2次元画像が図3に示すようなゲーム画面Gとしてモニタ19に表示される。本実施の形態において、仮想カメラCは、プレイヤキャラクタPの右後方(肩越し)に配置される。これにより、ゲーム画面Gは、プレイヤキャラクタPの少なくとも一部が撮像された三人称視点の画面として構成される。
【0047】
このようにして、仮想空間生成手段41は、プレイヤキャラクタPにおいて少なくとも予測軌道Tのプレイヤキャラクタ側端部と接する部分がゲーム画面Gに含まれるように仮想カメラCを配置する。この結果、表示画面生成手段42は、少なくともプレイヤキャラクタPが銃Wを構えたときの銃Wの先端部(後述する予測軌道Tの基端部)が含まれるようなゲーム画面Gを生成する。
【0048】
なお、仮想カメラCの向きは、ユーザの操作によって変更される。本実施の形態における説明では、「プレイヤキャラクタPを操作」することに、仮想カメラCを操作することも含んでいる。また、例えばプレイヤキャラクタPがオブジェクト(壁、障害物、他のキャラクタ等)のすぐ近くに位置した場合等において、仮想カメラCの直前にオブジェクトが存在したり、仮想カメラCがオブジェクト内に入り込んでしまったりする場合がある。このような場合、そのオブジェクトより前方位置に仮想カメラCを配置する処理が行われる。このようなゲームプログラム上の処理に基づいても、仮想カメラCの向き(位置)は変更され得る。
【0049】
ゲーム画面Gの中央位置にはマーカMが配置される。マーカMが表示されるマーカ位置は、プレイヤキャラクタPの装備した銃Wから発射された銃弾の着弾位置または通過位置を示す。すなわち、マーカMは、射撃を行うゲームにおいて一般的に呼称される照準(レティクル)に相当する。マーカMは、例えば所定の枠、点、円、多角形等により構成される。なお、「プレイヤキャラクタPの装備した銃Wから発射された銃弾」は、ゲーム画面G上において実際に銃Wの先端部から銃弾が射出されるように表現される場合およびゲーム画面Gの中央から銃弾が射出されるように表現される場合の何れをも含み得る。
【0050】
銃Wから発射される銃弾の定常時(仮想カメラCの停止時で他の仮想カメラ位置変更処理が行われていない場合)における予測軌道Tは、銃Wから銃身の長手方向に延びる線分(直線)として定義される。予測軌道Tは、銃弾に対する外乱の影響を受けない場合の銃弾の着弾位置または通過位置を示す。銃Wから発射される銃弾は、外乱によって銃弾の飛翔に対する他の処理によって予測軌道T上を移動しない場合がある。銃弾に対する外乱は、例えば、重力要素、風等の環境要素、距離減衰要素、慣性要素等が含まれ得る。
【0051】
重力要素は、例えば銃弾が重力により自由落下する(実際の軌道が放物線を描く)程度を定めるためのパラメータである。環境要素は、例えば風が強いほど予測軌道Tに対する実際の銃弾の軌道を不正確にするためのパラメータである。距離減衰要素は、例えば着弾位置が遠いほど予測軌道Tに対する実際の銃弾の軌道を不正確にするためのパラメータである。慣性要素は、例えばプレイヤキャラクタPの行動(移動またはジャンプ等)中は、予測軌道Tに対する実際の銃弾の軌道を不正確にするためのパラメータである。
【0052】
仮想空間Sにおいて、マーカ位置は、予測軌道T上の無限遠に設定される。ただし、予測軌道T上にオブジェクト(壁、障害物、他のキャラクタ等)が存在する場合、マーカ位置は、そのオブジェクトの表面に設定される。上述のように、仮想カメラCは、プレイヤキャラクタPの肩越しに配置されるため、仮想カメラCの方向は、予測軌道Tの方向と一致せず所定の角度を有し得る。この結果、予測軌道T上にオブジェクトが存在する場合、ゲーム画面Gにおいて表示されるマーカMは、ゲーム画面Gの中央位置からずれて表示され得る。
【0053】
本実施の形態において、ユーザの操作に基づいてプレイヤキャラクタPが銃Wを構えた場合に、軌道表示手段46は、ゲーム画面Gにおいて予測軌道Tを表示する。図3の例では、簡単のために銃Wの銃口に予測軌道Tの基端部が位置している。実際には、銃Wに取り付けられたレーザサイト(図示せず)の先端部(レーザサイトの発光源)に予測軌道Tの基端部が位置している。
【0054】
図3に示すように、ゲーム画面Gには敵キャラクタEが表示されている。上述のように、マーカMは、銃Wの着弾位置等を示しているため、敵キャラクタEに銃Wの銃弾を命中させるためにユーザは、敵キャラクタE上にマーカMを位置させるための操作を行う必要がある。敵キャラクタE上にマーカMを位置させるための操作には、プレイヤキャラクタPの位置または向きを変更する操作(キャラクタ移動操作)と、仮想カメラCの向きを変更する操作(仮想カメラ操作)とが含まれる。
【0055】
以下では、仮想カメラ操作により、敵キャラクタE上にマーカMを位置させる場合について説明する。図3は、ゲーム画面Gとして、第1ゲーム画面G1、第2ゲーム画面G2および第3ゲーム画面G3を示している。第1ゲーム画面G1は、カメラ操作開始前のゲーム画面を示し、第2ゲーム画面G2は、後述する遅延追従制御中のゲーム画面を示し、第3ゲーム画面G3は、カメラ操作終了後(遅延追従制御終了後)のゲーム画面を示している。図4は、仮想空間Sとして、各ゲーム画面G1〜G3に対応する仮想空間S1〜S3を示している。
【0056】
本実施の形態において、オブジェクト制御手段47は、仮想カメラCの向きの変化に追従するように、かつ、仮想カメラCの向きの変化より遅れてプレイヤキャラクタPの向きを変更するように、プレイヤキャラクタPの動作を制御する。
【0057】
まず、第1ゲーム画面G1においてユーザが仮想カメラCを右旋回させる操作を行うと、表示画面生成手段42は、仮想カメラCの右旋回に応じて変化する仮想カメラCの撮像範囲の変化に伴ってゲーム画面Gを第1ゲーム画面G1から第2ゲーム画面G2に変化させる。これにより、ゲーム画面Gにおいて敵キャラクタEが相対的に左に移動し、敵キャラクタEがゲーム画面Gの中央(マーカM上)に位置する。
【0058】
このとき、遅延追従制御が実行される。図4の仮想空間S2に示すように、仮想カメラCが右旋回しているにもかかわらず、プレイヤキャラクタPは第1ゲーム画面G1における位置および向きから変化していない。結果として第2ゲーム画面G2においてプレイヤキャラクタPの向きは第1ゲーム画面G1から相対的に変化している。この結果、マーカMは、プレイヤキャラクタPが構えた銃Wの銃身の向きの延長線(従前の(第1ゲーム画面G1における)予測軌道T’)上に位置しなくなる。
【0059】
その後、プレイヤキャラクタPは、仮想カメラCの向きの変化より遅れて仮想カメラCの向きに応じた方向に向きを変える。この結果、第3ゲーム画面G3において、プレイヤキャラクタP、銃W、マーカM、および予測軌道Tの位置関係は、遅延追従制御前の第1ゲーム画面G1と同じ位置関係に復帰する。第3ゲーム画面G3においては敵キャラクタE上にマーカMが位置している。このため、ユーザが射撃操作を行うことにより銃Wから銃弾が発射された場合、その銃弾は敵キャラクタEに命中する(または命中する確率が高くなる)。
【0060】
ここで、軌道表示手段46は、上述したように、プレイヤキャラクタPの位置(銃Wの先端部)からマーカMのマーカ位置までの間を結ぶ予測軌道の少なくとも一部区間において予測軌道Tを表示する。すなわち、遅延追従制御中の第2ゲーム画面G2においても、予測軌道Tは、銃Wの先端部とマーカMとを結ぶ軌道として定義される。
【0061】
この結果、第2ゲーム画面G2において表示される予測軌道Tは、銃Wの銃身の向きの延長線である仮の予測軌道T’とは異なる軌道となる。言い換えると、第2ゲーム画面G2において表示される予測軌道Tは、銃Wの銃身の先端部においてその銃身に対して折れ曲がってしまう。
【0062】
このように、遅延追従制御を行うことにより、ゲーム画面G上でプレイヤキャラクタP自体が敵キャラクタEに対向するように向きを変える動作を表現することができる。一方で、このような遅延追従制御により、プレイヤキャラクタPの(銃Wの)向きと予測軌道Tの向きが一致しなくなる。
【0063】
このような矛盾した表現を目立たなくするために、軌道表示手段46は、仮想空間S2(第2ゲーム画面G2)における状態のように、仮想空間Sにおける、予測軌道Tの向きを示す第1方向D1とプレイヤキャラクタPの向きを示す第2方向D2とが異なる場合、かつ、第1方向D1と第2方向D2との間の角度θが所定の基準角θoより大きい場合に、予測軌道Tの表示を不明瞭にする。
【0064】
このために、軌道表示手段46は、角度θを単位時間毎に取得する。軌道表示手段46は、取得した角度θが所定の基準角θoより大きい場合に、予測軌道Tを表示する際の明るさを低減させることにより、予測軌道Tの表示を不明瞭にする。本実施の形態において、予測軌道Tは、基端部から先端部(マーカMの位置)に向かうに従って明度が高くなるような明度分布を有している。軌道表示手段46は、その明度分布に基づいて全体的に明度を変化させる。
【0065】
図5は、本実施の形態における予測軌道を表示する場合の明るさの距離に対する変化を示すグラフである。図5の例においては、予測軌道Tの長さが所定の基準長Lo以上ある場合の明るさのグラフを示している。図5には、上記角度θが基準角θo以下の場合の明るさのグラフが基準のグラフBθoとして示されている。基準のグラフBθoに示される予測軌道Tの基端部からの距離に対する明るさの関係は、ゲームデータ30bとして予め記憶されている。
【0066】
軌道表示手段46は、上記角度θが所定の基準角θo以下の場合、予測軌道Tの基端部(銃Wの先端部)から所定の基準長Lo以上離れた予測軌道Tの部分において所定の(最大の)明るさBmaxで表示する。さらに、軌道表示手段46は、角度θが所定の基準角θo以下の場合、予測軌道Tの基端部から基準長Loの位置までの部分において基準長Loの位置から基端部に近づくに従って明るさを低減する(暗くなる)ように表示する。図5の例においては、明るさの距離に対する変化は直線的かつ連続的に変化している。
【0067】
さらに、図5には、予測軌道Tの長さが基準長Lo以上で、かつ、上記角度θが基準角θoより大きい角度θ1,θ2,θ3である場合のグラフBθ1,Bθ2,Bθ3が示されている。各角度の関係は、θo<θ1<θ2<θ3である。
【0068】
軌道表示手段46は、上記角度θが基準角θoより大きい各角度θ1,θ2,θ3の場合、予測軌道Tの基端部から基準長Lo以上離れた予測軌道Tの部分において明るさBmaxより低い(暗い)明るさで表示する。この部分の明るさがその角度θにおける最大の明るさになるのは角度θが基準角θoである場合と同様である。すなわち、角度θが大きいほどその角度θにおける最大の明るさが低く(暗く)なる。
【0069】
さらに、軌道表示手段46は、角度θが基準角θoより大きい各角度θ1,θ2,θ3の場合、予測軌道Tの基端部から基準長Loの位置までの部分において基準長Loの位置から基端部に近づくに従って暗くなるように表示する。また、軌道表示手段46は、角度θが大きくなるほど、予測軌道Tを表示する際の明るさを低減させることにより、予測軌道Tの表示をより不明瞭にする。これにより、予測軌道Tの基端部から所定距離離れた位置において、角度θが大きいほどその位置における予測軌道Tの明るさが低く(暗く)なる。
【0070】
さらに、軌道表示手段46は、角度θに応じて予測軌道Tのうちのプレイヤキャラクタ側部分(基端側部分)の領域を表示しないようにする。すなわち、銃Wの先端部とマーカMとを繋ぐ予測軌道Tのうち、先端部から所定の距離離れた位置(表示切替点X)までの領域が表示領域T1に設定され、表示切替点Xから基端部までの領域が非表示領域T2に設定される。
【0071】
図5の例において、角度θがθ2未満である場合、予測軌道Tにおける基端部から所定の距離までの明るさが0となる。軌道表示手段46は、予測軌道Tの明るさが0となる部分において予測軌道Tを表示しない(透明化する)非表示領域T2に設定する。例えば、角度θ3において、予測軌道Tの基端部から非表示距離Ltまでの間の部分は、ゲーム画面Gには表示されない。このように、軌道表示手段46が予測軌道Tの表示を不明瞭にする態様には、予測軌道Tの一部ないし全部を表示しないことを含む。
【0072】
軌道表示手段46は、角度θが大きくなるほど、予測軌道Tのうちのプレイヤキャラクタ側部分のより長い領域を表示しないことにより、予測軌道Tの表示を不明瞭にする。すなわち、角度θが大きくなるほど表示切替点Xが予測軌道Tの先端側に位置するように設定される。図5の例において、角度θがθ2より大きくなるほど予測軌道Tが表示されない非表示領域T2が大きくなる(非表示距離Ltが長くなる)。
【0073】
以上のように、図5の例では、角度θが異なる4つの場合のグラフBθo,Bθ1,Bθ2,Bθ3を示したが、各角度間においても図5のグラフによって示されるような明るさの変化態様が連続的または段階的に変化する。図5の例においては、角度θが大きいほど距離に応じた明るさの変化の割合が大きくなる(図5におけるグラフのLo未満における傾きが大きくなる)。
【0074】
図6は、図5に示すグラフにおいて予測軌道の基端部から所定距離Lr1(<Lo)の位置での角度に対する明るさの変化を抽出したグラフである。本実施の形態において、予測軌道Tの基端部から所定距離Lr1の位置における明るさは、角度θが大きくなるにつれて二次関数的に低下している。
【0075】
さらに、本実施の形態において、軌道表示手段46は、予測軌道Tの長さ(マーカMのマーカ位置とプレイヤキャラクタPの銃Wの先端部の位置との間の長さ)Lを単位時間毎に取得する。軌道表示手段46は、第1方向D1と第2方向D2とが異なる場合、かつ、予測軌道Tの長さLが所定の基準長Loより短い場合に、予測軌道Tの表示を不明瞭にする。この場合も、軌道表示手段46は、明度分布に基づいて予測軌道Tの長さTに応じて全体的に明度を変化させる。
【0076】
図7は、本実施の形態における予測軌道を表示する場合の明るさの距離に対する変化を示すグラフである。図7の例においては、上記角度θが基準角θoである場合の明るさのグラフを示している。図7には、予測軌道Tの長さLが所定の基準長Lo以上ある場合の明るさのグラフが基準のグラフBLoとして示されている。図7における基準のグラフBLoは、図5における基準のグラフBθoに一致する。
【0077】
軌道表示手段46は、予測軌道Tの長さLが所定の基準長Lo以上ある場合、予測軌道Tの基端部(銃Wの先端部)から所定の基準長Lo以上離れた予測軌道Tの部分において所定の(最大の)明るさBmaxで表示する。さらに、軌道表示手段46は、予測軌道Tの長さLが所定の基準長Lo以上ある場合、予測軌道Tの基端部から基準長Loの位置までの部分において基準長Loの位置から基端部に近づくに従って明るさを低減する(暗くなる)ように表示する。図7の例においては、明るさの距離に対する変化は直線的かつ連続的に変化している。
【0078】
さらに、図7には、上記角度θが基準角θoで、かつ、予測軌道Tの長さLが基準長Loより短い長さL1,L2,L3である場合のグラフBL1,BL2,BL3が示されている。各長さの関係は、Lo>L1>L2>L3である。
【0079】
軌道表示手段46は、予測軌道Tの長さLが基準長Loより短い各長さL1,L2,L3の場合、予測軌道TをグラフBLoにおいて対応する距離における明るさより低い(暗い)明るさで表示する。また、軌道表示手段46は、予測軌道Tの長さLが短くなるほど、予測軌道Tを表示する際の明るさを低減させることにより、予測軌道Tの表示をより不明瞭にする。これにより、予測軌道Tの基端部から所定距離離れた位置において、予測軌道Tの長さLが短いほどその位置における予測軌道Tの明るさが低く(暗く)なる。
【0080】
図7の例において、予測軌道Tの長さがL2未満である場合、予測軌道Tにおける基端部から所定の距離までの明るさが0となる。軌道表示手段46は、予測軌道Tの明るさが0となる部分において予測軌道Tを表示しない(透明化する)非表示領域T2に設定する。例えば、予測軌道Tの長さがL3である場合において、予測軌道Tの基端部から非表示距離Ltまでの間の部分は、ゲーム画面Gには表示されない。
【0081】
軌道表示手段46は、予測軌道Tの長さLが短くなるほど、予測軌道Tのうちのプレイヤキャラクタ側部分のより長い領域を表示しないことにより、予測軌道Tの表示を不明瞭にする。すなわち、予測軌道Tの長さLが短くなるほど表示切替点Xが予測軌道Tの先端側に位置するように設定される。図6の例において、予測軌道Tの長さLがL2より短くなるほど予測軌道Tが表示されない非表示領域T2が大きくなる(非表示距離Ltが長くなる)。なお、図6の例において、予測軌道Tの長さLがLminより短くなると予測軌道Tはゲーム画面Gには表示されない。予測軌道Tを表示するための予測軌道Tの長さLの最小値Lminは0以上に設定される。
【0082】
以上のように、図7の例では、予測軌道Tの長さLが異なる4つの場合のグラフBLo,BL1,BL2,BL3を示したが、各長さL間においても図7のグラフによって示されるような明るさの変化態様が連続的または段階的に変化する。
【0083】
図8は、図7に示すグラフにおいて予測軌道の基端部から所定距離Lr2(<Lmin)の位置での予測軌道の長さに対する明るさの変化を抽出したグラフである。本実施の形態において、予測軌道Tの基端部から所定距離Lr2の位置における明るさは、予測軌道Tの長さLが短くなるにつれて一次関数的に低下している。
【0084】
さらに、図7の例では、角度θが基準角θoである場合を示しているが、角度θが基準角θoより大きい場合にも、予測軌道Tの長さLに応じて明るさの変化態様が変化する。すなわち、図5のグラフに図7のグラフが組み合わせられる。この結果、以下の表のように予測軌道Tの明るさが調整される。
【0085】
【表1】
【0086】
ただし、本実施の形態において、予測軌道Tの明るさは、角度θが大きくなるにつれて二次関数的に低下し、かつ、予測軌道Tの長さLが短くなるにつれて一次関数的に低下する。したがって、角度変化θの変化が予測軌道Tの明るさの変化により大きい影響を与える。
【0087】
このような予測軌道Tの表示態様によれば、遅延追従制御において角度θが生じた場合(第2ゲーム画面G2の状態)に、角度θおよび予測軌道Tの長さLに応じて予測軌道Tの少なくとも一部が不明瞭に表示される。遅延追従制御終了後において第3ゲーム画面G3の状態に遷移すると、予測軌道Tは、遅延追従制御開始前(第1ゲーム画面G1)と同様の状態に復帰する。
【0088】
以上のように、本実施の形態における構成によれば、上記のように、仮想空間Sにおける、予測軌道Tの向きを示す第1方向D1とプレイヤキャラクタPの向きを示す第2方向D2との間の角度θが大きくなるほど予測軌道Tの少なくとも一部の表示が不明瞭になる。さらに、仮想空間Sにおける、マーカMの位置とプレイヤキャラクタPの位置との間の長さ(予測軌道Tの長さ)が短くなるほど、予測軌道Tの少なくとも一部の表示が不明瞭になる。
【0089】
したがって、プレイヤキャラクタP(の銃W)の向きと予測軌道Tの向きが一致しなくなった場合であっても、ゲーム画面Gを見たユーザに不自然な印象を与えることを防止することができる。また、上記構成によれば、ユーザに不自然な印象を与えないようにするために、仮想カメラCの向きの変更に対してマーカMの位置が追従する速度を遅くする必要がなくなる。したがって、アクション性(ユーザビリティ)が損なわれることがない。このように、本実施の形態における構成によれば、ユーザビリティを損なわずに予測軌道Tをより自然に表示することができる。
【0090】
なお、上記のような予測軌道Tの表示態様は、遅延追従制御時以外にも適用され得る。例えば、上述したように、仮想カメラCの直前にオブジェクト(壁、障害物、他のキャラクタ等)が存在する場合、そのオブジェクトより前方位置に仮想カメラCが配置される。このようなゲームプログラム上の処理に基づいても、プレイヤキャラクタPを基準とする仮想カメラCの向き(位置)は変更され得る。
【0091】
このような場合には、プレイヤキャラクタPと仮想カメラCとの位置関係が変化し、プレイヤキャラクタPが静止している場合であっても、仮想カメラCの向きとプレイヤキャラクタPの向きとが定常時からずれた状態になり得る。したがって、このような場合にも、上記のような予測軌道Tの表示態様が適用され得る。
【0092】
また、上述したように、予測軌道T上にオブジェクト(壁、障害物、他のキャラクタ等)が存在する場合、マーカ位置は、そのオブジェクトの表面に設定される。この結果、ゲーム画面Gにおいて表示されるマーカMは、ゲーム画面Gの中央位置からずれて表示され得る。マーカMのゲーム画面Gにおける中央位置からのずれは、オブジェクトの位置がプレイヤキャラクタP(予測軌道Tの基端部)に近いほど大きくなる。したがって、このような場合にも、上記のような予測軌道Tの表示態様が適用され得る。
【0093】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0094】
例えば、上記実施の形態において、プレイヤキャラクタPおよび銃Wの先端部がゲーム画面Gの中央から左にずれた位置において撮像されるような仮想カメラCの配置態様に基づいて説明したが、これに限られない。例えば、ゲーム画面Gにおいて、プレイヤキャラクタPおよび/または銃Wの先端部は、ゲーム画面Gの中央位置に表示されるように、仮想カメラCが配置されてもよいし、ゲーム画面Gの中央から左右および/または上下にずれた位置に表示されるように、仮想カメラCが配置されてもよい。
【0095】
また、上記実施の形態で説明した軌道表示処理は、上記実施の形態で説明したような三人称視点のゲーム画面だけに限られず、一人称視点のゲーム画面にも適用可能である。一人称視点の場合も、銃Wおよびその銃Wを把持しているプレイヤキャラクタPの一部(手先、腕等)は、ゲーム画面Gに表示される。
【0096】
また、上記実施の形態においては、プレイヤキャラクタPの(銃Wの)向きと予測軌道Tの向きが左右方向に一致しなくなる場合を例示したが、左右方向に加えてまたはこれに代えて、上下方向に一致しなくなる場合についても同様に、上記実施の形態で説明した軌道表示処理を適用し得る。
【0097】
また、上記実施の形態において、事象生成手段44が生じさせる所定の事象として、ユーザの操作に基づいて銃Wを装備したプレイヤキャラクタPが射撃動作を行った場合に、その銃Wから銃弾を発射する態様を例示したが、これに限られない。例えば、所定の事象としてプレイヤキャラクタから離間するように移動する移動体を射出する場合に、上記実施の形態で説明した軌道表示処理を適用し得る。
【0098】
移動体は、例えば、上記実施の形態で例示した銃弾だけでなく、ビーム、榴弾、槍、矢、フック(鉤縄等)、その他の飛翔体を含み得る。さらに、移動体は、車輪等を備えた地面上の移動体、ボーリング球等の地面上を転がる球、水上または水中を移動する移動体等を含み得る。このように所定の事象として移動体の到達地点または通過地点を、マーカMを用いて決定するゲーム態様に関して、上記実施の形態で説明した軌道表示処理は、広く適用可能である。
【0099】
また、上記実施の形態で説明した軌道表示処理は、プレイヤキャラクタPから射出された移動体の到達地点または通過地点を、マーカMを用いて決定するゲーム態様だけでなく、ユーザのプレイヤキャラクタPに対する所定の操作に基づいてそのプレイヤキャラクタPから離間したマーカ位置に所定の事象を生じさせる場合に適用可能である。
【0100】
例えば、プレイヤキャラクタPが魔法使いである場合に、マーカ位置において火球を発生させる、またはマーカ位置の上方から雷が落ちる等の魔法表現を行うために、プレイヤキャラクタPとマーカ位置との間を結ぶ直線を予測軌道Tとして表示してもよい。この場合にも、上記実施の形態で説明した軌道表示処理を適用し得る。
【0101】
また、上記実施の形態において、明るさの距離に対する変化(図5および図7に示すグラフのそれぞれ)が連続的である態様について説明したが、これに代えて、非連続的(段階的)に変化してもよい。またその変化は、曲線的(例えば2次曲線的)でもよい。また、先端部(マーカMの位置)における明るさは角度θによらず一定とし、距離の変化に応じた明るさの変化の割合(傾き)が大きくなるとしてもよい。
【0102】
また、上記実施の形態においては、基準のグラフBθo(=BLo)に示される予測軌道Tの基端部からの距離に対する明るさの関係がゲームデータ30bとして予め記憶され、それを基準として、角度θおよび/または予測軌道Tの長さLに応じて、予測軌道Tの基端部からの距離に対する明るさの関係を都度算出する態様を例示した。これに代えて、予め複数の角度θおよび/または予測軌道Tの長さLに応じた明度分布をゲームデータ30bとして記憶し、適宜適切な明度分布を読み出して、明るさを設定してもよい。
【0103】
また、上記実施の形態においては、角度θまたは予測軌道Tの長さLを単位時間毎に取得し、その都度それに応じた表示態様の変更を無段階に(連続的に)行う態様を例示したが、これに限られない。例えば、角度θまたは予測軌道Tの長さLの変化が所定の範囲を超えた場合に表示態様の変更を段階的に(非連続的に)行ってもよい。
【0104】
また、上記実施の形態においては、第1方向D1と第2方向D2とが異なる場合に、角度θまたは予測軌道Tの長さLに応じて予測軌道Tの表示を不明瞭にする軌道表示処理を説明したが、この軌道表示処理には、角度θが所定角度以上である場合には予測軌道Tを完全に消失させる態様を含み得る。ただし、この場合でもマーカMはゲーム画面Gにおいて表示される。
【0105】
また、予測軌道Tの表示を不明瞭にするための基準となる基準角θoは、0でもよい。すなわち、軌道表示手段46は、第1方向D1と第2方向D2とが異なる場合に、その角度θ(≠0)にかかわらず、予測軌道Tの表示を不明瞭にしてもよい。また、基準長Loは無限遠でもよい。すなわち、軌道表示手段46は、第1方向D1と第2方向D2とが異なる場合、かつ、予測軌道Tの長さLが有限長になった場合に、予測軌道Tの表示を不明瞭にしてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態において、第1方向D1と第2方向D2とが異なる場合に、角度θに応じて予測軌道Tの表示を不明瞭にするとともに、予測軌道Tの長さLに応じても予測軌道Tの表示を不明瞭にする態様を例示したが、これに限られない。例えば、第1方向D1と第2方向D2とが異なる場合に、その角度θに応じて予測軌道Tの表示を不明瞭にするが、予測軌道Tの長さLによっては予測軌道Tの表示を不明瞭にはしない態様としてもよい。また、例えば、第1方向D1と第2方向D2とが異なる場合に、予測軌道Tの長さLに応じて予測軌道Tの表示を不明瞭にするが、その角度θによっては予測軌道Tの表示を不明瞭にはしない態様としてもよい。
【0107】
また、上記実施の形態において、明るさの変更は、明度のみの変更により実現される態様を例示したが、これに加えてまたはこれに代えて、彩度および/または色相を変更してもよい。
【0108】
また、上記実施の形態においては、予測軌道Tの表示を不明瞭にするための態様として、明るさを変更する態様および表示しない領域の長さを変更することを例示したが、これに限られない。例えば、予測軌道Tを示す線の太さを細くする、または、線をぼやかせる等ことにより、予測軌道Tの表示を不明瞭にしてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態においては、予測軌道Tの表示を不明瞭にする態様として、角度θが所定値以下であるまたは予測軌道Tの長さLが所定値以上である場合には予測軌道Tの明るさを低減する一方、予測軌道Tは全部表示し、角度θが所定値より大きいまたは予測軌道Tの長さLが所定値未満である場合に、予測軌道Tの一部または全部を非表示とする態様を例示した。これに代えて、予測軌道Tの明るさは変更せずに、角度θまたは予測軌道Tの長さLに応じて予測軌道Tを非表示とする長さ(非表示領域T2の長さ)を変化させてもよい。この場合も、所定の角度以上または所定の長さ以下の場合に、予測軌道Tの全部を非表示としてもよい。
【0110】
また、上記実施の形態においては、予測軌道Tの表示を不明瞭にする場合に、角度θが大きくなるほど、および/または、予測軌道Tの長さLが短くなるほど、予測軌道Tの表示をより不明瞭にする態様について説明した。これに代えて、所定の基準角θoより大きい、および/または、予測軌道Tの長さLが所定の基準長Loより短い場合に、予測軌道Tの表示を不明瞭にする限り、角度θによらず、予測軌道Tを一定の表示態様で表示または非表示としてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態においては、予測軌道Tが直線で示される態様を例示したが、放物線等の曲線で示される態様としてもよい。
【0112】
また、予測軌道Tは、実際に移動体が射出される際の軌道と一致しなくてもよい。例えば、放物線等の曲線状に移動する移動体(手榴弾等)を射出する場合に、直線の予測軌道Tをゲーム画面Gに表示してもよい。
【0113】
また、上記実施の形態では、マーカMはゲーム画面G上に常に表示される態様について説明したが、一時的に表示されない場合があってもよい。また、マーカMが表示されるか否かがゲーム設定またはユーザ操作等に基づいて切り替え可能としてもよい。
【0114】
また、上記実施の形態においては、ユーザの操作対象オブジェクトがプレイヤキャラクタPである場合を例示したが、これに限られない。例えば、操作対象オブジェクトは、自動車、航空機等の乗物でもよい。
【0115】
また、上記実施の形態では据え置き型のゲーム装置について説明したが、携帯型のゲーム装置、携帯電話機、およびパーソナルコンピュータなどのコンピュータについても、本発明を好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、ユーザビリティを損なわずに予測軌道をより自然に表示することができるゲームプログラムおよびゲーム装置を提供するために有用である。
【符号の説明】
【0117】
1 ゲーム装置
4 制御部(コンピュータ)
41 仮想空間生成手段
42 表示画面生成手段
43 カメラ方向制御手段
44 事象生成手段
45 マーカ位置設定手段
46 軌道表示手段
47 オブジェクト制御手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8